特許第6961209号(P6961209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961209
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】アナログ信号のディジタル変換方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20211025BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G01D5/20 110Q
   G01B7/30 M
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-111662(P2017-111662)
(22)【出願日】2017年6月6日
(65)【公開番号】特開2018-205166(P2018-205166A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】新井 真一
(72)【発明者】
【氏名】櫛原 弘
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−109596(JP,A)
【文献】 特開2008−219756(JP,A)
【文献】 特開平11−118521(JP,A)
【文献】 特開2005−024493(JP,A)
【文献】 特開2018−066640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/20
G01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2相励磁/2相出力の位相変調方式回転検出器より出力される回転検出信号によりディジタル角度出力を得るようにしたアナログ信号のディジタル変換方法において、前記位相変調方式回転検出器の回転検出信号は、2相の励磁信号に対して振幅変調された回転検出信号の重ね合わせにより得られ、前記回転検出信号のディジタル変換を行う信号処理部は負帰還制御系にて構成され、2相の位相変調信号にフィードバック信号に応じた周波数を有する2相の周波数信号をそれぞれ乗算し、差分を取ることで得られる制御偏差を零にすることにより、前記位相変調方式回転検出器の2相の励磁信号の何れか1つ、又は、前記位相変調方式回転検出器から出力される2相の回転検出信号の何れか1つが喪失しても、継続して前記ディジタル角度出力が得られることを特徴とするアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項2】
前記ディジタル角度出力が前記周波数信号としてフィードバックされる際に基準周波数分だけフィードバック信号をオフセットさせることを特徴とする請求項1記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項3】
前記制御偏差は制御則を経て角速度信号としてアキュムレータに入力されて累算され、前記アキュムレータよりディジタル角度出力を得ることを特徴とする請求項1又は2記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項4】
2相の前記周波数信号の間の位相は90°ずれていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項5】
ディジタル変換の対象となる2相の前記位相変調信号の間の位相は90°ずれていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項6】
2相の前記励磁信号の間の位相は90°ずれていることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項7】
前記励磁信号の周波数は基準周波数と同じであることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項8】
前記制御偏差をディジタル信号化した後に制御則に入力する構成であって、ディジタル信号化の手段としてA/D変換部を用いたことを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項9】
前記制御偏差をディジタル信号化した後に制御則に入力する構成であって、ディジタル信号化の手段としてコンパレータを用いることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項10】
前記制御偏差をディジタル信号化した後に制御則に入力する構成であって、前記ディジタル信号化の手段として電圧制御発振器を用いることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項11】
