【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、繊維の機械強度低下を抑制し、吸湿性及び耐着色性を向上させる重合体について種々検討したところ、主鎖末端にリン原子を含む置換基を有する、N−ビニルラクタムと疎水性単量体との共重合体、又は、N−ビニルラクタムと疎水性単量体との共重合体及びリン原子を含む化合物を含む組成物をポリエステルと混練すると、高温条件下でポリエステルと溶融混練した場合にも共重合体の分解を抑制することができ、耐着色性に優れ、機械強度低下を抑制し、吸湿性にも優れることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち第1の本発明は、N−ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有し、主鎖末端にリン原子を含む置換基を有するN−ビニルラクタム系共重合体である。
また第2の本発明は、N−ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有するN−ビニルラクタム系共重合体とリン原子を含む化合物とを含むN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物である。
以下、本明細書中において、単に「本発明」という場合には第1及び第2の本発明に共通する事項を意味するものとする。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0009】
<N−ビニルラクタム系共重合体>
本発明のN−ビニルラクタム系共重合体(以下、本発明の共重合体ともいう。)は、N−ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する。
上記共重合体が、構造単位(a)を有することにより繊維に吸湿性を付与することができ、構造単位(b)を有することにより、共重合体と繊維との相溶性が向上するため、機械強度を向上させることができる。また、上記共重合体は、構造単位(a)を有することにより臭気成分の消臭能力にも優れることとなる。本発明において優れた消臭能力とは、臭気成分の量又は濃度の少なくとも一方を低減させる効果が高いことを意味する。
第1の本発明の共重合体は、主鎖末端にリン原子を含む置換基を有するものであり、少なくとも一の主鎖末端にリン原子を含む置換基を有するものであればよい。第1の本発明の共重合体は、このような構造を有することにより、高温条件下でポリエステルと溶融混練した場合にも共重合体の熱分解が抑制され、着色を抑制することができる。
なお、本発明において、N−ビニルラクタム系共重合体の主鎖とは、上記共重合体の原料となる単量体由来の構造単位を少なくとも1つ含む鎖を意味する。上記共重合体に分岐がある場合、分岐鎖もまた、上記共重合体の原料となる単量体由来の構造単位を少なくとも1つ含む鎖を意味し、主鎖に含まれる。
【0010】
上記リン原子を含む置換基は、リン原子を含むものであれば特に制限されないが、還元性の基であることが好ましい。還元性を有するリン原子を含む置換基としては例えば、次亜リン酸(塩)基、亜リン酸(塩)基等が挙げられる。より好ましくは次亜リン酸(塩)基である。
なお、上記次亜リン酸(塩)基は、次亜リン酸基又はこの塩を意味し、上記亜リン酸(塩)基は、亜リン酸基又はこの塩を意味する。
上記塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられ、より具体的には、金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属の塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属の塩;アルミニウム塩、鉄塩等の塩が挙げられる。有機アミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;モルホリン塩等が挙げられる。これらの中でも、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
【0011】
第1の本発明の共重合体の主鎖末端にリン原子を含む置換基を導入する方法としては特に制限されないが、後述する連鎖移動剤としてリン原子を含む化合物を用いる方法等が挙げられる。
【0012】
第1の本発明のN−ビニルラクタム系共重合体において、主鎖末端(分子末端)に存在する、リン原子を含む置換基を有する構造単位の含有割合は、N−ビニルラクタム系共重合体100質量%に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上である。また、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは7質量%以下であり、更に好ましくは6質量%以下である。
【0013】
上記主鎖末端のリン原子を含む置換基を有する構造単位の分析は、例えば、
31P−NMR測定等により可能である。なお、上記リン原子を含む化合物として、次亜リン酸(塩)のように2度以上還元剤として寄与する化合物を使用する場合、N−ビニルラクタム系共重合体の分子末端以外にリンを含む構造単位が形成される場合があり得る(例えば、ホスフィン酸ナトリウム基は、分子末端以外にも−P(=O)(ONa)−として分子内に取り込まれ得る。)。この場合であっても、
31P−NMR等により分子末端のリンを含む構造単位を測定することは可能である。
【0014】
上記N−ビニルラクタム系単量体(A)は、環状N−ビニルラクタム構造を有する単量体であれば特に制限されないが、下記式(1);
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。mは、0〜4の整数を表す。nは、1〜3の整数を表す。)で表される構造であることが好ましい。
上記R
1〜R
