(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961310
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】車載用表示装置
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20211025BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
B60R11/02 C
G09F9/00 350Z
G09F9/00 362
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-1868(P2018-1868)
(22)【出願日】2018年1月10日
(65)【公開番号】特開2019-119382(P2019-119382A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2020年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】下條 恵一
(72)【発明者】
【氏名】松渕 弘
【審査官】
上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−260431(JP,A)
【文献】
特開2014−206676(JP,A)
【文献】
特開2017−026694(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0160504(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102015009918(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示セルおよび前記表示セルを支持するセル支持部材を有する表示ユニットと、前記表示ユニットを支持して車体に設置される固定パネルと、が設けられた車載用表示装置において、
前記表示ユニットに、前記表示セルの表示側である前方に位置する透光性の表示カバー板が設けられ、前記表示カバー板が、前記表示セルによる表示領域よりも側方に張出す張出し部を有しており、
前記固定パネルに固定されるブラケットが設けられて、前記張出し部が、前記固定パネルに固定されることなく、その背部が、前記セル支持部材の一部であるカバー支持部に接着され、前記カバー支持部の背部が、前記ブラケットに接着されていることを特徴とする車載用表示装置。
【請求項2】
前記カバー支持部の前方に向く表面は前記表示カバー板の表面と平行な平面で、前記張出し部の背部が前記表面に接着され、
前記ブラケットに前記表示カバー板の表面と平行な支持片が設けられ、前記カバー支持部の背部が前記支持片の表面に接着されている請求項1記載の車載用表示装置。
【請求項3】
前記ブラケットに前記表示ユニットの背部に位置する固定板部が設けられ、前記固定板部のねじ固定部と前記固定パネルの底面とが固定ねじで固定され、前記ねじ固定部以外では、前記固定板部と前記底面との間に隙間が形成されている請求項1または2記載の車載用表示装置。
【請求項4】
前記固定パネルは、合成樹脂材料で形成されて、前記表示ユニットが収められる枠開口部を有している請求項1ないし3のいずれかに記載の車載用表示装置。
【請求項5】
前記ブラケットは、金属板で形成されている請求項4記載の車載用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定パネルの歪みが表示セルに直接に作用しないようにして、表示セルで表示される画像に表示ムラが発生しにくい構造とした車載用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用表示装置は、車室内のダッシュボードやインストルメントパネルなどに組み込まれる固定パネルを有しており、表示セルとバックライト部などを有する表示ユニットが固定パネルに取付けられている。この種の車載用表示装置では、表示セルに大きな固定力が作用すると、表示セルに歪みが発生して、表示ムラが発生する課題がある。最近では、視野角を広く確保するためにIPS方式の液晶セルが用いられつつあるが、この液晶セルは、曲げ応力や捩じり応力が作用すると表示ムラとして黒ムラ(輝度ムラ)が発生しやすくなる。
【0003】
特許文献1に、表示セルに作用する固定応力を緩和して、表示ムラの発生を抑制する対策を施した車載用表示装置が記載されている。
図4に、特許文献1に記載されたのと同じ構造の車載用表示装置が従来例として示されている。
【0004】
図4に示す従来例の車載用表示装置100は、Z1方向が表示方向の前方であり、Z2方向が後方である。車載用表示装置100は、車体に固定される固定パネル110を有しており、固定パネル110の枠開口部110aの内部に、表示ユニット101が設置されている。
【0005】
