特許第6961325号(P6961325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961325光電変換層の製造方法及び光電変換素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961325
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】光電変換層の製造方法及び光電変換素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0749 20120101AFI20211025BHJP
【FI】
   H01L31/06 460
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-215647(P2015-215647)
(22)【出願日】2015年11月2日
(65)【公開番号】特開2017-92066(P2017-92066A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽エネルギー技術研究開発 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発 CIS系薄膜太陽電池の高効率化技術の研究開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】513009668
【氏名又は名称】ソーラーフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100135976
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 元志
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0164885(US,A1)
【文献】 特開平09−213977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0749
H01L 31/18−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
I族元素及びIII族元素を有し、I族元素の原子数のIII族元素の原子数に対する比が1よりも大きい第1の前駆体層を第1電極層上に形成する第1工程であって、ガリウムを含む層の上にインジウムを含む層を形成して前記第1の前駆体層を形成することを含む第1工程と、
前記第1の前駆体層とセレンとの化合物を形成して、第2の前駆体層を得る第2工程と、
前記第2の前駆体層上にインジウムを含み且つ銅を含まない層を形成して、前記第2の前駆体層と前記インジウムを含み且つ銅を含まない層とが積層された積層体を得る第3工程と、
前記積層体を、硫黄を含む雰囲気において加熱することで、前記積層体とVI族元素との化合物を形成して、光電変換層を得る第4工程と、
を備え、
前記光電変換層の伝導帯の下端のエネルギー準位は、前記第1電極層側の第1面から前記第1電極層とは反対側の第2面に向かって低減した後、前記第2面側の領域において前記第2面に向かって増加する、光電変換層の製造方法。
【請求項2】
前記第3工程では、前記積層体におけるI族元素の原子数のIII族元素の原子数に対する比が1よりも小さくなるように、前記インジウムを含み且つ銅を含まない層を形成する請求項1に記載の光電変換層の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程において、前記第1の前駆体層をスパッタリング法を用いて形成する請求項1又は2に記載の光電変換層の製造方法。
【請求項4】
前記第3工程において、前記インジウムを含み且つ銅を含まない層をスパッタリング法を用いて形成する請求項1〜3の何れか一項に記載の光電変換層の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程では、前記第1の前駆体層を、セレンを含む雰囲気において加熱して、前記第1の前駆体層とセレンとの化合物を形成する請求項1〜4の何れか一項に記載の光電変換層の製造方法。
【請求項6】
第1電極層上に光電変換層を形成する光電変換層形成工程であって、
I族元素及びIII族元素を有し、I族元素の原子数のIII族元素の原子数に対する比が1よりも大きい第1の前駆体層を、前記第1電極層上に形成する第1工程であって、ガリウムを含む層の上にインジウムを含む層を形成して前記第1の前駆体層を形成することを含む第1工程と、
前記第1の前駆体層とセレンとの化合物を形成して、第2の前駆体層を得る第2工程と、
前記第2の前駆体層上にインジウムを含み且つ銅を含まない層を形成して、前記第2の前駆体層と前記インジウムを含み且つ銅を含まない層とが積層された積層体を得る第3工程と、
前記積層体を、硫黄を含む雰囲気において加熱することで、前記積層体とVI族元素との化合物を形成して、光電変換層を得る第4工程と、
を有する光電変換層形成工程と、
前記光電変換層上に、第2電極層を形成する第2電極層形成工程と、
を備え、
