特許第6961260号(P6961260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961260
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】液浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B04C 5/04 20060101AFI20211025BHJP
   B04C 5/12 20060101ALI20211025BHJP
   B04C 5/185 20060101ALI20211025BHJP
   C02F 1/38 20060101ALI20211025BHJP
   B01D 21/26 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B04C5/04
   B04C5/12 A
   B04C5/185
   C02F1/38
   B01D21/26
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-26799(P2020-26799)
(22)【出願日】2020年2月20日
(65)【公開番号】特開2021-130090(P2021-130090A)
(43)【公開日】2021年9月9日
【審査請求日】2020年3月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598075756
【氏名又は名称】株式会社浪速工作所
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】谷本 和考
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−136263(JP,A)
【文献】 国際公開第93/001877(WO,A1)
【文献】 特開2004−066160(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/159559(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/152890(WO,A1)
【文献】 特開平07−194994(JP,A)
【文献】 特開平05−312438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C1/00−11/00
C02F1/38
B01D24/00−35/05
B01D35/10−37/04
B01D21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化対象液を浄化する液浄化装置であって、前記浄化対象液を旋回させることにより、前記浄化対象液に含まれる異物微粒子を分離する旋回分離槽を備え、
前記旋回分離槽は、
下方に向かうほど径が小さくなる縮径部を含み、上部側面から注入される前記浄化対象液を旋回させることにより、前記異物微粒子を分離する旋回室と、
前記旋回室の前記上部側面に開口する注液口を先端に有し、当該注液口に向かって前記浄化対象液を導入することにより、前記注液口から前記浄化対象液を前記旋回室に注入する液導入路と、
前記旋回室の上端中央部に開口し、前記浄化対象液が流出する出液口と、
前記旋回室の下端に開口し、前記異物微粒子を排出する異物排出口と、を有し、
前記液導入路は、前記注液口に向かうほど、狭くなりかつ前記上部側面に沿うように断面が扁平となり、
前記液導入路は、前記注液口に向かうほど、前記断面の輪郭線のうち前記旋回室の中心軸に近い側の中央部が、前記輪郭線の内側に向かって湾曲することにより、前記断面が異形となっている、液浄化装置。
【請求項2】
前記液導入路は、前記旋回室の前記上部側面の仮想接平面に対し前記旋回室の径方向内側に位置するとともに、前記仮想接平面に接している、請求項1に記載の液浄化装置。
【請求項3】
前記縮径部の側面の傾斜角が、前記旋回室の中心軸に対して5°〜15°の範囲である、請求項1又は2に記載の液浄化装置。
【請求項4】
前記異物微粒子を沈殿させる沈殿槽をさらに備え、
前記沈殿槽は、
前記旋回分離槽の前記異物排出口に連通し、かつ下方に延びる中空部と、
前記中空部の下端に連通し、当該中空部よりも拡径した拡径室と、を有し、
前記拡径室の底面は、椀状に下方に湾曲している、請求項1から3のいずれかに記載の液浄化装置。
【請求項5】
前記浄化対象液を濾過する濾過槽をさらに備え、
前記濾過槽は、
前記出液口に連通し、前記旋回室の上方に位置する濾過室と、
前記濾過室の底面に立設され、前記濾過室内に位置する筒状のフィルタと、
前記濾過室の底面のうち、前記フィルタの外側の空間に面する部位に開口し、前記旋回室から前記出液口を通じて流出した前記浄化対象液が前記濾過室に流入する液流入口と、
前記フィルタの内側に連通し、前記フィルタを外側から内側へ通過した前記浄化対象液を、前記液浄化装置の外部へ流出させる液流出路と、を有し、