前記制御則からの出力をディジタル信号化した後にアキュムレータに入力する構成であって、ディジタル信号化の手段としてA/D変換部を用いることを特徴とする請求項3に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項12】
前記制御則からの出力をディジタル信号化した後にアキュムレータに入力する構成であって、ディジタル信号化の手段としてコンパレータを用いることを特徴とする請求項3に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項13】
前記制御則からの出力をディジタル信号化する構成であって、前記ディジタル信号化の手段として電圧制御発振器を用い、アキュムレータの代りにカウンタを用いることを特徴とする請求項3に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項14】
前記回転検出信号をディジタル信号化した後に前記制御偏差を導出する構成であって、ディジタル信号化の手段としてA/D変換部を用いることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項15】
前記励磁信号を発生する励磁回路は入力信号に応じた励磁電流を出力することを特徴とする請求項1ないし14の何れか1項に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【請求項16】
前記制御則は積分特性を有し、フィードバックループが2型の制御系で構成されることを特徴とする請求項3,8ないし13の何れか1項に記載のアナログ信号のディジタル変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ信号のディジタル変換方法に関し、特に、2相の励磁信号の何れか一方、又は、2相の回転検出信号の何れか一方が喪失しても、ディジタル変換及び回転位置検出の継続を可能とするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のレゾルバ信号処理回路としては、例えば、特許文献1の構成を図9から図14において開示することができる。
すなわち、図9において、符号1で示されるものは図11図14で示すステータ100に設けられた2相の励磁巻線であり、互いに電気的に90°位相が異なる第1、第2励磁コイル1a,1bから構成されている。この各励磁コイル1a,1bには励磁信号sinωt及びcosωtが入力され、このステータ100には出力巻線2が設けられている。
【0003】
前記出力巻線2は、互いにで電気的に位相が90°異なる第1、第2出力コイル2a,2bよりなり、各出力コイル2a,2bからは2相出力のレゾルバ角度出力4を得ることができる。
【0004】
前記各出力コイル2a,2bは、図10のように、第1、第2位相差検出部10,11に入力され、各位相差検出部10,11には前記励磁巻線1に接続された2相交流電源20からの2相励磁信号V1S,V1C の一部が各位相差検出部10,11に入力されている。前記各位相差検出部10,11からの検出信号θSC は加算器21に入力されて加算されている。従って、励磁巻線1、ロータ3及び出力巻線2とにより2相励磁/2相出力タイプVR形レゾルバ30を構成し、各位相差検出部10,11と加算部21によりレゾルバ信号処理回路31を構成している。なお、前記ロータ3は、ステータ100とのギャップパーミアンスがNサイクルの正弦波状に変化する形状のコアのみで形成され、ステータ100の内側又は外側に設けられている。また、このロータ3はVR型でないコイルを有するブラシレスタイプでも可である。
【0005】
次に、動作について述べる。まず、2相交流電源20からの90°位相のずれた振幅の同一な2相交流電圧V1S,V1C を励磁巻線1の各励磁コイル1a,1bに印加する。この時、ロータ3の回転に応じて出力巻線2の各出力コイル2a,2bからは回転角度に比例して互いに位相がずれた出力電圧V2S,V2C が各位相差検出部10,11に入力され、各位相差検出部10,11では、各出力電圧V2S,V2C と前記2相交流電圧V1S,V1C の一方の交流電圧V1S との位相差からなる検出信号θSC が出力されて加算器21にて加算される。前記加算器21にて加算されて出力された加算角度データ22をCPU(図示せず)等の演算手段にて2で割ることにより前記各検出信号θSの中間値を得ることができ、誤差を消除したレゾルバ角度出力θS+Cが得られる。
【0006】
前記レゾルバ信号処理回路31の概略動作については、前述の通りであるが、前述の誤差の消除動作について次に詳述する。図10において、2つの励磁コイル1a,1bにそれぞれ2相交流電圧V1S=K S1NωtとV1c=K1cosωtの互いに位相がπ/2異なり振幅が同じ交流電圧を印加する。この時、VR形レゾルバの出力巻線2には励磁電圧位相に対してロータが回転した角度に比例する角度の位相が変化した出力電圧V2S,V2Cが発生する。前記出力電圧V2S は、V2S=K SIN{ωt+N・θ+ε(θ)}となり、この出力電圧V2S は周知のように回転角度に比例して位相が変化するN・θの項とVR形レゾルバの角度誤差ε(θ)=ε・SIN(2Nθ)なる成分が存在する。このVR形レゾルバの誤差ε(θ)は2相の励磁巻線1と出力巻線2との磁気的結合のアンバランスから生じる問題が殆どであり、電気角で2サイクルの正弦波状の誤差カーブとなる。従来はこのN・θの項の位相を励磁電圧の位相と比較してVR形レゾルバの角度を検出していたが、その中にはε(θ)の角度誤差を含んでおり、高精度化が求められていた。
