(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961353
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】圧電ポリマー膜及びその製造方法並びに感圧センサ、アクチュエータ及びインターフェースデバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 41/193 20060101AFI20211025BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20211025BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20211025BHJP
H01L 41/45 20130101ALI20211025BHJP
H01L 41/333 20130101ALI20211025BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20211025BHJP
D04H 3/04 20120101ALI20211025BHJP
H02N 2/02 20060101ALI20211025BHJP
H02N 2/18 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
H01L41/193
H01L41/09
H01L41/113
H01L41/45
H01L41/333
D04H1/728
D04H3/04
H02N2/02
H02N2/18
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-24277(P2017-24277)
(22)【出願日】2017年2月13日
(65)【公開番号】特開2018-133368(P2018-133368A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】591167430
【氏名又は名称】株式会社KRI
(72)【発明者】
【氏名】藤本 康治
【審査官】
西出 隆二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−109431(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/019981(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/193
H01L 41/09
H01L 41/113
H01L 41/45
H01L 41/333
D04H 1/728
D04H 3/04
H02N 2/02
H02N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径が300nm以下の圧電ポリマーの連続する微細繊維からなる膜であって、前記微細繊維がその繊維軸方向を揃えて形成された膜部分とそれらの周囲に配置された前記微細繊維がその繊維軸に方向性がない膜部分を一体化して形成させた一枚の膜であり、前記微細繊維がその繊維軸方向を揃えて形成された膜部分が細長い形状であり、前記細長い形状の長辺と短辺のアスペクト比が3以上であり、前記細長い形状が複数個の前記細長い形状又は曲線部を伴う前記細長い形状でパターン化されている形状であることを特徴とする圧電ポリマー膜。
【請求項2】
前記繊維軸方向が揃って形成された膜部分では、下記式(1)で定義される配向度が0.7以上であることを特徴とする請求項1に記載の圧電ポリマー膜。
配向度=B/(A+B) (1)
式中、Aは、線維軸方向を揃えて形成させた膜中の任意の場所について倍率10000で拡大された微細繊維の画像において、画像の左右を結ぶ水平線からの繊維軸方向のズレが20度以内の繊維の本数、Bは、前記ズレが20度を越える繊維の本数で定義される。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の圧電ポリマー膜の製造方法であって、前記圧電ポリマー膜は、電界紡糸装置のコレクターの表面に前記細長い形状を複数個の前記細長い形状又は曲線部を伴う前記細長い形状でパターン化したコレクターを用いて圧電ポリマーを電界紡糸することを特徴とする圧電ポリマー膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の圧電ポリマー膜の両面に電極を形成したことを特徴とする感圧センサ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の圧電ポリマー膜の両面に電極を形成したことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
