(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の移乗装置について概略的に示す図である。
【
図2】座面部と釣り紐とが2か所で接続される例について示す図である。
【
図3】釣り紐支持部の断面を概略的に示す断面図であり、釣り紐と座面モータとの関係を示す図である。
【
図4】釣り紐と座面モータとの関係の別の例を示す図である。
【
図5】釣り紐と座面モータとの関係の別の例を示す図である。
【
図6】釣り紐と座面モータとの関係の別の例を示す図である。
【
図7】座面モータを本体部に配置した場合の例について示す、移乗装置の上面概略図である。
【
図8】釣り紐支持部から伸びる釣り紐の一例について示す図である。
【
図9】背もたれ部に接続する支持紐の例について概略的に示す図である。
【
図10】背もたれ部に接続する支持紐の例について概略的に示す図である。
【
図11】背もたれ部が座面部と分離されている移乗装置の例について示す図である。
【
図12】釣り紐支持部が本体部に対して上下に移動する場合の構成例について示す概略図である。
【
図13】釣り紐支持部が本体部に対して上下に移動する場合の構成例について示す概略図である。
【
図14】釣り紐支持部が左右に移動し、互いの幅を変更する場合の構成例について示す移乗装置の背面図である。
【
図15】一体化された座面部及び背もたれ部が車いす上に配置された場合の例について示す図である。
【
図16】一体化された座面部及び背もたれ部が車いす上に配置された場合の別の例について示す図である。
【
図17】移乗装置の使用例について説明するための図である。
【
図18】移乗装置の使用例について説明するための図である。
【
図19】移乗装置の使用例について説明するための図である。
【
図20】移乗装置の使用例について説明するための図である。
【
図21】移乗装置の使用例について説明するための図である。
【
図22】移乗装置の使用例について説明するための図である。
【
図23】移乗装置の使用例について説明するための図である。
【
図24】移乗装置の使用例について説明するための図である。
【
図25】移乗装置の使用例について説明するための図である。
【
図26】トイレの便座に移乗するための移乗装置の変形例について示す図である。
【
図27】トイレの便座に移乗するための移乗装置の変形例について示す図である。
【
図28】釣り紐支持部の異なる例について示す側面図である。
【
図29】釣り紐支持部の異なる例について示す上面図である。
【
図30】前方支持部を備える例について示す上面図である。
【
図31】本開示の移乗装置付き車いすについて概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示における実施の形態について図面を参照しつつ説明する。実施の形態において同様の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0018】
[移乗装置の構成]
図1は、本開示の移乗装置100について概略的に示す図である。この図に示されるように移乗装置100は、座面部120と、座面部120に接続される釣り紐170と、釣り紐170を支持する釣り紐支持部160と、釣り紐170を引いて座面部120を釣り紐支持部160に近づける座面モータ162と、を備えている。座面部120は、利用者が座る座面を有しており、本実施の形態では、座面部120には、更に背もたれ部110が接続されている。しかしながら、背もたれ部110はなくてもよい。釣り紐170には、紐やベルト等の柔軟性のある長部材を用いることができる。材料は、繊維、布、皮革、樹脂、金属、繊維強化樹脂その他の柔軟性のある素材であってよく、更にゴム等の弾性のある素材、又はこれらが組み合わされたものであってもよい。
【0019】
また、釣り紐支持部160は、本体部140に接続されて支持されており、本体部140は、脚部151と2つの車輪部152が接続され、脚部151に配置されたローラ153と車輪部152とにより、床を前後左右に移動ができるように構成されていてもよい。なお、移動のための構成は、ローラ153や車輪部152に限られず、その場で旋回可能な構成等その他の構成を適宜用いることができる。本体部140には、補助者が、移乗装置100を移動させる際に握る取手部144を有していてもよい。また、本体部140には操作部142を有していてもよく、操作部142は、補助者の指示を受け、座面モータ162の制御を行う。操作部142は、本体部140から離れて有線又は無線により電気信号を送受信し操作を行うものであってもよい。操作部142は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体装置を利用した情報処理を行うシステムとして構成されていてもよい。
