特許第6961339号(P6961339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961339
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】微生物菌体含有飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20211025BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20211025BHJP
   A23L 2/42 20060101ALI20211025BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   A23L2/38 G
   A23L2/00 F
   A23L2/00 N
   A23L2/00 T
【請求項の数】22
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-240827(P2016-240827)
(22)【出願日】2016年12月13日
(65)【公開番号】特開2017-112995(P2017-112995A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2019年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-247787(P2015-247787)
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100120905
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 伸子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小泉 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】吉川 徹
(72)【発明者】
【氏名】石川 良子
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−178685(JP,A)
【文献】 特開2004−222652(JP,A)
【文献】 特開平07−227227(JP,A)
【文献】 特開平05−184341(JP,A)
【文献】 特開平06−086633(JP,A)
【文献】 特開2010−030967(JP,A)
【文献】 特開2005−000043(JP,A)
【文献】 特開2004−267013(JP,A)
【文献】 特開2004−154060(JP,A)
【文献】 特開2008−136487(JP,A)
【文献】 特開2001−064189(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/126476(WO,A1)
【文献】 加藤友治,「ポリグリセリン脂肪酸エステルの物理化学的特性と食品への応用」,日本食品工業会誌,2002年03月,Vol.3, No.1,pp.1-7,ISSN 1345-7942
【文献】 中村順一、外2名,「粉末用分散剤としてのポリグリセリン脂肪酸エステル」,日本化粧品技術者集会誌(J. SOC. COSMET. CHEM. JPN.),1997年,Vol.31, No.3,pp.297-303,ISSN 0387-5253
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C,A23L,A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)破壊処理微生物菌体粉末と、(B)重合度が3〜10のポリグリセリンと炭素数が10〜18の脂肪酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有することを特徴とする、破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項2】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、モノラウリン酸ペンタグリセリンである、請求項1に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項3】
前記飲料が、さらに、有機酸モノグリセリドを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項4】
前記有機酸モノグリセリドを構成する有機酸が、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、及びジアセチル酒石酸から選ばれる有機酸である、請求項3に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項5】
前記飲料全量に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量をXとし、前記飲料全量に対する有機酸モノグリセリドの含有量をYとした時、Y/Xの値が、質量比で10以下である、請求項3または4に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項6】
前記飲料が、モノラウリン酸ペンタグリセリンとコハク酸モノステアリン酸グリセリンを含有する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項7】
前記飲料が、モノミリスチン酸ペンタグリセリンとジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリンを含有する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項8】
前記飲料が、モノミリスチン酸デカグリセリン、モノラウリン酸ペンタグリセリン、及びコハク酸モノステアリン酸グリセリンを含有する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項9】
前記飲料中のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、0.001〜0.2質量%である、請求項1または2に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項10】
前記飲料中のポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドの含有量が、0.001〜0.2質量%である、請求項3〜8のいずれか1項に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項11】
前記破壊処理微生物菌体が、乳酸菌の菌体である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項12】
前記乳酸菌の菌体が、ラクトバチルス属に属する菌体である、請求項11に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項13】
前記飲料が、乳を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項14】