請求項4に記載の感圧センサ又は請求項5に記載のアクチュエータを用いたことを特徴とするインターフェースデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電ポリマー膜及びその製造方法並びに圧電ポリマー膜を用いた感圧センサ、アクチュエータ及びインターフェースデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
水晶やある種のセラミック等に圧力を印加して歪みを生じさせると電圧を発生する圧電現象は、有機ポリマーでも起こり、前記した無機材料にはない透明性や成形性を有することが圧電ポリマーの特徴である。成形によってフィルム状とした圧電ポリマーは、しなやかな柔軟性をもち、軽量であることも併せて、従来の無機材料では適用できなかった部位でのセンサー用途や超音波モータ、スピーカなどへの応用が期待されている。大小様々なフィルム状に成形された圧電ポリマーに、適切に電極を設置することで形作られている感圧センサは、小面積、軽量等のメリットを活かして、今後、多様なデバイスやガジェットのインテリジェント化に利用されると考えられる。
【0003】
一方圧電ポリマーからなる感圧センサであっても、柔軟性の観点からは面で構成されるフィルムであり、必然的に2次元的な変形能しか持ちえない。3次元の立体に対して一個以上のセンサを取り付ける場合には、下地の形状に応じてそれぞれ独立したセンサを必要なだけ取り付けるしかなく、このような構成の場合、無機材料との差別化はできない。むしろ圧電特性に優れ、センサ性能に優れる無機材料系を用いる方が有利である。いずれの材料系であっても小さなオブジェクトに多数のセンサを配置するのは困難である。
【0004】
介護や医療、建設等の現場では今後ロボットやそれに近い機能を有するデバイスの利用が進むと考えられる。これらハードウェアは機構的には現状の機械工学技術で形作られ、ある程度の技術レベルに到達しているが、その運動制御、特に繊細な動きを制御するためには、外界とのコンタクトによって得られる情報に基づくフィードバック制御が必須である。これらの情報は感圧センサなどから得られ、コンタクトする対象が人体であるような場合には、より緻密なセンサ入力が必要となる。個々のセンサの性能だけではなく、複数のセンサが適切な配置で設置されたハードウェアが必要なのである。
【0005】
圧電ポリマーの成形方法としては大量生産向きのフィルム成形が主流であるが、ナノ繊維形状に成形された圧電ポリマーであっても、少なくともセンサレベルで使用可能な圧電特性を付与できることが分かってきた(特許文献1)。圧電ポリマーのナノ繊維をその繊維軸方位を揃えて作成した膜(配列膜)は、適切に作成された電極を設けることで感圧センサとして機能する。ナノ繊維の配列膜はいわゆるベタ膜とは異なり繊維の集合体にすぎないため、極めて柔軟性に富み、3次元形状にも追従して変形し、オブジェクトに貼りつける事も可能である。
【0006】
フィルム以上の柔軟性を有するナノ繊維配列膜は、電極パターニングによっては多数のセンサが連続したアレイとして利用することも可能である。しかし、前記したようにさらなる多数個の独立したセンサの設置を考えるとき、従来の1個ずつのセンサを取り付ける場合と比べてまだ有意差に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−109431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
柔軟性に優れ、独立した感圧センサあるいはアクチュエータを1枚の膜中に含む圧電ポリマー膜を提供することを目的とする。またその圧電ポリマー膜を用いた感圧センサまたはアクチュエータおよびこれらを含むデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、下記に示す発明を完成するに至った。
【0010】
〔1〕 繊維径が300nm以下の圧電ポリマーの連続する微細繊維からなる膜であって、前記微細繊維がその繊維軸方向を揃えて形成された膜部分とそれらの周囲に配置された前記微細繊維がその繊維軸に方向性がない膜部分を一体化して形成させた一枚の膜であり、前記微細繊維がその繊維軸方向を揃えて形成された膜部分が細長い形状であることを特徴とする圧電ポリマー膜。