【0020】
背もたれ部110を有する場合には、釣り紐支持部160に接続され、背もたれ部110に着脱可能に接続される支持紐180を有していてもよい。背もたれ部110は支持紐接続部112を有し、支持紐180の背もたれ接続部182と接続されることとしてもよい。支持紐180は、釣り紐支持部160の端面を介して接続されていてもよい。釣り紐170は、座面部120と接続するための座面接続部172を有することができる。また、座面部120は、釣り紐170と接続するための釣り紐接続部122を有することができる。ここで、座面部120に座った利用者の前方を、移乗装置100における前方とし、利用者の後方を移乗装置100における後方として参照する。
【0021】
なお、
図1においては、座面部120は一組の側方部124を有し、一組の側方部124にそれぞれ2つずつの釣り紐接続部122を有し、座面部120と釣り紐170とを4か所で接続することとしている。しかしながら、
図2に示すように側方部124に、それぞれ1つの釣り紐接続部122を有し、座面部120と釣り紐170とを2か所で接続することとしてもよい。また、一組の側方部124のそれぞれに3箇所以上の釣り紐接続部122を設け、それぞれに釣り紐170が接続されることとしてもよい。
【0022】
また、
図1においては、本体部140を有し、本体部140に釣り紐支持部160が接続されていることとしたが、釣り紐支持部160を支持することができる構成であれば、本体部140及び脚部151はなくてもよい。例えば釣り紐支持部160は、ベッド近くの壁に設置され、車いすとの間を回動可能な構成とすることにより、ベッドと車いすの間の移乗を補助する装置として本体部140や脚部151を備えずに構成することができる。
【0023】
図3は、釣り紐170と座面モータ162との関係を示すための、釣り紐支持部160の断面を概略的に示す断面図である。この図に示されるように、1つの側方部124に接続された2本の釣り紐170は、釣り紐支持部160の内部で、それぞれ一つの座面モータ162に接続された巻取り滑車164により引き上げる動作を行うことができる。ここで座面モータ162は釣り紐支持部160に固定されている。このように座面モータ162を釣り紐支持部160の釣り紐170に対してそれぞれ設けることにより、釣り紐170の引き上げ動作をそれぞれ個別に制御することができる。
【0024】
この際、釣り紐170の引き上げ量を計測するカウンタ等を用い、引き上げ量が異なり過ぎないように各座面モータ162の動作制御を行うこととしてもよい。また、引き上げ量は、例えば座面部120の前方の引き上げ量が所定量に達した際に、座面部120の後方を引き上げる等の制御を行うこととしてもよい。つまり、釣り紐支持部160と座面部120との間において、座面部120の後方に接続された釣り紐170の長さは、座面部120の前方に接続された釣り紐170の長さよりも長くすることとしてもよい。この場合には、座面部120に座った利用者が前方向に傾いて不安定になることを防止することができる。
【0025】
図4は、
図3の変形例の1つであり、2つの釣り紐170は、それぞれ滑車163を介して一つの座面モータ162の軸に接続された巻取り滑車164に接続されている。このような構成とすることにより、複数の釣り紐170を引き上げる座面モータ162の数を少なくすることができ、また引き上げ量を制御することができる。引き上げ量を互いに異ならせるには、座面モータ162に接続された巻取り滑車164の半径を異ならせればよい。
【0026】
図5は、
図3の別の変形例であり、
図4と同様に2つの釣り紐170は、それぞれ滑車163を介して一つの座面モータ162により接続されているが、座面モータ162の位置が、2つの滑車163の間ではなく、一方の側にある点で
図4と異なっている。座面モータ162のこのような配置であったとしても、
図4の場合と同様の効果を得ることができる。
【0027】
図6は、
図3の別の変形例であり、
