特許第6961225号(P6961225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961225格子整合クラッド層を有する高い閉じ込め係数のIII窒化物端面発光レーザーダイオードに関する方法およびデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961225
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】格子整合クラッド層を有する高い閉じ込め係数のIII窒化物端面発光レーザーダイオードに関する方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/20 20060101AFI20211025BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20211025BHJP
   H01S 5/11 20210101ALI20211025BHJP
   H01L 21/465 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H01S5/20 610
   H01S5/343 610
   H01S5/11
   H01L21/465
【請求項の数】21
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-559826(P2017-559826)
(86)(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公表番号】特表2018-517295(P2018-517295A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】US2016033270
(87)【国際公開番号】WO2016187421
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】62/163,811
(32)【優先日】2015年5月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593152720
【氏名又は名称】イェール ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】Yale University
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユーフェン
(72)【発明者】
【氏名】ユエン,グー
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−038394(JP,A)
【文献】 特表2013−518447(JP,A)
【文献】 特開2000−124552(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0205665(US,A1)
【文献】 特開2008−226974(JP,A)
【文献】 特開2006−332595(JP,A)
【文献】 特開2004−055611(JP,A)
【文献】 特開2009−094360(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/061174(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/013621(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0142576(US,A1)
【文献】 特開平07−221395(JP,A)
【文献】 特表2014−507069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 − 5/50
H01L 33/00 − 33/64
H01L 21/465 − 21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されレーザービームの端面発光のために整列される能動領域、および該基板と該能動領域の間に形成される多孔質クラッド層を含む、半導体レーザーダイオードであって、該多孔質クラッドは、該レーザーダイオードが、6.06%〜10%の一次元閉じ込め係数Γ1Dを有するように、屈折率コントラストを提供する、半導体レーザーダイオード。
【請求項2】
能動領域についての第1の屈折率値と多孔質クラッド層についての第2の屈折率値の差が0.1より大きい、請求項1記載の半導体レーザーダイオード。
【請求項3】
該多孔質クラッド層がnドープトGaNを含む、請求項1記載の半導体レーザーダイオード。
【請求項4】
該多孔質クラッド層のドーピング密度が1×1018cm-3〜1×1019cm-3である、請求項3記載の半導体レーザーダイオード。
【請求項5】
1×1018cm-3〜5×1018cm-3のドーピングレベルを有し、該多孔質クラッド層と該基板の間に配置されるn型GaN層をさらに含む、請求項4記載の半導体レーザーダイオード。
【請求項6】
該多孔質クラッド層の多孔率が30%〜60%である、請求項1記載の半導体レーザーダイオード。
【請求項7】
該多孔質クラッド層の平均孔径が10nm〜100nmである、請求項6記載の半導体レーザーダイオード。
【請求項8】
該多孔質クラッド層の厚さが200nm〜500nmである、請求項1記載の半導体レーザーダイオード。
【請求項9】
該能動領域が多量子井戸を含む、請求項1〜8いずれか記載の半導体レーザーダイオード。
【請求項10】
多孔質クラッド層の反対にある能動領域の面上に形成される導電性酸化物クラッド層をさらに含む、請求項1〜8いずれか記載の半導体レーザーダイオード。
【請求項11】
該導電性酸化物クラッド層が酸化インジウムスズを含む、請求項10記載の半導体レーザーダイオード。
【請求項12】
照明の光源として一体化される、請求項1〜10いずれか記載の半導体レーザーダイオード。
