特許第6961355号(P6961355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961355
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】空調用チャンバー
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   F24F13/02 D
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-30352(P2017-30352)
(22)【出願日】2017年2月21日
(65)【公開番号】特開2018-136072(P2018-136072A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2020年1月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】久野 幸男
(72)【発明者】
【氏名】柿原 秀規
(72)【発明者】
【氏名】重松 拓也
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−009170(JP,A)
【文献】 米国特許第05281187(US,A)
【文献】 特開平11−030438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に設けられたグリッド天井の上方に設置される空調用チャンバーであって、
少なくとも一つの開口面を有する箱体状の本体部と
前記本体部に開設された複数のダクト連結口と、
前記開口面を気密状に閉塞可能な平板状の閉塞部材と、を備え、
前記本体部の開口面の外周部分にフランジ状の周縁部を設け、
前記本体部と、前記閉塞部材とを前記周縁部を介して接合する接合手段を設け、
前記接合手段は、前記周縁部と前記閉塞部材とを接合するクリップ部材、クランプ部材、接着剤若しくは粘着剤であり、
且つ、前記本体部は、下面に開口面を有する角錐台形状若しくは円錐台形状であり、複数の前記ダクト連結口は、角錐台形状若しくは円錐台形状をなす前記本体部の側面に開設され、
前記本体部は当該本体部の内側に当該本体部と同形状をなす他の本体部を順次収容していくことができ、前記閉塞部材は当該閉塞部材と同形状をなす他の閉塞部材と互いに積層状に重ね合わせた状態とすることができる空調用チャンバー。
【請求項2】
前記本体部が、不燃性を有するダンボール材、グラスウール材若しくは発泡合成樹脂材を含むものである請求項1記載の空調用チャンバー。
【請求項3】
前記グリッド天井を構成する一つの格子領域内を前記空調用チャンバーが通過可能であって、
前記グリッド天井の上方に配置された前記空調用チャンバーが、
前記グリッド天井を構成するTバー材に対し、前記空調用チャンバーの一部を当接させた状態で載置可能である請求項1または2記載の空調用チャンバー。
【請求項4】
前記グリッド天井を構成する一つの格子領域内を前記空調用チャンバーが通過可能であって、
前記グリッド天井の上方に配置された前記空調用チャンバーが、
前記グリッド天井を構成するTバー材に対し、所定の係止手段を介して取り付け可能である請求項1〜3の何れかに記載の空調用チャンバー。
【請求項5】
前記係止手段が、
前記Tバー材と前記空調用チャンバーの本体部との間に配置され、
前記空調用チャンバーを前記Tバー材に向かって押圧保持する弾性部材である請求項4記載の空調用チャンバー。
【請求項6】
前記係止手段が、
前記本体部と前記閉塞部材との接合部の一部を把持した状態で、前記Tバー材に係合可能なクリップ部材若しくはクランプ部材である請求項4記載の空調用チャンバー。
【請求項7】
前記閉塞部材の下面が、前記グリッド天井に配置される天井部材の下面と略同一平面若しくは略平行をなすように配置可能である請求項1〜6の何れかに記載の空調用チャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機から供給される調和空気を建物内の天井の複数個所に配置された吹出口に向かって分配供給するため天井の上方に設置される空調用チャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