図4と同様に2つの釣り紐170は、それぞれ滑車163を介して一つの座面モータ162により接続されているが、座面モータ162の回転軸が、釣り紐支持部160の伸びる方向である点で異なっている。座面モータ162をこのように配置する場合であっても、
図4の場合と同様の効果を得ることができる。上述のように、座面モータ162を複数の釣り紐170に対して1つ設けることにより、座面モータ162の数を少なくすることができ、移乗装置100の原価を抑えることができる。
【0028】
図7は、座面モータ162を本体部140に配置し、釣り紐170を引く座面モータ162を移乗装置100内で1つにした場合の例について示す、移乗装置100の上面概略図である。この図において座面部120及び背もたれ部110の記載は省略している。この図に示されるように、釣り紐170は、釣り紐支持部160内で滑車163を経由して本体部140に配置された座面モータ162の軸に接続された巻取り滑車164で巻き取られる。また反対側の釣り紐170も同様に配置することで、座面モータ162を移乗装置100内で1つとすることができる。なお、滑車163、巻取り滑車164及び座面モータ162の構成は上述の例以外の構成であってもよい。このように座面モータ162を、一組の釣り紐支持部160に対して1つ設ける構成とすることにより、座面モータ162の数を少なくすることができ、移乗装置100の原価を抑えることができる。
【0029】
なお、上述の例において、座面モータ162の軸は、座面モータ162が動作していない状態の場合であっても、釣り紐170を引き上げる方向に付勢させておくことができる。具体的には、巻取り滑車164にバネ等を取り付け、釣り紐170を巻き取る方向に付勢させておいてもよい。これにより、釣り紐170は、例えば、座面接続部172と釣り紐接続部122とが接続されていない状態であっても、座面部120と釣り紐支持部160とが接触又は近い状態等となり、釣り紐170が他の物に接触してしまう等の危険を防止することができる。また、上述の例においては、巻取り滑車164を用いて釣り紐170を引き上げることとしたが、巻取り滑車164を用いずに釣り紐170を引き上げる動作を行うこととしてもよい。上述のように、釣り紐支持部160が滑車163を有し、座面モータ162が巻取り滑車164を有し、釣り紐170が、滑車163を介して巻取り滑車164により巻き取られる構成とすることにより、座面モータ162を選択的に配置することができる。また、座面モータ162の数も適宜選択することができる。
【0030】
図8は、釣り紐支持部160から伸びる釣り紐170の一例について示す図である。この図に示されるように、釣り紐170は、釣り紐支持部160から伸びる際に、座面接続部172を除き、釣り紐カバー191に覆われて伸びるように形成されていてもよい。ここで釣り紐カバー191は、釣り紐支持部160の筐体と座面接続部172との間で、伸縮自在に釣り紐170を覆うように構成されている。このような構成とすることにより、利用者の衣服等が釣り紐170近くにある場合であっても、釣り紐170に接触せずに釣り紐カバー191に接触するため、釣り紐170が座面モータ162により引き上げられる場合であっても、釣り紐支持部160内部へ巻き込まれることがなく、安全に座面モータ162を動作させることができる。また釣り紐カバー191を上方向に付勢されるゴム等の弾性材料を用いることにより、座面接続部172が釣り紐接続部122に接続されていない場合に、座面接続部172を釣り紐支持部160近くに配置させておくことができる。これにより、移乗装置100を使用していない場合に、釣り紐170が、他の物に接触してしまう等の危険を防止することができる。
【0031】
この図において座面接続部172は、カラビナのような機構を有する接続具として描かれているが、カラビナに限らず、サイドリリースバックルその他、人の体重を支える接続具を用いることができる。接続具は柔らかい素材のものとすることとしてもよい。また、釣り紐支持部160は、中を空洞の四角柱状の形状として描かれ、下面に開けられた穴から釣り紐170を伸ばすように描かれているが、例えば、下面をなくし、断面をU字形状とする形状であってもよいし、下面と外側面のないL字形状の断面形状その他の形状であってもよい。
【0032】