【請求項13】
半導体レーザーダイオードを作製するための方法であって、該方法が、
基板上にn+ドープトGaN層を形成する工程、
該n+ドープトGaN層に隣接する端面発光半導体レーザーダイオードのための能動接合を形成する工程、
能動接合を通るトレンチをエッチングして、n+ドープトGaN層の表面を暴露させる工程、および
続いて、n+ドープトGaN層をウエットエッチングして、n+ドープトGaN層を多孔質クラッド層に変換する工程
を含み、該多孔質クラッドは、該レーザーダイオードが、6.06%〜10%の一次元閉じ込め係数Γ1Dを有するように、屈折率コントラストを提供する、方法。
【請求項14】
該能動接合に隣接する導電性酸化物クラッド層を形成する工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
該n+ドープトGaN層に隣接するn型電流分散層を形成する工程をさらに含み、n型電流分散層のドーピング濃度が1×1018cm-3〜5×1018cm-3である、請求項13記載の方法。
【請求項16】
能動接合を形成する工程が、n型GaN、多量子井戸およびp型GaNをエピタキシーにより堆積させる工程を含む、請求項13記載の方法。
【請求項17】
能動接合を形成した後にウエットエッチングがなされる、請求項13または16記載の方法。
【請求項18】
ウエットエッチングが、n+ドープトGaN層を側方に多孔化する電気化学的エッチングを含み、光増速エッチングを必要としない、請求項1316いずれか記載の方法。
【請求項19】
ウエットエッチングが、n+ドープトGaN層を多孔化するための電解液として硝酸を使用する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ウエットエッチングが、n+ドープトGaN層を多孔化するための電解液としてフッ化水素酸を使用する、請求項18記載の方法。
【請求項21】
n+ドープトGaN層が、5×1018cm-3〜2×1020cm-3のドーピング濃度を有する、請求項1315いずれか記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
技術分野
該技術は、端面発光III窒化物レーザーダイオードなどの端面発光レーザーダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
関連分野の記載
従来の端面発光半導体レーザーは典型的に、分離閉じ込めヘテロ構造(separate confinement heterostructure) (SCH)を使用する(implement)。この構造において、光学導波管構造は、上部クラッド層と底部クラッド層に挟まれた能動接合を含み得る。クラッド層は典型的に、より低い屈折率を有するので、光学モードは、導波管構造内に空間的に閉じ込められ得る。エンドミラー(end mirror)または屈折半導体/エアファセットは、長さ方向に(例えば、レーザー発光の方向に沿って)さらなる光学的な閉じ込めを提供し得、レーザー空洞を画定し得る。導波管構造は、より大きな禁制帯を有するp型およびn型半導体層間に挟まれた能動領域、通常多量子井戸を含み得る。p型およびn型層は、能動領域内の誘導放出の電気的および光学的な閉じ込めを補助する。半導体構造における効果的な発振(lasing)には、光学的閉じ込めと電気的閉じ込めの両方が必要である。
【0003】
かかる半導体レーザー設計において、ラウンドトリップ光学利得(round-trip optical gain) (gmodal)がレーザー空洞においてラウンドトリップ吸収(αi)およびミラー損失(mirror loss) (αm)を超える場合に発振基準が満たされる。光学利得(gmodal)は、物質利得(gmat)および閉じ込め係数(Γ)の積に比例する。閉じ込め係数は、レーザーの能動領域(反転分布(population inversion)が起こる場合)と側方に閉じ込められた光学モードの間の電場の振幅の二乗の横方向の空間的な重複(transverse spatial overlap)の程度の基準を表す。より高い発振効率のためには、閉じ込め係数を高めることが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
概要
発明者らは、格子整合ナノ多孔質n+型クラッド層を有するIII窒化物端面発光レーザーダイオードを作製するための方法および構造を思いつき、開発した。高度にドーピングされたn+-GaNクラッド層は、レーザーダイオード構造の一部としてエピタキシャルに成長し得る。該構造はさらに、n型GaNとp型GaN半導体層に挟まれたInGaN/GaN多量子井戸を含み得る。n+ドープト(doped)GaN層は、その後、電気化学的エッチング法により選択的に多孔化され、その後、層が高度に導電性を維持しながら、材料の屈折率は有意に低下する。電気化学的多孔質化プロセスにより、レーザー構造の隣接するn型GaN層と比較して、高いインデックスコントラスト(index contrast)を有するn面(底面)クラッド層が生じる。さらに、多孔質クラッド層は、高度に導電性であり、かつ隣接する層と格子整合している。整合した格子は、高いインデックスコントラストを有する他の半導体レーザーダイオード構造に存在し得る材料の応力を防ぐ。
【0005】
続いて、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明な導電性酸化物が、p面クラッド層としてレーザーダイオード構造の上面に堆積され得る。n面とp面の両方の大きなインデックスコントラストは、例えばクラッド層としてAlGaNを使用する従来の窒化物レーザーダイオード構造と比較して2倍より大きく光学閉じ込め係数を増加し得る。さらに、高いインデックスコントラスト設計は、p型層の厚さを低減し得、おそらくはレーザーダイオードの能動領域の両面上のAlGaNクラッドを除去し得る。AlGaNの場合と比較して、より導電性の高いクラッド層と一緒に、全体のダイオード抵抗は有意に低減し得、レーザーダイオードの性能をさらに高め得る(例えば、操作速度を上げ、オーム熱損失(ohmic heating loss)を低減し得る)。
