(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選択的浸透性ベールの厚さを局所的に変化させて樹脂経路を通じて樹脂を方向付けることによって前記ドライプリフォームへと流れる前記樹脂の体積流量を制御するステップを更に備える請求項1又は2に記載の方法。
前記選択的浸透性ベールを塗布して、前記ドライプリフォームを通じた樹脂経路の長さを増大させるステップと、前記樹脂経路を通じて樹脂を方向付けるステップとを更に備える請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
局所的に選択的な樹脂浸透率を有するドライプリフォームであって、少なくとも1つの強化プライと、該強化プライに塗布される選択的浸透性ベールとを備え、前記選択的浸透性ベールが、所定の空間密度のベールパターンを有するとともに、樹脂注入時及び前記ドライプリフォームの硬化時に前記プリフォームに対して少なくとも局所的に靭性を与えるように樹脂中へ溶解又は溶融するようになっており、前記選択的浸透性ベールの層が不均一に浸透させることができる、ドライプリフォーム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
比較的簡単な幾何学的形態を有するドライプリフォームでは、ドライプリフォームの全ての部分を通じた樹脂の流れを促進させるのに役立つようにメッシュ又は布などの消費可能な流動媒体が剥離プライ上に配置される。しかしながら、この手法は、特に複雑なプリフォーム形状に関して、所望の含浸をもたらさない場合がある。
【0005】
本開示は、以上の問題を念頭に置いて成される。
【0006】
本開示は、一般に、ドライプリフォームを通じた樹脂浸透に局所的に影響を及ぼす方法、複合部品を形成する方法、及び、ドライプリフォームに関する。実施形態によれば、選択的浸透性ベールは、ドライプリフォームの少なくとも1つの強化層に塗布される。その後、樹脂が選択的浸透性ベールを通過するようにドライプリフォームに樹脂が注入される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、本開示は、ドライプリフォームを通じた樹脂浸透に局所的に影響を及ぼす方法を提供する。ドライプリフォームは1つ以上の強化プライを有する。この方法は、ドライプリフォームの強化プライのうちの少なくとも1つに対して選択的浸透性ベールを塗布するステップと、ドライプリフォーム中へ樹脂を注入するステップとを含む。選択的浸透性ベールは、所定の空間密度のベールパターンを有する。樹脂は、該樹脂がドライプリフォームを通じて含浸するように選択的浸透性ベールを通じて方向付けられる。選択的浸透性ベールは樹脂に溶解又は溶融される。樹脂注入時及びドライプリフォームの硬化時にプリフォームに対して少なくとも局所的に靭性が与えられる。
【0008】
好ましい実施形態によれば、選択的浸透性ベールが選択的に不均一に浸透させることができる。
【0009】
選択的浸透性ベールは、局所的に変化する空間密度を有するベールパターンを伴って形成されてもよい。
【0010】
選択的浸透性ベールを通じて流れる樹脂の体積流量は、選択的浸透性ベールの厚さを局所的に変化させて樹脂経路を通じて樹脂を方向付けることによって制御され得る。
【0011】
選択的浸透性ベールは、ドライプリフォームを通じた樹脂経路の長さを増大させるように塗布されてもよい。その後、樹脂は、その終点に達するように樹脂経路を通じて方向付けられる。
【0012】
選択的浸透性ベールは、ベールをドライプリフォームの強化プライ上にインクジェット印刷することによってドライプリフォームに塗布されてもよい。
【0013】
選択的浸透性ベールは、ベールをドライプリフォームの強化プライ上に3D印刷することによってドライプリフォームに塗布されてもよい。
【0014】
他の実施形態において、ベールは、少なくとも1つのノズルを通じたドライプリフォームの強化プライ上へのベール材料の加圧堆積によって塗布されてもよい。
【0015】
或いは、ベールは、ドライプリフォームの強化プライ上にレイアップされてもよい。
【0016】
幾つかの実施形態では、ドライプリフォームが複数の強化プライを備え、また、この方法は、複数の強化プライの少なくとも一部又は各強化プライに対して選択的浸透性ベールを塗布するステップを更に備える。
【0017】
実施形態では、第1のベールパターンを有する選択的浸透性ベールが複数の強化プライの少なくとも第1の強化プライに対して塗布されてもよく、また、第2のベールパターンを有する更なる選択的浸透性ベールが複数の強化プライの少なくとも第2の強化プライに対して塗布される。第2のベールパターンは、第1のベールパターンとは異なる空間密度及び/又は厚さを有してもよい。
【0018】
第2の態様によれば、本開示は、複合部品を製造する方法であって、第1の態様にしたがってドライプリフォームを通じた樹脂浸透に局所的に影響を及ぼして、樹脂注入されたドライプリフォームを形成するステップと、樹脂注入されたドライプリフォームを硬化させて複合部品を形成するステップとを備える、方法を提供する。
【0019】
好ましい実施形態では、樹脂注入中に選択的浸透性ベールを樹脂中へ溶解させることによって複合部品が強化される。
【0020】
他の実施形態では、樹脂注入中に選択的浸透性ベールを溶融させて樹脂中へ分散させることによって複合部品が強化される。
【0021】
第3の態様によれば、本開示は、局所的に選択的な樹脂浸透率を有するドライプリフォームであって、少なくとも1つの強化プライと、該強化プライに塗布される選択的浸透性ベール層とを備え、選択的浸透性ベールが、所定の空間密度のベールパターンを有するとともに、樹脂中へ溶解又は溶融するようになっている、ドライプリフォームを提供する。
【0022】
選択的浸透性ベール層が不均一に浸透させることができてもよい。
【0023】
好ましい実施形態によれば、選択的浸透性ベール層は、局所的に変化する空間密度及び/又は厚さ伴うベールパターンを有する。
【0024】
幾つかの実施形態では、ドライプリフォームが複数の強化プライを備え、また、選択的浸透性ベールは、複数の強化プライの少なくとも一部又は各強化プライに対して塗布される。
【0025】
幾つかの実施形態では、選択的浸透性ベールが樹脂可溶性材料から形成される。他の実施形態において、選択的浸透性ベールは、樹脂硬化プロセス中に溶融して樹脂中に分散するようになっている材料から形成される。好ましくは、溶解した選択的浸透性ベールは、樹脂注入時及びドライプリフォームの硬化時にプリフォームに対して少なくとも局所的に靭性を与える。
【0026】
更なる態様によれば、樹脂が注入されて硬化される第3の態様に係るドライプリフォームを備える複合部品が提供される。
【0027】
更なる他の態様によれば、所定の空間密度のベールパターンを有するとともに、ドライプリフォームに対して少なくとも局所的に靭性を与えるように樹脂中へ溶解又は溶融するようになっており、樹脂注入時及びドライプリフォームの硬化時にドライプリフォームに対して塗布される選択的浸透性ベールが提供される。