空調機から供給される調和空気を建物内の天井の複数個所に配置された吹出口に向かって分配供給するために使用される空調用チャンバーについては、従来、様々な形状、構造を有するものが開発されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された「空気調和用チャンバー支持構造」がある。
【0003】
特許文献1に記載されている空気調和用チャンバーは、中空の略箱状体で形成され、当該略箱状体の各側面に、空気調和用気体を供給する供給用ダクト若しくは前記気体を空気調和対象空間側へ送出する送出用ダクトがそれぞれ接続される開口部が形成されるとともに、いずれかの向かい合う一対の側面にそれぞれ横方向に延びるスリット状の貫通孔が一または複数形成されている。
【0004】
特許文献1に記載されている空気調和用チャンバーには突出部分が設けられていないので、搬送作業や設置作業を効率化、円滑化することができるなどの利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3060423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている空気調和用チャンバーは、中空の略箱状体で形成されているため、保管したり、搬送したりする際の占有スペースが大である。このため、複数個の空気調和用チャンバーを貨物自動車に積載して施工現場まで搬送する場合、互いに密着状に積載したとしても、その大部分は略箱状体の中空部分で占められるので、個数の割に、多大な積載スペースを必要とする、という問題がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、施工用資材を保管したり、搬送したりする際の占有スペースの削減及び重量の分散化を図ることができ、施工作業も容易な空調用チャンバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空調用チャンバーは、建物内に設けられたグリッド天井の上方に設置される空調用チャンバーであって、
少なくとも一つの開口面を有する箱体状の本体部と
前記本体部に開設された複数のダクト連結口と、
前記開口面を気密状に閉塞可能な平板状の閉塞部材と、を備え、
前記本体部の開口面の外周部分にフランジ状の周縁部を設け、
前記本体部と、前記閉塞部材とを前記周縁部を介して接合する接合手段を設け、
前記接合手段は、前記周縁部と前記閉塞部材とを接合するクリップ部材、クランプ部材、接着剤若しくは粘着剤であり、
且つ、前記本体部は、下面に開口面を有する角錐台形状若しくは円錐台形状であり、複数の前記ダクト連結口は、角錐台形状若しくは円錐台形状をなす前記本体部の側面に開設され、
前記本体部は当該本体部の内側に当該本体部と同形状をなす他の本体部を順次収容していくことができ、前記閉塞部材は当該閉塞部材と同形状をなす他の閉塞部材と互いに積層状に重ね合わせた状態とすることができることを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、箱体状の本体部(若しくは平板状の本体部材)と、閉塞部材とが別部材となり、それぞれの部材の重量は一体構造の空調用チャンバーの総重量より軽くなるので、施工現場への搬入が容易となり、施工作業を容易化することができる。
【0010】
また、前記空調用チャンバーを構成する部材が、箱体状の本体部と平板状の閉塞部材との組み合わせである場合は、箱体状の本体部内に施工に必要な他の部材などを収容して搬送することが可能であるため、搬送中の占有スペースの削減を図ることができる。
【0011】
一方、前記空調用チャンバーを構成する部材が、平板状の本体部材と平板状の閉塞部材との組み合わせである場合は、それぞれ部材を積層状に重ね合わせて搬送可能であるため、搬送中の占有スペースを大幅に削減することができる。
【0012】
前記空調用チャンバーにおいては、前記本体部若しくは前記本体部材を組み立てて形成された本体部と、前記閉塞部材と、を接合する接合手段を設けることができる。
【0013】
このような構成とすれば、少なくとも二つの別部材(本体部若しくは本体部材を組み立てて形成した本体部と閉塞部材)を接合するだけで容易に空調用チャンバーを組み立てることができるので、作業場所が限定されない。また、別部材を接合するだけで容易に空調チャンバーを組み立てることができるので、作業効率が向上する。
