特許第6961291号(P6961291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961291N−ビニルラクタム系共重合体及びN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961291
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】N−ビニルラクタム系共重合体及びN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 39/04 20060101AFI20211025BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20211025BHJP
   D01F 6/92 20060101ALI20211025BHJP
   C08F 226/06 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C08L39/04
   C08K3/32
   C08L67/00
   D01F6/92 307E
   C08F226/06
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-9770(P2017-9770)
(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公開番号】特開2018-119030(P2018-119030A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年10月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 一弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】高松 雄輝
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−286011(JP,A)
【文献】 特開2003−252934(JP,A)
【文献】 特開2005−290209(JP,A)
【文献】 特開2016−188267(JP,A)
【文献】 特開2013−133351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 226/00−226/12
C08F 2/00−2/60
C08L 39/00−39/08
C08L 67/00−67/08
D01F 6/00−6/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有し、主鎖末端にリン原子を含む置換基を有するN−ビニルラクタム系共重合体とリン原子を含む化合物とを含み
該疎水性単量体(B)は、環構造を有する化合物を含み、
該構造単位(a)の割合が全構造単位100質量%に対して70〜99.9質量%であり、
該リン原子含有化合物の含有量が、N−ビニルラクタム系共重合体100質量%に対して、0.1〜1質量%であることを特徴とするN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物
【請求項2】
前記共重合体は、構造単位(b)の割合が全構造単位100質量%に対して0.1〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載のN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物。
【請求項3】
前記疎水性単量体(B)は、25℃の水100gへの溶解度が10g以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物。
【請求項4】
前記疎水性単量体(B)は、下記式(3);
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、直接結合、メチレン基又はエチレン基を表す。X、Yは、水酸基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜17のアルコキシ基を表す。ただし、X、Yのうち一方は水酸基を表し、もう一方は置換基を有していてもよい炭素数1〜17のアルコキシ基を表す。)で表される化合物を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物。
【請求項5】
前記疎水性単量体(B)は、ビニルアリール単量体を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載のN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物とポリエステルとを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物は、樹脂組成物100質量%に対して、前記N−ビニルラクタム系共重合体を0.1〜40質量%含有することを特徴とする請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項又はに記載の樹脂組成物からなる消臭性ポリエステル繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−ビニルラクタム系共重合体及びN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物に関する。より詳しくは、衣料等の繊維製品等に好適に用いられるN−ビニルラクタム系共重合体及びN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクタム構造を有する重合体は、親水性を有し、人体や環境への安全性が高いこと等から、医薬品、化粧品、粘接着剤、塗料、分散剤、インキ、電子部品等の種々の分野で広く用いられている。このようなラクタム構造を有する重合体として、特許文献1には、N−ビニルラクタム系単量体に由来する構造単位を有する重合体であって、該N−ビニルラクタム系重合体は、主鎖末端に、次亜リン酸基及び/又は次亜リン酸の金属塩基からなる構造単位を有することを特徴とするN−ビニルラクタム系重合体が開示されている。
【0003】
ポリエステルやナイロン等の合成繊維は吸湿性に劣ることが知られているが、近年、このような繊維に対して、親水性を有するラクタム構造を有する重合体を用いて、吸湿性を付与する技術が開発されている。例えば、特許文献2には、ポリアミドに対しポリビニルピロリドンを3〜15wt%の量で含有するポリアミドマルチフィラメントが外層側と内層側に配置された層構造に形成されていることを特徴とする複合加工糸が開示されている。
また、合成繊維の中でもポリエステルは汎用性が高いため、吸湿性を付与することの価値はより大きく、特許文献3には、ポリエステル中に、3〜25重量%のポリ(N−ビニルラクタム)を、繊維断面における平均分散径が500nm以下で微分散した、吸放湿性パラメータ(ΔMR)が1.0%以上、強度が2.0cN/dtex以上、タフネスが15以上、繊度斑U%(n)が1.5以下、色調L値が70以上、色調b値が10.0以下の吸放湿性ポリエステル繊維を巻きつけ、特定の性能パラメータを有する吸放湿性ポリエステル繊維パッケージが開示されている。特許文献4には、吸湿性ポリエステル繊維において、該ポリエステル繊維にはポリエステル、ポリN−ビニルラクタム及びリン系熱安定剤を含有し、そのうち、ポリN−ビニルラクタムがポリエステル繊維の重量の3〜15wt%を占め、その分散径が200nm以下であり、リン系熱安定剤の含有量がP元素として計算すると、ポリエステル繊維の重量の50〜500ppmを占める、ことを特徴とする吸湿性ポリエステル繊維が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/036256号
【特許文献2】特開2004−277954号公報
【特許文献3】特開2014−205941号公報
