特許第6961375号(P6961375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961375
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   G03G15/16 103
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-68880(P2017-68880)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-169578(P2018-169578A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 健太
【審査官】 三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−020006(JP,A)
【文献】 特開2008−185612(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0214036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成される像担持体と、
前記像担持体からトナー像が転写される無端状の中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラと、
前記中間転写ベルトの内周面に接触して一次転写部を形成し、転写バイアスが印加されることで前記像担持体に担持されたトナー像を前記中間転写ベルトへ転写する一次転写ローラと、
前記中間転写ベルトの外周面に接触して二次転写部を形成するように構成され、前記中間転写ベルトから記録材にトナー像を転写する二次転写ローラと、
前記中間転写ベルトに接触し、前記中間転写ベルトをクリーニングするクリーニング部材と、を備えた画像形成装置において、
前記複数の張架ローラは、前記中間転写ベルトの回転方向において、前記一次転写部よりも上流で、前記二次転写部よりも下流に設けられた、第1の上流ローラと、前記中間転写ベルトを介して前記クリーニング部材と対向する第2の上流ローラと、を備え、
前記第1の上流ローラ、前記第2の上流ローラ、及び、前記一次転写ローラはいずれも金属ローラであり、
前記第1の上流ローラは、外周面に螺旋状の溝が形成され、
前記第2の上流ローラは、前記第1の上流ローラよりも外径が大きく、外周面に螺旋状の溝が形成されておらず、
前記一次転写ローラは、表面の最大高さRyが25μm以下である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の上流ローラは、前記複数の張架ローラのうち、最も外径が小さい、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記溝は、前記第1の上流ローラの軸方向に亙って、300μm以上400μm以下のピッチで形成されている、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記溝は、深さが10μm以上40μm以下である、
ことを特徴とする、請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリーニング部材は、前記中間転写ベルトをクリーニングするブレードであり
前記複数の張架ローラのうちの前記第2の上流ローラ、前記中間転写ベルトに張力を付与するテンションローラである
ことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を有する複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置として、例えば、像担持体としての感光ドラムから中間転写ベルトにトナー像を転写し、中間転写ベルトから記録材にトナー像を転写する構成が従来から知られている。中間転写ベルトは、複数の張架ローラに張架され、また、中間転写ベルトの内周面には、電圧が印加されることで感光ドラムから中間転写ベルトにトナー像を転写させる転写ローラを接触させている。
【0003】
このような転写ローラとして、金属ローラを用いた構成が知られている。例えば、転写ローラの表面の算術平均粗さと中間転写ベルトの内周面の算術平均粗さのを1.2μm以下として、高濃度点状ディフェクトの発生を防止する構成が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−184547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、中間転写ベルトを張架する張架ローラについても金属ローラを用いる場合がある。但し、このような張架ローラとして、特許文献1に記載のような金属ローラを用いた場合、以下のような問題がある。
【0006】
即ち、中間転写ベルトの内側には、ゴミや現像剤などが入り込む場合がある。そして、ゴミなどが張架ローラとベルトとの間に入り込むことで、ゴミなどの高さによりベルトに掛かる圧が局所的に大きくなってしまう。この結果、ベルトの幅方向の一部に周方向に亙ってスジ状の変形(テンションライン)が発生する場合がある。テンションラインが発生すると、トナー像の転写が不均一になって、スジ状の画像が形成される可能性がある。
【0007】
