(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
空調機により空調された空気を、作業が行われる室の下部に設けられた吹出口から室内に給気し、前記室の上部に設けられた吸込口から室内空気を排気して、前記室内の空調を行う方法であって、
前記空調機は、外気を加熱処理および冷却処理して前記吹出口から前記室内に給気する外気処理空調機と、室内から排気された還気を加熱処理および冷却処理して前記吹出口から前記室内に給気する還気処理空調機を含み、
天井近傍には前記空調機により冷却処理した給気を吹き出す吹出口が設けられてなく、
前記室内で作業が行われる時には、前記空調機により冷却処理した給気を前記吹出口から前記室内に吹き出し、前記吸込口から室内空気を排気する置換還気方式により、室内下方の作業空間を15℃以下、作業空間における風速を0.20m/s以下として作業者にドラフトを感じさせず、吹き出された空気が室内の熱負荷によって加熱されて室の上部に上昇し、天井近傍の相対湿度を80%以下で室内を空調することで天井近傍の結露発生を防止し、
前記室内を乾燥させる時には、前記空調機により加熱処理した給気を前記吹出口から前記室内に吹き出し、前記吸込口から室内空気を排気し、
前記還気処理空調機は、前記室内で作業が行われる時には、前記室内の熱負荷によって加熱されて上昇した室内空気を吸い込んで冷却処理して給気し、前記室内を乾燥させる時には、加熱処理した空気を給気する中温パッケージであり、
乾燥を行うために別途温風を供給する装置を設けないことを特徴とする、空調方法。
前記室内を洗浄する時には、冷却処理および加熱処理していない外気を給気として前記吹出口から前記室内に吹き出し、前記吸込口から室内空気を排気することを特徴とする、請求項2に記載の空調方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、食品や飲料などを取り扱う食品工場等の室内では、加工や充填などの作業の際には菌の増殖を防止するために所定の低温環境に維持され、また、衛生上の観点から、加工や充填などの作業が終了した後に、洗剤や熱湯、水等を用いて室内を洗浄する工程が行われる。この洗浄工程では、室内に湿気が籠った状態となり、また、床面や壁面、天井面が濡れた状態となるため、そのまま放置すると結露やかびの原因となり、衛生的に問題を生じる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、食品工場等の室内を省エネルギーで快適かつ正常な低温環境に保つことができ、かつ、洗浄後は室内を速やかに乾燥させることができる空調方法と空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明によれば、空調機により空調された空気を、作業が行われる室の下部に設けられた吹出口から室内に給気し、前記室の上部に設けられた吸込口から室内空気を排気して、前記室内の空調を行う方法であって、
前記空調機は、外気を加熱処理および冷却処理して前記吹出口から前記室内に給気する外気処理空調機と、室内から排気された還気を加熱処理および冷却処理して前記吹出口から前記室内に給気する還気処理空調機を含み、 天井近傍には前記空調機により冷却処理した給気を吹き出す吹出口が設けられてなく、前記室内で作業が行われる時には、前記空調機により冷却処理した給気を前記吹出口から前記室内に吹き出し、前記吸込口から室内空気を排気する置換還気方式により、室内下方の作業空間を15℃以下、
作業空間における風速を0.20m/s以下として作業者にドラフトを感じさせず、吹き出された空気が室内の熱負荷によって加熱されて室の上部に上昇し、天井近傍の相対湿度を80%以下で室内を空調することで天井近傍の結露発生を防止し、前記室内を乾燥させる時には、前記空調機により加熱処理した給気を前記吹出口から前記室内に吹き出し、前記吸込口から室内空気を排気
し、前記還気処理空調機は、前記室内で作業が行われる時には、前記室内の熱負荷によって加熱されて上昇した室内空気を吸い込んで冷却処理して給気し、前記室内を乾燥させる時には、加熱処理した空気を給気する中温パッケージであり、乾燥を行うために別途温風を供給する装置を設けないことを特徴とする、空調方法が提供される。
【0009】