4におけるアルキル基の炭素数としては、1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4である。上記アルキル基として更に好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
上記R
1〜R
4における置換基としては、特に制限されないが、カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらのエステルや塩;アミノ基、水酸基等が挙げられる。
R
1〜R
3としては水素原子であることが好ましい。R
4としては水素原子又はメチル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子である。
mとしては、0〜2の整数であることが好ましく、より好ましくは0〜1の整数であり、最も好ましくは0である。
nとしては、1又は2であることが好ましく、より好ましくは1である。
【0017】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、1−(2−プロペニル)−2−ピロリドン等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。N−ビニルラクタムとしては、ピロリドン環を有する不飽和単量体が好ましい。より好ましくはN−ビニルピロリドンである。
【0018】
上記疎水性単量体(B)は、N−ビニルラクタム系単量体と共重合でき、疎水性の化合物であれば、特に制限されないが、25℃の水100gへの溶解度が10g以下であることが好ましい。より好ましくは5g以下であり、更に好ましくは3g以下である。疎水性単量体(B)の水への溶解度が上記好ましい範囲であれば、共重合体に疎水性をより充分に付与することができるため、ポリエステル等の疎水性の繊維と本発明の共重合体との相溶性がより向上し、繊維の機械強度をより向上させることができる。
【0019】
疎水性単量体(B)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換若しくは無置換の(メタ)アクリルアミド;スチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等のアルケン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類;1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オール、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体等が挙げられる。
これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記疎水性単量体(B)として、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を有する化合物、又は、環構造を有する化合物であることが好ましい。上記疎水性単量体(B)は、環構造を有する化合物を含むものであることが好ましく、該化合物としては、ビニルアリール単量体が好ましい。上記ビニルアリール単量体としてはスチレンが好ましい。
【0021】
上記疎水性単量体(B)はまた、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を有する化合物を含むものであることが好ましく、該化合物としては、ビニルエーテル類が好ましい。上記ビニルエーテル類としては、下記式(2);
【0022】
【化2】
【0023】
(式中、R
5は、水素原子又はメチル基を表す。R
6は、メチレン基、エチレン基又は直接結合を表す。R
7は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)で表される構造であることが好ましい。
上記置換基としては、例えば水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。
上記ビニルエーテル類としてより好ましくは、下記式(3);
【0024】
【化3】
(式中、R
5は、水素原子又はメチル基を表す。R
6は、直接結合、メチレン基又はエチレン基を表す。X、Yは、水酸基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜17のアルコキシ基を表す。ただし、X、Yのうち一方は水酸基を表し、もう一方は置換基を有していてもよい炭素数1〜17のアルコキシ基を表す。)で表される化合物である。
すなわち、上記疎水性単量体(B)は、上記式(3)で表される化合物を含むものであることが好ましい。
【0025】
上記アルコキシ基が置換基を有している場合、上記炭素数には、置換基を構成する炭素原子の数も含まれるものとする。上記置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミド基等が挙げられる。
上記置換基を有していてもよいアルコキシ基の炭素数は1〜15が好ましく、より好ましくは1〜12であり、特に好ましくは1〜6である。
上記式(3)においてXが水酸基であり、Yが炭素数1〜6のアルコキシ基であることが好ましい。上記Yは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基であることが好ましい。より好ましくはブトキシ基である。
上記式(3)におけるR
5は、水素原子であることが好ましい。
上記式(3)におけるR
6は、メチレン基であることが好ましい。
上記ビニルエーテル類として更に好ましくは、1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オールである。
【0026】
本発明の共重合体は、N−ビニルラクタム系単量体(A)及び疎水性単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。
