特許第6961378号(P6961378)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961378
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】液体柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/328 20060101AFI20211025BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20211025BHJP
   D06M 13/252 20060101ALI20211025BHJP
   D06M 13/352 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   D06M13/328
   D06M13/463
   D06M13/252
   D06M13/352
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-78677(P2017-78677)
(22)【出願日】2017年4月12日
(65)【公開番号】特開2018-178305(P2018-178305A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】橋本 亮
(72)【発明者】
【氏名】小倉 英史
【審査官】 南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−513720(JP,A)
【文献】 特開2003−105669(JP,A)
【文献】 特開2016−011471(JP,A)
【文献】 特開2003−105668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00−15/715
C11B 9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体柔軟剤組成物であって、
下記(A)〜(C)成分:
(A)エステル基(−COO−)及び/又はアミド基(−NHCO−)で分断されていてもよい、炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に1〜3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(B)分子内にメルカプト基(−SH)を1個以上有する化合物、及び
(C)下記式(C−1)で表される化合物
【化1】
(式中、
1は、炭素数2〜8のアルキレン基、又は、炭素数2〜8のアルケニレン基を示し、
2は、水素、炭素数1〜18の置換又は非置換のアルキル基、炭素数2〜8の置換又は非置換のアルケニル基、又は、炭素数2〜8の置換又は非置換のアルキニル基を示し、
1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、
aは0〜6の整数を示す。)
を含有し、
(C)成分の(B)成分に対する質量比((C)/(B))が0.5〜100である、液体柔軟剤組成物。
【請求項2】
(A)成分が、一般式(A1−1)〜(A1−8)で表される化合物、それらの塩及びそれらの4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1に記載の液体柔軟剤組成物。
【化2】
〔(A1−1)式中、R7及びR8はそれぞれ独立に、炭素数10〜26の炭化水素基であり、
(A1−2)〜(A1−8)の各式中、R9及びR10はそれぞれ独立に、炭素数7〜21の炭化水素基である。〕
【請求項3】
(B)成分が、香料及び/又はホルムアルデヒドスカベンジャーである、請求項1又は2に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項4】
(B)成分が、8−メルカプトメントン、チオゲラニオール、2−フランメンテンチオール、1−ドデカンチオール、4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオール及びリモネンチオールからなる群より選ばれる香料の1種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項5】
(B)成分が、システイン、システアミン及びグルタチオンからなる群より選ばれるホルムアルデヒドスカベンジャーの1種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項6】
(C)成分が、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン(MTI)、N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、及び、N−(n−ブチル)−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項7】
(C)成分の配合量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.005〜1質量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体柔軟剤組成物に関する。詳細には、本発明は、異臭発生を抑制しつつ、設計時に意図した香りを持続的に発揮することができる液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液体柔軟剤には様々な機能が求められており、かかる要求に応えるべく様々な手段が取られている。
例えば、メルカプト基(−SH基)を有する香料成分は、香りの閾値が低いので、少量で特徴的な香りを付与するために用いられている。
また、メルカプト基を有するアミノ酸(例えば、システイン)は、人体に悪影響を及ぼすホルムアルデヒドの低減剤(ホルムアルデヒドスカベンジャー)として用いられている。
また、イソチアゾリン系の化合物は、防腐剤及び抗菌剤として用いられている(特許文献1〜3)。
その他、部屋干し時の不快臭抑制効果や静電気防止効果を奏する液体柔軟剤も開発されている(特許文献4〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−192966号公報
【特許文献2】特開2007−51380号公報
【特許文献3】特開平11−181681号公報
【特許文献4】特開2004−211215号公報
【特許文献5】特開2003−105669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、メルカプト基を有する化合物を液体柔軟剤組成物へ配合すると、当該液体柔軟剤組成物から硫黄様の異臭が発生し、設計時に意図していた心地よい香りが実現できない場合があることを、本発明者は見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、メルカプト基を有する化合物が配合されている液体柔軟剤組成物へ、特定の環状構造を有するイソチアゾリン系化合物を添加すると、得られた液体柔軟剤組成物が、その保存後において異臭発生が抑制されており、かつ、設計時に意図した香り(良好な香り)を持続的に発揮できることを見いだした。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔7〕に関するものである。
〔1〕液体柔軟剤組成物であって、
下記(A)〜(C)成分:
(A)エステル基(−COO−)及び/又はアミド基(−NHCO−)で分断されていてもよい、炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に1〜3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(B)分子内にメルカプト基(−SH)を1個以上有する化合物、及び
(C)下記式(C−1)で表される化合物
【化1】
(式中、
1は、炭素数2〜8のアルキレン基、又は、炭素数2〜8のアルケニレン基を示し、
2は、水素、炭素数1〜18の置換又は非置換のアルキル基、炭素数2〜8の置換又は非置換のアルケニル基、又は、炭素数2〜8の置換又は非置換のアルキニル基を示し、
1は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、
aは0〜6の整数を示す。)
を含有し、
(C)成分の(B)成分に対する質量比((C)/(B))が0.1〜500である、液体柔軟剤組成物。