表示ユニット101では、セル支持部材104に表示セル102とバックライト部103が支持されている。表示セル102の表示方向(Z1方向)の前部には表示カバー板105が設置されている。
図4に示す車載用表示装置100では、固定パネル110に金属板製のブラケット111が固定されており、表示ユニット101のセル支持部材104が、固定機構115を介してブラケット111に固定されている。
【0006】
特許文献1に記載された前記固定機構115では、固定ねじ115aの軸部の直径に対して取付け穴115bの内径を十分に大きくして、固定機構115において、ブラケット111とセル支持部材104とが前後方向(Z方向)に自由度を有して固定できるように構成されている。そして、車載用表示装置100の組立工程では、最初に表示カバー板105の背面を接着剤層116により固定パネル110の前面に固定する。その後に、固定機構115において、固定ねじ115aを締め付けて、ブラケット111とセル支持部材104とを固定している。
【0007】
この組立方法により、固定機構115における固定ねじ115aの締め付け力によって、セル支持部材104に大きな固定応力が作用するのを抑制できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−122151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図4に示す車載用表示装置100は、固定パネル110が合成樹脂材料などで形成されているが、固定パネル110と車体との間の寸法公差などにより、固定パネル110を車体に固定するときに、固定パネル110に歪みが与えられやすい。
【0010】
特許文献1に記載された車載用表示装置100は、表示カバー板105に表示セル102よりも側方に張り出す張出し部105aが設けられ、張出し部105aの背部が、固定パネル110に接着されて固定されている。そのため、固定パネル110に固定時の歪みが発生すると、その歪みが表示カバー板105から表示セル102に直接に作用することになり、表示パネル102に表示ムラが発生しやすくなる。
【0011】
ただし、表示カバー板105の張出し部105aを背部から支持せずに自由状態にしておくと、表示カバー板105の固定強度を確保できなくなる。その結果、例えば、表示ユニット101の前部に設けられたセンサを指で押して操作するときなどに、表示カバー板105が変形しやすくなり、これによっても、表示セル102に不要な応力が作用して表示ムラが発生しやすくなる。
【0012】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、表示カバー板の張出し部を強固に支持できるようにし、しかも固定パネルを車体に固定するときの応力が表示カバー板に直接に作用しないようにして、表示セルに作用する歪みを低減できるようにした車載用表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、表示セルおよび前記表示セルを支持するセル支持部材を有する表示ユニットと、前記表示ユニットを支持して車体に設置される固定パネルと、が設けられた車載用表示装置において、
前記表示ユニットに、前記表示セルの表示側である前方に位置する透光性の表示カバー板が設けられ、前記表示カバー板が、前記表示セルによる表示領域よりも側方に張出す張出し部を有しており、
前記固定パネルに固定されるブラケットが設けられて、前記張出し部が、前記固定パネルに固定されることなく、その背部が、
前記セル支持部材の一部であるカバー支持部に接着され、前記カバー支持部の背部が、前記ブラケットに接着されていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の車載用表示装置は、前記固定パネルが、合成樹脂材料で形成されて、前記表示ユニットが収められる枠開口部を有しているものである。
【0017】
また、本発明の車載用表示装置は、前記ブラケットが、金属板で形成されているものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、表示ユニットに設けられた表示カバー板が、表示セルの表示領域から側方に張出した張出し部を有しているため、表示カバー板の面積を広くして外観を良好にできる。しかも、張出し部の背部がブラケットに支持されているため、表示カバー板の反りが発生しにくくなっている。
【0019】
また、表示カバー板の張出し部が、固定パネルに固定されることなく、その背部がブラケットに支持されているため、固定パネルに、車体への取付けによる歪みが発生したとしても、その歪みが表示セルに直接に伝達されにくくなり、表示セルの歪みによる表示ムラが発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態の車載用表示装置を示す分解斜視図、
【
図2】
図1に示す第1実施形態の車載用表示装置が組み立てられた状態を、II−II線で切断した部分断面図、