前記光電変換層の伝導帯の下端のエネルギー準位は、前記第1電極層側の第1面から前記第2電極層側の第2面に向かって低減した後、前記第2面側の領域において前記第2面に向かって増加する、光電変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換層の製造方法及び光電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カルコゲン元素、例えば、S(硫黄)又はSe(セレン)、を含む化合物半導体を光電変換層として備えた光電変換素子が知られている。
【0003】
カルコゲン元素を含有する光電変換層として、例えば、I−III−VI族化合物半導体が注目されている。
【0004】
I−III−VI族化合物半導体のうち、Cu、In、Ga、Se、Sを含むカルコパイライト結晶構造のI−III−VI族化合物半導体を用いたものは、CIS系光電変換層と呼ばれ、代表的な光電変換層の材料として、Cu(In、Ga)Se、Cu(In、Ga)(Se、S)、CuInS2、Cu(In、Ga)S等がある。特にGaを含むものは、CIGS系光電変換層とも呼ばれる。
【0005】
カルコパイライト結晶構造における各族元素の組成比は、I族元素:III族元素:VI族元素=1:1:2と表されているが、光電変換特性を向上する観点から、一般には、I族元素の原子数のIII族元素の原子数に対する比(I族元素の原子数/III族元素の原子数)は1未満に調整される。
【0006】
CIS系光電変換層を形成する方法として、主に、以下の2つの方法が挙げられる。
【0007】
第1の方法は、VI族元素(カルコゲン元素)を、I族元素又は/及びIII族元素と共に同時に蒸着しながら、カルコパイライト結晶構造を有するCIS系光電変換層を形成する方法であり、多源蒸着法と呼ばれる。この多源蒸着法の特徴は、I族元素又は/及びIII族元素を製膜しつつI族元素又は/及びIII族元素をカルコゲン化する(カルコゲン元素との化合物に反応させる)、言い換えるならば、カルコゲン化されたI族元素又は/及びIII族元素が製膜されることである。
【0008】
第2の方法は、まず、I族元素及びIII族元素を有する前駆体層を形成し、次に、前駆体層とVI族元素との化合物を形成して、カルコパイライト結晶構造を有するCIS系光電変換層を形成する方法であり、VI族元素の代表的な元素名をとって、セレン化法又は硫化法と呼ばれる。このセレン化法又は硫化法の特徴は、I族元素及びIII族元素の製膜ステップと、I族元素及びIII族元素のカルコゲン化のステップとを、分けていることである。
【0009】
光電変換素子の光電変換効率を向上する観点から、光電変換層における結晶粒径(カルコパイライト結晶の結晶粒径)を大きくすることが重要であると考えられている。
【0010】
例えば、多源蒸着法を用いて、結晶粒径を大きくするように光電変換層を製造するために、3つのステップを備える以下の3段階法と呼ばれる方法が提案されている。
【0011】
まず、第1ステップにおいて、電極層が形成された基板上に、III族元素であるIn及びGaと共に、VI族元素であるSeを蒸着して、電極層上に(In、Ga)Se層(III族元素がカルコゲン化された層)が形成される。
【0012】
次に、第2ステップにおいて、(In、Ga)Se層に対して、I族元素であるCu及びVI族元素であるSeを蒸着する。第2ステップの初期では、I族元素であるCuが不足しているので、Cuの原子数が不足しているCu(In、Ga)Se層(Xは1以上、Yは2以上の値)が形成される。その後、Cu及びSeを蒸着し続けることにより、第2ステップの終期では、Cuの原子数がIII族元素の原子数に比べて過剰になるので、Cu(In、Ga)Se層とCuSeとの混晶を有する層が形成される。
【0013】
次に、第3ステップにおいて、上述した混晶を有する層に対して、III族元素であるIn及びGa並びにVI族元素であるSeを蒸着して、I族元素であるCuの原子数のIII族元素の原子数に対する比が1よりも僅かに小さい組成を有するようにCu(In、Ga)Se層が形成される。Cu(In、Ga)Se層とCuSeとの混晶を有する層では、I族元素であるCuの原子数のIII族元素の原子数に対する比が1よりも大きく、Cuの原子数がIII族元素の原子数に対して過剰に存在する。このように、Cuの原子数が過剰にある状態で、蒸着法を用いて、VI元素と、I族元素であるCu及びIII族元素とを反応させることにより、結晶粒径が大きく、結晶欠陥の少ないカルコパイライト結晶が形成されると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−243983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、多源蒸着法を用いて、広い面積を有するCIS系光電変換層を形成する場合には、膜厚均一性が低くなるという問題があるので、大きな面積を有する光電変換層を形成することは困難である。さらに多源蒸着法では製膜時に高真空状態(10×10−4Pa以下)が必要とされるため、商業生産にも適していない。
【0016】
一方、セレン化法又は硫化法を用いることにより、膜厚均一性が高く、広い面積を有するCIS系光電変換層を形成することが比較的容易であることが知られている。
【0017】
そこで、本明細書では、前駆体法を用いて、結晶粒径が大きく、結晶欠陥の少ないカルコパイライト結晶構造を有するCIS系光電変換層を製造する方法を提供することを課題とする。