〔2〕(A)成分が、一般式(A1−1)〜(A1−8)で表される化合物、それらの塩及びそれらの4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、前記〔1〕に記載の液体柔軟剤組成物。
【化2】
〔(A1−1)式中、R7及びR8はそれぞれ独立に、炭素数10〜26の炭化水素基であり、
(A1−2)〜(A1−8)の各式中、R9及びR10はそれぞれ独立に、炭素数7〜21の炭化水素基である。〕

〔3〕(B)成分が、香料及び/又はホルムアルデヒドスカベンジャーである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の液体柔軟剤組成物。

〔4〕(B)成分が、8−メルカプトメントン、チオゲラニオール、2−フランメンテンチオール、1−ドデカンチオール、4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオール及びリモネンチオールからなる群より選ばれる香料の1種以上である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。

〔5〕(B)成分が、システイン、システアミン及びグルタチオンからなる群より選ばれるホルムアルデヒドスカベンジャーの1種以上である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。

〔6〕(C)成分が、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン(MTI)、N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、及び、N−(n−ブチル)−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンからなる群より選ばれる1種以上である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。

〔7〕(C)/(B)が1〜100である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
後述の実施例で示されるように、本発明の液体柔軟剤組成物は、メルカプト基を有する化合物が配合されていても、異臭発生を抑制しつつ、設計時に意図した香りを持続的に発揮することができる。
したがって、本発明は従来の液体柔軟剤組成物にはない付加価値を有する液体柔軟剤組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[(A)成分]
(A)成分は、「エステル基(−COO−)及び/又はアミド基(−NHCO−)で分断されていてもよい、炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に1〜3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」である、カチオン界面活性剤である。
(A)成分は、繊維製品へ柔軟性(風合い)を付与する効果(すなわち、柔軟剤本来の機能)を液体柔軟剤組成物へ付与するために配合される。
炭素数10〜26の炭化水素基(以下、本明細書において「長鎖炭化水素基」ということがある)の炭素数は10〜26であり、17〜26が好ましく、19〜24がより好ましい。炭素数が10以上であると柔軟性付与効果が良好であり、26以下であると液体柔軟剤組成物のハンドリング性が良好である。
長鎖炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。長鎖炭化水素基が不飽和である場合、二重結合の位置はいずれの箇所にあっても構わないが、二重結合が1個の場合には、その二重結合の位置は長鎖炭化水素基の中央であるか、中央値を中心に分布していることが好ましい。
長鎖炭化水素基は、鎖状の炭化水素基であっても、構造中に環を含む炭化水素基であってもよく、好ましくは鎖状の炭化水素基である。鎖状の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。鎖状の炭化水素基としては、アルキル基またはアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0009】
長鎖炭化水素基は、エステル基(−COO−)及び/又はアミド基(−NHCO−)で分断されていてもよい。すなわち、長鎖炭化水素基は、その炭素鎖中に、エステル基及びアミド基からなる群から選択される少なくとも1種の分断基を有し、該分断基によって炭素鎖が分断されたものであってもよい。該分断基を有すると、生分解性が向上する等の点から好ましい。
該分断基を有する場合、1つの長鎖炭化水素基が有する分断基の数は1つであっても2つ以上であってもよい。すなわち、長鎖炭化水素基は、分断基によって1ヶ所が分断されていてもよく、2ヶ所以上が分断されていてもよい。分断基を2つ以上有する場合、各分断基は、同じであっても異なっていてもよい。
なお、長鎖炭化水素基がその炭素鎖中に分断基を有する場合、分断基が有する炭素原子は、長鎖炭化水素基の炭素数にカウントするものとする。
長鎖炭化水素基は、通常、工業的に使用される牛脂由来の未水添脂肪酸、不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸、パーム椰子、油椰子などの植物由来の未水添脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいは不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸又は脂肪酸エステル等を使用することにより導入される。
アミン化合物としては、2級アミン化合物(長鎖炭化水素基の数が2個)又は3級アミン化合物(長鎖炭化水素基の数が3個)が好ましく、3級アミン化合物がより好ましい。