上記その他の単量体(E)としては、例えば、(i)アクリル酸、メタアクリル酸等の不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩;(ii)フマル酸、マレイン酸、メチレングルタル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩(一塩であっても二塩であっても良い);(iii)3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩;(iv)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコール及びこれらの水酸基にアルキレンオキシドを付加したアルキレンオキシド付加物;(v)N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールおよびこれらの塩またはこれらの4級化物等の不飽和アミン;(vi)(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル及びその誘導体等が挙げられる。
これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記(i)〜(iii)、(v)における塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が例示される。上記(iv)におけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が例示され、炭素数1〜20のアルキレンオキシドが好ましく、炭素数1〜4のアルキレンオキシドがより好ましい。上記(iv)におけるアルキレンオキシドの付加モル数としては、上記(iv)の化合物1モルあたり0〜50モルが好ましく、0〜20モルがより好ましい。
【0027】
上記共重合体は、構造単位(a)の割合が、共重合体100質量%に対して70〜99.9質量%であることが好ましい。より好ましくは75〜99質量%であり、更に好ましくは80〜99質量%であり、特に好ましくは85〜99質量%である。
上記共重合体は、構造単位(b)の割合が、全構造単位(共重合体)100質量%に対して0.1〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜25質量%であり、更に好ましくは1〜20質量%であり、特に好ましくは1〜15質量%である。
構造単位(a)及び(b)の割合が、上記好ましい範囲であれば、繊維の吸湿性と機械強度との両方をより向上させることができる。
【0028】
上記共重合体は、上記ビニルエーテル類由来の構造単位を有する場合、該構造単位の割合が、共重合体100質量%に対して、0.1〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜25質量%であり、更に好ましくは1〜20質量%であり、特に好ましくは1〜15質量%である。
上記共重合体は、上記環構造を有する化合物由来の構造単位を有する場合、該構造単位の割合が、共重合体100質量%に対して、0.1〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜25質量%であり、更に好ましくは1〜20質量%であり、特に好ましくは1〜15質量%である。
【0029】
上記共重合体は、上述のとおり構造単位(e)を有していてもよく、構造単位(e)の割合は、共重合体100質量%に対して0〜25質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜20質量%であり、更に好ましくは0〜10質量%である。
【0030】
上記共重合体は、重量平均分子量が1000〜3000000であることが好ましい。
共重合体の重量平均分子量が上記好ましい範囲であれば、本発明の共重合体をポリエステル等の繊維に用いた場合に、繊維の機械的強度及び吸湿性がより向上することになる。
重量平均分子量としてより好ましくは3000〜1000000であり、更に好ましくは5000〜800000であり、一層好ましくは5000〜500000であり、特に好ましくは5000〜100000である。
上記重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0031】
<共重合体の製造方法>
本発明の共重合体の製造は、特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例、並びに、各単量体の好ましい割合は、上述のとおりである。
上記共重合体の製造方法は、N−ビニルラクタム系単量体(A)及び疎水性単量体(B)を含む単量体成分を重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)を含むことが好ましい。
【0032】
上記重合工程における、単量体成分の重合を開始する方法としては、特に制限されないが、例えば、重合開始剤を添加する方法、UVを照射する方法、熱を加える方法、光開始剤存在下に光を照射する方法等が挙げられる。
上記重合工程において、重合開始剤を用いることが好ましい。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ‐t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アスコルビン酸と過酸化水素、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤等が好適である。これらの重合開始剤のうち、残存単量体が減少する傾向にあることから、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ系化合物が好ましく、アゾ系化合物が最も好ましい。上記アゾ系化合物の中でも特に2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩が好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