【0018】
また、前駆体法を用いて、結晶粒径が大きく、結晶欠陥の少ないカルコパイライト結晶構造を有するCIS系光電変換層を備える光電変換素子を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本明細書に開示する光電変換層の製造方法によれば、I族元素及びIII族元素を有し、I族元素の原子数のIII族元素の原子数に対する比が1よりも大きい第1の前駆体層を形成する第1工程と、上記第1の前駆体層とVI族元素との化合物を形成して、第2の前駆体層を得る第2工程と、上記第2の前駆体層上にIII族元素を有する層を形成して、上記第2の前駆体層と上記III族元素を有する層とが積層された積層体を得る第3工程と、上記積層体とVI族元素との化合物を形成して、光電変換層を得る第4工程と、を備える。
【0020】
また、本明細書に開示する光電変換素子の製造方法によれば、第1電極層上に光電変換層を形成する光電変換層形成工程であって、I族元素及びIII族元素を有し、I族元素の原子数のIII族元素の原子数に対する比が1よりも大きい第1の前駆体層を、上記第1電極層上に形成する第1工程と、上記第1の前駆体層とVI族元素との化合物を形成して、第2の前駆体層を得る第2工程と、上記第2の前駆体層上にIII族元素を有する層を形成して、上記第2の前駆体層と上記III族元素を有する層とが積層された積層体を得る第3工程と、上記積層体とVI族元素との化合物を形成して、光電変換層を得る第4工程と、を有する光電変換層形成工程と、上記光電変換層上に、第2電極層を形成する第2電極層形成工程と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
上述した本明細書に開示する光電変換層の製造方法によれば、結晶粒径が大きく、結晶欠陥の少ないカルコパイライト結晶構造を有するCIS系光電変換層が得られる。
【0022】
また、上述した本明細書に開示する光電変換素子の製造方法によれば、結晶粒径が大きく、結晶欠陥の少ないカルコパイライト結晶構造を有するCIS系光電変換層を備える光電変換素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本明細書に開示する光電変換素子の一実施形態を示す図である。
図2】本明細書に開示する光電変換素子の製造方法の第1実施形態の製造工程を説明する図(その1)である。
図3】本明細書に開示する光電変換素子の製造方法の第1実施形態の製造工程を説明する図(その2)である。
図4】本明細書に開示する光電変換素子の製造方法の第1実施形態の製造工程を説明する図(その3)である。
図5】本明細書に開示する光電変換素子の製造方法の第1実施形態の製造工程を説明する図(その4)である。
図6】本明細書に開示する光電変換素子の製造方法の第1実施形態の製造工程を説明する図(その5)である。
図7】光電変換層のエネルギーバンド構造を説明する図である。
図8】本明細書に開示する光電変換素子の製造方法の第1実施形態の製造工程を説明する図(その6)である。
図9】本明細書に開示する光電変換素子の製造方法の第2実施形態の製造工程を説明する図(その1)である。
図10】本明細書に開示する光電変換素子の製造方法の第2実施形態の製造工程を説明する図(その2)である。
図11】本明細書に開示する光電変換層の実施例及び比較例のSEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本明細書で開示する光電変換素子の好ましい一実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0025】
図1は、本明細書に開示する光電変換素子の一実施形態を示す図である。
【0026】
本実施形態の光電変換素子10は、基板11と、基板11上に配置される第1電極層12と、p型の導電性を有し、第1電極層12上に配置される光電変換層13と、光電変換層13上に配置され、i型又はn型の導電性を有し且つ高抵抗を有するバッファ層14と、n型の導電性を有し、バッファ層14上に配置される第2電極層15を備える。
【0027】
光電変換層13は、いわゆるCIS系光電変換層であり、カルコパイライト結晶構造を有するI−III−VI族化合物半導体を用いて形成される。
【0028】
I族元素としては、例えば、Cu(銅)、Ag(銀)若しくはAu(金)又はこれらの元素の組み合わせを用いることができる。
【0029】
III元素としては、例えば、In(インジウム)若しくはGa(ガリウム)若しくはAl(アルミニウム)又はこれらの元素の組み合わせを用いることができる。
【0030】
VI族元素としては、例えば、Se(セレン)、S(硫黄)、Te(テルル)若しくはO(酸素)又はこれらの元素の組み合わせを用いることができる。
【0031】
光電変換層13では、I族元素の原子数のIII族元素の原子数に対する比(I族元素の原子数/III族元素の原子数)は1未満であることが、良好な光電変換特性を得る観点から好ましい。光電変換層13の厚さは、例えば、1〜3μmとすることができる。
【0032】
次に、上述した光電変換素子10の製造方法の好ましい第1実施形態を、図2図9を参照しながら、以下に説明する。
【0033】