前記液浄化装置は、前記旋回分離槽の前記出液口と前記濾過槽の前記液流入口とに連通する流路を有する流路部材を、さらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の液浄化装置。
【請求項6】
浄化対象液を浄化する液浄化装置であって、
前記浄化対象液を旋回させることにより、前記浄化対象液に含まれる異物微粒子を分離する旋回分離槽と、
前記浄化対象液を濾過する濾過槽と、を備え、
前記旋回分離槽は、
下方に向かうほど径が小さくなる縮径部を含み、上部側面から注入される前記浄化対象液を旋回させることにより、前記浄化対象液に含まれる前記異物微粒子を分離する旋回室と、
前記旋回室の前記上部側面に開口する注液口を先端に有し、当該注液口に向かって前記浄化対象液を導入することにより、前記注液口から前記浄化対象液を前記旋回室に注入する液導入路と、
前記旋回室の上端中央部に開口し、前記浄化対象液が流出する出液口と、
前記旋回室の下端に開口し、前記異物微粒子を排出する異物排出口と、を有し、
前記濾過槽は、
前記出液口に連通し、前記旋回室の上方に位置する濾過室と、
前記濾過室の底面中央に立設され、前記濾過室内に位置するフィルタ支持体と、
前記フィルタ支持体に下部を支持され、前記濾過室内に位置し、下端が開放された筒状のフィルタと、
前記濾過室の底面のうち、前記フィルタ支持体の外側に開口することにより、前記フィルタの外側の空間に連通し、前記旋回室から前記出液口を通じて流出した前記浄化対象液が前記濾過室に流入する複数の液流入口と、
前記フィルタの内側に連通し、前記フィルタ支持体の側壁を通過し、さらに前記濾過槽の側壁を通過することにより、前記フィルタを外側から内側へ通過した前記浄化対象液を、前記液浄化装置の外部へ流出させる液流出路と、を有し、
前記液浄化装置は、前記旋回室と前記濾過室とを互いに仕切る仕切部材をさらに備え、当該仕切部材は、その中央部に、前記旋回分離槽の前記出液口から前記濾過槽の前記複数の液流入口に分岐する分岐路を有する液浄化装置。
【請求項7】
前記濾過槽は、前記旋回分離槽に支持され、
前記濾過槽は、前記濾過室の上端を着脱自在に覆う蓋を、さらに有している、請求項6に記載の液浄化装置。
【請求項8】
前記濾過槽は、前記旋回分離槽に着脱自在に取り付けられる、請求項5、6又は7に記載の液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回分離槽を有する液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浄化対象液を旋回させることにより、浄化対象液に含まれる異物微粒子を分離する旋回分離槽を有する液浄化装置として、特許文献1、2に開示される装置が知られる。特許文献1に開示される従来装置は、旋回分離槽の側壁内面に螺旋状の溝を設けたもので、構造が複雑であるため、製作できるメーカーが無く、実用化には至っていない。これに対して、特許文献2に開示される装置は、より実用的な構成となっている。
【0003】
しかしながら、特許文献2に記載される実施例では、浄化対象液に含まれる異物微粒子の除去率は90%程度に止まっている(同文献の図6参照)。また、商品として市場にて入手可能な従来装置について、本願出願人の試験方法に基づいて試験を行ったところ、異物微粒子の除去率は高くても85%程度であった。
【0004】
このように、旋回分離槽を有する従来の液浄化装置においては、液浄化効果に、なお向上の余地があるものと思われた。なお、液浄化効果のレベルについては不明ながら、同様に旋回分離槽を有する液浄化装置として、ほかに特許文献3,4,5に開示される装置が知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6129389号公報
【特許文献2】特許第4714091号公報
【特許文献3】特開2008-284464号公報
【特許文献4】特許第5896681号公報
【特許文献5】特許第4591856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、液浄化効果を高める液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、浄化対象液を浄化する液浄化装置であって、前記浄化対象液を旋回させることにより、前記浄化対象液に含まれる異物微粒子を分離する旋回分離槽を備えている。前記旋回分離槽は、下方に向かうほど径が小さくなる縮径部を含み、上部側面から注入される前記浄化対象液を旋回させることにより、前記異物微粒子を分離する旋回室と、前記旋回室の前記上部側面に開口する注液口を先端に有し、当該注液口に向かって前記浄化対象液を導入することにより、前記注液口から前記浄化対象液を前記旋回室に注入する液導入路と、前記旋回室の上端中央部に開口し、前記浄化対象液が流出する出液口と、前記旋回室の下端に開口し、前記異物微粒子を排出する異物排出口と、を有している。前記液導入路は、前記注液口に向かうほど、狭くなりかつ前記上部側面に沿うように断面が扁平となる。
【0008】