【0010】
アミン化合物としては、下記一般式(A1)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
[式中、R1〜R3はそれぞれ独立に、炭素数10〜26の炭化水素基、−CH2CH(Y)OCOR4(Yは水素原子又はCH3であり、R4は炭素数7〜21の炭化水素基である。)、−(CH2nNHCOR5(nは2又は3であり、R5は炭素数7〜21の炭化水素基である。)、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、−CH2CH(Y)OH(Yは水素原子又はCH3である)、又は、−(CH2nNH2(nは2又は3である)であり、
1〜R3のうちの少なくとも1つは、炭素数10〜26の炭化水素基、−CH2CH(Y)OCOR4、又は−(CH2nNHCOR5である。]
【0011】
一般式(A1)中、R1〜R3における炭素数10〜26の炭化水素基の炭素数は、17〜26が好ましく、19〜24がより好ましい。該炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。該炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。
−CH2CH(Y)OCOR4中、Yは水素原子又はCH3であり、水素原子が特に好ましい。R4は炭素数7〜21の炭化水素基、好ましくは炭素数15〜19の炭化水素基である。一般式(A1)で表される化合物中にR4が複数存在するとき、該複数のR4は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
【0012】
4の炭化水素基は、炭素数8〜22の脂肪酸(R4COOH)からカルボキシ基を除いた残基(脂肪酸残基)であり、R4のもととなる脂肪酸(R4COOH)は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、また、直鎖脂肪酸でも分岐脂肪酸でもよい。なかでも、飽和又は不飽和の直鎖脂肪酸が好ましい。柔軟処理した衣類に良好な吸水性を付与するために、R4のもととなる脂肪酸の飽和/不飽和比率(質量比)は、90/10〜0/100が好ましく、80/20〜0/100より好ましい。
4が不飽和脂肪酸残基である場合、シス体とトランス体が存在するが、シス体/トランス体の質量比率は、40/60〜100/0が好ましく、70/30〜90/10が特に好ましい。
【0013】
4のもととなる脂肪酸として具体的には、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10〜60)や、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10〜60)などが挙げられる。中でも、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エライジン酸、およびリノール酸から選ばれる2種以上を所定量ずつ組み合わせて、以下の条件(a)〜(c)を満たすように調整した脂肪酸組成物を用いることが好ましい。
(a)飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸の比率(質量比)が90/10〜0/100、より好ましくは80/20〜0/100である。
(b)シス体/トランス体の比率(質量比)が40/60〜100/0、より好ましくは70/30〜90/10である。
(c)炭素数18の脂肪酸が60質量%以上、好ましくは80質量%以上であり、炭素数20の脂肪酸が2質量%未満であり、炭素数21〜22の脂肪酸が1質量%未満である。
【0014】
一般式(A1)における、基「−(CH2nNHCOR5」中、nは2又は3であり、3が特に好ましい。
5は炭素数7〜21の炭化水素基、好ましくは炭素数15〜19の炭化水素基である。一般式(A1)で表される化合物中にR5が複数存在するとき、該複数のR5は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
5としては、R4と同様のものが具体的に挙げられる。
【0015】
一般式(A1)において、R1〜R3のうち、少なくとも1つは長鎖炭化水素基(炭素数10〜26の炭化水素基)、−CH2CH(Y)OCOR4、又は−(CH2nNHCOR5)であり、2つが長鎖炭化水素基であることが好ましい。
1〜R3のうち、1つ又は2つが長鎖炭化水素基である場合、残りの2つ又は1つは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、−CH2CH(Y)OH、又は−(CH2nNH2であり、炭素数1〜4のアルキル基、−CH2CH(Y)OH、又は−(CH2nNH2であることが好ましい。ここで、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。−CH2CH(Y)OHにおけるYは、−CH2CH(Y)OCOR4中のYと同様である。−(CH2nNH2におけるnは、−(CH2nNHCOR5中のnと同様である。
【0016】
一般式(A1)で表される化合物の好ましい例として、下記一般式(A1−1)〜(A1−8)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
〔(A1−1)式中、R7及びR8はそれぞれ独立に、炭素数10〜26の炭化水素基である。(A1−2)〜(A1−8)の各式中、R9及びR10はそれぞれ独立に、炭素数7〜21の炭化水素基である。〕
【0017】
7及びR8における炭化水素基としては、前記一般式(A1)のR1〜R3における炭素数10〜26の炭化水素基と同様のものが挙げられる。