【
図3】本発明の第2の実施の形態の車載用表示装置を示す、
図2と同等の部分断面図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1と
図2に示す本発明の第1実施形態の車載用表示装置1は、車両に固定される固定パネル10と、表示ユニット30と、表示ユニット30を固定パネル10に固定するためにブラケット20を有している。車載用表示装置1は、Z1方向が表示方向である前方または前部、Z2方向が後方または背部、X方向が横方向、Y方向が縦方向である。
【0022】
固定パネル10は合成樹脂材料を用いた射出成型法で形成されており、または軽金属材料を用いたダイキャスト成型法で形成されている。固定パネル10には、後方に延びる車両取付け部18が一体に形成されている。固定パネル10は、自動車の車室内に設けられたダッシュボードやインストルメントパネルに組み込まれ、車両取付け部18が車体にねじ止めされて固定される。
【0023】
図1と
図2に示すように、固定パネル10は、前方(Z1方向)に向けて開口する四角形の枠開口部11を有している。枠開口部11の横方向(X方向)の両側には横枠部12が設けられ、枠開口部11の縦方向(Y方向)の両側には縦枠部13が設けられている。
図2の断面図に示すように、横枠部12のZ1方向に向く表面は、横方向の両側に向けて徐々にZ2方向に向けて後退する曲面形状である。
【0024】
固定パネル10の枠開口部11の内部には、横方向で対向する横内面14a、14aと、縦方向で対向する縦内面14b,14bが形成されており、枠開口部11のZ2方向の内部には、横内面14a,14aと縦内面14b,14bに連続する底面15が形成されている。底面15には、開口部16が形成されており、複数箇所に取付け穴15aが開口している。
【0025】
ブラケット20は、鉄板などの金属板で形成されている。ブラケット20は固定板部21を有している。
図2に示すように、固定板部21には、前記取付け穴15aと対向する部分にねじ固定部22が複数箇所に形成されている。それぞれのねじ固定部22は、固定板部21から後方(Z2方向)に向けて隆起するように絞り加工されている。このねじ固定部22に雌ねじ部が形成されている。また、固定板部21からは、後方(Z2方向)に向けて折り曲げられたブラケット側連結片23が複数箇所に設けられている。
【0026】
ブラケット20には、横方向の両側から前方に向けて折り曲げられた折曲げ片24,24が形成されており、それぞれの折曲げ片24の先部は、X方向に向けて折り曲げられた支持片25となっている。支持片25は、X−Y平面と平行に形成されている。第1実施形態では、横方向の両側に設けられた支持片25のそれぞれが縦方向(Y方向)に連続しているが、この支持片25は、縦方向に間隔を空けて複数箇所に設けられていてもよい。
【0027】
図1と
図2に示すように、表示ユニット30は、セル支持部材31を有している。
図2に示すように、セル支持部材31は、セル支持ホルダ32とセル支持枠部材33とから構成されている。セル支持ホルダ32は、アルミニウムなどの金属板で形成されており、Z1方向が解放された箱形状である。セル支持ホルダ32のZ2側に向けられた背面板32aには、後方に向けて折り曲げられたホルダ側連結片32bが複数箇所に設けられている。
【0028】
セル支持枠部材33は合成樹脂材料で形成されている。セル支持枠部材33は、セル支持ホルダ32の外周部に装着され、セル支持ホルダ32とセル支持枠部材33は、凹凸嵌合により互いに固定されている。あるいは、セル支持ホルダ32とセル支持枠部材33が、固定ねじにより互いに固定されていてもよい。
【0029】
表示ユニット30には、表示セル34が設けられている。表示セル34の前部には、光学接着剤37によってタッチパネル35が接着されて固定されており、タッチパネル35の前部には、光学接着剤38によって表示カバー板36が接着されて固定されている。
【0030】
表示ユニット30では、表示セル34の後方に間隔を空けて、バックライト部39が設けられている。バックライト部39には、LEDなどの光源と、光源からの光を表示セル34の背面に与える導光部材とが設けられている。バックライト部39は、セル支持ホルダ32に接着や凹凸嵌合などの手段で固定されている。
【0031】
表示セル34は、カラー液晶表示セルであり、透光性基板の間に液晶層が介在している透光式である。タッチパネル35は静電容量センサであり、透光性の基板にITOなどの透光性の電極が形成され、指などの接近を検知できるようになっている。表示カバー板36は透光性であり、アクリル板で構成されている。
【0032】
図1に示すように、表示カバー板36はその中央の四角形の領域が表示領域36aである。表示セル34の表示画面に表示される画像は、表示領域36aを透過して前方から目視可能となっている。表示カバー板36は、表示領域36aの横方向(X方向)の両側が横加飾領域36b,36bであり、表示領域36aの縦方向(Y方向)の両側が縦加飾領域36c,36cである。横加飾領域36b,36bと縦加飾領域36c,36cでは、表示カバー板36のZ2方向に向く背面に塗装などが施されて、非透過領域となっている。