前記飲料が、炭酸ガスを含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の破壊処理微生物菌体含有飲料。
【請求項15】
微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理する工程を含む、微生物菌体含有飲料の製造方法。
【請求項16】
微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃の水溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散した有機酸モノグリセリドを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理する工程を含む、微生物菌体含有飲料の製造方法。
【請求項17】
微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理する工程を含む、微生物菌体含有飲料の製造方法。
【請求項18】
前記微生物菌体が、破壊処理菌体である、請求項1517のいずれか1項に記載の微生物菌体含有飲料の製造方法。
【請求項19】
微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理することを特徴とする、飲食品における微生物菌体の沈殿物または凝集物の分散性向上方法。
【請求項20】
微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃の水溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散した有機酸モノグリセリドを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理することを特徴とする、飲食品における微生物菌体の沈殿物または凝集物の分散性向上方法。
【請求項21】
微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理することを特徴とする、飲食品における微生物菌体の沈殿物または凝集物の分散性向上方法。
【請求項22】
前記微生物菌体が、破壊処理菌体である、請求項1921のいずれか1項に記載の飲食品における微生物菌体の沈殿物または凝集物の分散性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌などの微生物菌体を含有する飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向などを背景に、健康上有益な生理活性を有する機能性成分として、乳酸菌が注目されている。乳酸菌は、これまでに整腸作用、抗アレルギー作用、コレステロール低減作用、血圧降下作用、美肌作用、安眠作用など、菌株により様々な生理活性を有することが知られている。また、新規な生理活性を有する乳酸菌株の研究が進められており、例えば、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorous)CP1563株は、脂質代謝及び/又は糖代謝の改善に有効であることや(特許文献1)、当該菌株を破壊することによって脂質代謝改善効果が向上することが報告されている(特許文献2)。このような乳酸菌を簡便に日常的に摂取できる点において、乳酸菌含有飲料は、消費者の健康志向に合致し、今後ますますニーズが高まることが予想される。
【0003】
乳酸菌含有飲料の製造方法としては、例えば、原料乳に乳酸菌を加えて発酵させて得られる発酵乳を配合する方法や、乳酸菌の菌体を凍結乾燥等により乾燥させた菌体粉末を配合する方法などがある。しかしながら、このような方法で製造された乳酸菌含有飲料は、保存中に発酵乳中の乳蛋白質または菌体粉末の凝集や沈殿が発生したり、発酵乳による白濁が起こるなどの問題があった。これまで、乳酸菌含有飲料において乳蛋白質などの沈殿の発生を抑制し、保存安定性を向上させるために、ペクチン、ガム類、大豆多糖類などの安定剤を添加する方法(特許文献3、4)、発酵セルロース及び大豆多糖類を添加する方法(特許文献5)などが報告されている。また、グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤は、食品加工の際に乳化、分散、浸透、洗浄、起泡、消泡、離型等の目的で使用され、飲料においては、保存中の油脂分の分離を防止する目的で使用されることが多く、例えば、特許文献6には、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルを併用することによって、乳化状態が良好で保存安定性に優れる乳飲料が得られることが開示されている。しかしながら、これらはいずれも乳蛋白質の凝集の抑制や乳脂肪分の分散の促進により安定化を図るものであり、乳酸菌などの微生物菌体の沈殿物や凝集物の分散性を向上させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5690416号公報
【特許文献2】特許第5801802号公報
【特許文献3】特開2005-185132号公報
【特許文献4】特許第4017175号公報
【特許文献5】特開2014-19号公報
【特許文献6】特許第3509566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乳酸菌などの微生物菌体を飲料によって摂取しようとする場合、最終製品形態の幅を広げるために微生物菌体粉末を飲料に含有することが好ましく、また、菌体内部に存在する生理活性物質を摂取しようとする場合には、微生物菌体を破壊した破壊処理菌体粉末を飲料に含有することが好ましい。ところが、この場合、保存中に微生物菌体粉末が飲料中で沈み、特に、破壊処理菌体粉末の場合には菌体粉末同士、または、菌体粉末が容器底面に付着し、固い沈殿物が形成されるため、生理活性物質を摂取しづらく、飲料の見た目にも悪いという課題を見出した。特に、飲料容器を振って飲用できない炭酸飲料では、容器底面の沈殿物を分散させにくいという問題が発生する。また、製造時において、微生物菌体粉末(特に破壊処理菌体粉末)が凝集して、微生物菌体を容器に均一に充填できないという課題を見出した。
【0006】
そこで、本発明の目的は、乳酸菌などの微生物菌体を含有する飲料において、製造時及び保存中に発生する該微生物菌体の沈澱物や凝集物の分散性を向上させる有効な手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、飲料に、乳酸菌などの微生物菌体粉末とともに、ポリグリセリン脂肪酸エステルを単独で、またはポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドを併用して配合することにより、乳酸菌などの微生物菌体を含有する飲料における製造時及び保存中に発生する微生物菌体の沈澱物や凝集物の分散性を顕著に向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)(A)微生物菌体粉末と、(B)重合度が3〜10のポリグリセリンと炭素数が10〜18の脂肪酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有することを特徴とする、微生物菌体含有飲料。
(2)前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、モノラウリン酸ペンタグリセリンである、(1)に記載の微生物菌体含有飲料。