この構成によれば、浄化対象液に含まれる異物微粒子が、旋回分離槽によって分離される。すなわち、液導入路を通じて旋回室に注入された浄化対象液が、縮径部を含む旋回室を下方に向かいつつ旋回することにより、浄化対象液に含まれる異物微粒子が、旋回室周面(すなわち旋回室側面)付近に分離される。異物微粒子が分離された浄化対象液は、出液口を通じて旋回室から出て行く。分離された異物微粒子は、異物排出口を通じて旋回室から排出される。
【0009】
液導入路が、注液口に向かうほど狭くなるので、旋回室に注入される浄化対象液に勢いが加わるとともに、注入された浄化対象液が、注入方向から逸れて広がるのではなく、注入方向に収束しようとする。また、液導入路が、注液口に向かうほど、旋回室の上部側面に沿うように断面が扁平となるので、浄化対象液が旋回室の上部側面に角度をもって斜めに入射する。すなわち、浄化対象液に含まれる異物微粒子が、旋回室の上部側面に吹きつけられ、衝突するように、浄化対象液が注入される。また、液導入路が、注液口に向かうほど、旋回室の上部側面に沿うように断面が扁平となるので、注入された浄化対象液に含まれる異物微粒子は、旋回室の側面により近い範囲内に止まろうとする。それにより、浄化対象液から異物微粒子を、旋回室周面付近に分離する効果が高められる。なお、本開示においては、浄化対象液が浄化された後の液も、便宜上、同じく「浄化対象液」と記載する。また、本開示において、「上」、「下」という方向は、液浄化装置の通常の姿勢を基準にしたもので、通常の姿勢とは異なる姿勢での使用を排除する趣旨ではない。
【0010】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様による液浄化装置であって、前記液導入路は、前記旋回室の前記上部側面の仮想接平面に対し前記旋回室の径方向内側に位置するとともに、前記仮想接平面に接している。
この構成によれば、液導入路が、旋回室の上部側面の仮想接平面に対し旋回室の径方向内側に位置し、かつ仮想接平面に接しているので、浄化対象液が、旋回室の側面に接するように旋回室に注入される。このため、旋回室に注入される浄化対象液に、乱流が生じ難い。乱流が生じ難いために、注入された浄化対象液に含まれる異物微粒子は、旋回室の側面から離れ難くなる。それにより、浄化対象液から異物微粒子を、旋回室周面付近に分離する効果が、さらに高められる。
【0011】
本発明のうち第3の態様によるものは、第1又は第2の態様による液浄化装置であって、前記液導入路は、前記注液口に向かうほど、前記断面の輪郭線のうち前記旋回室の中心軸に近い側の中央部が、前記輪郭線の内側に向かって湾曲することにより、前記断面が異形となっている。
この構成によれば、液導入路が、注液口に向かうほど扁平となる断面のうち、中央部の幅が狭く、その両端部の幅が広くなるので、分離能力を保持しつつ、導入される浄化対象液の抵抗が低くなる。このため、分離能力を保ちつつ、導入される浄化対象液の圧力を低くし、流量を高めることができる。
【0012】
本発明のうち第4の態様によるものは、第1から第3のいずれかの態様による液浄化装置であって、前記縮径部の側面の傾斜角が、前記旋回室の中心軸に対して5°〜15°の範囲である。
この構成によれば、縮径部の側面の傾斜角が、実験に基づいて最適化されているので、浄化対象液から異物微粒子を分離する効果が、さらに高められる。
【0013】
本発明のうち第5の態様によるものは、第1から第4のいずれかの態様による液浄化装置であって、前記異物微粒子を沈殿させる沈殿槽をさらに備えている。前記沈殿槽は、前記旋回分離槽の前記異物排出口に連通し、かつ下方に延びる中空部と、前記中空部の下端に連通し、当該中空部よりも拡径した拡径室と、を有している。さらに、前記拡径室の底面は、椀状に下方に湾曲している。
【0014】
この構成によれば、旋回分離槽により分離された異物微粒子が、沈殿槽により沈殿する。すなわち、旋回分離槽の異物排出口に連通し、かつ下方に延びる中空部によって、旋回室における浄化対象液の旋回流を妨げる抵抗力を抑えつつ、異物微粒子の沈殿が促進される。中空部の下端に連通し、この中空部よりも拡径した拡径室により、抵抗力を抑えつつ、中空部を短くすることができる。それにより、液浄化装置を縦方向に、よりコンパクトにすることができる。さらに、拡径室の底面が、椀状に下方に湾曲しているので、拡径室内での浄化対象液の渦流への抵抗力が低められる。それにより、旋回室における浄化対象液の旋回流への抵抗力が弱まるので、浄化対象液から異物微粒子を分離する効果が、さらに高められる。
【0015】
本発明のうち第6の態様によるものは、第1から第5のいずれかの態様による液浄化装置であって、前記浄化対象液を濾過する濾過槽をさらに備えている。前記濾過槽は、前記出液口に連通し、前記旋回室の上方に位置する濾過室と、前記濾過室の底面に立設され、前記濾過室内に位置する筒状のフィルタと、前記濾過室の底面のうち、前記フィルタの外側の空間に面する部位に開口し、前記旋回室から前記出液口を通じて流出した前記浄化対象液が前記濾過室に流入する液流入口と、前記フィルタの内側に連通し、前記フィルタを外側から内側へ通過した前記浄化対象液を、前記液浄化装置の外部へ流出させる液流出路と、を有している。また、前記液浄化装置は、前記旋回分離槽の前記出液口と前記濾過槽の前記液流入口とに連通する流路を有する流路部材を、さらに備えている。