【0028】
更なる他の態様によれば、樹脂が注入されたプリフォームを強化する方法であって、更なる他の態様の選択的浸透性ベールをドライプリフォームの少なくとも1つの強化プライ上に配置するステップと、ドライプリフォームに注入される樹脂中へ選択的浸透性ベールを溶解又は溶融させることによってドライプリフォームを強化するステップとを備える、方法が提供される。
【0029】
論じられてきた特徴は、様々な実施形態では独立に達成することができ、或いは、更なる他の実施形態では組み合わされてもよく、それらの実施形態の更なる詳細は、以下の説明及び図面に関連して分かる。
【0030】
ここで、添付図面を参照して、本開示の好ましい実施形態を単なる一例として説明する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ここで、本開示の典型的な実施形態に係る方法及び装置について詳しく説明する。一般に、本開示に係るドライプリフォームを通じた樹脂浸透に局所的に影響を及ぼす方法は、ドライプリフォームの少なくとも1つの繊維強化プライに選択的浸透性ベールを塗布することを含む。その後、樹脂が選択的浸透性ベールを通過するようにドライプリフォームに樹脂が注入される。選択的浸透性ベールは、選択的に不均一に浸透させることができてもよく、また、強化プライの幾つかの領域を通じた樹脂の流れを加速させ及び/又は強化プライを通じた樹脂の流れを他の領域で減速させてプリフォームを通じた樹脂の含浸を制御するように形成され得る。ベールは、該ベールをドライプリフォームの強化プライ層上に3Dインクジェット印刷することによって強化プライに塗布され得る。また、選択的3D印刷方法によって又は噴圧ノズル堆積によって又は手動レイアップによってベールを強化プライ層に塗布できることも想定される。その後、複合部品を製造するために、樹脂が注入されたドライプリフォームが一般に加熱炉内で硬化されてもよい。
【0033】
ここで、添付図面の
図1を参照して、ドライプリフォームの樹脂注入のためのシステム100について説明する。システム100は、上面14と反対側の下面15とを有するドライ複合プリフォーム10を有する。上面14及び下面15はそれぞれプリフォーム主面を画定する。ドライプリフォーム10には、樹脂供給源141に設けられる発熱硬化樹脂が注入されるようになっている。
【0034】
図1に示されるシステムは、単一真空バッグ複合レイアップ構成を成す。この構成において、システム100は、上側工具面111を有する工具110を有し、この場合、ドライプリフォーム10の下面15が工具面111上に位置される。真空バギング膜130が、ドライプリフォーム10上にわたって延伸するとともに、真空バギング膜130と工具面111との間に第1の密閉空隙部140を画定するように工具面111に対してシールされる。ドライプリフォーム10は第1の空隙部140内に位置される。また、第1の真空バギング膜を覆う第2の真空バギング膜を使用して、硬化プロセス中に真空圧が印加される際に単一真空バギング膜を通じた想定し得る空気浸透を最小限に抑えることができることも想定される。
【0035】
工具110は、樹脂硬化プロセスにもかかわらず幾何学的に安定な工具面111をもたらすために、硬化と関連する高温でその形状を維持する軟鋼、ステンレス鋼、インバー、又は、カーボン複合材料を含む任意の様々な構造材料から形成されてもよい。工具面111は、翼又は胴体のスキンパネルなどのほぼ平坦な下面を有する複合構造の製造のためにほぼ平坦であってもよく、又は、さもなければ、非平坦な複合構造の成形面をもたらすように望み通りに形成されてもよく、例えば、工具は成形体又はマンドレルであってもよい。
【0036】
ドライプリフォーム10は、製造されるべき積層複合構造の幾何学的及び構造的な要件によって決定付けられるような樹脂注入に適した任意の形態を成してもよい。
図2の実施形態において、ドライプリフォーム10は、それぞれが織り繊維又は編組繊維及び/又はチョップドストランドマットから形成される強化材料の複数のプライ202のレイアップを備える。プリフォームプライ202は、カーボン、グラファイト、ガラス、芳香族ポリアミド、又は、樹脂強化積層複合構造を製造するのに適した任意の他の材料などの任意の様々な強化繊維から形成されてもよい。プライ202は、樹脂を何ら伴わずにドライプリフォーム10を形成する。プライは、選択的浸透性ベール205の層と交互に配置される。ドライプリフォーム10は、結果として得られる硬化複合構造の下面が工具面111の形状と一致するようにプリフォーム10の下面15が工具面111上で方向付けられた状態で工具面111上に位置される。工具面111上に位置されるドライプリフォーム10は、横方向に延伸する下流側縁部11と、反対側の横方向に延伸する上流側縁部12と、両側の縦方向に延伸する側縁部とを有する。本明細書の文脈において、ドライプリフォーム10の上流側及び下流側は、更に説明されるように、樹脂の流れ方向に関して特定される。プリフォーム10は、形成されるべき積層複合構造の形状に対応する任意の所望の形状を成すことができる。
【0037】
ドライプリフォームは、一様な厚さを有してもよく、或いは代わりに、
図1及び
図2の第1の実施形態に描かれるように、ドライプリフォーム10は、上面14と下面15との間で測定される局所的に一様でない厚さを有してもよい。特に、図示の構成では、ドライプリフォーム10の一部分16は、ドライプリフォーム10の平均厚さよりもかなり大きい厚さを有する。この第1の実施形態において、ドライプリフォーム10の厚肉部16は、製造されるべき特定部品の局部的な構造的特徴を与えるために強化材料の付加的なプライを備えている結果として厚さが増す。例えば、付加的なプライは、結果として得られる複合部品内に締結具が受け入れられるプリフォーム10の位置で「パッドアップ」領域を形成することができる。局所的に増大された厚さを有するドライプリフォームのそのような部分は、プリフォーム、したがって樹脂の厚さの増大を考えると、一般に、樹脂が注入された時点でプリフォームの単位表面積当たりの樹脂の量が多い。しかしながら、以下で更に論じられるように、そのような厚肉部は、樹脂が厚肉部16に含浸しなければ、樹脂の枯渇をより起こし易い。以下、強化プライ202と交互に配置される選択的浸透性ベール205の複数の層について更に詳しく説明する。
【0038】
樹脂供給源141は、1つ以上の樹脂供給パイプ146を介して、ドライプリフォーム10の上流側で工具110を貫通して延伸する1つ以上の樹脂注入口112を通じて第1の空隙部140と連通する。樹脂供給パイプ146は一般に銅から形成される。第1の真空源151が、1つ以上の真空出口パイプ154を介して、ドライプリフォーム10の下流側で工具110を貫通して延伸する1つ以上の真空出口113を通じて第1の空隙部140と連通し、真空出口パイプ154も一般に銅から形成される。工具110を貫通して延伸する樹脂注入口112及び真空出口113を介して樹脂供給源141及び第1の真空源151を第1の空隙部140と連通させるのではなく、樹脂供給源141及び第1の真空源151が真空バギング膜130を介して第1の空隙部140と連通してもよいことも想定される。そのような構成では、開口部が、真空バギング膜130に形成されるとともに、開口部の周囲で密閉して樹脂供給源141及び第1の真空源151と連通されてもよい。図示の実施形態では、樹脂供給源141が第2の真空パイプ157を介して第2の真空源155とも連通する。