〔2〕 前記微細繊維がその繊維軸方向を揃えて形成された膜部分の細長い形状の長辺と短辺のアスペクト比が3以上であることを特徴とする前記〔1〕に記載の圧電ポリマー膜。
〔3〕 前記一枚の膜中に前記微細繊維がその繊維軸方向を揃えて形成された細長い形状の膜部分が2以上あることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の圧電ポリマー膜。
〔4〕 前記繊維軸方向が揃って形成された膜部分では、下記式(1)で定義される配向度が0.7以上であることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕に記載の圧電ポリマー膜。
配向度=B/(A+B) (1)
式中、Aは、線維軸方向を揃えて形成させた膜中の任意の場所について倍率10000で拡大された微細繊維の画像において、画像の左右を結ぶ水平線からの繊維軸方向のズレが20度以内の繊維の本数、Bは、前記ズレが20度を越える繊維の本数で定義される。
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の圧電ポリマー膜の製造方法であって、前記圧電ポリマー膜は、電界紡糸装置のコレクターの表面に前記細長い形状をパターン化したコレクターを用いて圧電ポリマーを電界紡糸することを特徴とする圧電ポリマー膜の製造方法。
〔6〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の圧電ポリマー膜の両面に電極を形成したことを特徴とする感圧センサ。
〔7〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の圧電ポリマー膜の両面に電極を形成したことを特徴とするアクチュエータ。
〔8〕 前記〔6〕に記載の感圧センサ又は前記〔7〕に記載のアクチュエータを用いたことを特徴とするインターフェースデバイス。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧電ポリマー膜は電界紡糸法によって形成され、この手法を利用して多様な圧電性ポリマーを微細繊維形状に成形しその繊維軸の方向性を制御した柔軟性のある膜を得ることができる。連続的に形成される微細繊維の製造方法として電界紡糸法を用いた場合、その回収方法を最適することにより、繊維軸の方向が揃った1カ所以上の膜部分とそれらの周囲に配置された繊維軸に方向性がない膜部分が一体化した膜を一度の製造工程で形成できる。通例圧電ポリマー膜は延伸や分極プロセスを経て感圧センサとして利用できる圧電性を発現するが、電界紡糸法による微細繊維では分極処理だけでも圧電性が発現し、感圧センサとして利用できる。前記圧電ポリマー膜は適切な電極を設けることで、柔軟性に優れ、薄くかつ印加された外部圧力によって電圧を出力する感圧センサとして利用できる一方、1枚の膜中に多数の感圧センサ群を配置することができ感圧センサアレイとしても利用できる。感圧センサをなす膜部分をパターンを描くように形成させることで、インテリジェントデバイスを簡便に得ることができる。さらに、圧電ポリマー膜を逆圧電変換を利用したデバイスとして用いることで、アクチュエータおよびその集合体としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】本発明に用いた電界紡糸法の装置の概略を示す図。
【
図4】実施例2による8個の一軸配列膜を含む微細繊維膜の外観と配列状態のレーザー顕微鏡観察。
【
図6】ポリフッ化ビニリデン微細繊維からなる感圧センサの構成例
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について、詳細に説明すれば以下のとおりである。
【0014】
本発明の圧電ポリマー膜は、繊維径が300nm以下の圧電ポリマーの連続する微細繊維からなり、該微細繊維がその繊維軸方向を揃えて形成された膜部分(配列膜部;
図1)とそれらの周囲に配置された繊維軸に方向性がない膜部分(等方膜部;
図2)を一体化して形成させて一枚の膜とし、前記配列膜部分が細長い形状であることを特徴とする。
【0015】
