(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インクを吐出可能な記録ヘッドと対向する位置を通して記録媒体を複数回往復搬送させることにより、前記記録媒体に画像を複数回に分けて記録するインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体の単位領域当たりのインクの付与量に応じて、前記単位領域当たりのインクの付与量が所定量以上の前記記録媒体の記録領域に複数回に分けて画像を記録するための前記記録媒体の往復の搬送量が、前記単位領域当たりのインクの付与量が所定量未満の前記記録媒体の記録領域に複数回に分けて画像を記録するときの前記往復の搬送量よりも短くなるように、前記記録媒体の往復の搬送量を変更するための変更手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
普通紙の前記記録媒体は、コート紙の前記記録媒体よりも、前記記録媒体の記録領域に複数回に分けて画像を記録するための前記往復の搬送量が短いことを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
インクを吐出可能な記録ヘッドと対向する位置を通して記録媒体を複数回往復搬送させることにより、前記記録媒体に画像を複数回に分けて記録するインクジェット記録方法であって、
単位領域当たりのインクの付与量が所定量以上の前記記録媒体の記録領域に複数回に分けて画像を記録するための前記記録媒体の往復の搬送量は、前記単位領域当たりのインクの付与量が所定量未満の前記記録媒体の記録領域に複数回に分けて画像を記録するときの前記往復の搬送量よりも短くすることを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
この明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また「記録」とは、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に、画像、模様、パターン等を形成、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。さらに、「インク」(「液体」という場合もある)とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。したがって、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、あるいはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色材の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。またさらに、「ノズル」とは、特に断らない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括していうものとする。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置(以下、「記録装置」ともいう)1の主要部の斜視図、
図2は、記録動作時における記録装置1の断面図、
図3は、クリーニング動作時における記録装置1の断面図である。
【0012】
本例の記録装置1は、シート状の記録媒体4を矢印Xの搬送方向(第1方向)に搬送しながら、長尺なライン記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」ともいう)2を用いて画像を記録するラインプリンタである。記録媒体4は、矢印X1の順方向および矢印X2の逆方向のいずれにも搬送可能である。記録装置1は、ロール状に巻回された連続紙などの記録媒体4を保持するホルダ、記録媒体4を所定速度で搬送方向に搬送する搬送ユニット7、および記録ヘッド2を用いて記録媒体4に画像を記録する記録部3を備える。記録媒体4は連続したロール紙に限定されず、カットシートであってもよい。
【0013】