【0039】
流路142が、樹脂供給源141から、第1の空隙部140、ドライプリフォーム10を通じて、第1の真空源151まで延伸する。流路142の上流側部分は、樹脂供給パイプ146と、工具110を貫通して延伸する樹脂注入口112とを備える。第1の空隙部140によって画定される流路142の中間部分は、ドライプリフォーム10と、真空バギング膜130の真下に位置される様々なレイアップ材料層とによって形成される。レイアップ材料は、ドライプリフォーム10の上流側縁部12及び下流側縁部11のそれぞれを越えて、ドライプリフォーム10全体上に直接に位置されてドライプリフォーム10全体上にわたって延伸する浸透性剥離プライ145を含み、この場合、剥離プライ145の下流側部分144は、ドライプリフォーム10の下流側縁部11の下流側で延伸する。浸透性流れ媒体の層147が、剥離プライ145上にわたって配置されるとともに、剥離プライ145の上流側縁部を越えて樹脂注入口112を越えるまで延伸する。浸透性流れ媒体の層147は、ドライプリフォーム10の下流側縁部11を越えて延伸するが、剥離プライ145の下流側部分144の全体を覆わない。剥離プライ145は、浸透性流れ媒体の層147がドライプリフォーム10に固着するのを防止する役目を果たすとともに、ドライプリフォーム10の上流側縁部12に沿う及びドライプリフォーム10の上面14を通過する、選択的浸透性ベール205を通り抜けることを含む剥離プライ145を通じたドライプリフォーム10中への樹脂の注入経路も与える。また、剥離プライ145は、樹脂の硬化中に放出される揮発性物質をドライプリフォーム10から引き離すことができるようにする。また、剥離プライ145は、浸透性流れ媒体も構成するとともに、AirTech International Incから入手できるRelease Ease 234(登録商標)などのPTFE被覆ガラス繊維布又は任意の他の浸透性剥離プライ材料の形態を適切に成してもよい。浸透性流れ媒体の層147は、第1の空隙部140からの揮発性物質の逃げ道と共に、ドライプリフォーム10の上端に沿って第1の空隙部140を通過する樹脂のための通路を与える。浸透性流れ媒体の層147は、AirTech International Incからも入手できるPlastinet 15231(登録商標)などのナイロンメッシュ材料又は浸透性流れ媒体の層147を通じた樹脂の通過を可能にする任意の他の非常に浸透性がある媒体の形態を適切に成してもよい。これに関しては、注入の質が最も重要である。浸透率が低い流れ媒体147によりプリフォーム10上にわたって制御された樹脂フローフロントを維持することによって、より清浄な注入が得られる。浸透性流れ媒体147は、プリフォームが許容範囲内で含浸されるまで樹脂がプリフォームを浸すべく楔形状の流れプロファイルを伴ってプリフォームを通じて一様に流下できるように樹脂が十分にゆっくりと側方に流れることができるようにすべきである。制御されたフローフロントにおいて、浸透性流れ媒体147がプリフォーム10の真空バギング膜130側にのみ配置されるとともに注入がプリフォームに許容範囲内で含浸させるべく媒体147を貫く側方流とその後の下方流とを含むと仮定すると、プリフォーム10の真空バギング膜130側の樹脂フロントは、プリフォーム10の工具110側の樹脂フローフロントよりも2インチ又は3インチだけ前方にあるにすぎない。流れ媒体147の相対浸透率は、制御された注入を達成するためにプリフォームの相対浸透率に合わされる。
【0040】
流路142の下流側部分は、浸透性流れ媒体の更なるストリップ143、真空出口113、及び、真空出口パイプ154を備える。浸透性流れ媒体のストリップ143は、剥離プライ145の下流側部分144の下流側縁部を横切って延伸するとともに、真空出口113を横切って更に下流側に延伸する。浸透性流れ媒体のストリップ143は、一般に、浸透性流れ媒体の層147と同じ材料から形成される。隙間が浸透性流れ媒体の層147とストリップ143との間に位置される。したがって、樹脂は、第1の空隙部140に入って、上流側から下流側へと浸透性流れ媒体の層147を通じて移動し、この場合、樹脂の一部は、樹脂が浸透性流れ媒体の層147を通過する際に、プリフォームに樹脂が含浸されるまで剥離プライ145を通過してプリフォーム10に注ぎ込む。
【0041】
真空バギング膜130は、ドライプリフォーム10と、剥離プライ145と、浸透性流れ媒体の層147及びストリップ143とによって形成されるレイアップ全体上にわたって延伸する。Airtech International Incから入手できるAirtech WL7400又はSL800真空バギング膜を含むがこれらに限定されない任意の様々な真空バギング膜材料が利用されてもよい。真空バギング膜130は、該真空バギング膜130の外周付近でシールテープのストリップ131により工具面111に対してシールされ、シールテープのストリップ131は、AirTech International Inc.から入手できるGS−213−3シーラントテープなどのマスチックシーラントテープの形態を成すことができるのが都合良い。
【0042】
真空バギング膜130は、樹脂流路142の上側境界を画定する。浸透性流れ媒体の層147とストリップ143との間に位置される隙間では、真空バギング膜130が、工具面111と真空バギング膜130との間の流路142の厚さを剥離プライ145の下流側部分144に制限し、剥離プライ145の下流側部分144は、一般に、浸透性流れ媒体の層147と比べて低い浸透率を有する。したがって、樹脂の全ての下流側の流れが剥離プライ145の下流側部分144を通じて制限され、それにより、樹脂の流速を真空出口113まで減速させる浸透樹脂流制御チョーク180が形成される。
【0043】
ここで
図2を参照すると、プリフォーム10を構成する複数の強化プライ202は、互いに上下に積層されるとともに、選択的浸透性ベール205の層と交互に配置される。プリフォーム10は、ベール層205a,205b,205c,205d間で交互に配置される3つの強化プライ202a,202b,202cを備える。ベール層205は、強化プライ202と交互に配置されることにより、それらが樹脂に溶け込んで又は溶融して樹脂と局所的に混合するとともに隣接する強化プライ202に含浸させた時点で、結果として得られる複合部品に対して高い強度及び靭性を与える。選択的浸透性ベール層205は、カーボンフィラメント、ガラスフィラメント、及び、熱可塑性ポリマー、例えばビニルエステル、ポリエステル、フェノール、エポキシ、ビスマレイミド、シアネートエステルを含むがこれらに限定されない、結果として得られる複合部品の所望の特性を与えるのに適した任意の材料から形成されてもよい。ベール材料は、その溶融温度よりも低い温度で硬化性樹脂マトリックスに少なくとも一部が化学的及び物理的に溶けることができる可撓性の熱可塑性ポリマー要素を含んでもよい。或いは、ベール材料は、高い硬化温度で樹脂に溶け込んで樹脂中に拡散してもよい。