【特許文献4】特表2015−532366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、種々のN−ビニルラクタム系重合体や、吸湿性が付与された種々の合成繊維が開発されている。しかし、ポリエステル繊維に対する吸湿性の付与剤としてポリN−ビニルラクタムを用いた場合、ポリエステルとの相溶性が充分でないために繊維の機械強度の低下が生じた。これに対して、N−ビニルラクタムと疎水性単量体との共重合体を用いたところ、疎水性の繊維であるポリエステルとの相溶性が向上し、繊維の機械強度は改善された。しかし、ナイロンよりも高い温度で混練する必要があるポリエステルと共重合体とを高温条件下で溶融混練すると、共重合体が熱分解され、これにより着色するという新たな課題が生じることとなった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、繊維の機械強度低下を抑制し、吸湿性及び耐着色性を向上させる重合体及び重合体含有組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、繊維の機械強度低下を抑制し、吸湿性及び耐着色性を向上させる重合体について種々検討したところ、主鎖末端にリン原子を含む置換基を有する、N−ビニルラクタムと疎水性単量体との共重合体、又は、N−ビニルラクタムと疎水性単量体との共重合体及びリン原子を含む化合物を含む組成物をポリエステルと混練すると、高温条件下でポリエステルと溶融混練した場合にも共重合体の分解を抑制することができ、耐着色性に優れ、機械強度低下を抑制し、吸湿性にも優れることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち第1の本発明は、N−ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有し、主鎖末端にリン原子を含む置換基を有するN−ビニルラクタム系共重合体である。
また第2の本発明は、N−ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有するN−ビニルラクタム系共重合体とリン原子を含む化合物とを含むN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物である。
以下、本明細書中において、単に「本発明」という場合には第1及び第2の本発明に共通する事項を意味するものとする。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0009】
<N−ビニルラクタム系共重合体>
本発明のN−ビニルラクタム系共重合体(以下、本発明の共重合体ともいう。)は、N−ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する。
上記共重合体が、構造単位(a)を有することにより繊維に吸湿性を付与することができ、構造単位(b)を有することにより、共重合体と繊維との相溶性が向上するため、機械強度を向上させることができる。また、上記共重合体は、構造単位(a)を有することにより臭気成分の消臭能力にも優れることとなる。本発明において優れた消臭能力とは、臭気成分の量又は濃度の少なくとも一方を低減させる効果が高いことを意味する。
第1の本発明の共重合体は、主鎖末端にリン原子を含む置換基を有するものであり、少なくとも一の主鎖末端にリン原子を含む置換基を有するものであればよい。第1の本発明の共重合体は、このような構造を有することにより、高温条件下でポリエステルと溶融混練した場合にも共重合体の熱分解が抑制され、着色を抑制することができる。
なお、本発明において、N−ビニルラクタム系共重合体の主鎖とは、上記共重合体の原料となる単量体由来の構造単位を少なくとも1つ含む鎖を意味する。上記共重合体に分岐がある場合、分岐鎖もまた、上記共重合体の原料となる単量体由来の構造単位を少なくとも1つ含む鎖を意味し、主鎖に含まれる。
【0010】
上記リン原子を含む置換基は、リン原子を含むものであれば特に制限されないが、還元性の基であることが好ましい。還元性を有するリン原子を含む置換基としては例えば、次亜リン酸(塩)基、亜リン酸(塩)基等が挙げられる。より好ましくは次亜リン酸(塩)基である。
なお、上記次亜リン酸(塩)基は、次亜リン酸基又はこの塩を意味し、上記亜リン酸(塩)基は、亜リン酸基又はこの塩を意味する。
上記塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられ、より具体的には、金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属の塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属の塩;アルミニウム塩、鉄塩等の塩が挙げられる。有機アミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;モルホリン塩等が挙げられる。これらの中でも、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
【0011】
第1の本発明の共重合体の主鎖末端にリン原子を含む置換基を導入する方法としては特に制限されないが、後述する連鎖移動剤としてリン原子を含む化合物を用いる方法等が挙げられる。
【0012】
第1の本発明のN−ビニルラクタム系共重合体において、主鎖末端(分子末端)に存在する、リン原子を含む置換基を有する構造単位の含有割合は、N−ビニルラクタム系共重合体100質量%に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上である。また、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは7質量%以下であり、更に好ましくは6質量%以下である。
【0013】
上記主鎖末端のリン原子を含む置換基を有する構造単位の分析は、例えば、31P−NMR測定等により可能である。なお、上記リン原子を含む化合物として、次亜リン酸(塩)のように2度以上還元剤として寄与する化合物を使用する場合、N−ビニルラクタム系共重合体の分子末端以外にリンを含む構造単位が形成される場合があり得る(例えば、ホスフィン酸ナトリウム基は、分子末端以外にも−P(=O)(ONa)−として分子内に取り込まれ得る。)。この場合であっても、31P−NMR等により分子末端のリンを含む構造単位を測定することは可能である。
【0014】
上記N−ビニルラクタム系単量体(A)は、環状N−ビニルラクタム構造を有する単量体であれば特に制限されないが、下記式(1);
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、R、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。mは、0〜4の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。)で表される構造であることが好ましい。
上記R〜Rにおけるアルキル基の炭素数としては、1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4である。上記アルキル基として更に好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
上記R〜Rにおける置換基としては、特に制限されないが、カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらのエステルや塩;アミノ基、水酸基等が挙げられる。
〜Rとしては水素原子であることが好ましい。Rとしては水素原子又はメチル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子である。
mとしては、0〜2の整数であることが好ましく、より好ましくは0〜1の整数であり、最も好ましくは0である。
nとしては、1又は2であることが好ましく、より好ましくは1である。
【0017】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、1−(2−プロペニル)−2−ピロリドン等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。N−ビニルラクタムとしては、ピロリドン環を有する不飽和単量体が好ましい。より好ましくはN−ビニルピロリドンである。
【0018】
上記疎水性単量体(B)は、N−ビニルラクタム系単量体と共重合でき、疎水性の化合物であれば、特に制限されないが、25℃の水100gへの溶解度が10g以下であることが好ましい。より好ましくは5g以下であり、更に好ましくは3g以下である。疎水性単量体(B)の水への溶解度が上記好ましい範囲であれば、共重合体に疎水性をより充分に付与することができるため、ポリエステル等の疎水性の繊維と本発明の共重合体との相溶性がより向上し、繊維の機械強度をより向上させることができる。
【0019】