(3)前記飲料が、さらに、有機酸モノグリセリドを含有することを特徴とする、(1)または(2)に記載の微生物菌体含有飲料。
(4)前記有機酸モノグリセリドを構成する有機酸が、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、及びジアセチル酒石酸から選ばれる有機酸である、(3)に記載の微生物菌体含有飲料。
(5)前記飲料全量に対するポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量をXとし、前記飲料全量に対する有機酸モノグリセリドの含有量をYとした時、Y/Xの値が、質量比で10以下である、(3)または(4)に記載の微生物菌体含有飲料。
(6)前記飲料が、モノラウリン酸ペンタグリセリンとコハク酸モノステアリン酸グリセリンを含有する、(3)〜(5)のいずれかに記載の微生物菌体含有飲料。
(7)前記飲料が、モノミリスチン酸ペンタグリセリンとジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリンを含有する、(3)〜(5)のいずれかに記載の微生物菌体含有飲料。
(8)前記飲料が、モノミリスチン酸デカグリセリン、モノラウリン酸ペンタグリセリン、及びコハク酸モノステアリン酸グリセリンを含有する、(3)〜(5)のいずれかに記載の微生物菌体含有飲料。
(9)前記飲料中のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、0.001〜0.2質量%である、(1)または(2)に記載の微生物菌体含有飲料。
(10)前記飲料中のポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドの含有量が、0.001〜0.2質量%である、(3)〜(8)のいずれかに記載の微生物菌体含有飲料。
(11)前記微生物菌体が、破壊処理菌体である、(1)〜(10)のいずれかに記載の微生物菌体含有飲料。
(12)前記微生物菌体が、乳酸菌の菌体である、(1)〜(11)のいずれかに記載の微生物菌体含有飲料。
(13)前記乳酸菌の菌体が、ラクトバチルス属に属する菌体である、(12)に記載の微生物菌体含有飲料。
(14)前記飲料が、乳を含むことを特徴とする、(1)〜(13)のいずれかに記載の微生物菌体含有飲料。
(15)前記飲料が、炭酸ガスを含むことを特徴とする、(1)〜(14)のいずれかに記載の微生物菌体含有飲料。
(16)微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理する工程を含む、微生物菌体含有飲料の製造方法。
(17)微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃の水溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散した有機酸モノグリセリドを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理する工程を含む、微生物菌体含有飲料の製造方法。
(18)微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理する工程を含む、微生物菌体含有飲料の製造方法。
(19)前記微生物菌体が、破壊処理菌体である、(16)〜(18)のいずれかに記載の微生物菌体含有飲料の製造方法。
(20)微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理することを特徴とする、飲食品における微生物菌体の沈殿物または凝集物の分散性向上方法。
(21)微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃の水溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散した有機酸モノグリセリドを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理することを特徴とする、飲食品における微生物菌体の沈殿物または凝集物の分散性向上方法。
(22)微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理することを特徴とする、飲食品における微生物菌体の沈殿物または凝集物の分散性向上方法。
(23)前記微生物菌体が、破壊処理菌体である、(20)〜(22)のいずれかに記載の飲食品における微生物菌体の沈殿物または凝集物の分散性向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、健康の維持増進のための機能成分として有用な乳酸菌などの微生物菌体を含有し、かつ製造時の安定性及び保存安定性に優れた飲料が提供される。本発明の飲料は、保存中に発生する微生物菌体の沈殿物または凝集物の分散性が良く、沈殿物または凝集物が容器底に固着しない。よって、本発明によれば、飲用前に容器を強く振って、沈殿物を分散させることができない炭酸飲料においても、乳酸菌などの微生物菌体を飲料に配合することが可能となる。また、本発明によれば、製造時における微生物菌体の分散性を向上させることができるので、飲料に微生物菌体を均一に充填させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、沈殿の評価基準を示す容器の底面および全体の外観の写真である。
図2図2は、実施例22〜25、及び比較例6の飲料サンプルの保存試験後の容器の底面および全体の外観の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.微生物菌体含有飲料及びその製造方法
本発明の飲料は、微生物菌体粉末と、製造時及び保存中に発生する該微生物菌体の沈澱物や凝集物の分散性を向上させる乳化剤とを含有することを特徴とする。本発明の飲料の種類としては、例えば、乳性飲料、炭酸飲料、果汁・野菜汁飲料、茶飲料、コーヒー飲料、機能性飲料、スポーツ飲料などが挙げられる。
【0012】
[微生物菌体]
本発明の飲料に使用する微生物菌体は、代表的には乳酸菌の菌体をいうが、これに限定はされず、例えば、酵母の菌体であってもよい。また、乳酸菌には、乳酸桿菌、乳酸球菌のほか、広義の乳酸菌としてビフィズス菌をも包含するものとする。乳酸菌の菌体としては、飲食品に一般的に使用されるものであれば限定はされないが、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ワイセラ(Weissella)属などに属する乳酸菌の菌体が挙げられ、なかでもラクトバチルス属に属する乳酸菌の菌体が好ましい。これらの乳酸菌の菌体は1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてよい。
【0013】
ラクトバチルス属に属する乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・デルブリュッキイ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ケフィア、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガリナルム等が挙げられる。
【0014】