【0007】
2相の出力巻線2を用いているため、各出力電圧V2S,V2C は互いに位相がπ/2ずれている。その出力電圧V2S,V2C のうちのCOS相の出力電圧V2C
2C=K SIN{ωt+N(θ+π/2)+ε(θ)}
となる。ここでCOS相の角度誤差ε(θ)はSIN相の角度誤差ε(θ)に対して電気的にπ/2角度がずれているため
ε(θ)=ε・SIN{2Nθ+Nπ/2}
=ε・SIN{2N(θ+π)}
と表される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−118521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のレゾルバ信号処理回路は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の特許文献1の構成は、2相励磁/2相出力の位相変調方式回転検出器より出力されるアナログ信号に対して、信号処理回路にて各励磁信号に対する各相アナログ信号の位相差を検出し、これを平均化して高精度の角度検出及び速度検出を得る方法を提案している。ここで、各位相差検出部より出力される各検出信号は誤差を含んでいるものの、最終的に得られる出力と同様の回転情報を有する角度出力であり、冗長構成の信号処理回路となっている。しかし、冗長系としては2重系構成であり、これらを比較して、回転検出器より出力されるアナログ信号の故障を検出することができるが、故障が発生した時の角度出力の継続は困難である。
【0010】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、回転検出器の故障によりアナログ信号の喪失が起きても角度出力を継続させるようにしたアナログ信号のディジタル変換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるアナログ信号のディジタル変換方法は、2相励磁/2相出力の位相変調方式回転検出器より出力される回転検出信号によりディジタル角度出力を得るようにしたアナログ信号のディジタル変換方法において、前記位相変調方式回転検出器の回転検出信号は、2相の励磁信号に対して振幅変調された回転検出信号の重ね合わせにより得られ、前記回転検出信号のディジタル変換を行う信号処理部は負帰還制御系にて構成され、2相の位相変調信号にフィードバック信号に応じた周波数を有する2相の周波数信号をそれぞれ乗算し、差分を取ることで得られる制御偏差を零にすることにより、前記位相変調方式回転検出器の2相の励磁信号の何れか1つ、又は、前記位相変調方式回転検出器から出力される2相の回転検出信号の何れか1つが喪失しても、継続して前記ディジタル角度出力が得られる方法であり、また、前記ディジタル角度出力が前記周波数信号としてフィードバックされる際に基準周波数分だけフィードバック信号をオフセットさせる方法であり、また、前記制御偏差は制御則を経て角速度信号としてアキュムレータに入力されて累算され、前記アキュムレータよりディジタル角度出力を得る方法であり、また、2相の前記周波数信号の間の位相は90°ずれている方法であり、また、ディジタル変換の対象となる2相の前記位相変調信号の間の位相は90°ずれている方法であり、また、2相の前記励磁信号の間の位相は90°ずれている方法であり、また、前記励磁信号の周波数は基準周波数と同じである方法であり、また、前記制御偏差をディジタル信号化した後に制御則に入力する構成であって、ディジタル信号化の手段としてA/D変換部を用いる方法であり、また、前記制御偏差をディジタル信号化した後に制御則に入力する構成であって、ディジタル信号化の手段としてコンパレータを用いる方法であり、また、前記制御偏差をディジタル信号化した後に制御則に入力する構成であって、前記ディジタル信号化の手段として電圧制御発振器を用いる方法であり、また、前記制御則からの出力をディジタル信号化した後にアキュムレータに入力する構成であって、ディジタル信号化の手段としてA/D変換部を用いる方法であり、また、前記制御則からの出力をディジタル信号化した後にアキュムレータに入力する構成であって、ディジタル信号化の手段としてコンパレータを用いる方法であり、また、前記制御則からの出力をディジタル信号化する構成であって、前記ディジタル信号化の手段として電圧制御発振器を用い、アキュムレータの代りにカウンタを用いる方法であり、また、前記回転検出信号をディジタル信号化した後