記録装置1には、記録ヘッド2のノズル面をワイパによってクリーニングするクリーニング部6が備えられている。さらに、矢印X1方向における記録部3の下流側の位置には、記録媒体4の搬送路に沿って、記録媒体4を切断するカッタユニットおよび排紙トレーが備えられている(いずれも不図示)。記録部3には、異なるインク色対応した記録ヘッド2が備えられている。本例においては、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクに対応した4つの記録ヘッド2が備えられている。記録ヘッド2の配備数、および記録に用いるインクの色数は、本例のみに限定されない。
【0014】
各色のインクは、対応するインクタンク(不図示)からインクチューブ(不図示)を介して、対応する記録ヘッド2に供給される。4つの記録ヘッド2はヘッドホルダ5によって一体的に保持されており、ヘッドホルダ5には、4つの記録ヘッド2と記録媒体4の表面との間の距離が変更できるように、ヘッドホルダ5を矢印Z方向(第1の移動方向)に沿って上下移動させる機構が備えられている。さらにヘッドホルダ5には、記録媒体4の搬送方向と交差(本例の場合は、直交)する矢印Y方向(第2の移動方向)に、ヘッドホルダ5を移動させるための機構が備えられている。
【0015】
クリーニング部6は、4つの記録ヘッド2に対応する4つのワイパユニット9を有する。クリーニング部6は駆動モータ(不図示)によって、記録媒体4の搬送方向に沿う矢印A方向(第3の移動方向)にスライドするように構成されている。記録装置1の記録動作時は、
図1および
図2のように、記録部3よりも矢印X1方向の下流側にクリーニング部6が位置する。一方、クリーニング動作時は、
図3のように、記録部3における記録ヘッド2の直下にクリーニング部6が位置する。クリーニング部6は、
図2および
図3中の矢印A方向(第3の移動方向)に移動する。
【0016】
図4は記録ヘッド2の説明図であり、
図4(a)は、記録ヘッド2を記録媒体4の搬送方向から見た図、
図4(b)は、
図4(a)中の下方から記録ヘッド2を見た下面図である。記録ヘッド2のノズルからインクを吐出させるインクジェット方式としては、電気熱変換素子(ヒータ)、ピエゾ素子、静電素子、あるいはMEMS素子などの吐出エネルギー発生素子を用いた種々の方式を採用することができる。記録ヘッド2は、使用が想定される記録媒体4の最大幅をカバーする範囲に亘って、ノズル列42が形成されたフルライン記録ヘッドである。ノズル列42の延在方向、つまりインクを吐出可能なノズルの配列方向は、矢印Xの搬送方向と交差(本例の場合は、直交)する方向である。記録ヘッド2のベース基板40上には、ノズルチップ41が備えられている。ノズルチップ41は、ノズル列42のノズルが形成されたノズル面と、各ノズルに対応する吐出エネルギー発生素子が埋め込まれたノズル基板と、を有する。本例の場合は、4つのノズル列42が平行に形成されている。
【0017】
また、ワイパブレード43が備わるワイパホルダ44は、シャフト45によってガイドされながら、駆動ベルト46によって矢印Y方向に移動される。これにより、記録ヘッド2のノズル面に付着したインクおよびゴミがワイパブレード43によって払拭される。
【0018】
図4(b)の記録ヘッド2においては、1つのベース基板40上に、1つのノズルチップ41が配列されている。しかし記録ヘッド2は、
図5(a)のように、1つのベース基板40上に複数のノズルチップ41が配列された形態であってもよく、また、
図5(b)のように、複数のベース基板40を支持部材48によって繋ぎ合わせた形態であってもよい。
【0019】
図6は、記録装置1の制御系のブロックである。
【0020】
CPU501は、記録装置1のシステム制御を司るプログラムをROM502から読み出して実行し、そのプログラムにしたがってシステム全体を制御する。RAM512は、プログラムを展開する作業領域として用いる。すなわちRAM512は、CPU501が実行する処理に必要なデータおよび入力データなどを一時的に格納する。またCPU501は、クリーニング部6および搬送ユニット7等の動作も制御する。
【0021】
