(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳述する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0013】
本発明の薄片状物質の製造方法は、未精製組成物を6000G以下の遠心加速度で遠心分離して精製する工程を含むことを特徴とする。精製することで大表面積の薄片状物質が得られるという結果については、未精製組成物では例えば水素イオンや金属イオン等の不純物により被精製物質同士の静電反発が緩和され、凝集する可能性があるが、組成物を精製して不純物を除去すると、被精製物質の凝集が解かれ分散することにより、大表面積の薄片状物質となると推測される。しかし、本発明では、6000G以下の遠心加速度で遠心分離を行うことで、より大きな遠心加速度で遠心分離を行った場合よりも、より大表面積の薄片状物質が得られるという上記の推測だけでは説明できない予想外の効果が発揮される。これは、6000G以下の遠心加速度で遠心分離を行うことで、薄片状物質は精製度が低い膨潤状態のもの(以下、これをウェットケーキとも言う。)となるが、このウェットケーキが高剥離度な薄片状物質を多数含むためであると推測される。一方、6000Gを超える遠心加速度で遠心分離を行って得られるウェットケーキでは、精製度が高く分散が過剰に進行することで、上澄みに粒径が小さく遠心分離では沈降不能な高剥離度な薄片状物質が分散し、上澄みの廃棄時にそれら高剥離度な薄片状物質も同時に廃棄されることで、最終的な比表面積が低下すると推測される。
【0014】
上記精製工程における遠心加速度は、4000G以下であることが好ましく、3000G以下であることがより好ましく、2000G以下であることが更に好ましい。これにより、得られる薄片状物質の比表面積をより大きくすることができる。
また上記遠心加速度は、その下限値は特に限定されないが、例えば2G以上であることが好ましく、5G以上であることがより好ましい。
遠心加速度は一定にしなくても良く、その場合、上記精製工程における遠心加速度の平均値が上記範囲内であれば良いが、中でも、遠心処理時間の80%以上にわたって遠心加速度が上記上限以下(6000G以下、好ましくは4000G以下、より好ましくは3000G以下、さらに好ましくは2000G以下)となるように処理を行うことが好ましく、最大の遠心加速度が上記上限以下となるように処理を行うことがより好ましい。
【0015】
上記未精製組成物は、被精製物質を得るための反応に用いた反応液であってもよく、被精製物質に分散媒を添加したものであってもよい。
上記分散媒としては、特に限定されないが、水を含む水性分散媒が好ましい。水性分散媒は、水とともに使用できる有機分散媒を更に含んでいてもよく、該有機分散媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;グリセリン;ポリエチレングリコール;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が好適であり、これらの1種又は2種以上を使用することができる。上記分散媒は、中でも、50質量%以上が水である水性分散媒であることがより好ましく、80質量%以上が水である水性分散媒であることが更に好ましく、水であることが特に好ましい。
上記分散媒の量は適宜設定すればよいが、組成物中の被精製物質100質量%に対して10〜100000質量%であることが好ましい。このような量の分散媒を用いることで、未精製組成物からの分離をより効率的に進めることができる。分散媒の量は、より好ましくは、組成物中の被精製物質100質量%に対して50〜50000質量%であり、更に好ましくは、100〜30000質量%であり、特に好ましくは、300〜20000質量%である。
【0016】
本発明の薄片状物質の製造方法における上記精製工程は、遠心分離機を用いておこなうことが好ましい。
遠心分離機としては、例えば、遠心沈降分離型の遠心分離機、遠心濾過型の遠心分離機が挙げられる。
【0017】
上記遠心濾過型の遠心分離機に使用する濾材としては、特に限定されず、例えばポリオレフィン等の濾布;ステンレス、ハステロイ等の金網等が挙げられる。
【0018】