に前記制御偏差を導出する構成であって、ディジタル信号化の手段としてA/D変換部を用いる方法であり、また、前記励磁信号を発生する励磁回路は入力信号に応じた励磁電流を出力する方法であり、また、前記制御則は積分特性を有し、フィードバックループが2型の制御系で構成される方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるアナログ信号のディジタル変換方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、位相変調方式回転検出器の2相の励磁信号の何れか1つ、又は、位相変調方式回転検出器から出力される2相の回転検出信号の何れか1つが喪失しても、継続してディジタル角度出力が得られるため、レゾルバの信頼性及びレゾルバを用いた各種機器の信頼性の向上を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるアナログ信号のディジタル変換方法を示すブロック図である。
図2図1の他の形態を示すブロック図である。
図3図1の他の形態を示すブロック図である。
図4図1の他の形態を示すブロック図である。
図5図1の他の形態を示すブロック図である。
図6図1の他の形態を示すブロック図である。
図7図1の他の形態を示すブロック図である。
図8図1の他の形態を示すブロック図である。
図9】従来のレゾルバの構成図である。
図10】従来のレゾルバ信号処理を示す回路図である。
図11図10のレゾルバを示す構成図である。
図12図11のレゾルバの右側面図である。
図13図11の他の構成図である。
図14図13の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によるアナログ信号のディジタル変換方法は、2相の励磁信号の何れか一方、又は、2相の回転検出信号の何れか一方が喪失しても、ディジタル変換及び回転位置検出の継続を可能とすることである。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明によるアナログ信号のディジタル変換方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号30で示される2相励磁2相出力型の回転検出器であり、前記回転検出器30には、電流アンプ31からなる励磁回路32から出力される2相励磁信号(
E・sinωRt 、E・cosωRt )が入力されている。
【0016】
前記回転検出器30は、位相が直交した2相の励磁信号EsinωRt EcosωRt を入力すると、角度θに応じた位相を持った位相変調信号ER1-R3(=K・E・sin(ωRt-θ))、ER2-R4(=K・E・cos(ωRt-θ))を回転検出信号として出力する巻線型の検出器である(Kは変圧比)。前記回転検出信号ER1-R3・ER2-R4はそれぞれの励磁信号EsinωRt 及びEcosωRt により発生した磁束を検出コイル1で検出することで成り立っており、角度θに応じて振幅を変化させる振幅変調信号の重ね合わせにより構成される。式で説明すると下式の通りである。
ER1−R3=K・EsinωRt・cosθ−K・EcosωRt・sinθ=K・E・sin(ωRt-θ)… (式1)
ER2−R4=K・EsinωRt・sinθ+K・EcosωRt・cosθ=K・E・cos(ωRt-θ)… (式2)
【0017】
2相の前記回転検出信号ER1-R3・ER2-R4は回転検出信号ER1-R3 ・ER2-R4のディジタル変換を行うと共に、図1の後段側の第1、第2乗算器40,41と、前記第1、第2乗算器40,41に接続された第1減算器42及び三角関数信号変換部43と、前記回転検出器30に2相の励磁信号E・sinωRt 、E・cosωRt を供給する励磁回路33と、前記励磁回路33に接続された基準信号発生部34と、前記第1減算器42から出力される制御偏差εが入力されるA/D変換部44、制御則45及びアキュムレータ46と、前記アキュムレータ46からのディジタル角度出力φが入力され前記三角関数信号変換部43、前記励磁回路33及び基準信号発生部34と、から構成される信号処理部31に入力されており、前記回転検出器30の2相の励磁信号EsinωRt 及びEcosωRt は信号処理部31の励磁回路33より供給されている。前記信号処理部31は負帰還制御系の構成になっており、ディジタル角度出力φは回転検出器30に乗算される2相の周波数信号にフィードバックされる。負帰還制御系は2相の回転検出信号ER1-R3、ER2-R4に、フィードバックされたディジタル角度に応じた周波数ωを有する2相の周波数信号sinωLt、cosωLt をそれぞれ乗算し、差分を取ることで得られる制御偏差εを零にするべく機能しており、負帰還制御系が機能した結果として、ディジタル角度出力φが得られる構成となっている。また、フィードバック信号ωLt をωLt=ωRt−φとすると、制御偏差εの導出式は下式の通りである。