まず、図2に示すように、基板11上に、第1電極層12が形成される。基板11として、例えば、青板ガラス若しくは高歪点ガラス若しくは低アルカリガラス等のガラス基板、ステンレス板等の金属基板、又はポリイミド樹脂等の樹脂基板を用いることができる。基板11は、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属元素を含んでいてもよい。
【0034】
第1電極層12として、例えば、Mo、Cr、Ti等の金属を材料とする金属導電層を用いることができる。金属導電層を形成する材料は、Se又はS等のVI族元素との反応性の低い材料を用いることが、後述するセレン化法又は硫化法を用いて光電変換層を形成する時に、第1電極層12の腐食を防止する観点から好ましい。第1電極層12の厚さは、例えば、0.1〜2μmとすることができる。第1電極層12は、例えば、スパッタリング(DC、RF)法、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法:CVD法)、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法:ALD法)、蒸着法、イオンプレーティング法等を用いて形成される。
【0035】
光電変換素子10が、他の光電変換素子の上に配置されて、いわゆるタンデム型の光電変換素子積層体を形成する場合には、光電変換素子10は、透明な基板11及び透明な第1電極層12を有することが好ましい。ここで、基板11及び第1電極層12が透明であるとは、下に配置される他の光電変換素子が吸収する波長の光を透過することを意味する。なお、光電変換素子10は、基板を有していなくてもよい。また、透明な第1電極層12の材料としては、III族元素(Ga,Al,B)がドープされた酸化亜鉛や、ITO(Indium Tin Oxide)等が好適である。
【0036】
次に、図3に示すように、第1電極層12上に、I族元素及びIII族元素を有し、I族元素の原子数のIII族元素の原子数に対する比が1よりも大きい第1の前駆体層13aが形成される。
【0037】
第1の前駆体層13aを形成する方法として、例えば、スパッタリング法、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法:ALD法)、インク塗布法又は蒸着法が挙げられる。スパッタリング法は、ターゲットであるスパッタ源を用いて、イオン等をターゲットに衝突させ、ターゲットから叩き出された原子を用いて成膜する方法である。原子層堆積法は、原料ガスを交互に供給し、自己停止機構を利用して原子層レベルで原子を堆積させて成膜する方法である。インク塗布法は、プリカーサ膜の材料を粉体にしたものを有機溶剤等の溶媒に分散して、第1電極層上に塗布し、溶剤を蒸発させて、プリカーサ膜を形成する方法である。蒸着法は、蒸着源を加熱して気相となった原子等を用いて成膜する方法である。特に、広い面積を有する第1の前駆体層13aを、高い膜厚均一性を有するように形成する観点から、スパッタリング法を用いて、第1の前駆体層13aを形成することが好ましい。さらに、スパッタリング法は蒸着法に比べて、チャンバー内の真空度を弱く(圧力を高く)できるため、装置コストを低減できる利点がある。
【0038】
本実施形態では、I族元素としてCuを用い、III族元素としてIn及びGaを用いて、第1の前駆体層13aを形成する。第1の前駆体層13aは、I族元素であるCuの原子数のIII族元素(In及びGa)の原子数に対する比が1よりも大きく(Cu過剰に)なるように形成される。
【0039】
I族元素であるCuを含むスパッタ源としては、Cu単体、Cu及びGaを含むCu−Ga、Cu及びInを含むCu−In、Cu及びGa及びInを含むCu−Ga−In等を用いることができる。III族元素であるGaを含むスパッタ源としては、Ga単体、Cu及びGaを含むCu−Ga、Cu及びGa及びInを含むCu−Ga−In等を用いることができる。III族元素であるInを含むスパッタ源としては、In単体、Cu及びInを含むCu−In、Cu及びGa及びInを含むCu−Ga−In等を用いることができる。
【0040】
Cu及びIn及びGaを含む第1の前駆体層13aは、上述したスパッタ源を用いて形成される層を単体又は積層して構成され得る。
【0041】
プルカーサ膜の具体例として、Cu−Ga−In、Cu−Ga/Cu−In、Cu−In/Cu−Ga、Cu−Ga/Cu/In、Cu−Ga/In/Cu、Cu/Cu−Ga/In、Cu/In/Cu−Ga、In/Cu−Ga/Cu、In/Cu/Cu−Ga、Cu−Ga/Cu−In/Cu、Cu−Ga/Cu/Cu−In、Cu−In/Cu−Ga/Cu、Cu−In/Cu/Cu−Ga、Cu/Cu−Ga/Cu−In、Cu/Cu−In/Cu−Ga等が挙げられる。また、プルカーサ膜は、これらの膜を更に積層した多重積層構造を有していてもよい。
【0042】
ここで、上述したCu−Ga−Inは、単体の膜を意味する。また、「/」は、左右の膜の積層体であることを意味する。例えば、Cu−Ga/Cu−Inは、Cu−Ga膜とCu−In膜との積層体を意味する。Cu−Ga/Cu/Inは、Cu−Ga膜とCu膜とIn膜との積層体を意味する。
【0043】
また、第1の前駆体層13aは、I族元素として、Cuと共に、Ag又はAuを含んでいてもよい。第1の前駆体層13aは、III族元素として、Alを含んでいてもよい。