9及びR10における炭素数7〜21の炭化水素基としては、前記一般式(A1)のR4における炭素数7〜21の炭化水素基と同様のものが挙げられる。なお、式中にR9が複数存在するとき、該複数のR9は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
【0018】
(A)成分は、アミン化合物の塩であってもよい。
アミン化合物の塩は、該アミン化合物を酸で中和することにより得られる。アミン化合物の中和に用いる酸としては、有機酸でも無機酸でもよく、例えば塩酸、硫酸や、メチル硫酸等が挙げられる。アミン化合物の中和は、公知の方法により実施できる。
【0019】
(A)成分は、アミン化合物の4級化物であってもよい。
アミン化合物の4級化物は、該アミン化合物に4級化剤を反応させて得られる。アミン化合物の4級化に用いる4級化剤としては、例えば、塩化メチル等のハロゲン化アルキルや、ジメチル硫酸等のジアルキル硫酸などが挙げられる。これらの4級化剤をアミン化合物と反応させると、アミン化合物の窒素原子に4級化剤のアルキル基が導入され、4級アンモニウムイオンとハロゲンイオン又はモノアルキル硫酸イオンとの塩が形成される。4級化剤により導入されるアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。アミン化合物の4級化は、公知の方法により実施できる。
【0020】
液体柔軟剤組成物からの異臭発生をより抑制する観点から、アミン化合物を4級化する際の4級化剤(特に、ジメチル硫酸)の使用量は、アミン化合物のアミノ基1当量に対して好ましくは1.0当量以下、より好ましくは0.99当量以下、さらに好ましくは0.98当量以下、最も好ましくは0.97当量以下である。
【0021】
(A)成分としては、
一般式(A1)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、
一般式(A1−1)〜(A1−8)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、
一般式(A1−4)〜(A1−6)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
特に、一般式(A1−4)で表される化合物の4級化物と、(A1−5)で表される化合物の4級化物と、(A1−6)で表される化合物の4級化物とを併用することが好ましい。
【0022】
一般式(A1)及び(A1−1)〜(A1−8)で表される化合物、その塩及びその4級化物は、市販のものを用いてもよく、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0023】
例えば、一般式(A1−2)で表される化合物(以下「化合物(A1−2)」という)と、一般式(A1−3)で表される化合物(以下「化合物(A1−3)」という)とを含む組成物は、一般式(A1)のR4の欄で説明した脂肪酸組成物、または該脂肪酸組成物における脂肪酸を該脂肪酸のメチルエステルに置き換えた脂肪酸メチルエステル組成物と、メチルジエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、柔軟性付与を良好にする観点から、「化合物(A1−2)/化合物(A1−3)」で表される存在比率が、質量比で99/1〜50/50となるように合成することが好ましい。
更に、その4級化物を用いる場合には、4級化剤としてジメチル硫酸を用いることがより好ましい。その際、柔軟性付与の観点から「化合物(A1−2)の4級化物/化合物(A1−3)の4級化物」で表される存在比率が、質量比で99/1〜50/50となるように合成することが好ましい。
【0024】
一般式(A1−4)で表される化合物(以下「化合物(A1−4)」という)と、一般式(A1−5)で表される化合物(以下「化合物(A1−5)」という)と、一般式(A1−6)で表される化合物(以下「化合物(A1−6)」という)とを含む組成物は、一般式(A1)のR4の欄で説明した脂肪酸組成物または脂肪酸メチルエステル組成物とトリエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、化合物(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)の合計質量に対する個々の成分の含有比率は、柔軟性付与の観点から、化合物(A1−4)が1〜60質量%、化合物(A1−5)が5〜98質量%、化合物(A1−6)が0.1〜40質量%であることが好ましく、化合物(A1−4)が30〜60質量%、化合物(A1−5)が10〜55質量%、化合物(A1−6)が5〜35質量%であることがより好ましい。
また、その4級化物を用いる場合には、4級化反応を十分に進行させる点で、4級化剤としてジメチル硫酸を用いることがより好ましい。化合物(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)の各4級化物の存在比率は、柔軟性付与の観点から質量比で、化合物(A1−4)の4級化物が1〜60質量%、化合物(A1−5)の4級化物が5〜98質量%、化合物(A1−6)の4級化物が0.1〜40質量%であることが好ましく、化合物(A1−4)の4級化物が30〜60質量%、化合物(A1−5)の4級化物が10〜55質量%、化合物(A1−6)の4級化物が5〜35質量%であることがより好ましい。
なお、化合物(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。その際、「4級化物/4級化されていないエステルアミン」の比率は70/30〜99/1の質量比率の範囲内であることが好ましい。
【0025】