一方、転写ローラは、軸方向に亙ってベルトとの隙間の大きい部分と、隙間が小さい或いは隙間がない部分があると、軸方向に電流ムラが生じ、転写される画像に濃度ムラが発生する可能性がある。
【0008】
本発明は、テンションラインの発生を抑制できると共に、転写画像の濃度ムラの発生を抑制できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、トナー像が形成される像担持体と、前記像担持体からトナー像が転写される無端状の中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラと、前記中間転写ベルトの内周面に接触して一次転写部を形成し、転写バイアスが印加されることで前記像担持体に担持されたトナー像を前記中間転写ベルトへ転写する一次転写ローラと、前記中間転写ベルトの外周面に接触して二次転写部を形成するように構成され、前記中間転写ベルトから記録材にトナー像を転写する二次転写ローラと、前記中間転写ベルトに接触し、前記中間転写ベルトをクリーニングするクリーニング部材と、を備えた画像形成装置において、前記複数の張架ローラは、前記中間転写ベルトの回転方向において、前記一次転写部よりも上流で、前記二次転写部よりも下流に設けられた、第1の上流ローラと、前記中間転写ベルトを介して前記クリーニング部材と対向する第2の上流ローラと、を備え、前記第1の上流ローラ、前記第2の上流ローラ、及び、前記一次転写ローラはいずれも金属ローラであり、前記第1の上流ローラは、外周面に螺旋状の溝が形成され、前記第2の上流ローラは、前記第1の上流ローラよりも外径が大きく、外周面に螺旋状の溝が形成されておらず、前記一次転写ローラは、表面の最大高さRyが25μm以下であることを特徴とする画像形成装置にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、テンションラインの発生を抑制できると共に、転写画像の濃度ムラの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
図2】実施形態に係る一次転写部の構成を説明するための模式図。
図3】一次転写ローラと中間転写ベルトの間に隙間がある場合と無い場合とを説明するための回路図。
図4】一次転写ローラの表面の最大高さと画質の関係を示すグラフ。
図5】(a)実施形態に係るアイドラローラの概略平面図、(b)アイドラローラの表面部分の拡大断面図。
図6】各ローラの材質と直径を示す図。
図7】アイドラローラの溝のピッチが大きい場合の、(a)中間転写ベルトとアイドラローラの表面部分の拡大断面図、(b)中間転写ベルト及びアイドラローラの斜視図。
図8】アイドラローラに巻きつけた中間転写ベルトのヤング率、張力及びひずみ量の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態について、図1ないし図8を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、図1を用いて説明する。
【0013】
[画像形成装置]
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に対応して設けられ4つの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを有する電子写真方式のフルカラープリンタである。本実施形態では、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを後述する中間転写ベルト56の回転方向に沿って配置したタンデム型としている。画像形成装置100は、画像形成装置本体に接続された原稿読み取り装置(図示せず)又は画像形成装置本体に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどのホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材Sに形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。
【0014】
このような画像形成プロセスの概略を説明すると、まず、各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdでは、それぞれ、感光ドラム50a、50b、50c、50d上に各色のトナー像を形成する。このように形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト56上へ転写され、続いて中間転写ベルト56から記録材S上に転写される。トナー像が転写された記録材は、不図示の定着装置に搬送されて、トナー像が記録材に定着される。以下、詳しく説明する。
【0015】
なお、画像形成装置100が備える4つの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、現像色が異なることを除いて実質的に同一の構成を有する。したがって、以下、代表して画像形成部Paについて説明し、他の画像形成部の構成は、画像形成部Paにおける構成に付した符号の添え字「a」をそれぞれb、c、dに置き換えて示し、説明を省略する。
【0016】
画像形成部Paには、像担持体として円筒型の感光体、即ち、感光ドラム50aが配設されている。感光ドラム50aは、図中矢印方向に回転駆動される。感光ドラム50aの周囲には帯電ローラ51a(帯電装置)、現像装置53a、一次転写ローラ54a、クリーニング装置55aが配置されている。感光ドラム50aの図中下方には露光装置(レーザースキャナ)52aが配置されている。
