特許第6961204号(P6961204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社寺田製作所の特許一覧

<>
  • 特許6961204-散茶機とその停止制御方法 図000002
  • 特許6961204-散茶機とその停止制御方法 図000003
  • 特許6961204-散茶機とその停止制御方法 図000004
  • 特許6961204-散茶機とその停止制御方法 図000005
  • 特許6961204-散茶機とその停止制御方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961204
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】散茶機とその停止制御方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/06 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   A23F3/06 301F
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-77880(P2017-77880)
(22)【出願日】2017年4月11日
(65)【公開番号】特開2018-174776(P2018-174776A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145116
【氏名又は名称】株式会社寺田製作所
(72)【発明者】
【氏名】小塚 篤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康哲
【審査官】 茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−241165(JP,A)
【文献】 特開平05−137507(JP,A)
【文献】 特開2011−217697(JP,A)
【文献】 特開2000−197448(JP,A)
【文献】 特開2013−223441(JP,A)
【文献】 特開2012−177497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00−5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性の部材で覆われた散茶室と、該散茶室内へ茶葉を風送するための送風手段とを備え、あらかじめ設定した時間ずつあらかじめ設定した送風量に変更させながら停止動作をおこなう停止制御手段を設けることを特徴とする散茶機。
【請求項2】
前記散茶室と前記送風手段とを直列に複数設け、茶葉を最初に風送する散茶室から順に前記停止動作をおこなう停止制御手段を設けることを特徴とする請求項1記載の散茶機。
【請求項3】
通気性の部材で覆われた散茶室と、該散茶室内へ茶葉を風送するための送風手段とを備えた散茶機において、あらかじめ設定した時間ずつあらかじめ設定した送風量に変更させながら停止動作を行うことを特徴とする散茶機の停止制御方法。
【請求項4】
前記送風量は、大風量と小風量を繰り返すことを特徴とする請求項3記載の散茶機の停止制御方法。
【請求項5】
前記散茶室と前記送風手段とを直列に複数設けた散茶機において、茶葉が最初に風送される散茶室から順に停止動作をおこなうことを特徴とする請求項3または4記載の散茶機の停止制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風送により茶葉を1枚ずつ広げるための散茶機とその停止制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
碾茶を製造するとき、碾茶炉の前に散茶機を配置する。碾茶とは、被覆した茶生葉を蒸した後、揉まずに乾燥したものであり、抹茶の原料となる。形状は葉が展開して透き通るように薄く、色沢は鮮緑色、香味は独特の炉の香りがある。
【0003】