疎水性単量体(B)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換若しくは無置換の(メタ)アクリルアミド;スチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等のアルケン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類;1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オール、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体等が挙げられる。
これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記疎水性単量体(B)として、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を有する化合物、又は、環構造を有する化合物であることが好ましい。上記疎水性単量体(B)は、環構造を有する化合物を含むものであることが好ましく、該化合物としては、ビニルアリール単量体が好ましい。上記ビニルアリール単量体としてはスチレンが好ましい。
【0021】
上記疎水性単量体(B)はまた、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を有する化合物を含むものであることが好ましく、該化合物としては、ビニルエーテル類が好ましい。上記ビニルエーテル類としては、下記式(2);
【0022】
【化2】
【0023】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)で表される構造であることが好ましい。
上記置換基としては、例えば水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。
上記ビニルエーテル類としてより好ましくは、下記式(3);
【0024】
【化3】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、直接結合、メチレン基又はエチレン基を表す。X、Yは、水酸基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜17のアルコキシ基を表す。ただし、X、Yのうち一方は水酸基を表し、もう一方は置換基を有していてもよい炭素数1〜17のアルコキシ基を表す。)で表される化合物である。
すなわち、上記疎水性単量体(B)は、上記式(3)で表される化合物を含むものであることが好ましい。
【0025】
上記アルコキシ基が置換基を有している場合、上記炭素数には、置換基を構成する炭素原子の数も含まれるものとする。上記置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミド基等が挙げられる。
上記置換基を有していてもよいアルコキシ基の炭素数は1〜15が好ましく、より好ましくは1〜12であり、特に好ましくは1〜6である。
上記式(3)においてXが水酸基であり、Yが炭素数1〜6のアルコキシ基であることが好ましい。上記Yは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基であることが好ましい。より好ましくはブトキシ基である。
上記式(3)におけるRは、水素原子であることが好ましい。
上記式(3)におけるRは、メチレン基であることが好ましい。
上記ビニルエーテル類として更に好ましくは、1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オールである。
【0026】
本発明の共重合体は、N−ビニルラクタム系単量体(A)及び疎水性単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。
上記その他の単量体(E)としては、例えば、(i)アクリル酸、メタアクリル酸等の不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩;(ii)フマル酸、マレイン酸、メチレングルタル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩(一塩であっても二塩であっても良い);(iii)3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩;(iv)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコール及びこれらの水酸基にアルキレンオキシドを付加したアルキレンオキシド付加物;(v)N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールおよびこれらの塩またはこれらの4級化物等の不飽和アミン;(vi)(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル及びその誘導体等が挙げられる。
これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記(i)〜(iii)、(v)における塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が例示される。上記(iv)におけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が例示され、炭素数1〜20のアルキレンオキシドが好ましく、炭素数1〜4のアルキレンオキシドがより好ましい。上記(iv)におけるアルキレンオキシドの付加モル数としては、上記(iv)の化合物1モルあたり0〜50モルが好ましく、0〜20モルがより好ましい。
【0027】
上記共重合体は、構造単位(a)の割合が、共重合体100質量%に対して70〜99.9質量%であることが好ましい。より好ましくは75〜99質量%であり、更に好ましくは80〜99質量%であり、特に好ましくは85〜99質量%である。
上記共重合体は、構造単位(b)の割合が、全構造単位(共重合体)100質量%に対して0.1〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜25質量%であり、更に好ましくは1〜20質量%であり、特に好ましくは1〜15質量%である。
構造単位(a)及び(b)の割合が、上記好ましい範囲であれば、繊維の吸湿性と機械強度との両方をより向上させることができる。
【0028】
上記共重合体は、上記ビニルエーテル類由来の構造単位を有する場合、該構造単位の割合が、共重合体100質量%に対して、0.1〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜25質量%であり、更に好ましくは1〜20質量%であり、特に好ましくは1〜15質量%である。
上記共重合体は、上記環構造を有する化合物由来の構造単位を有する場合、該構造単位の割合が、共重合体100質量%に対して、0.1〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜25質量%であり、更に好ましくは1〜20質量%であり、特に好ましくは1〜15質量%である。
【0029】
上記共重合体は、上述のとおり構造単位(e)を有していてもよく、構造単位(e)の割合は、共重合体100質量%に対して0〜25質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜20質量%であり、更に好ましくは0〜10質量%である。
【0030】
上記共重合体は、重量平均分子量が1000〜3000000であることが好ましい。
共重合体の重量平均分子量が上記好ましい範囲であれば、本発明の共重合体をポリエステル等の繊維に用いた場合に、繊維の機械的強度及び吸湿性がより向上することになる。
重量平均分子量としてより好ましくは3000〜1000000であり、更に好ましくは5000〜800000であり、一層好ましくは5000〜500000であり、特に好ましくは5000〜100000である。
上記重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0031】
<共重合体の製造方法>
本発明の共重合体の製造は、特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例、並びに、各単量体の好ましい割合は、上述のとおりである。
上記共重合体の製造方法は、N−ビニルラクタム系単量体(A)及び疎水性単量体(B)を含む単量体成分を重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)を含むことが好ましい。
【0032】
上記重合工程における、単量体成分の重合を開始する方法としては、特に制限されないが、例えば、重合開始剤を添加する方法、UVを照射する方法、熱を加える方法、光開始剤存在下に光を照射する方法等が挙げられる。