【0033】
図2に示すように、横加飾領域36bを含む領域が、表示領域36aから横方向に張出す張出し部41である。表示カバー板36に張出し部41を設けることにより、表示ユニット30の前面に現れる表示カバー板36の面積が広くなり、外観が良好になり、高級感を出すことが可能になる。本明細書での張出し部41は、表示領域36aから側方に張出した部分であり、横加飾領域6bと一致する領域である。または、張出し部41は、表示カバー板36において、光学接着剤37によって表示セル34と接着されているに領域から外れて側方に張出している領域である。なお、張出し部41は、表示カバー板36の縦方向(Y方向)の両側に設けられていてもよいし、横方向(X方向)と縦方向(Y方向)の両側に設けられていてもよい。
【0034】
図2に示すように、セル支持部材31であるセル支持枠部材33の一部がカバー支持部33aとなっている。カバー支持部33aの前方(Z1方向)に向く表面33bは、X−Y平面と平行な平面である。表示カバー板36の張出し部41(横加飾領域36b)におけるZ2方向に向く背部(背面)の少なくとも一部が、接着層42によって、カバー支持部33aの表面33bに接着されて固定されている。接着層42は両面接着テープである。あるいは、接着層42がテープを用いていない粘着剤層や接着剤層であってもよい。
【0035】
図2に示すように、表示セル34とタッチパネル35と表示カバー板36の3層の部材は、光学接着剤37,38を介して一体に組み合わされて固定されている。そして、この3層の部材は、張出し部41が接着層42によりカバー支持部33aに接着されることによって、ブラケット20に固定されている。ただし、接着層42以外の部分で、表示セル34が接着などの手段でセル支持部材31に固定されていてもよい。
【0036】
図2に示すように、ブラケット20は、表示ユニット30の背部に設置される。そして、カバー支持部33aのZ2方向に向く背面33cが、接着層43によって、ブラケット20の支持片25に接着されて固定される。接着層43は両面接着テープである。あるいは、接着層42がテープを用いていない粘着剤層や接着剤層であってもよい。
図2に示す構造では、表示カバー板36の張出し部41が、固定パネル10に固定されることなく、その背部が、カバー支持部33aを介在させて、ブラケット20の支持片25に間接的に支持されている。
【0037】
図2に示すように、ブラケット20が、表示ユニット30の背部に設置されると、セル支持部材31であるセル支持ホルダ32から曲げられたホルダ側連結片32bが、ブラケット20から折り曲げられたブラケット側連結片23と重ねられる。連結ねじ45によって、ホルダ側連結片32bとブラケット側連結片23とが互いに固定されて、表示ユニット30がブラケット20に固定される。
図2に示すように、ホルダ側連結片32bとブラケット側連結片23は、固定パネル10の開口部16を通過して後方(Z2方向)に延びている。
【0038】
車載用表示装置1を、車体に取り付ける工程では、最初に、表示ユニット30がブラケット20に固定された状態で、表示ユニット30とブラケット20とが、固定パネル10の枠開口部11の内部に設置される。そして、
図2に示すように、ブラケット20の固定板部21に形成されたねじ固定部22が、固定パネル10の枠開口部11の底面15に突き当てられ、底面15に開口する取付け穴15aに挿入された固定ねじ46が、ねじ固定部22に形成された雌ねじ穴に螺着される。これにより、ブラケット20の固定板部21が固定パネル10に固定される。
【0039】
次に、表示ユニット30と固定ブラケット20を保持した固定パネル10が、ダッシボードやインストルメントパネルに設置され、固定パネル10の車両取付け部18が、車体のフレーム部などにねじ止めや嵌合などの手段で固定される。
【0040】
なお、車載用表示装置1を車体に取付ける工程として、先に、固定パネル10が、車体の一部にねじ止めや嵌合などの手段で固定され、その後に、表示ユニット30とブラケット20とが互いに固定された状態で、固定パネル10の枠開口部11の内部に設置されて、固定ねじ46で、ブラケット20が固定パネル10に固定されてもよい。
【0041】
第1実施形態の車載用表示装置1は、表示ユニット30がブラケット20に固定され、ブラケット20が固定パネル10に固定されており、
図4に示した従来例とは異なり、表示カバー板36の張出し部41が固定パネル10は固定されていない。固定パネル10が車体に固定されるときに、固定パネル10に歪みが与えられやすく、また固定パネル10の成型時においても樹脂材料の硬化時のヒケなどにより寸法誤差が生じやすい。しかしながら、表示カバー板36の張出し部41が固定パネル10は固定されていないため、固定パネル10に生じる歪みが、表示カバー板36に直接に作用することがなく、表示セル34に歪みや応力が作用しにくくなっている。