【0044】
図2の例において、ベール層205a,205b,205c,205dのそれぞれは、プリフォーム10を通過する樹脂流量を増大又は減少させて特定の目的を達成するために、特定の選択的な浸透率を伴って形成されてしまっている。浸透率は、層を構成するベール材料のパターンによって決定される。幾つかのベール層(例えば、
図2、
図2b、及び、
図2cに示されるベール層205c,205d)は、層全体にわたってほぼ均質な空間密度を伴うベールパターンを有し、したがって、ベール層全体にわたってほぼ一様な又は均一な浸透率を有する。他のベール層(例えば、
図2及び
図2aに示されるベール層205a,205b)は、特定の樹脂注入量を達成するように形成される局所的に異なる空間密度の領域を伴うベールパターンを有して、不均一に浸透させることができる。ベール層205aは、最も上側の強化プライ202aよりも上側に位置するとともに、制御されたペースでプリフォーム10を通じて注入されるべき樹脂の樹脂フローフロント270を維持しつつプリフォーム10の大きな領域の全体にわたって樹脂を均一に着実に分配するようになっている所定の空間密度を有する中間浸透率パターン245から主に成る。パターンは、「高」又は「低」浸透率を有するように定められるプリフォーム10内の他のベール層又は同じベール層の他の部分の浸透率に対して「中間」浸透率を有するように定められる。したがって、ベール層又はベールの一部分の異なる定められた浸透率は、ベール又はベールの一部分を通じて樹脂を異なる流量で分配する目的で、ベール又はベールの一部分の相対気孔率を与えるようになっている。例えば、強化プライ202aの厚肉部16の真下で、ベールパターンは、樹脂がプリフォーム10の高密度の厚肉部16に容易に流れ込むことができるようにするために、中間浸透率パターン245よりも密度が小さく、したがって中間浸透率パターン245よりも多孔性が高い空間密度を有する(中間浸透率パターンに対して)高い浸透率のパターン250を有する。樹脂は、ベール205aの中間浸透率パターン245の領域を通じて水平に移動し、それが高浸透率パターン250の領域に到達すると、より素早く流れる。また、樹脂の一部は、ベール205aを通じてベール205aのプリフォーム側に垂直に流れ込む。この組み合わせにより、樹脂は、厚肉部16に流れ込んで、そうでない場合よりも素早く厚肉部16に含浸できる。このように、選択的浸透性ベール205aの中間浸透率領域及び高浸透率領域の位置の選択は、樹脂フローフロント270の制御を維持しつつ、プリフォーム10の不完全な樹脂含浸を防止するべく浸透率が低い厚肉部16へ向けて垂直に樹脂流を加速させるように設計される。
【0045】
ベール層205bは、強化プライ202a,202b間に位置するとともに、プリフォームの厚肉部16の真下に高浸透率パターン250の領域を伴う中間浸透率パターン245の同様の不均一な形態を有し、それにより、樹脂は、より素早くベールに水平に流れ込んで厚肉部16の領域でベールを垂直方向に通過して流れ、そうでない場合に想定し得るよりも素早く厚肉部を充填できる。ベール層205cは強化プライ202b,202c間に位置する。このベール層は、樹脂フローフロント270がプリフォーム10を通じて水平にかなり遠くまで進行する前に厚肉部16を充填できるようにする流量で樹脂をプリフォーム10の全体にわたって均一に着実に分配できるようにするべく意図される所定の空間密度を伴って全体にわたり均一な中間浸透率パターン245を有する。ベール層205dは、工具110に最も近い強化プライ202cの真下に位置する。このベール層は、樹脂フローフロント270が真空出口113に達する前にプリフォーム10に樹脂が許容範囲内で含浸されるようにするために、層全体にわたって均一であるとともにベール205dを通じて真空出口113へと水平に向かう樹脂の流れを遅らせる又は抑制するようになっている(中間浸透率パターン245に対して)空間的に密度が高く浸透率が低いパターン255を有する。したがって、樹脂が真空出口113へと流れる前に、通常は不完全な注入を起こし易い場所を含む全ての場所でプリフォーム10中への樹脂の完全な含浸を達成するために、ベールパターンは、それらが適用されるプリフォームの幾何学的形態の特定の要件にしたがって層ごとに選択される。
【0046】
図2及び
図2a〜
図2cに示されるベールパターンは、ベールの浸透率又は多孔率の変化を得るために使用できる想定し得るベールパターンの例である。このとき、選択された浸透率を有するベール層は、プリフォーム10を通じた樹脂の流れを制御するように位置され得る。想定し得るベールパターンの他の例が
図4及び
図5に示される。
図4は、様々な空間密度のベールパターンをもたらすためにサイズが増大され又は減少され得る円430のベールパターンの平面図を示す。
図4において、樹脂流の方向は、矢印431によって示されるように、
図4の下端から上端へ向かってもよい。図の下端では、
図4の下端にある個々の円430が大きいとともにそれらの円間の隙間が小さいため、樹脂がベールの平面内及びベールに対して垂直な方向の両方でベールを通じてゆっくりと流れる。樹脂がベールに沿って流れるにつれて、個々の円430のサイズが減少し、それらの円間の隙間が次第に大きくなる。パターンの空間密度が減少するにつれて、ベールの平面内(樹脂がベールに沿って進む水平方向)及びベールに対して垂直な方向(樹脂がベールを貫いて進む垂直方向)の両方で樹脂流量が徐々に増大する。
図5は、正方形が交互に入れ替わるチェッカーボードベールパターンの例の平面図を示す。暗い正方形530はベール材料の領域を表わしてもよく、一方、明るい正方形535はベールの隙間を表わしてもよい。図示のパターン例は、異なるサイズ及び空間密度を有しており、
図2b及び
図2cに示される前述したベール層205b又は205cと同様の選択された均一な空間密度のベール層をもたらすべく個別に使用され得る。或いは、それらのパターン例は、
図2aに示される前述したベール205aと同様の態様で様々な空間密度のベールパターンを得るために組み合わせて使用され得る。
図4及び
図5のそれぞれにおいて、ベールパターンの多孔率は、
図4の円430のサイズとそれらの円間の隙間のサイズとによって、及び、
図5のパターンにおける暗い正方形535のサイズとそれらの正方形間の隙間のサイズとによって決定される。任意の所定のパターンにおいては、円430又は正方形530などの要素間の開放空間又は隙間の大きさが大きくなるほど、プリフォームを通じて水平方向及び垂直方向の両方向で流れる樹脂に対するベールの多孔率が増大し、それにより、ベールに沿う及びベールを貫く樹脂の流量が増大する。逆に、ベールパターンの密度が高くなるほど、ベールに沿って及びベールを貫いて移動する樹脂の流速が遅くなる。多孔質パターン、例えば
図2、
図2a〜
図2c、
図4、及び、
図5に示される多孔質パターンを有するベール205の位置は、
図2の例に及び後述する