ビフィドバクテリウム属は、ビフィズス菌とも称され、このような乳酸菌としては、例えば、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・カテニュラータム、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュラータム、及びビフィドバクテリウム・マグナム等が挙げられる。
【0015】
ロイコノストック属に属する乳酸菌としては、例えば、ロイコノストック・メセンテロイデス、ロイコノストック・ラクティス等が挙げられる。
【0016】
ラクトコッカス属に属する乳酸菌としては、例えば、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトコッカス・プランタラム、ラクトコッカス・ラフィノラクティス、ラクトコッカス・クレモリス等が挙げられる。
【0017】
ペディオコッカス属に属する乳酸菌としては、例えば、ペディオコッカス・ペントサセウス、及びペディオコッカス・ダムノサス等が挙げられる。
【0018】
エンテロコッカス属に属する乳酸菌としては、例えば、エンテロコッカス・フェカリス、エンテロコッカス・ヒラエ、及びエンテロコッカス・フェシウム等が挙げられる。
【0019】
ストレプトコッカス属に属する乳酸菌としては、例えば、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトコッカス・ラクチス、ストレプトコッカス・ダイアセチラクチス、ストレプトコッカス・フェカリス等が挙げられる。
【0020】
ワイセラ属に属する乳酸菌としては、ワイセラ・チバリア、ワイセラ・コンフューザ、ワイセラ・ハロトレランス、ワイセラ・ヘレニカ、ワイセラ・カンドレリ、ワイセラ・キムチイ、ワイセラ・コレエンシス、ワイセラ・ミノール、ワイセラ・パラメセンテロイデス、ワイセラ・ソリ、ワイセラ・タイランデンシス、ワイセラ・ビリデスセンス等が挙げられる。
【0021】
本発明の飲料において使用する上記の乳酸菌種に属する菌株は、天然からの単離株、寄託株、保存株、市販株などのいずれであってもよい。
【0022】
本発明の飲料に使用する微生物菌体、好ましくは乳酸菌から選択される菌体は、乳酸菌の培養に通常用いられる培地を使用して、通常使用される条件下で培養することにより増殖し回収することができる。
【0023】
培養培地は、通常、炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、上記の菌種の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、例えばラクトース、グルコース、スクロース、フラクトース、ガラクトース、廃糖蜜などを使用することができ、窒素源としては、例えばカゼイン加水分解物、ホエータンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、酵母エキス、肉エキス等の有機窒素含有物を使用することができる。また無機塩類としては、例えばリン酸塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛などを用いることができる。乳酸菌の培養に適した培地としては、例えばMRS液体培地、GAM培地、BL培地、Briggs Liver Broth、獣乳、脱脂乳、乳性ホエーなどが挙げられる。好ましくは、滅菌されたMRS培地を使用することができる。また食品用途で用いる場合には食品素材ならびに食品添加物のみで構成した培地も使用可能である。天然培地としては、トマトジュース、ニンジンジュース、その他野菜ジュース、あるいはリンゴ、パイナップル、ブドウ果汁なども使用することができる。
【0024】
培養は、20℃〜50℃、好ましくは25℃〜42℃、より好ましくは約37℃において、嫌気条件下で行う。温度条件は、恒温槽、マントルヒーター、ジャケットなどにより調整することができる。また、嫌気条件下とは、菌が増殖可能な程度の低酸素環境下のことであり、例えば嫌気チャンバー、嫌気ボックスまたは脱酸素剤を入れた密閉容器もしくは袋などを使用することにより、あるいは単に培養容器を密閉することにより、嫌気条件とすることができる。培養の形式は、静置培養、振とう培養、タンク培養などである。また、培養時間は、特に制限されないが、例えば3時間〜96時間とすることができる。培養開始時の培地のpHは、例えば4.0〜8.0に維持することが好ましい。
【0025】
例えば、乳酸菌としてラクトバチルス・アミロボラスCP1563株(受託番号FERM BP-11255)を用いる場合には、食品グレードの乳酸菌用培地に乳酸菌を植菌し、約37℃で一晩(約18時間)かけて培養を行うことができる。
【0026】
[微生物菌体粉末]
本発明の飲料に用いる「微生物菌体粉末」とは、微生物菌体培養液を当技術分野で公知の方法及び機器を使用して、乾燥して粉状物とすることにより得ることができる。具体的な乾燥方法としては、特に制限されないが、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などが挙げられ、これらの乾燥手段を単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0027】
[破壊処理微生物菌体粉末]
本発明の飲料に用いる「破壊処理微生物菌体粉末」とは、微生物菌体の細胞構造を破壊することによって菌体を損傷させ、単に凍結乾燥などの手法で乾燥した微生物菌体粉末よりもさらに微細な粉末にしたものをいい、破壊された微生物菌体全体(すなわち、細胞を構成する本質的にすべての成分)をそのまま回収することによって得られる。
【0028】
微生物菌体の破壊処理は、当技術分野で公知の方法及び機器を使用して、例えば物理的破砕、磨砕処理、酵素溶解処理、薬品処理、または自己溶解処理などによって行うことができる。
【0029】
物理的破砕は、湿式(微生物菌体を懸濁液の状態で処理)または乾式(微生物菌体粉末の状態で処理)のいずれで行ってもよく、ホモゲナイザー、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル等を使用した撹拌により、ジェットミル、フレンチプレス、細胞破砕機等を使用した圧力により、あるいはフィルター濾過により、微生物菌体の損傷を行うことができる。
【0030】
酵素溶解処理は、例えばリゾチームなどの酵素を用いて、微生物菌体の細胞壁を破壊することによって行われる。
【0031】
薬品処理は、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ダイズリン脂質などの界面活性剤を使用して、微生物菌体の細胞構造を破壊することによって行われる。
【0032】
自己溶解処理は、微生物自身の酵素により微生物菌体を溶解することによって行われる。
【0033】
上記の各処理のなかでも、他の試薬または成分を添加する必要がないため物理的破砕が好ましく、乾式による物理的破砕がより好ましい。
【0034】