この空調方法において、前記室内で作業が行われた後に、前記室内を洗浄し、前記室内を洗浄した後、前記室を乾燥させても良い。この場合、前記室内を洗浄する時には、冷却処理および加熱処理していない外気を給気として前記吹出口から前記室内に吹き出し、前記吸込口から室内空気を排気しても良い。また、前記室内で作業が行われる時の排気量に比べて、前記室を乾燥させる時の排気量が多くても良い。また、前記吹出口は、給気に旋回成分を与えて前記室内に吹き出すものであっても良い。
【0010】
また本発明によれば、作業が行われる室の空調を行う空調システムであって、 前記室の下部に設けられた吹出口と、前記吹出口から室内に給気を供給する空調機と、前記室の上部に設けられた吸込口と、吸込口から室内空気を排気する排気ファンを備え、前記空調機は、空気を加熱処理および冷却処理が可能な熱交換器と、前記熱交換器で加熱処理または冷却処理した空気を送風する送風ファンを備え、
前記空調機は、外気を加熱処理および冷却処理して前記吹出口から前記室内に給気する外気処理空調機と、室内から排気された還気を加熱処理および冷却処理して前記吹出口から前記室内に給気する還気処理空調機を含み、天井近傍には前記空調機により冷却処理した給気を吹き出す吹出口が設けられてなく、前記室内で作業が行われる時には、前記空調機で冷却処理した給気が前記吹出口から前記室内に吹き出され、前記吸込口から室内空気が排気されて、置換還気方式により、室内下方の作業空間を15℃以下、
作業空間における風速を0.20m/s以下として作業者にドラフトを感じさせず、吹き出された空気が室内の熱負荷によって加熱されて室の上部に上昇し、天井近傍の相対湿度を80%以下で室内を空調することで天井近傍の結露発生を防止し、前記室内を乾燥させる時には、前記空調機で加熱処理した給気が前記吹出口から前記室内に吹き出され、前記吸込口から室内空気が排気され
、前記還気処理空調機は、前記室内で作業が行われる時には、前記室内の熱負荷によって加熱されて上昇した室内空気を吸い込んで冷却処理して給気し、前記室内を乾燥させる時には、加熱処理した空気を給気する中温パッケージであり、乾燥を行うために別途温風を供給する装置を設けないことを特徴とする、空調システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、室内で作業が行われる時には、空調機で冷却処理した給気を吹出口から室内に吹き出しつつ、吸込口から室内空気を排気することにより、食品工場等の室内を省エネルギーで快適かつ正常な環境に保つことができる。また、洗浄後において室内を乾燥させる時には、空調機で加熱処理した給気を吹出口から前記室内に吹き出しつつ、吸込口から室内空気を排気することにより、室内を速やかに乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる空調システムを説明するための概略構成図である。
【
図3】空調空間の室内側から見て反時計回転方向の旋回成分を給気に与えるようにフィンを取り付けた吹出口の正面図である。
【
図4】空調空間の室内側から見て時計回転方向の旋回成分を給気に与えるようにフィンを取り付けた吹出口の正面図である。
【
図5】隣り合う吹出口から吹き出される給気の旋回成分を交互に逆の回転方向とした吹出口の説明図である。
【
図6】隣り合う吹出口から吹き出される給気の旋回成分を同じ回転方向とした吹出口の説明図である。
【
図7】上下に配列された吹出口と横に配置された吹出口のいずれの間においても,隣り合う吹出口から吹き出される給気の旋回成分が,互いに逆の回転方向の関係となるように設定された吹出口の説明図である
【
図8】上下に配列された吹出口の間では,隣り合う吹出口から吹き出される給気の旋回成分が,互いに逆の回転方向の関係となるが,横に配置された吹出口の間では,隣り合う吹出口から吹き出される給気の旋回成分が,互いに同じ回転方向の関係となるように設定された吹出口の説明図である。
【
図9】給気チャンバの上方にカバー面を設けた実施の形態を示す側面図である。
【
図10】給気チャンバの上方にカバー面を設けた実施の形態を示す正面図である。
【
図11】給気チャンバの底面をドレンパン構造にした実施の形態を示す正面図である。
【
図12】本発明の空調システムの実施例における、作業時での室の床上1mの位置における風速分布を示すグラフである。
【
図13】本発明の空調システムの実施例における、作業時における室の垂直方向の温度分布を示すグラフである。
【
図14】本発明の空調システムの実施例における、作業時における室の垂直方向の相対湿度分布を示すグラフである。
【