【0014】
前記空調用チャンバーにおいては、前記接合手段として、クリップ部材、クランプ部材、接着剤若しくは粘着剤を使用することができる。
【0015】
このような構成とすれば、本体部若しくは本体部材を組み立てて形成した本体部と、閉塞部材とを容易に接合することができるので、組立作業を簡易化、迅速化することができ、作業場所も限定されない。
【0016】
クリップ部材やクランプ部材を使用した場合は、本体部と閉塞部材との間にパッキンやガスケットなどのシール部材を介在させ、本体部の一部をクリップ部材やクランプ部材で挟むだけで、容易に空調用チャンバーの組み立てができるので、組立作業を簡易化、迅速化することができ、作業場所も限定されない。
【0017】
接着剤や粘着剤を使用した場合、これらの接合手段はシール効果を有するので、本体部と閉塞部材との間に、別途、気密処理を施す必要がなくなり、施工時の作業効率が向上する。また、空調用チャンバーの周縁に、接合部材などの接合手段が現れないので、室内側から見た天井面の意匠性が阻害されない。
【0018】
前記空調用チャンバーにおいては、前記本体部若しくは前記本体部材を組み立てて形成された本体部の形状を、角錐台形状若しくは円錐台形状とすることができる。
【0019】
このような構成とすれば、箱体状をした本体部内に、他の本体部の一部を順次収容していくことにより、複数の本体部を重ね合わせた状態で搬送することが可能となるため、箱体状の本体部を搬送する際の占有スペースを削減することができる。また、本体部の表面積が減少するので、本体部を形成する材料を削減することができるほか、重量及び施工スペースも削減することができる。
【0020】
前記空調用チャンバーにおいては、前記本体部及び前記本体部材が、不燃性を有するダンボール材、グラスウール材若しくは発泡合成樹脂材を含むものとすることができる。
【0021】
このような構成とすれば、前記本体部及び前記本体部材が金属製である場合に比べ、軽量化を図ることができ、断熱性も向上する。
【0022】
前記空調用チャンバーにおいては、前記グリッド天井を構成する一つの格子領域内を前記空調用チャンバーが通過可能であって、
前記グリッド天井の上方に配置された前記空調用チャンバーが、
前記グリッド天井を構成するTバー材に対し、前記空調用チャンバーの一部を当接させた状態で載置可能とすることができる。
【0023】
このような構成とすれば、建物内の天井部分に格子状のグリッド天井を施工した後、空調用チャンバーの施工作業(例えば、グリッド天井の上方への運び込み作業、グリッド天井への取り付け作業など)を行うことが可能となるので、施工性が向上する。また、Tバー材に対し、係止手段を介さずに取り付け可能であるため、取り付け作業の容易化、作業効率の向上を図ることができる。さらに、係止手段なしで、Tバー材に載置するだけで施工可能であるため、空調用チャンバーをTバー材に固定するための係止金具などの部材が不要であり、軽量化を図ることができ、通常の天井施工と変わらない状態に仕上げることができる。
【0024】
前記空調用チャンバーにおいては、前記グリッド天井を構成する一つの格子領域内を前記空調用チャンバーが通過可能であって、
前記グリッド天井の上方に配置された前記空調用チャンバーが、
前記グリッド天井を構成するTバー材に対し、所定の係止手段を介して取り付け可能とすることもできる。
【0025】
このような構成とすれば、格子状のグリッド天井を施工した後、空調用チャンバーの施工(グリッド天井の上方への運び込み作業、グリッド天井への取り付け作業など)を行うことが可能となるので、施工性が向上する。また、Tバー材に対し、取り付け作業の容易化、取り付け状態の確実化、安定化を図ることができる。さらに、地震や振動などによって空調用チャンバーが設置場所から移動したり、離脱したりするのを防止することができる。
【0026】
前記空調用チャンバーにおいては、前記係止手段として、
前記Tバー材と前記空調用チャンバーの本体部との間に配置され、
前記空調用チャンバーを前記Tバー材に向かって押圧保持する弾性部材を使用することができる。
【0027】