【0006】
いくつかの態様は、基板上に形成されレーザービームの端面発光のために整列される能動領域および基板と能動領域の間に形成される多孔質クラッド層を含む半導体レーザーダイオードに関する。いくつかの局面において、能動領域についての第1の屈折率値と多孔質クラッド層についての第2の屈折率値の差は、0.1より大きい。いくつかの実施において、多孔質クラッド層は、nドープト(n-doped)GaNを含む。
【0007】
いくつかの局面によると、多孔質クラッド層のドーピング密度は、1×1018cm-3〜1×1019cm-3である。半導体レーザーダイオードはさらに、多孔質クラッド層と基板の間に配置される、1×1018cm-3〜5×1018cm-3のドーピングレベルを有するn型GaN層を含み得る。いくつかの実施において、多孔質クラッド層の多孔率は30%〜60%である。いくつかの実施において、多孔質クラッド層の平均孔径は10nm〜100nmである。多孔質クラッド層の厚さは200nm〜500nmであり得る。
【0008】
いくつかの実施によると、半導体レーザーダイオードの能動領域は、多量子井戸を含む。半導体レーザーダイオードはさらに、多孔質クラッド層とは反対にある能動領域の面上に形成される導電性酸化物クラッド層を含み得る。半導体レーザーダイオードは、4%〜10%の一次元光学閉じ込め係数(Γ1D)を有し得る。いくつかの実施において、導電性酸化物クラッド層は、酸化インジウムスズを含む。いくつかの実施によると、半導体レーザーダイオードは、市販または住宅用の設置に使用され得る照明のための光源として一体化され得る。
【0009】
いくつかの態様は、半導体レーザーダイオードを作製するための方法に関する。方法は、基板上にn+ドープト(n+-doped)GaN層を形成する行為、n+ドープトGaN層に隣接する端面発光半導体レーザーダイオードのための能動接合(active junction)を形成する行為、能動接合を通るトレンチをエッチングして、n+ドープトGaN層の表面を暴露する行為、およびその後、n+ドープトGaN層をウエットエッチングして、n+ドープトGaN層を多孔質クラッド層に変換する行為を含み得る。
【0010】
いくつかの場合に、方法はさらに、能動接合に隣接する導電性酸化物クラッド層を形成する行為を含み得る。いくつかの実施によると、方法はさらに、n+ドープトGaN層に隣接するn型電流分散層(current spreading layer)を形成する行為を含み得、n型電流分散層のドーピング濃度は1×1018cm-3〜5×1018cm-3である。
【0011】
いくつかの局面において、能動接合を形成する行為は、n型GaN、多量子井戸およびp型GaNをエピタキシーにより堆積させる行為を含む。いくつかの実施において、ウエットエッチングは、能動接合を形成した後に実行される。いくつかの局面によると、ウエットエッチングは、n+ドープトGaN層の側方を多孔化する(porosify)電気化学的エッチングを含み、光増エッチングを必要としない。ウエットエッチングは、n+ドープトGaN層を多孔化するための電解液として硝酸を使用し得る。いくつかの場合、ウエットエッチングは、n+ドープトGaN層を多孔化するための電解液としてフッ化水素酸を使用し得る。いくつかの実施によると、n+ドープトGaN層は、5×1018cm-3〜2×1020cm-3ドーピング濃度を有し得る。
【0012】
前述の装置および方法の態様は、先に記載されるかまたは以下により詳細に記載される局面、特徴および行為との任意の適切な組合せに含まれ得る。本教示のこれらおよび他の局面、態様ならびに特徴は、添付の図面に関連する以下の記載からより十分に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
当業者は、本明細書に記載される図面は、例示目的のみのためであることを理解しよう。いくつかの例において、態様の種々の局面は、態様の理解を容易にするために誇張または拡大して示され得ることが理解される。図面は必ずしも同じ縮尺ではなく、その代わりに教示の原理を例示することが強調される。図面において、同様の参照記号は一般に、種々の図面を通じて、同様の特徴、機能的に同様および/または構造的に同様の要素を言及する。図面が微小作製されたデバイスに関する場合、図面を簡略化するために1つのみのデバイスが示されることがある。実施において、広い面積の基板または基板全体中に多くのデバイスが並行して作製されることがある。さらに、示されるデバイスは、より大きな回路中に一体化され得る。
【0014】
以下の詳細な説明において図面を参照する場合、空間的な参照「上部」、「底部」、「上」、「下」、「垂直」、「水平」などが使用され得る。かかる参照は、教示目的のために使用され、具体的なデバイスについての絶対的な参照を意図しない。具体的なデバイスは、図面に示される方向とは異なり得る任意の適切な様式で空間的に方向づけられ得る。図面は、いかなる方法でも本教示の範囲の限定を意図しない。
図1図1Aは、いくつかの態様による、半導体レーザーダイオード構造の正面図を示す。図1Bは、いくつかの態様による、半導体レーザーダイオードのエネルギー帯の模式図を示す。
図2A図2Aは、いくつかの態様による、多孔質クラッド層を有するIII窒化物レーザーダイオードを形成するためのエピタキシャル層を示す。
図2B-D】図2B〜2Dは、いくつかの態様による、多孔質クラッド層を有するIII窒化物レーザーダイオードを形成するための方法に関する構造を示す。
図3図3は、多孔質GaN層を示す走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図4図4は、いくつかの態様による、透視図における端面発光半導体レーザーダイオードを示す。
図5図5は、非多孔質AlGaNおよび多孔質GaNクラッド層で覆われた導波管構造についての光学モード閉じ込めを例示する。
図6図6Aおよび6Bは、2つの異なる構造および屈折率プロフィールについての光学モード閉じ込めを例示する。