図15】夏季において、低温パッケージを用いた混合方式で空調運転を行った場合と、本発明の空調システムで空調運転を行った場合を、作業時、洗浄時、乾燥時について動力を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる空調システム1の構成を説明するための説明図である。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
図1に示すように、食品や飲料などを取り扱う食品工場等の室10の内部は、天井、床及び側壁で区画されている。室10の内部には、食品や飲料の加工、充填などの作業を行うための作業台11が置かれており、作業台11の周りには、作業者12が存在している。
【0016】
室10内の下部には、給気チャンバ15が複数箇所に設置されており、室10の天井面には、室内空気の吸込口16が複数箇所に設けられている。給気チャンバ15の前面には、
図3に示すように、室10内に向かって給気SAを吹き出すための複数の吹出口17が縦横に並べて配置されている。
【0017】
複数台の給気チャンバ15のうち、一部の給気チャンバ15には、外気処理空調機20で加熱処理または冷却処理された給気SAが供給され、他の一部の給気チャンバ15には、還気処理空調機21で加熱処理または冷却処理された給気SAが供給される。図示の形態では、外気処理空調機20と還気処理空調機21は、室10の上方空間22に設置されている。
【0018】
外気処理空調機20の上流部(
図1において、外気処理空調機20の右端部)25には、外気取り入れダクト26が接続されている。外気取り入れダクト26の途中には、ロールフィルタ27が装着されている。外気処理空調機20の下流部(
図1において、外気処理空調機20の左端部)30には、給気チャンバ15に給気するための給気ダクト31が接続されている。外気処理空調機20の内部において、上流部25と下流部30の間には、外気OAを加熱処理および冷却処理する熱交換器35と、給気ファン36が設けられている。熱交換器35には、配管37を介して熱媒が供給されている。
【0019】
還気処理空調機21の上流部(
図1において、還気処理空調機21の左端部)40には、還気ダクト41が接続されている。還気処理空調機21の下流部(
図1において、還気処理空調機21の右端部)42には、給気チャンバ15に給気するための給気ダクト31が接続されている。還気処理空調機21の内部において、上流部40と下流部42の間には、還気RAを加熱処理および冷却処理する熱交換器45と、給気ファン46が設けられている。熱交換器45には、配管37を介して熱媒が供給されている。
【0020】
給気チャンバ15の前面に形成された各吹出口17には、
図3、4に示すように、複数のフィン50がそれぞれ装着されている。各吹出口17の中央に支持部材51が設けてあり、各フィン50は、この支持部材51の周りに適当な等間隔で放射状に取り付けてある。また、吹出口17から室10の内部に向かって吹き出される給気SAに旋回成分を与えるべく、各フィン50は吹出口17の中心軸17’に対してそれぞれ傾斜して配置されており、
図3と
図4では、フィン50の傾斜方向が逆向きの関係になっている。
【0021】
このように、各吹出口17に傾斜したフィン50を放射状に取り付けたことにより、給気チャンバ15の内部から吹出口17に向かって流れ込んできた給気SAを、吹出口17を通過する際に、各フィン50に沿わせて強制的に流すことができる。これにより、吹出口17から室10内に向かって吹き出す給気SAに、中心軸17’を中心とする旋回成分を与えるようになっている。
【0022】
ここで、
図3、4では、フィン50の傾斜方向が互いに逆向きであり、
図3に示したフィン50によっては、吹出口17を通過する際に、給気チャンバ15の前面を室10の内部から見た場合において、反時計回転方向の旋回成分が給気SAに与えられる。一方、
図4に示したフィン50によっては、吹出口17を通過する際に、給気チャンバ15の前面を室10の内部から見た場合において、時計回転方向の旋回成分が給気SAに与えられる。
【0023】
前述のように給気チャンバ15の前面には、複数の吹出口17が縦横に並べて配置されているが、隣り合う吹出口17から吹き出される給気SAの旋回成分は、互いに逆の回転方向の関係になっている。即ち、例えば
図5に示すように上下方向に並んだ4つの吹出口17a、17b、17c、17dを例にして説明すると、1番上の吹出口17aと上から3番目の吹出口17cでは、フィン50の傾斜方向が