【0016】
この構成によれば、旋回分離槽によって異物微粒子が分離された浄化対象液は、旋回室の出液口から液流入口を通じて濾過室へ入り、濾過槽のフィルタによって、さらに浄化される。すなわち、旋回分離槽によっても分離されないほどに微小な異物微粒子が、濾過槽により除去される。また、濾過槽の濾過室は旋回室の上方に位置するので、濾過槽のために要する液浄化装置の設置面積が節減される。濾過室の中にフィルタが設置されるので、旋回室において旋回する浄化対象液の流れが、フィルタにより妨げられない。このため、浄化対象液から異物微粒子を分離する効果が、さらに高められる。また、旋回室から出液口を通じて流出した浄化対象液が、流路部材の流路を通過することにより、濾過室内のフィルタの外側の空間に開口する液流入口を通じて、濾過室に流入するので、流入した浄化対象液は、フィルタの外側から内側に流れ込む。このため、フィルタの目詰まりの進み方が緩やかとなる。すなわち、より長い期間にわたって、液浄化装置の浄化効果が維持される。フィルタの内側に流れ込んだ浄化対象液は、液流出路を通じて、液浄化装置の外部に取り出される。
【0017】
本発明のうち第7の態様によるものは、浄化対象液を浄化する液浄化装置であって、前記浄化対象液を旋回させることにより、前記浄化対象液に含まれる異物微粒子を分離する旋回分離槽と、前記異物微粒子を沈殿させる沈殿槽と、を備えている。前記旋回分離槽は、下方に向かうほど径が小さくなる縮径部を含み、上部側面から注入される前記浄化対象液を旋回させることにより、前記浄化対象液に含まれる前記異物微粒子を分離する旋回室と、前記旋回室の前記上部側面に開口する注液口を先端に有し、当該注液口に向かって前記浄化対象液を導入することにより、前記注液口から前記浄化対象液を前記旋回室に注入する液導入路と、前記旋回室の上端中央部に開口し、前記浄化対象液が流出する出液口と、前記旋回室の下端に開口し、前記異物微粒子を排出する異物排出口と、を有している。前記沈殿槽は、前記旋回分離槽の前記異物排出口に連通し、かつ下方に延びる中空部と、前記中空部の下端に連通し、当該中空部よりも拡径した拡径室と、を有している。前記拡径室の底面は、椀状に下方に湾曲している。
【0018】
この構成によれば、浄化対象液に含まれる異物微粒子が、旋回分離槽によって分離される。すなわち、液導入路を通じて旋回室に注入された浄化対象液が、縮径部を含む旋回室を下方に向かいつつ旋回することにより、浄化対象液に含まれる異物微粒子が、旋回室周面付近に分離される。異物微粒子が分離された浄化対象液は、出液口を通じて旋回室から出て行く。分離された異物微粒子は、異物排出口を通じて旋回室から排出される。
【0019】
分離された異物微粒子は、沈殿槽により沈殿する。すなわち、旋回分離槽の異物排出口に連通し、かつ下方に延びる中空部によって、旋回室における浄化対象液の旋回流を妨げる抵抗力を抑えつつ、異物微粒子の沈殿が促進される。中空部の下端に連通し、この中空部よりも拡径した拡径室により、抵抗力を抑えつつ、中空部を短くすることができる。それにより、液浄化装置を縦方向に、よりコンパクトにすることができる。さらに、拡径室の底面が、椀状に下方に湾曲しているので、拡径室内での浄化対象液の渦流への抵抗力が低められる。それにより、旋回室における浄化対象液の旋回流への抵抗力が弱まるので、浄化対象液から異物微粒子を分離する効果が、さらに高められる。
【0020】
本発明のうち第8の態様によるものは、浄化対象液を浄化する液浄化装置であって、前記浄化対象液を旋回させることにより、前記浄化対象液に含まれる異物微粒子を分離する旋回分離槽と、前記浄化対象液を濾過する濾過槽と、を備えている。前記旋回分離槽は、下方に向かうほど径が小さくなる縮径部を含み、上部側面から注入される前記浄化対象液を旋回させることにより、前記浄化対象液に含まれる前記異物微粒子を分離する旋回室と、前記旋回室の前記上部側面に開口する注液口を先端に有し、当該注液口に向かって前記浄化対象液を導入することにより、前記注液口から前記浄化対象液を前記旋回室に注入する液導入路と、前記旋回室の上端中央部に開口し、前記浄化対象液が流出する出液口と、前記旋回室の下端に開口し、前記異物微粒子を排出する異物排出口と、を有している。前記濾過槽は、前記出液口に連通し、前記旋回室の上方に位置する濾過室と、前記濾過室の底面に立設され、前記濾過室内に位置する筒状のフィルタと、前記濾過室の底面のうち、前記フィルタの外側の空間に面する部位に開口し、前記旋回室から前記出液口を通じて流出した前記浄化対象液が前記濾過室に流入する液流入口と、前記フィルタの内側に連通し、前記フィルタを外側から内側へ通過した前記浄化対象液を、前記液浄化装置の外部へ流出させる液流出路と、を有している。そして、前記液浄化装置は、前記旋回分離槽の前記出液口と前記濾過槽の前記液流入口とに連通する流路を有する流路部材を、さらに備えている。
【0021】