上記精製工程は、2回以上繰り返しておこなうことが好ましく、3回以上繰り返しておこなうことがより好ましく、中でも、薄片状物質の比表面積をより大きくする観点から、4回以上繰り返しておこなうことが更に好ましい。繰り返し回数は、その上限は特に限定されないが、薄片状物質を簡便に製造する観点から、通常、20回以下であり、12回以下であることが好ましく、10回以下であることがより好ましい。
なお、上記精製工程を2回以上繰り返しておこなう場合、例えば、先ず未精製組成物である反応液を遠心分離し、その後、被精製物質に分散媒を添加し、振盪等により被精製物質を分散媒中に再分散させたものを未精製組成物として遠心分離し、この再分散と遠心分離の工程を1回以上繰り返すことができる。この場合、反応液を遠心分離する精製工程を精製工程の1回目と数える。
また本発明の薄片状物質の製造方法において、遠心分離を2回以上行う場合には、いずれか1回の遠心分離が上記上限以下(6000G以下、好ましくは4000G以下、より好ましくは3000G以下、さらに好ましくは2000G以下)で実施されるものであれば良いが、遠心分離の繰り返し回数の80%以上が上記上限以下で実施されることが好ましく、全ての遠心分離が上記上限以下で実施されることがより好ましい。
上記精製工程を2回以上繰り返す場合には、それぞれの運転条件(例えば遠心加速度)は同一であっても良く、異なっても良い。
【0019】
上記精製工程は、未精製組成物を6000G以下の遠心加速度で遠心分離して精製する工程を含み、本発明の効果が発揮される限り、未精製組成物を更に精製するその他の精製工程を含んでいてもよい。その他の精製工程としては、濾過、デカンテーション、分液抽出、水洗等が挙げられる。これら操作のいずれか1つのみを行ってもよく、2つ以上を組み合わせて行ってもよい。また、これら操作は、本発明に係る遠心分離操作の前後に行ってもよく、遠心分離操作と遠心分離操作との間に行ってもよい。
上記精製工程は、例えば空気中、又は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる。また、上記精製工程は、その温度条件・圧力条件は特に限定されず、室温条件下や、より高温条件下、より低温度条件下で行うことができ、また、加圧・常圧・減圧条件下で行うことができるが、例えば室温・常圧条件下で行うことが好ましい。
上記精製工程の後、必要に応じて、更に乾燥工程をおこなって薄片状物質を得ることができる。乾燥工程の条件は適宜設定すればよいが、例えば、40〜150℃の温度条件下で、真空等の減圧条件下で行うことが好ましい。
上記精製工程において、上記の遠心加速度で処理する時間(複数回遠心処理する場合はその合計)は、10秒以上であることが好ましく、20秒以上であることがより好ましく、30秒以上であることが更に好ましい。上記の遠心加速度で処理する時間の上限は、例えば24時間である。
【0020】
本発明の製造方法により得られる薄片状物質は、被精製物質を含む組成物を6000G以下の遠心加速度で遠心分離して精製することにより、被精製物質よりも比表面積が大きくなったものである。
本発明の製造方法により得られる薄片状物質は、比表面積が、例えば200m
2/g以上であることが好ましく、300m
2/g以上であることがより好ましく、400m
2/g以上であることが更に好ましい。また、比表面積の上限値は特に限定されないが、比表面積は、通常2600m
2/g以下であり、1000m
2/g以下であることが好ましい。
上記比表面積は、実施例に記載のBET法により求められるものである。
【0021】
また上記精製工程により得られる、乾燥前の薄片状物質の膨潤度(薄片状物質を含むウェットケーキの質量/薄片状物質の質量)は、薄片状物質の比表面積をより大きなものとする観点から、例えば8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、12以上であることが更に好ましく、15以上であることが一層好ましく、20以上であることが特に好ましい。
上記膨潤度は、例えば50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。
上記膨潤度は、精製工程を2回以上繰り返す場合は、最後の精製工程により得られる薄片状物質の膨潤度を言う。
【0022】
上記被精製物質は、層状化合物の積層体であることが好ましい。この場合、本発明の製造方法を用いて分子間力等により積層されている層状化合物同士を好適に分離できるため、本発明の効果をより顕著に発揮できる。
上記積層体は、原子が平面的に並んだ1層からなる層状化合物が積層されて構成されるものであることが好ましい。上記積層体としては、例えば、2〜100層積層されて構成されるものが挙げられる。