図7−9に示されるように、ベールがプリフォーム10を通じた樹脂分配にどのような影響を及ぼすのかを決定する。
【0047】
ベール205は、プリフォーム10とは独立に製造されて、ベール205をプリフォーム10の強化プライ202に溶融結合することによってプリフォーム10に塗布されてもよい。或いは、ロボットインクジェット印刷を使用してベール205を強化プライ202に塗布することができる。ロボット印刷では、特別に設計された熱可塑性ベールパターンを各強化プライ202に選択的に塗布して、複合一体型構造、例えば
図2に関連して前述した複合一体型構造の樹脂含浸を可能にするプリフォーム10の浸透率を局所定に変えるベール網をプリフォーム10内に構築することができる。ドライプリフォーム内に選択的浸透性ベール205を形成する1つの方法は、
図3に示されるような3Dデジタルインクジェットプリンタ400を用いてベール205を強化プライ202に塗布することである。デジタルインクジェットプリンタ400は、圧電性結晶403の振動時にノズル401から僅かな量のベール材料を押し出して、密度が変えられるベールパターンを得る複雑な特注設計のベール形態を強化層202上に塗布してベール205を形成できるようにする圧電インクジェットプリンタである。インクジェットプリンタ400は3Dプリンタであり、また、所望のベール塗布に必要なベール厚が得られるまで所定のパターンの複数の層を互いの上に印刷することによってベール205の層を形成することができる。ベールを強化プライ上に3D印刷する他の手段も想定される。ベール205の浸透率は、強化プライ202上に印刷されるべきベールパターンの選択的な事前決定によって正確に制御できる。ベール205の浸透率は、ベールパターンの空間密度及び/又は三次元厚さを変化させることによって変えることができる。空間密度を変化させると、ベールに沿う水平な樹脂流れ方向及びベールを貫く垂直な流れ方向の両方向でベール浸透率が増大又は減少する。厚肉のベールは、樹脂が厚肉のベール層を通じてプリフォームへと流れるために長い時間を要するため、ベールを垂直に貫く浸透率に影響を及ぼす。
【0048】
前述の印刷技術の1つの実施形態では、ベールが製造される際に印字ヘッドをブレーディングライン上に位置させてベール材料をブレード上に直接に印刷することができる。
【0049】
強化プライ202上にベール205を印刷するための更なる代替案は、噴圧堆積装置及び技術を使用してベール材料を強化プライ202上に堆積させることである。この実施形態では、ベール材料が最初に加圧供給源203内に収容される。ベール材料は、
図6に概略的に示される一群の堆積ノズル207にベール材料を流入させるソレノイド弁204の制御された開閉により、予め決定された量で、所定の空間密度のベールパターンにしたがって強化プライ202上に堆積される。この装置は、一般に、7〜18個のノズルを有してもよい。ベール205は、浸透率が層全体にわたって均一であろうと或いは特定の領域で局所的に不均一であろうと、ベール層の浸透率の正確な制御を可能にする所定のパターンにしたがって強化プライ202をベール材料で覆うことにより形成される。この装置を使用して形成されるベールは、所望の空間密度のベールパターンを選択することにより、主に水平方向でベールを通過する樹脂の流れを制御するように再び調整されてもよい。また、一部の樹脂がベール205を貫いて垂直に流れ、また、この場合も先と同様に、複数の層の塗布によるベールの厚さの増大がベールの垂直方向の浸透率に影響を及ぼす。
【0050】
選択的な浸透率を有するベール層を異なるタイプのドライプリフォームに塗布する更なる実施形態が
図7〜
図9に示される。
図7の実施形態では、航空機の翼のための大きなドライプリフォーム310の強化プライ302が平面図で示される。
図7に示される強化プライ302がプリフォーム310を形成するようにレイアップされる多数の強化プライのうちの1つであり、また、プリフォームがその上側に及び/又はその下側に強化プライ302を有してもよいことに留意すべきである。プリフォーム310は上方から見たときにそのような大きな領域を有するため、樹脂がプリフォームの全領域及び末端に達する前に樹脂が固化する可能性がある。この問題に対処するために、選択的浸透性ベール305を強化プライ302に塗布して、樹脂が強化層302を通じて水平に移動するのを助ける。
図7に示される外周365は翼縁部外周に相当し、また、選択的浸透性ベール305が上側翼表面上又は下側翼表面上で使用されてもよい。選択的浸透性ベール305は主に中間浸透率パターン245を成す。中間浸透率パターンは、樹脂が安定した速度でベール305を通じて水平に流れることができるようにするべく意図される所定の空間密度を有する。また、一部の樹脂は、ベール305を垂直に貫いてベールの真下の強化プライ302へと流れ込む。しかしながら、ベール305は、翼の根元355から翼の先端360へ向けて延伸する縦方向部分363と、縦方向部分から翼の前縁361及び後縁362へ向けて延伸する複数の分岐部364とを有する高浸透率パターンの領域も含む。高浸透率パターン領域363,364は、ベール305を水平に通過する樹脂の流れを加速させて樹脂がプリフォームの全領域及び末端に注ぎ込む前に樹脂が固化することを防止するようになっている空間密度を有する。樹脂はベール305を水平に通過して移動するが、一部の樹脂は、ベールを垂直に貫いてプリフォームへも流れ込む。水平方向の樹脂分配から垂直方向の樹脂分配への移行は、ベール305の位置決め及び配向によって対応される。これは、樹脂が常にプリフォームを水平方向及び垂直方向の両方向で通過して流れるからである。これらの高浸透率パターン部分363,364の位置を選択して、樹脂がベール305の高浸透率パターン領域を通じてより速く移動できるようにすることにより、そうでない場合よりも速く樹脂が大きいプリフォーム310の遠隔領域に到達し、それにより、不完全な樹脂含浸が防止される。
【0051】
図8の実施形態では、円筒状のドライプリフォーム410の強化プライ402上に螺旋状に配置されるベール405が塗布される。円筒状のプリフォームは、胴体のような構成要素又はスキンのための補強要素のような構成要素の基礎を形成してもよい。プリフォームは、樹脂で均一に含浸させることが困難となり得る複雑な幾何学的形態を有する。螺旋状に配置されるベール405は、強化プライ402の浸透率に対して高い浸透率のパターンを有するベールのストリップであり、このストリップは、円筒状の強化プライ402の周囲に配置されて、浸透率が低い強化プライ402へ樹脂を素早く供給する。ベール405の高い浸透率は、樹脂がベールを通じて素早く移動できるようにする。プリフォーム410の周囲でのベール405の螺旋状の配置は、強化プライ402の完全な樹脂含浸を確保するとともに、樹脂のトラップオフを防止する、すなわち、許容範囲内でプリフォームに含浸させるのに不十分な量の樹脂が存在する領域をプリフォーム内に形成することを防止するようになっている。この実施形態において、樹脂は、主に、矢印420によって概略的に示されるように円筒状のプリフォーム410上のベール405の表面をたどるが、樹脂は、ベール405を垂直に通過して、すなわち、矢印430により概略的に示されるようにプリフォーム表面に対してほぼ垂直にベール405を通過してその真下の強化プライ402へも流れ込む。したがって、この例では、ベールが強化プライ402よりも高い浸透率を有するため、ベールが塗布される強化プライ402の領域へと樹脂を方向付けるようにベール405の位置決め及び螺旋状の配向が使用される。ベール405の低い空間密度、したがって高い浸透率により、樹脂は、ベール405を素早く充填した後、強化プライ402の残りの部分に含浸させるべく流出できる。