このような構成とすれば、弾性部材の押圧力により空調用チャンバーをTバー材に密着させることができるので、確実に固定することができ、地震などの災害発生時に空調用チャンバーが落下するを防止することができる。また、Tバー材と空調用チャンバーの本体部との間に弾性部材を介させることにより、室内側から弾性部材が見えない状態となるので、天井面の意匠性を阻害することがない。
【0028】
前記空調用チャンバーにおいては、前記係止手段として、
前記本体部と前記閉塞部材との接合部の一部を把持した状態で、前記Tバー材に係合可能なクリップ部材若しくはクランプ部材を使用することもできる。
【0029】
このような構成とすれば、別々に運搬したチャンバー構成部材(本体部若しくは本体部材を組み立てて形成した本体部及び閉塞部材)をシール部材を介して接合し、本体部と閉塞部材との接合部の一部を挟むだけで、容易に空調用チャンバーの組立と、Tバー材への固定(把持)とを行うことができるので、施工性が良好となる。また、クリップ部材やクランプ部材で把持するだけで、空調用チャンバーを組立てることができるので、作業場所が限定されない。
【0030】
前記空調用チャンバーにおいては、前記閉塞部材の下面が、前記グリッド天井に配置される天井部材の下面と略同一平面若しくは略平行をなすように配置可能な構成とすることができる。
【0031】
このような構成とすれば、空調用チャンバーをグリッド天井に設置したとき、当該空調用チャンバーを構成する閉塞部材が天井部材としての機能を発揮することが可能となるので、天井部材の使用数を削減することができる。
【0032】
次に、前記空調用チャンバー施工方法は、
少なくとも一つの開口面を有する箱体状の本体部若しくは前記本体部を展開した平板状の本体部材と、前記開口面を気密状に閉塞可能な平板状の閉塞部材と、を組み合わせて前記本体部に複数のダクト連結口を有する空調用チャンバーを形成する工程と、
建物内に設けられたグリッド天井を構成する一つの格子領域内を経由して前記空調用チャンバーを前記グリッド天井の上方に配置する工程と、
前記グリッド天井の上方に配置された前記空調用チャンバーを、
前記グリッド天井を構成するTバー材に前記空調用チャンバーの一部を当接させた状態で前記空調用チャンバーを前記Tバー材に載置する工程、若しくは、
前記グリッド天井を構成するTバー材若しくは前記Tバー材を吊り下げ状に保持する建物躯体に対して所定の係止手段を介して前記空調用チャンバーを取り付ける工程と、を備えたことを特徴とする。
【0033】
このような構成とすれば、建物内のグリッド天井に対して空調用チャンバーを施工する場合、施工用資材を保管したり、搬送したりする際の占有スペースの削減及び重量の分散化を図ることができ、施工作業を容易化することもできる。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、施工用資材を保管したり、搬送したりする際の占有スペースの削減及び重量の分散化を図ることができ、施工作業も容易な空調用チャンバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態である空調用チャンバーを示す斜視図である。
図2図1に示す空調用チャンバーの分解斜視図である。
図3図1に示す空調用チャンバーの組み立て工程を示す矢線X方向から見た正面図である。
図4図1に示す空調用チャンバーの施工工程を示す一部省略斜視図である。
図5図1に示す空調用チャンバーの施工工程を示す一部省略斜視図である。
図6図5中のA−A線における一部省略垂直断面図である。
図7図6中の矢線Bで示す領域の拡大図である。
図8図1に示す空調用チャンバーの施工が完了した状態を示す一部省略斜視図である。
図9】本発明のその他の実施形態である空調用チャンバーとTバー材との係止部分の一部を示す垂直断面図である。
図10】本発明のその他の実施形態である空調用チャンバーとTバー材との係止部分の一部を示す垂直断面図である。
図11】本発明のその他の実施形態である空調用チャンバーとTバー材との係止部分の一部を示す垂直断面図である。
図12】本発明のその他の実施形態である空調用チャンバーを示す分解斜視図である。
図13図12に示す空調用チャンバーの本体部及び前記本体部の開口面を閉塞する閉塞部材を示す斜視図である。