【0023】
例えば、上記被精製物質は、酸化黒鉛であることが好ましい。酸化黒鉛を含む組成物中、不純物がある程黒鉛層の剥離が進みにくくなり、表面積が小さくなる。このような酸化黒鉛を含む組成物を精製し、特に酸化黒鉛を得るための反応に用いた硫酸が無くなると、酸化黒鉛の酸基からプロトンが脱離して酸化黒鉛の層間で静電反発が起こって層分離が起こると予想されるが、ここで遠心加速度を6000G以下とすることにより、得られる酸化グラフェン等を精製度が低い膨潤状態のものとすると、上述したように層分離がより顕著なものとなる。
【0024】
酸化黒鉛を含む未精製組成物の精製では、未精製組成物中の硫酸濃度が3質量%未満であることが好ましい。該硫酸濃度は、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。未精製組成物中の硫酸濃度は、その下限値は特に限定されず、0質量%であってもよい。
精製工程に供する未精製組成物を予め低い硫酸濃度とし、本発明に係る緩やかな遠心分離を適用して更に硫酸を除去することで、薄片状物質が分散する作用効果がより顕著なものとなる。
【0025】
上記精製工程による精製度(log
10(遠心分離時の組成物中の含有硫酸濃度〔質量%〕/酸化黒鉛を得るための反応に用いた反応液中の硫酸濃度〔質量%〕))としては、例えば1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることが更に好ましい。
該精製度は、通常は10以下であり、8以下であることが好ましい。
上記精製度における遠心分離時の組成物中の含有硫酸濃度は、精製工程を2回以上繰り返す場合は、最後の精製工程における遠心分離時の組成物中の含有硫酸濃度を言う。
【0026】
なお、酸化黒鉛は、グラフェン、黒鉛(グラファイト)等の黒鉛質の炭素材料に酸素が結合したものである。本発明の製造方法を用いて、例えば、被精製物質として、黒鉛の炭素に酸素が結合した酸化黒鉛を含む組成物から、グラフェンの炭素に酸素が結合した酸化グラフェンを得ることも可能である。
一般的にグラフェンとは、sp
2結合で結合した炭素原子が平面的に並んだ1層からなるシートをいい、グラフェンシートが多数積層されたものはグラファイトといわれるが、本発明における酸化グラフェンには、炭素原子1層のみからなるシートだけではなく、例えば2層〜100層積層した構造を有するものも含まれる。該酸化グラフェンは、例えば、炭素原子1層のみからなるシートであるか、又は、2層〜20層程度積層した構造を有するものであることが好ましい。
上記酸化黒鉛は、更に、カルボキシル基、水酸基、硫黄含有基等の官能基を有していてもよい。
【0027】
なお、酸化グラフェン等の酸化黒鉛は熱安定性が充分でないことから、その比表面積をBET法により測定することは困難だが、更に酸化黒鉛を還元して後述する熱安定性の良い還元型酸化黒鉛とすればその比表面積をBET法により好適に測定することができる。
以下では、上記被精製物質が酸化黒鉛である場合の本発明の薄片状物質の製造方法について更に詳しく説明する。
【0028】
本発明の製造方法において被精製物質が酸化黒鉛である場合、本発明の製造方法は、更に黒鉛を酸化する工程を含んでいてもよい。
黒鉛を酸化する工程は、黒鉛が酸化されることになる限り、その方法は特に制限されず、上述したHummers法、Brodie法、Staudenmaier法等のいずれの方法における黒鉛の酸化方法を用いてもよく、後述する実施例に記載の方法のように、Hummers法における酸化方法を採用した、黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程であってもよい。このように、酸化工程が、黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0029】
上記酸化工程が黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程である場合、硫酸の使用量は、黒鉛に対する硫酸の質量比(硫酸/黒鉛)が25〜60となる量であることが好ましい。該質量比が25以上であることにより、酸化反応中に反応液(混合液)の高粘度化を充分に防止して酸化黒鉛を効率的に製造することができる。また、該質量比が60以下であることにより、廃液量を充分に少なくすることができる。
