特許第6961381号(P6961381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961381
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】平行度調整機能付き型締装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/66 20060101AFI20211025BHJP
   B29C 33/22 20060101ALI20211025BHJP
   B22D 17/26 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B29C45/66
   B29C33/22
   B22D17/26
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-87302(P2017-87302)
(22)【出願日】2017年4月26日
(65)【公開番号】特開2018-183936(P2018-183936A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘田 英晃
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−057925(JP,U)
【文献】 特開平07−100855(JP,A)
【文献】 特開2014−208435(JP,A)
【文献】 特開2001−212856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00− 33/76
B29C 45/00− 45/84
B22D 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を開閉させるための可動盤と、
前記金型を開閉させる際に、前記可動盤を移動させるための駆動力を発生可能な駆動機構と、
前記可動盤及び前記駆動機構を相互に連結するトグル機構と、
前記駆動機構に備えられ、前記駆動機構の駆動力を前記トグル機構に伝達するクロスヘッドと、
前記クロスヘッドを一定方向に沿って案内するガイド機構と、を有し、
前記クロスヘッドには、
前記トグル機構に回動自在に連結されたリンク支点と、
前記ガイド機構に沿って移動可能なサポート支点と、が設けられ、
前記サポート支点は、前記リンク支点よりも前記可動盤に接近させて配置され
前記金型を搭載した状態の前記可動盤の傾斜角と、前記金型を搭載しない状態の前記可動盤の傾斜角とは、同等量に設定されている平行度調整機能付き型締装置。
【請求項2】
前記可動盤の移動方向で見て、前記リンク支点の重心は、前記サポート支点の重心に対して、前記可動盤から離間する方向にオフセットされている請求項1に記載の平行度調整機能付き型締装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を開閉するための可動盤の平行度を調整することが可能な平行度調整機能付き型締装置に関する。本発明の型締装置は、射出(成形)装置だけでなく、例えば、ダイカストマシン、圧縮成形機(プレス成形機)、トランスファ成形機などにも広く採用することができる。
【背景技術】
【0002】
型締装置は、金型を開閉させるための構造として、例えば、金型を搭載可能な可動盤、トグル機構、駆動機構、クロスヘッドなどを備えている。ここで、駆動機構の駆動力が、クロスヘッドからトグル機構に伝達される。このとき、トグル機構から可動盤に押圧力ないし牽引力が作用する。これより、可動盤が移動する。かくして、金型を開閉させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−208435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金型の搭載時において、可動盤には、当該金型の重量に対応したモーメント荷重が作用する。更に、金型を搭載する前(即ち、金型の未搭載時)において、クロスヘッドには、トグル機構自体の質量に対応したモーメント荷重が作用する。このとき、モーメント荷重の大きさの程度によっては、可動盤が斜めに倒れてしまう場合がある。この場合、可動盤が斜めに倒れた状態で金型を開閉すると、例えば、成形精度が劣化したり、或いは、金型の開閉用ガイドピンが早期に摩耗したりすることは否めない。
【0005】