図14】本発明のその他の実施形態である空調用チャンバーを示す斜視図である。
図15】本発明のその他の実施形態である空調用チャンバーを構成する本体部材を示す斜視図である。
図16図15に示す本体部材を折り曲げて本体部を形成する工程を示す斜視図である。
図17図16に示す工程を経て形成された本体部及び前記本体部の開口面を閉塞する閉塞部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図1図17に基づいて、本発明の実施形態である空調用チャンバー100,200,300,400,500,600,700及び空調用チャンバー100の施工方法などについて説明する。
【0037】
図1図8に基づいて、本発明の実施形態である空調用チャンバー100及び空調用チャンバー100の施工方法について説明する。図1に示す空調用チャンバー100は、後述する図5に示すように、建物内に設けられたグリッド天井Gの上方に設置して使用されるものである。図1に示す空調用チャンバー100は、図2に示すように下面側に開口面11を有する箱体状の本体部10と、本体部10に開設された複数のダクト連結口12,13と、開口面11を気密状に閉塞する平板状の閉塞部材20と、を備えている。
【0038】
本体部10は四角錐台形状をなしており、開口面11の外周部分にフランジ状の周縁部14が設けられている。本体部10は、左右両側面10s,10sが13度程度傾斜し、正面10f及び背面10bが1度程度傾斜した四角錐台形状であるが、傾斜角度を限定するものではない。また、対向する一対の面(例えば、左右両側面10s,10s)が傾斜し、残りの対向する一対の面(例えば、正面10fと背面10b)は平行をなすような形状とすることもできる。
【0039】
図2図3に示すように、本体部10の開口面11を閉塞部材20で閉塞し、周縁部14と閉塞部材20とが重なり合った部分を複数のクリップ部材30で挟持することによって本体部10と閉塞部材20とが一体化されている。クリップ部材30は断面コ字状の弾性を有する部材である。本体部10の周縁部14と閉塞部材20との間には気密保持のためのガスケットやパッキンなどのシール材(図示せず)が介在されている。
【0040】
本体部10及び閉塞部材20は、グラスウール材を含む材料で形成されているが、これに限定するものではないので、不燃性を有するダンボール材若しくは発泡合成樹脂材を含む材料で形成することもできる。
【0041】
図1に示す空調用チャンバー100を施工する場合、図4に示すように、建物内に設けられたグリッド天井Gを構成する一つの格子領域G1内を経由して空調用チャンバー100をグリッド天井Gの上方に運び上げる。空調用チャンバー100は本体部10の正面10fを真上に向けた姿勢とすることにより、一つの格子領域G1内を容易に通過することができる。
【0042】
空調用チャンバー100をグリッド天井Gの上方まで運び上げたら、空調用チャンバー100を、その設置予定場所である一つの格子領域G2の真上まで移動させ、閉塞部材20を下方に向けるとともに、四角形状の閉塞部材20と四角形状の格子領域G2とが同位相をなすようにし、そのままの姿勢で空調用チャンバー100を下降させると、図5に示すように、閉塞部材20が格子領域G2(図4参照)内に嵌り込み、空調用チャンバー100の設置が完了する。グリッド天井Gにおいて、空調用チャンバー100が設置されない部分の格子領域内にはそれぞれ天井材2が嵌め込まれている。
【0043】
図6図7に示すように、空調用チャンバー100は、グリッド天井Gを構成するTバー材1に空調用チャンバー100の一部をなす閉塞部材20の周縁部を当接させた状態でTバー材1に載置されている。図7に示すように、Tバー材1は上方拡幅部1aと、これより幅の広い下方拡幅部1bと、上方拡幅部1aと下方拡幅部1bとを連接するウエブ1cとで形成されている。本実施形態においては、空調用チャンバー100の閉塞部材20の周縁部20a及びクリップ部材30の下面をTバー材1の下方拡幅部1bの上面に当接させた状態で空調用チャンバー100がTバー材1に載置されている。
【0044】