上記重合工程において、重合開始剤を用いることが好ましい。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ‐t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アスコルビン酸と過酸化水素、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤等が好適である。これらの重合開始剤のうち、残存単量体が減少する傾向にあることから、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ系化合物が好ましく、アゾ系化合物が最も好ましい。上記アゾ系化合物の中でも特に2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩が好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
ナイロンに対して吸湿性を付与する場合には、ナイロンと吸湿性付与剤との混練温度が低いため、重合開始剤を工夫することにより着色を抑制することができる。これに対してポリエステルの場合、ポリエステルと共重合体とを高温で混練する必要があるため、重合開始剤を工夫することのみで着色を抑制することが困難である。よって、本発明の共重合体をポリエステルに吸湿性を付与する付与剤として用いる場合に、特に、本発明の技術的意義がより効果的に発揮される。
【0033】
上記重合開始剤の使用量としては、単量体の使用量(N−ビニルラクタム系単量体(A)疎水性単量体(B)及びその他の単量体(E)の合計の使用量)1モルに対して、0.1g以上、10g以下であることが好ましく、0.1g以上、7g以下であることがより好ましく、0.1g以上、5g以下であることが更に好ましい。
【0034】
上記重合工程においては、連鎖移動剤を用いることが好ましい。
第1の本発明の共重合体の製造において、連鎖移動剤としては、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩)(これらの水和物を含む)、亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸(塩)等のリン原子含有化合物を用いることが好ましく、これらの連鎖移動剤の存在下で、単量体成分を重合することにより、共重合体の主鎖末端に、リン原子を含む置換基を導入することができる。連鎖移動剤として次亜リン酸(塩)、を用いる場合、重合工程を水溶媒中で行うことができ、後述するとおり、有機溶媒を用いた場合よりも生産性を向上させることができる。
これらの中でも、次亜リン酸(塩)を用いることがより好ましい。
また、上記重合工程において次亜リン酸(塩)、亜リン酸(塩)以外の他の連鎖移動剤を併用することもできる。他の連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン等のハロゲン化物;イソプロピルアルコール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸(塩);亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸(塩);亜ジチオン酸ナトリウム等の亜ジチオン酸(塩);ピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸(塩)などが挙げられる。上記他の連鎖移動剤は、単独で使用されても、2種以上を併用されてもよい。
第2の本発明の共重合体の製造において、連鎖移動剤として上記リン原子含有化合物を用いても、その他の連鎖移動剤を用いてもよい。その他の連鎖移動剤としては、イソプロピルアルコールが好ましい。
第1の本発明の共重合体の製造における連鎖移動剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量1モルに対して、0.01g以上、10g以下であることが好ましく、0.1g以上、8g以下であることがより好ましい。
第2の本発明の共重合体の製造における連鎖移動剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量1モルに対して、0.01〜600gであることが好ましく、0.1〜500gであることがより好ましい。
【0035】
上記重合工程において、溶剤を使用する場合、溶剤としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(2−プロパノール)、n−ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール類等から選ばれる1種または2種以上が例示される。溶剤としては、水、イソプロピルアルコールが好ましい。より好ましくは水である。
疎水性単量体は、水への溶解性が小さいため、有機溶媒を用いて重合反応を行うことが容易であるが、本発明の共重合体は、重合工程後、乾燥させて、紛体として取り扱うことが好ましく、上記乾燥工程は、重合工程において有機溶媒を使用する場合、防爆設備が必要となる。重合工程において水を使用する場合には、防爆設備を必要とせず、設備投資にかかるコストを削減することができる。また、重合工程において有機溶媒を使用し、その後水に置換する場合にも、工程時間が延びるため、水を使用する場合には、溶媒を置換する必要がなく、生産性を向上させることができる。
有機溶媒の使用量は、溶剤100質量%に対して、0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜8質量%であり、更に好ましくは0〜5質量%であり、最も好ましくは0質量%である。
溶媒の使用量としては、単量体100質量%に対して40〜1000質量%が好ましい。
【0036】
上記重合工程において、重合温度は、特に限定されるものではないが、比較的低温の方が共重合体の分子量が大きくなるので好ましく、20℃〜100℃の範囲内であれば、重合率がより向上するので更に好ましい。尚、反応時間は、上記重合反応が完結するように、反応温度や、単量体成分、重合開始剤、及び、溶媒等の種類(性質)や組み合わせ、使用量等に応じて、適宜設定すればよい。
【0037】
上記共重合体の製造方法は、重合反応後に、共重合体を熟成する工程を含むことが好ましい。熟成工程を行うことにより、残存モノマー量を低減することができる。上記熟成工程における温度は特に制限されないが、20〜100℃であることが好ましい。上記熟成工程における熟成時間は特に制限されないが、10分〜5時間であることが好ましい。より好ましくは30分〜3時間である。
【0038】
上記共重合体の製造方法は、重合反応後に、次亜リン酸(塩)を添加する工程を含んでいてもよい。このような工程を行うことにより共重合体の耐着色性をより向上させることができる。
【0039】
上記製造方法は、重合反応が終了した時点での水溶液中の固形分濃度(すなわち単量体の重合固形分濃度)は、15質量%以上が好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。このように重合反応終了時の固形分濃度が15質量%以上と高ければ、高濃度で重合反応を行うことになるため、反応速度及び反応率が上がり、残存モノマー量をより充分に抑制することができる。
【0040】
<N−ビニルラクタム系共重合体含有組成物>
第2の本発明は、N−ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有するN−ビニルラクタム系共重合体とリン原子を含む化合物(以下、リン原子含有化合物ともいう)とを含むN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物(以下、単に、共重合体含有組成物ともいう)である。
上記N−ビニルラクタム系共重合体含有組成物は、リン原子含有化合物を含むことにより、高温条件下でポリエステルと溶融混練した場合にも共重合体の熱分解が抑制され、着色を抑制することができる。
第2の本発明のN−ビニルラクタム系共重合体は、N−ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有するものであれば、特に制限されず、主鎖末端にリン原子を含む置換基を有していても、有していなくてもよい。
第2の本発明のN−ビニルラクタム系共重合体は、主鎖末端にリン原子を含む置換基を有することを、必須としていない点を除いて、第1の本発明のN−ビニルラクタム系共重合体と同様である。
【0041】