図3で説明した状態であり、これら吹出口17aと吹出口17cからは、反時計回転方向の旋回成分を与えられた給気SAが吹き出される。一方、上から2番目の吹出口17bと4番目の吹出口17dでは、フィン50の傾斜方向が
図4で説明した状態であり、これら吹出口17bと吹出口17dからは、時計回転方向の旋回成分を与えられた給気SAが吹き出される。このように、隣り合う吹出口17aと吹出口17b、吹出口17bと吹出口17c、吹出口17cと吹出口17dの間において、それぞれ互いに逆の回転方向に旋回する給気SAを吹き出すようになっている。
【0024】
即ち、
図6に示すように、上下方向に並んだ4つの吹出口17a、17b、17c、17dからいずれも同じ回転方向に旋回する給気SA(
図6に示す例では、いずれも反時計回転方向に旋回する給気SA)を吹き出した場合、吹出口17aと吹出口17bの間、吹出口17bと吹出口17cの間及び吹出口17cと吹出口17dの間において、互いに打ち消しあう方向に給気SAが吹き出されることとなる。そうすると、各吹出口17a、17b、17c、17dから吹き出される給気SAの旋回成分が相殺されてしまう。
【0025】
一方、
図5で説明したように、各吹出口17a、17b、17c、17dから吹き出す給気SAの旋回成分を交互に逆の回転方向とすれば、吹出口17aと吹出口17bの間、吹出口17bと吹出口17cの間及び吹出口17cと吹出口17dの間のいずれにおいても、互いに同じ方向に給気SAが吹き出されることとなるので、各吹出口17a、17b、17c、17dから吹き出される給気SAの旋回成分が相殺されず、お互いに旋回運動を助長しあうようになる。
【0026】
なお、
図5では、上下に配列された吹出口17の関係について説明したが、先に
図2で説明したように、給気チャンバ15の前面には複数の吹出口17が縦横に並べて配置されている。そこで、上下に配列された吹出口17の関係のみならず、横に配置された吹出口17の間においても、隣り合う吹出口17から吹き出される給気SAの旋回成分が、互いに逆の回転方向の関係となるように、各吹出口17に設けられたフィン50の傾斜方向が設定されている。
【0027】
図1に示すように、室10の天井面において複数箇所に設けられた吸込口16のうち、一部の吸込口16には、排気ファン55を備えた排気ダクト56が接続されている。また、他の一部の吸込口16には還気ダクト41が接続され、還気処理空調機21の上流部40に連通させられている。これにより、室10の上部に溜まった室内空気(室10内において作業者12などの熱負荷によって加熱された空気)は、吸込口16を経て排気され、その一部は排気ダクト56を経て排気EAとして外部に排出されるとともに、残りの一部が還気処理空調機21の上流部40に還気RAとして導入されるようになっている。
【0028】
また、室10の内部には、室10内の空気を強制的に天井に向けて流動させる天井ファン57が設置されている。
【0029】
さて、以上のように構成された置換換気システム1では、室10内で例えば食品や飲料の加工、充填などの作業が行われる時には、外気処理空調機20の熱交換器35と還気処理空調機21の熱交換器45には、冷却用の熱媒が供給される。そして、外気処理空調機20には、外気取り入れダクト26を介してロールフィルタ27で濾過された外気OAが導入され、冷却処理される。こうして、外気処理空調機20で冷却処理されて作られた給気SAが、給気ファン36によって給気ダクト31を介して給気チャンバ15に供給される。また、還気処理空調機21には、室10内から排出された還気RAが還気ダクト41を介して導入され、冷却処理される。こうして、還気処理空調機21で冷却処理されて作られた給気SAが、給気ファン46によって給気ダクト31を介して給気チャンバ15に供給される。
【0030】
こうして、外気処理空調機20および還気処理空調機21で冷却処理された給気SAが、複数の給気チャンバ15を経て室10内に供給される。そして、給気チャンバ15前面の吹出口17を通過する際に、吹出口17に装着されたフィン50により、給気SAに対して旋回成分が与えられ、室10内に向かって、各吹出口17から旋回しながら給気SAが吹出される。
【0031】