【0052】
これらの実施形態において、ベールの厚さは、プリフォームの特定領域への樹脂の流量に局所的に影響を及ぼすように変えることができる。
図9の実施形態は、他の円筒状のドライプリフォーム510の強化プライ502に塗布されるベール505を概略的に示す。この実施形態では、ベール505が強化プライ502の円筒状の表面全体を覆う。ベール505は、強化プライ502の周囲に配置される高浸透率パターン領域を有する螺旋状に配置される二重厚部分507と組み合わされる中間浸透率ベールパターンを有するベールの単一厚部分506を主に備える。中間浸透率パターン部分506は、先に言及されたベール層205cと同様の態様で樹脂をプリフォーム全体にわたって均一に着実に分配できるようにするべく意図される所定の空間密度を有する。樹脂は、ベール505を「水平に」通過して流れる。すなわち、樹脂は、矢印520によって概略的に示されるように円筒状のプリフォーム表面に塗布されるようにベールの曲面をたどり、この場合、樹脂の一部は、ベール505を「垂直に」通過して、すなわち、矢印530によって概略的に示されるようにプリフォーム表面に対してほぼ垂直に通過して強化プライ502にも流れ込む。高浸透率パターン部分507は中間浸透率パターン部分506よりも低い空間密度を有し、この空間密度は、ベール505の高浸透率領域507で樹脂の流量を増大させるようになっており、それにより、樹脂は、その後、さもなければ樹脂のトラップオフを起こし易い強化プライ502の領域に達するように流出できる。高浸透率部分507の二重厚は、樹脂が中間浸透率パターン部分506におけるよりも大きな流量でベール505の高浸透率領域を垂直に通過できるようにして、プリフォーム固化を加速させ、樹脂のトラップオフを防止する。
【0053】
逆に、選択的浸透性ベールを使用して、プリフォームの特定の領域を通じた樹脂注入を減速又は制限することもできる。これが望ましいかもしれない例が前述の
図2に示されており、この例では、樹脂フローフロント270が真空出口113に達する前にプリフォーム10の厚肉部16を充填する必要がある。したがって、プリフォーム10の下端で、ベール層205dは、厚肉部16に樹脂が許容範囲内で含浸される前に樹脂が真空出口113に達することを防止するべく、空間的に密度が高くベール205dを水平に通過する樹脂の流れを遅くするようになっている低浸透率パターン255を成す。
【0054】
そのため、選択的浸透性ベールの正確な幾何学的塗布により、プリフォームの浸透率に局所的に影響を及ぼす方法は、異なるタイプの複雑な幾何学的形態のプリフォームの特定領域を通じた樹脂の流れを促進させることができ、それにより、以前は確実に注入され得なかった複合一体型プリフォームの幾何学的形態が潜在的に可能になる。
【0055】
使用時、
図2のプリフォーム10を含むシステム100が前述のように組み立てられた時点で、樹脂を適切な樹脂注入温度に至らせるために樹脂供給源141が加熱される。一般に、システム全体は、その後の硬化のためにも使用される炉170内で加熱される。樹脂注入のための温度は、利用される樹脂システムに依存し、一般的には、樹脂が樹脂流路142を通じて流れることができるようにする適切な粘度を与えるように選択される。エポキシ樹脂の場合、適切な注入温度は100〜110℃の範囲内であってもよい。
【0056】
少なくとも部分的な真空圧が、第1の真空源151及び真空出口113を介して、第1の空隙部140の下流側端部に印加される。
図1に示されるように、第2の真空パイプ157に接続される第2の真空源155を用いて、より小さい部分的真空(すなわち、より高い絶対圧)が樹脂供給源141に印加されてもよい。第1の空隙部140の真空バギング膜130下の真空は、樹脂溜り及びそれに関連する樹脂注入プロセスの制御の損失をもたらす可能性がある真空バギング膜130の弛緩を防止するのに役立つ。第2の真空源155によって部分的な真空が樹脂供給源141に印加される場合には、第1の真空源151により印加される真空出口113における絶対圧が樹脂供給源141における絶対圧よりも低いように第1の真空源151と第2の真空源155との間で圧力差が維持されてもよい。1つの例では、第1の真空源151によって完全真空(0mbar/0kPa絶対圧)が印加されてもよく、また、500〜800mbar絶対圧(50〜80kPa)のより高い圧力/より低い真空が第2の真空源155に印加され、それにより、樹脂供給源141から樹脂流路142を通じて樹脂を推し進める同じ大きさの圧力差を与えてもよい。樹脂を脱気するために樹脂注入前に完全真空圧が第2真空源155によって樹脂供給源141に印加されてもよい。
【0057】
樹脂供給源での少なくとも部分的な真空の維持は、第1の空隙部140の全体にわたって少なくとも部分的な真空が維持されるようにする。真空バギング膜130、浸透性流れ媒体の層147、及び、剥離プライ145を通じてドライプリフォーム10に作用する大気圧は、ドライプリフォーム10を固化させるように作用する。樹脂は、一般に剥離プライ145及びドライプリフォーム10の両方よりも大きい浸透率を有する、したがって最小抵抗の経路を形成する浸透性流れ媒体の層147を介して、波面を形成するべく第1の空隙部140を通じて移動する。浸透性流れ媒体の層147を水平に通過する樹脂も、浸透性が低い剥離プライ145を通じて流下し、プリフォーム10に塗布されるベール205の位置及び/又はベール205の方向の選択とそれに伴うプリフォームを通じた流路の浸透率又は多孔率の変化とに応じて、ベール形態にしたがって異なる流量で浸透率が変わる経路を通じて樹脂を水平及び垂直の両方で流す選択的浸透性ベール205の層を介して、プリフォーム10内に注ぎ込む。また、一部の樹脂は、ドライプリフォーム10の上流側縁部12を通過して横方向にも流れるとともに、より少ない度合いで、ドライプリフォーム10の反対側の縁部も通過して流れる。浸透性流れ媒体の層147の下流側縁部11の終わりが浸透性流れ媒体のストリップ143及び剥離プライ145の下流側部分144の両方の手前にあると、樹脂がプリフォーム10を迂回して単に浸透性流れ媒体の層147を通じて真空出口113へと直接に引き出されることが防止される。樹脂フローフロントが真空出口113に達する前に許容範囲内で樹脂が含浸されなければならない厚肉部16をプリフォーム10が含むこの実施形態の例では、樹脂がドライプリフォーム10の下流側縁部11及び浸透性流れ媒体の層147の下流側縁部を通り過ぎる時点で剥離プライ145の下流側部分144によって画定される浸透性樹脂流れ制御チョーク180を通じて樹脂を下流側へ縦方向で通過するように押し進めることによって樹脂フローフロント270の進行速度が抑制される。しかしながら、流れ制御チョーク180は、全ての樹脂注入用途において必ずしも必要でない場合がある。