本発明の圧電ポリマー膜は、配列膜部が等方膜部と一体化して形成されており、かつ等方膜部は微細繊維の不織布と見なすことができるために、配列膜部の形作るパターンを保持したまま3次元形状の物体表面に、その形状に沿って貼りつけることができる。すなわち、等方膜部は大変形への追従と配列膜部の形状保持の2つの機能を担うことができる。この時に全体の形状が崩れないためには、当該圧電ポリマー膜が連続繊維からなり配列膜部と等方膜部が一体化していることが必要となる。
【0016】
圧電ポリマー膜を構成する有機ポリマーとしては、圧電性を有するものであることが必須でありポリ−L−乳酸、フッ化ビニリデン成分含有ポリマーであるポリフッ化ビニリデン、ポリ(ビニリデン−トリフルオロエチレン)共重合体、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフロライド)共重合体、ポリ(パーフルオロビニルエーテル−ビニリデンフロライド)共重合体、ポリ(テトラフルオロエチレン−ビニリデンフロライド)共重合体、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド−ビニリデンフロライド)共重合体、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド−テトラフルオロエチレン−ビニリデンフロライド)共重合体、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン−ビニリデンフロライド)共重合体から選ぶことができる。そして、これらの圧電性ポリマーは、単独でも混合体でも用いることができる。
【0017】
上記の中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(ビニリデン−トリフルオロエチレン)共重合体及びポリ−L−乳酸等は、本発明の圧電ポリマー膜に好適に用いることができる。
【0018】
本発明の圧電ポリマー膜の微細繊維は、平均直径として300nm以下であることが必要であり、100nm以下であることが好ましい。300nmより大きい場合、後述する電界紡糸法によって圧電ポリマー膜を製造する際に容易に微細繊維が形成できる条件から外れる傾向となり、配列膜部と等方膜部が一体化して形成されにくくなる。一方繊維径を小さくすることで、ポリマー結晶の成長方向が繊維軸方向に規制されることから、延伸処理を施さなくても圧電性を発現できる効果が期待できる。さらに、繊維径が小さいことで感圧センサの慣性質量も小さくなり、応答性が高くなるため感度が向上し好ましい。掛る繊維径の下限は、本発明の製造方法である電界紡糸法において一般的に製造可能な最も細い微細繊維径に相当する50nmを例示できる。
【0019】
圧電ポリマー膜に形成される配列膜部の形状は、細長い形状であれば制限はなく、長方形形状、細長い楕円形状、細長い三角形状、T字型、H字型等を例示できる。またS字型のような曲線部を伴なう細長い形状であってもよいが、その中でも、スリット状や短冊状等のような細長い長方形形状であることが望ましい。この際に配列膜部の細長い形状の長辺と短辺のアスペクト比が3以上であることが望ましく、より好ましくは5以上である。この比率が大きい場合には微細繊維の配列部が形成される一方で、比率が小さいほど配列が乱れる傾向がある。前記長辺と短辺のアスペクト比は、細長い形状の長い部分と部分の比の意味であり、細長い楕円形状の場合は長軸と短軸の比となり、細長い三角形状の場合は底辺と高さの比となり、S字型のような曲線部を伴なう細長い形状の場合は、長い部分の中心線を延ばした長さと幅の比となる。
【0020】
圧電ポリマー膜に形成される配列膜部の数は1以上であれば特に制限はないが、前述の形状を持った配列膜部をぞれぞれ独立して2個以上形成させることもできる。そして、複数の配列膜の形状、配置の位置にも特に制限はなく、例えば、等方膜部内に放射状に配置された複数の独立したスリット状の配列膜部がパターン化され、一体化してなる圧電ポリマー膜を一例として挙げることができる。その他、配列のパターンは自由に設計することができ
図5に示すような各種の配列パターンを例示することができる。
【0021】
本発明の圧電ポリマー膜は、前記繊維軸方向が揃って形成された膜(配列膜)部分では、前記〔4〕で示した式(1)で定義される配向度が0.7以上であることが好ましい。
感圧センサあるいはアクチュエータとして当該圧電ポリマー膜を使用するためには、微細繊維の配列膜部が含まれていることが必須であるが、配列膜が感圧センサあるいはアクチュエータとして機能する可否を判断する指標がある。微細繊維の配列膜部の任意の場所について倍率10000で拡大された微細繊維の画像において、画像の左右を結ぶ水平線からの繊維軸方向のズレが20度以内の繊維の本数をA、ズレが20度を越える繊維の本数をBとした場合における配向度をA/(A+B)で定義し、係る配向度が0.7以上であることが望ましい。この値が0.7未満であればデバイスの応答特性に影響を及ぼす場合がある。