物理的破砕は、より具体的には、公知の乾式遊星ミル細胞破砕機(GOT5 ギャラクシー5など)において、微生物菌体粉末を各種ボール(例えばジルコニア製10mmボール、ジルコニア製5mmボール、アルミナ製1mmボール)共存下で、回転数50〜10,000rpm(例えば190rpm)で30分〜20時間(例えば5時間)処理する方法、微生物菌体粉末を公知の乾式ジェットミル細胞破砕機(ジェットOマイザーなど)において、供給速度0.01〜10000g/min(例えば0.5g/min)、吐出圧力1〜1000kg/cm2(例えば6kg/cm2)の圧力にて、1〜10回(例えば1回)処理する方法などによって行うことができる。また、微生物菌体懸濁液を公知のダイノミル細胞破砕機(DYNO-MILL破砕装置など)において、ガラスビーズを使用して、周速10.0〜20.0m/s(例えば約14.0m/s)、処理流速0.1〜10L/10min(例えば約1L/10min)にて、破砕槽温度10〜30℃(例えば約15℃)で1〜7回(例えば3〜5回)処理する方法、微生物菌体懸濁液を、公知の湿式ジェットミル細胞破砕機(JN20 ナノジェットパルなど)において、吐出圧力50〜1000Mpa(例えば270MPa)、処理流速50〜1000ml/min(例えば300ml/min)にて、1〜30回(例えば10回)処理する方法などによっても行うことができる。
【0035】
上記の方法より得られた破壊処理微生物菌体は、乾式の場合はそのまま、また、湿式の場合は、乾燥して粉状物とすることができる。具体的な乾燥方法としては、特に制限されないが、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などが挙げられ、これらの乾燥手段を単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0036】
本発明の飲料に含有する微生物菌体粉末または破壊処理微生物菌体粉末の量は、特に限定されないが、生理活性を期待し得る量であることが好ましく、例えば、0.001〜1.0質量%であり、より好ましくは0.01〜0.1質量%である。
【0037】
[乳化剤]
本発明の飲料には、乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、または、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドを含むことが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドは、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドの混合物を用いてもよい。
【0038】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、食品衛生法においてグリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド)に属するものとして許可されており、グリセリンが脱水縮合したポリグリセリンに脂肪酸がエステル結合したものをいう。本発明において使用するポリグリセリン脂肪酸エステルは、重合度が3〜10のポリグリセリンと炭素数が10〜18の脂肪酸がエステル結合したモノエステルが好ましい。炭素数が10〜18の脂肪酸は、飽和または不飽和脂肪酸、直鎖または分岐鎖を有する脂肪酸のいずれでもよく、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。また、ポリグリセリンの重合度は水酸基価から算出される平均重合度をいい、重合度が3〜10(トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ、ノナ、デカ)が好ましく、重合度が5〜10がより好ましい。
【0039】
本発明において使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、モノラウリン酸ペンタグリセリン、モノラウリン酸ヘキサグリセリン、モノラウリン酸デカグリセリン、モノミリスチン酸ペンタグリセリン、モノミリスチン酸ヘキサグリセリン、モノミリスチン酸デカグリセリン、モノステアリン酸ペンタグリセリン、モノステアリン酸ヘキサグリセリン、モノステアリン酸デカグリセリン等が挙げられるが、モノラウリン酸ペンタグリセリン、モノミリスチン酸ペンタグリセリン、モノミリスチン酸デカグリセリンが特に好ましい。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは1種を用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
有機酸モノグリセリドとは、モノグリセリン脂肪酸エステルのヒドロキシル基にさらに有機酸がエステル結合した誘導体をいう。本発明において使用する有機酸モノグリセリドを構成する有機酸の種類は特に限定されず、例えば酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸が挙げられ、特にコハク酸、ジアセチル酒石酸が好ましく、ジアセチル酒石酸がより好ましい。また、有機酸モノグリセリドを構成する脂肪酸としては、特に限定はされないが、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸を挙げることができる。本発明において使用される有機酸モノグリセリドの具体例としては、乳酸モノステアリン酸グリセリン、クエン酸モノステアリン酸グリセリン、コハク酸モノステアリン酸グリセリン、ジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリン等が挙げられるが、コハク酸モノステアリン酸グリセリン、ジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリンが好ましく、ジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリンがより好ましい。これらの有機酸モノグリセリドは1種を用いてよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドを使用する場合、ポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドの組み合わせの好ましい例としては、モノラウリン酸ペンタグリセリンとコハク酸モノステアリン酸グリセリンの組み合わせ、モノミリスチン酸ペンタグリセリンとジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリンの組み合わせ、モノミリスチン酸デカグリセリン、モノラウリン酸ペンタグリセリン、及びコハク酸モノステアリン酸グリセリンの組み合わせが挙げられる。
【0042】
上記の乳化剤は、いずれも市販品を用いることができ、例えば、太陽化学社製サンソフトシリーズ、理研ビタミン社製ポエムシリーズ等が挙げられる。
【0043】
ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドを使用する場合、本発明の飲料中のポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドの含有量の比率は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの質量をX、有機酸モノグリセリドの質量をYとした時に、Y/Xの上限値は10以下が好ましく、5以下がより好ましく、1以下がさらに好ましく、1/2以下が特に好ましく、また、Y/Xの下限値は0が好ましく、1/10がより好ましく、1/6がさらに好ましい。
【0044】
本発明の飲料中の上記乳化剤の含有量の下限は0.001質量%が好ましく、0.01質量%がより好ましく、0.02質量%がさらに好ましく、0.04質量%が特に好ましく、0.05質量%が最も好ましい。また、上記乳化剤の含有量の上限は0.2質量%が好ましく、0.15質量%がより好ましく、0.11質量%がさらに好ましい。下限がこれより低いと分散性の効果が期待できず、上限がこれより高いと風味やコスト、液色の濁りの観点から望ましくない。