【0017】
また、感光ドラム50a、50b、50c、50dと対向して中間転写ベルト56が配置されている。中間転写ベルト56は、複数の張架ローラにより張架され、駆動ローラを兼ねる二次転写内ローラ62の駆動により図中矢印方向に周回移動(回転)する。二次転写内ローラ62と中間転写ベルト56を挟んで対向する位置には、二次転写部材としての二次転写外ローラ64が配置され、中間転写ベルト56上のトナー像を記録材Sに転写する二次転写部T2を構成している。二次転写部T2の記録材搬送方向下流には定着装置が配置される。
【0018】
上述のように構成される画像形成装置100により画像を形成するプロセスについて説明する。まず、画像形成動作が開始すると、回転する感光ドラム50aの表面が帯電ローラ51aによって一様に帯電される。次いで、感光ドラム50aは、露光装置52aから発せられる画像信号に対応したレーザ光により露光される。これにより、感光ドラム50a上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。感光ドラム50a上の静電潜像は、現像装置53a内に収容された現像剤(トナー)によって顕像化され、可視像となる。なお、本実施形態では、現像剤として、非磁性のトナーと磁性を有するキャリアを含む2成分現像剤を用いたが、磁性を有するトナーを含む一成分現像剤であっても良い。
【0019】
感光ドラム50a上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト56を挟んで配置される一次転写ローラ54aとの間で構成される一次転写部T1(図2)にて、中間転写ベルト56に一次転写される。一次転写後に感光ドラム50a表面に残ったトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置55aによって除去される。
【0020】
このような動作をマゼンタ、シアン、ブラックの各画像形成部でも順次行い、中間転写ベルト56上で4色のトナー像を重ね合わせる。その後、トナー像の形成タイミングに合わせてカセット(図示せず)に収容された記録材Sが、レジストレーションローラ66により二次転写部T2に搬送され、中間転写ベルト56上の4色のトナー像が、記録材S上に一括で二次転写される。即ち、本実施形態では、カセット、ピックアップローラ(不図示)、レジストレーションローラ66などを備えている。カセットは、記録材Sを収容する。ピックアップローラは、カセットに収容された記録材Sを所定のタイミングで取り出して搬送する。レジストレーションローラ66は、ピックアップローラにて繰り出された記録材Sを二次転写部T2へ搬送する。
【0021】
二次転写部T2で転写しきれずに中間転写ベルト56に残留したトナーは、ベルトクリーニング装置65により除去される。即ち、中間転写ベルト56の回転方向に関し、二次転写部T2の下流側には、ベルトクリーニング装置65が配置されている。ベルトクリーニング装置65は、二次転写後の中間転写ベルト56上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト56の表面をクリーニングする。
【0022】
次いで、記録材Sは定着装置に搬送される。そして、この定着装置によって、加熱、加圧されることで、記録材S上のトナーは溶融、混合されて、フルカラーの画像として記録材Sに定着される。その後、記録材Sは機外に排出される。これにより、一連の画像形成プロセスが終了する。なお、所望の画像形成部のみを用いて、所望の色の単色又は複数色の画像を形成することも可能である。
【0023】
[中間転写ベルト]
次に、中間転写ベルト56について説明する。中間転写ベルト56は、外周面が感光ドラム50a、50b、50c、50dに接触するように配置され、矢印方向に回転する。上述のように中間転写ベルト56は、感光ドラム50a、50b、50c、50dからトナー像が一次転写される。
【0024】
本実施形態の場合、中間転写ベルト56は、ポリイミド或いはポリアミドなどの樹脂若しくはそのアロイ、または各種ゴム等にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させて形成された無端状のベルトである。中間転写ベルト56は、表面抵抗率が1E+9〜1E+13Ω/□、厚みが例えば0.04〜0.5mm程度のフィルム状に構成されている。
【0025】
中間転写ベルト56は、張架ローラ60、67、アイドラローラ61、二次転写内ローラ62、テンションローラ63の複数の張架ローラにより張架されている。テンションローラ63は、中間転写ベルト56に対して一定の張力(例えば、29.4〜117.6N(3〜12kgf)程度)を与えるように構成されている。
【0026】
また、中間転写ベルト56は、不図示の駆動装置により二次転写内ローラ62を回転駆動することにより、所定の速度で循環駆動(回動)される。二次転写内ローラ(駆動ローラ)62は、金属ローラの表面にゴムが巻かれている。これにより、中間転写ベルト56と二次転写内ローラ62との摩擦力を上げて、スリップを生じにくくしている。
【0027】