ナイロンに対して吸湿性を付与する場合には、ナイロンと吸湿性付与剤との混練温度が低いため、重合開始剤を工夫することにより着色を抑制することができる。これに対してポリエステルの場合、ポリエステルと共重合体とを高温で混練する必要があるため、重合開始剤を工夫することのみで着色を抑制することが困難である。よって、本発明の共重合体をポリエステルに吸湿性を付与する付与剤として用いる場合に、特に、本発明の技術的意義がより効果的に発揮される。
【0033】
上記重合開始剤の使用量としては、単量体の使用量(N−ビニルラクタム系単量体(A)疎水性単量体(B)及びその他の単量体(E)の合計の使用量)1モルに対して、0.1g以上、10g以下であることが好ましく、0.1g以上、7g以下であることがより好ましく、0.1g以上、5g以下であることが更に好ましい。
【0034】
上記重合工程においては、連鎖移動剤を用いることが好ましい。
第1の本発明の共重合体の製造において、連鎖移動剤としては、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩)(これらの水和物を含む)、亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸(塩)等のリン原子含有化合物を用いることが好ましく、これらの連鎖移動剤の存在下で、単量体成分を重合することにより、共重合体の主鎖末端に、リン原子を含む置換基を導入することができる。連鎖移動剤として次亜リン酸(塩)、を用いる場合、重合工程を水溶媒中で行うことができ、後述するとおり、有機溶媒を用いた場合よりも生産性を向上させることができる。
これらの中でも、次亜リン酸(塩)を用いることがより好ましい。
また、上記重合工程において次亜リン酸(塩)、亜リン酸(塩)以外の他の連鎖移動剤を併用することもできる。他の連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン等のハロゲン化物;イソプロピルアルコール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸(塩);亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸(塩);亜ジチオン酸ナトリウム等の亜ジチオン酸(塩);ピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸(塩)などが挙げられる。上記他の連鎖移動剤は、単独で使用されても、2種以上を併用されてもよい。
第2の本発明の共重合体の製造において、連鎖移動剤として上記リン原子含有化合物を用いても、その他の連鎖移動剤を用いてもよい。その他の連鎖移動剤としては、イソプロピルアルコールが好ましい。
第1の本発明の共重合体の製造における連鎖移動剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量1モルに対して、0.01g以上、10g以下であることが好ましく、0.1g以上、8g以下であることがより好ましい。
第2の本発明の共重合体の製造における連鎖移動剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量1モルに対して、0.01〜600gであることが好ましく、0.1〜500gであることがより好ましい。
【0035】
上記重合工程において、溶剤を使用する場合、溶剤としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(2−プロパノール)、n−ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール類等から選ばれる1種または2種以上が例示される。溶剤としては、水、イソプロピルアルコールが好ましい。より好ましくは水である。
疎水性単量体は、水への溶解性が小さいため、有機溶媒を用いて重合反応を行うことが容易であるが、本発明の共重合体は、重合工程後、乾燥させて、紛体として取り扱うことが好ましく、上記乾燥工程は、重合工程において有機溶媒を使用する場合、防爆設備が必要となる。重合工程において水を使用する場合には、防爆設備を必要とせず、設備投資にかかるコストを削減することができる。また、重合工程において有機溶媒を使用し、その後水に置換する場合にも、工程時間が延びるため、水を使用する場合には、溶媒を置換する必要がなく、生産性を向上させることができる。
有機溶媒の使用量は、溶剤100質量%に対して、0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜8質量%であり、更に好ましくは0〜5質量%であり、最も好ましくは0質量%である。
溶媒の使用量としては、単量体100質量%に対して40〜1000質量%が好ましい。
【0036】
上記重合工程において、重合温度は、特に限定されるものではないが、比較的低温の方が共重合体の分子量が大きくなるので好ましく、20℃〜100℃の範囲内であれば、重合率がより向上するので更に好ましい。尚、反応時間は、上記重合反応が完結するように、反応温度や、単量体成分、重合開始剤、及び、溶媒等の種類(性質)や組み合わせ、使用量等に応じて、適宜設定すればよい。
【0037】
上記共重合体の製造方法は、重合反応後に、共重合体を熟成する工程を含むことが好ましい。熟成工程を行うことにより、残存モノマー量を低減することができる。上記熟成工程における温度は特に制限されないが、20〜100℃であることが好ましい。上記熟成工程における熟成時間は特に制限されないが、10分〜5時間であることが好ましい。より好ましくは30分〜3時間である。
【0038】
上記共重合体の製造方法は、重合反応後に、次亜リン酸(塩)を添加する工程を含んでいてもよい。このような工程を行うことにより共重合体の耐着色性をより向上させることができる。
【0039】
