【実施例】
【0040】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
下記において、NIT値は以下のように測定した。
【0041】
<NIT値測定>
ナノインデンテーション測定装置として、超微小押し込み硬さ試験機(ENT−1100a、株式会社エリオニクス製)を使用して、金属磁性粉のNIT値を測定した。金属磁性粉の表面が平面になるように研磨した。研磨は、研磨紙で研磨した後、バフ研磨(6μm)を行い、さらにバフ研磨(1μm)を行った。なお、粉体が小さすぎると正確な測定が行えないため、各金属磁性粉の中から、比較的大粒の粉体を使用する。測定する磁性粉の種類にもよるが、50〜100μm程度の粉体を使用することで、信頼性の高い測定値が得られる。
【0042】
測定装置の基盤上に載置した試料の表面にダイヤモンド製の三角錐の圧子を1000000μNの加重まで押し込んだ(圧入)後、その圧子を取り除く(除荷)までの荷重(P)と変位(圧入深さh)の関係(圧入(負荷)−除荷曲線)を測定した
。下記式に基づきNIT値を算出した。
NIT(%)=100
β/(α+β)
使用した各金属磁性粉のNIT値、円相当径、形状を下表にまとめる。下表で、Exは実施例を表し、CExは比較例を表す。
【0043】
(実施例1)
第1金属磁性粉として、NIT値16%、円相当径20μmのFe系磁性粉を準備した(磁性粉1A)。また、第2金属磁性粉として、NIT値59%、円相当径45μmの楕円形状のアモルファス系磁性粉を準備した(磁性粉2A)。
【0044】
磁性粉1Aを40質量部、磁性粉2Aを60質量部混合した。混合粉を外径17.5mm、内径11.0mmのトロイダル形状の金型内に充填し、成形圧980MPaで加圧し圧粉磁心の成形体を得た。成形体重量は5gとした。作製した圧粉磁心の成形体を200℃で5時間、大気中での熱硬化処理を行い、圧粉磁心を得た。
【0045】
(実施例2)
第1金属磁性粉として、NIT値25%、円相当径23μmのFeNiSiCo系磁性粉を準備した(磁性粉1B)。また、第2金属磁性粉として、NIT値65%、円相当径47μmの球状のアモルファス系磁性粉を準備した(磁性粉2B)。
【0046】
磁性粉1Bを40質量部、磁性粉2Bを60質量部混合し、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0047】
(実施例3)
第1金属磁性粉として、磁性粉1Bを準備した。また、第2金属磁性粉として、NIT値65%、円相当径40μmの破片状のアモルファス系磁性粉を準備した(磁性粉2C)。
【0048】
磁性粉1Bを40質量部、磁性粉2Cを60質量部混合し、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0049】
(実施例4)
第1金属磁性粉として、磁性粉1Aを準備した。また、第2金属磁性粉として、NIT値70%、円相当径42μmの楕円形状のアモルファス系磁性粉を準備した(磁性粉2D)。
【0050】
磁性粉1Aを40質量部、磁性粉2Dを60質量部混合し、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0051】
(実施例5)
第1金属磁性粉として、磁性粉1Bを準備した。また、第2金属磁性粉として、磁性粉2Aを準備した。また、バインダーとして、熱硬化樹脂であるエポキシ樹脂および硬化剤であるイミド樹脂を準備した(以下「バインダー」と記載)。
【0052】
磁性粉1Bを40質量部、磁性粉2Aを60質量部、および磁性粉の合計重量に対し2質量%のバインダーを混合し、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0053】
(実施例6)
第1金属磁性粉として、磁性粉1Aを準備した。また、第2金属磁性粉として、NIT値63%、円相当径50μmの不定形状のアモルファス系磁性粉を準備した(磁性粉2E)。
【0054】
磁性粉1Aを40質量部、磁性粉2Eを60質量部混合し、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0055】
(実施例7)
第1金属磁性粉として、磁性粉1Bを準備した。また、第2金属磁性粉として、NIT値86%、円相当径36μmの楕円形状のアモルファス系磁性粉を準備した(磁性粉2F)。
【0056】
磁性粉1Bを40質量部、磁性粉2Fを60質量部およびバインダー1質量%を混合し、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0057】
(実施例8)
第1金属磁性粉として、磁性粉1Aを準備した。また、第2金属磁性粉として、磁性粉2Aを準備した。
【0058】
磁性粉1Aを30質量部、磁性粉2Aを70質量部混合し、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0059】
(実施例9)
第1金属磁性粉として、磁性粉1Aを準備した。また、第2金属磁性粉として、磁性粉2Aを準備した。
【0060】
磁性粉1Aを50質量部、磁性粉2Aを50質量部混合し、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0061】