空調用チャンバー100の設置が完了した後、図8に示すように、本体部10の正面10fに開設されたダクト連結口12に流入ダクト3を接続し、本体部10の左右両側面10s,10sのダクト連結口13にそれぞれ流出ダクト4を接続すると施工が完了する。流入ダクト3は空調空気を空調用チャンバー100内へ供給するための部材であり、複数の流出ダクト4は空調用チャンバー100内に供給された空調空気を所定の空調領域へ送り出すための部材である。
【0045】
空調用チャンバー100においては、箱体状の本体部10と、閉塞部材20とが別部材となっており、それぞれの部材の重量は完成後の空調用チャンバー100の総重量より軽いので、施工現場への搬入が容易であり、施工作業を容易化することができる。
【0046】
また、空調用チャンバー100を構成する部材は、箱体状の本体部10及び平板状の閉塞部材20であり、箱体状の本体部10内に施工に必要な他の部材など(クリップ部材30、ガスケットやパッキンなどのシール材)を収容して搬送可能であるため、搬送中の占有スペースを削減することができる。
【0047】
空調用チャンバー100においては、本体部10と閉塞部材20とを接合する接合手段としてクリップ部材30を使用したことにより、本体部10と閉塞部材20とを重ね合わせてクリップ部材30で接合するだけで容易に空調用チャンバー100組み立てることができるので、作業場所が限定されない。また、本体部10と閉塞部材20とをクリップ部材30で接合するだけで容易に空調チャンバー100を組み立てることができるので、作業効率が向上するだけでなく、組立作業を簡易化、迅速化することができる。
【0048】
空調用チャンバー100において、本体部10は、下面に開口面11を有する四角錐台形状であるため、本体部10の内側に同形状の他の本体部10を順次収容していくことにより、複数の本体部10を重ね合わせた状態で搬送することができる。このため、箱体状の本体部10を搬送する際の占有スペースを削減することができ、本体部10の表面積が減少するので、本体部10を形成する材料を削減することができるほか、重量及び施工スペースも削減することができる。
【0049】
空調用チャンバー100においては、本体部10及び閉塞部材20が、グラスウール材を含む材料で形成されているため、これらの部材が金属製である場合に比べ、軽量化を図ることができ、断熱性も向上する。
【0050】
空調用チャンバー100は、グリッド天井Gを構成する一つの格子領域G1内を通過可能であり、グリッド天井Gの上方に配置した空調用チャンバー100はグリッド天井Gを構成するTバー材1に対し、空調用チャンバー100の一部(閉塞部材20の周縁部20a)を当接させた状態で載置することができる。
【0051】
従って、建物内の天井部分に格子状のグリッド天井Gを施工した後、空調用チャンバー100の施工作業(例えば、グリッド天井Gの上方への運び込み作業、グリッド天井Gへの取り付け作業など)を行うことができ、施工性が向上する。また、Tバー材1に対し、係止手段を介さずに取り付け可能であるため、取り付け作業の容易化、作業効率の向上を図ることができる。さらに、係止手段なしで、Tバー材1に載置するだけで施工可能であるため、空調用チャンバー100をTバー材1に固定するための係止金具などの部材が不要であり、軽量化を図ることができ、通常の天井施工と変わらない状態に仕上げることができる。
【0052】
図6図7に示すように、空調用チャンバー100においては、閉塞部材20は天井材2と同一材料(若しくは同等の外観を有する材料)で形成されるとともに、閉塞部材20の下面は天井材2の下面と略平行をなすように配置されている。従って、空調用チャンバー100をグリッド天井Gに設置したとき、当該空調用チャンバー100を構成する閉塞部材20が天井材2としての機能を発揮することができ、天井材2の使用数を削減することができる。この場合、閉塞部材20と天井材2とが異なる材質、材料であっても、両部材の下面の外観が同等であれば良いので、閉塞部材20の下面(室内に臨む面)に、施工場所に適した外観や色調を有する化粧紙や化粧フィルムを貼付することもできる。
【0053】
次に、図9図17に基づいて、その他の実施形態である空調用チャンバー200,300,400,500,600,700について説明する。なお、後述する空調用チャンバー200,300,400,500,600,700において、前述した空調用チャンバー100と共通する構造、機能を有する部分については図1図8中に示す符号を付して説明を省略する。
【0054】