従来の碾茶の製造は、図5のように、蒸熱71→散茶冷却72→乾燥73→分離→仕上げ乾燥となっている。乾燥73は碾茶炉でおこなうことも特徴であり、独特の香りはこの碾茶炉による。乾燥をおこなう碾茶炉は、長さ約10〜15メートル、幅約2メートル、高さ約2〜4メートルの大型である。更に、碾茶炉の燃焼部74や冷却散茶72の送風ファンを地下に備えているため、長さ約10〜15メートル、幅約2メートル、深さ約1メートル程度のピット75(くぼみ)を設けている。
【0004】
碾茶を製造するときには、碾茶炉内の巾いっぱいに、茶葉を一葉一葉はなして投入することが理想とされる。そのため、投入には散茶機を用い、冷却、開葉(茶葉の表面水分による茶葉同士の付着や折れ等をほぐして広げる)、投入を目的としている。茶葉同士が付着した状態で碾茶炉に投入されると、付着した茶葉と茶葉の間に存在する茶葉の表面水分が乾燥の初期工程で乾ききらず、それ以外の乾燥が進んだ茶葉との乾燥差(乾燥ムラ)が生じる。また、1枚ずつの茶葉を投入するときも、先に投入した茶葉の上に重なって投入すると、上記同様に乾燥ムラが生じる。いずれも、茶葉が重なったまま乾燥工程に移行すると、乾燥ムラが茶葉表面の退色の原因になる。重なった部分は黒ずみ、製品がくすんだ色となり、鮮やかな緑の抹茶の弊害となる。重なった部分が多いと茶葉が乾きにくく、重なった部分を乾かすために碾茶炉の乾燥室内の温度を高くして、乾燥を行うことになる。その場合、重ならずに乾燥が進んでいる部分が過乾燥となり、この過乾燥も退色又は香気を損失する原因となる。このように、散茶機の果たす役割は重要である。
【0005】
近年、抹茶の需要が高まっており、碾茶の製造が増加している。従来の碾茶炉の問題を解決するべく、本出願人は、特許文献1を出願している。しかし、散茶機に関する出願はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2015−214511
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
散茶機を稼働中は、送風手段から送風をして茶葉を散茶機の下部から上部へ吹き飛ばす。この時、茶葉の中には散茶室の上部に貼り付いて落ちてこなくなる茶葉や上部で吹き飛ばされ続ける茶葉があるが、散茶機の送風手段の送風を止めると、それらの茶葉は落ちてくる。落ちてきて、散茶部の下部にたまったままでは傷んだ茶葉が製品に混入してしまうので、再び散茶機の送風をおこない、落ちてきた茶葉を碾茶炉へ移動させていた。しかし、その時の送風量によっては、茶葉を排出しきれないことがあった。すべての茶葉を排出するために、作業者が試行錯誤して停止させていたが、どのように停止させていたかは作業者によるところが大きく、不明であった。
【0008】
また、停止するときに散茶機の送風手段の送風量を変更すると、次回の製茶時に送風量を元に戻さなければならず、作業者の負担が大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1手段は、通気性の部材で覆われた散茶室と、該散茶室内へ茶葉を風送するための送風手段とを備え、あらかじめ設定した時間ずつあらかじめ設定した送風量に変更させながら停止動作をおこなう停止制御手段を設けることを特徴とする散茶機。
第2手段は、前記第1手段において、前記散茶室と前記送風手段とを直列に複数設け、茶葉を最初に風送する散茶室から順に前記停止動作をおこなう停止制御手段を設ける。
第3手段は、通気性の部材で覆われた散茶室と、該散茶室内へ茶葉を風送するための送風手段とを備えた散茶機において、あらかじめ設定した時間ずつあらかじめ設定した送風量に変更させながら停止動作を行うことを特徴とする散茶機の停止制御方法。
第4手段は、前記第3手段において、前記送風量は、大風量と小風量を繰り返す。
第5手段は、前記第3または4手段において、前記散茶室と前記送風手段とを直列に複数設けた散茶機において、茶葉が最初に風送される散茶室から順に停止動作をおこなう。
【発明の効果】
【0010】