図7図7は、屈折率コントラストおよび導波管の厚さの関数としての閉じ込め係数Γ1Dの三次元プロットを示す。点線は、選択されたインデックスコントラストおよび好ましい導波管厚さのためのより高い閉じ込め係数を示す。
図8A図8Aは、いくつかの態様による、電気化学的エッチングの条件を示す。
図8B-E】図8Bは、いくつかの態様による、電気化学的エッチングの条件を示す。図8C〜8Eは、異なる電気化学的エッチング条件下で形成されたナノ多孔質GaNを示すSEM画像である。
図9図9は、多孔質クラッド層を有する光学的にポンプされた端面発光半導体レーザーからの誘導放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示される態様の特徴および利点は、図面と共に参照される場合、以下に記載の詳細な説明からより明白になるであろう。
【0016】
詳細な説明
発明者らは、従来のIII窒化物端面発光レーザーダイオードおよび他の半導体材料(例えば、GaAs、InP等)で作製された端面発光レーザーダイオードは、レーザーダイオードの能動領域とクラッド層の間の屈折率コントラストを制限する固形の半導体クラッド層(例えば、III窒化物系についてAlGaNで形成される)を有することを認識し、理解している。屈折率コントラストにおけるこの制限は、レーザーの光学モードが、しばしば良好に閉じ込められず、ダイオードの能動領域(誘導放出が生じる領域)に空間的に良好に整合されないことを意味する。その結果、発明者らは、ダイオードの効率が可能な程度まで高くならないということを認識し、理解している。
【0017】
例えば、III窒化物半導体レーザーダイオードは、GaAsレーザーダイオードのものなどのSCH構造を含み得る。III窒化物レーザーダイオード構造は、サファイアなどのGaN基板またはGaN鋳型上で成長し得る。AlGaN合金(GaNよりも低い屈折率を有する)は、図1Aに示されるようにクラッド層としてエピタキシャル構造中で成長し得る。示されるレーザーダイオード構造100は、2つのAlGaNクラッド層105(例えば、2つのAl0.15Ga0.85N層)を有する従来の構造であり得る。発明者らは、III窒化物構造について、III砒化物レーザー構造における格子整合したAlAsおよびGaAsと比較して、AlNとGaNの間に、レーザー設計の自由度を大きく制限し得る大きな格子非整合(mismatch)があることを認識し、理解している。
【0018】
III窒化物レーザーについての能動領域中の光学閉じ込めを向上するために、能動領域とクラッドの間のより高いインデックスコントラスト(Δn=n能動領域-nクラット゛)が好ましい。AlGaNの屈折率は、Al比が増加するのに伴って低下するので、より高いインデックスコントラスト(Δn=nGaN-nAlGaN)のためにAlGaNクラッド層においてより高いAl比が必要である。好ましくは、Δnは少なくとも0.05である必要がある。しかしながら、AlGaN三元結晶中のAl比の増加に伴う格子サイズの低下のために、AlGaNエピタキシャル層のGaN層への格子非整合の増加により、GaNにおいて伸張ひずみ(tensile strain)の増加が誘導される。かかるひずみの過剰な増大は、巨視的なエピタキシャル構造のたわみおよびクラッキング、ならびに過去に特定の(臨界)厚さに成長した場合に適合しないずれおよびV字型の形態学的な欠陥の顕微的な生成を含む多くの問題をもたらし得る。これらの全ての問題は、レーザーダイオードの性能および信頼性に有害であり得る。
【0019】
実施において、従来のAlGaNクラッド層のAl組成は、UV、青色および緑色レーザーダイオードにおいて5%〜20%の範囲であった。値のこの範囲は、AlGaNクラッド(cladded) III窒化物レーザーダイオードについておよそ0.02〜0.08のΔnを生じ、屈折率コントラストの要件をわずかに満たすのみである。低いインデックスコントラストのために、光学閉じ込め係数は、能動領域の厚さが数百ナノメートル増加し、クラッド層が数ミクロンの厚さを有していても、III窒化物ダイオードレーザーについてはわずかに約2%〜3%である。参照のために、一次元閉じ込め係数(Γ1D)は、下記の計算および計算結果の目的で、
【数1】
と表され得、式中E(x)は、x方向の光学モードについての電場の振幅である。モード閉じ込めは、図1Aに点線の楕円で大まかに示される。誘導放出が生じるレーザーダイオード中の光学利得を有する領域(多量子井戸に占められる領域にほぼ等しい)は、±Lx/2の間で拡張する。
【0020】
図1Aにおけるx方向の低い横断光学モード閉じ込めは、レーザー放射の大部分を、基板を通して漏らし得、基板モードを励起し得る。クラッド層中の光学モードの一過性の(evanescent)尾部は突然には減衰し得ないので、いくらかの部分のレーザー空洞モードは、レーザーヘテロ構造の下にある厚いn型GaN層110に伝わり得る。その高い屈折率のために、下にあるGaN層110は、第2の寄生導波管を形成し得、能動領域からの放射の大きな漏れおよびレーザーダイオードの横断ファーフィールドパターンの分解を生じる。結果的に、横断モードは全エピタキシャル構造100と関連するより高次のモードになり得る。かかるモードは、光学利得がないレーザーヘテロ構造の下にある厚いGaN側方コンタクト層と、その強度を共有し、デバイスの効率の消失および低減に寄与する。
【0021】
寄生導波管の影響を低減するために、クラッド層の厚さを誘導される波の側方の広がりよりも十分に大きく作製して、寄生導波管へのモード消失を低減し得る。例えば、Nichia Chemicalのグループは、非常に厚い(5μmの厚さ)Al0.05Ga0.095N:Si底面クラッド層を使用することを報告している。Osram OSは、底面クラッド層の厚さを2μmに増加することによる基板モードの抑制を報告している。クラッキングを生じることなくかかる厚さのAlGaNクラッド層を成長させるために、より厚い層のクラッキングによりよく耐え得る超格子構造が必要である。しかしながら、これらのダイオード設計の複雑さおよび超格子エピタキシーによっても、光学閉じ込め係数は約5%未満のままである。