【0045】
[他の成分など]
本発明の飲料には乳を配合してもよい。本発明の飲料に乳を配合する場合は、動物または植物由来の乳等、いずれの乳をも用いることができる。例えば、牛乳、山羊乳、羊乳、馬乳等の獣乳、豆乳等の植物乳が挙げられるが、牛乳が一般的である。これらの乳は、単独でまたは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0046】
乳原料の形態は特に限定されず、全脂乳、脱脂乳、乳清及びこれらの粉乳、乳蛋白濃縮物、濃縮乳からの還元乳等のいずれであってもよい。これらの乳原料は、単独でまたは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0047】
また、本発明の飲料において乳を配合する場合、該飲料に含まれる無脂乳固形分(SNF)量は特に限定されないが、風味と保存安定性の観点から0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜4質量%がより好ましく、0.1〜2質量%がさらに好ましく、0.2〜1.2質量%が最も好ましい。ここで、無脂乳固形分(SNF)とは、乳を構成する成分のうち、乳から水分と脂肪分を除いた値であり、タンパク質、炭水化物、ミネラル、ビタミンなどを主成分として含む。
【0048】
本発明の飲料は、非炭酸飲料であってもよいが、炭酸ガスを含有させて炭酸飲料とすることもできる。この場合、添加する炭酸ガスのガスボリュームは、特に限定されないが、1.0以上5.0以下が好ましく、2.0以上4.0以下がより好ましい。なお、ガスボリュームとは、1気圧、20℃において、炭酸飲料に溶解している炭酸ガスの体積を炭酸飲料の体積で割った値をいう。
【0049】
本発明の飲料のpHは酸性であれば特に限定がされないが、6.5未満が好ましく、6未満がより好ましく、4.5未満がさらに好ましく、4.2未満がさらにより好ましく、4.0未満が特に好ましい。乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを単独で使用する場合は、4.0未満が好ましく、3.7未満がより好ましく、3.5未満がさらに好ましい。本発明の飲料を製造する場合、用いる原材料によってpHが上記の範囲となればpH調整は必要としないが、上記の範囲でない場合は、pH調整剤を用いてpH調整を行う。pH調整剤としては、酸味料として一般的に使用される有機もしくは無機の食用酸またはそれらの塩を用いればよく、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フィチン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、またはこれらのナトリウム塩、カルシウム塩もしくはカリウム塩等が挙げられる。pH調整剤の使用量は、所望のpHとすることができ、かつ飲料の風味に影響がない範囲であれば特に限定されない。
【0050】
本発明の飲料のBrix値は特に限定されないが、風味やカロリーの観点から、0.1〜16が好ましく、0.1〜11がより好ましく、0.1〜5がさらに好ましい。Brix値(Bx)とは、20℃における糖用屈折計の示度であり、例えばデジタル屈折計Rx-5000(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した固形分量(Bx)をいう。
【0051】
本発明の飲料に、甘みを付与し、かつBrix値(Bx)を上記範囲に調整するために、単糖(ブドウ糖、果糖、キシロース、ガラクトース等)、二糖(ショ糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、イソマルツロース等)、オリゴ糖(フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー等)、糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、還元イソマルツロース、還元水飴等)、果糖ぶどう糖液糖等の異性化糖などを配合してもよい。また、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア等の高甘味度甘味料を配合してもよい。
【0052】
本発明の飲料は、前記微生物菌体粉末、乳化剤、乳等のほか、所望の効果を損なうことがない限り、一般的な飲料に通常用いられる他の原材料を適宜選択して配合することができる。例えば、本発明の飲料には、果汁や野菜汁を配合することができる。果汁としては、リンゴ、オレンジ、ミカン、レモン、グレープフルーツ、メロン、ブドウ、バナナ、モモ、イチゴ、ブルーベリー、マンゴーなどの果汁が挙げられる。また、野菜汁としては、例えば、トマト、ニンジン、カボチャ、ピーマン、キャベツ、ブロッコリー、セロリ、ホウレンソウ、ケール、モロヘイヤなどの野菜汁が挙げられる。果汁や野菜汁は果物や野菜の絞り汁そのままでもよく、濃縮されていてもよい。また、不溶性固形物を含む混濁果汁または野菜汁であっても、精密濾過や酵素処理、限外濾過等の処理により不溶性固形物を除去した透明果汁または野菜汁であってもよい。
【0053】
本発明の飲料には、飲料に許容される各種添加剤、例えば、増粘安定剤(大豆多糖類、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、グアーガム等)、酸化防止剤(トコフェロール、アスコルビン酸、塩酸システイン等)、香料(レモンフレーバー、オレンジフレーバー、グレープフレーバー、ピーチフレーバー、アップルフレーバー等)、色素(カロチノイド色素、アントシアニン色素、ベニバナ色素、クチナシ色素、カラメル色素、各種合成着色料等)などを添加してもよい。また、健康機能の増強を期待して、ビタミン類(ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD等)、ミネラル類(カルシウム、カリウム、マグネシウム等)、食物繊維等の各種機能成分を添加してもよい。
【0054】
本発明の飲料の製造方法は、微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理する工程を含んでいればよく、その他の工程は当該飲料の通常の製造方法に従う。
【0055】
また、本発明の飲料の製造方法は、微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃の水溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散した有機酸モノグリセリドを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理する工程を含んでいればよく、その他の工程は当該飲料の通常の製造方法に従う。
【0056】
また、本発明の飲料の製造方法は、微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理する工程を含んでもよい。ここで、微生物菌体粉末は、前記の破壊処理微生物菌体粉末であってもよい。
【0057】
上記製造方法に用いるアルカリ性溶液のpHは、アルカリ域であれば特に限定されないが、7.5〜12が好ましい。
【0058】