二次転写内ローラ62と中間転写ベルト56の回転方向上流に隣接した位置には、駆動前ローラとしてのアイドラローラ61が配置されている。そして、張架ローラ67とアイドラローラ61とで張架された中間転写ベルト56の張架面が、感光ドラム50a、50b、50c、50dに対向するようにしている。したがって、張架ローラ67とアイドラローラ61との間には、転写ローラとしての一次転写ローラ54a、54b、54c、54dが中間転写ベルト56の内周面に接触するように配置されている。
【0028】
一次転写ローラ54a、54b、54c、54dは、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加されることで、感光ドラム50a、50b、50c、50dから中間転写ベルト56にトナー像を順次、静電吸引(一次転写)させる。これにより、中間転写ベルト56上には、各色のトナー像が重畳される。一次転写部の詳しい構成については後述する。
【0029】
駆動ローラでもある二次転写内ローラ62は、中間転写ベルト56の内周面に接触し、二次転写部材としての二次転写外ローラ64の間で中間転写ベルト56を挟持するように配置される。二次転写外ローラ64は、中間転写ベルト56のトナー像担持面(外周面)側に配置され、中間転写ベルト56の外周面に接触し、電圧が印加されることで中間転写ベルト56から記録材Sにトナー像を転写させる。このような二次転写外ローラ64には、電源80が接続されており、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加される。
【0030】
即ち、画像形成動作時には、中間転写ベルト56の走行に従動して二次転写外ローラ64は回転する。各種制御が行われた後、記録材Sが二次転写部T2に送られる。このとき、中間転写ベルト56上に形成されたトナー像を記録材S上に二次転写するために、二次転写外ローラ64にはトナーの帯電極性と逆極性の二次転写バイアスが印加される。本実施形態では、トナーはマイナスの帯電極性を有するものとし、二次転写バイアスは正のバイアスとする。
【0031】
また、二次転写内ローラ62は、金属の芯金の表面に例えばEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)などの弾性層を設け、例えば、ローラの直径が16mm、ゴム厚0.5mmとなるように形成されたゴムローラである。そして、硬度は、例えば70°(アスカーC)に設定される。なお、二次転写外ローラ64は、厚さ1mmのシリコンゴムを芯金に巻くように形成しても良い。一方、二次転写外ローラ64は、芯金の周囲に金属錯体、カーボンなどの導電剤を含有したNBR(ニトリルゴム)やEPDMなどからなる弾性層を設け、例えば、ローラの直径が24mm、弾性層の厚みが6mmになるように形成されている。
【0032】
[一次転写部]
次に、一次転写部T1の構成について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態における画像形成部Paにおける感光ドラム50aと一次転写ローラ54aの配置関係を示している。なお、他の画像形成部についても同様である。
【0033】
一次転写ローラ54aは、電源82が接続されている。電源82は、バイアス制御装置83により制御されることで、一次転写ローラ54aに感光ドラム50a上のトナー像を中間転写ベルト56に一次転写する一次転写バイアスを印加する。一次転写バイアスは、二次転写バイアスと同様に、正のバイアスとしている。
【0034】
一次転写ローラ54aは、材質がSUM(硫黄および硫黄複合快削鋼鋼材、表面に無電解ニッケル加工処理(KNメッキ))、或いは、SUS(ステンレス鋼)の金属ローラである。本実施形態では、一次転写ローラ54aとして、ローラの直径8mm、直径が軸方向に亙ってほぼ同じであるストレート形状の金属ローラを使用する。
【0035】
また、一次転写ローラ54aは、中間転写ベルト56と接触する領域が、感光ドラム50aと中間転写ベルト56とが接触する領域と中間転写ベルト56の厚さ方向から見て重ならない位置に配置される。且つ、一次転写ローラ54aは、感光ドラム50aに対して中間転写ベルト56の回転方向下流側に配置される。
【0036】
具体的には、感光ドラム50aの中心軸から中間転写ベルト56に引いた垂線に対して、一次転写ローラ54aの中心軸から中間転写ベルト56に引いた垂線の距離Bが5.5mmとなるように、一次転写ローラ54aを配置している。また、一次転写ローラ54aは、中間転写ベルト56に0.1〜0.3mm侵入するように配置している。この構成により、中間転写ベルト56に対して一次転写ローラ54aの接触圧を小さくしている。なお、中間転写ベルト56に対する一次転写ローラ54aの圧接方法としては、一次転写ローラ54aを支持する軸受けをバネにより付勢する構成が挙げられる。
【0037】
[濃度ムラ]
ここで、一次転写ローラ54aの軸方向(長手方向)における電流ムラによる画像の濃度ムラについて、図3を用いて説明する。中間転写ベルト56は、上述のように複数の張架ローラに掛け渡されることで、張力状態で支持されている。このとき、長手方向においてトナー像を転写する転写ローラと中間転写ベルト56との間の隙間が大きい部分と、隙間が小さい或いは隙間がない部分があると、長手方向において画像の濃度ムラが発生する虞がある。
【0038】