図9は、背もたれ部110に接続する支持紐180の例について概略的に示す図である。この図に示されるように、支持紐180は、支持紐固定部186において釣り紐支持部160に接続され、支持紐180の他端は背もたれ接続部182を有している。ここで、背もたれ接続部182においても、座面接続部172と同様に、カラビナ、サイドリリースバックルその他の接続具を用いることができる。支持紐180の紐部分は、紐やベルト等の柔軟性のある長部材であり、繊維、布、皮革、樹脂、金属、繊維強化樹脂その他の柔軟性のある素材であってよく、更にゴム等の弾性のある素材、又はこれらが組み合わされたものであってもよい。弾性のある素材を使用することにより形成される等により、背もたれ部110に体重がかかった場合においても、利用者の体の大きさに関わらず利用者を支えることができ、また利用者に安心感を与えることができる。なお、図面においては、支持紐180は、釣り紐支持部160の端部に接続されることとしているが、釣り紐支持部160のいずれの箇所で固定されるものであってもよく、また取り外し可能に接続されていてもよい。
【0033】
図10は、背もたれ部110に接続する支持紐180の別の例について概略的に示す図である。この図に示されるように、支持紐180は、釣り紐支持部160の内部でバネやゴム等の弾性部材184を介して接続されている。このように支持紐180が、背もたれ部110と支持紐180とを近づける方向に付勢された接続とすることにより、支持紐180が、背もたれ部110に接続されていない場合において、支持紐180が弾性部材184に引かれることにより、支持紐180を釣り紐支持部160内に収納することができる。これにより移乗装置100の移動等により支持紐180が使用されていない場合であっても、支持紐180が他の物に接触してしまう等の危険を防止することができる。また、背もたれ部110にかかる力により伸縮するため、利用者の体重や体格等に合わせて支持紐180の長さを変化させることができる。なお、支持紐180と釣り紐支持部160との接続は、釣り紐170との接続と同様に、モータで支持紐180を引いて巻き取る構成とすることとしてもよい。この場合には、釣り紐170の巻取り量等に基づいて、支持紐180を巻き取る量を定めるように制御することとしてもよい。
【0034】
図11は、背もたれ部110が座面部120と分離されている移乗装置100の例について示す図である。このように背もたれ部110が座面部120と分離している場合であっても、上述の背もたれ部110と座面部120とが一体化された移乗装置100と同様の効果を得ることができる。
【0035】
図12及び13は、それぞれ釣り紐支持部160が上下に移動する場合の構成例について示す概略図である。
図12に示されるように、釣り紐支持部160は本体部140に接続されるが、本体部140に形成された穴146に沿って移動するように構成されていてもよい。移動は、例えば本体部140内部に配置された高さ制御モータ167及びねじ溝の切られた回転軸等を用いることにより行うことができる。
図13は、本体部140が、支持部147上に接続され、本体部140が高さ制御モータ167により支持部147に対して上下に移動することにより釣り紐支持部160が本体部140と共に上下に移動する構成とした場合について示している。このような構成とすることにより、移乗前の高さや移乗後の高さについて調整することができる。しかしながら、釣り紐支持部160は上下に移動しない構成とし、上下の移動は釣り紐170による座面部120の移動のみとすることとしてもよい。また釣り紐支持部160の上下の移動は操作部142を操作することにより制御されることとしてもよい。
【0036】
図14は、釣り紐支持部160が左右に移動し、互いの幅を変更する場合の構成例について示す移乗装置100の背面図である。この図に示されるように、例えば釣り紐支持部160は、本体部140とロッド168を介して幅制御モータ169に接続され、幅制御モータ169がねじ溝が切られたロッド168を回動させることにより、釣り紐支持部160の互いの幅を変更するように構成することができる。したがって、一組の釣り紐支持部160の互いの距離を変化させる幅制御モータ169を備えるため、移乗装置100を利用者の体格や車いすの幅の個体差等に合わせて一組の釣り紐支持部160の間隔を調整することができる。しかしながら、例えば一般的な車いすの肘掛の幅等に幅を固定する等により、釣り紐支持部160は互いの幅を変更しない構成であってもよい。また幅制御モータ169の制御は操作部142を操作することにより行われることとしてもよい。
【0037】