【0042】
表示セル34としては、視野角を広く確保できるIPS方式を使用することが好ましいが、IPS方式の表示セルは、歪みが与えられると、表示ムラとして黒ムラ(輝度ムラ)が発生しやすい。しかし、
図1と
図2に示す車載用表示装置1は、固定パネル10に生じる歪みが、表示カバー板36に直接に作用することがないため、IPS方式の表示セルを使用しても黒ムラの発生を抑制できるようになる。
【0043】
図2に示すように、ブラケット20の固定板部21には後方(Z2方向)に隆起するように絞り加工されたねじ固定部22が形成され、このねじ固定部22が、固定パネル10の枠開口部11の底面15に突き当てられて、固定ねじ46によって固定されている。そして、ねじ固定部22以外の部分では、ブラケット20の固定板部21と固定パネル10の底面15との間に隙間δが形成されている。そのため、固定パネル10に与えられる歪みがブラケット20に伝達されにくくなり、ブラケット20から表示カバー板36に応力が伝達されにくくなっている。
【0044】
表示ユニット30では、表示カバー板36の張出し部41の背部が、セル支持枠部材33のカバー支持部33aに接着層42を介して接着され、さらにカバー支持部33aの背面33cが接着層43により、ブラケット20の支持片25に接着されている。表示カバー板36はその両側部に位置する張出し部41が、カバー支持部33aと支持片25とで背部から支持されているため、面剛性が高くなっており、変形しにくくなっている。特に、ブラケット20を鉄板製とし、セル支持ホルダ32よりもブラケット20の曲げ剛性を高くしておくことで、表示カバー板36の張出し部41を強固に支持できるようになり、表示カバー板36が変形しにくくなる。
【0045】
車載用表示装置1では、表示セル34が動作し、バックライト部39が動作しているときに、表示領域36aにおいて表示セル34の表示画像が鮮明に表示される。操作者が表示領域36aの表示画像を見ながら表示カバー板36の前面に指を触れると、タッチパネル35によりその接触位置が検知される。このとき、指で表示カバー板36が比較的強く押されたとしても、張出し部41の背部が、セル支持枠部材33のカバー支持部33aとブラケット20の支持片25とで強固に支持されているため、表示カバー板36が変形しにくい。よって、表示カバー板36に指を触れる操作を行うときにも、表示セル34に歪みが与えられにくくなり、表示画像に黒ムラが発生しにくくなる。
【0046】
次に、
図3に示す本発明の第2実施形態の車載用表示装置51について説明する。
図3の第2実施形態については、
図2に示す第1実施形態と同じ部分に同じ符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0047】
図3に示す車載用表示装置51の表示ユニット30は、セル支持部材がセル支持ホルダ32のみで構成されており、
図2に示すセル支持枠部材33が設けられていない。セル支持ホルダ32にはセル固定片32dが形成されており、表示セル34とタッチパネル35および表示カバー板36の少なくとも1つの部材がセル固定片32dに固定されている。
図3に示す実施形態では、タッチパネル35の背部が接着層48を介してセル固定片32dに固定されている。接着層48は、例えば両面接着テープである。
【0048】
ブラケット20に設けられた支持片25は、
図2に示す第1実施形態よりもさらに前方(Z1方向)に位置している。そして、表示カバー板36の張出し部41の背部が、接着層49を介して支持片25に固定されている。
【0049】
第2実施形態の車載用表示装置51では、表示カバー板36の張出し部41が、固定パネル10に固定されていないため、固定パネル10を車体に取り付けるときなどの歪みが表示カバー板36および表示セル34に直接には作用しない。また、張出し部41の背部がブラケット20に支持されているため、表示カバー板36が強固に固定されていることになり、表示カバー板36を指で操作するときにも、表示カバー板36に変形が生じにくい。
【0050】
本発明の車載用表示装置は、表示セル34としてIPS方式の液晶表示セルを使用しても表示ムラである黒ムラ(輝度ムラ)が発生しにくくなる。ただし、本発明の表示セル34は、IPS方式以外の液晶表示セルであってもよいし、EL表示セルなどであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 車載用表示装置
10 固定パネル
11 枠開口部
12 横枠部
13 縦枠部
20 ブラケット
25 支持片
30 表示ユニット
31 セル支持部材
32 セル支持ホルダ
33 セル支持枠部材
34 表示セル
35 タッチパネル
36 表示カバー板
36a 表示領域
36b 横加飾領域
36c 縦加飾領域
39 バックライト部
41 張出し部
51 車載用表示装置