図9に示す空調用チャンバー200においては、本体部10と閉塞部材20との間にシール材S1(例えば、ガスケットやパッキンなど)を介在させ、接合手段であるクランプ部材40で挟持するとともに、グリッド天井Gを構成するTバー材1に対する空調用チャンバー200の係止手段としてもクランプ部材40を使用している。クランプ部材40は、断面コ字状の二つの把持部41,42を有する弾性部材である。把持部41,42の開口方向は互いに90度をなすように形成され、把持部42の開口幅及び開口深さは把持部41の開口幅及び開口深さより大である。
【0055】
図9に示すように、本体部10の周縁部14と閉塞部材20の周縁部20aとの積層部分をクランプ部材40の把持部42で把持し、Tバー材1の上方拡幅部1aをクランプ部材40の把持部41で把持することにより、空調用チャンバー200がグリッド天井Gの上方に取り付けられている。空調用チャンバー200においては、クランプ部材40が、本体部10と閉塞部材20との接合手段としての機能、及び、グリッド天井Gに対する空調用チャンバー200の係止手段としての機能を兼備している。
【0056】
空調用チャンバー200においては、別々に運搬した本体部10と閉塞部材20との間にシール材S1(例えば、ガスケット、パッキンなど)を介在させて接合し、本体部10と閉塞部材20との接合部分と、Tバー材1の上方拡幅部1aと、をそれぞれクランプ部材40の把持部42,41で把持するだけで、容易に空調用チャンバー200の組立と、Tバー材1への固定とを行うことができるので、施工性が良好である。また、本体部10と閉塞部材20との接合部分をクランプ部材40で把持することにより、空調用チャンバー200を組み立てることができるので、作業場所が限定されない。
【0057】
図10に示す空調用チャンバー300においては、本体部10と閉塞部材21との接合手段として接着剤S2が使用されている。閉塞部材21の周縁部21aの下面には、その全周にわたって、天井材2の外周部の下面の段差部2bと同様の段差部21bが形成されている。グリッド天井Gの上方に配置された空調用チャンバー300は、閉塞部材21の周縁部21aの下面の段差部21bを、グリッド天井Gを構成するTバー材1の下方拡幅部1bに係合させた状態でTバー材1に載置されている。
【0058】
また、空調用チャンバー300においては、閉塞部材21の下面は、隣り合って配置された天井材2の下面と略同一平面をなしており、閉塞部材21の下面は天井材2の下面と同等の外観を有する材料で形成されている。
【0059】
次に、図11に示す空調用チャンバー400においては、本体部10と閉塞部材21との接合手段及び空調用チャンバー400をグリッド天井Gに係止する手段として、断面が略「己」形状をした弾性部材45を使用している。なお、本実施形態においても、本体部10と閉塞部材21との間にはガスケットやパッキンなどのシール部材(図示せず)が介在されている。弾性部材45は、断面がコ字形状をした把持部46と、把持部46から延設された断面L字形状の押圧部47とを有し、把持部46の内側に向かって複数の係止突片48,49が設けられている。
【0060】
図11に示すように、グリッド天井GのTバー材1の下方拡幅部1bに対し、閉塞部材21の段差部21aを係合させた状態で空調用チャンバー400をグリッド天井Gに載置し、弾性部材45の押圧部47を本体部10の周縁部14の上面に当接させるとともに、把持部46でTバー材1の上方拡幅部1aを把持する。これにより、空調用チャンバー400はTバー材1に押圧保持される。
【0061】
本実施形態においては、グリッド天井GのTバー材1に対する空調用チャンバー400の係止手段として、Tバー材1と空調用チャンバー400の本体部10の周縁部14との間に配置され、空調用チャンバー400をTバー材1に向かって押圧保持する弾性部材45を使用している。
【0062】
これにより、弾性部材45の押圧力により空調用チャンバー400をTバー材1に密着させることができるので、確実に固定することができ、地震などの災害発生時の空調用チャンバー400の落下を防止することができる。また、Tバー材1と空調用チャンバー400の本体部10の周縁部14との間に弾性部材45を介在させたことにより、室内側から弾性部材45が見えない状態となるので、天井面の意匠性を阻害することがない。