【0022】
圧電ポリマー膜の厚さは、5μm未満の膜であることが好ましい。膜厚が5μm以上になると、後述の感圧センサとして利用する際に、配列膜部における繊維の本数(厚さ方向)が増加し、隣接する繊維同士がお互いの変形(外部からの圧力による変形)を阻害する働きをするため応答性が低下する。一方で厚さの下限は繊維一本の直径に相当する長さであるが、この場合には自立膜としての回収が困難となり、事実上センサ膜として利用できないため好ましくない。
【0023】
次に、圧電ポリマー膜の製造方法について説明する。
本発明の圧電ポリマー膜を作成する方法としては、微細繊維の配列膜部分と等方膜部分を別々に製造せず連続繊維で一体化されて形成されている必要があることから電界紡糸法が好適に用いられる。すなわち、圧電ポリマー膜の製造方法は、電界紡糸装置のコレクタの表面に前記細長い形状をパターン化したコレクタを用いて圧電ポリマーを電界紡糸することを特徴とする。
【0024】
電界紡糸法では、通例、
図3に示すような機器構成で例示される電界紡糸法の装置によって微細繊維が連続的に紡糸されるが、この際に形成される微細繊維の回収方法を最適化することで、一度の製造で、配列膜部が等方膜部の任意の位置に形成され一体化した膜を得る。膜の製造後、デバイスとしての利用のため自立膜として回収できるためには、当該圧電ポリマー膜の製造に際して連続的に紡糸された微細繊維を用いることが必要となる。ただし、一度の製造で紡糸開始から終了までを一本の繊維が連続して形成される必要はない。有限の長さを持つ短繊維でなければ、その長さには特に制限はない。
【0025】
通常、電界紡糸法では微細繊維の不織布膜が得られるが、本発明の圧電ポリマー膜には微細繊維の配列膜部と等方膜部を一度に形成できるようにコレクタ形状を設計する必要がある。これらの手法には特に制限はないが、本発明における圧電ポリマー膜は、微細繊維の配列膜部と等方膜部が一体化して1枚の膜を形成することから、コレクタ板に予めデバイスとして使用する際に必要なセンサの大きさ、向きを有するパターン孔を作り、電界紡糸を行う。好ましい範囲にあるアスペクト比を持つパターン孔を利用する限り、それぞれ独立したパターン孔には微細繊維の配列膜物が等方膜部の中に一体化されて形成される。パターン孔相互の位置関係には大きな制約はなく、互いに直行するパターン孔が隣接していても各々独立に配列膜部が形成される。
図4には放射状に配置されたスリットを持つコレクタ上に形成された圧電ポリマー膜の例を示した。それぞれのパターン孔に独立した配列膜部が形成されることが分かる。
【0026】
前記コレクタ板に設けるパターン孔は、例えば、孔ではなく一定深さ以上の溝など微細繊維の配列部作成に効果を及ぼす同等の構造であればよい。様々なパターン例を
図5に示した。またコレクタ板も必ずしもい平板状である必要はなく、円筒状やその他の複雑な3次元形状に形作られた導電性のオブジェクトであってもよく、その表面にパターン孔あるいはそれと同等の効果を有する形状が設けられていればよい。
【0027】
電界紡糸法において、得られる微細繊維の形状に影響を及ぼす因子としては、樹脂の種類、分子量、溶媒の種類、樹脂溶液の濃度、樹脂溶液の射出速度(時間当りの吐出容積)、シリンジ針の直径、シリンジ針先端とコレクタ間の距離、印加電圧、コレクタのアースのとり方等がある。本願発明の微細繊維を得るに当たっては上述の各因子に特別の制限はないが、これらを最適化することで前記の平均直径をもつ微細繊維を得ることが望ましい。
【0028】
そして、本発明の圧電ポリマー膜を感圧センサあるいはアクチュエータとして利用するには、必要に応じて一軸延伸後に分極処理を施す必要がある。処理条件には特に制限はないが、延伸はポリマーのガラス転移点以上の温度下で一軸延伸させ、その後、放電を起こさないようにオイルバス中や不活性ガス中で90〜130℃に保持下、厚さ1mm当り数kVの電圧を印加させて分極処理を行う方法を例示できる。
【0029】
本発明の感圧センサとは、外部力場(圧力)印加の瞬間に電圧を出力する有機ポリマー微細繊維からなる前記微細繊維配列部を圧電ポリマー膜および当該圧電ポリマーからの出力電圧を取り出すための電極からなる複合体を指す。
また、感圧センサを複数個有する感圧センサアレイとすることもできる。