【0022】
発明者らはまた、AlGaNクラッディングによるさらなる問題はその導電性、およびまた厚いp型ドープトGaN層についての導電性であることを認識し、理解している。Mgアクセプターの深いレベルおよびGaNにおける低いホール移動度のために、p型GaNは、Siドープトn型GaNよりも抵抗性が二桁高く、III窒化物固体照明(solid-state lighting)について依然としてボトルネックのままである。AlGaNのドーピングの困難さのためにAlGaNをMgでドーピングすることはGaNよりもかなり効果が低いことが報告されている。低いインデックスコントラストおよび高い抵抗性に必要な厚いクラッド層は、電流の一部が抵抗層のオーム熱において消失するので、レーザーダイオードの全体をより抵抗性の高い電子構造にし、効率を低下させる。発明者らは、III窒化物レーザー中のAlGaNクラッド層が、III窒化物レーザーダイオードの光学閉じ込めおよび電気効率の両方を不利に制限してしまうことを認識し、理解している。
【0023】
固形AlGaNクラッド層の制限を克服するために、発明者らは、III窒化物端面発光レーザーダイオード中に多孔質クラッド層を形成するための方法および構造を思いつき、開発した。多孔質クラッド層は、従来のクラッド層よりも高い屈折率コントラストおよび低い抵抗性を提供し得る。結果的に、多孔質層は、III窒化物端面発光レーザーダイオードの閉じ込め係数、電気効率および全体的な発光効率を向上し得る。多孔質クラッド層は、他の半導体材料から作製される端面発光レーザーダイオードにも使用し得る。発明者らはまた、レーザーダイオードは、自然放出を介して光を放射する発光ダイオード(LED)の性能を妨げる「効率ドループ(efficiency droop)」の現象を回避し得る誘導放出を介して光を放射するので、効率的なレーザーダイオードはLEDに代わる有用な高強度の光源であり得ることを認識し、理解している。ナノ多孔質クラッド層を有する端面発光III窒化物レーザーダイオードの作製をここに記載する。
【0024】
いくつかの態様によると、図2Aに示される多層半導体構造は、有機金属気相成長法(MOCVD)または有機金属気相エピタキシーにより成長され得る。能動領域216は、n型214およびp型220層を含む導波管構造内に挟まれ得る。いくつかの態様において、能動領域は、示されるように多量子井戸(MQW)を含み得る。他の態様において、能動領域は、p-n接合の出払い領域を含み得る。薄い(10〜20nm)AlGaN電子ブロッキング層218は、再結合および電子放出が生じる能動領域中の電子閉じ込めを向上するために、能動領域216とp型層220の間に形成され得る。n型214とp型220層の間の層およびn型214とp型220層を含む層は、デバイスの能動接合を含み得る。約1×1018cm-3から約5×1018cm-3まで変化するドーピングレベルを有するn型GaN層210は、隣接する層の電気化学的エッチングの間およびデバイスの操作の間に、隣接するn+型層212を横切って分散する電流を提供し得る。いくつかの場合、層210は含まれないことがある。n+-GaN層212は、約5×1018cm-3から約2×1020cm-3以上まで高度にドーピングされ得るので、電気化学的エッチングにより望ましいナノ多孔質構造が生成される。いくつかの実施において、n+-GaN層212のドーピング濃度は、n-GaN層210のドーピング濃度よりも少なくとも5倍高いので、電気化学的エッチングは、n+-GaN層を選択的にエッチングし、n-GaN層は感知できるほどにはエッチングされない。ゲルマニウム(Ge)および/またはケイ素(Si)は、n型層のn型ドーパントとして使用され得る。n+-GaN層212の厚さは、約200nm〜約500nmであり得る。
【0025】
n+-GaN層を電気化学的にエッチングするために、図2Aに示されるエピタキシャル層にトレンチをエッチングしてもよいか、またはメサを形成してもよい。トレンチは、レーザー空洞についてのストリップまたは棒状構造を画定し得、n+-GaN層212の側壁を暴露し得る。いくつかの態様において、トレンチのエッチングは、y方向の光学モードについて側方閉じ込めを画定し得る。他の態様において、y方向の光学モードについての側方閉じ込めを画定するためのリブ構造がスタックの上面に形成され得る。
【0026】
トレンチを形成するために、プラズマ化学気相成長法(PECVD)または任意の他の適切なプロセスにより酸化物層(例えば、SiO2)をスタック上に堆積させ得る。いくつかの態様において、他の硬質マスク層材料を使用し得る。標準的なフォトリトグラフィーおよびウエットエッチングまたはドライエッチングを使用して、レーザー空洞のパターンを酸化物層に転写し、図2Bに示されるように硬質マスク230を作製し得る。次いで、GaNについての任意の適切なドライエッチングプロセスを使用して、マスクパターンをスタックに転写し得る。例えば、Cl系の誘導結合プラズマ発光分析(ICP)エッチングプロセスを使用して、III窒化物層を選択的に除去してトレンチ235を形成し得る。ドライエッチングは、エッチング深さがn+-GaNクラッド層212まで広がり、相の一部を暴露するように時限式であり得る。続いて、n+-GaNクラッド層212の暴露された部分が、電気化学的エッチングプロセスによりエッチングされ得る。いくつかの態様において、トレンチ235はn+-GaNクラッド層212の少なくとも底まで広がり得る。一方、ドライエッチングの深さはn型層210を越えてまでは広がり得ないので、エッチング電流は、電気化学的エッチングの際に層210によりウエハー全体に分散され得る。エッチングされた構造は、図2Cに示されるように明らかであり得る。
【0027】