なお、以下では、電圧として一次転写バイアスが印加されている金属ローラである一次転写ローラ54aについて説明するが、他の一次転写ローラ54b、54c、54dについても同様である。また、電圧として二次転写バイアスが二次転写外ローラ64及び中間転写ベルト56を介して印加される二次転写内ローラ62は、本実施形態ではゴムローラとしている。但し、二次転写内ローラ62についても、金属ローラとした場合には、一次転写ローラ54aと直径以外の構成は、同様にすることが好ましい。
【0039】
図3は、一次転写ローラ54aと中間転写ベルト56とが当接する長手方向の領域において、隙間がある部分と隙間がない部分の電流回路を模式的に示したものである。ここで、一次転写ローラ54aに定電圧を印加した際の総電流をAとする。
【0040】
隙間が存在しない部分(図3の右側の回路)では、系のインピーダンスを形成しているものとして、一次転写ローラ54aと中間転写ベルト56との接触抵抗R1、中間転写ベルト56の抵抗R2、及び、感光ドラム50aの抵抗R3がある。隙間が存在しない部分の回路の電流量をA1とする。
【0041】
一方、隙間が存在する部分(図3の左側の回路)では、系のインピーダンスを形成しているものとして、一次転写ローラ54aと中間転写ベルト56との接触抵抗R1に加え、一次転写ローラ54aと中間転写ベルト56との隙間の空気抵抗Rairがある。また、隙間がない場合と同様に、中間転写ベルト56の抵抗R2と感光ドラム50aの抵抗R3もある。隙間が存在する部分の回路の電流量をA2とする。
【0042】
定電圧の印加時、中間転写ベルト56と一次転写ローラ54aとの間に隙間が存在する回路と、隙間がない回路とで同じ電圧がかかる。上述のように、中間転写ベルト56と一次転写ローラ54aとの間の隙間の有無で、系のインピーダンスが異なる。そのため、それぞれに流れる電流量A1とA2は異なることがわかる。つまり、長手方向で電流ムラが発生する。そして、長手方向に電流ムラが生じると、転写される画像に長手方向に関して濃度ムラが発生する。
【0043】
[一次転写ローラ]
このため、本実施形態では、一次転写ローラ54a、54b、54c、54dを、後述するアイドラローラ61のように表面に溝を形成せず、且つ、アイドラローラ61よりも表面の最大高さRyが小さい金属の表面を有する金属ローラとしている。また、一次転写ローラ54a、54b、54c、54dは、表面の最大高さRyが、25μm以下とすることが好ましい。この点について、図4を用いて説明する。
【0044】
図4は、一次転写ローラ54aの表面の最大高さRyを変化させて、それぞれにおいて実際に画像形成を行って画質を確認した結果を示す。検討の結果、表面形状として、一次転写ローラ54aの表面の最大高さRyが、25μmよりも大きい場合、画像に濃度ムラが現れ、画質が低下したことを確認できた。以上より、一次転写ローラ54aの表面の最大高さRyは、25μm以下とすることが好ましい。
【0045】
[アイドラローラ]
アイドラローラ61は、一次転写部T1でトナー像を転写された中間転写ベルト56のトナーを担持する反対側の面(内周面)が、一次転写部T1を通過後、最初に接触する支持回転体である。そして、アイドラローラ61の次に中間転写ベルト56のトナーを担持する反対側の面が接触する支持回転体は、二次転写内ローラ(駆動ローラ)62である。即ち、アイドラローラ61は、駆動ローラである二次転写内ローラ62の中間転写ベルト56の回転方向上流に隣接した駆動前ローラである。図5(a)に示すように、このようなアイドラローラ61の金属の外周面(表面)には、凹部としての溝70が形成されている。
【0046】
溝70は、アイドラローラ61の軸方向に交差する方向に形成されている。具体的には、溝70は、アイドラローラ61の外周面に、軸方向に亙って外周面を周回するように螺旋状に形成されている。溝70が形成されているアイドラローラ61の軸方向の範囲は、少なくとも中間転写ベルト56と接触する範囲とする。本実施形態では、アイドラローラ61は、ローラ部61aと、ローラ部61aの両端部に設けられた軸61bとを有する。軸61bは、中間転写ベルト56内の各ローラを支持するためのフレームに対して軸受を介して回転自在に支持される。そして、溝70は、ローラ部61aの軸方向全域に形成されている。なお、溝70は、螺旋状のように連続したものではなく、複数の溝部が軸方向に交差する方向(例えば、軸方向に交差する周方向)に形成されたものでも良い。
【0047】
上述のように、アイドラローラ61は、中間転写ベルト56を張架して支持する複数の張架ローラのうち、一次転写部T1の直近下流に配設されている。そして、図1に示すように、中間転写ベルト56のアイドラローラ61に張架された領域の外周面と対向する位置には、基準濃度トナー像や位置情報トナー像などの制御用トナー像を検出する光学式のセンサ90に対向している。アイドラローラ61に張架された中間転写ベルト56の領域でセンサ90により制御用トナー像を検出することで、この制御用トナー像の読み取り精度を高めることができる。
【0048】
なお、基準濃度トナー像は、所定の濃度となるように形成されたトナー像で、このトナー像の検出結果により現像装置53a、53b、53c、53dへの現像剤の補給量の調整や各種電圧の調整を行うことで、トナー像の濃度調整を行うものである。また、位置情報トナー像は、中間転写ベルト56上の各色のトナー像の位置ずれを検出するためのもので、このトナー像の検出結果により、例えば、露光装置52a、52b、52c、52dによる露光開始位置などの調整を行うものである。
