【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、懸濁物質を凝集させる液状水溶性の液状凝集剤及び
液状pH調整剤を濁水に混合する混合機が備えられ、前記混合機は、内部に柱状の混合空間を有するとともに、前記柱状の混合空間の下部には、平面視放射方向に対して交差する交差方向から前記濁水を流入させる下部濁水流入部
、前記平面視放射方向に対して交差する交差方向から前記液状凝集剤を流入させる下部液状凝集剤流入部
、及び前記平面視放射方向に対して交差する交差方向から前記液状pH調整剤を流入させる下部液状pH調整剤流入部が備えられるとともに、前記液状凝集剤が混合された濁水を前記混合空間の上部より流出させる上部流出部が備えられ、前記下部濁水流入部
と、前記下部液状凝集剤流入部
及び下部液状pH調整剤流入部とは、前記混合空間の中心に対する点対称な位置及び向きで配置され、
前記液状凝集剤は、カチオン性の高分子凝集剤溶液、及びアニオン性の高分子凝集剤溶液であり、前記下部液状凝集剤流入部が、カチオン性の高分子凝集剤溶液、及びアニオン性の高分子凝集剤溶液に対応して2本設けられるとともに、前記下部液状pH調整剤流入部及び2本の前記下部液状凝集剤流入部は、同じ向きで上下方向に並んで配置され、前記下部濁水流入部は、前記下部液状pH調整剤流入部及び2本の前記下部液状凝集剤流入部より太径で形成され、前記下部濁水流入部から供給された前記濁水は、前記混合空間において、渦が生じて旋回しながら上昇し、
前記下部液状凝集剤流入部から供給された前記液状凝集剤及び
前記下部液状pH調整剤流入部から供給された前記液状pH調整剤は、前記混合空間において、旋回しながら上昇する前記濁水に添加され、該混合機で処理薬剤
及び前記液状pH調整剤が混合された前記濁水において、
前記液状pH調整剤によってpH調整されるとともに、前記液状凝集剤によって凝集した沈殿物を沈殿させる濁水処理装置であることを特徴とする。
【0009】
あるいは、この発明は、懸濁物質を凝集させる液状水溶性の液状凝集剤を混合機において濁水に混合する混合工程と、該混合機で処理薬剤が混合された前記濁水において前記液状凝集剤によって凝集した沈殿物を沈殿させる沈殿工程とを行い、前記混合機は、内部に柱状の混合空間を有するとともに、前記柱状の混合空間の下部には、平面視放射方向に対して交差する交差方向から前記濁水を流入させる下部濁水流入部
、平面視放射方向に対して交差する交差方向から前記液状凝集剤を流入させる下部液状凝集剤流入部
、及び前記平面視放射方向に対して交差する交差方向から前記液状pH調整剤を流入させる下部液状pH調整剤流入部が備えられるとともに、前記液状凝集剤が混合された濁水を前記混合空間の上部より流出させる上部流出部が備えられ、前記下部濁水流入部
と、前記下部液状凝集剤流入部
及び下部液状pH調整剤流入部とは、前記混合空間の中心に対する点対称な位置及び向きで配置され、
前記液状凝集剤は、カチオン性の高分子凝集剤溶液、及びアニオン性の高分子凝集剤溶液であり、前記下部液状凝集剤流入部が、カチオン性の高分子凝集剤溶液、及びアニオン性の高分子凝集剤溶液に対応して2本設けられるとともに、前記下部液状pH調整剤流入部及び2本の前記下部液状凝集剤流入部は、同じ向きで上下方向に並んで配置され、前記下部濁水流入部は、前記下部液状pH調整剤流入部及び2本の前記下部液状凝集剤流入部より太径で形成され、前記混合工程において、前記下部濁水流入部から供給された前記濁水は、前記混合空間において、渦が生じて旋回しながら上昇し、
前記下部液状凝集剤流入部から供給された前記液状凝集剤及び
前記下部液状pH調整剤流入部から供給された前記液状pH調整剤は、前記混合空間において、旋回しながら上昇する前記濁水に添加