均質化処理は、食品加工用に一般に用いられるホモジナイザーを用いて常法により行えばよく、その圧力は、ホモジナイザーで10〜30MPa程度が好ましい。また、均質化時の温度は任意の温度(例えば5〜25℃)でよく、一般的な加熱条件下(例えば50〜90℃)での均質化も可能である。また通常、上記均質化処理の前、均質化処理後容器に充填する前もしくは後に、殺菌処理を行なうことが好ましい。殺菌処理は、特に制限されず、通常のレトルト殺菌、バッチ殺菌、プレート殺菌などの方法を採用することができる。
【0059】
本発明の飲料を充填する容器の種類としては、特に限定されるものではないが、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、金属、紙製の容器を使用することができる。また、容量についても特に限定はされず、例えば100〜2000mlが挙げられ、微生物菌体量等を考慮して適宜選択することができる。
【0060】
2.飲食品における微生物菌体粉末の沈殿物または凝集物の分散性向上方法
本発明の飲食品における微生物菌体粉末の沈殿物または凝集物の分散性向上方法は、微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理することを特徴とする。また、本発明の飲食品における微生物菌体粉末の沈殿物または凝集物の分散性向上方法は、微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃の水溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散した有機酸モノグリセリドを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理することを特徴とする。本発明の飲食品における微生物菌体粉末の沈殿物または凝集物の分散性向上方法はまた、微生物菌体粉末含有溶液と、50〜90℃のアルカリ性溶液中に分散したポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドを含む乳化剤溶液とを混合した後、均質化処理してもよい。ここで、微生物菌体粉末は、前記の破壊処理微生物菌体粉末であってもよい。
本発明の微生物菌体粉末の沈殿物または凝集物の分散性向上方法は、製造時及び保存中のいずれの飲食品にも適用できる。
【0061】
ここで、飲食品とは、一般的な飲食品のほか、医薬品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる食品、例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品、または特別用途食品を含む意味で用いられる。健康食品には、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称で提供される食品を含む。保健機能食品は食品衛生法または健康増進法により定義され、特定の保健の効果や栄養成分の機能、疾病リスクの低減などを表示できる、特定保健用食品及び栄養機能食品、ならびに、食品表示法により定義され、科学的根拠に基づいた機能性について消費者庁長官に届け出た内容を表示できる機能性表示食品が含まれる。また特別用途食品には、特定の対象者や特定の疾患を有する患者に適する旨を表示する病者用食品、高齢者用食品、乳児用食品、妊産婦用食品等が含まれる。飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、ゼリー状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。
【0062】
飲食品としては、乳酸菌や酵母などの微生物菌体を配合しうる飲食品であれば特に限定はされず、例えば、飲料(乳性飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜汁飲料、茶飲料、コーヒー飲料、機能性飲料、スポーツ飲料等)、乳製品(ヨーグルト、チーズ、ムース、プリン、クリーム、バター、アイスクリーム等)、スープ類(コンソメ、ポタージュ、ラーメンスープ等)、ソース類(トマトソース、パスタソース、デミグラスソース等)、調味料類(醤油、つゆ、たれ、だし汁、煮物調味液、漬物調味液、ドレッシング等)などが挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
【0064】
(参考例1)乳酸菌菌体粉末(非破壊)の調製
Lactobacillus amylovorus CP1563株(受託番号FERM BP-11255)、またはLactobacilus acidophilus CL-92株(受託番号FERM BP-4981)を自家処方による食品グレードの乳酸菌培地を用いて、37℃、18時間培養し、フィルター濃縮により集菌した。濃縮液を90℃達温殺菌し、凍結乾燥により乳酸菌菌体粉末を得た。
【0065】
(参考例2)破壊処理乳酸菌菌体粉末の調製
Lactobacillus amylovorus CP1563株を自家処方による食品グレードの乳酸菌培地を用いて、37℃、18時間培養し、フィルター濃縮により集菌した。濃縮液を90℃達温殺菌し、凍結乾燥により乳酸菌凍結乾燥粉末を得た。得られた乳酸菌凍結乾燥粉末を、乾式ジェットミル(FS-4、株式会社セイシン企業)を使用して破砕し、菌体の平均長径が処理前の70%以下に縮小した(例:2.77μm→1.30μm)破壊処理乳酸菌菌体粉末を得た。
【0066】
(実施例1〜8、比較例1〜3)乳化剤添加の効果試験
(1)飲料サンプルの調製
表1に示す配合量で以下の手順により乳性炭酸飲料のサンプルを調製した。20質量%還元脱脂乳250gと3質量%大豆多糖類溶液(商品名:SM-1200、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)400gを混合し、10質量%クエン酸水溶液240gを添加し十分に攪拌した。
【0067】
【表1】
【0068】
別途、60〜80℃に加温した10質量%クエン酸三ナトリウム水溶液100gに、食品用乳化剤として市販されている下記の乳化剤を表2に示す配合量で添加して、均一に混合したクエン酸三ナトリウム−乳化剤混合溶液を調製した。この混合溶液に、1質量%の非破壊または破壊処理乳酸菌菌体粉末(参考例1、2で調製)希釈液400gを添加して均一になるように撹拌した。
【0069】
<乳化剤>
[ポリグリセリン脂肪酸エステル]
a.モノミリスチン酸ペンタグリセリン(商品名:「サンソフトA-141EP」、太陽化学 (株)製)
b.モノミリスチン酸デカグリセリン(商品名:「サンソフトQ-14YP」、太陽化学 (株)製)
c.モノラウリン酸ペンタグリセリン(商品名:「サンソフトA-121E」、太陽化学 (株)製)
[有機酸モノグリセリド]
d.コハク酸モノステアリン酸グリセリン(商品名:「サンソフトNo.681SPV」(太陽化学(株)社製)
e.ジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリン(商品名:「サンソフトNo.641D」、太陽化学 (株)製)
[その他の乳化剤]
f.ショ糖ステアリン酸エステル(商品名:「ショ糖脂肪酸エステルA」、太陽化学(株)製)
g.モノステアリン酸ソルビタン(商品名:「サンソフトNo.61S」、太陽化学(株)製)
【0070】
前記のクエン酸水溶液を添加した還元脱脂乳と大豆多糖類溶液との混合溶液と、非破壊または破壊処理乳酸菌菌体粉末を添加したクエン酸三ナトリウム−乳化剤混合溶液とを混合した後、均質化処理を行い、飲料原液を得た。均質化処理は、試験室用ホモゲナイザー(型式15MR、APVゴーリン社製)を用いて、処理温度20℃、処理圧15MPaで行なった。