この構成によれば、浄化対象液に含まれる異物微粒子が、旋回分離槽によって分離される。すなわち、液導入路を通じて旋回室に注入された浄化対象液が、縮径部を含む旋回室を下方に向かいつつ旋回することにより、浄化対象液に含まれる異物微粒子が、旋回室周面付近に分離される。異物微粒子が分離された浄化対象液は、出液口を通じて旋回室から出て行く。分離された異物微粒子は、異物排出口を通じて旋回室から排出される。旋回分離槽によって異物微粒子が分離された浄化対象液は、旋回室の出液口から液流入口を通じて濾過室へ入り、濾過槽のフィルタによって、さらに浄化される。すなわち、旋回分離槽によっても分離されないほどに微小な異物微粒子が、濾過槽により除去される。
【0022】
濾過槽の濾過室は旋回室の上方に位置するので、濾過槽のために要する液浄化装置の設置面積が節減される。濾過室の中にフィルタが設置されるので、旋回室において旋回する浄化対象液の流れが、フィルタにより妨げられない。このため、浄化対象液から異物微粒子を分離する効果が、さらに高められる。また、旋回室から出液口を通じて流出した浄化対象液が、流路部材の流路を通過することにより、濾過室内のフィルタの外側の空間に開口する液流入口を通じて、濾過室に流入するので、流入した浄化対象液は、フィルタの外側から内側に流れ込む。このため、フィルタの目詰まりの進み方が緩やかとなる。すなわち、より長い期間にわたって、液浄化装置の浄化効果が維持される。フィルタの内側に流れ込んだ浄化対象液は、液流出路を通じて、液浄化装置の外部に取り出される。
【0023】
本発明のうち第9の態様によるものは、第6又は第8の態様による液浄化装置であって、前記濾過槽は、前記旋回分離槽に着脱自在に取り付けられている。
この構成によれば、液浄化装置のユーザは、濾過槽を旋回分離槽に装着して使用することも、濾過槽を除去して使用することも可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、液浄化効果を高める液浄化装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施の形態による液浄化装置の概略構成を例示する斜視図である。
図2図1に例示する液浄化装置の構成を例示する正面断面図である。
図3図1に例示する液浄化装置の旋回分離槽の内部空間を例示する斜視図である。
図4図1に例示する液浄化装置の旋回分離槽の内部空間を例示する平面図である。
図5図1に例示する液浄化装置の旋回分離槽と濾過槽との接続部を例示する斜視図である。
図6】本発明の別の実施の形態による液浄化装置の液導入路を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
初めに、本発明の一実施の形態による液浄化装置の全体の構成及び動作について説明する。図1は、本発明の一実施の形態による液浄化装置の概略構成を例示する斜視図である。図2は、同液浄化装置の構成を例示する正面断面図である。この液浄化装置101は、旋回分離槽1、沈殿槽3、及び濾過槽5を有している。旋回分離槽1は、浄化対象液を旋回させることにより、浄化対象液に含まれる異物微粒子を分離する。沈殿槽3は、旋回分離槽1の下に設置され、分離された異物微粒子を沈殿させる。濾過槽5は、旋回分離槽1の上に設置され、浄化対象液を濾過することにより、旋回による分離及び沈殿を免れるほどの小さい異物微粒子を除去する。
【0027】
旋回分離槽1は、旋回室7、液導入路9、出液口11、及び異物排出口13を有している。これらはいずれも、旋回分離槽1が規定する内部空間であり、互いに連通している。旋回室7は、他の部分よりも径の大きい円筒形の大径部15を、上部に有している。旋回室7は、さらに、大径部15の下端に連続するとともに、下方に向かうほど径が小さくなる縮径部17を、有している。図示の例では、縮径部17は、逆立ちした円錐台形を成している。縮径部17の上端の径は、大径部15の径と同一である。すなわち、縮径部17の側面は段差を有することなく大径部15の側面に連続する。
【0028】
液導入路9は、浄化対象液を旋回室7に注入するための流路である。液導入路9は、大径部15の側面に開口する注液口19を先端に有しており、この注液口19に向かって浄化対象液を導入することにより、浄化対象液を旋回室7に注入する。浄化対象液を供給する配管(図示略)を液導入路9に連結することにより、浄化対象液を旋回分離槽1に供給することができる。
【0029】
出液口11は、旋回室7の上端中央部に開口し、旋回することによって異物が分離された浄化対象液が流出する開口部である。異物排出口13は、旋回室7の下端に開口し、異物微粒子を排出する開口部である。
【0030】
液導入路9に供給された浄化対象液は、注液口19から、旋回室7の上部の大径部15に注入される。液導入路9が、大径部15の周面(すなわち側面)の仮想接平面に沿うように延びているので、注入された浄化対象液は、大径部15の周面に沿うように旋回する。浄化対象液は、さらに、旋回しつつ下方に向かう。