上記リン原子含有化合物はリン原子を有する化合物であれば特に制限されないが、還元性の化合物が好ましい。還元性を有するリン原子含有化合物としては、例えば、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩)(これらの水和物を含む)、亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸(塩)が挙げられる。より好ましくは次亜リン酸(塩)である。上記リン原子含有化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0042】
上記共重合体含有組成物におけるリン原子含有化合物の含有量は、N−ビニルラクタム系共重合体100質量%に対して、0.0001〜1質量%であることが好ましい。この範囲であれば、高温条件下でポリエステルと溶融混練した場合の着色をより充分に抑制することができる。より好ましくは0.001〜0.5質量%であり、更に好ましくは0.002〜0.2質量%である。
上記リン原子含有化合物の含有量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0043】
上記共重合体含有組成物は、N−ビニルラクタム系共重合体及びリン原子含有化合物以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、重合開始剤残渣、残存モノマー、重合時の副生成物、水分等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
上記その他の成分の含有量は、特に制限されないが、共重合体含有組成物100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下である。
【0044】
<樹脂組成物>
本発明の共重合体及び共重合体含有組成物は、ポリエステル等との溶融混練用途に用いられることが好ましい。
本発明はまた、本発明のN−ビニルラクタム系共重合体又はN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物とポリエステルとを含む樹脂組成物でもある。上記樹脂組成物は、溶融混練用組成物でもある。
本発明のN−ビニルラクタム系共重合体はまた、臭気成分の消臭能力にも優れるものであり、上記樹脂組成物が消臭用途に好適に用いられる。すなわち、上記樹脂組成物からなる消臭性ポリエステル繊維もまた、本発明の1つである。
【0045】
上記消臭性ポリエステル繊維が消臭効果を発揮することができる臭気成分としては、例えば、メチルメルカプタン等のチオール類、アンモニア等のアミン類、酢酸等のカルボン酸類、ノネナール等のアルデヒド類、ジアセチル等のジケトン類等が挙げられる。すなわち、本発明の消臭性ポリエステル繊維は、様々な臭気成分に対して消臭効果を発揮することができ、この理由としては以下のようなことが考えられる。本発明の共重合体は、不飽和単量体(A)由来のラクタム環が有するN部位やカルボニル基で臭気成分を吸着することができること、及び、本発明の共重合体は吸湿性を有するため、吸湿した水を介して水溶性の臭気成分を吸着することができることが考えられる。本発明の消臭性ポリエステル繊維は、上記臭気成分の中でも酢酸等のカルボン酸に対して、より優れた消臭効果を発揮する。
【0046】
上記ポリエステルは、ジカルボン酸とジオールとの重縮合体であり、酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸に由来する構造単位と、ジオール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種のジオールに由来する構造単位とを有するものであることが好ましい。
【0047】
上記ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート等が例示される。
上記ポリエステルは市販品を使用しても、公知の製造方法により製造してもよい。
【0048】
上記樹脂組成物に含まれる、ポリエステルと、本発明の共重合体との質量の比率は、99.9:0.1〜60:40であることが好ましく、99.5:0.5〜65:35であることがより好ましく、99:1〜70:30であることが更に好ましい。
【0049】
上記樹脂組成物は、ポリエステルと、本発明の共重合体との相溶性が良好であることが好ましい。例えば電子顕微鏡で観察した際に、ポリエステルと、本発明の共重合体とのミクロ層分離が観察されないか、または島成分(本発明の共重合体)の平均粒径が3μm以下であることが好ましい。上記島成分の平均粒径は、2μm以下であることがより好ましい。上記島成分の平均粒径は、電界放出系走査電子顕微鏡(FE−SEM)、透過型走査電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。
【0050】
上記樹脂組成物は、良好な吸放湿性を有している。上記樹脂組成物の吸湿率として好ましくは0.30%以上、15%以下であり、より好ましくは吸湿率が0.35%以上、10%以下であり、更に好ましくは吸湿率が0.40%以上、8%以下である。
【0051】
上記樹脂組成物の製造方法は、特に制限されないが、ポリエステルと、本発明の共重合体を混合する工程を含むことが好ましい。通常は溶融混練(混合)することが好ましいが、溶剤に溶解して混合してもよい。
溶融混練する際の温度は、特に制限されないが、例えば、250〜350℃が好ましい。より好ましくは255〜320℃であり、更に好ましくは260〜310℃である。
上記溶融混練の温度が上記好ましい範囲であれば、本発明の共重合体とポリエステルとがより充分に混練される。
上記溶融混練を行う時間は特に制限されないが、例えば1〜60分が好ましい。より好ましくは2〜30分である。
【0052】
上記樹脂組成物を混合する際の装置としては、特に限定されないが、一軸押出機、二軸押出機、双腕型ニーダー等を用いることができる。また、混合する工程は、回分式でも連続式でも行うことができる。
上記樹脂組成物は、上記混合する工程以外に任意のその他の工程を行って製造してもよく、その他の工程としては例えば、乾燥工程、成型工程等が挙げられる。
【0053】
上記樹脂組成物は、ポリエステル繊維の原料として好適であるが、繊維以外の用途にも用いることができるため、その形状は特に制限されず、例えばペレット状や、シート状、棒状、塊状、紛体状とすることができる。
【0054】
上記樹脂組成物は、本発明のN−ビニルラクタム系共重合体を、樹脂組成物100質量%に対して0.1〜40質量%含有することが好ましい。より好ましくは0.5〜35質量%であり、更に好ましくは1〜30質量%である。
上記樹脂組成物は、ポリエステルと、本発明の共重合体以外の成分を含んでいてもよい。ポリエステルと、本発明の共重合体以外の成分としては、酸化防止剤;可塑剤;難燃剤;酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の白色顔料等が例示される。
【0055】
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含む場合、溶融混錬時の共重合体の熱分解をより充分に抑制することができる。
上記酸化防止剤は、共重合体の酸化を防止するものであれば特に制限されないが、フェノール系化合物、リン系化合物及び硫黄系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むものが好ましい。
【0056】
上記フェノール系化合物は、芳香族置換基上に水酸基を有するものであれば特に制限されないが、フェノール性水酸基に対してオルト位及びパラ位の少なくともいずれかに置換基を有するものが好ましい。
上記置換基としては、特に制限されないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基等の炭化水素基が挙げられる。また、上記炭化水素基は、水酸基等のヘテロ原子を含む置換基や、エステル、エーテル等のヘテロ原子を含む構造を有していてもよい。
上記置換基は、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等の分岐構造を有するものであることが好ましい。
上記炭化水素基の炭素数は、特に制限されないが、1〜70が好ましい。より好ましくは5〜50である。上記炭化水素基が置換基を有している場合、上記炭素数には、置換基を構成する炭素原子の数も含まれるものとする。
【0057】
上記フェノール系化合物は、フェノール性水酸基に対してオルト位及びパラ位のうち少なくとも2つの位置に分岐構造を有する炭化水素基を有するものであることが好ましい。より好ましくは、少なくともオルト位の2つの位置に分岐構造を有する炭化水素基を有するものであり、更に好ましくはオルト位及びパラ位の3つの位置に分岐構造を有する炭化水素基を有するものである。