【0058】
樹脂可溶性材料から形成されるベール205,305,405,505の層は、樹脂注入中に樹脂中へ溶解して、プリフォームに含浸させる樹脂と混合し、それにより、複合部品を製造するべく硬化時に注入されたプリフォームが強化される。プリフォームを強化するとは、プリフォーム及び結果として得られる複合部品の性能が衝撃に対して向上されることを意味する。一実施形態において、ベールのこの特性は、ベールを熱可塑性材料から製造することによって得られる。
【0059】
ドライプリフォーム10が完全に樹脂注入された時点で、樹脂の硬化に適した温度まで炉170の温度を徐々に上昇させることによって、樹脂が注入されたドライプリフォーム10がその後に硬化されてもよい。典型的なエポキシ樹脂の場合、180℃〜200℃程度の硬化温度が典型的である。樹脂が注入されたドライプリフォーム10が固化されたままとなるようにするとともに、樹脂の硬化を助けるために、一般に硬化プロセス中に第1の真空源151で完全な真空が維持される。
【0060】
樹脂可溶性ではないベール205,305,405,505の層は、硬化プロセス中に樹脂中へ溶融して、樹脂を通じて分散し、結果として得られる複合部品を強化する。
【0061】
1つ以上の強化プライを有するドライプリフォームを通じた樹脂浸透に局所的に影響を及ぼす一般的な方法が
図10に示される。ブロック601では、所定の空間密度のベールパターンを有する選択的浸透性ベールが、ドライプリフォームの強化プライのうちの少なくとも1つに対して塗布される。その後、ブロック602において、樹脂がドライプリフォームに注入される。ブロック603では、樹脂がドライプリフォームに含浸するように樹脂が選択的浸透性ベールを通じて導かれる。ブロック604では、選択的浸透性ベールが樹脂中へ溶解される。ブロック605では、樹脂注入時及びドライプリフォームの硬化時に、プリフォームに対して少なくとも局所的に靱性が与えられる。
【0062】
本開示の実施形態は、
図11に示される航空機の製造及び保守点検方法700及び
図12に示される航空機702との関連で説明されてもよい。生産前の間にわたって、典型的な方法700は、航空機702の仕様及び設計704と、材料調達706とを含んでもよい。生産中、構成要素及び部分組立品の製造708と航空機702のシステム統合710とが行なわれる。その後、航空機702は、就航714するために認証及び搬送712を経由してもよい。取引先による就航中、航空機702は、定期的な整備及び保守点検716(改装、再構成、改修等を含んでもよい)の予定が組まれる。本発明の方法、ベール、及び、構成要素が、構成要素及び部分組立品の製造708中、システム統合710中、又は、整備及び保守点検716中に利用されてもよいことが想定される。また、本発明の方法、ベール、及び、構成要素が、機体718及び内部722を製造するために利用されてもよいことが想定される。
【0063】
方法700のプロセスのそれぞれは、システム統合者、第三者、及び/又は、オペレータ(例えば、取引先)によって実行され或いは行なわれてもよい。この説明の目的のため、システム統合者は、制限なく、任意の数の航空機製造業者及び主要システム下請業者を含んでもよく、第三者は、制限なく、任意の数のベンダー、下請業者、及び、サプライヤーを含んでもよく、また、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事企業、保守点検機関等であってもよい。
【0064】
図12に示されるように、典型的な方法700により生産される航空機702は、複数のシステム720及び内部722を有する機体718を含んでもよい。本発明は、機体718の製造で使用されてもよい。高レベルシステム720の例は、推進システム724、電気システム726、油圧システム728、及び、環境システム730のうちの1つ以上を含む。任意の数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙の例が示されるが、本発明の原理は、例えば自動車産業等の他の産業に適用されてもよい。
【0065】
本明細書中で具現化される装置及び方法は、製造及び保守点検方法700の任意の1つ以上の段階中に使用されてもよい。例えば、製造段階708に対応する構成要素又は部分組立品は、航空機702が就航中の間に生産される構成要素又は部分組立品と同様の態様で組み立てられ又は製造されてもよい。また、1つ以上の装置実施形態、方法実施形態、又は、これらの組み合わせは、例えば航空機702の組み立てを実質的に促進させる或いは航空機702のコストを低減することによって製造段階708,710中に利用されてもよい。同様に、装置実施形態、方法実施形態、又は、これらの組み合わせのうちの1つ以上は、例えば航空機702が就航中の間に、また、制限なく整備及び保守点検716に対して利用されてもよい。
【0066】
また、本発明は、特許請求の範囲と混同されるべきではない以下の節でも言及される。
【0067】
A1. 1つ以上の強化プライ(202)を有するドライプリフォーム(10)の樹脂浸透に局所的に影響を及ぼす方法であって、
ドライプリフォーム(10)の強化プライ(202)のうちの少なくとも1つに対して選択的浸透性ベール(205)を塗布するステップであって、選択的浸透性ベール(205)が、所定の空間密度のベールパターンを有するとともに、樹脂注入時及びドライプリフォーム(10)の硬化時にプリフォーム(10)に対して少なくとも局所的に靭性を与えるように樹脂中へ溶解又は溶融するようになっている、ステップと、
ドライプリフォーム(10)中へ樹脂を注入するステップと、
樹脂がドライプリフォーム(10)に含浸するように選択的浸透性ベール(205)を通じて樹脂を方向付けるステップと、
を備える方法。
【0068】
A2. 選択的浸透性ベール(205)が選択的に不均一に浸透させることができる項A1の方法も提供される。
【0069】
A3. 局所的に変化する空間密度を有するベールパターンを伴って選択的浸透性ベール(205)を形成するステップを更に備える項A1又は項A2の方法も提供される。
【0070】
A4. 選択的浸透性ベール(205)の厚さを局所的に変化させて樹脂経路を通じて樹脂を方向付けることによってドライプリフォーム(10)へと流れる樹脂の体積流量を制御するステップを更に備える項A1又はA2又はA3のいずれか一項の方法も提供される。
【0071】
A5. 選択的浸透性ベール(205)を塗布して、ドライプリフォーム(10)を通じた樹脂経路の長さを増大させるステップと、樹脂経路を通じて樹脂を方向付けるステップとを更に備える項A1からA4のいずれか一項の方法も提供される。
【0072】
A6. 選択的浸透性ベール(205)を塗布するステップが、ドライプリフォーム(10)の強化プライ(202)上にベールを3D印刷するステップを備える項A1からA5のいずれか一項の方法も提供される。