一般に、比重の異なる異物微粒子を含む浄化対象液を旋回させると、異物微粒子は自然に中心に集まる。異物微粒子が中心に集まるよりも早く、旋回室7の周面が中心に近づく程度に、縮径部17の傾斜角を大きく設定すると、旋回する異物微粒子は周面に接触し続け、周面に接触する浄化対象液の境界層に捕捉されたままとなる。境界層では周面からの抵抗により浄化対象液の流れが妨げられるので、異物微粒子は上昇しにくくそのまま沈殿する。気体のサイクロンでは、縮径部17の周面が傾斜することによって、気体が旋回しつつ下方に向かうのに伴い、回転の加速度が上昇する。これに対して、液体では加速度が上昇し難い。加速度がある程度は上昇したとしても、液体は気体に比べて粘性が高いので、異物微粒子は、遠心力の作用によって分離し難い。気体ではない浄化対象液では、異物微粒子を旋回室7の周面にぶつけながら、異物微粒子が中央に集まらないように、縮径部17の傾斜角をある程度大きく設定することにより、周面で異物微粒子を擦るようにし、異物微粒子への抵抗を上げることにより、異物微粒子を周面に接する境界層に止めることができる。
このようにして、浄化対象液に含まれ、浄化対象液とは比重の異なる異物微粒子が、中心軸21から遠く周面に近い領域に局在することとなる。逆に、中心軸21に近い領域には、異物微粒子が希薄となる。異物微粒子が希薄となった中心軸21付近の浄化対象液が、出液口11を通じて旋回分離槽1の外へ出て行く。出液口11を出た浄化対象液は、濾過槽5に入って行く。旋回によって分離された異物微粒子は、異物排出口13を通じて、沈殿槽3に入ってゆく。このようにして、旋回分離槽1では、浄化対象液が浄化される。
【0031】
沈殿槽3は、中空部23及び拡径室25を有している。これらはいずれも、沈殿槽3が規定する内部空間であり、互いに連通している。中空部23は、旋回分離槽1の異物排出口13に連通し、下方に延びている。図示の例では、異物排出口13及び中空部23の径は、縮径部17の下端の径と同一に設定されている。拡径室25は、中空部23の下端に連通し、中空部23よりも大きい径を有する。拡径室25の底面は、椀状に下方に湾曲している。拡径室25の底面中央部には、沈殿した異物微粒子を排出するための排出口27が開口している。排出口27には、異物微粒子を排出する排出管29が連結される。排出管29には、流路を開閉する弁(図示略)が設置される。液浄化装置101を使用して浄化対象液を浄化しているときには、通常において、この弁は閉塞される。
【0032】
濾過槽5は、濾過室31、液流入口33、及び液流出路35を有している。これらはいずれも、濾過槽5が規定する内部空間であり、互いに連通している。濾過室31は、旋回室7の上方に位置し、かつ旋回分離槽1の出液口11に連通している。濾過槽5は、さらに、フィルタ37を有している。フィルタ37は、筒状であり、濾過室31内に位置するように、濾過室31の底面に立設されている。図示の例では、濾過室31の底面中央にフィルタ支持体38が設置され、このフィルタ支持体38にフィルタ37が支持されている。すなわち、フィルタ37は、フィルタ支持体38を介して、濾過室31の底面に立設されている。
【0033】
液流入口33は、濾過室31の底面のうち、フィルタ37の外側の空間に面する部位に開口している。旋回室7から出液口11を通じて流出した浄化対象液は、この液流入口33を通じて濾過室31に流入する。液流出路35は、筒状のフィルタ37の内側に連通する流路である。フィルタ37を外側から内側へ通過した浄化対象液は、この液流出路35を通じて、液浄化装置101の外部へ流出する。すなわち、浄化済みの浄化対象液が、液流出路35を通じて外部に取出される。
【0034】
液浄化装置101は、旋回分離槽1の出液口11から濾過槽5の液流入口33への流路49を有する流路部材39を、さらに有している。旋回室7から出液口11を通じて流出した浄化対象液は、流路部材39が有する流路49を経て、濾過槽5の液流入口33へ至り、液流入口33から濾過室31に流入する。図示の例では、流路部材39は、旋回分離槽1と濾過槽5に挟まれた接続部材45の一部を構成している。図示の例では、接続部材45には、その下面に、下方に突出する筒状突出部12が固着されている。筒状突出部12は、出液口11を囲むように設置される。筒状突出部12は、注液口19から旋回室7に注入された浄化対象液が、直ちに出液口11に向かうことを排除するために設けられる。また、筒状突出部12は、旋回室7を旋回する浄化対象液の流れを妨げることにより、流れが乱流になることのないように、短く、かつ中央部に寄せて設けられるのが望ましい。また、筒状突出部12は設けなくてもよい。
【0035】
図示の例では、濾過槽5は、ボルトなどのネジにより、旋回分離槽1に着脱自在に取り付けられている。このため、液浄化装置101のユーザは、濾過槽5を旋回分離槽1に装着して使用することも、濾過槽5を除去して使用することも可能である。また、液浄化装置101は、濾過槽5、旋回分離槽1、及び沈殿槽3が、縦に直列に並ぶように設置されるので、設置面積が節減される。
【0036】
次に、図1及び図2に例示した液浄化装置101の各部の構成及び動作について説明する。図3は、液浄化装置101の旋回分離槽1の内部空間を例示する斜視図である。図4は、同内部空間を例示する平面図である。図示例の通り、液導入路9は、旋回室7の大径部15の周面すなわち側面の、仮想接平面41に接するとともに、仮想接平面41に対し中心軸21に近い側に設置される。液導入路9は、仮想接平面41内の直線42に沿って接している。また、液導入路9は、注液口19に向かうほど、狭くなりかつ仮想接平面41に沿うように断面が扁平となる。しかも当該断面の輪郭線のうち旋回室7の中心軸21に近い側の中央部が、輪郭線の内側に向かって湾曲することにより、断面が異形となっている。