図15は、一体化された座面部120及び背もたれ部110が車いす801上に配置された場合の例について示す図である。この図に示されるように、座面部120及び背もたれ部110は、車いす801上に配置され、利用者が車いすを利用する間、利用者と車いすのシートとの間に配置されるように構成することとしてもよい。座面部120及び背もたれ部110は、布、皮革、樹脂、強化繊維樹脂等の柔軟性のある材料で形成されていてもよい。また、折りたたみ可能なものだけでなく、体にフィットするような形状に形成されたものであってもよい。また、形状を維持するための金属、樹脂等の剛性や弾性のある素材が用いられていてもよい。ここで、背もたれ部110が、座面部120と分離されている場合には、座面部120のみが車いす801上に配置されるものとし、背もたれ部110は、座面部120と釣り紐170とを接続する際に、配置することとしてもよい。
【0038】
図16は、一体化された座面部120及び背もたれ部110が車いす801上に配置された場合の別の例について示す図である。この例の座面部120は、車いす801上で側方部124が、車いす801の座面から肘掛方向つまり上方向に折り曲げられている点で
図15の座面部120と異なっている。ここで、側方部124は、背もたれ部110と接続されない構成としてもよい。側方部124が背もたれ部110と接続されない構成とすることにより、ベッド等の平らな面上で利用者を移乗する際に、座面部120及び背もたれ部110は平らに広げられるため、移乗前後で平らな面上を移動しやすくすることができる。しかしながら、側方部124が背もたれ部110と接続される構成であってもよく、この場合には、座面部120及び背もたれ部110が立体的形状を保つため、利用者をよりしっかりと保持することができ、利用者に安心感を与えることができる。また、この例では、上方向に折り曲げられる側方部124は略矩形の形状であることとしたが、上方に一つの頂点を有する三角形として、一組の側方部124のそれぞれ一か所に釣り紐接続部122を有するものとしてもよい。
【0039】
[移乗装置の使用例]
図17〜25は、移乗装置100の一例の使用例について説明するための図である。この例では、車いす801からベッド802へ移乗する場合を例に説明するが、その他椅子やトイレの便座その他の移動先への移乗についても同様である。これらの図においては、図が複雑になるのを防ぐため、利用者807、車いす801及びベッド802は破線で示している。
図17には、車いす801に、一体化された座面部120及び背もたれ部110が載置され、載置された座面部120及び背もたれ部110上に座っている利用者807と、車いす801に向い合せに配置された(座面部120及び背もたれ部110を除く)移乗装置100とが示されている。
図18において、移乗装置100を車いす801近づけて、脚部151を車いす801の下に配置し、釣り紐支持部160を、例えば車いす801の肘掛部の上方に配置し、釣り紐170をそれぞれ座面部120の釣り紐接続部122に近づける。
図19において、釣り紐170の座面接続部172を座面部120の釣り紐接続部122に取り付け、支持紐180の背もたれ接続部182を背もたれ部110の支持紐接続部112に接続する。
【0040】
図20において、操作部142で操作を行い、座面モータ162を動作させると、座面部120が車いす801の座面から距離d1だけ浮き上がる。この際、利用者807の体重は、座面部120と背もたれ部110に移行し安定して支えられる。例えば、釣り紐支持部160を上方に移動させることにより座面部120を持ち上げようとした場合には、釣り紐支持部160が先に移動を始めるため、利用者807は、座面部120が自分の体重を支えられるかどうかという不安にかられ、移動を始めた釣り紐支持部160にしがみつこうとしたりする恐れがある。しかしながら、このように釣り紐支持部160を上方に移動させることなく、座面部120を持ち上げることにより、利用者807は自然と座面部120及び背もたれ部110に体重を任せることができ、安心して快適に移乗装置100に体重移動を行うことができる。
【0041】
また、座面部120が車いす801の座面から持ち上がった状態で、利用者807が、釣り紐支持部160に腕や手を置く等により、釣り紐支持部160が肘掛の役割を果たし、より安定感を得ることができ、安心して快適な乗り心地を得ることができる。ここで、車いす801の座面に対して座面部120から力が加わらない状態になれば、距離d1は0cmでもよく、利用者807は最小限の移動距離により、移乗装置100に体重移動することができる。これにより、利用者の体力的及び精神的負担を最小限とし、快適な移乗を実現することができる。また、座面部120と釣り紐支持部160との距離は、0cm〜50cmの間で変化させるように構成することができ、より望ましくは0cm〜35cmの間で変化させるように構成することとしてもよい。