一般式(A1−7)で表される化合物(以下「化合物(A1−7)」という)及び一般式(A1−8)で表される化合物(以下「化合物(A1−8)」という)は、一般式(A1)のR4の欄で説明した脂肪酸組成物と、N−メチルエタノールアミンとアクリロニトリルの付加物より、J.Org.Chem.,26,3409(1960)に記載の公知の方法で合成したN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−1,3−プロピレンジアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、「化合物(A1−7)/化合物(A1−8)」で表される存在比率が質量比で99/1〜50/50となるように合成することが好ましい。
またその4級化物を用いる場合には、4級化剤として塩化メチルを用いることが好ましく、「化合物(A1−7)の4級化物/化合物(A1−8)の4級化物」で表される存在比率が、質量比で99/1〜50/50となるように合成することが好ましい。
【0026】
(A)成分は、1種類のアミン化合物、その塩又はその4級化物を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物、例えば、一般式(A1−4)〜(A1−6)で表される化合物の混合物として用いてもよい。
【0027】
(A)成分の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは8〜30質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である。
【0028】
[(B)成分]
(B)成分は、分子内にメルカプト基(−SH)を1個以上有する化合物である。
(B)成分は、その種類に応じて設定される配合目的(例えば、香り付け(香料)や、ホルムアルデヒドの低減(ホルムアルデヒドスカベンジャー)等)を達成するために配合される。
また、(B)成分は、液体柔軟剤組成物へ配合して上記の配合目的を達成できるものであれば特に制限されない。
【0029】
(B)成分が香料である場合、香気・香味の種類に特に制限はなく、例えば、グレープフルーツ様、スパイス様、ラベンダー様の香気・香味が挙げられる。
香料成分として用いられる(B)成分の具体例としては、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、2−メチル−3−ブタンチオール、イソアミルメルカプタン、チオゲラニオール、チオネロール、リモネンチオール、8−メルカプトメントン、フェニルメルカプタン、o-チオクレゾール、2−エチルチオフェノール、1−ドデカンチオール、2−ナフチルメルカプタン、フルフリルメルカプタン、2−メチル−3−フランチオール、3−メルカプトヘキシルヘキサノエート、4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオール、2−(4−メチル−1−シクロヘキサ−3−エニル)プロパン−2−チオール、3−メルカプトイソ酪酸、4−メチル−4−メルカプト−2−ペンタノン、3−メルカプトヘキサノール、3−メルカプトヘキシルアセテート、2−フランメンテンチオールなどが挙げられる。これらの中では、8−メルカプトメントン、チオゲラニオール、2−フランメンテンチオール、1−ドデカンチオール、4−メトキシ−2−メチル−2−ブタンチオールやリモネンチオールが好ましく、8−メルカプトメントン及びチオゲラニオールがより好ましい。
【0030】
ホルムアルデヒドスカベンジャーとして用いられる(B)成分としては、メルカプト基を有するアミノ酸、ペプチド及びタンパク質並びにこれらの誘導体等が挙げられる。より具体的には、システイン(特に、L−システイン)、システアミンや、グルタチオン等が挙げられる。
また、(B)成分は、上述のアミノ酸及びその誘導体が縮合したペプチドや酵素等であってもよい。
【0031】
(B)成分は、市場において容易に入手可能であるか、又は、公知の方法によって合成可能である。
【0032】
(B)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物として用いてもよい。
【0033】
(B)成分の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.0001〜1質量%、より好ましくは0.001〜0.5質量%、さらに好ましくは0.001〜0.2質量%であり、最も好ましくは0.001〜0.05質量%である。
【0034】
[(C)成分]
(C)成分は、下記式(C−1)で表される化合物である。
【化5】
(式中、
1は、炭素数2〜8のアルキレン基、又は、炭素数2〜8のアルケニレン基を示し、
2は、水素、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜6)の置換又は非置換のアルキル基、炭素数2〜8(好ましくは炭素数2〜6)の置換又は非置換のアルケニル基、又は、炭素数2〜8(好ましくは炭素数2〜6)の置換又は非置換のアルキニル基を示し、
1は水素原子、ハロゲン原子(好ましくは塩素)、炭素数1〜4のアルキル基、又は、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、
aは0〜6の整数(好ましくは0〜2の整数)を示す。)
なお、R2としては、水素又は炭素数1〜6の置換又は非置換のアルキル基が好ましい。
【0035】
なお、式(C−1)で表される化合物は、イソチアゾリン系の防腐剤及び抗菌剤として一般的に用いられている。
【0036】
(C)成分は、(B)成分の配合による液体柔軟剤組成物からの異臭発生を抑制することを主目的として配合されるが、併せて、液体柔軟剤組成物へ防腐性や抗菌性を付与することもできる。
【0037】