ε=K・E・cos(ωRt-θ)・sinωLt- K・E・sin(ωRt-θ)・cosωLt
=K・E・sin(ωLt-ωRt+θ)=K・E・sin(θ−φ)… (式3)
よってεが零となるように機能すれば、sin(θ−φ)=0よりφ=θとなり回転検出器30の角度θに一致したディジタル角度φが得られる。
【0018】
前記信号処理部31の前記フィードバックループ内には積分特性を有する前記アキュムレータ46と、同じく積分特性を有しフィードバックループの特性改善と安定性を確保するために挿入された前記制御則45が配置されている。これらによりフィードバックループは2型の制御系となり、回転検出器30が高速回転しても、ディジタル角度出力φは定常誤差を生じることなく回転検出器30の角度θに追従する。また、前記制御則45より出力される信号45aは等価的に角速度信号となる。
【0019】
尚、前記アキュムレータ46の出力を周波数信号としてフィードバックする際に前記基準周波数信号ωRtを第2減算器50にて加算しているが、これは第2減算器50の故障をフィードバックループの異常として検出させるための手段である。この構成がない場合、フィードバック信号ωtはωt=ωt+φであり、アキュムレータ出力をそのままフィードバックする構成となり、ディジタル角度出力φを得るにはアキュムレータ出力より基準周波数信号ωt を減算器にて減算する必要があるが、この場合フィードバックループが正常に機能していても、フィードバックループ外の処理となる第2減算器50にて異常が発生した場合には、そのまま異常なデータが出力されることとなる(図2)。これに対し、当該第2減算器50をフィードバックループ内に配置すれば、例えば制御偏差ε≠0となった場合を異常状態として検出する手段を設ければ、第2減算器動作の異常はフィードバックループの動作異常として検出が可能となる。
また、前記励磁回路33が電流アンプ32で構成され、入力信号に応じた励磁電流を出力することも本発明の特徴である。前記回転検出器30は位相変調方式回転検出器であり、入出力間の位相ずれはそのまま回転検出信号ER1-R3・ER2-R4の角度ずれになる。一方、回転検出器30は巻線型の検出器であり、励磁電流により発生した磁束を検出コイル1で検出することで回転検出信号ER1-R3・ER2-R4を得るが故に、励磁回路33が電圧アンプだと励磁電圧位相は入力インピーダンスの温度特性により励磁電流位相に対して変化してしまい、結果として励磁電圧と回転検出信号間の位相ずれが変化してしまうが、励磁回路33を電流アンプにすることで、励磁回路33に入力するフィードバック信号に対して、温度変化の影響のない回転検出位相を保つことが可能となる。
【0020】
次に、2相の励磁信号E・sinωRt 、E・cosωRt あるいは2相の回転検出信号ER1-R3・ER2-R4 の内、いずれかの信号の一つ、すなわち、E・sinωRt 、E・cosωRt の何れか1つ又は、ER1-R3・ER2-R4の何れか1つが喪失した場合の動作について説明する。まず、1つの励磁信号Esinωt が喪失した場合について説明する。この場合の回転検出信号は(式1)、(式2)において励磁信号Esinωt を0として下式の通りとなる、
R1-R3 =−K・EcosωRt・sinθ …(式4)
R2-R4 =K・EcosωRt・cosθ …(式5)
(式4)、(式5)の回転検出信号に周波数ω(=ωt−φ)を有する2相の基準信号sinωLt 、cosωt をそれぞれ乗算し、差分を取ることで得られる制御偏差は下式の通りとなる。
ε=K・E・cosωRt・cosθ・sinωLt+K・E・cosωRt・sinθ・cosωLt
=K・E・1/2・{sin(θ−φ)+sin(2ωRt+θ−φ)} …(式6)
(式6)にてε=0とすると、φ≒θ+sin2ωRt と近似できるが、負帰還制御系は一般的に周波数特性を持っており、励磁周波数に対して適切な帯域幅をとれば、sin2ωRtは通常は励磁周波数の2倍の周波数成分であり、高周波数の成分故に減衰されて出力されるため、φはθを中心として微小振動する出力となる。つまり、励磁信号の一方が喪失した場合、誤差は持ちながらもディジタル変換は継続するということを示している。
【0021】
次に、他の1つの励磁信号Ecosωt が喪失した場合も類似の状況となる。この場合の回転検出信号は(式1)、(式2)において励磁信号EcosωRt を0として下式の通りとなる、
R1-R3=K・E・sinωRt・cosθ …(式7)
R2-R4=K・E・sinωRt・sinθ …(式8)
(式7)、(式8)の回転検出信号に、周波数ω(=ωt−φ)を有する2相の基準信号sinωLt、cosωLtをそれぞれ乗算し、差分を取ることで得られる制御偏差は下式の通りとなる。
ε=K・E・sinωRt・sinθ・sinωLt-K・E・sinωRt・cosθ・cosωLt
=K・E・1/2・{sin(θ−φ)-sin(2ωRt+θ−φ)} …(式9)