さらにCPU501は、駆動回路507、2値化回路508、画像処理部509を通して、記録ヘッド2による記録動作を制御する。画像処理部509は、入力された記録すべきカラー画像データに対して、所定の画像処理を施す。すなわち、画像処理部509は、例えば、入力されたRGB各色成分の画像データによって再現される色域を、記録装置1によって再現される色域内に写像するための、データ変換を実行する。さらに画像処理部509は、変換されたデータに基づいて、各データが示す色を再現するインクの組み合わせに対応した色分解データ(CMYK各成分濃度データ)を求める処理を行い、各色に分解された色分解データのそれぞれに対して階調変換を行う。
【0022】
2値化回路508は、画像処理部509によって変換された多値の濃度画像データに対してハーフトーン処理などを行ってから、2値データ(ビットマップデータ)に変換する。駆動回路507は、2値化回路508によって得られた2値データなどにしたがって、記録ヘッド2のノズルからインクを吐出させる。
【0023】
不良ノズル補完部510は、不良ノズルの補完データの生成処理(以下、「補完処理」ともいう)を実行する。不良ノズル検出部511は、記録ヘッド2に形成されている複数のノズルのうち、インク滴の吐出状態が不良状態にあるノズル(不良ノズル)を検出する。その際、CPU501は、ROM502から読み出したパターンデータに基づいて、駆動回路507を介して記録ヘッド2を駆動すると共に、記録動作に関連する搬送ユニット7などを制御することにより、記録媒体4に不良ノズル検出用のパターンを記録する。その記録されたパターンを不良ノズル検出部511が読み取ることにより、不良ノズルが検出される。
【0024】
図7は、ライン記録ヘッドを用いるマルチパス記録方式の説明図である。
【0025】
ライン記録ヘッドを用いるシングルパス記録方式においては、記録媒体を搬送方向において前後させることなく、一方向における記録媒体の1回の搬送を伴って画像を記録する。この場合、特に、インクが密集して付与される記録エリアにおいては、各色のインクが互いに滲み合うブリード現象が発生するおそれがある。このブリード現象は、短時間の内に、記録媒体上にインク滴が打ち込まれたときに、各色のインクが記録媒体に吸収する前に互いに混じり合って滲む現象であり、画像の劣化をもたらす。
【0026】
一方、本発明のようなライン記録ヘッドを用いるマルチパス記録方式では、インクが密集する記録エリアに対して、記録媒体の複数の往復搬送を伴って画像を記録するため、単位時間当たりに打ち込まれるインク量が減少する。そのため、ブリード現象は発生しにくい。
【0027】
図7および
図8は、ライン記録ヘッドを用いるマルチパス記録方式として、記録媒体を8回往復移動させて画像の記録を完成させる8パス記録方式の一例の説明図である。パス数は8パスのみに限定されず、2パス以上であればよい。
図7および
図8は、8パス記録方式における1パスから18パスまでの記録動作の説明図であり、
図7は、記録媒体4に対して記録ヘッド2が相対的に移動するものとして、それらの位置関係が表されている。実際には、
図8のように、記録ヘッド2に対して記録媒体4が移動する。
【0028】
1パスから6パスまでは、画像の先端を記録するための記録媒体4の往復搬送(矢印X1およびX2方向の搬送)である。記録媒体4の単位搬送量をXとした場合、1パスおよび2パス時の往復の搬送量はXとなり、3パスおよび4パス時の往復の搬送量は2Xとなり、5パスおよび6パス時の往復の搬送量は3Xとなる。6パスが終了した時点において、記録媒体4の領域A1,A2,A3のそれぞれには、6パス目、4パス目、2パス目の画像が記録される。その後は、画像の記録を伴う記録媒体4の往復の搬送量は4Xとなる。すなわち、7パスおよび8パス時の往復の搬送量は4Xとなり、8パスが終了した時点において、記録媒体4の領域A1の画像が完成する。9パス時の搬送量は5Xとなるものの、領域A1に対する画像の記録を伴わない搬送(「空搬送」ともいう)分の搬送量Cを含むため、画像の記録を伴う記録媒体4の搬送量は4Xである。10パス時の搬送量は4Xである。11パス以降は、9パスと10パスと同様に動作を繰り返すことにより、記録媒体4の領域A1,A2,A3・・・が画像を完成させる。
【0029】