上記質量比は、26以上であることがより好ましく、27以上であることが更に好ましく、28以上であることが特に好ましい。また、該質量比は、54以下であることがより好ましく、48以下であることが更に好ましく、42以下であることが特に好ましい。
【0030】
上記黒鉛と硫酸とを含む混合液中における黒鉛の含有量は、混合液100質量%に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることが更に好ましく、2質量%以上であることが特に好ましい。該黒鉛の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが更に好ましく、6質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の製造方法における酸化工程に用いる黒鉛は、1種のみであってもよく、粒子径、形状、比表面積や物性等のいずれかにおいて異なる2種以上のものを用いてもよい。
【0031】
上記酸化工程で添加する過マンガン酸塩としては、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸銀、過マンガン酸亜鉛、過マンガン酸マグネシウム、過マンガン酸カルシウム、過マンガン酸バリウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できるが、中でも過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウムが好ましく、過マンガン酸カリウムがより好ましい。
【0032】
上記酸化工程における上記過マンガン酸塩の全添加量は、上記混合液中の黒鉛量100質量%に対し、50〜500質量%であることが好ましい。これにより、酸化黒鉛を安全かつ効率的に製造することができる。なお、酸化剤の全添加量を変化させることで、酸化黒鉛に導入される酸素原子の量を調節することができる。
該全添加量は、100質量%以上であることがより好ましく、150質量%以上であることが更に好ましく、200質量%以上であることが一層好ましく、250質量%以上であることが特に好ましい。また、該全添加量は、450質量%以下であることがより好ましく、400質量%以下であることが更に好ましく、350質量%以下であることが特に好ましい。
【0033】
上記酸化工程では、上記混合液の温度を10〜50℃の範囲内に維持しながら過マンガン酸塩を添加することが好ましい。このような温度範囲に維持することで、酸化反応を制御しながら充分に進行させることができる。
【0034】
上記酸化工程は、公知の撹拌機等を用いて上記混合液を撹拌しながら行うことが好ましい。
上記酸化工程は、例えば空気中、又は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる。また、上記酸化工程は、その圧力条件は特に限定されず、加圧条件下、常圧条件下、減圧条件下で行うことができるが、例えば常圧条件下で行うことが好ましい。
また上記酸化工程の時間は、0.5時間〜120時間とすることが好ましく、1時間〜15時間とすることがより好ましく、2時間〜10時間とすることが更に好ましい。
上記酸化工程は、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。
【0035】
上記混合液は、黒鉛、硫酸、及び、必要に応じてその他の成分を混合して得ることができる。上記混合は、公知の方法で適宜行うことが可能であるが、例えば、超音波処理を行ったり、公知の分散機を用いたりして黒鉛を均一に分散させることが好ましい。
【0036】
本発明の製造方法は、更に、黒鉛を酸化する工程と酸化工程で得られる酸化黒鉛を精製する工程との間に、熟成工程、酸化工程の後の酸化反応停止(クエンチ)工程等のその他の工程を含んでいてもよい。
【0037】
上記熟成工程において、酸化工程で得られた反応液を熟成させる温度及び時間は適宜選択すればよいが、反応液を0〜90℃の温度に維持することが好ましく、より好ましくは、20〜80℃の温度に維持することである。
また熟成させる時間は、0.1〜24時間であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜5時間である。
【0038】