【0030】
前記圧電ポリマー膜に備えられる電極は、膜平面を挟んで上面及び下面に対に設置される。各々の電極は膜表面全体を覆う一枚のベタ膜としてもよいが、有機ポリマー微細繊維の方向に平行に所定の幅をもつ複数の電極部分から形成され、それらが圧電ポリマー膜の上下で対をなすように形成されていてもよい。圧電変換による出力電圧が検出できる限りにおいて、幅を狭くしたり、隣り合う電極間の距離を広げたりすることができる。このような電極形成方法を採ることにより、一枚の圧電ポリマー膜に複数の感圧センサ部を設けることができる。本願発明における感圧センサでは1カ所の配列膜部においても電極の形成の仕方で複数の感圧センサがサイドバイサイドで形成されたアレイとすることもでき、そららがさらに複数個パターン化された圧電ポリマー膜全体としてもセンサアレイを構築でき、通常は1個1個独立したパッケージとしてなる感圧センサを製品表面に設置する必要があるのに対し、簡便に、入力情報量を増やすことができる。このような利用方法により、種々のハンディガジェットの入力機能やさらに発展してロボットの触覚センシング機能にも利用できる可能性がある。日常生活の隅々で利用されている情報家電等の更なるコンパクト化やデザインコンシャス化に貢献できると考えている。
【0031】
電極を形成する材料としては、導電性を有する薄膜が形成可能な材料であれば特に限定されない。例えば、ITO膜やアルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルなどの金属類を用いれば良い。電極形成手法には特に制限はないが、本発明の微細繊維の圧電ポリマー膜への電極形成の容易さを考慮すれば、蒸着法により、微細繊維膜を上下から挟むように電極を形成させることを例示できる。
図6に示されるように、蒸着法による場合、電極はベタ膜ではなく配列膜の最表面からある程度の深さまでに存在する微細繊維一本一本の表面にコーティングされている。これら独立したコーティング繊維を横断するように適宜設置された導電性の電極取出し部を介して出力を得る構造となる。電極取出し部を複数設置したり、適宜マスキングを施すことで回路パターンを形成させたりすることで前記したセンサアレイを形成させることもできる。
【0032】
本願発明の圧電ポリマー膜は柔軟な膜であり、電極を形成する膜の厚みを適宜調節することで、感圧センサとしてデバイス化された後も柔軟性、特に3次元形状への追従性(柔軟性)は保持される。センサ外形が製品形状に影響することなく、デザイン優先の製品表面に後からセンサを張り付けることができる。
【0033】
本発明のアクチュエータとは、配列膜部に電圧を印加することで可逆的に変形する有機ポリマー微細繊維からなる前記微細繊維配列部を有する圧電ポリマー膜および当該圧電ポリマーに電圧を印加するための電極からなる複合体を指す。
また、アクチュエータを複数個有するアクチュエータ集合体とすることもできる。
【0034】
前記圧電ポリマー膜に備えられる電極は、膜の両端に設置され、膜平面を挟んで上面及び下面に設置しても良いし、膜平面の両端に設置しても良い。膜平面の両端に設置する場合は、前記圧電ポリマー膜の繊維軸が配向した繊維切断面の両端部に設置することも繊維軸が配向した両端の繊維に沿った形で設置することもできる。電極の設置位置は、前記の中からアクチュエータを使用する態様に適するものを選択すればよい。そして、本発明のアクチュエータは、電極に電圧印加装置から電圧が印加されることによって、前記圧電ポリマー膜が変形を起こし作動する。
【0035】
本願発明の圧電ポリマー膜は柔軟な膜であり、電極を形成する膜の厚みを適宜調節することで、アクチュエータとしてデバイス化された後も膜全体としは柔軟性、特に3次元形状への追従性(柔軟性)は保持される。製品形状に影響されることなく、デザイン優先の製品表面に後から微細なアクチュエータ集合体を張り付けることができる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0037】
<樹脂溶液の作製>
ポリフッ化ビニリデン(クレハ製 W#1000)をジメチルアセトアミド(DMAc)の20wt%溶液となるように調製した。
【0038】
〔実施例1〕
電界紡糸装置のコレクタとして幅10mm、長さ50mmのスリット状のパターン孔を1個設けたアルミ製コレクタを作成し、これの電極をアース設置した後、電極面に電界紡糸法によって前記した樹脂溶液を噴霧し、厚さが3μmの微細繊維膜を形成させた(この場合、配列膜部は1カ所のみとなるので「配列膜モデル」とした。)。電界紡糸条件は、15kVの印加電圧、直径25Gのシリンジ針を用い、0.01ml/分の吐出速度、シリンジ−電極間距離が14cmの条件であった。得られた微細繊維の直径はおよそ100〜150nm程度であった。