すると、各吹出口17から吹き出した給気SAに、室10内の空気が誘引されて一緒に移動する誘引作用がはたらく。この場合、図示の空調システム1にあっては、吹出口17から吹き出す給気SAに旋回成分が与えられるので、給気SAに誘引される室10内の空気の誘引量(誘引比)が増加する。これに伴い、運動量保存則に従って給気SAの速度は、各吹出口17から吹き出した後、速やかに減速することとなる。なおこの場合、吹出口全体における給気SAの平均風速は1m/s以下、例えば0.7m/sにされる。
【0032】
こうして室10内に供給された給気SAは、温度差により、室10内の下方に下降するように流れ、室10内の下方の作業空間を低速で満たしていき、作業空間を低温な環境に保つことが可能となる。これにより、食品や飲料の加工、充填などの作業が行われる作業空間が好適な低温環境(例えば15℃以下や10℃以下等)に保たれる。また、室10内に供給される給気SAに旋回成分が与えられ、速やかに減速するので、作業空間にいる作業者12にドラフトを感じにくくさせて不快感を低減することにより、作業性を向上させることができる。例えば、前述のように食肉加工工場などでは、作業領域を例えば15℃以下や10℃以下等の低温環境に維持することが求められる。特にこのような低温環境においては、ドラフトが生じると、作業者12が寒く感じて著しく作業性が低下するが、本発明の空調システムでは、これを低減することができる。
【0033】
一方、室10内には、発熱体としての作業者12などが存在しているので、室10内に供給されて作業者12やその他の発熱機器類などに熱的に接触した給気SAは、やがて加熱され、緩やかに上昇する。その上昇流により、室10内において作業台11や作業者12の周りに生じた塵埃やガスなどの汚染物質を室10内の上方に搬送することができる。
【0034】
そして、室10内の上部に溜まった室内空気(加熱された空気)は、攪拌されることなく、即ち、室10内下方の作業空間などの温度成層を乱すことなく、吸込口16及び排気ダクト56を経て、排気ファン56によって外部に排気EAされる。また、室10内から排気された一部の空気は、還気RAとして還気処理空調機21に導入され、冷却処理された後、給気SAとなって、再び給気チャンバ15から室10内に供給される。
【0035】
こうして、作業時には、低温の給気SAを室10内の下方に供給しつつ、室10の上部から、加熱空気と共に塵埃やガスなどの汚染物質を排気することにより、室10内の空調が行われ、室10内の下方は清浄な給気SAの低温環境に保たれる。
【0036】
次に、こうして室10内で作業が行われた後は、室10内を洗浄する工程が行われる。この洗浄工程では、洗剤や熱湯、水等を用いて室内の洗浄が行われる。なお、洗浄中は、室10内に湯気やミストが発生するので、外気処理空調機20の給気ファン36を稼働させ、外気OAを給気チャンバ15から室10内に導入し、室10内の空気を、吸込口16及び排気ダクト56を経て、排気ファン56によって速やかに外部に排気EAすると良い。この場合、食肉加工等の作業時とは異なり、室内を低温環境にする必要がないため、外気処理空調機20の熱交換器35と還気処理空調機21の熱交換器45への熱媒の供給は停止させることができ、これにより省エネを図ることができる。
【0037】
一方、洗浄工程では室内に湿気が籠った状態となり、また、床面や壁面、天井面が濡れた状態となるので、そのまま放置すると結露やかびの原因となり、衛生的に問題を生じる恐れがある。そこで、洗浄工程を終了した後は、室10内を乾燥させる工程を実施する。
【0038】
このように室10内を乾燥させる時には、外気処理空調機20の熱交換器35には、加熱用の熱媒が供給される。そして、外気処理空調機20には、外気取り入れダクト26を介してロールフィルタ27で濾過された外気OAが導入され、加熱処理される。こうして、外気処理空調機20で加熱処理されて作られた給気SAが、給気ファン36によって給気ダクト31を介して給気チャンバ15に供給される。また一方で、室10内の空気を、吸込口16及び排気ダクト56を経て、排気ファン56によって速やかに外部に排気EAする。これにより、室10内に加熱処理された給気SAを供給して、速やかに乾燥させることができ、結露やかびの発生を防止できるようになる。
【0039】