【0049】
アイドラローラ61は、導電性の材料である外径21mmのステンレス製の円筒管で形成された金属ローラであり、接地電位に接続されている。アイドラローラ61は、一次転写部T1において、一次転写ローラ54a、54b、54c、54dから電荷を付与された中間転写ベルト56のトナー像を担持する反対側の面に接触する。このため、接地していないと、アイドラローラ61がチャージアップすることがあるためである。チャージアップすると、周辺の部材へ電流がリークして、画像形成装置100の電子回路に電気的ストレスを与えることがある。
【0050】
また、アイドラローラ61は、駆動ローラである二次転写内ローラ62の上流に隣接しているため、中間転写ベルト56との接触圧が高くなる傾向がある。ここで、中間転写ベルト56の内側にゴミやキャリアなどが入り込む場合がある。この際、中間転写ベルト56を張力状態で支持した状態のアイドラローラ61と中間転写ベルト56との接触部では、ゴミやキャリアなどの高さによって中間転写ベルト56への圧が局所的に非常に大きくなる。この結果、後述するテンションラインが中間転写ベルト56に発生する虞がある。
【0051】
したがって、本実施形態では、アイドラローラ61の外周面に上述した溝70を形成している。これにより、中間転写ベルト56の内周面にゴミやキャリアが付着した際の圧集中を抑制して、テンションラインの発生を抑制するようにしている。
【0052】
[テンションライン]
上述のテンションラインについて説明する。複数の張架ローラで張架支持された中間転写ベルト56を回転駆動すると、中間転写ベルト56の搬送方向にそって中間転写ベルト56にスジ状の凹凸部(テンションライン)が発生することがある。このテンションラインは、中間転写ベルト56にかかる張力の不均一によって生ずるしわのようなものである。この張力の不均一になる要因として、中間転写ベルト56の裏面(内周面)にゴミやキャリアなどが紛れ込むことが挙げられる。張架ローラとベルトとの間に入り込むと、張架ローラと中間転写ベルト56の接触部でゴミやキャリアが存在する部分の圧が局所的に非常に大きくなる。この際、張力の不均一が生じ、中間転写ベルト56にテンションラインが発生してしまう。特に、張架ローラの径が小さいと、中間転写ベルト56との接触圧が大きくなり、局所的な圧も上昇し易くなり、テンションラインも発生し易くなる。したがって、テンションラインの発生には、張架ローラとベルトとの圧が大きく起因していることがわかっている。
【0053】
このテンションラインは、回転駆動を繰り返すことによって徐々に、凹凸の大きさが大きくなったり、その発生本数が増えたりする。また、中間転写ベルト56にテンションラインが発生すると、その凹凸や中間転写ベルト56のミクロ的な劣化によって、転写部におけるトナーの転写が不均一になり、スジ状の画像として出力されてしまう。
【0054】
一方、張架ローラとして、芯金をゴムによりコートしたゴムローラのような表面が柔らかいローラを使った場合、張架ローラとベルトとの接触部にゴミやキャリアなどが入り込んでも、張架ローラの表面がつぶれるため局所的に大きな圧がかかることがない。但し、コストが高くなるため、全ての張架ローラをゴムローラとすることは難しい。そこで、本実施形態では、中間転写ベルト56を張架する複数の張架ローラのうちの少なくとも1個の張架ローラである二次転写内ローラ62は、金属の表面に凹部としての溝70が形成された金属ローラとしている。
【0055】
[各ローラについて]
次に、中間転写ベルト56内に配置される各ローラについて説明する。図6に各ローラの材質及び直径を示す。図6に示すように、中間転写ベルト56上にトナー像を転写させるべく電圧が印加される一次転写ローラ54a、54b、54c、54dは、表面に溝が形成されていない(溝無し)金属ローラとしている。また、二次転写内ローラ62は、駆動ローラでもあるため、中間転写ベルト56との間のスリップを回避するため、表面にゴムを巻いたゴムローラとしている。一方、中間転写ベルト56を張架する複数の張架ローラのうち、二次転写内ローラ62以外の張架ローラ60、67、テンションローラ63、アイドラローラ61は金属ローラとしている。
【0056】
特に、上述した様にアイドラローラ61は、直径が12mmと小さく、中間転写ベルト56との接触圧が大きいため、表面に溝70が形成された(溝あり)金属ローラとしている。なお、第1の上流ローラとしての張架ローラ67は、直径が小さく中間転写ベルト56との接触圧が高いため、アイドラローラ61と同様の溝ありの金属ローラとしている。また、図6には示していないが、本実施形態では、張架ローラ60も、アイドラローラ61と同様の溝ありの金属ローラとしている。張架ローラ60、67は、一次転写ローラ54aと同様に溝無しの金属ローラとしても良いが、直径が小さく、中間転写ベルト56との接触圧が高くなるような場合には、本実施形態のように溝ありの金属ローラとすることが好ましい。これは、張架ローラとベルトとの接触圧が高いと、上述したようなゴミなどによる局所的な圧の上昇により、テンションラインが発生する虞があるためである。
【0057】