ライン記録ヘッドを用いるシングルパス記録方式において、異なるノズルを用いて記録媒体の搬送方向に沿う記録ライン上の画素を記録することによるマルチパス効果を得るためには、同一色のインクを吐出するためのノズル列を複数備える必要性がある。本例のようなマルチパス記録方式においては、同一色のインクを吐出するためのノズル列を少なくとも1列配備することにより、マルチパス効果によって高画質の画像を記録することができる。つまり、安価な構成のライン記録ヘッドを用いて、記録画像の高画質化を達成することができる。
【0030】
本実施形態においては、
図9および
図10のように、画像の記録デューティーに応じて記録媒体の搬送量を変更する。記録デューティーは、記録媒体の単位領域当たりのインクの付与量に対応し、画像の記録データから求めることができる。
図9および
図10は、
図7および
図8と同様に、記録媒体を8回往復移動させて画像の記録を完成させる8パス記録方式におけるN+1パス目からN+18パス目までの記録動作の説明図である。パス数は8パスのみに限定されず、2パス以上であればよい。
図9は、記録媒体4に対して記録ヘッド2が相対的に移動するものとして、それらの位置関係が表されている。実際には、
図10のように、記録ヘッド2に対して記録媒体4が移動する。
【0031】
記録媒体4の領域A10は、例えば、単位領域当たりのインクの付与量が所定量以上であって、記録デューティーが150%のような高い記録デューティーの記録領域であり、この領域A10に関しては、記録媒体4の搬送量を0.5Xとする。すなわち、N+1パスおよびN+2パス時においては、通常通り、
図7および
図8中の9パスおよび10パスと同様の動作を繰り返す。N+3パス時においては、搬送量を4.5X(=3.5X+C)に変更して領域A10に1パス目の画像を記録し、N+4パス時においては、搬送量を3.5Xに変更して領域A10に2パス目の画像を記録する。N+5パス時においては、搬送量を4X(=3X+C)に変更して領域A10に3パス目の画像を記録し、N+6パス時においては、搬送量を3Xに変更して領域A10に4パス目の画像を記録する。N+7パス時においては、搬送量を3.5X(=2.5X+C)に変更して領域A10に5パス目の画像を記録し、N+8パス時においては、搬送量を2.5Xに変更して領域A10に6パス目の画像を記録する。N+9パス時においては、搬送量を3.5X(=2.5X+C)に変更して領域A10に7パス目の画像を記録し、N+10パス時においては、搬送量を2.5Xに変更して領域A10に8パス目の画像を記録する。
【0032】
その後、単位領域当たりのインクの付与量が所定量未満の領域を順次記録する。すなわち、N+11パスからN+16パスにおいて、搬送量を3X(=2.5X+0.5C)、2.5X、3.5X(=3X+0.5C)、3X、4X(=3.5X+0.5C)、3.5Xに切り換えて順次画像を記録する。N+17およびN+18パスにおいては、搬送量を4.5X(=4X+0.5C)および4Xとし、画像の記録を伴う記録媒体4の搬送量を通常の4Xに戻す。このように、高い記録デューティーの領域A10が存在する場合、記録媒体4の往復の搬送量は、通常の搬送量から段階的に短くなり、N+11パスにおいて領域A10が空搬送(0.5C)された後は、段階的に長くなって通常の搬送量に戻る。
【0033】
記録デューティーは、例えば、600dpiの記録解像度において、記録媒体上に1インチあたり600ドットのインク滴が打ち込まれた状態を記録デューティー100%とする。そして、所定エリアにおける記録デューティー、例えば、128ドット×128ドットの記録領域における記録デューティーの程度を判別し、その判別結果に応じて記録媒体の搬送量を変更する。所定エリア毎に記録デューティーの程度を判別して、1つのエリアのデューティーが所定の閾値を超えたときに、記録媒体の搬送量を変更することができる。また、複数のエリア毎の記録デューティーを平均化、複数のエリアの記録デューティーのうちの一部(最大および最小の記録デューティー)除いて平均化、または、それらを組み合わせて記録デューティーを平均化して、その値を所定の閾値と比較してもよい。
【0034】