(式9)にてε=0とすると、φ≒θ−sin2ωRt と近似でき、負帰還制御系の周波数特性として、励磁周波数に対して適切な帯域幅をとれば、sin2ωRt は高周波数の成分故に減衰されて出力されるため、φはθを中心として微小振動する出力となる。つまり、励磁信号の他方が喪失した場合でも、誤差は持ちながらもディジタル変換は継続する。
【0022】
次に1つの回転検出信号ER1-R3 が喪失した場合について説明する。この場合の制御偏差は(式3)においてER1-R3 の成分を0とすることで導出できる。
ε=K・E・cos(ωRt-θ)・sinωLt-0・cosωRt=K・E・1/2{sin(ωLt-ωRt+θ)+sin
Lt+ωRt-θ)} =K・E・1/2{sin(θ-φ)+ sin(2ωRt-θ-φ)} …(式10)
(式10)にてε=0とすると、φ≒θ+sin2(ωRt-θ)と近似でき、負帰還制御系の周波数特性として、励磁周波数に対して適切な帯域幅をとれば、sin2(ωRt-θ)は高周波数の成分故に減衰されて出力されるため、φはθを中心として微小振動する出力となる。つまり、回転検出信号の一方が喪失した場合、誤差は持ちながらもディジタル変換は継続する。
また、他の1つのみの回転検出信号ER2-R4 が喪失した場合も類似の状況となる。この場合の制御偏差は(式3)においてER2-R4 の成分を0とすることで導出できる。
ε=0・sinωLt- K・E・sin(ωRt-θ)・cosωLt=K・E・1/2{sin(ωLt-ωRt+θ)-sin
Lt+ωRt-θ)} =K・E・1/2{sin(θ-φ)- sin(2ωRt-θ-φ)} …(式11)
(式11)にてε=0とすると、φ≒θ−sin2(ωRt-θ)と近似でき、負帰還制御系の周波数特性として、励磁周波数に対して適切な帯域幅をとれば、sin2(ωRt-θ)は高周波数の成分故に減衰されて出力されるため、φはθを中心として微小振動する出力となる。つまり、回転検出信号の他方が喪失した場合も、誤差は持ちながらもディジタル変換は継続する。
以上の通り、本発明においては回転検出器の励磁信号、回転検出信号における何れか1つが喪失した場合にも、ディジタル変換が可能であり、正しい角度出力φを継続させることができることから、信頼性を高めたアナログ/ディジタル変換が可能である。
【0023】
次に本発明の実現構成について説明する。
図1においてはアナログ信号をディジタル信号化する手段は制御則45の手前のA/D変換部44であり、制御偏差εをA/D変換部44によりディジタル化しているが、アキュムレータ46よりも入力側であれば、ディジタル化の手段および、ディジタル化する場所の限定はない。ディジタル化する手段の例としてはA/D変換部44の他に、コンパレータ、VCOが挙げられる。図3図8に各種ディジタル化手段での本発明の実現手段を示す。尚、図7の構成ではアキュムレータの代りにカウンタを用いる構成となる。
前述のように、図2の構成においては、図1の第2減算器50が除去され、前記アキュムレータ46からの出力ωt-φが前記三角関数信号変換部43に入力され、前記アキュムレータ46の後段には、前記ディジタル角度出力φを出力するための前記第2減算器50が設けられている。
尚、図2の各部の構成は、図1と同等であるため、同一又は同等部分には同一符号を付し、その説明は、ここでは省略している。
【0024】
次に、本発明の他の形態である図3の構成においては、図1における前記A/D変換部44の代りにコンパレータ70を用いて、図1の構成と同等の作用効果を得ることができる。
尚、図3の各部の構成は、図1と同等であるため、同一又は同等部分には同一符号を付し、その説明はここでは省略している。
【0025】
次に、本発明の他の形態である図4の構成においては、図1におけるA/D変換部44の代りに、電圧制御発振器(VCO)44aを用い、偏差εのディジタル化を行うことができる。
尚、図4の構成は、図1と同等であるため、図1と同一又は同等部分には同一符号を付し、その説明はここでは省略している。
【0026】
次に、本発明の他の形態である図5の構成においては、図1の構成におけるA/D変換部44と制御則45とを逆配置とし、前記制御則45の出力45aをA/D変換部44でA/D変換することでも、図1と同等の作用効果を得ることができる。
尚、図5の構成は、図1と同等であるため、図1と同一又は同等部分には同一符号を付し、その説明はここでは省略している。
【0027】
次に、本発明の他の形態である図6の構成においては、図1の構成におけるA/D変換部44の代りにコンパレータ60を用い、制御則45の出力45aがコンパレータ60に入力され、ディジタル化された前記偏差εが前記アキュムレータ46からディジタル角度出力φとして出力される。
尚、図6の構成は、図1と同等であるため、図1と同一又は同等部分には同一符号を付し、その説明はここでは省略している。
【0028】
次に、本発明の他の形態である図7の構成においては、図1におけるA/D変換部44代りに電圧制御発振器44aを用いると共に、この電圧制御発振器44aを前記制御則45の後段に配置しているが、図1の構成と図7の構成は、同じ作用効果が得られる。