トレンチ235を形成した後、電気化学的(EC)エッチングを行って、図2Dに示されるようにナノ多孔質n+-GaNクラッド層213を形成し得る。電気化学的エッチングの実験設定は、参照により本明細書中に援用される2012年7月26日に出願された米国特許出願第13/559199号に記載される設定を含み得る。ECエッチングは、光電気化学的(EPC)エッチングの場合のように、GaNをエッチングするための光放射を必要としない。本態様によると、ECエッチングは、電解液として高度に濃縮された硝酸(HNO3)を室温で使用することを含み得る。硝酸の濃度は約15M〜18Mであり得る。いくつかの態様において、硝酸濃度は約16.7Mまたは70重量%である。ECエッチングバイアスは、1ボルト〜10ボルトであり得る。ECエッチングは、n+-GaNクラッド層212中に側方に進行し得、図2Dに示されるように層が多孔質層213になるまで続き得る。ECエッチングは、時限式のエッチングであり得る。マスク230は、ウエハーからはがされ得る。
【0028】
他の態様において、他の電解液を使用して、n+-GaNクラッド層212を多孔化し得る。他の電解液としては、限定されないが、濃フッ化水素酸、塩酸、硫酸およびシュウ酸が挙げられる。腐食液濃度、GaNドーピングおよびバイアス電圧は、これらの腐食液について異なり得る。
【0029】
図3は、電気化学的エッチングの後の多孔化されたn+-GaNクラッド層213を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。暗いスポットとして孔が見られ、層中に均一に分布する。n+-GaN層212のドーピングレベル、腐食液濃度およびエッチングバイアスを制御することにより、ECエッチングは制御可能にナノスケールの孔を生じ得る(例えば、いくつかの態様において約10nm〜約100nmおよびいくつかの場合において約10nm〜約40nmの平均直径値を有する孔)。孔の直径が媒体中の光の波長よりも明らかに短く均一に分散される場合、孔は、散乱部位として作用するよりもむしろ媒体の有効屈折率を変化し得る。青色および緑色波長のレーザーダイオードについて、多孔質クラッド層中約40nm未満の平均孔径を有することが望ましくあり得る。さらに、ドーピングレベル、腐食液濃度、エッチングバイアスおよびエッチング時間を制御することで、ECエッチングにより構造の所望の有孔率を制御可能に生じ得る。用語「有孔率(porosity)」は、層中の空隙または孔の容積の、多孔質層が占める総体積に対する比をいうために使用される。
【0030】
いくつかの態様において、透明な導電性酸化物(TCO)を堆積させて、図4に示されるようなp型クラッド層410を形成し得る。TCOは、p型AlGaNよりも低い抵抗性を有する酸化インジウムスズ(ITO)を含み得る。パッシベーション層(例えば、SiO2などの絶縁性酸化物)およびコンタクトパッド420、422は、従来の半導体製造方法を使用して追加され得る。いくつかの態様において、パッシベーション層は、コンタクトパッドを形成する前に堆積され得、パッシベーション層中にバイアを開けてレーザーダイオードとの電気的接触を作製し得る。
【0031】
多孔質GaNおよびTCOの使用により、III窒化物レーザーダイオード構造中のAlGaNクラッド層の必要性を排除し得る。多孔質GaNクラッド層は、上述のように、AlGaNクラッド層に対していくつかの利点を有し得る。例えば、多孔質GaN層は、AlGaNクラッドを使用した際のわずか約0.02〜0.08のΔnと比較して、レーザーダイオードの能動領域216と多孔質クラッド層の間の高いインデックスコントラストを可能にし得る。いくつかの態様において、インデックスコントラストは約0.5よりも高くあり得る(Δn≧0.5)。いくつかの実施において、Δn≧0.2である。いくつかの実施において、Δn≧0.1である。さらに、多孔化されたn+-GaN層は、隣接する層と格子整合されるので、層のエピタキシャルな成長の際に、構造中に大きな材料応力は蓄積しない。さらに、多孔質n+-GaN層は、従来のAlGaNクラッド層よりも低い抵抗性を発揮し得る。
【0032】
分析的計算を行って、光学閉じ込めに対するクラッド層多孔率の効果を試験し、AlGaNクラッド層を有する従来のデバイスに対するモード閉じ込めを比較した。これらの計算による数値結果を図5図6Aおよび図6Bにプロットする。計算のために、レーザーダイオードの構造は、厚さ約107nmの2つの半導体層214、220および厚さ約10nmの能動領域216を含む。クラッド層はそれぞれ約400nmの厚さである。4つの異なるクラッド層:AlGaN(曲線510)、20%多孔質GaN(曲線512)、40%多孔質GaN(曲線514)および60%多孔質GaN(曲線516)について計算を行う。AlGaNから20%多孔質GaNクラッド層への変化は、モード閉じ込め係数Γ1Dを約2倍増加する。多孔率が増加するにつれて、光学モードはより密に導波管構造内に閉じ込められるようになる。
【0033】
抵抗性に関して、発明者らは測定を通じて、ナノ多孔質GaNの抵抗性は、多孔率に単調に比例することを見出した。ECエッチングの後、多孔質層213は、依然、約1×1018cm-3〜約1×1019cm-3のドーピング濃度を有し得る。n+-GaNクラッド層は最初に、多孔化の前に5×1019cm-3よりも高くドーピングされ得るので、40%の多孔率でもナノ多孔質層のキャリア濃度レベルは2×1018cm-3より高いままである。かかる高いキャリア濃度により、(従来のn-AlGaNクラッドと比較して)多孔質GaNクラッドについて無視できる抵抗性が生じ、一方、インデックスコントラストΔnは、0.5ほども高くに調整され得る。いくつかの実施において、n+-GaNクラッド層213の多孔率は、ECエッチングにより、約30%〜約60%に制御される。
【0034】
n-GaN半導体層214と多孔質クラッド層213の間に高いインデックスコントラストを有するので、レーザーダイオードにおいて対称なモードプロフィールおよび向上した光学性能を達成するためにp型クラッド層として低いインデックス材料を含むことが望ましい。いくつかの態様によると、GaNに対して高いインデックスコントラスト(Δn約0.5)を有するITOなどの透明な導電性酸化物は、高度に抵抗性で低いΔn AlGaN p型クラッドを置き換えるために使用され得る。ITOは、GaNレーザーダイオードのクラッド層として提案され、使用されているが、多孔質底面クラッド層を有さないその使用は、図6Aに示されるような高度に非対称な光学モード610を生じ得る。この構造において、光学モードの実質的な部分は、光学利得を経験しないレーザーダイオードの中心導波管領域の外側に漏れる。また、厚いp-GaN層220は、光学モードの非対称性の低減を補助するために隣接するMQW能動領域を依然として必要とする。