散茶機を停止させるとき、停止動作を指示するだけで、散茶室内に残っている茶葉をすべて排出することができる。これにより、古い茶葉の混入を防ぐことができ、散茶機を使いやすくなり、良質な碾茶を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は散茶機を備えた碾茶炉を示した説明図である。
図2図2は散茶機の停止動作を示した説明図である。
図3図3は散茶機の停止の設定を示した説明図である。
図4図4は散茶機の停止動作を示した説明図である。
図5図5は従来の碾茶製造を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の散茶機Sは通気性の部材で覆われた散茶室61、62,63と、ホッパー67、68、69に入った茶葉Tをこの散茶室61へ風送する送風手段である送風ファン64、65、66からなる。本実施例では、散茶室61、62、63が3室あり、それに伴い、送風ファン64、65、66、ホッパー67、68、69も3ケずつ備えている。散茶室の数はこの限りではなく、必要に応じて増減する。
【0013】
碾茶炉Rは下部の輻射熱乾燥部1と、上部の熱風乾燥部3とに分かれている。輻射熱乾燥部1は、更に第1乾燥室11と第2乾燥室21とに分かれており、第1乾燥室11は上段、第2乾燥室21は下段となっている。第1乾燥室11への茶葉の供給のため、散茶給葉部4を設ける。散茶給葉部4は、茶葉Tを受け入れるホッパー42と、ホッパー42内の茶葉を風送するための送風ファン41と、茶葉の散茶室43を備えている。散茶室43は、送風ファン41からの送風が抜けるように、通気性の良い側壁(本実施例では金網44)となっている。
【0014】
第1乾燥室11には通気性を有する無端輸送体を上下に2段設けてあり、茶葉は散茶給葉部4によりこれら2段の無端輸送体に分けられて搬送される(本実施例では2段であるが、1段でも3段以上でもよい)。本実施例では、無端輸送体としてネットコンベヤ12、13を用いる。第1乾燥室11には、バーナーを備えた燃焼部16を設け、煙道14内を燃焼空気で満たす。煙道14は、燃焼部16から水平に4〜6本設けるが、この限りではない。燃焼部16による燃焼空気は煙道14を通り、機外に配設した煙道51を通って、第2乾燥室21の煙道24へ導かれる。第1乾燥室11のネットコンベヤ12、13の終端の茶葉は、第2乾燥室21のネットコンベヤ22上へ落下する。ネットコンベヤ22は、第1乾燥室11のネットコンベヤ12、13に対し、逆行する。第2乾燥室21のネットコンベヤ22の終端には、取出用のトラフコンベヤ25を設け、トラフコンベヤ25の終端にホッパー26を設け、ホッパー26内の茶葉を熱風乾燥部3の上部のシュート29へ送るための送風ファン27および風送管28を設ける。
【0015】
熱風乾燥部3は、シュート29から出た茶葉Tを薄く広げるためのかきならし具35を備え、熱風乾燥室31内に通気性を有する無端輸送体32A、32B、33A、33Bを4段設けているが、無端輸送体の段数はこの限りではない。第2乾燥室21を通過した燃焼空気を機外の煙道52より熱風乾燥部3との間の排煙調整室36へ導き、排煙調整室36内の燃焼空気を機外の煙道53、供給ファン37により熱風乾燥室31へ導入している。熱風乾燥室31の上方には、乾燥に使用した熱風を排気するための排気ファン38を設ける。供給ファン37と排気ファン38は、それぞれインバータ(図示しない)にて出力調整する。これにより機内の温度を調節することができる。無端輸送体33Bの終端には、茶葉を取り出すためのスクリューコンベヤ29を設ける。
【0016】
次に、この散茶機Sと碾茶炉Rを稼働しているときの動きを説明する。殺青処理した茶葉Tを散茶機Sのホッパー67へ投入する。ホッパー67に入った茶葉Tは送風ファン64の送風により散茶室61へ飛ばされ、ホッパー68上へ落下する。ホッパー68に入った茶葉Tは送風ファン65の送風により散茶室62へ飛ばされ、ホッパー69上へ落下する。ホッパー69に入った茶葉Tは送風ファン66の送風により散茶室63へ飛ばされ、碾茶炉Rの散茶給葉部4のホッパー42上へ落下する。
【0017】