式(C−1)で表される化合物の具体例としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン(MTI)、N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−(n−ブチル)−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、7−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、5−tert−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンや、6−クロロ−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられ、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン(MTI)、N−メチル−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンや、N−(n−ブチル)−1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンが好ましく、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)がより好ましい。
【0038】
(C)成分は、市場において容易に入手可能であるか、又は、公知の方法によって合成可能である。
【0039】
(C)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(C)成分の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.005〜1質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%である。
【0041】
本発明の液体柔軟剤組成物では、(C)成分の(B)成分に対する質量比((C)/(B))が0.1〜500であり、好ましくは0.5〜500、さらに好ましくは1〜100、特に好ましくは1〜50である。(C)/(B)が0.1〜500であると、(C)成分のより高い配合効果(硫黄様異臭の発生抑制効果)を得ることができる。
【0042】
ところで、硫黄様異臭発生の詳細な原因は解明されていないが、(B)成分そのものの臭気が他の柔軟剤成分の臭気と混ざることで硫黄様異臭と感じたり、また、(B)成分が柔軟剤中で分解され、その分解物が硫黄様異臭の原因となっていると考えられる。したがって、本発明の液体柔軟剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において(B)成分の分解物を含んでいてもよい。
【0043】
[任意成分]
本発明の液体柔軟剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記(A)〜(C)の必須成分以外の任意成分を配合してもよい。
任意成分としては、液体柔軟剤組成物に一般的に配合される成分をあげることができる。具体例としては、水、ノニオン界面活性剤、香料、水溶性塩類、染料、水溶性溶剤(例えば、エタノール)、(C)成分以外の防腐剤、紫外線吸収剤、(C)成分以外の抗菌剤、消臭剤や、スキンケア成分などが挙げられる。
以下、いくつかの任意成分について詳細に説明する。
【0044】
[水]
本発明の液体柔軟剤組成物は、好ましくは水を含む水性組成物である。
水としては、水道水、精製水、純水、蒸留水、イオン交換水など、いずれも用いることができる。なかでもイオン交換水が好適である。
水の配合量は特に限定されず、所望の成分組成を達成するために適宜配合することができる。
【0045】
[ノニオン界面活性剤(以下、「(D)成分」ともいう)]
ノニオン界面活性剤は、本発明の液体柔軟剤組成物が乳化物である場合に、主に、乳化物中での油溶性成分の乳化分散安定性を向上する目的で配合することができる。ノニオン界面活性剤を配合すると、商品価値上充分なレベルの凍結復元安定性が確保されやすい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、多価アルコール、高級アルコール、高級アミン又は高級脂肪酸から誘導されるものを用いることができる。より具体的には、グリセリンまたはペンタエリスリトールに炭素数10〜22脂肪酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルまたはペンタエリスリトール;炭素数10〜22のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(該アルキルの炭素数1〜3)エステル;エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン;炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド;エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜100モルである硬化ヒマシ油などが挙げられる。中でも、炭素数10〜18のアルキル基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が20〜80モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
ノニオン界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物として用いてもよい。
ノニオン界面活性剤の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0046】
[香料(以下、「(E)成分」ともいう)]
液体柔軟剤組成物には、(B)成分(香料である場合)以外の香料を任意成分として配合することができる。