【0044】
また、第1の前駆体層13aは、アルカリ金属元素又はアルカリ金属化合物を含有してもよい。アルカリ金属としてはリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)があり、アルカリ金属化合物としては、フッ化物(LiF、NaF、KF)、セレン化物(LiSe、NaSe、NaS)、硫化物(LiS、NaS、KS)などがある。なお、アルカリ金属化合物としてセレン化物や硫化物を適用する場合、第1の前駆体層13a中にセレン又は硫黄を含むことになるが、このセレン又は硫黄は、アルカリ金属との化合物であって、蒸着法で適用したVI族のように、I族元素やIII族元素をカルコゲン化するものではない。
【0045】
次に、図4に示すように、第1の前駆体層13aとVI族元素との化合物を形成して、第2の前駆体層13bが得られる。本実施形態では、第1の前駆体層13aを、VI族元素であるSeを含む雰囲気において加熱(基板温度が250〜600℃)し、第1の前駆体層13aとSeとの化合物を形成して、第2の前駆体層13bが得られる。具体的には、第1の前駆体層13aが有するCu(In、Ga)と、Seが反応して、Cu(In、Ga)Seを有する第2の前駆体層13bが形成される。Seを含む雰囲気は、例えば、セレン化水素(HSe)、又はセレンを加熱して形成したセレン蒸気を用いて形成することができる。
【0046】
第2の前駆体層13bでは、I族元素であるCuの原子数が、III族元素(In及びGa)の原子数よりも過剰に存在するので、結晶粒径が大きく、結晶欠陥の少ないカルコパイライト結晶が形成されると考えられる。
【0047】
また、I族元素であるCuの原子数が、III族元素(In及びGa)の原子数よりも過剰に存在するので、カルコパイライト結晶を形成しないI族元素であるCuの一部は、VI族元素であるSeとの化合物であるCuSeを形成する。
【0048】
第2の前駆体層13b内では、図4に示す工程における熱処理によって、In及びGaの熱拡散が生じる。Gaの熱拡散移動度はInよりも小さいので、表面側におけるIII族元素の割合は、Gaの濃度の方がInよりも低くなる。
【0049】
上述したように、図4に示す工程では、気相のセレン(Se)を用いて、第1の前駆体層13aのセレン化を行ったが、固相のセレンを用いて、第1の前駆体層13aのセレン化を行ってもよい。固相のセレンを用いる場合には、第1の前駆体層13a上に、セレンを含む層を形成して、加熱することにより、第1の前駆体層13aのセレン化を行って、第2の前駆体層13bが形成される。又は、第1の前駆体層13aをセレンを含むように形成して加熱することにより、第1の前駆体層13aのセレン化を行って第2の前駆体層13bを形成してもよい。
【0050】
次に、図5に示すように、第2の前駆体層13b上にIII族元素を有する層13cを形成して、第2の前駆体層13bとIII族元素を有する層13cとが積層された積層体13dが得られる。本実施形態では、III族元素としてInを用いて、III族元素を有する層13cを形成した。
【0051】
III族元素を有する層13cは、積層体13d全体におけるI族元素の原子数のIII族元素の原子数に対する比が1よりも小さくなるように形成される。具体的には、III族元素を有する層13cの厚さは、積層体13d全体におけるI族元素の原子数のIII族元素の原子数に対する比が1よりも小さくなるように決定される。
【0052】
III族元素を有する層13cを形成する方法として、例えば、スパッタリング法、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法:ALD法)、インク塗布法又は蒸着法が挙げられる。特に、広い面積を有するIII族元素を有する層13cを、高い膜厚均一性を有するように形成する観点から、スパッタリング法を用いて、III族元素を有する層13cを形成することが好ましい。
【0053】
詳しくは後述するが、III族元素を有する層13cが、Gaを含まないことにより、光電変換層13の厚さ方向のGa濃度の分布を、第1電極層12側からバッファ層14側に向かって減少するようにすることができる。
【0054】
また、III族元素を有する層13cは、III族元素として、Inと共に、Alを含んでいてもよい。
【0055】
次に、図6に示すように、積層体13dとVI族元素との化合物を形成して、光電変換層13が得られる。本実施形態では、積層体13dを、VI族元素であるSを含む雰囲気において加熱(基板温度が350〜600℃)し、積層体13dとSとの化合物を形成して、光電変換層13が得られる。Sを含む雰囲気は、例えば、硫化水素(HS)、又は硫黄を加熱して形成した硫黄蒸気を用いて形成することができる。
【0056】
第2の前駆体層13bが有するCuSeと、III族元素を有する層13cが有するInと、VI族元素であるSとが反応して、カルコパイライト結晶が形成される。ここで、第2の前駆体層13bが有するCu(In、Ga)Seの一部は、SeがSに置換されて、Cu(In、Ga)(Se、S)又はCu(In、Ga)Sとなる。
【0057】
また、光電変換層13全体としては、I族元素の原子数のIII族元素の原子数に対する比が1よりも小さくなる。
【0058】