上記製造方法は、重合反応が終了した時点での水溶液中の固形分濃度(すなわち単量体の重合固形分濃度)は、15質量%以上が好ましく、20〜70質量%であることがより好ましい。このように重合反応終了時の固形分濃度が15質量%以上と高ければ、高濃度で重合反応を行うことになるため、反応速度及び反応率が上がり、残存モノマー量をより充分に抑制することができる。
【0040】
<N−ビニルラクタム系共重合体含有組成物>
第2の本発明は、N−ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有するN−ビニルラクタム系共重合体とリン原子を含む化合物(以下、リン原子含有化合物ともいう)とを含むN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物(以下、単に、共重合体含有組成物ともいう)である。
上記N−ビニルラクタム系共重合体含有組成物は、リン原子含有化合物を含むことにより、高温条件下でポリエステルと溶融混練した場合にも共重合体の熱分解が抑制され、着色を抑制することができる。
第2の本発明のN−ビニルラクタム系共重合体は、N−ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と疎水性単量体(B)由来の構造単位(b)とを有するものであれば、特に制限されず、主鎖末端にリン原子を含む置換基を有していても、有していなくてもよい。
第2の本発明のN−ビニルラクタム系共重合体は、主鎖末端にリン原子を含む置換基を有することを、必須としていない点を除いて、第1の本発明のN−ビニルラクタム系共重合体と同様である。
【0041】
上記リン原子含有化合物はリン原子を有する化合物であれば特に制限されないが、還元性の化合物が好ましい。還元性を有するリン原子含有化合物としては、例えば、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩)(これらの水和物を含む)、亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸(塩)が挙げられる。より好ましくは次亜リン酸(塩)である。上記リン原子含有化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0042】
上記共重合体含有組成物におけるリン原子含有化合物の含有量は、N−ビニルラクタム系共重合体100質量%に対して、0.0001〜1質量%であることが好ましい。この範囲であれば、高温条件下でポリエステルと溶融混練した場合の着色をより充分に抑制することができる。より好ましくは0.001〜0.5質量%であり、更に好ましくは0.002〜0.2質量%である。
上記リン原子含有化合物の含有量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0043】
上記共重合体含有組成物は、N−ビニルラクタム系共重合体及びリン原子含有化合物以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、重合開始剤残渣、残存モノマー、重合時の副生成物、水分等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を含有することができる。
上記その他の成分の含有量は、特に制限されないが、共重合体含有組成物100質量%に対して、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下である。
【0044】
<樹脂組成物>
本発明の共重合体及び共重合体含有組成物は、ポリエステル等との溶融混練用途に用いられることが好ましい。
本発明はまた、本発明のN−ビニルラクタム系共重合体又はN−ビニルラクタム系共重合体含有組成物とポリエステルとを含む樹脂組成物でもある。上記樹脂組成物は、溶融混練用組成物でもある。
本発明のN−ビニルラクタム系共重合体はまた、臭気成分の消臭能力にも優れるものであり、上記樹脂組成物が消臭用途に好適に用いられる。すなわち、上記樹脂組成物からなる消臭性ポリエステル繊維もまた、本発明の1つである。
【0045】
上記消臭性ポリエステル繊維が消臭効果を発揮することができる臭気成分としては、例えば、メチルメルカプタン等のチオール類、アンモニア等のアミン類、酢酸等のカルボン酸類、ノネナール等のアルデヒド類、ジアセチル等のジケトン類等が挙げられる。すなわち、本発明の消臭性ポリエステル繊維は、様々な臭気成分に対して消臭効果を発揮することができ、この理由としては以下のようなことが考えられる。本発明の共重合体は、不飽和単量体(A)由来のラクタム環が有するN部位やカルボニル基で臭気成分を吸着することができること、及び、本発明の共重合体は吸湿性を有するため、吸湿した水を介して水溶性の臭気成分を吸着することができることが考えられる。本発明の消臭性ポリエステル繊維は、上記臭気成分の中でも酢酸等のカルボン酸に対して、より優れた消臭効果を発揮する。
【0046】
上記ポリエステルは、ジカルボン酸とジオールとの重縮合体であり、酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸に由来する構造単位と、ジオール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種のジオールに由来する構造単位とを有するものであることが好ましい。
【0047】
上記ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート等が例示される。
上記ポリエステルは市販品を使用しても、公知の製造方法により製造してもよい。
【0048】
上記樹脂組成物に含まれる、ポリエステルと、本発明の共重合体との質量の比率は、99.9:0.1〜60:40であることが好ましく、99.5:0.5〜65:35であることがより好ましく、99:1〜70:30であることが更に好ましい。
【0049】