【0063】
次に、図12図13に基づいて、空調用チャンバー500について説明する。図12に示すように、空調用チャンバー500は、四角錐台形状の本体部50と、本体部50下方の開口面(図示せず)を閉塞可能な平板形状の閉塞部材20と、を備えている。本体部50の上面50aにダクト連結口12が開設され、本体部50の4つの外周面50bにそれぞれダクト連結口13が開設されている。
【0064】
組み立て前の空調用チャンバー500は、図13に示すように、複数の本体部50は互いに重ね合わせた状態とすることができ、また、複数の閉塞部材20も互いに積層状に重ね合わせた状態とすることができるので、保管、搬送の際の占有スペースを削減することができる。
【0065】
次に、図14に示す空調用チャンバー600は、円錐台形状の本体部60と、本体部60下方の開口面(図示せず)を閉塞可能な平板形状の閉塞部材20と、を備えている。本体部60の上面60aにダクト連結口12が開設され、本体部60の外周面60bに複数のダクト連結口13がなど間隔に開設されている。
【0066】
次に、図15図17に基づいて空調用チャンバー700について説明する。図17に示すように、空調用チャンバー700は、箱体状の本体部70と、本体部70の開口面71を閉塞可能な平板状の閉塞部材20と、を備えている。本体部70は、当該本体部70を展開した平板状の本体部材72(図15参照)を、図16に示す工程を経て組み立てることによって形成されている。
【0067】
図15に示すように、本体部材72においては、組立後の本体部70の正面70fとなる部分にダクト連結口12が開設され、同じく組立後の本体部70の左右の側面70sとなる部分にそれぞれ複数のダクト連結口13が開設されている。
【0068】
また、本体部材72においては、本体部70の正面70fとなる部分及び背面70bとなる部分の側縁にそれぞれ突片74が形成され、本体部70の側面70sとなる部分の側縁にそれぞれ突片74が嵌合可能な凹部75が形成されている。
【0069】
図15図16に示すように、本体部材72を折り目76に沿って折り曲げ、それぞれの突片74を凹部75に嵌合させた後、突片74と凹部75との嵌合部分を含む4つの辺縁部77に沿ってアルミ粘着テープ78を貼着すると、図17に示す箱体状の本体部70が完成する。
【0070】
本実施形態においては、図15に示すように、平板状の本体部材72と、閉塞部材20(図17参照)とが別部材となり、それぞれの部材の重量は一体構造の空調用チャンバー700の総重量より軽いので、施工現場への搬入が容易となり、施工作業を容易化することができる。また、図15に示すように、複数の本体部材72は積層状に重ね合わせることができるので保管、運搬時の占有スペースを削減することができる。
【0071】
なお、図1図17に基づいて説明した実施形態に係る空調用チャンバー100,200,300,400,500,600,700は本発明を例示するものであり、本発明に係る空調用チャンバーは前述した実施形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る空調用チャンバーは、建物内に配備される空調用設備の一部として建設業の分野において、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 Tバー材
1a 上方拡幅部
1b 下方拡幅部
1c ウェブ
2天井材
2b,21b 段差部
3 流入ダクト
4 流出ダクト
10,50,60,70 本体部
10f,70f 正面
10b,70b 背面
10s,70s 側面
11,71 開口面
12,13 ダクト連結口
14,20a,21a 周縁部
20,21 閉塞部材
30 クリップ部材
40 クランプ部材
41,42 把持部
45 弾性部材
50a,60a 上面
50b,60b 外周面
47 押圧部
48,49 係止突片
72 本体部材
74 突片
75 凹部
76 折り目
77 辺縁部
78 アルミ粘着テープ
100,200,300,400,500,600,700 空調用チャンバー
G グリッド天井
G1,G2 格子領域
S1 シール材
S2 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17