なお、室10内を乾燥させる場合は、外気処理空調機20の給気ファン36の動力を増やし、室10内で作業が行われる時の外気処理空調機20の給気量に比べて、室10を乾燥させる時の外気処理空調機20の給気量が多くなるように設定することが好ましい。この場合、給気量の増加の伴い、排気ファン56の動力も増やし、排気量を多くするようにする。給気量や排気量を増加させる手段としては、インバータ制御やファンの運転台数増し等が考えられる。さらに、室10内を乾燥させる場合は、天井ファン57を稼働させ、室10内の空気を強制的に天井に向けて流動させると良い。これにより、室10内の乾燥を早め、特に乾燥させにくい天井も速やかに乾燥させ、また、湿分を含んだ空気を速やかに室外に排気させることができ、結露やかびの発生をより効果的に防止できるようになる。
【0040】
また、室10内を乾燥させる場合は、還気処理空調機21の熱交換器45への熱媒の供給は停止しても構わない。あるいは、還気処理空調機21において、室10内から排出された還気RAを還気処理空調機21に取り込み、還気処理空調機21で加熱処理した給気SAを給気チャンバ15に供給してもよい。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0042】
図1では、外気OAを処理する外気処理空調機20と還気RAを処理する還気処理空調機21を別々に分けた形態を示したが、同じ空調機に外気OAと還気RAを導入して処理しても良い。なお、
図1に示した実施の形態のように外気OAを処理する外気処理空調機20と還気RAを処理する還気処理空調機21を別々に分ける場合、例えば、外気処理空調機20では常に一定風量で給気SAを供給し、還気処理空調機21では外気処理空調機20の給気SAよりも低い温度の給気SA(例えば、外気処理空調機20の給気SAが13℃に対して、還気処理空調機21の給気SAが10℃)を風量可変に供給し、室10内の作業域の温度に応じて還気処理空調機21の給気SAの風量を増減させることで、室10内の作業域の温度を一定に保つことができる。また、
図1に示した実施の形態のように、吸込口16から排気する室内空気は、一部を排気EAとして外部に排出し、残りの一部を還気RAとして再利用しても良いし、あるいは、吸込口16から排気する室内空気の全部を排気EAとして外部に排出しても良く、また、吸込口16から排気する室内空気の全部を還気RAとして再利用しても良い。
【0043】
ここで、例えば食肉加工工場では、加工などの作業の時には菌の増殖を防止するために作業領域を所定の低温環境(例えば15℃以下や10℃以下等)に維持することが求められ、また、作業終了後には室10内を洗浄した後、加熱処理した空気を供給して室10内を乾燥する。混合空調方式で前述の低温環境を実現するには、低温パッケージを用いる必要が生じるが、低温パッケージは暖房運転ができないため、室10内の乾燥を行うためには温風を供給するための装置を別途設置する必要がある。低温パッケージの製品の型式として、例えば、PCTFX−P245LA(三菱電機(株)製)、PCTFS−P375LA(三菱電機(株)製)などが例示される。
【0044】
しかし、本実施形態では、置換換気方式として室10の上部に吸込口16を設けてあるので、還気処理空調機21は室10の上部に溜まった加熱された空気を吸い込む。したがって、還気処理空調機21の吸込温度を、混合空調方式と比較して高くすることができるので、還気処理空調機21に中温パッケージを用いることができる。中温パッケージであれば暖房運転が可能なので、室10内の洗浄後の乾燥を行うために別途温風を供給する装置を設置する必要がなく、システム全体を安価に構成することができる。中温パッケージの製品の型式として、例えば、RAS−AP280LVH2(日立アプライアンス(株)製)などが例示される。
【0045】
また
図3、4では、支持部材51に複数のフィン50を放射状に取り付けた例を説明したが、各吹出口17に装着されるフィン50の構成は、この形態に限定されない。例えば本出願人が先に特開平9-250803号の
図5で開示した旋回流形成板の如き、平板からフィンを打ち抜いて形成した構成を採用しても良い。いずれにしても、旋回成分を与えることができる構成であれば良い。また、給気チャンバ15の前面に縦横に並べて配置された複数の吹出口17において、
図7に示すように、上下に配列された吹出口17と横に配置された吹出口17のいずれの間においても、隣り合う吹出口17から吹き出される給気SAの旋回成分が、互いに逆の回転方向の関係となるように設定されていてもよい。また一方、