本発明の目的は、金型を開閉するための可動盤の平行度を調整することが可能な平行度調整機能付き型締装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、平行度調整機能付き型締装置は、可動型(金型)を搭載可能な可動盤と、トグル機構と、クロスヘッドと、ガイド機構(ガイドロッド)と、を有する。クロスヘッドには、トグル機構に回動自在に連結されたリンク支点と、ガイド機構に沿って移動可能なサポート支点と、が設けられている。サポート支点は、リンク支点よりも可動盤に接近させて配置されている。金型を搭載した状態の可動盤の傾斜角と、金型を搭載しない状態の可動盤の傾斜角とは、同等量に設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金型を開閉するための可動盤の平行度を調整することが可能な平行度調整機能付き型締装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る型締装置を備えた成形ユニットの構成を示す図。
図2図1の型締装置の斜視図。
図3】サポート支点とリンク支点の位置関係を示す側面図。
図4】サポート支点とリンク支点の位置関係を示す斜視図。
図5】金型の搭載時に、可動盤が斜めに倒れた状態を示す側面図。
図6】金型の未搭載時に、可動盤が斜めに倒れた状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
後述する実施形態の図面において、第1方向X及び第2方向Yは、水平面上において互いに直交する方向である。第1方向X及び第2方向Yと直交する方向(重力方向)を、第3方向Zと定義する。第1方向Xは、例えば、型締装置2の長手方向(或いは、タイバー19a,19b,19c,19dに沿った可動盤17(金型15)の移動方向)として規定されている。第2方向Yは、例えば、型締装置2の幅方向として規定されている。第3方向Zは、型締装置2の高さ(上下)方向として規定されている。
【0010】
「一実施形態」
図1には、射出装置1と、型締装置2と、を備えた成形ユニット3が示されている。成形ユニット3は、ベース4上に設けられている。成形ユニット3において、射出装置1から射出された可塑化材料(溶融された樹脂材料)を、型締装置2において冷却・固化させる。これにより、使用目的(用途)に応じた各種の成形品を製造することができる。
【0011】
「射出装置1」
図1には、射出装置1の一例が示されている。射出装置1は、可動本体5と、移動機構6と、射出構造体7と、を有している。可動本体5は、移動機構6によって、予め設定された方向に移動可能に構成されている。射出構造体7は、可動本体5に連結されている。これにより、射出構造体7は、可動本体5に追従して移動可能に構成されている。なお、可動本体5には、後述する回転移動装置12が搭載されている。
【0012】
移動機構6は、型締装置2に向かって配置されたガイドレール(図示しない)と、ガイドレールに沿って移動可能なスライダ(図示しない)と、駆動装置8と、を備えている。スライダは、可動本体5に取り付けられている。これにより、可動本体5は、ガイドレールに沿って移動可能に構成されている。
【0013】
駆動装置8は、例えば、モータ8aと、ボールネジ8bと、ナット構造体8cと、を備えている。モータ8aは、ベース4に支持されている。ボールネジ8bは、モータ8aの出力軸(図示しない)に連結されている。ボールネジ8bは、型締装置2に向かって配置されている。ナット構造体8cは、ボールネジ8bに螺合されている。ナット構造体8cは、可動本体5に連結されている。
【0014】
かかる駆動装置8において、例えば、モータ8aを駆動させる。モータ8aの回転運動は、出力軸を介してボールネジ8bに伝達され、ボールネジ8bを回転させる。ボールネジ8bの回転により、ナット構造体8cが、ボールネジ8bに沿って移動する。ナット構造体8cの移動に追従して、可動本体5がガイドレールに沿って移動する。可動本体5に追従して、射出構造体7が、型締装置2に向けて移動する。かくして、射出構造体7のノズル9aが、型締装置2(金型15)のノズルタッチ部15cに隙間なく接触する。この状態において、射出構造体7のノズル9aから射出された可塑化原料が、外部に漏れ出すことは無い。
【0015】
射出構造体7は、両端(先端、基端)を有するシリンダ本体9と、ホッパ10と、スクリュ11と、を備えている。シリンダ本体9には、中空円筒状のシリンダ9sが設けられている。シリンダ9sは、シリンダ本体9の基端から先端に亘って連続して構成されている。シリンダ本体9の基端には、原料投入用のホッパ10が設けられている。シリンダ本体9の先端には、ノズル9aが設けられている。
【0016】