【0035】
図6Bには、ITO p面クラッド層およびナノ多孔質GaN n面クラッド層についての向上された光学モード閉じ込めを示す。GaN層の多孔率は約40%である。グラフは、能動領域の中心にあるほぼ対称なモードプロフィール622を示す。閉じ込め係数Γ1Dは、図6Aに示される場合について約2.22%から約6.06%に増加する。参照のために、屈折率値は、2つのグラフ中の区切られた線620、622としてプロットされる。
【0036】
数値のシミュレーションも行って、インデックスコントラストおよび導波管の厚さを変化させた閉じ込め係数Γ1Dをプロットした。結果を図7の三次元プロットに示す。プロットは、閉じ込め係数の異なる値についてのイソコンター(iso-contour)を含む。点線は、任意の所定のインデックスコントラストについての導波管の厚さの好ましい値を示す。0.05のインデックスコントラストで、好ましい導波管厚さは、わずか約3%の閉じ込め係数Γ1Dを生じる。参照のために、異なるΔn値および導波管厚さを有する従来のレーザーダイオード構造は、グラフの底付近に十字記号がつけられる。これらの従来のデバイスについての閉じ込め係数は、全て2%〜4%の範囲にある。
【0037】
いくつかの態様において、ナノ多孔質の底面または基板面クラッド層および導電性酸化物上面クラッド層の使用により、レーザーダイオード能動領域の両面において0.5までのインデックスコントラストが可能になり得、9%より高い1次元閉じ込め係数が生じ得る。グラフの左上付近の十字は、ナノ多孔質GaNおよび導電性酸化物クラッド層を使用する異なるデバイス構造についての閉じ込め係数値を示す。これらの構造について、閉じ込め係数は、2倍より大きく増加した。より良いモード閉じ込めに加えて、好ましい導波管厚さも2倍より大きく低減する。抵抗性p型GaN導波管層について顕著に、導波管厚さの低減は、レーザーダイオードの直列抵抗を低下させ、さらにデバイスの性能を向上する。
【0038】
ECエッチングのさらなる詳細を図8A〜8Eに示す。図8Aおよび図8Bのグラフについて、電解液として濃硝酸(15M〜17M)を使用する。エッチングは、室温および定電位(一定電圧)バイアス下で行う。酸性電解液に浸漬したn+型GaNサンプルに正のアノードバイアスをかける場合、n+-GaNは、表面半転層でホールにより酸化され得る。続いて表面酸化物層が電解液に溶解される。適用されるバイアスおよび/またはドーピング濃度が低い場合、化学反応は起こらず、n+-GaNはエッチングされないままである。エッチングされない領域810をグラフの左下に示す。適用されるバイアスおよび/またはドーピング濃度が上がるにつれて、特定の局所ホットスポットへのホールの注入により、静電破壊が起こる。これによりナノ多孔質構造の形成が生じ、グラフの曲線の中心のナノ多孔質領域820で示される。適用されるバイアスおよび/またはドーピング濃度がさらに高い場合、エレクトロポリシング(完全なエッチング)が起こり、グラフの右上の領域830で示される。
【0039】
ナノ多孔質領域820内で、発明者らは、サンプル導電性およびアノードバイアスにより多孔形態を制御し得ることを見出した。より高いドーピングレベルにより、高い曲率およびより小さいメソ多孔(meso-pore)の形成が容易になり、それにより多孔化の閾値バイアスが低減する。多孔形態の調整可能性を図8Bおよび図8C〜8Eに示す。n+-GaNクラッド層のドーピング濃度を約1×1020cm-3から約1×1019cm-3に変化させ、ECエッチングバイアスを約1ボルト〜約12ボルトで変化させることにより、生じる多孔形態は、微小多孔(microporous)(平均孔径d、約10nm、図8C)からメソ多孔(d、約30nm、図8D)およびマクロ多孔(macroporous)(d、約50nm、図8E)に変化し得る。さらに、所定のドーピング濃度について、図8Aのナノ多孔領域820に輪郭線で示されるように、クラッド層のパーセント多孔率を変化させるためにECバイアスを調整し得る。
【0040】
上述の態様は電気的にポンピングされたレーザーダイオードについて言及されるが、多孔質クラッド層の形成および使用は、光学的にポンピングされた端面発光半導体レーザーまたは光学増幅器に拡張され得る。光学的にポンピングされたデバイスは同様の方法で形成され得るが、上部p型GaN層220は、図2Aを参照すると第2のn型GaN層214で置き換えられ得る。次いでデバイスを別のレーザーまたは適切な光源でポンピングして、MQW能動領域216中で反転分布を生じ得る。
【0041】
図9は、多孔質クラッド層を有し、3つの異なる閉じ込め係数を有する光学的にポンピングされた端面発光半導体レーザーの誘導放出を示す。レーザーからの一体化された出力強度を、レーザーに送達される光学ポンプパワー密度の関数としてプロットする。3つのレーザーについて、曲線は異なる閾値挙動を示す。増加した閉じ込め係数について閾値は低下する。
【0042】
ナノ多孔質GaNクラッド層を使用して、材料応力およびAlGaNクラッド層に関連する抵抗性の問題なしに、端面発光III窒化物ダイオードレーザー中のクラッド層について高いインデックスコントラストを得ることができる。ナノ多孔質GaNクラッド層は、成長プロセスを大きく変化させることなく、有機金属エピタキシャル成長条件を使用して成長する層から形成され得、標準的なIII窒化物エピタキシャル成長系において形成され得る。底面クラッド層の多孔化および上面TCOクラッド層の堆積はエピタキシー後に行い得るので、これらの行為は余分なエピタキシャル拘束(epitaxial constraint)を誘導せずに、エピタキシャルな層の欠陥発生にも寄与しない。いくつかの実施において、作製工程は、既存のチップ製造施設に適用され得る従来のIII窒化物デバイスプロセスを含み得る。例えば、多孔質III窒化物クラッド層を形成するための電気化学的エッチングは、費用がかからずに環境にやさしい技術であり得る。これは既存のチップ製造施設において行われ得、大量生産に適用可能である。