記録デューティーは、記録データに基づいて、所定エリアに打ち込まれるインク滴の数をカウントすることによって求めることができる。本例においては、所定エリアに打ち込まれる全ての色のインク滴の数をカウントする。しかし、所定エリアに打ち込まれるインク滴の数は、インク色単位でカウント、2色以上の複数のインク色単位でカウント、または、それらを組み合わせてカウントしてもよい。このようなカウントのタイミングは、例えば、記録媒体の搬送の開始前、記録媒体の搬送方向の反転時、画像の記録前、あるいは、先の記録媒体に対する記録と次の記録媒体に対する記録との間(「ページ間」ともいう)などであってもよい。
【0035】
マルチパス記録により、単位時間当たりのインク滴の打ち込み量は減るものの、記録デューティーの高いエリアにおいては、記録媒体が波打つコックリング現象が発生するおそれがある。コックリング現象によって波打ちが生じた部分は、記録ヘッドに接触して、記録画像の品質の低下および記録ヘッドの損傷を招くおそれがある。記録媒体にインク滴が打ち込まれてから、コックリング現象によって記録媒体の波打ちが発生するまでには、若干の時間が掛かる。そのため、コックリング現象が生じやすい記録デューティーの高いエリアに関しては、そのエリアに対する記録画像を短時間に完成させて、記録ヘッドと対向する期間を短くすることが有効である。
【0036】
本実施形態においては、記録デューティーの高いエリアA10に対する1パス目の記録(N+3パス)から、8パス目の記録(N+10パス)までの間における記録媒体4の往復の搬送量を短くする。つまり、エリアA10に対しる記録時は、記録媒体の往方向の搬送と復方向の搬送との切り換え間隔を短くする。また、本例においては、1パス目の記録(N+3パス)の前のパス(N+2パス)から、記録媒体4の搬送量を短くする。
【0037】
このようにエリアA10に対する画像の記録に要する時間を短くすることにより、コックリング現象によってエリアA10が記録ヘッド2と接するおそれが生じる前に、そのエリアA10に対する画像の記録を終了させることができる。この結果、コックリング現象によって記録媒体に変形が生じたとしても、記録媒体と記録ヘッドとが接触を回避して、記録画像の劣化および記録ヘッドの損傷を抑制することができる。また、画像デューティーの高いエリアがある場合には、そのエリアに対する画像の記録開始時から記録媒体の搬送量を短くしてもよい。この場合は、スループットは低下するものの、同様の効果を得ることができる。さらに、記録媒体の搬送方向が反転する間に、ヘッドホルダ5を矢印Y方向にずらすことにより、記録媒体の搬送方向に沿う記録ライン上の画素を複数の異なるノズルを用いて記録して、ノズル毎におけるインクの吐出特性のバラ付きの影響を抑えることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
図11および
図12は、本発明の第2の実施形態における記録方法の説明図であり、前述した実施形態と同様に、8パス記録方式によって画像を記録する。本例において記録デューティーの高い領域A20は、第1の実施形態における領域A10よりも記録デューティーが高く、その領域A20の記録時に記録媒体の搬送量を変更する。領域A20の記録デューティーは、例えば、250%である。
【0039】
領域A20に関しては、記録媒体4の搬送量を0.25Xとする。すなわち、N+1パスおよびN+2パス時においては、通常通り、
図7および
図8中の9パスおよび10パスと同様の動作を繰り返す。N+3パス時においては、搬送量を3.25X(=2.25X+C)に変更して領域A20に1パス目の画像を記録し、N+4パス時においては、搬送量を3.25Xに変更して領域A20に2パス目の画像を記録する。N+5パス時においては、搬送量を3.5X(=2.5X+C)に変更して領域A20に3パス目の画像を記録し、N+6パス時においては、搬送量を2.5Xに変更して領域A20に4パス目の画像を記録する。N+7パス時においては、搬送量を2.75X(=1.75X+C)に変更して領域A20に5パス目の画像を記録し、N+8パス時においては、搬送量を1.75Xに変更して領域A20に6パス目の画像を記録する。N+9パス時においては、搬送量を2X(=X+C)に変更して領域A20に7パス目の画像を記録し、N+10パス時においては、搬送量を5Xに変更して領域A20に8パス目の画像を記録する。