シリンダ9sには、スクリュ11が回転可能に挿通されている。スクリュ11は、シリンダ9sに沿って連続的に構成されている。スクリュ11をシリンダ9sに挿通させた状態において、スクリュ11の先端は、ノズル9aに対向して位置付けられている。スクリュ11の基端は、回転移動装置12に連結されている。回転移動装置12は、可動本体5に搭載されている。
【0017】
回転移動装置12は、例えば、モータ12aと、アクチュエータ12bと、タイミングベルト12cと、を備えている。スクリュ11の基端には、アクチュエータ12bが連結されている。アクチュエータ12bは、スクリュ11をシリンダ9sに沿って移動(前進、後退)可能に構成されている。スクリュ11の基端には、タイミングベルト12cを介してモータ12aが連結されている。
【0018】
かかる回転移動装置12において、例えば、モータ12aを駆動させる。モータ12aの回転運動は、タイミングベルト12cを介してスクリュ11の基端に伝達される。これにより、スクリュ11を、予め設定された回転状態(例えば、回転数、角速度)で回転させることができる。
【0019】
なお、シリンダ本体9には、ヒータ13が設けられている。ヒータ13によってシリンダ本体9を加熱することで、シリンダ9s内の温度を、予め設定された温度に調整することができる。予め設定された温度としては、例えば、ホッパ10からシリンダ9sに投入された原料14を、溶融するのに最適な温度を想定することができる。
【0020】
「射出装置1の動作」
例えば、シリンダ9s内でスクリュ11を回転させる。このとき、スクリュ11の先端は、ノズル9aに近接させた状態に維持されている。ここで、原料14(例えば、ペレット状の樹脂材料)をホッパ10に供給する。原料14は、ホッパ10を通ってシリンダ9s内に投入される。
【0021】
投入された原料14は、回転するスクリュ11によって、シリンダ9sの先端(ノズル9a)に向けて搬送される。この間、原料14は、圧縮されつつヒータ13によって加熱される。これにより、溶融された原料14(可塑化原料14p)となる。かくして、可塑化原料14pは、スクリュ11の先端に搬送される。
【0022】
このとき、スクリュ11の先端に搬送された可塑化原料14pに押されて、スクリュ11が後退する。そして、スクリュ11が、計量完了位置まで更に後退する。このとき、スクリュ11の回転を停止させる。かくして、1個の成形品を成形するのに必要な可塑化原料14pが、シリンダ9s内(即ち、スクリュ11の先端とノズル9aとの間のシリンダ9s内)に蓄えられる。
【0023】
次に、非回転状態のスクリュ11をノズル9aに向けて前進させる。このとき、スクリュ11の先端から、可塑化原料14pに押圧力が作用する。これにより、可塑化原料14pが、ノズル9aからシリンダ9s外(例えば、型締装置2の金型15)に射出される。この後、例えば、金型15を冷却することで、可塑化原料14pを冷却・固化させる。これにより、使用目的(用途)に応じた各種の成形品が成形される。かくして、金型15から脱型することで最終的な成形品を得ることができる。
【0024】
「型締装置2」
図1図2には、型締装置2の一例が示されている。ここでは、トグル(toggle)式の型締装置2を想定する。型締装置2は、金型15(固定型15a、可動型15b)を搭載可能に構成されている。型締装置2は、金型15を横方向(第1方向X)に型締め可能に構成されている。型締装置2は、固定盤16と、可動盤17と、トグル機構18と、連結ユニット19と、駆動機構20と、スライド機構21と、を有している。なお、固定盤16は、ベース4に固定されている。
【0025】
駆動機構20(具体的には、後述するトグルサポート22)は、位置調整機構50によって、後述するガイドレール31上に位置決め可能に構成されている。即ち、位置調整機構50は、型締装置2の幅方向(第2方向Y)の両側にそれぞれ、例えば、支持プレート51と、複数のガイドブロック52a,52bと、を備えている。支持プレート51は、駆動機構20(トグルサポート22)を下から支えるように配置されている。ガイドブロック52a,52bは、支持プレート51を支持可能に配置されている。ガイドブロック52a,52bは、ガイドレール31に沿って移動可能に構成され、駆動機構20(トグルサポート22)を、固定盤16から一定の距離を保つように位置決めすることができる。
【0026】
可動盤17は、トグル機構18を介して駆動機構20に連結されている。可動盤17は、スライド機構21によって移動可能に構成されている。かかる構成において、駆動機構20は、金型15を開閉させる際に、可動盤17を移動させるための駆動力を発生可能に構成されている。ここで、駆動機構20の駆動力を、トグル機構18から可動盤17に伝える。これにより、可動盤17を、スライド機構21のガイドレール31に沿って移動させる。かくして、金型15を開閉させることができる。以下、具体的に説明する。