【0043】
数値および範囲は、およその値または正確な値で明細書および特許請求の範囲に示され得る。例えばいくつかの場合、用語「約(about)」、「約(approximately)」および「実質的に(substantially)」は、値に関して使用され得る。かかる参照は、参照される値、ならびにその値のプラスおよびマイナスの妥当な変動を包含することを意図する。例えば、句「約10〜約20」は、いくつかの態様において「正確に10〜正確に20」およびいくつかの態様において「10±δ1〜20±δ2」を意味することを意図する。値についての変動δ1、δ2の量は、いくつかの態様において値の5%未満、いくつかの態様において値の10%未満、およびさらにいくつかの態様において値の20%未満であり得る。値の大きな範囲、例えば二桁以上の大きさを含む範囲が示される態様において、値についての変動δ1、δ2の量は50%であり得る。例えば、操作可能な範囲が2から200に広がる場合、「約80」は40〜120の値を包含し得る。
【0044】
本明細書に記載される技術は、少なくともいくつかの行為が記載されている方法として実現され得る。方法の一部として実施される行為は、任意の適切な方法で順序づけられ得る。したがって、例示態様において連続的な行為として記載されてはいるが、行為が記載されるものと異なる順序で実施され、いくつかの行為を同時に実施することを含み得る態様が企図され得る。さらに、方法は、いくつかの態様においては記載されるものよりも多くの行為を含み得、他の態様においては記載されるものよりも少ない行為を含み得る。
【0045】
本発明の少なくとも1つの例示態様はこのように記載されるが、種々の改変、変更および向上は当業者には容易であろう。かかる改変、変更および向上は本発明の精神および範囲内にあることが意図される。したがって、前述の記載は例示のみのためのものであり、限定を意図しない。本発明は、以下の特許請求の範囲およびその同等物に規定されるようにのみ限定される。
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]基板上に形成されレーザービームの端面発光のために整列される能動領域、および該基板と該能動領域の間に形成される多孔質クラッド層を含む、半導体レーザーダイオード。
[2]能動領域についての第1の屈折率値と多孔質クラッド層についての第2の屈折率値の差が0.1より大きい、[1]記載の半導体レーザーダイオード。
[3]該多孔質クラッド層がnドープトGaNを含む、[1]記載の半導体レーザーダイオード。
[4]該多孔質クラッド層のドーピング密度が1×1018cm-3〜1×1019cm-3である、[3]記載の半導体レーザーダイオード。
[5]1×1018cm-3〜5×1018cm-3のドーピングレベルを有し、該多孔質クラッド層と該基板の間に配置されるn型GaN層をさらに含む、[4]記載の半導体レーザーダイオード。
[6]該多孔質クラッド層の多孔率が30%〜60%である、[1]記載の半導体レーザーダイオード。
[7]該多孔質クラッド層の平均孔径が10nm〜100nmである、[6]記載の半導体レーザーダイオード。
[8]該多孔質クラッド層の厚さが200nm〜500nmである、[1]記載の半導体レーザーダイオード。
[9]該能動領域が多量子井戸を含む、[1]〜[8]いずれか記載の半導体レーザーダイオード。
[10]多孔質クラッド層の反対にある能動領域の面上に形成される導電性酸化物クラッド層をさらに含む、[1]〜[8]いずれか記載の半導体レーザーダイオード。
[11]4%〜10%の一次元閉じ込め係数Γ1Dを有する、[10]記載の半導体レーザーダイオード。
[12]該導電性酸化物クラッド層が酸化インジウムスズを含む、[10]記載の半導体レーザーダイオード。
[13]照明の光源として一体化される、[1]〜[11]いずれか記載の半導体レーザーダイオード。
[14]半導体レーザーダイオードを作製するための方法であって、該方法が、
基板上にn+ドープトGaN層を形成する工程、
該n+ドープトGaN層に隣接する端面発光半導体レーザーダイオードのための能動接合を形成する工程、
能動接合を通るトレンチをエッチングして、n+ドープトGaN層の表面を暴露させる工程、および
続いて、n+ドープトGaN層をウエットエッチングして、n+ドープトGaN層を多孔質クラッド層に変換する工程
を含む、方法。
[15]該能動接合に隣接する導電性酸化物クラッド層を形成する工程をさらに含む、[14]記載の方法。
[16]該n+ドープトGaN層に隣接するn型電流分散層を形成する工程をさらに含み、n型電流分散層のドーピング濃度が1×1018cm-3〜5×1018cm-3である、[14]記載の方法。
[17]能動接合を形成する工程が、n型GaN、多量子井戸およびp型GaNをエピタキシーにより堆積させる工程を含む、[14]記載の方法。
[18]能動接合を形成した後にウエットエッチングがなされる、[14]または[17]記載の方法。
[19]ウエットエッチングが、n+ドープトGaN層を側方に多孔化する電気化学的エッチングを含み、光増幅エッチングを必要としない、[14]〜[17]いずれか記載の方法。
[20]ウエットエッチングが、n+ドープトGaN層を多孔化するための電解液として硝酸を使用する、[19]記載の方法。
[21]ウエットエッチングが、n+ドープトGaN層を多孔化するための電解液としてフッ化水素酸を含む[19]記載の方法。
[22]n+ドープトGaN層が、5×1018cm-3〜2×1020cm-3のドーピング濃度を有する、[14]〜[16]いずれか記載の方法。
図1
図2A
図2B-D】
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B-E】
図9