【0058】
上記フェノール系化合物としては、例えば、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニル=アクリラート、2,2’−ジメチル−2,2’−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジイル)ジプロパン−1,1’−ジイル=ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパノアート]、ペンタエリトリトール=テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等のヒンダードフェノール類等が挙げられる。
【0059】
上記フェノール系化合物として、好ましくは2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニル=アクリラート、ペンタエリトリトール=テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼンであり、より好ましくは2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニル=アクリラート、ペンタエリトリトール=テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]である。
【0060】
上記リン系化合物は構造中にリン原子を有するものであれば特に制限されないが、好ましくはリン酸エステル構造を有するものであり、より好ましくはリン酸トリエステル構造を有するものである。
上記リン系化合物は、下記式(4);
【0061】
【化4】
【0062】
(式中、Rは、同一又は異なって、炭化水素基を表す。)で表される構造であることが好ましい。上記式(4)における炭化水素基は、水酸基等のヘテロ原子を含む置換基や、エステル、エーテル、リン酸エステル等のヘテロ原子を含む構造を有していてもよく、2つのRにより環構造を形成していてもよい。
【0063】
上記リン系化合物としては、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2−tert−ブチル−6−メチル−4−{3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル}フェノール、2,2’−メチレンビス(4,6―ジーt―ブチルフェニル)オクチルホスファイト、3,9−ビス(オクタデシルオキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、亜リン酸トリス(4−ノニルフェニル)、亜リン酸ジフェニル(2−エチルヘキシル)、ジフェニルイソデシルホスファイト、亜リン酸トリイソデシル、亜リン酸トリフェニル等が挙げられる。
【0064】
上記リン系化合物としては、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン等のリン酸トリエステル構造を2以上有する化合物が好ましい。
【0065】
上記硫黄系化合物は、構造中に硫黄原子を有するものであれば特に制限されないが、好ましくはチオエーテル構造を有するものである。
【0066】
上記硫黄系化合物として、より好ましくは下記式(5);
【0067】
【化5】
【0068】
(式中、R、R10は、同一又は異なって、炭化水素基を表す。pは、1〜10の数である。)で表される構造である。
上記炭化水素基は、水酸基等のヘテロ原子を含む置換基や、エステル、エーテル、チオエーテル等のヘテロ原子を含む構造を有していてもよい。R、R10がチオールエーテル構造を有するものであってもよい。
としては炭素数1〜25のアルキル基が好まく、より好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。
10としてはチオールエーテル構造を有するものが好ましい。
pとしては1〜5の数が好ましく、より好ましくは2である。
【0069】
上記硫黄系化合物としては、例えば、2,2−ビス({[3−(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)−1,3−プロパンジイル=ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオナート]、3,3’−チオビスプロピオン酸ジトリデシル等が挙げられる。
上記硫黄系化合物としては2,2−ビス({[3−(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)−1,3−プロパンジイル=ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオナート]等のチオールエーテル構造を2以上有する化合物が好ましい。
【0070】
上記酸化防止剤は、フェノール系化合物を含むものであることが好ましい。
フェノール系化合物は、ラジカル捕捉機能を有する一次酸化防止剤であり、リン系化合物及び硫黄系化合物は過酸化物分解機能を有する二次酸化防止剤であり、これらは異なる反応機構により酸化を防止するため、酸化防止剤としては、一次酸化防止剤と二次酸化防止剤とを併用することが好ましい。
上記酸化防止剤としてより好ましくはフェノール系化合物と、リン系化合物及び/又は硫黄系化合物とを含むものであり、更に好ましくはフェノール系化合物とリン系化合物とを含むものである。
【0071】
上記酸化防止剤がフェノール系化合物を含む場合、フェノール系化合物の含有割合は、全酸化防止剤100質量%に対して10〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは20〜90質量%であり、更に好ましくは30〜80質量%である。
【0072】
上記酸化防止剤がリン系化合物を含む場合、リン系化合物の含有割合は、全酸化防止剤100質量%に対して10〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは20〜90質量%であり、更に好ましくは30〜80質量%である。
【0073】
上記酸化防止剤が硫黄系化合物を含む場合、硫黄系化合物の含有割合は、全酸化防止剤100質量%に対して10〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは20〜90質量%であり、更に好ましくは30〜80質量%である。
【0074】
上記酸化防止剤として、フェノール系化合物と、リン系化合物及び/又は硫黄系化合物とを併用する場合、リン系化合物及び/又は硫黄系化合物の合計の含有割合は、フェノール系化合物100質量%に対して30〜200質量%であることが好ましい。より好ましくは50〜180質量%であり、更に好ましくは70〜150質量%である。
【0075】
上記樹脂組成物が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有割合は、共重合体100質量%に対して0.01〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは0.03〜7質量%である。酸化防止剤の含有割合が上記好ましい範囲であれば共重合体の熱分解をより充分に抑制することができ、着色をより充分に低減させることができる。
【0076】
上記樹脂組成物における、酸化防止剤以外のその他の成分の含有割合は、特に制限されないが、上記樹脂組成物100質量%に対して0〜3質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜1質量%である。
【発明の効果】
【0077】
本発明のN−ビニルラクタム系共重合体は、上述の構成よりなり、繊維の機械強度低下を抑制し、吸湿性及び耐着色性を向上させることができるため、繊維製品等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0079】
<重合平均分子量の測定条件>
装置:東ソー製 HLC−8320GPC
検出器:RI
カラム:東ソー製 TSK−GEL ALPHA−M,ALPHA−2500
カラム温度:40℃
流速:0.8ml/min
検量線:TSKgel standard Poly(ethylene oxide)
溶離液:アセトニトリルと0.2M 硝酸ナトリウム水溶液とを1:4で混合した溶液
【0080】
<機械強度評価>
樹脂組成物を手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC−180C型)を用いて、270℃、10MPaで1分間溶融プレス成型して、厚さ100μmの未延伸フィルムを作成した。得られたフィルムに対し、重さ2.7gの球体を150mmの高さから自由落下させ、球体がフィルムに衝突時にフィルムが割れないものを○、該条件では割れるが、100mmの高さから自由落下させ、球体がフィルムに衝突時に割れないものを△、いずれも割れるものを×とした。