【0027】
金型15は、固定盤16と可動盤17の対向面16s,17sに搭載されている。即ち、固定型15aは、固定盤16の対向面16sに搭載されている。可動型15bは、可動盤17の対向面17sに搭載されている。ここで、可動型15bを固定型15aに接触させた型閉(型締)状態において、金型15の内部には、上記した可塑化原料14pが射出される成形空間が構成される。なお、固定型15aには、成形空間に連通したノズルタッチ部15cが設けられている。更に、固定盤16には、射出構造体7のノズル9aが挿入可能な開口部16aが構成されている。開口部16aは、固定盤16を貫通させて構成されている。開口部16aは、ノズルタッチ部15cに対向させて配置されている。
【0028】
トグル機構18は、可動盤17と、後述する駆動機構20のトグルサポート22との間に設けられている。トグル機構18は、第1トグルリンク18aと、第2トグルリンク18bと、を備えている。第1トグルリンク18a、及び、第2トグルリンク18bは、型締装置2の上下方向(第3方向Z)に沿って、互いに対向させて配置されている。双方のトグルリンク18a,18bは、互いに同一の構成を有している。当該トグルリンク18a,18bにおいて、一端が可動盤17に連結され、他端がトグルサポート22に連結されている。なお、トグル機構18は、既存のトグルリンク構造をそのまま利用することができるため、具体的な説明は省略する。
【0029】
連結ユニット19は、4本のタイバー(第1タイバー19a、第2タイバー19b、第3タイバー19c、第4タイバー19d)を備えている。タイバー19a,19b,19c,19dは、固定盤16と、後述する駆動機構20のトグルサポート22との間に設けられている。タイバー19a,19b,19c,19dは、型締装置2の長手方向(第1方向X)に沿って構成されている。タイバー19a,19b,19c,19dの一端側は、固定盤16に固定されている。タイバー19a,19b,19c,19dの他端側は、トグルサポート22に着脱自在に連結されている。
【0030】
図面では一例として、第1タイバー19aと第2タイバー19bは、型締装置2の上下方向(第3方向Z)に沿って、互いに平行に対向させて配置されている。第3タイバー19cと第4タイバー19dは、型締装置2の上下方向(第3方向Z)に沿って、互いに平行に対向させて配置されている。第1タイバー19aと第3タイバー19cは、型締装置2の幅方向(第2方向Y)に沿って、互いに平行に対向させて配置されている。第2タイバー19bと第4タイバー19dは、型締装置2の幅方向(第2方向Y)に沿って、互いに平行に対向させて配置されている。
【0031】
また、可動盤17は、タイバー19a,19b,19c,19dに沿って移動可能に構成されている。この移動中において、可動盤17は、スライド機構21に支持されている。これにより、タイバー19a,19b,19c,19dには、可動盤17の荷重が掛かることはない。この結果、タイバー19a,19b,19c,19dは、常に、一定の形状に維持される。スライド機構21の構成については後述する。
【0032】
駆動機構20は、上記したトグルサポート22と、サーボモータ23と、動力伝達ユニット24と、クロスヘッド25と、を備えている。サーボモータ23は、トグルサポート22に搭載されている。動力伝達ユニット24は、連結機構26と、1本のボールネジ27と、ガイド機構と、を備えている。ガイド機構は、クロスヘッド25を一定方向(例えば、可動盤17の移動方向)に沿って案内するために、複数のガイドロッド28a,28bを備えている。図2には一例として、2本のガイドロッド(第1ガイドロッド28a、第2ガイドロッド28b)が示されている。ボールネジ27は、連結機構26を介してサーボモータ23に連結されている。
【0033】
ボールネジ27とガイドロッド28a,28bは、型締装置2の長手方向(第1方向X)に沿って構成されている。ボールネジ27とガイドロッド28a,28bは、型締装置2の幅方向(第2方向Y)に沿って、互いに平行に対向させて配置されている。ガイドロッド28a,28bの相互間にボールネジ27が配置されている。ガイドロッド28a,28bは、その一端がトグルサポート22に支持され、その他端がロッドサポート29a,29bに支持されている。
【0034】