光電変換層13では、図6に示す工程における熱処理によって、In及びGaの熱拡散が生じる。まず、Inに関しては、III族元素を有する層13cから第2の前駆体層13bに向かって熱拡散するものと、第2の前駆体層13bからIII族元素を有する層13cに向かって熱拡散するものとある。III族元素を有する層13cは、元々、Inにより形成されているので、光電変換層13となった状態でも、III族元素を有する層13cに対応する領域では、III族元素(In及びGa)の内のInの割合が多い領域となる。一方、Gaは、III族元素を有する層13cには存在していなかったので、光電変換層13となった状態では、III族元素を有する層13cに対応する領域に存在するGaは、第2の前駆体層13bから表面側(バッファ層との界面側)に向かって熱拡散して移動してきたものだけである。また、上述したように、Gaの熱拡散移動度はInよりも小さい。従って、光電変換層13の深さ方向において、Gaの原子数のIII族元素の原子数(Ga及びInの原子数の和)に対する比(Gaの原子数/III族元素の原子数)は、表面側(バッファ層との界面側)に向かって低減する濃度勾配を有する。
【0059】
光電変換層13における硫黄(S)の膜厚方向の濃度分布は、表面側(バッファ層との界面側)において濃度の高い領域が形成される。硫黄は、光電変換層13のバンドギャップを広げる働きを有するので、光電変換層13の深さ方向において、バンドギャップは、表面側(バッファ層との界面側)に向かって増大する分布を有する。
【0060】
図7は、光電変換層の膜厚方向のエネルギーバンド構造を説明する図である。
【0061】
図7は、光電変換層13の価電子帯の上端のエネルギー準位Evと、伝導帯の下端のエネルギー準位Ecを示す。エネルギー準位Ecは、第1電極層側からバッファ層側に向かって低減した後、バッファ層側の領域で増加する分布を有する。エネルギー準位Ecが、第1電極層側からバッファ層側に向かって低減する理由は、Gaの原子数のIII族元素の原子数(Ga及びInの原子数の和)に対する比(Gaの原子数/III族元素の原子数)が減少するためである。これは、CuIn(Se、S)のバンドギャップは、CuGa(Se、S)よりも小さいので、CuGa(Se、S)の濃度の減少と共に、エネルギー準位Ecが低減するためである。
【0062】
エネルギー準位Ecがバッファ層側の領域において、第1電極層側からバッファ層側に向かって増加する理由は、硫黄(S)濃度の分布に基づいている。Cu(In、Ga)Sのエネルギーギャップは、Cu(In、Ga)Seよりも大きいので、硫黄濃度の増加と共に、エネルギー準位Ecが増加するためである。
【0063】
一般に、CIGS系光電変換層では、図7に示すように、エネルギー準位Ecが、第1電極層側からバッファ層側に向かって低減した後、バッファ層側の領域で増加するバンド構造(いわゆる、ダブルグレーデッドなバンド構造)を有することが、光電変換特性を向上する観点から好ましいと考えられている。本実施形態の光電変換素子の製造方法では、このダブルグレーデッドな分布を有する光電変換層を形成することができる。
【0064】
なお、図6に示す工程では、気相の硫黄(S)を用いて、積層体13dの硫化を行ったが、固相の硫黄を用いて、積層体13dの硫化を行ってもよい。固相の硫黄を用いる場合には、III族元素を有する層13c上に、硫黄を含む層を形成して、加熱することにより、積層体13dの硫化を行って、光電変換層13が形成される。又は、III族元素を有する層13cを硫黄を含むように形成して加熱することにより、積層体13dの硫化を行って光電変換層13を形成してもよい。
【0065】
次に、図8に示すように、光電変換層13上に、i型又はn型の導電性を有するバッファ層14が形成される。バッファ層14は、光電変換層13が吸収する波長の光を透過することが好ましい。
【0066】
バッファ層14として、例えば、Zn、Cd、Inを含む化合物を用いることができる。Znを含む化合物としては、例えば、ZnO、ZnS、Zn(OH)又はこれらの混晶であるZn(O、S)、Zn(O、S、OH)やZnMgO、ZnSnOが挙げられる。Cdを含む化合物としては、例えば、CdS、CdO又はこれらの混晶であるCd(O、S)、Cd(O、S、OH)が挙げられる。Inを含む化合物としては、例えば、InS、InO又はこれらの混晶であるIn(O、S)、In(O、S、OH)が挙げられる。また、バッファ層14は、これらの内の複数の化合物を積層して形成されてもよい。
【0067】
バッファ層14の形成方法としては、溶液成長法(Chemical Bath Deposition法:CBD法)、有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition法:MOCVD法)、スパッタリング法、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法:ALD法)、蒸着法、イオンプレーティング法等を用いることができる。なお、CBD法とは、プリカーサとなる化学種を含む溶液に基材を浸し、溶液と基材表面との間で不均一反応を進行させることによって薄膜を基材上に析出させるものである。
【0068】
バッファ層14の厚さは、例えば、数nm〜200nmとすることができる。
【0069】