【0029】
次に、本発明の他の形態である図8の構成においては、図1の構成におけるA/D変換部44を第1乗算器40、第2乗算器41の前段に配置し、乗算以降の信号処理をディジタル的に行う構成であり、制御偏差εを制御則45を経て角速度信号45aとしてアキュムレータ46で累算され、前記アキュムレータ46からディジタル角度出力φを得ている。
尚、図8の構成においては、図1の構成と同一又は同等部分には同一符号を付し、その説明は省略している。
【0030】
次に、本発明によるアナログ信号のディジタル変換方法の要旨とするところは、以下の通りである。
すなわち、2相励磁/2相出力の位相変調方式回転検出器より出力される回転検出信号によりディジタル角度出力を得るようにしたアナログ信号のディジタル変換方法において、前記位相変調方式回転検出器の回転検出信号は、2相の励磁信号に対して振幅変調された回転検出信号の重ね合わせにより得られ、前記回転検出信号のディジタル変換を行う信号処理部は負帰還制御系にて構成され、2相の位相変調信号にフィードバック信号に応じた周波数を有する2相の周波数信号をそれぞれ乗算し、差分を取ることで得られる制御偏差を零にすることにより、前記位相変調方式回転検出器の2相の励磁信号の何れか1つ、又は、前記位相変調方式回転検出器から出力される2相の回転検出信号の何れか1つが喪失しても、継続して前記ディジタル角度出力が得られる方法であり、また、前記ディジタル角度出力が前記周波数信号としてフィードバックされる際に基準周波数分だけフィードバック信号をオフセットさせる方法であり、また、前記制御偏差は制御則を経て角速度信号としてアキュムレータに入力されて累算され、前記アキュムレータよりディジタル角度出力を得る方法であり、また、2相の前記周波数信号の間の位相は90°ずれている方法であり、また、ディジタル変換の対象となる2相の前記位相変調信号の間の位相は90°ずれている方法であり、また、2相の前記励磁信号の間の位相は90°ずれている方法であり、また、前記励磁信号の周波数は基準周波数と同じ方法であり、また、前記制御偏差をディジタル信号化した後に前記制御則に入力する構成であって、ディジタル信号化の手段としてA/D変換部を用いた方法であり、また、前記制御偏差をディジタル信号化した後に制御則に入力する構成であって、ディジタル信号化の手段としてコンパレータを用いた方法であり、また、前記制御偏差をディジタル信号化した後に制御則に入力する構成であって、前記ディジタル信号化の手段として電圧制御発振器を用いた方法であり、また、前記制御則からの出力をディジタル信号化した後にアキュムレータに入力する構成であって、ディジタル信号化の手段としてA/D変換部を用いた方法であり、また、前記制御則からの出力をディジタル信号化した後にアキュムレータに入力する構成であって、ディジタル信号化の手段としてコンパレータを用いた方法であり、また、前記制御則からの出力をディジタル信号化する構成であって、前記ディジタル信号化の手段として電圧制御発振器を用い、アキュムレータの代りにカウンタを用いた方法であり、また、前記回転検出信号をディジタル信号化した後に前記制御偏差を導出する構成であって、ディジタル信号化の手段としてA/D変換部を用いた方法であり、また、前記励磁信号を発生する励磁回路は入力信号に応じた励磁電流を出力する方法であり、また、前記制御則は積分特性を有し、フィードバックループが2型の制御系で構成される方法である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によるアナログ信号のディジタル変換方法は、位相変調方式回転検出器の2相の励磁信号の何れか1つ、又は、2相の回転検出信号の何れか1つが喪失しても継続してディジタル角度出力が得られるため、レゾルバ及びレゾルバを用いた装置の信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 検出コイル
3 ロータ
30 回転検出器
31 信号処理部(負帰還制御系)
32 電流アンプ
33 励磁回路
34 基準信号発生部
40 第1乗算器
41 第2乗算器
42 第1減算器
43 三角関数信号変換部
44 A/D変換部
44a 電圧制御発振器
45 制御則
45a 信号(角速度信号)
46 アキュムレータ
50 第2減算器
70 コンパレータ
100 ステータ
ε 制御偏差
φ 角度データ(ディジタル角度出力)
[K・E・sin(ωRt-θ)][ER1-ER3] 回転検出信号(位相変調信号)
[K・E・cos(ωRt-θ)][ER2-ER4] 回転検出信号(位相変調信号)
ωRt 基準周波数信号
E・sinωRt 励磁信号
E・cosωRt 励磁信号
ωt フィードバック信号
cosωt 、sinωt 2相の基準信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14