図面では一例として、各ロッドサポート29a,29bは、型締装置2の上下方向(第3方向Z)に沿って構成されている。即ち、第1ロッドサポート29aは、その一端が第1タイバー19aに支持され、その他端が第2タイバー19bに支持されている。第2ロッドサポート29bは、その一端が第3タイバー19cに支持され、その他端が第4タイバー19dに支持されている。
【0035】
クロスヘッド25は、ボールネジ27に螺合したナット部25tと、ガイド機構(ガイドロッド28a,28b)に沿って移動可能なサポート支点(サポート部とも言う)と、を備えている。サポート支点は、第1サポート部25aと、第2サポート部25b(図3図4参照)と、を備えている。サポート部25a,25bは、型締装置2の幅方向(第2方向Y)に沿って、クロスヘッド25の両側に配置されている。
【0036】
更に、クロスヘッド25は、2つのトグルレバー(第1トグルレバー30a、第2トグルレバー30b)を介して、トグル機構18(第1トグルリンク18a、第2トグルリンク18b)に連結されている。クロスヘッド25には、型締装置2の上下方向(第3方向Z)に沿って、2つのリンク支点(第1リンク支点L1、第2リンク支点L2)が設けられている。
【0037】
この場合、第1トグルレバー30aは、その一端が第1リンク支点L1に回動自在に連結され、その他端が第1トグルリンク18aに回動自在に連結されている。第2トグルレバー30bは、その一端が第2リンク支点L2に回動自在に連結され、その他端が第2トグルリンク18bに回動自在に連結されている。
【0038】
図1図2に示すように、スライド機構21としては、例えば、市販のリニアガイドをそのまま利用することができる。図面では一例として、スライド機構21は、型締装置2の幅方向(第2方向Y)の両側にそれぞれ、ガイドレール31と、支持プレート32と、複数のガイドブロック33a,33bと、を備えている。なお、後述では1つの支持プレート32に2個のガイドブロック33a,33bを適用しているが、これに限定されることはなく、例えば、3個以上のガイドブロックを適用してもよい。
【0039】
ここで、支持プレート32、及び、ガイドブロック33a,33bは、可動盤17を移動可能に支持する支持構造体として機能する。図面において、支持構造体は、ガイドレール31に沿って移動可能に構成されているが、ガイドレール31に代えて、ガイド溝(図示しない)を形成してもよい。要するに、支持構造体を一定方向に案内させることが可能であればよい。この場合、支持構造体と、ガイドレール31(或いは、ガイド溝)とを含めて「リニアガイド」と称する。
【0040】
ガイドレール31は、型締装置2の長手方向(第1方向X)に沿って構成されている。ガイドレール31は、型締装置2の幅方向(第2方向Y)に沿ったベース4の両側に、互いに平行に対向させて配置されている。ガイドレール31は、ベース4上に固定されている。
【0041】
支持プレート32は、可動盤17を搭載可能に構成されている。支持プレート32は、型締装置2の長手方向(第1方向X)に沿って構成されている。図面では一例として、支持プレート32は、可動盤17を下から支えるように配置されている。このため、可動盤17の全重量が、支持プレート32に作用する。更に、個々のガイドレール31には、2個のガイドブロック(第1ガイドブロック33a、第2ガイドブロック33b)が配置されている。ガイドブロック33a,33bは、ガイドレール31に嵌まり込んだ状態で、当該ガイドレール31に沿って移動可能に構成されている。
【0042】
ガイドブロック33a,33bは、支持プレート32を下から支えるように配置されている。このため、支持プレート32及び当該支持プレート32に支持された可動盤17は、その両側(即ち、型締装置2の幅方向(第2方向Y)に沿った両側)をガイドブロック33a,33b(支持構造体)によって支えられた状態で、当該ガイドブロック33a,33b(支持構造体)と共に、ガイドレール31に沿って移動可能となっている。
【0043】
型締装置2の長手方向(第1方向X)に沿ったガイドブロック33a,33bの配列仕様において、第1ガイドブロック33aは、固定盤16寄りの部分に配置され、第2ガイドブロック33bは、トグルサポート22寄りの部分に配置されている。即ち、ガイドブロック33a,33bは、可動盤17の移動方向に沿って配置されている。この場合、型閉(型締)時には、第1ガイドブロック33aが、支持プレート(可動盤17)を先導し、型開時には、第2ガイドブロック33bが、支持プレート(可動盤17)を先導する。
【0044】
「型締装置2の動作」