上記樹脂組成物は、ポリエステルと、本発明の共重合体との相溶性が良好であることが好ましい。例えば電子顕微鏡で観察した際に、ポリエステルと、本発明の共重合体とのミクロ層分離が観察されないか、または島成分(本発明の共重合体)の平均粒径が3μm以下であることが好ましい。上記島成分の平均粒径は、2μm以下であることがより好ましい。上記島成分の平均粒径は、電界放出系走査電子顕微鏡(FE−SEM)、透過型走査電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。
【0050】
上記樹脂組成物は、良好な吸放湿性を有している。上記樹脂組成物の吸湿率として好ましくは0.30%以上、15%以下であり、より好ましくは吸湿率が0.35%以上、10%以下であり、更に好ましくは吸湿率が0.40%以上、8%以下である。
【0051】
上記樹脂組成物の製造方法は、特に制限されないが、ポリエステルと、本発明の共重合体を混合する工程を含むことが好ましい。通常は溶融混練(混合)することが好ましいが、溶剤に溶解して混合してもよい。
溶融混練する際の温度は、特に制限されないが、例えば、250〜350℃が好ましい。より好ましくは255〜320℃であり、更に好ましくは260〜310℃である。
上記溶融混練の温度が上記好ましい範囲であれば、本発明の共重合体とポリエステルとがより充分に混練される。
上記溶融混練を行う時間は特に制限されないが、例えば1〜60分が好ましい。より好ましくは2〜30分である。
【0052】
上記樹脂組成物を混合する際の装置としては、特に限定されないが、一軸押出機、二軸押出機、双腕型ニーダー等を用いることができる。また、混合する工程は、回分式でも連続式でも行うことができる。
上記樹脂組成物は、上記混合する工程以外に任意のその他の工程を行って製造してもよく、その他の工程としては例えば、乾燥工程、成型工程等が挙げられる。
【0053】
上記樹脂組成物は、ポリエステル繊維の原料として好適であるが、繊維以外の用途にも用いることができるため、その形状は特に制限されず、例えばペレット状や、シート状、棒状、塊状、紛体状とすることができる。
【0054】
上記樹脂組成物は、本発明のN−ビニルラクタム系共重合体を、樹脂組成物100質量%に対して0.1〜40質量%含有することが好ましい。より好ましくは0.5〜35質量%であり、更に好ましくは1〜30質量%である。
上記樹脂組成物は、ポリエステルと、本発明の共重合体以外の成分を含んでいてもよい。ポリエステルと、本発明の共重合体以外の成分としては、酸化防止剤;可塑剤;難燃剤;酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の白色顔料等が例示される。
【0055】
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含む場合、溶融混錬時の共重合体の熱分解をより充分に抑制することができる。
上記酸化防止剤は、共重合体の酸化を防止するものであれば特に制限されないが、フェノール系化合物、リン系化合物及び硫黄系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むものが好ましい。
【0056】
上記フェノール系化合物は、芳香族置換基上に水酸基を有するものであれば特に制限されないが、フェノール性水酸基に対してオルト位及びパラ位の少なくともいずれかに置換基を有するものが好ましい。
上記置換基としては、特に制限されないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基等の炭化水素基が挙げられる。また、上記炭化水素基は、水酸基等のヘテロ原子を含む置換基や、エステル、エーテル等のヘテロ原子を含む構造を有していてもよい。
上記置換基は、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等の分岐構造を有するものであることが好ましい。
上記炭化水素基の炭素数は、特に制限されないが、1〜70が好ましい。より好ましくは5〜50である。上記炭化水素基が置換基を有している場合、上記炭素数には、置換基を構成する炭素原子の数も含まれるものとする。
【0057】
上記フェノール系化合物は、フェノール性水酸基に対してオルト位及びパラ位のうち少なくとも2つの位置に分岐構造を有する炭化水素基を有するものであることが好ましい。より好ましくは、少なくともオルト位の2つの位置に分岐構造を有する炭化水素基を有するものであり、更に好ましくはオルト位及びパラ位の3つの位置に分岐構造を有する炭化水素基を有するものである。
【0058】
上記フェノール系化合物としては、例えば、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニル=アクリラート、2,2’−ジメチル−2,2’−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジイル)ジプロパン−1,1’−ジイル=ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパノアート]、ペンタエリトリトール=テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等のヒンダードフェノール類等が挙げられる。
【0059】
上記フェノール系化合物として、好ましくは2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニル=アクリラート、ペンタエリトリトール=テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ベンゼンであり、より好ましくは2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニル=アクリラート、ペンタエリトリトール=テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]である。
【0060】
上記リン系化合物は構造中にリン原子を有するものであれば特に制限されないが、好ましくはリン酸エステル構造を有するものであり、より好ましくはリン酸トリエステル構造を有するものである。