【0073】
A7. 選択的浸透性ベール(205)を塗布するステップが、ベールをドライプリフォーム(10)の強化プライ(202)上にインクジェット印刷するステップを備える項A6の方法も提供される。
【0074】
A8. 選択的浸透性ベール(205)を塗布するステップが、ドライプリフォーム(10)の強化プライ(202)上にベールをレイアップするステップを備える項A1からA5のいずれか一項の方法も提供される。
【0075】
A9. 選択的浸透性ベール(205)を塗布するステップが、少なくとも1つのノズルを通じたドライプリフォーム(10)の強化プライ(202)上へのベールの加圧堆積を含む項A1からA5のいずれか一項の方法も提供される。
【0076】
A10. ドライプリフォーム(10)が複数の強化プライ(202)を備え、ドライプリフォーム(10)の浸透率に局所的に影響を及ぼすことが、複数の強化プライ(202)のうちの少なくとも一部に対して前記選択的浸透性ベール(205)を塗布するステップを備える項A1からA9のいずれか一項の方法も提供される。
【0077】
A11. 第1のベールパターンを有する前記選択的浸透性ベール(205)を複数の強化プライの少なくとも第1の強化プライ(202)に対して塗布するとともに、第2のベールパターンを有する更なる選択的浸透性ベール(205)を複数の強化プライの少なくとも第2の強化プライ(202)に対して塗布するステップを備える項A10の方法も提供される。
【0078】
A12. 第2のベールパターンが第1のベールパターンとは異なる空間密度及び/又は厚さを有する項A11の方法も提供される。
【0079】
本発明の更なる態様によれば、
B1. 複合部品を製造する方法であって、項A1からA12のいずれか一項の方法にしたがってドライプリフォーム(10)を通じた樹脂浸透に局所的に影響を及ぼして、樹脂注入されたドライプリフォームを形成するステップと、樹脂注入されたドライプリフォームを硬化させて複合部品を形成するステップとを備える、方法が提供される。
【0080】
B2. 樹脂注入中に選択的浸透性ベール(205)を樹脂中へ溶解させることによって複合部品を強化するステップを更に備える項B1の方法も提供される。
【0081】
B3. 樹脂注入中に選択的浸透性ベール(205)を溶融して樹脂中へ分散させることによって複合部品を強化するステップを更に備える項B1の方法も提供される。
【0082】
本発明の更なる態様によれば、
C1. 局所的に選択的な樹脂浸透率を有するドライプリフォーム(10)であって、少なくとも1つの強化プライ(202)と、該強化プライに塗布される選択的浸透性ベール(205)とを備え、選択的浸透性ベール(205)が、所定の空間密度のベールパターンを有するとともに、樹脂注入時及びドライプリフォーム(10)の硬化時にプリフォームに対して少なくとも局所的に靭性を与えるように樹脂中へ溶解又は溶融するようになっている、ドライプリフォーム(10)が提供される。
【0083】
C2. 選択的浸透性ベール(205)の層が不均一に浸透させることができる項C1のドライプリフォーム(10)も提供される。
【0084】
C3. 選択的浸透性ベール(205)が局所的に変化する空間密度を伴うベールパターンを有する項C1又は項C2のドライプリフォーム(10)も提供される。
【0085】
C4. 選択的浸透性ベール(205)が局所的に変化する厚さを伴うベールパターンを有する項C1からC3のいずれか一項のドライプリフォーム(10)も提供される。
【0086】
C5. 選択的浸透性ベール(205)が、樹脂注入プロセス中に樹脂中へ溶解するようになっている樹脂可溶性材料から形成される項C1からC3のいずれか一項のドライプリフォーム(10)も提供される。
【0087】
C6. 樹脂中へ溶解する選択的浸透性ベール(205)により形成されるベール樹脂混合物が含浸することによってプリフォーム(10)を強化する項C5のドライプリフォーム(10)も提供される。
【0088】
C7. 選択的浸透性ベール(205)が、樹脂硬化プロセス中に溶融して樹脂中へ拡散するようになっている材料から形成される項C2からC5のいずれか一項のドライプリフォーム(10)も提供される。
【0089】
C8. 溶融して樹脂中へ拡散する選択的浸透性ベール(205)により形成されるベール樹脂混合物が含浸することによってプリフォーム(10)を強化する項C7のドライプリフォーム(10)も提供される。
【0090】
C9. 複数の強化プライ(202)を備え、選択的浸透性ベール(205)が複数の強化プライ(202)の少なくとも一部に対して塗布される項C1からC8のいずれか一項のドライプリフォーム(10)も提供される。
【0091】
C10. 複数の強化プライの少なくとも第1の強化プライ(202)に対して塗布される前記選択的浸透性ベール(205)が第1のベールパターンを有し、複数の強化プライの少なくとも第2の強化プライ(202)に対して塗布される更なる選択的浸透性ベール(205)が第2のベールパターンを有する項C9 のドライプリフォーム(10)も提供される。
【0092】
C11. 第2のベールパターンが第1のベールパターンとは異なる空間密度及び/又は厚さを有する項C10のドライプリフォームも提供される。
【0093】
本発明の更なる態様によれば、
D1. 樹脂が注入されて硬化される項C1からC11のいずれか一項のドライプリフォーム(10)を備える複合部品が提供される。
【0094】
本発明の更なる態様によれば、
E1. 所定の空間密度のベールパターンを有するとともに、ドライプリフォーム(10)に対して少なくとも局所的に靭性を与えるように樹脂中へ溶解又は溶融するようになっており、樹脂注入時及びドライプリフォーム(10)の硬化時にドライプリフォーム(10)に対して塗布される選択的浸透性ベール(205)が提供される。
【0095】
E2. 不均一に浸透させることができる項E1の選択的浸透性ベール(205)も提供される。
【0096】
E3. 局所的に変化する空間密度のベールパターンを有する項E1又は項E2の選択的浸透性ベール(205)も提供される。
【0097】
E4. 局所的に変化する厚さのベールパターンを有する項E1からE3のいずれか一項の選択的浸透性ベール(205)も提供される。
【0098】
本発明の更なる態様によれば、
F1. 樹脂が注入されたプリフォームを強化する方法であって、項E1からE4のいずれか一項の選択的浸透性ベール(205)をドライプリフォーム(10)の少なくとも1つの強化プライ(202)上に配置するステップと、ドライプリフォーム(10)に注入される樹脂中へ選択的浸透性ベール(205)を溶解又は溶融させることによってドライプリフォーム(10)を強化するステップとを備える、方法が提供される。
【0099】
当業者であれば分かるように、前述の先の特定の実施形態は本開示の単なる例にすぎない。当業者であれば分かるように、異なる実施形態に関連して記載された様々な特徴は、組み合わせて又は代案として使用されてもよい。また、当業者は、前述の実施形態に対する様々な他の変更及び代案も認識できる。