バッファ層14が、CBD法を用いて形成される場合には、バッファ層14を形成した後に、基板11にバッファ層14等が積層された積層体を洗浄して、その表面に付着している粒子や化学種を含む溶液等の残留物を洗浄することが好ましい。洗浄方法としては、例えば、純水を満たした槽内に、積層体を浸漬すること、又はクイックダンプ洗浄等が挙げられる。
【0070】
次に、バッファ層14上に、第2電極層15が形成されて、図1に示す光電変換素子10が得られる。
【0071】
第2電極層15は、n型の導電性を有し、禁制帯幅が広く且つ低抵抗の材料によって形成されることが好ましい。また、第2電極層15は、光電変換層13が吸収する波長の光を透過することが好ましい。上述した第1電極層12も、光電変換層13が吸収する波長の光を透過する材料を用いて形成してもよい。
【0072】
第2電極層15は、例えば、III族元素(B、Al、Ga、In)がドーパントとして添加された酸化金属を用いて形成される。具体的には、B:ZnO、Al:ZnO、Ga:ZnO等の酸化亜鉛、ITO(酸化インジウムスズ)及びSnO(酸化スズ)が挙げられる。また、第2電極層15として、ITiO、FTO、IZO又はZTOを用いてもよい。
【0073】
第2電極層15の形成方法としては、例えば、スパッタリング(DC、RF)法、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法、有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition法:MOCVD法)、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition法:ALD法)、蒸着法、イオンプレーティング法等を用いることができる。
【0074】
第2電極層15の厚さは、例えば、0.5〜3μmとすることができる。
【0075】
また、バッファ層14上に第2電極層15を形成する前に、実質的にドーパントが添加されていない真性な導電性を有する酸化亜鉛膜(i-ZnO)を形成し、この真性な導電性を有する酸化亜鉛膜上に、第2電極層15を形成してもよい。
【0076】
上述した本実施形態の光電変換素子の製造方法によれば、結晶粒径が大きく、結晶欠陥の少ないカルコパイライト結晶構造を有するCIS系光電変換層を備える光電変換素子が得られる。
【0077】
次に、上述した光電変換素子の製造方法の第2実施形態を、図9及び図10を参照しながら以下に説明する。第2実施形態について特に説明しない点については、上述の第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0078】
本実施形態の光電変換素子の製造方法では、上述した第1実施形態における図5及び図6に示す工程が異なっている。
【0079】
まず、上述した第1実施形態における図2図4に示す工程と同様にして、基板11上に第1電極層12及び第2の前駆体層13bが順番に形成される。
【0080】
次に、図9に示すように、第2の前駆体層13b上にIII族元素を有する層13cを形成して、第2の前駆体層13bとIII族元素を有する層13cとが積層された積層体13dが得られる。本実施形態では、III族元素としてIn及びGaを用いて、III族元素を有する層13cが形成された。
【0081】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、III族元素を有する層13cは、積層体13d全体におけるI族元素の原子数のIII族元素の原子数に対する比が1よりも小さくなるように形成される。
【0082】
詳しくは後述するが、III族元素を有する層13cが、Gaを含むことにより、光電変換層13の厚さ方向のGa濃度の分布を、第1電極層側からバッファ層側に向かって低減した後、バッファ層側の領域で増加するように形成することができる。
【0083】
次に、図10に示すように、積層体13dとVI族元素との化合物を形成して、光電変換層13が得られる。本実施形態では、積層体13dを、VI族元素であるSeを含む雰囲気において加熱し、積層体13dとSeとの化合物を形成して、光電変換層13が得られる。
【0084】
光電変換層13では、図10に示す工程における熱処理によって、III族元素を有する層13cに含まれていたIn及びGaの熱拡散が生じて、In及びGaが第1電極層12側へ移動する。上述したように、Gaの熱拡散移動度はInよりも小さい。従って、光電変換層13におけるIII族元素を有する層13cであった領域では、光電変換層13の深さ方向において、Gaの原子数のIII族元素の原子数(Ga及びInの原子数の和)に対する比(Gaの原子数/III族元素の原子数)は、表面側(バッファ層との界面側)に向かって増大する濃度分布が形成される。
【0085】
また、光電変換層13における第2の前駆体層13bであった領域では、光電変換層13の深さ方向において、Gaの原子数のIII族元素の原子数(Ga及びInの原子数の和)に対する比(Gaの原子数/III族元素の原子数)は、表面側(バッファ層との界面側)に向かって低減する濃度分布が形成される。
【0086】