一方、第2の上流ローラとしてのテンションローラ63については、溝無しの金属ローラとしている。これは、テンションローラ63を溝ありの金属ローラとした場合、ベルトクリーニング装置65により中間転写ベルト56に付着したトナーや紙粉を十分に除去できない可能性があるためである。即ち、ベルトクリーニング装置65は、クリーニング部材としてのブレードなどの当接部材をテンションローラ63に張架された領域の中間転写ベルト56の外周面に当接させることで、ベルト上のトナーなどを掻き取っている。ここで、テンションローラ63に溝があると、当接部材とベルトとの接触圧が、溝がある部分と無い部分とで異なる可能性がある。このように接触圧が不均一になると、接触圧が低いところでトナーや紙粉がすり抜けてしまう虞がある。そこで、本実施形態では、テンションローラ63については、溝無しの金属ローラとしている。また、テンションローラ63の直径を溝を形成した張架ローラよりも大きく(本実施形態では21mm)することで、中間転写ベルト56との接触圧をできるだけ小さくして、テンションラインの発生を抑制している。
【0058】
[溝構成]
次に、上述のように溝が形成された金属ローラの溝構成について、アイドラローラ61を例に説明する。上述した様に、アイドラローラ61の溝70は螺旋状に形成されている。図5(b)に示すように、溝70の軸方向のピッチをL、溝70の高さをDとした場合、溝ピッチLは、300μm以上400μm以下で、溝高さDは、10μm以上40μm以下であることが好ましい。なお、溝ピッチL及び溝高さDは、アイドラローラ61の長手方向に亙って同じとしても良いし、異なっていても良い。但し、溝ピッチL及び溝高さDが長手方向に異なっている場合でも、上述の範囲に収まっていることが好ましい。
【0059】
ここで、溝ピッチLは、山の部分を挟んで隣り合う谷の軸方向中央或いは他に最も深い点(頂点)との間隔とする。また、溝高さDは、隣り合う山と谷の軸方向中央、或いは、隣り合う山の頂点と谷の頂点のローラ径方向の間隔とする。本実施形態の場合、溝70は、図5(b)に示すように、軸方向に沿った断面形状が三角形状の山と谷とが軸方向に連続した形状としている。このため、溝ピッチLは、軸方向に隣り合う谷の頂点の間隔、溝深さDは、隣り合う山の頂点と谷の頂点とのローラの径方向の間隔としている。
【0060】
なお、溝70の軸方向に沿った断面形状は、三角形状以外に、円弧状、台形状など他の形状であっても良い。但し、谷と谷との間の山の部分については、平面となる長さが短い、或いは、ない方が好ましい。これは、ゴミがこの平面に乗り上げた場合に中間転写ベルト56に対する接触圧が局所的に高くなり易いためである。したがって、溝70の軸方向に沿った断面形状は、本実施形態のような三角形状が連続した形状或いは、正弦波のように円弧が連続した形状とすることが好ましい。
【0061】
また、溝70の隣り合う稜線のピッチは、停止状態で接する中間転写ベルト56が永久変形しない限界幅よりも狭く、溝70の深さは、停止状態で支持された中間転写ベルト56が溝面に接触する限界深さよりも深いことが望ましい。
【0062】
溝ピッチLが300μmよりも小さい場合、中間転写ベルト56とアイドラローラ61との間にゴミやキャリアが入り込んだ際に、溝内にゴミやキャリアが入っても、溝からゴミやキャリアが突出する量が多くなり易い。このため、ゴミやキャリアが入り込んだ際の局所的な圧の上昇を十分に改善できない可能性がある。
【0063】
一方、図7(a)に示すように、溝ピッチLが400μmよりも大きい溝70Aが形成されたアイドラローラ61Aにより中間転写ベルト56を張架した場合、溝70Aの谷の部分に撓んだ中間転写ベルト56が大きく侵入してしまう可能性がある。この結果、図7(b)に示すように、アイドラローラ61Aによる張架領域で中間転写ベルト56に波うちが発生する可能性がある。
【0064】
ここで、Lを溝ピッチ[mm]、dを中間転写ベルトの厚み[mm]、bを中間転写ベルト56のアイドラローラ61への巻きつけ量[mm]とする。また、Pを中間転写ベルト56に印加する単位長さあたりの張力[N/cm]、Eを中間転写ベルト56のヤング率[GPa]とする。このとき、ひずみ量h[mm]は、両端の回動が拘束された両持ち梁の撓み量として、次式により概算される。
h=1/4×(L/(d×b))×(P/E)×106・・・(1)
【0065】
図8に、中間転写ベルト56のアイドラローラ61への巻きつけ量bが25mm、溝70の溝ピッチLが400μmのとき、中間転写ベルト56の張力及びヤング率を変化させて、(1)式で求めた中間転写ベルト56のひずみ量hを示す。図8によれば、中間転写ベルト56の張力:3.5N/cm、ヤング率:1.14GPaにおける最大ひずみ量、即ち、溝70の谷部へ向けて中間転写ベルト56が食い込む深さは、約3.5μmと概算される。
【0066】
実際に中間転写ベルト56を回転駆動する際には、ベルト面内でのヤング率のばらつきや、長手方向での張力のばらつきが発生する。このため、アイドラローラ61の溝高さDは、3.5μmに対して余裕を持つことが望ましく、10μm以上とすることが好ましい。
【0067】
一方、溝高さDを40μmよりも大きくすると、中間転写ベルト56に上述の張力を印加した際に、アイドラローラ61の中央部の撓み量が過剰になる可能性がある。金属管で形成したローラ部材であるアイドラローラ61の表面に周方向の溝加工を施したことで、アイドラローラ61の長手方向の曲げ剛性が低下して、撓み量が大きくなるからである。このため、溝高さDは40μm以下とすることが好ましい。
【0068】