する濁水処理方法であることを特徴とする。
【0010】
上記液状凝集剤は、液状のみならず、粉体でない水溶性の流体状であればゲル状であってもよい。
上記濁水は、懸濁物質を含有する汚水、排水、廃液あるいは処理水であってもよい。
上記沈殿物は、懸濁物質の凝集物であり、フロックとも呼ばれる。
【0011】
上記カチオン性の高分子凝集剤溶液は分子中にカチオン基を有する高分子凝集剤の溶液であり、アニオン性の高分子凝集剤溶液は分子中にアニオン基を有する高分子凝集剤の溶液である。より詳しくは、カチオン基を有する高分子凝集剤はメタアクリル酸エステル系の高分子凝集剤やアクリル酸エステル系の高分子凝集剤であり、アニオン性の高分子凝集剤溶液はカルボン酸系の高分子凝集剤やスルホン酸系の高分子凝集剤である。
【0012】
上述のカチオン性の高分子凝集剤溶液、及びアニオン性の高分子凝集剤溶液である前記液状凝集剤は、カチオン性の高分子凝集剤溶液、及びアニオン性の高分子凝集剤溶液の混合液であってもよいし、カチオン性の高分子凝集剤溶液、及びアニオン性の高分子凝集剤溶液の2液を濁水に対して混合してもよい。
【0013】
この発明により、懸濁物質を含有する濁水を省スペースで迅速に固液分離することができる。
詳述すると、混合機において、水溶性の液状凝集剤を濁水に混合することによって、粉末状の処理薬剤を濁水に添加して混合する場合に比べて、迅速かつ効率的に濁水と処理薬剤とを混合することができる。そのため、懸濁物質の凝集作用が迅速かつ効率的に発揮され、懸濁物質が凝集した凝集物(フロック)を沈殿物として迅速に沈殿させ、固液分離することができる。
【0014】
なお、懸濁物質の凝集作用が迅速かつ効率的に発揮され、懸濁物質が凝集した凝集物(フロック)を沈殿物として迅速に沈殿させることができるため、効率的でない凝集作用により凝集物(フロック)の迅速な沈殿ができない濁水処理装置に比べ、コンパクトな装置構成でよく、省スペース化を図ることができる。
【0015】
また、前記混合機は、内部に柱状の混合空間を有するとともに、前記柱状の混合空間の下部には、平面視放射方向に対して交差する交差方向から前記濁水を流入させる下部濁水流入部、及び平面視放射方向に対して交差する交差方向から前記液状凝集剤を流入させる下部液状凝集剤流入部が備えられるとともに、前記液状凝集剤が混合された濁水を前記混合空間の上部より流出させる上部流出部が備えられ、前記下部濁水流入部、及び下部液状凝集剤流入部は、前記混合空間の中心に対する点対称な位置及び向きで配置され、前記下部濁水流入部から供給された前記濁水は、前記混合空間において、渦が生じて旋回しながら上昇し、下部液状凝集剤流入部から供給された前記液状凝集剤は、前記混合空間において、旋回しながら上昇する前記濁水に添加されるため、前記柱状の混合空間へ前記交差方向から流入させる前記濁水の流入エネルギにより、前記混合空間において、前記下部流入部から前記上部流出部に向かう、つまり下方から上方に向かう渦(旋回流)が生じ、渦(旋回流)によって、前記濁水と前記液状凝集剤とを混合空間内で効率的かつ確実に混合撹拌することができる。
【0016】
なお、このように、前記柱状の混合空間への前記濁水の流入エネルギによって生じる下方から上方に向かう渦(旋回流)によって、前記濁水と前記液状凝集剤とを混合空間内で混合するため、前記濁水と前記液状凝集剤とを混合するための別の機構やエネルギが不要となり、さらにコンパクトで簡素な濁水処理装置を構成することができる。
【0017】
また、前記液状凝集剤は、カチオン性の高分子凝集剤溶液、及びアニオン性の高分子凝集剤溶液であるため、濁水をより迅速に固液分離することができる。