駆動機構20の駆動力が、クロスヘッド25からトグル機構18に伝達される。これにより、金型15が開閉される。具体的には、サーボモータ23の回転運動が、連結機構26を介してボールネジ27に伝達される。このとき、ボールネジ27が回転する。ナット部25tがボールネジ27に沿って移動する。ナット部25tの移動に伴って、クロスヘッド25が移動する。同時に、サポート部25a,25bがガイドロッド28a,28bに沿って移動する。かくして、クロスヘッド25は、型締装置2の長手方向(第1方向X)に沿って、高い走行精度を維持しつつ安定的に移動する。
【0045】
このとき、クロスヘッド25の移動に追従して、トグル機構18から可動盤17に押圧力が作用する。かかる押圧力によって、トグル機構18が、可動盤17を固定盤16に向かって移動させる。この間、可動盤17は、スライド機構21(支持構造体、リニアガイド)によって移動する。そして、可動型15bを固定型15aに接触させた型閉(型締)状態において、金型15の内部には、上記した可塑化原料14pが射出される成形空間が構成される。
【0046】
なお、型開閉時における可動盤17の移動速度は、例えば、型締装置2を稼動するための制御装置(図示しない)によって制御することができる。例えば、当該制御装置によって、サーボモータ23の回転を制御する。これにより、ボールネジ27の回転が制御される。同時に、クロスヘッド25の移動が制御される。この結果、トグル機構18から可動盤17に押圧力を作用させるタイミングが制御される。かくして、型締装置2の仕様態様(例えば、搭載した金型15(可動型15b)の重量)に応じて、可動盤17を、最適な速度で固定盤16に向かって移動させることができる。
【0047】
「本発明の特長的構成」
図3図6に示すように、上記した型締装置2(クロスヘッド25)において、サポート支点(第1サポート部25a、第2サポート部25b)は、型締装置2の長手方向(第1方向X)で見て、リンク支点(第1リンク支点L1、第2リンク支点L2)よりも可動盤17に接近させて配置されている。
【0048】
別の捉え方をすると、型締装置2(クロスヘッド25)において、リンク支点L1,L2の重心Lgは、サポート支点25a,25bの重心25gに対して、型締装置2の長手方向(第1方向X)で見て、可動盤17から離間する方向にオフセットされている。なお、重心Lg,25gは、例えば、物体の各部分に働く重力の合力が作用する点、質量中心、重力中心、各頂点と対辺の中点とを結ぶ線分の交点、つり合い点、バランス点などとして規定される。
【0049】
ここで、重心Lgは、例えば、型締装置2の上下方向(第3方向Z)で見て、双方のリンク支点L1,L2の中間点として規定することができる。中間点(重心Lg)は、リンク支点L1,L2の中心相互を真っ直ぐに結んだ仮想線を2等分した点として設定することができる。
【0050】
また、重心25gは、例えば、型締装置2の長手方向(第1方向X)で見て、各々のサポート支点25a,25bの中間点として規定することができる。各中間点(重心25g)は、図面では一例として、型締装置2の長手方向(第1方向X)で見て、円筒形状の各サポート支点25a,25bの両端面の相互間を2等分した点として設定することができる。同時に、各中間点(重心25g)は、型締装置2の幅方向(第2方向Y)に沿って真っ直ぐに並んだ位置関係に設定されている。加えて、各中間点(重心25g)相互を真っ直ぐに結んだ仮想線を2等分した点は、ボールネジ27の回転中心に一致している。
【0051】
更に、サポート支点25a,25bをリンク支点L1,L2よりも可動盤17に接近させる調整量(距離)TD、及び、重心25gに対する重心Lgのオフセット量TDは、下記の条件に基づいて設定される。
【0052】
なお、後述する傾斜角α,βは、例えば、可動盤17(対向面17s)が、型締装置2の上下方向(第3方向Z)に沿って垂直に位置付けられた姿勢を基準に測定されている。更に、可動盤17に搭載する可動型15b(金型15)の重量は、例えば、メーカが定めた推奨搭載量の最大値と最小値の平均に設定されている。
【0053】
ここで、可動型15b(金型15)の搭載時(図5参照)、可動盤17が斜めに倒れた状態における傾斜角αを測定する。可動型15b(金型15)を搭載した状態において、可動盤17には、可動型15b(金型15)の重量に対応したモーメント荷重が作用する。この場合、傾斜角αは、型締装置2の上下方向(第3方向Z)で見て、可動盤17の上端部が固定盤16に向けて傾斜した結果である。
【0054】
ところで、可動型15b(金型15)を搭載する前(即ち、金型の未搭載時)において(図6参照)、可動盤17には、トグル機構18自体の質量に対応したモーメント荷重が作用する。このとき、モーメント荷重の大きさの程度によっては、例えば、図面にて傾斜角βで示すように、可動盤17と共に、クロスヘッド25が、斜めに倒れてしまう場合がある。