香料としては当該技術分野で汎用の香料を使用可能であり特に限定されないが、使用できる香料原料のリストは、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)および「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)および「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載されている。
また、香料は、香料前駆体を含む香料組成物であってもよい。香料前駆体としては、例えば、特表2003-534449号公報の表4記載の[化2]〜[化9]で表されるものがあげられる。
香料は、1種類の香料を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物として用いてもよい。
(E)成分としての香料の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1〜3%質量%であり、より好ましくは0.5〜2質量%、更に好ましくは0.5〜1.5質量%である。
【0047】
[水溶性塩類(以下、「(F)成分」ともいう)]
水溶性塩類は、液体柔軟剤組成物の粘度をコントロールする目的で配合することができる。水溶性塩類としては、無機塩及び有機塩のいずれも使用可能である。具体的には、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウムや、p−トルエンスルホン酸ナトリウム等を用いることができるが、中でも塩化カルシウム、塩化マグネシウムが好ましい。
水溶性塩類は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物として用いてもよい。
水溶性塩類の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、0〜1質量%である。なお、水溶性塩類は、液体柔軟剤組成物製造のどの工程で配合しても構わない。
【0048】
[液体柔軟剤組成物のpH]
液体柔軟剤組成物のpHは特に限定されないが、保存経日に伴う(A)成分の分子中に含まれるエステル基の加水分解を抑制する観点から、25℃におけるpHを1〜6の範囲に調整することが好ましく、2〜4の範囲に調整することがより好ましい。
pH調整には、塩酸、硫酸、リン酸、アルキル硫酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等の短鎖アミン化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩や、アルカリ金属珪酸塩などのpH調整剤を用いることができる。
【0049】
[液体柔軟剤組成物の粘度]
液体柔軟剤組成物の粘度は、その使用性を損なわない限り特に限定されないが、25℃における粘度が800mPa・s未満であることが好ましい。保存経日による粘度上昇を考慮すると、製造直後の液体柔軟剤組成物の25℃における粘度が500mPa・s未満であるのがより好ましく、300mPa・s未満であるのがさらに好ましい。このような範囲にあると、洗濯機への投入の際のハンドリング性等の使用性が良好である。
なお、液体柔軟剤組成物の粘度は、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて測定することができる。
【0050】
[液体柔軟剤組成物の製造方法]
本発明の液体柔軟剤組成物は、公知の方法、例えば主剤としてカチオン界面活性剤を用いる従来の液体柔軟剤組成物の製造方法と同様の方法により製造できる。
例えば、(A)成分、(B)成分、(D)成分及び(E)成分を含む油相と、(C)成分を含む水相とを、(A)成分の融点以上の温度条件下で混合して乳化物を調製し、その後、得られた乳化物に、(F)成分と必要に応じて他の成分を添加、混合することにより製造することができる。
油相は、(A)成分の融点以上の温度で、(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分と必要に応じて任意成分とを混合することにより調製できる。
水相は、水と(C)成分、必要に応じて任意成分とを混合することにより調製できる。
尚、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の添加方法は、上記記載の添加方法に限定されない。すなわち、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の各成分は、乳化物が得られた後、添加、混合することにより液体柔軟剤組成物を製造してもよく、例えば、各成分をそれぞれ単独で添加してもよく、又は、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分をプレミックスした後、油相または乳化物に添加してもよい。また(D)成分は、水相や乳化物が得られた後に添加することも可能であり、油相と水相に分割して添加することもできる。
【0051】
[液体柔軟剤組成物の使用方法]
本発明の液体柔軟剤組成物の使用方法に特に制限はなく、一般の液体柔軟剤組成物と同様の方法で使用することができる。例えば、洗濯のすすぎの段階ですすぎ水へ本発明の液体柔軟剤組成物を溶解させて被洗物を柔軟処理する方法や、本発明の液体柔軟剤組成物をたらいのような容器中の水に溶解させ、更に被洗物を入れて浸漬処理する方法がある。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例において、各成分の配合量はすべて質量%(指定のある場合を除き、純分換算)を示す。
【0053】
実施例及び比較例の液体柔軟剤組成物の製造に用いた成分及び製造方法を以下に示す。
【0054】
[(A)成分]
下記のA−1〜A−2を使用した。