詳述すると、前記濁水中に含有する懸濁物質の粒子(以下において懸濁粒子という)は粒子表面に負の電荷が帯電して互いに反発し合う、あるいは表面が水膜に覆われることで粒子同士の間隔が離れすぎているため、懸濁粒子同士に引力が作用しないなど理由により懸濁粒子を凝集することができない。
【0018】
このような状況において、陽イオン(正)であるポリ塩化アルミニウム(PAC)等を添加することによって、懸濁粒子の表面の電荷は中和され、あるいは懸濁粒子表面を覆う水膜が取り除かれることによって、懸濁粒子同士の粒子間距離が縮まり、懸濁粒子同士に引力が作用して粒子同士が結合して、つまり懸濁粒子が凝集して沈殿しやすくなる。これを凝結作用(Coagulation)という。
【0019】
しかしながら、上記凝結作用による凝結体は細かすぎて十分に沈殿できない。そこで、高分子凝集剤を添加することによって、高分子凝集剤の架橋吸着作用により、懸濁粒子同士を強い力で結合させて大きな凝集体(フロック)を形成することができる。これを架橋吸着−凝集作用(Flocculaition)という。
【0020】
これに対し、カチオン性の高分子凝集剤溶液、及びアニオン性の高分子凝集剤溶液である前記液状凝集剤は、陽イオンであるカチオン性の高分子凝集剤と陰イオンであるアニオン性の高分子凝集剤とが一度に混合撹拌されるため、懸濁粒子表面に帯電する電荷の中和作用、凝結作用並びに架橋吸着−凝集作用が生じ、結合強度が高く、より大きな凝集体(フロック)を形成することができる。したがって、凝集体(フロック)を迅速に沈殿させることができるため、濁水をより迅速に固液分離することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記混合機が複数設けられてもよい。
複数の前記混合機は、すべて直列配置あるいは並列配置してもよいし、一部を直列配置し、残りを並列配置するなど、適宜の配列で配置してもよい。
【0022】
この発明により、前記濁水の処理量や、前記濁水と前記液状凝集剤との混合距離を適切に設定することができ、より確実に前記濁水を固液分離、あるいは固液分離に加えてpH調整することができる。
また、仮に、同型の混合機を複数備える場合は、様々な容量や形状の混合機を準備することなく、処理の程度に応じた適切な固液分離、あるいは固液分離に加えてpH調整することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記混合機で前記処理薬剤が混合された前記濁水を貯留する沈殿槽が備えられてもよい。
この発明により、より確実に凝集体(フロック)を形成し沈殿させて、濁水をより迅速に固液分離することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、液状pH調整剤を前記混合機に対して供給するpH調整剤供給ポンプ、前記液状凝集剤を前記混合機に対して供給する凝集剤供給ポンプ、前記沈殿槽におけるpHを測定するpH測定手段、少なくとも前記pH調整剤供給ポンプ、及び前記pH測定手段が接続され、少なくとも前記pH調整剤供給ポンプの稼働を制御する制御部が備えられてもよい。
【0025】
この発明により、前記濁水の性状や懸濁度に応じて、それぞれ適量の液状pH調整剤及び液状凝集剤を前記濁水に混合して固液分離及び適切にpH調整することができる。
詳しくは、前記液状凝集剤は、液状pH調整剤及び液状凝集剤であるため、前記濁水の性状や懸濁度に応じて、それぞれ適量の液状pH調整剤及び液状凝集剤を前記濁水に混合して固液分離及び適切にpH調整することができる。
【0026】
また、少なくとも前記pH調整剤供給ポンプ、及び前記pH測定手段が接続された前記制御部が、少なくとも前記pH調整剤供給ポンプの稼働を制御するため、前記pH測定手段による測定結果に応じた量の前記液状pH調整剤を前記濁水に混合できるため、前記濁水を適切にpH調整することができる。