【0037】
このように、液導入路9が、大径部15の周面の仮想接平面41に対し、中心軸21に近い側に位置しつつ、仮想接平面41に接しているので、浄化対象液が、大径部15の周面から離れることなく、周面に接するように大径部15に注入される。このため、旋回室7に注入される浄化対象液に、乱流が生じ難い。乱流が生じ難いために、注入された浄化対象液に含まれる異物微粒子は、旋回室7の周面から離れ難くなる。それにより、浄化対象液から異物微粒子を、旋回室7の周面付近に分離する効果が、さらに高められる。
また、液導入路9が、注液口19に向かうほど狭くなるので、大径部15に注入される浄化対象液に勢いが加わるとともに、注入された浄化対象液が、注入方向から逸れて広がるのではなく、注入方向に収束しようとする。また、液導入路9は、注液口19に向かうほど、仮想接平面41に沿うように、言い換えると大径部15の周面に沿うように、断面が扁平となるので、浄化対象液が大径部15の周面に角度をもって斜めに入射する。すなわち、浄化対象液に含まれる異物微粒子が、大径部15の周面に吹きつけられ、衝突するように、浄化対象液が注入される。また、液導入路9が、注液口19に向かうほど、大径部15の周面に沿うように断面が扁平となるので、注入された浄化対象液に含まれる異物微粒子は、大径部15さらにはその下方の縮径部17の周面により近い範囲内に止まろうとする。それにより、浄化対象液から異物微粒子を、旋回室7の周面付近に分離する効果が高められる。
【0038】
さらに、液導入路9は、注液口19に向かうほど、断面の輪郭線のうち旋回室7の中心軸21に近い側の中央部が、輪郭線の内側に向かって湾曲することにより、断面が異形となるので、扁平な断面のうち、中央部の幅が狭く、その両端部の幅が広くなる。このため、分離能力を保持しつつ、導入される浄化対象液に加わる抵抗が低くなる。それにより、分離能力を保ちつつ、導入される浄化対象液の圧力を低くし、流量を高めることができる。本願発明者は、性能試験を繰り返す中で、液導入路9の形状を、上述のように設定することが、浄化対象液から異物微粒子を、旋回によって分離する効果を高める上で、有効であることを見いだした。
【0039】
旋回室7の縮径部17の側面の傾斜角、すなわち当該側面が中心軸21と成す角度43は、5°〜15°の範囲に設定されるのが望ましい。本願発明者は、性能試験において、角度43をこの範囲に設定したときに、浄化対象液から異物微粒子を分離する効果が高い、という結果を得た。空気を対象とするサイクロン式空気清浄機では、内壁面に傾斜を付け、流路を狭くすることにより、1万Gほどの加速度が得られると言われる。この遠心力により異物微粒子が分離される。これに対し、水などの液体では、既述の通り、遠心力によって異物微粒子は分離し難い。液体の渦は、巨大な渦潮や、湯飲み茶碗の中でかき混ぜられた茶水のように、下方に至るほど自然に中心に集まる。異物微粒子を旋回室7の周面にぶつけながら、異物微粒子が中央に集まらないように、縮径部17の傾斜角をある程度大きく設定することにより、異物微粒子を周面に接する境界層に止めることができる。一方、渦の径の変化よりも過度に大きくは傾斜させず、渦の径の変化に沿うように、縮径部17の周面を、下方に至るほど縮径させるのが望ましい。縮径部17の傾斜角を過度に大きくすると、異物微粒子が逆に中心に集まり易くなる。本願発明者の実験によると、角度43を9°に設定したときに、最も高い分離効果が得られた。上記の通り、角度43が5°〜15°の範囲であれば、おおよそ同等の分離効果が得られる。
【0040】
図2に戻って、沈殿槽3の中空部23は、旋回分離槽1の異物排出口13に続いて下方に延びることにより、旋回室7における浄化対象液の旋回流を妨げる抵抗力を抑えつつ、浄化対象液に含まれる異物微粒子の沈殿を促進する働きをなす。中空部23の下端には、拡径した拡径室25が連通するので、上記の抵抗力を抑えつつ、中空部23を短くすることができる。それにより、液浄化装置101を縦方向に、よりコンパクトにすることができる。さらに、拡径室25の底面が、椀状に下方に湾曲しているので、拡径室25における浄化対象液の渦流への抵抗力が低められる。その機構は、旋回室7の縮径部17の側面の傾斜角に、最適範囲が存在する機構と同じである。すなわち、拡径室25内の浄化対象液の渦の形状に沿うように、拡径室25の底面を、椀状に下方に湾曲させることにより、異物微粒子の舞い上がりを防ぐとともに、拡径室25における浄化対象液の渦流への抵抗力を弱めることができる。拡径室25における浄化対象液の渦流への抵抗力が低められる結果、旋回室7における浄化対象液の旋回流への抵抗力も弱まる。それにより、浄化対象液から異物微粒子を、旋回により分離する効果が、さらに高められる。本願発明者は、拡径室25の底面の形状の効果も、実験により確認している。
【0041】