上記酸化反応停止工程は、空気中で行ってもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。また加圧条件下、常圧条件下、減圧条件下のいずれで行っても良い。
上記酸化反応停止工程は、例えば、反応液の温度を5〜60℃に設定し、反応液に水を添加し、次いで還元剤として過酸化水素水を添加して行うことができる。また、反応液を、5〜25℃に設定した、水又は過酸化水素水に添加して行ってもよい。
上記酸化反応停止工程の時間は、例えば0.01〜5時間とすることができる。
【0039】
酸化黒鉛は、更に還元して親水性の官能基を脱離させることで、より疎水性の強い還元型酸化黒鉛とすることができる。還元型酸化黒鉛は、油、樹脂等の非極性、低極性分散媒(疎水性分散媒)中で充分に分散することができるため、潤滑用添加剤として油中に分散させて用いることや、高分子等の樹脂と複合化させて用いることが可能である。このような還元型酸化黒鉛の製造にも、上述した本発明の薄片状物質の製造方法の精製工程と同じ工程を用いることができ、そのような工程を用いることで、高剥離度の、比表面積の大きな還元型酸化黒鉛を好適に製造することができる。このような還元型酸化黒鉛の製造方法、すなわち、酸化黒鉛が還元された還元型酸化黒鉛を製造する方法であって、該製造方法は、酸化黒鉛を精製する工程と、該精製工程で得られた酸化黒鉛を還元して還元型酸化黒鉛を得る工程とを含み、該精製工程は、酸化黒鉛を含む組成物を6000G以下の遠心加速度で遠心分離する工程を含む還元型酸化黒鉛の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0040】
本発明の還元型酸化黒鉛の製造方法において、酸化黒鉛を還元する工程は、酸化黒鉛から親水性の官能基が脱離して還元されることになる限りその方法は特に制限されず、NaBH
4、LiAlH
4、アスコルビン酸等の公知の還元剤を使用する方法や電解還元法、酸化黒鉛を加熱する方法を用いることができ、これらを適宜組み合わせてもよい。なお、原料である酸化黒鉛としては、本発明に係る精製工程を経た酸化黒鉛を乾燥したものを用いてもよいが、膨潤した状態のままの酸化黒鉛を好適に用いることができる。
酸化黒鉛を加熱する温度は、100℃以上が好ましい。より好ましくは、120℃以上である。また、還元剤を使用するとともに酸化黒鉛を加熱する場合は、酸化黒鉛を加熱する温度は、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。酸化黒鉛の加熱温度に特に上限はないが、通常、2000℃以下で行われる。酸化黒鉛を加熱する時間は、0.1〜100時間が好ましい。より好ましくは、0.2〜50時間である。
酸化黒鉛の加熱は空気中で行ってもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。またその圧力条件は特に限定されず、加圧条件下、常圧条件下、減圧条件下で行うことができる。
【0041】
本発明の還元型酸化黒鉛の製造方法における酸化黒鉛を精製する工程の好ましい形態は、上述した本発明の薄片状物質の製造方法における精製工程の好ましい形態と同様である。
本発明の還元型酸化黒鉛の製造方法は、精製工程で得られた酸化黒鉛を還元する工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、上述した酸化反応停止工程等が挙げられる。
【0042】
本発明の還元型酸化黒鉛の製造方法により得られる還元型酸化黒鉛における好ましい比表面積は、上述した薄片状物質の好ましい比表面積と同様であるが、中でも、410m
2/g以上であることが一層好ましく、420m
2/g以上であることが特に好ましい。また、比表面積の上限値は特に限定されないが、比表面積は、通常2600m
2/g以下であり、1000m
2/g以下であることが好ましい。
上記比表面積は、実施例に記載のBET法により求められるものである。
【0043】
本発明の薄片状物質の製造方法により得られる薄片状物質は、各種用途の材料・添加剤等として種々多様な条件下で好適に使用することができ、例えば触媒、電池の電極活物質、熱電変換材料、導電性材料、発光材料、潤滑用添加剤、高分子用添加剤、透過膜材料、抗菌材料、撥水材料、吸着材料、水浄化材料等として好適に使用できる。中でも還元型酸化黒鉛は、疎水性が強いため、特に潤滑用添加剤、高分子用添加剤として特に好適に用いられる。