【0071】
得られた飲料原液に対して、炭酸ガスボリュームが2.4となるようにイオン交換水と無添加炭酸水とによって規定量(10000g)にメスアップした後、耐熱圧ペットボトルに充填した。その後、コールドスポットで65℃、10分間が確保できる殺菌を行い、容器詰め乳性炭酸飲料(以下、「飲料サンプル」という)を得た。なお、飲料のBxは1.2、pHは3.7、SNFは0.5であった。
【0072】
(2)飲料サンプルの保存試験
(1)で調製した飲料サンプルを、5℃に設定したインキュベータに14日間静置した。静置後のサンプルを5回転倒混和した後、開栓し、内容液を排出後、容器底面を観察した。評価は、4段階で行い、乳酸菌菌体粉末が底面のほぼ全体に残存しているものを×、一部に残存しているものを△、ほぼ残存していないものを○、全く残存しないものを◎とした。図1に評価基準となる容器の底面および全体の外観の写真を示す。評価結果を下記表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
表2に示すように、ポリグリセリン脂肪酸エステル単独、またはポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドを混合した乳化剤を使用した実施例1〜8は全て、乳化剤を使用しない比較例1、ならびにショ糖ステアリン酸エステルやモノステアリン酸ソルビタンの乳化剤を使用した比較例2及び3よりも乳酸菌菌体粉末の分散性が向上した。特に、モノミリスチン酸ペンタグリセリンとジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリンを配合比2:1(合計0.052質量%)で使用した実施例3、モノミリスチン酸デカグリセリン、モノラウリン酸ペンタグリセリン、コハク酸モノステアリン酸グリセリンを配合比1:4:1(合計0.103質量%)で使用した実施例6は顕著に改善した。
【0075】
(実施例9〜21、比較例4〜5)乳化剤添加の効果試験
(1)飲料サンプルの調製
表3に示す配合量で以下の手順により乳性炭酸飲料のサンプルを調製した。ニゲロオリゴ糖含有シラップ(商品名:日食テイストオリゴ」、日本食品化工(株)製)13g、高甘味度甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース)3.9gに、20質量%還元脱脂乳溶液250gと3質量%大豆多糖類溶液(商品名:SM-1200、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)400gを混合し、10質量%クエン酸水溶液240gを添加し十分に攪拌した。
【0076】
【表3】
【0077】
別途、60〜80℃に加温した10質量%クエン酸三ナトリウム水溶液100gに、食品用乳化剤として市販されている乳化剤(前記のa.〜g.の乳化剤)を表4に示す配合量で添加して、均一に混合させたクエン酸三ナトリウム−乳化剤混合溶液を調製した。この混合溶液に、1質量%の破壊処理乳酸菌菌体粉末(参考例2で調製)希釈液400gを添加して均一になるように撹拌した。
【0078】
前記のクエン酸水溶液を添加した還元脱脂乳と大豆多糖類溶液との混合溶液と、破壊処理乳酸菌菌体粉末を添加したクエン酸三ナトリウム−乳化剤混合溶液とを混合し、前記と同条件にて均質化処理を行い、飲料原液を得た。得られた飲料原液に対して、前記と同様にして炭酸ガスを充填し、殺菌を行い、容器詰め乳性炭酸飲料を調製し、飲料サンプルとした。
【0079】
(2)飲料サンプルの保存試験
(1)で調製した飲料サンプルを、前記と同条件にて保存試験を行った後、同基準にて評価した。結果を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
表4に示すように、ポリグリセリン脂肪酸エステルと有機酸モノグリセリドを混合した乳化剤を使用した実施例9〜21は全て、ショ糖ステアリン酸エステルやモノステアリン酸ソルビタンの乳化剤を使用した比較例4及び5よりも乳酸菌菌体粉末の分散性が向上した。特に、モノラウリン酸ペンタグリセリンとコハク酸モノステアリン酸グリセリンを配合比2:1(合計0.04質量%)で使用した実施例13、モノミリスチン酸ペンタグリセリンとジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリンを配合比27:17(合計0.044質量%)で使用した実施例17、モノミリスチン酸デカグリセリン、モノラウリン酸ペンタグリセリン、コハク酸モノステアリン酸グリセリンを配合比1:4:1(合計0.079質量%,0.103質量%)で使用した実施例18及び19は顕著に改善した。
【0082】
(実施例22〜25、比較例6)pHの影響確認試験
(1)飲料サンプルの調製
表5に示す配合量で以下の手順により非炭酸の乳性飲料のサンプルを調製した。ニゲロオリゴ糖含有シラップ(商品名:日食テイストオリゴ」、日本食品化工(株)製)13g、高甘味度甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース)3.9gに、20質量%還元脱脂乳溶液250gと3質量%大豆多糖類溶液(商品名:SM-1200、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)400gを混合し、50質量%乳酸62gを添加し十分に攪拌した。
【0083】
別途、60〜80℃に加温した水196gに、食品用乳化剤として市販されている乳化剤(モノラウリン酸ペンタグリセリン(商品名:「サンソフトA-121E」、太陽化学 (株)製)4gを添加した後(比較例6は乳化剤無添加)、1質量%の破壊処理乳酸菌菌体粉末(参考例2で調製)希釈液500gを添加して均一になるように撹拌した。
【0084】
前記の乳酸水溶液を添加した還元脱脂乳と大豆多糖類溶液との混合溶液と、破壊処理乳酸菌菌体粉末を添加した乳化剤溶液とを混合し、表5に示す各pHとなるように濃度調整したクエン酸三ナトリウム水溶液を添加し、イオン交換水によって規定量(10000g)にメスアップした。その後、前記と同条件にて均質化処理を行い、飲料原液を得た。得られた飲料原液に対して、殺菌を行い、容器詰め乳性飲料を調製し、飲料サンプルとした。
【0085】
(2)飲料サンプルの保存試験
(1)で調製した飲料サンプルを、前記と同条件にて保存試験を行った後、静置後のサンプルを8回転倒混和した以外は同基準にて評価した。保存試験の結果及び物性値(Bx、クエン酸酸度、pH)を表5に示す。また、飲料サンプルの保存試験後の容器の底面および全体の外観の写真を図2に示す。
【0086】
【表5】
【0087】
表5及び図2に示すように、乳化剤としてモノラウリン酸ペンタグリセリンを使用し、かつ、pHを3.2〜3.9に調整した実施例22〜25は、乳酸菌菌体粉末の分散性が向上した。特に、モノラウリン酸ペンタグリセリンを使用し、かつ、pHを3.2に調整した実施例22、モノラウリン酸ペンタグリセリンを使用し、かつ、pHを3.4に調整した実施例23は顕著に改善した。一方、同じpH3.4であっても、モノラウリン酸ペンタグリセリンを使用しない比較例6は、乳酸菌菌体粉末の分散性が悪く、乳酸菌菌体粉末が底面のほぼ全体に残存した。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、微生物菌体含有飲食品の製造分野において利用できる。
図1
図2