【0040】
その後、N+11パスからN+16パスにおいて、搬送量を2X(=1.75X+0.25C)、1.75X、2.75X(=2.5X+0.25C)、2.5X、3.5X(=3.25X+0.25C)、3.25Xに切り換えて順次画像を記録する。N+17およびN+18パスにおいては、搬送量を4.25X(=4X+0.25C)および4Xとし、画像の記録を伴う記録媒体4の搬送量を通常の4Xに戻す。このように、高い記録デューティーの領域A20が存在する場合、記録媒体4の往復の搬送量は、通常の搬送量から段階的に短くなり、N+11パスにおいて領域A20が空搬送(0.25C)された後は、段階的に長くなって通常の搬送量に戻る。
【0041】
領域A20のように記録デューティーがより高くなるほど、コックリング現象にともなう記録媒体の変形はより顕著に早く生じる。本実施形態のように、記録媒体の搬送量をより短くすることにより、コックリング現象が生じやすい記録デューティーの高いエリアA20に対する記録画像をより短時間に完成させて、記録ヘッドと対向する期間をより短くすることができる。この結果、記録媒体と記録ヘッドとの接触に起因する記録画像の劣化、および記録ヘッドの損傷の発生をより確実に抑制することができる。
図11(b)は、8パス記録方式における記録デューティーと記録媒体の搬送量との関係の説明図である。前述したように、記録デューティーが100%未満のエリアの記録時の搬送量はXであり、第1の実施形態のように、記録デューティーが100%以上かつ200%未満のエリアA10の記録時の搬送量は0.5Xとなる。また、第2の実施形態のように、記録デューティーが200%以上かつ300以下のエリアA20の記録時の搬送量は0.25Xとなる。4パスまたは6パス等のマルチパス記録方式のパス数に応じて、記録デューティーと搬送量との関係は異なる。
【0042】
(第3の実施形態)
図13および
図14は、本発明の第3の実施形態における記録方法の説明図であり、前述した実施形態と同様に、8パス記録方式によって画像を記録する。本例において記録デューティーが高い領域A20は、第2の実施形態と同様に記録デューティーが250%であり、その領域A20に対する記録の前から、記録媒体の単位搬送量をXから0,5Xに変更する。
【0043】
図9は実施例1に対して、画像dutyの高いエリアにさしかかる手前から記録媒体の搬送量を短くする説明図である。実施例1と同様に8パス記録方法に関するもので、画像dutyの高いエリアは実施例1と同様の250%dutyで、画像にさしかかる手前から送り量をXから0.5Xに変更する。
【0044】
具体的には、N+1パスおよびN+2パス時においては、通常通り、
図7および
図8中の9パスおよび10パスと同様の動作を繰り返す。N+3パス時には搬送量を4.5X(=3.5X+C)に変更し、N+4パス時には搬送量を3.5Xに変更し、N+5パス時には搬送量を4X(=3X+C)に変更し、N+6パス時には搬送量を3Xに変更する。N+7パス時には搬送量を3.5X(=2.5X+C)に変更し、N+8パス時には搬送量を2.5Xに変更する。N+9パス時には、搬送量を3X(=2X+C)に変更して領域A20に1パス目の画像を記録し、N+10パス時には、搬送量を2Xに変更して領域A20に2パス目の画像を記録する。N+11パス時には、搬送量を2.5X(=2X+0.5C)に変更して領域A20に3パス目の画像を記録し、N+12パス時には、搬送量を2Xに変更して領域A20に4パス目の画像を記録する。。N+13パス時には、搬送量を2.5X(=2X+0.5C)として領域A20に5パス目の画像を記録し、N+12パス時には、搬送量を2Xとして領域A20に6パス目の画像を記録する。同様に、N+15パス時には、搬送量を2.5X(=2X+0.5C)として領域A20に7パス目の画像を記録し、N+16パス時には、搬送量を2Xとして領域A20に8パス目の画像を記録する。その後、N+17パス時には搬送量を3X(=2.5X+0.5C)に変更し、N+18パス時には搬送量を2.5Xに変更する。
【0045】