上記リン系化合物は、下記式(4);
【0061】
【化4】
【0062】
(式中、R
8は、同一又は異なって、炭化水素基を表す。)で表される構造であることが好ましい。上記式(4)における炭化水素基は、水酸基等のヘテロ原子を含む置換基や、エステル、エーテル、リン酸エステル等のヘテロ原子を含む構造を有していてもよく、2つのR
8により環構造を形成していてもよい。
【0063】
上記リン系化合物としては、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2−tert−ブチル−6−メチル−4−{3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル}フェノール、2,2’−メチレンビス(4,6―ジーt―ブチルフェニル)オクチルホスファイト、3,9−ビス(オクタデシルオキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、亜リン酸トリス(4−ノニルフェニル)、亜リン酸ジフェニル(2−エチルヘキシル)、ジフェニルイソデシルホスファイト、亜リン酸トリイソデシル、亜リン酸トリフェニル等が挙げられる。
【0064】
上記リン系化合物としては、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン等のリン酸トリエステル構造を2以上有する化合物が好ましい。
【0065】
上記硫黄系化合物は、構造中に硫黄原子を有するものであれば特に制限されないが、好ましくはチオエーテル構造を有するものである。
【0066】
上記硫黄系化合物として、より好ましくは下記式(5);
【0067】
【化5】
【0068】
(式中、R
9、R
10は、同一又は異なって、炭化水素基を表す。pは、1〜10の数である。)で表される構造である。
上記炭化水素基は、水酸基等のヘテロ原子を含む置換基や、エステル、エーテル、チオエーテル等のヘテロ原子を含む構造を有していてもよい。R
9、R
10がチオールエーテル構造を有するものであってもよい。
R
9としては炭素数1〜25のアルキル基が好まく、より好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。
R
10としてはチオールエーテル構造を有するものが好ましい。
pとしては1〜5の数が好ましく、より好ましくは2である。
【0069】
上記硫黄系化合物としては、例えば、2,2−ビス({[3−(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)−1,3−プロパンジイル=ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオナート]、3,3’−チオビスプロピオン酸ジトリデシル等が挙げられる。
上記硫黄系化合物としては2,2−ビス({[3−(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)−1,3−プロパンジイル=ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオナート]等のチオールエーテル構造を2以上有する化合物が好ましい。
【0070】
上記酸化防止剤は、フェノール系化合物を含むものであることが好ましい。
フェノール系化合物は、ラジカル捕捉機能を有する一次酸化防止剤であり、リン系化合物及び硫黄系化合物は過酸化物分解機能を有する二次酸化防止剤であり、これらは異なる反応機構により酸化を防止するため、酸化防止剤としては、一次酸化防止剤と二次酸化防止剤とを併用することが好ましい。
上記酸化防止剤としてより好ましくはフェノール系化合物と、リン系化合物及び/又は硫黄系化合物とを含むものであり、更に好ましくはフェノール系化合物とリン系化合物とを含むものである。
【0071】
上記酸化防止剤がフェノール系化合物を含む場合、フェノール系化合物の含有割合は、全酸化防止剤100質量%に対して10〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは20〜90質量%であり、更に好ましくは30〜80質量%である。
【0072】
上記酸化防止剤がリン系化合物を含む場合、リン系化合物の含有割合は、全酸化防止剤100質量%に対して10〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは20〜90質量%であり、更に好ましくは30〜80質量%である。
【0073】
上記酸化防止剤が硫黄系化合物を含む場合、硫黄系化合物の含有割合は、全酸化防止剤100質量%に対して10〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは20〜90質量%であり、更に好ましくは30〜80質量%である。
【0074】
上記酸化防止剤として、フェノール系化合物と、リン系化合物及び/又は硫黄系化合物とを併用する場合、リン系化合物及び/又は硫黄系化合物の合計の含有割合は、フェノール系化合物100質量%に対して30〜200質量%であることが好ましい。より好ましくは50〜180質量%であり、更に好ましくは70〜150質量%である。
【0075】
上記樹脂組成物が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有割合は、共重合体100質量%に対して0.01〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは0.03〜7質量%である。酸化防止剤の含有割合が上記好ましい範囲であれば共重合体の熱分解をより充分に抑制することができ、着色をより充分に低減させることができる。
【0076】
上記樹脂組成物における、酸化防止剤以外のその他の成分の含有割合は、特に制限されないが、上記樹脂組成物100質量%に対して0〜3質量%であることが好ましい。より好ましくは0〜1質量%である。