【0055】
このような状態において、例えば、駆動機構20の駆動力を、クロスヘッド25からトグル機構18に伝達する。ここで、トグル機構18によって可動盤17を固定盤16に向けて移動させている間に、型締装置2の上下方向(第3方向Z)で見て、当該可動盤17の下端部が、上端部よりも先行して固定盤16に向けて移動する。
【0056】
別の捉え方をすると、例えば、型締装置2の上下方向(第3方向Z)に沿って垂直に位置付けられた姿勢にあった可動盤17は、トグル機構18によって固定盤16に向けて移動させられる間に、上端部を中心に下端部が傾斜角β(図6参照)に亘って旋回(傾斜)して行く。
【0057】
そこで、調整量(距離)TD及びオフセット量TDは、上記した双方の傾斜角α,βが同等量となるように設定する。ここで、可動盤17に、可動型15b(金型15)を搭載する。このとき、可動盤17には、可動型15b(金型15)の重量に対応したモーメント荷重が作用する。かかるモーメント荷重により、可動盤17は、傾斜角α(図5参照)だけ斜めに倒れる。
【0058】
この状態において、駆動機構20の駆動力を、クロスヘッド25からトグル機構18に伝達する。そうすると、可動盤17は、トグル機構18によって固定盤16に向けて移動させられる間に、上端部を中心に下端部が傾斜角β(図6参照)に亘って旋回(傾斜)して行く。
【0059】
そして、例えば、金型15(固定型15a、可動型15b)の開閉用ガイドピン(図示しない)が、ガイド穴(図示しない)に挿入されるまでに、当該可動盤17は、固定盤16に対して平行に対峙した位置関係となる。換言すると、可動盤17が傾斜角βだけ旋回(傾斜)することで、可動型15b(金型15)搭載時の可動盤17の傾斜角αが打ち消される。即ち、双方の傾斜角α,βが相殺される。この結果、当該可動盤17は、その平行度が調整された状態に維持される。かくして、金型15(固定型15a、可動型15b)の開閉用ガイドピン(図示しない)が、ガイド穴(図示しない)に干渉ないし接触しないように、可動盤17の平行度が調整される。
【0060】
なお、上記した実施形態では、可動盤17(対向面17s)を基準として傾斜角α,βを測定しているが、可動盤17の傾斜角及び傾斜方向は、そのままクロスヘッド25に反映される。このため、例えば、クロスヘッド25が、型締装置2の上下方向(第3方向Z)に沿って垂直に位置付けられた姿勢を基準として、傾斜角α,βを測定してもよい。
【0061】
「一実施形態の効果」
本実施形態によれば、サポート支点25a,25bを、リンク支点L1,L2よりも可動盤17に接近させて配置させる。換言すると、重心Lgを、重心25gに対して可動盤17から離間する方向にオフセットさせる。この状態において、駆動機構20の駆動力を、クロスヘッド25からトグル機構18に伝達する。
【0062】
そうすると、可動盤17は、トグル機構18によって固定盤16に向けて移動させられる間に、上端部を中心に下端部が傾斜角βに亘って旋回(傾斜)して行く。これにより、可動型15b(金型15)搭載時の可動盤17の傾斜角αが打ち消される。双方の傾斜角α,βが相殺される。即ち、可動盤17を固定盤16に対して平行に対峙させることができる。
【0063】
このとき、固定型15aと可動型15bとが平行に対向するように、可動盤17は、その平行度が調整された状態に維持される。かくして、可動盤17の平行度を調整することが可能な平行度調整機能付き型締装置を実現することができる。この結果、例えば、成形精度を一定に維持することができると共に、金型の開閉用ガイドピンが早期に摩耗するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…射出装置、2…型締装置、3…成形ユニット、4…ベース、15…金型、
15a…固定型、15b…可動型、16…固定盤、17…可動盤、18…トグル機構、
19…連結ユニット、20…駆動機構、21…スライド機構、22…トグルサポート、
25…クロスヘッド、25a…第1サポート部(サポート支点)、
25b…第2サポート部(サポート支点)、27…ボールネジ、
28a…第1ガイドロッド(ガイド機構)、28b…第2ガイドロッド(ガイド機構)、
31…ガイドレール、32…支持プレート、33a…第1ガイドブロック、
33b…第2ガイドブロック、L1…第1リンク支点、L2…第2リンク支点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6