【0042】
図21において、利用者807の体重は座面部120及び背もたれ部110に移行しているため、移乗装置100は車いす801から離れて利用者807を運ぶことができる。
図22において、移乗先であるベッド802まで移動する。
図23に示されるように、移乗装置100の脚部151をベッド802の下に配置し、利用者807が座る位置の上まで移動する。ここで、座面部120の高さがベッド802の高さより低い場合には、補助者は操作部142を操作し、更に座面部120をベッド802の高さより距離d2だけ高くなるように上方に移動させて、ベッド802の利用者807が座る位置まで移動させることとしてもよい。また、この際に釣り紐支持部160が上下に移動する場合には、釣り紐支持部160を上方に移動させて利用者807が座る位置まで移動させることとしてもよいし、座面モータ162により釣り紐170を更に引いて座面部120の高さを変更することとしてもよい。
図24において、補助者は操作部142を操作し、利用者807の体重がベッド802に移動し、釣り紐170に体重がかからなくなるまで、釣り紐170を降下させる。ここで降下の場合には、座面モータ162による釣り紐170の制御でなく、釣り紐支持部160を下方に移動させる動作とすることもできる。これにより、利用者807は、安心して快適に移乗装置100に体重移動を行うことができる。
図25において、釣り紐170の座面接続部172を座面部120の釣り紐接続部122から取り外し、支持紐180の背もたれ接続部182を背もたれ部110の支持紐接続部112から取り外して、移乗を完了する。ベッド802から車いす801までの移乗は、
図17〜25を逆に辿ることにより行うことができる。
【0043】
以上説明したように、本開示の移乗装置100では、移乗に際して補助を必要とする利用者807の負担を軽減し、より快適に移乗することができる。また、移乗の際、通常の座った姿勢を保つことができ、安定しているため、利用者807を安心させて移乗させることができる。また、移乗の際に、利用者807の姿勢が変化することがほとんどないため、利用者807は安心して快適に移乗することができる。また移乗の際に、利用者807は、例えば釣り紐支持部160に腕や手を置いた場合には、利用者807はより安定感を感じることができ、安心して快適に移乗することができる。また、利用者807は、通常の座った姿勢を保ったまま、移乗装置100への体重移行、及び移乗装置100からの体重移行を感じることができるため、安心して快適に移乗することができる。また、移乗装置100への体重移行、及び移乗装置100からの体重移行は、座面モータ162による釣り紐170の巻取り巻き戻しにより、通常、0〜10cm以内の座面部120のわずかな移動距離で行われる。このため、わずかな距離の移動で体重移行が完了し、その前後も安定した姿勢を保てるため、利用者は安心して快適に移乗することができる。
【0044】
図26及び27は、トイレの便座に移乗するための移乗装置100の変形例について示す図である。この図に示されるように、移乗装置100では、脚部151に2つのヒンジ部155を有し、便座に近づく際に脚部151を開くことにより、便座の上方に座面部120を配置させることができる。また、座面部120に穴部129を設けることにより、座面部120を取り外すことなく、排泄を行うことができる。穴部129は開閉自在となるように、穴部129を塞ぐ部材を備えていてもよい。
図26及び27では、ヒンジ部155を設けて、便器に近づくことのできる構成としているが、ヒンジ部155を設けずに脚部151を開いた状態に固定したものとしてもよい。
【0045】
図28及び29は、釣り紐支持部160の異なる例について示しており、それぞれ側面図及び上面図が示されている。これらでは一組の釣り紐支持部160が、連結部166で接続されて一体となっている。このような構成であっても一組の釣り紐支持部160が釣り紐170を支える構成であり、同様の効果を得ることができる。また、連結部166があることにより、利用者807が前方へバランスを崩すのを防ぐことができる。
図30は更に
図29と同様の上面図であり、