【0081】
<吸湿性>
樹脂組成物を、手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC−180C型)を用いて、270℃で未延伸フィルムを作製した。得られたフィルムをラボミルサーで粉砕した。得られたサンプル0.8gを110℃で12時間乾燥した質量(W1)を測定した。続いて、フィルムを30℃、相対湿度90%の恒温槽にて保管し、24時間後に取り出して吸湿後の質量(W2)を測定した。吸湿率は以下の計算式で計算した。
吸湿率(%)=(W2−W1)×100/W1
【0082】
<次亜リン酸(塩)の含有量分析(イオンクロマト分析)>
次亜リン酸(塩)の含有量は、下記条件にてイオンクロマト分析により測定した。
装置:Metrohm社製 762 Interface
検出器:Metrohm社製 732 IC Detecter
イオン分析方式:サプレッサー法
カラム:Shodex IC SI−90 4E
ガードカラム:Shodex SI−90 G
カラム温度:40℃
溶離液:NaHCO水(2gを水で2000gに希釈)
流速:1.0mL/min
【0083】
<製造例1>
温度計、還流冷却管を備えた容量1Lの四つ口フラスコに、工業用ブタノール(以下、「BuOH」と称する)649.1g、および48%水酸化ナトリウム水溶液15.6gを仕込み、マグネティックスタラーで撹拌しながら60℃まで昇温した。次に、撹拌下、60℃に保持された反応系中に、アリルグリシジルエーテル(以下、「AGE」と称する)100.0gを120分かけて等速で滴下した後、更に180分間、60℃に維持(熟成)して反応を終了した。
当該反応液を30℃まで冷却した後、上記フラスコから還流冷却管を取り外し、リービッヒ冷却管、1Lの受器、及び窒素投入管を取り付けた。上記反応系を6.7kPaまで減圧後、反応液を加熱し、液の温度が100℃になるまで未反応のBuOH及び水を留去した。次に、反応液を100℃に維持しながら窒素ガスを反応に使用したAGEに対し6モル%/時で270分間投入し、更に未反応のBuOH及び水を留去した。
このようにして1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オール(以下、「A1B」と称する)を81.0質量%含む単量体組成物(1)を得た。25℃において100gの水にA1Bを10g溶解させた際の不溶分は9gであった。
【0084】
<実施例1>
二枚パドル型の攪拌翼、ガラス製の蓋、撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、純水698.3質量部を仕込み、窒素気流下200rpmで撹拌して、90℃まで昇温した。次いで90℃を維持し、窒素気流下200rpmで撹拌したまま、単量体溶液として、N−ビニルピロリドン(以下、「NVP」と記す)953.1質量部を240分間、製造例1で得られた単量体組成物(1)29.5質量部を120分間、開始剤溶液として15質量%2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩水溶液(以下、「15%V−50水溶液」と記す)65.1質量部を255分間、連鎖移動剤として5質量%次亜リン酸ナトリウム一水和物水溶液(以下、「5%SHP水溶液」と記す)253.9質量部を150分間、それぞれ別々の供給経路を通じて滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行った。NVPの滴下終了後、さらに120分間にわたって反応溶液を90℃に維持して重合を完結させた。なお、重合完結後の固形分濃度は50質量%であり、NVP及びA1Bの消費率はそれぞれ99.9%、98.0%であった。よって、得られた共重合体(1)におけるNVPとA1Bの含有量はそれぞれ97.6質量%、2.4質量%であった。
次いで減圧乾燥してラボミルサーにて粉砕することで目的の共重合体(1)の粉体(紛体)を得た。得られた共重合体(1)の重量平均分子量は18,000であった。また、紛体中に含まれるSHP含有量は1,000ppmであった。
【0085】
<実施例2>
二枚パドル型の攪拌翼、ガラス製の蓋、撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、純水673.5質量部を仕込み、窒素気流下200rpmで撹拌して、90℃まで昇温した。次いで90℃を維持し、窒素気流下200rpmで撹拌したまま、単量体溶液として、NVP929.0質量部を240分間、製造例1で得られた単量体組成物(1)48.9質量部を120分間、15%V−50水溶液96.8質量部を255分間、5%SHP水溶液251.7質量部を150分間、それぞれ別々の供給経路を通じて滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行った。NVPの滴下終了後、さらに120分間にわたって反応溶液を90℃に維持して重合を完結させた。なお、重合完結後の固形分濃度は50質量%であり、NVP及びA1Bの消費率はそれぞれ100.0%、98.9%であった。よって、得られた共重合体(2)におけるNVPとA1Bの含有量はそれぞれ96.0質量%、4.0質量%であった。
次いで減圧乾燥してラボミルサーにて粉砕することで目的の共重合体(2)の粉体(紛体)を得た。得られた共重合体(2)の重量平均分子量は19,000であった。また、紛体中に含まれるSHP含有量は700ppmであった。
【0086】
<実施例3>
二枚パドル型の攪拌翼、ガラス製の蓋、撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、純水306.5質量部を仕込み、窒素気流下200rpmで撹拌して、90℃まで昇温した。次いで90℃を維持し、窒素気流下200rpmで撹拌したまま、単量体溶液として、NVP371.7質量部を240分間、製造例1で得られた単量体組成物(1)19.6質量部を120分間、15%V−50水溶液38.7質量部を255分間、5%SHP水溶液96.8質量部を230分間、それぞれ別々の供給経路を通じて滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行った。NVPの滴下終了後、さらに120分間にわたって反応溶液を90℃に維持して重合を完結させた。なお、重合完結後の固形分濃度は50質量%であり、NVP及びA1Bの消費率はそれぞれ99.9%、97.1%であった。よって、得られた共重合体(3)におけるNVPとA1Bの含有量はそれぞれ96.0質量%、4.0質量%であった。
次いで減圧乾燥してラボミルサーにて粉砕することで目的の共重合体(3)の粉体(紛体)を得た。得られた共重合体(3)の重量平均分子量は41,000であった。また、紛体中に含まれるSHP含有量は600ppmであった。
【0087】
<実施例4>
二枚パドル型の攪拌翼、ガラス製の蓋、撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、純水1177.0質量部、4.8質量%水酸化ナトリウム水溶液3.6質量部、単量体溶液としてNVP116.6質量部、SHP9.8質量部を仕込み、窒素気流下200rpmで撹拌して、90℃まで昇温した。次いで90℃を維持し、窒素気流下200rpmで撹拌したまま、単量体溶液として、NVP1049.7質量部を230分間、スチレン(25℃において100gの水にStを10g溶解させた際の不溶分は10gであった。)61.4質量部を240分間、15%V−50水溶液81.8質量部を240分間、それぞれ別々の供給経路を通じて滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行った。NVPの滴下終了後、さらに130分間にわたって反応溶液を90℃に維持して重合を完結させた。なお、重合完結後の固形分濃度は50質量%であり、NVP及びスチレンの消費率はそれぞれ99.3%、100.0%であった。よって、得られた共重合体(4)におけるNVPとスチレンの含有量はそれぞれ95.0質量%、5.0質量%であった。
次いで減圧乾燥してラボミルサーにて粉砕することで目的の共重合体(4)の粉体(紛体)を得た。得られた共重合体(4)の重量平均分子量は19,000であった。また、紛体中に含まれるSHP含有量は3,000ppmであった。
【0088】
<実施例5>