【0039】
得られたポリフッ化ビニリデンの配列膜モデルに対して、微細繊維膜を上下から挟むように電極を設置し、シリコンオイル中で90℃、3kV、60分間の分極処理を行った。溶剤で洗浄後、微細繊維膜を上下から挟むように金蒸着膜を形成し、下部電極、微細繊維膜、上部電極の構造からなる感圧センサデバイスモデルを作成した(
図6に示す)。
【0040】
〔実施例2〕
電界紡糸装置のコレクタとして幅2mm、長さ15mmのスリット状のパターン孔を8個をそれぞれ45度ずつ離して放射状に設けたアルミ製コレクタを作成し、アース接地した後、電極面に電界紡糸法によって前記した樹脂用液を噴霧し、厚さが3μmの微細繊維膜を形成させた(この場合、配列膜部は8カ所となるので「配列膜アレイモデル」とした。)。電界紡糸条件は15kVの印加電圧、直径25Gのシリンジ針を用い、0.01ml/分の吐出速度、針先‐コレクタ間距離が14cmの条件であった。作成したポリフッ化ビニリデンの微細繊維膜全体の写真および任意の配列部分のレーザー顕微鏡観察結果を
図3に示す。得られた微細繊維の直径はおよそ100〜200μm程度であった。
【0041】
(性能評価)
<繊維軸の配向度>
実施例1(配列膜モデル)及び実施例2(配列膜アレイモデルのそれぞれ異なる8個の配列部)のそれぞれ任意の場所について倍率10000で拡大された微細繊維の画像において、画像の左右を結ぶ水平線からの繊維軸方向のズレが20度以内の繊維の本数をA、ズレが20度を越える繊維の本数をBとした場合における配向度をA/(A+B)で定義し、画像解析から配向度を計算した。
【0042】
<3次元変形性>
実施例1(配列膜モデル)及び実施例2(配列膜アレイモデル)について、アルミ製コレクタから剥離後、直径20mmの半球を先端にもつ円柱に手で押付け、配列膜部が破壊されずに円柱に貼りつけることができるかを調べた。
【0043】
<感圧センサ駆動試験>
実施例1(配列膜モデル)に対して作成した感圧センサデバイスモデルについて、下部と上部電極をオシロスコープに接続し、微細繊維膜部分に曲げ変形を加えて、圧電変換に基づく電圧出力の有無を調べた。
【0044】
〔比較例1〕
ポリフッ化ビニリデンの厚さ5μmのキャスト膜(実施例に使用した樹脂用液を用いて溶媒を乾燥させた)について3次元変形性を評価した。
【0045】
実施例1、実施例2および比較例1で得られた性能評価結果をまとめて表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
表1より、実施例1および2では繊維軸配向度から配列部は一軸配列性であることが分かった。特に実施例2では、8個のパターン孔配置が、コレクタ面内では実質的に4種の異なる角度を有するにもかかわらず、特別な操作をすることなくそれぞれの配列膜部が一軸配列性であった。
これらの微細繊維からなる膜はいずれも3次元変形性に優れており、感圧センサモデルデバイスも変形印加後に電圧の出力を検知し、感圧センサとして機能することが分かった。
【0048】
一方、比較例1は微細繊維の集合体ではないバルク体としてのフィルムであるため、3次元変形は出来なった。この場合、感圧センサデバイスとして利用するには延伸後、分極処理を施し、任意の位置に電極を設けることになる。電極をパターン化することで1枚のフィルムにセンサアレイを形作ることは可能であるが、複雑形状への追従性がないため、結果として個々の感圧センサを複雑形状のオブジェクトに貼りつける必要があり、煩雑であり、実用性に乏しい。また小さなオブジェクトに多数のセンサを配置することは困難である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の感圧センサアレイ構造を用いた感圧センサデバイスを用いることで、種々の情報家電等の更なるコンパクト化やデザインコンシャス化に貢献できると考えている。
【符号の説明】
【0050】
1 高圧電源
2 ノズル
3 シリンジ等
4 微細繊維(飛翔中)
5 コレクタ
6 有機ポリマー微細繊維膜
【0051】
7 金蒸着されたポリフッ化ビニリデン微細繊維層
8 ポリフッ化ビニリデン微細繊維層
9 電圧検出部(データロガー、オシロスコープ等)
10 電極取出し部
11 曲げ変形(外部より印加)