このように、画像の記録を伴う記録媒体の搬送量(空搬送を除く)が4Xから3.5Xに切り替わり(N+3,N+4パス)、その後、3X(N+5,N+6パス)、2.5X(N+7,N+8パス)、2X(N+9からN+16パス)と順次切り替わる。そして、エリアA20の記録が完了した後、画像の記録を伴う記録媒体の搬送量(空搬送を除く)は、第1の実施形態と同様に2.5X(N+17,N+18パス)、3X、3.5X、4Xと順次切り替わってから、定常的な搬送量4Xに戻る。
【0046】
(第4の実施形態)
図15(a)は、環境温度および湿度に応じて、画像の記録を伴う記録媒体の搬送量(空搬送を除く)を変更する実施形態の説明図である。温度および湿度(20℃/50%)の環境下において、記録デューティーが50%のエリア、第1の実施形態のような150%のエリアA10、および第2の実施形態のような250%のエリアA20の記録時の搬送量は、X、0.5X、および0.25Xである。また、温度および湿度(10℃/20%)の環境下において、記録デューティーが50%のエリア、150%のエリアA10、および250%のエリアA20の記録時の搬送量は、1.2X、0.6X、および0.3Xに変更する。また、温度および湿度(30℃/80%)の環境下において、記録デューティーが50%のエリア、150%のエリアA10、および250%のエリアA20の記録時の搬送量は、0.8X、0.4X、および0.2Xに変更する。
【0047】
温度が高い環境および湿度が高い環境においては、記録媒体のコックリング現象がより顕著に生じるため、記録デューティーが高い記録媒体のエリアの変形は、より短時間で発生する。そのため、温度よび湿度が高い環境下においては、記録デューティーの高い記録媒体のエリアに対する記録時の搬送量は、より短くすることが有効となる。これとは逆に、温度および湿度が低い環境下においては、記録媒体の搬送量を大きくする。このように基準の搬送量Xと、記録デューティーが高い記録媒体のエリアの記録時の搬送量と、を関係付ける係数は、温度よび湿度が高いほど小さくし、温度および湿度が低いほど大きくする。このような係数は、記録方法のパス数に応じて最適値が異なるため、
図15(a)のような値に限定されない。
【0048】
(第5の実施形態)
図15(b)は、記録媒体の種類および厚さに応じて、画像の記録を伴う記録媒体の搬送量(空搬送を除く)を変更する実施形態の説明図である。記録媒体が薄いコート紙の場合、記録デューティーが50%のエリア、第1の実施形態のような150%のエリアA10、および第2の実施形態のような250%のエリアA20の記録時の搬送量は、X、0.5X、および0.25Xである。また、記録媒体が厚いコート紙の場合には、記録デューティーが50%のエリア、150%のエリアA10、および250%のエリアA20の記録時の搬送量は、1.2X、0.6X、および0.3Xに変更する。また、記録媒体が普通紙の場合には、記録デューティーが50%のエリア、150%のエリアA10、および250%のエリアA20の記録時の搬送量は、0.8X、0.4X、および0.2Xに変更する。
【0049】
記録媒体が同じ種類のコート紙である場合、それが薄いほど、コックリング現象がより顕著に生じて、記録デューティーが高い記録媒体のエリアの変形はより短時間で発生する。そのため、記録媒体が薄いほど、記録デューティーの高い記録媒体のエリアに対する記録時の搬送量は、より短くすることが有効となる。記録媒体が薄いほどコックリング現象が顕著に生じる理由は、記録媒体の単位体積当たりにおけるインクの水分量が多くなって、変形が生じやすくなるからである。また、普通紙はコート紙よりもコックリング現象がより顕著に生じ、記録デューティーが高い普通紙のエリアの変形は、より短時間で発生する。そのため、記録デューティーが高い普通紙のエリアに対する記録時の搬送量は、小さくすることが有効である。普通紙は、コート紙よりも剛性が低いため、コックリング現象による変形も大きくなる。また、このような剛性の差は、コート紙にインク受容層があり、普通紙にはインク受容層が無いことも一因である。また、基準の搬送量Xと、記録デューティーが高い記録媒体のエリアの記録時の搬送量と、を関係付ける係数は、記録媒体の種類および厚さに応じて変更する。このような係数は、記録方法のパス数に応じて最適値が異なるため、
図15(b)のような値に限定されない。