図29の連結部166に更に前方支持部165を備えている。前方支持部165を利用者807の近くにまで伸ばすことにより、利用者807が前向きにバランスを崩すのを防ぐことができる。また、本体部140には、利用者807が足を置くための足置き部が設置されていてもよい。
【0046】
上述したように、このような本開示の移乗装置100は、利用者807に負担のない快適な姿勢による安定した移動を可能にする。このため利用者807にとって安心感のある移動ができるため、例えばベッドからトイレまでの距離が長い場合であっても、車いす801を介することなく、移乗装置100での移動を行うこととしてもよい。
【0047】
[移乗装置付き車いすの構成]
図31は、上述に記載の移乗装置100と、移乗装置100を移動させる移動モータ302と、を備える移乗装置付き車いす300を示す図である。上述の移乗装置100において、操作部142を利用者807自身がリモコン等により手元で操作したり、例えば釣り紐支持部160に利用者操作部304を設けたりすることにより、利用者自身で移乗を行うことができる。車いす801等の利用者807は、ベッドから自分自身でトイレ等の目的地に移動したい場合も多い。そのため、移乗装置付き車いす300においては、例えば移動モータ302を設け、移動モータ302に接続された車輪部152を動かして移動できるようにすることにより、移乗装置100に乗った利用者807は、操作部142のリモコン機能による操作や、利用者操作部304を利用して移乗装置付き車いす300の運転を行って目的地に移動することができる。なお、上述したように移動には車輪部152やローラ153だけでなく、その場で旋回可能な構成等その他の構成を適宜用いることができる。施設内等を自動運転等により移動できるものとしてもよい。移乗装置付き車いす300は、上述の移乗装置100のいずれの構成も用いることができ、例えば、座面部120と、座面部120に接続される釣り紐170と、釣り紐170を支持する釣り紐支持部160と、釣り紐170を引いて座面部120を釣り紐支持部160に近づける座面モータ162と、釣り紐支持部160を床面に対して移動させる移動モータ302とを備える移乗装置付き車いす300とすることができる。
【0048】
本開示の移乗装置付き車いすの一つの視点は、座面部と、前記座面部に接続される釣り紐と、前記釣り紐を支持する釣り紐支持部と、前記釣り紐を引いて前記座面部を上昇させるモータと、を備える移乗装置付き車いすである。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記モータは、前記釣り紐を引いて前記座面部を前記釣り紐支持部に近づける座面モータとしてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記モータは、前記釣り紐支持部の上下方向の移動を制御する高さ制御モータとしてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記座面部に接続される背もたれ部と、前記背もたれ部及び前記釣り紐支持部を接続する支持紐と、を更に備えていてもよい。
【0049】
また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記支持紐は、前記背もたれ部と前記釣り紐支持部とを近づける方向に付勢されていてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記支持紐は、前記釣り紐支持部の端面を介して接続されていてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、一組の前記釣り紐支持部の互いの距離を変化させる幅制御モータを更に備えていてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、一組の前記釣り紐支持部は、互いに平行で、かつ床面と平行に延伸していてもよい。また、前記座面部は柔軟性のある材料で形成されていてもよい。
【0050】