濾過槽5では、既に述べた通り、旋回分離槽1によっても分離されないほどに微小な異物微粒子が、フィルタ37によって除去される。それにより、浄化対象液の浄化効果がさらに高められる。また、フィルタ37は、旋回室7の外部である濾過室31の中に設置され、旋回室7の中には設置されない。このため、旋回室7において旋回する浄化対象液の流れが、フィルタ37により妨げられ乱流となる恐れがない。その結果、浄化対象液から異物微粒子を分離する効果が、さらに高められる。
【0042】
図5は、液浄化装置101の旋回分離槽1と濾過槽5との接続部を例示する斜視図である。図示の例では、旋回分離槽1と濾過槽5との間に、板状の接続部材45が介在する。すなわち、旋回分離槽1と濾過槽5は、接続部材45を挟んで、互いに締結されている。接続部材45の中央部には、既述の流路部材39が配置され、その周囲には環状部材47が配置されている。環状部材47は、流路部材39を支持する環状の部材である。
【0043】
流路部材39の内部には、流路49が形成されている。流路49は、下端開口部が旋回分離槽1の出液口11を成し、上端開口部が濾過槽5の液流入口33を成している。すなわち、流路49は、出液口11と液流入口33とを連通させる働きをなす。既述の通り、濾過槽5の筒状のフィルタ37は、フィルタ支持体38を介して濾過室31の底面中央に立設される。すなわち、フィルタ37は、濾過室31の底面中央に位置する流路部材39の上面に立設される。筒状のフィルタ37には、浄化対象液が外側から内側に向かって流れるように、液流入口33は、濾過室31のうち、筒状のフィルタ37の外側の空間に開口する。すなわち、液流入口33は、濾過室31の底面のうち、フィルタ支持体38の外側に開口する。このため、流路49は、下端の単一の出液口11から上端の複数の液流入口33へ分岐する分岐路を成している。図示の例では、流路49は、4本に分岐している。このように構成された流路部材39によって、フィルタ37には、浄化対象液が外側から内側に向かって流れる。このため、フィルタ37の目詰まりの進み方が緩やかとなる。すなわち、より長い期間にわたって、液浄化装置101の浄化効果が維持される。
【0044】
図6は、本発明の別の実施の形態による液浄化装置の液導入路を例示する平面図である。図4等に例示した液浄化装置101の液導入路9は、大径部15に対して図6(a)に例示するように、仮想接平面41に接するように配置され、かつ注液口19に向かうほど、断面形状が図6(d)に例示する形状となるように構成された。これに対して、断面形状が、図6(b)のように扁平な半円形状、あるいは図6(c)に例示するような略矩形状であってもよい。さらに、液導入路9は、仮想接平面41から離れ、大径部15に対して図6(e)に例示するように配置されても良い。これらのいずれの形態においても、液導入路9が、注液口19に向かうほど、狭くなり、かつ大径部15の周面に沿うように断面が扁平となる点においては、液浄化装置101と変わりがない。
既に述べたように、液導入路9が、注液口19に向かうほど、狭くなり、かつ大径部15の周面に沿うように断面が扁平となることにより、浄化対象液に含まれる異物微粒子が、大径部15の周面に吹きつけられ、衝突するように、浄化対象液が注入される。そして、注入された浄化対象液に含まれる異物微粒子は、大径部15さらにはその下方の縮径部17の周面により近い範囲内に止まろうとする。それにより、浄化対象液から異物微粒子を、旋回室7の周面付近に分離する効果が高められる。
【0045】
本願発明者は、液浄化装置101と従来装置との比較実験を行った。その結果を表1に示す。比較例として採用した従来装置である装置A、Bは、いずれも旋回分離槽を有する市販の液浄化装置である。実施例として採用した試作装置は、液浄化装置101の形態であるが、濾過槽5及びフィルタ37は無い状態で試験した。浄化対象液として、水(比重1)に、イオン交換樹脂を混入させたものと、金属切削くずを混入させたものとの2種類を用いた。イオン交換樹脂は、略球状であり、比重1.26、サイズ約0.6mmである。サイズは直径である。金属切削くずは、金属を切削加工するときに生成される金属粉である。浄化対象液を液浄化装置に供給するときの圧力は、いずれの装置に対しても、試験No.1では、0.03MPaに設定し、試験No.2では、0.2MPaに設定した。浄化率は、異物微粒子の除去率であり、目視によって評価した。表1が示すように、試作装置は、いずれの市販の装置と比較しても、飛躍的に高い浄化率を達成していることが理解される。
【0046】
【表1】
【符号の説明】
【0047】
1 旋回分離槽、 3 沈殿槽、 5 濾過槽、 7 旋回室、 9 液導入路、 11 出液口、 12 筒状突出部、 13 異物排出口、 15 大径部、 17 縮径部、 19 注液口、 21 中心軸、 23 中空部、 25 拡径室、 27 排出口、 29 排出管、 31 濾過室、 33 液流入口、 35 液流出路、 37 フィルタ、 38 フィルタ支持体、 39 流路部材、 41 仮想接平面、 42 直線、 43 角度、 45 接続部材、 47 環状部材、 49 流路、101 液浄化装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6