以上より、本実施形態の場合、テンションラインの発生を抑制できると共に、転写画像の濃度ムラの発生を抑制できる。即ち、トナー像を中間転写ベルト56に転写するための電圧が印加される一次転写ローラ54a、54b、54c、54dは、上述のように、アイドラローラ61よりも表面の最大高さRyが小さい溝無しの金属ローラとしている。このため、軸方向に亙って電流ムラ生じにくく、転写画像の濃度ムラの発生を抑制できる。また、一次転写ローラ54a、54b、54c、54dは、軽圧で中間転写ベルト56に接触しているため、溝無しの金属ローラとしてもテンションラインが発生することはない。
【0069】
一方、中間転写ベルト56を張架する複数の張架ローラのうちの少なくとも1個の張架ローラであるアイドラローラ61を、上述のように表面に溝70が形成された金属ローラとしている。このため、ゴミやキャリアなどが中間転写ベルト56とアイドラローラ61との接触部に入り込んでも、ゴミやキャリアなどが溝70内に侵入することで、中間転写ベルト56に対する接触圧が局所的に大きくなることを抑制できる。この結果、テンションラインの発生を抑制できる。
【0070】
特に、本実施形態では、駆動前ローラであり、中間転写ベルト56に対する接触圧が高くなり易いアイドラローラ61に溝70を形成しているため、テンションラインの発生を効果的に抑制できる。また、その他にも、中間転写ベルト56に対する接触圧が高くなり易い張架ローラ60、67についても、表面に溝を形成した金属ローラとしているため、テンションラインの発生を抑制できる。また、このように溝を形成した張架ローラは、トナー像の転写のための電圧が印加されないため、溝を形成したとしても画像の濃度ムラに影響を与えることはない。
【0071】
<他の実施形態>
上述の実施形態では、一次転写ローラ54a、54b、54c、54dの表面の最大高さが25μm以下であることが好ましいとした。但し、一次転写ローラ54a、54b、54c、54dの表面粗さは、これに加えて、十点平均粗さRzが5μm以下であることが好ましい。
【0072】
高圧の電圧が印加される金属ローラである一次転写ローラ54a、54b、54c、54dの表面粗さが大きいと、中間転写ベルト56との間に隙間が生じて、ローラと中間転写ベルト56との間に放電が発生する虞がある。放電が発生すると、そのストレスのダメージにより中間転写ベルト56の一部に絶縁破壊が生じて、局所的な転写不良を生じる可能性がある。特に、中間転写ベルト56として、電気的に絶縁耐圧が弱いポリアミドなどの樹脂や、カーボンブラックなどの導電粒子の分散性が低い材質を用いる場合は、このような問題が発生し易い。
【0073】
そこで、一次転写ローラ54a、54b、54c、54dの表面の十点平均粗さRzが5μm以下とすることで、このような問題を発生しにくくできる。
【0074】
上述の実施形態では、アイドラローラ61などの張架ローラに形成する凹部を溝としたが、凹部は、例えば、張架ローラの表面に複数の凹みを形成したものであっても良い。例えば、平面視で円形状や多角形状などの小さい凹みを張架ローラの表面の全域に亙って形成しても良い。
【0075】
また、凹部を形成する張架ローラは、電圧(転写バイアス)が印加されない金属ローラのうち、中間転写ベルトとの接触圧が高く、径が小さいローラとすることが好ましい。したがって、画像形成装置の構成によっては、アイドラローラ61以外の少なくとも1個の張架ローラに凹部を形成しても良い。例えば、アイドラローラ61の直径が大きく、凹部を形成しなくてもテンションラインが発生しにくい構成であれば、アイドラローラ61以外の張架ローラに凹部を形成するようにしても良い。
【0076】
また、画像形成装置によっては、アイドラローラ61を有さない場合もあるが、この場合には、中間転写ベルトを張架し、電圧(転写バイアス)が印加されない金属ローラのうちの少なくとも1個のローラの表面に凹部を形成する。そして、この場合にも、中間転写ベルトとの接触圧が高く、径が小さいローラに凹部を形成することが好ましい。
【0077】
上述の実施形態では、一次転写ローラ54a、54b、54c、54dを溝無しの金属ローラとし、二次転写内ローラ62をゴムローラとした。但し、二次転写内ローラ62についても、一次転写ローラ54aなどと同様に溝無しの金属ローラとしても良い。即ち、中間転写ベルト56を張架する複数の張架ローラのうちの少なくとも1個の張架ローラである第1ローラ(例えばアイドラローラ61)は、金属の表面に凹部が形成された金属ローラである。この場合に、一次転写ローラ54a、54b、54c、54dと二次転写内ローラ62のうちの少なくとも一方のローラである第2ローラは、第1ローラよりも表面粗さの最大高さが小さい金属の表面を有する金属ローラとする。
【0078】
更に、上述の実施形態では、画像形成装置がプリンタである場合について説明したが、画像形成装置は、プリンタ以外に、複写機、ファクシミリ、複合機などであっても良い。
【符号の説明】
【0079】
50a、50b、50c、50d・・・感光ドラム(像担持体)/54a、54b、54c、54d・・・一次転写ローラ(転写ローラ、第2ローラ)/56・・・中間転写ベルト/60・・・張架ローラ(第1ローラ)/61・・・アイドラローラ(張架ローラ、駆動前ローラ、第1ローラ)/62・・・二次転写内ローラ(駆動ローラ、第2ローラ)/63・・・テンションローラ(張架ローラ)/64・・・二次転写外ローラ(二次転写部材)/67・・・張架ローラ(第1ローラ)/70・・・溝(凹部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8