二枚パドル型の攪拌翼、ガラス製の蓋、撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、純水1177.1質量部、4.8質量%水酸化ナトリウム水溶液3.8質量部、単量体溶液としてNVP120.4質量部、SHP9.2質量部を仕込み、窒素気流下200rpmで撹拌して、90℃まで昇温した。次いで90℃を維持し、窒素気流下200rpmで撹拌したまま、単量体溶液として、NVP1083.1質量部を230分間、スチレン24.6質量部を240分間、15%V−50水溶液81.9質量部を240分間、それぞれ別々の供給経路を通じて滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行った。NVPの滴下終了後、さらに130分間にわたって反応溶液を90℃に維持して重合を完結させた。なお、重合完結後の固形分濃度は50質量%であり、NVP及びスチレンの消費率はそれぞれ99.6%、100.0%であった。よって、得られた共重合体(5)におけるNVPとスチレンの含有量はそれぞれ98.0質量%、2.0質量%であった。
次いで減圧乾燥してラボミルサーにて粉砕することで目的の共重合体(5)の粉体(紛体)を得た。得られた共重合体(5)の重量平均分子量は19,000であった。また、紛体中に含まれるSHP含有量は1,200ppmであった。
【0089】
<実施例6>
二枚パドル型の攪拌翼、ガラス製の蓋、撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、2−プロパノール(以下、「IPA」と記す)90.0質量部と上記単量体組成物(1)1.9質量部を仕込み、窒素気流下100rpmで撹拌して、還流するまで昇温した。単量体溶液として、NVP35.6質量部を用意した。開始剤溶液としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(以下、「V−601」と記す)1.1質量部にIPA21.4質量部を加えた溶液を調製した。還流を保ちながら、上記で調製を行った単量体溶液と開始剤溶液を120分間連続的に滴下した。滴下完了後に5質量%のV−601のIPA溶液を1.1質量部、さらに滴下完了から60分後に5質量%のV−601のIPA溶液を1.1質量部加えて60分還流を保って重合反応を完結させた。なお、重合完結後の固形分濃度は25質量%であり、NVP及びA1Bの消費率はそれぞれ99.2%、71.9%であった。よって、得られた共重合体(6)におけるNVPとA1Bの含有量はそれぞれ97.0質量%、3.0質量%であった。
IPAの一部を留去して、5%SHP水溶液を0.5質量部添加した。均一に混合した後、減圧乾燥してラボミルサーにて粉砕することで目的の共重合体組成物(6)の粉体(紛体)を得た。得られた共重合体(6)の重量平均分子量は37,900であった。また、紛体中に含まれるSHP含有量は700ppmであった。
【0090】
<実施例7>
二枚パドル型の攪拌翼、ガラス製の蓋、撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、IPA55.5質量部とNVP35.6質量部を仕込み、窒素気流下100rpmで撹拌して、還流するまで昇温した。単量体溶液として、スチレン1.9質量部にIPA35.6質量部を加えた溶液を調製した。開始剤溶液として1.1質量部のV−601にIPA20.3質量部を加えた溶液を調製した。還流を保ちながら、上記で調製を行った単量体溶液と開始剤溶液を180分間連続的に滴下した。滴下完了から30分後に5質量%のV601のIPA溶液を3質量部、さらに滴下完了から90分後に5質量%のV601のIPA溶液を3質量部加えて60分還流を保って重合反応を完結させた。なお、重合完結後の固形分濃度は25質量%であり、NVP及びスチレンの消費率はそれぞれ97.6%、100.0%であった。よって、得られた共重合体(7)におけるNVPとスチレンの含有量は94.8質量%、5.2質量%であった。IPAの一部を留去して、5%SHP水溶液を0.9質量部添加した。均一に混合した後、次いで減圧乾燥してラボミルサーにて粉砕することで目的の共重合体組成物(7)の粉体(紛体)を得た。得られた共重合体(7)の重量平均分子量は19,800であった。また、紛体中に含まれるSHP含有量は1,200ppmであった。
【0091】
<比較例1>
5%SHP水溶液を添加しなかったこと以外は実施例6と同様の方法で目的の比較共重合体(1)の粉体(紛体)を得た。得られた比較共重合体(1)の重量平均分子量は37,900であった。また、紛体中にSHPは含まれなかった。
【0092】
<比較例2>
5%SHP水溶液を添加しなかったこと以外は実施例7と同様の方法で目的の比較共重合体(2)の粉体(紛体)を得た。得られた比較共重合体(2)の重量平均分子量は19,800であった。また、紛体中にSHPは含まれなかった。
【0093】
実施例1〜7で得られた共重合体(1)〜(5)、共重合体組成物(6)、(7)及び比較例1、2で得られた比較共重合体(1)、(2)2.0gをそれぞれ窒素雰囲気において260℃で60分間加熱した。加熱後の樹脂組成物をラボミルサーにて粉砕して得られた紛体1.6gについて日本電色工業株式会社製Spectrophotometer SE6000によりイエローインデックス値(YI)を測定した。結果を表1に示した。
【0094】
【表1】
【0095】
<樹脂組成物の吸湿性及び機械強度並びにYIの評価>
ポリエステル樹脂(ユニチカ製、MA−2101M)と、得られた共重合体(1)〜(7)、比較共重合体(1)、(2)又はNVPのホモポリマー(PVP)(比較重合体(3))を、表2に記載の配合で、ミキサー(東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて270℃で5分間混練し、樹脂組成物(組成物(1)〜(7)、比較組成物(1)〜(3))を得た。得られた樹脂組成物及びポリエステル樹脂の吸湿率および機械強度を測定した。
更に、組成物(1)〜(7)及び比較組成物(1)〜(3)について、手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC−180C型)を用いて、作成した未延伸フィルムをラボミルサーにより粉砕した。得られた紛体1.6gについてYIを測定した。
結果を表2に示した。
【0096】
【表2】
【0097】
<樹脂組成物の酢酸消臭能力の評価>
2個の蓋つきガラス製シャーレ(内径27mm)を用意し、上記(3)、(4)のポリエステル樹脂組成物(組成物(3)、(4))をそれぞれ6.0g秤量した。また比較例として、ポリエステル樹脂のみを6.0gを入れたシャーレ、及び、ブランクとして空のシャーレを用意した。
この4個のシャーレに蓋をして、それぞれコック付きサンプリングバッグ(ジーエルサイエンス株式会社製 スマートバッグPA 容量3L 型式AAK)に入れ、ヒートシールして完全に密閉した。各サンプリングバッグ内を真空にした後、窒素ガス2Lを量り入れた。その後、各バッグに酢酸含有空気をガスタイトシリンジを用いて5mL量り入れた。各バッグ内のシャーレの蓋を開け2時間静置した後、気体検知管(ガステック社製 No.81 酢酸用)を用い、気体採取器(株式会社ガステック製 型式GV−100S)でバッグ内の気体50mLを1回吸引して、酢酸濃度を測定した。検知管による実測値をもとに、低減率を算出した。
酢酸の低減率は下式のように算出した。
低減率(%)=(ブランクのガス濃度−試料入りのガス濃度)÷(ブランクのガス濃度)×100
本結果を表3に示す。
【表3】
【0098】
<樹脂組成物のジアセチル消臭能力の評価>
蓋つきガラス製シャーレ(内径27mm)を用意し、上記(4)のポリエステル樹脂組成物(組成物(4))を2.5g秤量した。また比較例として、ポリエステル樹脂のみを2.5gを入れたシャーレ、及び、ブランクとして空のシャーレを用意した。
この3個のシャーレに蓋をして、それぞれコック付きサンプリングバッグ(ジーエルサイエンス株式会社製 スマートバッグPA 容量3L 型式AAK)に入れ、ヒートシールして完全に密閉した。各サンプリングバッグ内を真空にした後、窒素ガス2Lを量り入れた。その後、各バッグにジアセチル含有窒素ガスをガスタイトシリンジを用いて5mL量り入れた。各バッグ内のシャーレの蓋を開け2時間静置した後、気体検知管(株式会社ガステック製 No.92 アセトアルデヒド用)を用い、気体採取器(株式会社ガステック製 型式GV−100S)でバッグ内の気体100mLを3回吸引して、ジアセチル濃度の低減率を比較した。なお、測定値は、検知管の説明書に記載の換算スケールを用いてジアセチル濃度に換算した。
ジアセチルの低減率は下式のように算出した。
低減率(%)=(ブランクのガス濃度−試料入りのガス濃度)÷(ブランクのガス濃度)×100
本結果を表4に示す。
【表4】