なお、上記電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池、固体高分子型燃料電池、金属−空気電池等が挙げられる。
上記熱電変換材料が用いられる熱電変換装置としては、例えば、地熱・温泉熱発電機、太陽熱発電機、工場や自動車等の廃熱発電機、体温発電機等の発電機や、該発電機を電源の少なくとも一つとして用いた各種電気製品、電動機、人工衛星等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0045】
調製例1
耐食性反応器に濃硫酸(試薬特級、和光純薬工業
社製)40部と天然黒鉛(Z−5F、鱗片状黒鉛、伊藤黒鉛工業
社製)1.00部を加えて混合液とした。混合液の内温が28℃となるよう水浴で温度調整を行いつつ、混合液を撹拌しながら過マンガン酸カリウム(試薬特級、和光純薬工業
社製)を15分間隔で混合液中へ20回投入した。過マンガン酸カリウムの一回の投入量は0.15部であり、投入量の合計は3.0部であった。過マンガン酸カリウムの投入終了後、混合液を38℃まで昇温し液温を維持したまま2時間熟成を行った。その後60℃以下の液温を維持したままイオン交換水67部と30%過酸化水素水(試薬特級、和光純薬工業
社製)2.8部を投入し反応を停止させた。当該手法により得られた酸化黒鉛含有スラリーを以下から“反応後スラリー”と呼称する。
上記反応後スラリー10部を濾過水洗により精製を行った。その後50℃真空下に於いて一晩乾燥を行うことで酸化黒鉛乾燥粉末を得た。得られた酸化黒鉛乾燥粉末は原料黒鉛に対して重量で1.5部であった。
【0046】
実施例1
上記反応後スラリーを遠心分離機(アズワン社製卓上遠心分離機AS185)によって精製した。遠心力(遠心加速度)は500Gに設定した。遠心分離し上澄みを廃棄し、残渣であるウェットケーキを得た。遠心管に、廃棄した上澄み液と同体積の純水を投入し、よく手で振盪させることでウェットケーキ中の酸化黒鉛を再分散させた後に、再度遠心分離を実施した。上記再分散と遠心分離の工程を合計5回実施した。各遠心分離工程中に含まれる硫酸濃度は遠心分離を繰り返した際の希釈倍率から算出した。各遠心分離工程に於けるウェットケーキの膨潤度と精製度は、以下の式で定義した。
【0047】
膨潤度=ウェットケーキ質量/含有酸化黒鉛質量
精製度=log
10(遠心分離時の含有硫酸濃度(質量%)/反応後スラリー中の硫酸濃度(質量%))
【0048】
得られた精製済み酸化黒鉛ウェットケーキを、酸化黒鉛1質量%となるように水に投入し、30分間超音波印加することで均一な酸化黒鉛分散液を得た(ブランソン社製、ブランソニック、405W)。還元は、上記酸化黒鉛分散液中に還元剤としてL−アスコルビン酸(和光純薬
工業社製)を酸化黒鉛に対して5部投入し、70℃にて1時間反応させることで実施した。反応後に濾過を行い、pH試験紙にて濾液が中性となるまで水洗を行った後に100℃にて一晩真空乾燥を行い、還元型酸化黒鉛乾燥粉末を得た。得られた酸化黒鉛分散液の薄片度合いは、還元し還元型酸化黒鉛とした後にBET比表面積を測定することで算出した。BET比表面積は、まず乾燥粉末を前処理装置(マイクロトラック・ベル社製,BelprepII)で120℃下3時間加熱真空乾燥した後、乾燥後の粉体に対し、比表面積・細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製,Belsorp−miniII)を用いて液体窒素下−196℃で窒素吸着量を計測し、得られた吸脱着等温線を、BET法を用いて解析を行うことで算出した。
【0049】
実施例2
遠心力を1000Gとした以外は実施例1と同様の手法で還元型酸化黒鉛乾燥粉末を得た。
【0050】
実施例3
遠心力を2000Gとした以外は実施例1と同様の手法で還元型酸化黒鉛乾燥粉末を得た。
【0051】
比較例1
遠心力を10000Gとした以外は実施例1と同様の手法で還元型酸化黒鉛乾燥粉末を得た。
【0052】
実施例1−3、比較例1に於ける各遠心分離工程の精製度と膨潤度の関係を
図1に示す。
図1に示すように低遠心力の場合ではウェットケーキの脱水効果が弱い為に膨潤度が高くなった。低遠心効果の場合では高膨潤度に起因して精製度も低いものとなった。
【0053】
実施例1−3、比較例1に於ける遠心効果と得られた還元型酸化黒鉛のBET比表面積の結果を
図2に示す。
図2に示すように低遠心効果の場合に精製度が低いにも関わらず高いBET比表面積が得られるという予想外の結果が得られた。