ホッパー42に入った茶葉Tは、送風ファン41の送風により、散茶室43へ飛ばされ、落下するときに、上段のネットコンベヤ12または下段のネットコンベヤ13へのる。ネットコンベヤ12、13上では、輻射熱により乾燥される。第1乾燥室11のネットコンベヤ12、13上で乾燥された茶葉Tは、第2乾燥室21のネットコンベヤ22上へ落下する。落下時に、茶葉Tの上下や隣の茶葉Tとの位置、ネットコンベヤへの接触などが変化する。第2乾燥室21のネットコンベヤ22上でも、第1乾燥室11と同様に、輻射熱により乾燥される。ネットコンベヤ22上で乾燥された茶葉Tは、トラフコンベヤ25上へ取り出され、ホッパー26へ回収される。ホッパー26内の茶葉へ送風ファン27により送風し、風送管28内を通過して、シュート29により給葉部34へ茶葉を投入する。給葉部34内の茶葉をかきならし具35により薄く平らにして、無端輸送体32A上へのせる。供給ファン37により排煙調整室36内の熱風を煙道53にて熱風乾燥室31内へ取り込み、茶葉を熱風により乾燥する。このときの熱風乾燥室31の温度は約80度であり、この温度は、供給ファン37の回転数により変更することができる。茶葉から蒸散する湿気を帯びた空気は上昇し、上部の排気ファン38により排気される。熱風乾燥室31内で乾燥した茶葉をスクリューコンベヤ39へ排出し、スクリューコンベヤ39により、次の機械(または搬送装置)へ搬送する。
【0018】
停止動作を行うための停止制御手段を散茶機Sの制御盤(図示しない)に設け、その制御盤に停止動作を指示するための停止スイッチ(図示しない)を設ける。制御盤では、図3に示すように、停止動作が指示された場合の1ケの散茶室での送風量、時間をあらかじめ設定しておく。本実施例では、まず、送風ファンの送風量を100%にして5秒間送風し、その後、送風量を30%にして10秒間送風し、その後、再度送風量を100%にして10秒間送風し、その後、停止させるというように設定しておく。この送風量と時間は任意に変更可能である。この送風量と時間は、停止動作時の設定のため、通常運転時に茶葉の風送には影響なく、次の停止動作を行うときにもこの設定を利用する。
【0019】
散茶機Sを停止させるために停止スイッチが押された場合、まずは、最初に茶葉が入る散茶室61を図2のように停止させる。停止スイッチが押された後は、通常の送風量とは関係なく、送風ファン64の送風量を100%にして5秒間、次に送風量を30%にして10秒間、次に送風量を再び100%にして10秒間経過した後、送風量を0にして停止させる。その後、図4に示すように、続けて次の散茶室62の停止動作をする。散茶室61の時と同じ送風量と時間にしたがって動作をして、最後は送風量0とする。その後、続けて次の散茶室63の停止動作をし、最後は送風量0とする。次に、散茶給葉部4も同様に停止動作をして、最後は送風量0とする。散茶給葉部4は散茶機Sと連動しなくてもよいが、連動させると便利である。
【0020】
このようにすることで、散茶機Sの停止動作のために作業者がずっと見て、送風量を調整して散茶機Sを停止させる必要がなくなり、散茶機S内に茶葉が残ることなく排出される。また、一度設定すれば、停止スイッチを押すだけで、誰でも散茶機Sを停止させることができる。
【符号の説明】
【0021】
T 茶葉
R 碾茶炉
1 輻射熱乾燥部
2 仕切板
3 熱風乾燥部
4 散茶給葉部
11 第1乾燥室
12 ネットコンベヤ
13 ネットコンベヤ
14 煙道
15 排出口
16 燃焼部
17 風洞
21 第2乾燥室
22 ネットコンベヤ
24 煙道
25 トラフコンベヤ
26 ホッパー
27 送風ファン
28 風送管
29 シュート
31 熱風乾燥室
32A 無端輸送体
32B 無端輸送体
33A 無端輸送体
33B 無端輸送体
34 給葉部
36 排煙調整室
37 供給ファン
38 排気ファン
39 スクリューコンベヤ
41 送風ファン
42 ホッパー
43 散茶室
44 金網
51 煙道
52 煙道
53 煙道
55 ダンパーレバー
57 ダンパーレバー
S 散茶機
61 散茶室
62 散茶室
63 散茶室
64 ホッパー
65 ホッパー
66 ホッパー
67 送風ファン
68 送風ファン
69 送風ファン
71 蒸熱
72 散茶冷却
73 乾燥
74 燃焼部
75 ピット
76 吹上
図1
図2
図3
図4
図5