(実施例10)
第1金属磁性粉として、磁性粉1Aを準備した。また、第2金属磁性粉として、磁性粉2Aを準備した。また、これらとは別にNIT値63%、円相当径40μmの不定形状のアモルファス系磁性粉を準備した(磁性粉3A)。
【0062】
磁性粉1Aを40質量部、磁性粉2Aを60質量部、磁性粉3Aを10質量部混合し、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0063】
(比較例1)
比較例1では、NIT値が30%を超える第2金属磁性粉を2種用いた。
第2金属磁性粉として、磁性粉2Aを準備した。また、これらとは別にNIT値33%、円相当径20μmの不定形状のFe−2Si系磁性粉を準備した(磁性粉2G)。
【0064】
磁性粉2Gを40質量部、磁性粉2Aを60質量部混合し、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0065】
(比較例2)
第2金属磁性粉として、磁性粉2Bおよび2Gを準備した。
【0066】
磁性粉2Gを40質量部、磁性粉2Bを60質量部混合し、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0067】
(比較例3)
磁性粉2Aのみを使用して、実施例1と同様に圧粉成形を行なったが、保型性が悪く、磁心形状を維持できなかった。
【0068】
(比較例4)
磁性粉2Cのみを使用して、実施例1と同様に圧粉成形を行なったが、保型性が悪く、磁心形状を維持できなかった。
【0069】
(比較例5)
比較例5では、NIT値が30%を超える第2金属磁性粉を2種用いた。
第2金属磁性粉として、磁性粉2Aを準備した。また、これとは別にNIT値65%、円相当径40μmの楕円形状のアモルファス系磁性粉を準備した(磁性粉2H)。
【0070】
磁性粉2Aを40質量部、磁性粉2Hを60質量部混合し、実施例1と同様に圧粉成形を行なったが、保型性が悪く、磁心形状を維持できなかった。
【0071】
(比較例6)
磁性粉2Hにバインダー3質量%混合し、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0072】
(比較例7)
比較例7では、実施例1の第1金属磁性粉(磁性粉1A)に代えて、NIT値5%、円相当径15μmの純Fe系磁性粉(磁性粉3B)を使用した以外は、実施例1と同様に圧粉成形を行なったが、保型性が悪く、磁心形状を維持できなかった。
【0073】
(比較例8)
比較例8では、実施例1の第2金属磁性粉(磁性粉2A)に代えて、NIT値95%、円相当径45μmの破片状のアモルファス系磁性粉(磁性粉3C)を使用した以外は、実施例1と同様に圧粉成形を行なったが、保型性が悪く、磁心形状を維持できなかった。
【0074】
(比較例9)
磁性粉1Aのみを使用して、実施例1と同様にして圧粉磁心を得た。
【0075】
上記で作成した各圧粉磁心について、以下の評価を行った。
<保型性>
作成した圧粉磁心を、目視及び拡大鏡で観察する。コアの崩れ、割れ、クラックの有無を観察し全てにおいて異常が無いかどうかを確認する。異常が無い場合を「良好」とし、僅かに異常はあるが、コア形状を維持できる場合には「可」として、コア形状が維持できなかった場合を「不良」とした。なお、保型性が不良の場合には、以下の相対密度、透磁率、コアロスの測定は行っていない。
【0076】
<相対密度>
得られた圧粉磁心の密度を、その寸法および質量から算出し、算出された圧粉磁心の密度を、磁性粉の質量比率から計算した真密度で除して、占積率(相対密度)を算出した。
【0077】
<透磁率>
得られた圧粉磁心について、初透磁率を測定した。初透磁率は、圧粉磁心にワイヤを巻きつけ巻き数を12turnとして、LCRメーター(HP社LCR428A)によって測定した。
【0078】
<コアロス>
得られたトロイダルコアサンプルに、1次巻線および2次巻線を1次20回2次14回ずつ巻回し、2MHz、10mT、23℃での電力損失Pcvを測定した(単位:kW/m
3)。測定は、B−Hアナライザー(岩崎通信機株式会社製SY−8232)を用いて行った。
以上の結果を下表にまとめる。
【0079】
【表2】
【0080】
上記より、NIT値が10%以上30%以下の第1金属磁性粉と、NIT値が30%を超え90%以下の第2金属磁性粉とを組み合わせて使用することで、保型性、相対密度、透磁率の高い圧粉磁心が得られることが分かる。第1金属磁性粉を使用しない場合には、十分な保型性が得られず、磁心の形状が維持できないか(比較例3、4、5)、または相対密度の低い磁心が得られる(比較例1、2)。第1金属磁性粉を使用しない場合でも、バインダーを配合することで、磁心成形は可能であるが、相対密度が低下し、透磁率も低下する(比較例6)。第1金属磁性粉に代えて、NIT値が過度に低い金属磁性粉を用いても、磁心の形状維持はできなかった(比較例7)。第2金属磁性粉に代えて、NIT値が過度に高い金属磁性粉を用いても、磁心の形状維持はできなかった(比較例8)。また、第2金属磁性粉を用いない場合には、透磁率が上がらず、保型性も十分ではなかった(比較例9)。