A−1:カチオン界面活性剤(特開2003−12471の実施例4に記載の化合物)。A−1は、一般式(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15〜17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。A−1の調製において、アミン化合物を4級化する際の4級化剤(ジメチル硫酸)の使用量は、アミン化合物のアミノ基1当量に対して0.97当量であった。

A−2:カチオン界面活性剤(特開2003−12471の実施例3に記載の化合物)。A−2は、一般式(A1−4)、(A1−5)及び(A1−6)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15〜17のアルキル基又はアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。A−2の調製において、アミン化合物を4級化する際の4級化剤(ジメチル硫酸)の使用量は、アミン化合物のアミノ基1当量に対して0.98当量であった。

A−1及びA−2共に、本発明の(A)成分に該当した。
【0055】
[(B)成分]
下記のB−1〜B−3を使用した。

B−1:8−メルカプトメントン(東京化成工業株式会社)
B−2:1-ドデカンチオール(東京化成工業株式会社)
B−3:L−システイン(東京化成工業株式会社)

B−1、B−2及びB−3共に、本発明の(B)成分に該当した。
【0056】
[(C)成分]
下記のC−1〜C−3を使用した。

C−1:1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(クラリアントジャパン株式会社。商品名:Nipacide BIT 20)。C−1は、一般式(C−1)(式中、R1が炭素数4のアルケニレン基であり、R2が水素であり、aが0である)で表される化合物である。

C−2:2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン(ロンザジャパン株式会社)。C−2は、一般式(C−1)(式中、R1が炭素数3のアルキレン基であり、R2がメチル基であり、aが0である)で表される化合物である。

C−3:イソチアゾロン液(Rohm&Haas社。商品名:ケーソンCG-ICP)。C−3は2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンとの混合物である。
C−1及びC−2は本発明の(C)成分に該当したが、C−3は(C)成分には該当しなかった。
【0057】
[(D)成分]
下記のD−1を使用した。

D−1:ノニオン界面活性剤(1級イソトリデシルアルコールのエチレンオキシド60モル付加物。BASF社製ルテンゾールTO3にエチレンオキサイドを付加させたもの)
【0058】
[(E)成分]
表1に記載の香料組成物を使用した。
【表1】
【0059】
[(F)成分]
塩化カルシウム(和光純薬株式会社製)を用いた。各液体柔軟剤組成物における(F)成分の配合量は、液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.3質量%であった。
【0060】
更に任意成分として、表2記載の共通成分1を使用した。
【表2】
【0061】
[液体柔軟剤組成物の調製方法]
内径100mm、高さ150mmのガラス容器と、攪拌機(アジターSJ型、島津製作所製)を用い、各成分の配合量を、下記表3に記載の通り調整して、次の手順により液体柔軟剤組成物を調製した。
まず、(A)成分、(B)成分、(D)成分及び(E)成分を混合攪拌して、油相混合物を得た。一方、共通成分1及び(C)成分をバランス用イオン交換水に溶解させて水相混合物を得た。ここで、バランス用イオン交換水の質量は、980gから油相混合物、共通成分1、(C)成分及び(F)成分の合計量を差し引いた残部に相当する。
次に、(A)成分の融点以上に加温した油相混合物をガラス容器に収納して攪拌しながら、(A)成分の融点以上に加温した水相混合物を2度に分割して添加し、攪拌した。ここで、水相混合物の分割比率は30:70(質量比)とし、攪拌は回転速度1,500rpmで、1回目の水相混合物添加後に3分間、2回目の水相混合物添加後に2分間行った。しかる後、(F)成分を添加した。尚、(F)成分は添加前にイオン交換水に溶解し、30%wt水溶液として用いた。また必要に応じて、塩酸(試薬1mol/L、関東化学)、または水酸化ナトリウム(試薬1mol/L、関東化学)を適量添加してpH2.5に調整し、更に全体質量が1,000gになるようにイオン交換水を添加して、表3に示す組成を有する液体柔軟剤組成物(実施例1〜12及び比較例1〜2)を得た。
表3中、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)の各成分の数値は、液体柔軟剤組成物の総質量に対する配合量(質量%)である。
表3中、「(C)/(B)」は、(C)成分の(B)成分に対する質量比を示す。
【0062】
[液体柔軟剤組成物の評価方法]
得られた液体柔軟剤組成物について、以下の手順により「香気」の評価を行った。
【0063】
<液体柔軟剤組成物の香気評価>
液体柔軟剤組成物を軽量PSガラスビン(PS−No.11、田沼硝子工業所製)に100mL入れて密栓し、その香気を以下に示す4段階評価基準に従い評価した。専門パネラー5名の平均点として表した結果を、表3の「香気評価」の欄に示す。商品価値上、平均点で2.0以上を合格とした。

<評価基準>
3:異臭がない。
2:わずかに異臭は感じるが許容できる。
1:異臭を感じる。
0:はっきりと異臭を感じる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、液体柔軟剤分野において利用可能である。
【0065】
【表3】