図8に示すように、上下に配列された吹出口17の間では、隣り合う吹出口17から吹き出される給気SAの旋回成分が、互いに逆の回転方向の関係となるが、横に配置された吹出口17の間では、隣り合う吹出口17から吹き出される給気SAの旋回成分が、互いに同じ回転方向の関係となるように設定されていてもよい。また逆に、図示はしないが、横に配列された吹出口17の間では、隣り合う吹出口17から吹き出される給気SAの旋回成分が、互いに逆の回転方向の関係となるが、上下に配置された吹出口17の間では、隣り合う吹出口17から吹き出される給気SAの旋回成分が、互いに同じ回転方向の関係となるように設定されていてもよい。また、全部の吹出口17から吹き出される給気SAの旋回成分が、いずれも同じ回転方向の関係となるように設定されていてもよい。更に、各吹出口17から吹き出される給気SAの旋回成分が、不規則に同じ回転方向となったり逆の回転方向となるように設定されていてもよい。各吹出口17から吹き出される給気SAの旋回成分の回転方向は、任意に設定できる。
【0046】
また、
図1に示す本実施形態のように、給気ダクト31および給気チャンバ15が室10内に設置される場合、
図9、10に示すように、給気チャンバ15の上面に接続される給気ダクト31を覆うように、カバー面60を設けることが好ましい。この場合、カバー面60の前面を、吹出口17のある給気チャンバ15の前面を含む、室10内に露出した側周面と同一面に配置し、これを天井面まで伸ばせば、室10内で発生した塵埃などが給気チャンバ15の上面に溜まることが無く、衛生的である。なお、同様の理由から、給気チャンバ15や給気ダクト31を室10の壁の中に収納しても良い。なお、カバー面60には、例えば断熱パネルを用いる。その表面は、洗浄によって腐食しないようにSUSやめっき鋼板、塗装鋼板などで構成すると良い。
【0047】
また、
図11に示すように、給気チャンバ15の底面61を、支持部材62によって室10の床面から上方に持ち上げて設置しても良い。この場合、給気チャンバ15の底面61を傾斜させ、その最下部に排水口63を設けたドレンパン構造とすれば、洗浄工程を行う際に、給気チャンバ15の内部まで水洗した際に、洗浄液を排水口63から速やかに排出でき、給気チャンバ15の内部まで清潔にできるようになる。なお、給気チャンバ15の内部を水洗しやすくするために、例えば給気チャンバ15の前面を開放できる構造とすることが望ましい。また、給気チャンバ15の前面をメッシュやパンチングメタルなどで保護しても良い。なお、洗浄によって腐食しないように、給気チャンバ15はSUSやめっき鋼板、塗装鋼板などで構成すると良い。
【0048】
また、吸込口16を室10の天井に形成した例を示したが、壁面の上方に吸込口16を設けても良い。また、排気ファン55を省略し、室10内の下方に供給した給気SAによって、室10の上部に溜まった加熱空気を順次押し出すようにしても良い。更に、本発明の空調システムは、食品や飲料などを取り扱う食品工場等の室10の空調に限らず、人間や各種機器類などが存在する種々の室の空調について適用できる。
【実施例】
【0049】
本発明の空調システムについて、実施例を行った。
図12は、作業時における室の床上1mの位置における風速分布を示すグラフである。横軸と縦軸は基準とする壁面からの距離を示し、X方向4〜36m、Y方向3.75〜26.25mの範囲で風速分布を示す。図中斜線部分の風速は0.10〜0.20m/sであり、無印部分(斜線部分のその他の部分)の風速は0.00〜0.10m/sであった。このように、本発明の空調システムでは、作業空間にいる作業者にドラフトをほとんど感じさせない。
【0050】
図13は、作業時における室の垂直方向の温度分布を示すグラフである。測定位置A、B、Cを
図12に示した。このように、本発明の空調システムでは、床上1m当りの作業空間では11℃程度となり、天井近傍では16℃程度となり、作業空間だけを好適な低温環境に冷房できていた。
【0051】
図14は、作業時における室の垂直方向の相対湿度分布を示すグラフである。測定位置A、B、Cを
図12に示した。このように、本発明の空調システムでは、ウェットな生産環境でも天井近傍の相対湿度が80%以下となって結露が無く、カビが生えにくい環境を実現できた。
【0052】
図15は、夏季において、低温パッケージを用いた混合方式で空調運転を行った場合と、本発明の空調システムで空調運転を行った場合を、作業時(稼働)、洗浄時(洗浄)、乾燥時(乾燥)について動力を比較したグラフである。作業時、洗浄時、乾燥時の何れにおいても、混合方式の従来例に比べて本発明の空調システムは約半分程度の省エネとなった。