本開示の移乗装置付き車いすの一つの視点は、座面部と、前記座面部に接続される釣り紐と、前記釣り紐を支持する釣り紐支持部と、前記釣り紐を引いて前記座面部を前記釣り紐支持部に近づける座面モータと、前記釣り紐支持部を床面に対して移動させる移動モータとを備える移乗装置付き車いすである。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記釣り紐支持部は、滑車を有し、前記座面モータは、巻取り滑車を有し、前記釣り紐は、前記滑車を介して前記巻取り滑車により巻き取られることとしてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記巻取り滑車は、前記釣り紐を巻き取る方向に付勢されていることとしてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記座面部と前記釣り紐とは4か所で接続されていることとしてもよい。
【0051】
また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記釣り紐支持部と前記座面部との間において、前記座面部の後方に接続された釣り紐の長さは、前記座面部の前方に接続された前記釣り紐の長さよりも長いこととしてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記座面モータは、前記釣り紐支持部の前記釣り紐に対してそれぞれ設けられることとしてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記座面モータは、複数の前記釣り紐に対して1つ設けられることとしてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記座面モータは、一組の前記釣り紐支持部に対して1つ設けられることとしてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記釣り紐支持部の上下方向の移動を制御する高さ制御モータを更に備えることとしてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、一組の前記釣り紐支持部の互いの距離を変化させる幅制御モータを更に備えることとしてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記座面部に接続される背もたれ部と、前記背もたれ部及び前記釣り紐支持部を接続する支持紐と、を更に備えることとしてもよい。また、本開示の移乗装置付き車いすにおいては、前記支持紐は、前記背もたれ部と前記支持紐とを近づける方向に付勢されていることとしてもよい。
【0052】
本開示の移乗装置100は、以下のような構成としてもよい。
(構成1)座面部と、前記座面部に接続される釣り紐と、前記釣り紐を支持する釣り紐支持部と、前記釣り紐を引いて前記座面部を前記釣り紐支持部に近づける座面モータと、を備える移乗装置。
(構成2)構成1に記載の移乗装置において、前記釣り紐支持部は、滑車を有し、前記座面モータは、巻取り滑車を有し、前記釣り紐は、前記滑車を介して前記巻取り滑車により巻き取られる、移乗装置。
(構成3)構成2に記載の移乗装置において、前記巻取り滑車は、前記釣り紐を巻き取る方向に付勢されている、移乗装置。
(構成4)構成1乃至3のいずれか一項に記載の移乗装置において、前記座面部と前記釣り紐とは4か所で接続している、移乗装置。
(構成5)構成1乃至4のいずれか一項に記載の移乗装置において、前記釣り紐支持部と前記座面部との間において、前記座面部の後方に接続された釣り紐の長さは、前記座面部の前方に接続された前記釣り紐の長さよりも長い、移乗装置。
(構成6)構成1乃至5のいずれか一項に記載の移乗装置において、前記座面モータは、前記釣り紐支持部の前記釣り紐に対してそれぞれ設けられる、移乗装置。
(構成7)構成1乃至5のいずれか一項に記載の移乗装置において、前記座面モータは、複数の前記釣り紐に対して1つ設けられる、移乗装置。
(構成8)構成1乃至5のいずれか一項に記載の移乗装置において、前記座面モータは、一組の前記釣り紐支持部に対して1つ設けられる、移乗装置。
(構成9)構成1乃至8のいずれか一項に記載の移乗装置において、前記釣り紐支持部の上下方向の移動を制御する高さ制御モータを更に備える、移乗装置。
(構成10)構成1乃至9のいずれか一項に記載の移乗装置において、一組の前記釣り紐支持部の互いの距離を変化させる幅制御モータを更に備える、移乗装置。
(構成11)構成1乃至10のいずれか一項に記載の移乗装置において、前記座面部に接続される背もたれ部と、前記背もたれ部及び前記釣り紐支持部を接続する支持紐と、を更に備える移乗装置。
(構成12)構成11に記載の移乗装置であって、前記支持紐は、前記背もたれ部と前記釣り紐支持部とを近づける方向に付勢されている、移乗装置。