従って、光電変換層13の深さ方向において、Gaの原子数のIII族元素の原子数(Ga及びInの原子数の和)に対する比(Gaの原子数/III族元素の原子数)は、第1電極層側からバッファ層側に向かって低減した後、バッファ層側の領域で増加する分布を有する。光吸収層13のバンドギャップは、Gaの原子数のIII族元素の原子数(Ga及びInの原子数の和)に対する比と共に変化するので、図7に示すのと同様に、ダブルグレーデッドなバンド構造を得ることができる。
【0087】
このようにして光電変換層13が形成された後、上述した第1実施形態と同様にして、バッファ層14及び第2電極層15が形成されて、図1に示す光半導体素子10が得られる。
【0088】
上述した本実施形態の光電変換素子の製造方法によれば、上述した第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0089】
本発明では、上述した実施形態の光電変換層の製造方法及び光電変換素子の製造方法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、一の実施形態が有する構成要件は、他の実施形態にも適宜適用することができる。
【0090】
例えば、上述した光電変換素子の製造方法の第1実施形態及び第2実施形態では、第1の前駆体層13aは、I族元素としてCuを含んでいたが、第1の前駆体層13aは、Cuの代わりに他のI族元素を含んでいてもよい。
【0091】
また、上述した光電変換素子の製造方法の第1実施形態では、第1の前駆体層13aとVI族元素であるSeとの化合物を形成して、第2の前駆体層13bが得ていたが、第1の前駆体層13aとVI族元素であるSとの化合物を形成して、第2の前駆体層13bを得てもよい。
【0092】
また、上述した光電変換素子の製造方法の第1実施形態では、III族元素を有する層13cは、Gaを含んでいなかったが、III族元素を有する層13cは、Gaを含むように形成してもよい。
【0093】
更に、上述した各実施形態では、光電変換素子は、バッファ層を有していたが、光電変換素子は、バッファ層を有さずに、n型の導電性を有する第2電極層が、光電変換層上に直接配置されていてもよい。
【実施例】
【0094】
以下、本明細書に開示する光電変換層の製造方法について、実施例を用いて更に説明する。ただし、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0095】
(実施例1)
まず、ガラス板である基板上に、スパッタリング法を用いて、Moを含む複数の層を有する第1電極層が形成された。次に、I族元素であるCu並びにIII族元素であるIn及びGaを有する第1の前駆体層が、スパッタリング法を用いて、第1電極層上に形成された。第1の前駆体層において、I族元素であるCuの原子数のIII族元素(In及びGa)の原子数に対する比は、1.0〜1.2であった。次に、第1の前駆体層を、VI族元素であるSeを含む雰囲気において加熱(基板温度が約400〜500℃)して、第1の前駆体層とSeとの化合物を形成し、第2の前駆体層を得た。Seを含む雰囲気は、セレン化水素(HSe)を用いて形成した。次に、スパッタリング法を用いて、第2の前駆体層上に、III族元素であるInを有する層を形成して、積層体を得た。次に、積層体を、VI族元素であるSを含む雰囲気において加熱(基板温度が約500〜650℃)し、積層体とSとの化合物を形成して、実施例1の光電変換層を得た。Sを含む雰囲気は、硫化水素(HS)を用いて形成した。
【0096】
(比較例1)
まず、ガラス板である基板上に、スパッタリング法を用いて、Moを含む複数の層を有する第1電極層が形成された。次に、I族元素であるCu並びにIII族元素であるIn及びGaを有する前駆体層が、スパッタリング法を用いて、第1電極層上に形成された。前駆体層において、I族元素であるCuの原子数のIII族元素(In及びGa)の原子数に対する比は、0.85〜0.95であった。次に、前駆体層を、VI族元素であるSe(セレン)を含む雰囲気において加熱(基板温度が約400〜500℃)してセレン化した後、更に、VI族元素であるS(硫黄)を含む雰囲気において加熱(基板温度が約500〜650℃)して硫化して、比較例1の光電変換層を得た。ここで、Seを含む雰囲気は、セレン化水素(HSe)を用いて形成し、Sを含む雰囲気は、硫化水素(HS)を用いて形成した。
【0097】
実施例1及び比較例1の光電変換層に対して、光電変換層の断面のSEM画像を撮影した。撮影したSEM像を図11に示す。
【0098】
図11(A)は、基板上の第1電極層上に形成された実施例1の光電変換層の断面のSEM画像を示し、図11(B)は、基板上の第1電極層上に形成された比較例1の光電変換層の断面のSEM画像を示す。
【0099】
図11(A)と図11(B)とを比較すると、実施例1の光電変換層は、比較例1よりも、光電変換層を形成する結晶粒子の粒径が大きくなっていることが分かる。また、実施例1の光電変換層の結晶粒子の大きさは、比較例1と比べて揃っていることが分かる。
【符号の説明】
【0100】
10 光電変換素子
11 基板
12 第1電極層
13 光電変換層
13a 第1の前駆体層
13b 第2の前駆体層
13c III族元素を有する層
13c 積層体
14 バッファ層
15 第2電極層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11