【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 SOCIETY FOR INFORMATION DISPLAY 2016 INTERNATIONAL SYMPOSIUM DIGEST OF TECHNICAL PAPERS Volume 47(平成28年5月22日発行)p.57−60,735−738,1002−1004にて発表。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年5月22−27日 Moscone Convention Center(米国カリフォルニア州サンフランシスコ)において開催されたDISPLAY WEEK 2016 INTERNATIONAL SYMPOSIUMにて発表。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0025】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0026】
また、図面において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0027】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、又は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能である。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能である。
【0028】
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い表現での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう)などに分類される。例えば、トランジスタの半導体層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、OS FETと記載する場合においては、金属酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
【0029】
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の剥離方法及び表示装置の作製方法について
図1〜14を用いて説明する。
【0031】
本実施の形態では、トランジスタ及び有機EL素子を有する表示装置(アクティブマトリクス型の有機EL表示装置ともいう)を例に挙げて説明する。当該表示装置は、基板に可撓性を有する材料を用いることで、フレキシブルデバイスとすることができる。なお、本発明の一態様は、有機EL素子を用いた発光装置、表示装置、及び入出力装置(タッチパネルなど)に限られず、他の機能素子を用いた半導体装置、発光装置、表示装置、及び入出力装置等の各種装置に適用することができる。
【0032】
本実施の形態では、まず、基板上に水素を含む層を形成する。次に、水素を含む層上に酸素を含む層を形成する。次に、酸素を含む層上に、樹脂または樹脂前駆体を含む材料を用いて、第1の層を形成する。次に、第1の層に対して第1の加熱処理を行うことで、樹脂層を形成する。次に、樹脂層上に被剥離層を形成する。被剥離層の少なくとも一部を形成した後、第2の加熱処理を行うことが好ましい。そして、被剥離層と基板とを分離する。第1の加熱処理及び第2の加熱処理は、それぞれ、酸素を含む雰囲気下で行うことが好ましい。第1の加熱処理及び第2の加熱処理では、それぞれ、酸素を含むガスを流すことが好ましい。
【0033】
なお、条件等によっては、第1の加熱処理または第2の加熱処理の一方のみで酸素を含むガスを流し、他方では流さなくてもよいことがある。例えば、第1の加熱処理または第2の加熱処理の一方を、窒素雰囲気または減圧雰囲気で行ってもよい。
【0034】
酸素を十分に含む雰囲気で第1の層を加熱することで形成された樹脂層は、酸素を多く含む。樹脂層が酸素を多く含むほど、基板と樹脂層とを分離することが容易となり、好ましい。
【0035】
加熱処理を行うことで、水素を含む層からは、水素が放出される。そして、当該水素と、酸素を含む層に含まれる酸素とが反応し、水が生成される。酸素を含む層から、酸素を含む層と樹脂層の間に水が放出される。
【0036】
酸素を含む層と樹脂層との間に水が存在することで、酸素を含む層と樹脂層の密着性が低くなる。これにより、酸素を含む層と樹脂層との界面で容易に分離することができる。
【0037】
また、加熱処理を行うことで、酸素を含む層と樹脂層との間で水が膨潤する(水蒸気となり体積が膨張する)。これにより、酸素を含む層と樹脂層の密着性を低下させることができる。
【0038】
本実施の形態の剥離方法では、水素を含む層と酸素を含む層を積層し、かつ、加熱条件を制御することで、基板から樹脂層を容易に剥離することができる。つまり、樹脂層の剥離性を高めるために、樹脂層の一面全体にレーザ光を照射する工程は不要である。
【0039】
樹脂層の一面全体にレーザ光を照射する場合、線状レーザビームを用いることが好適であるが、線状レーザビームを照射するためのレーザ装置は、装置自体が高価であり、かつ、ランニングコストが高い。本実施の形態の剥離方法では、当該レーザ装置が不要となるため、大幅にコストを抑えることが可能となる。また、大判基板への適用も容易である。
【0040】
また、基板を介して樹脂層にレーザ光を照射する際、基板の光照射面にゴミなどの異物が付着していると、光の照射ムラが生じ樹脂層に剥離性が低い部分が生じ、剥離の歩留まりが低下することがある。本実施の形態の剥離方法では、加熱処理により樹脂層の剥離性を高める。基板に異物が付着していても樹脂層に加熱のムラは生じにくいため、剥離の歩留まりが低下しにくい。
【0041】
基板を介して樹脂層の一面全体にレーザ光を照射する工程が無いため、基板がレーザ光の照射によるダメージを受けることを防止できる。基板を一度使用しても、強度が低下しにくいため、基板を再利用でき、コストを抑えることが可能となる。
【0042】
また、剥離界面に水が存在することで、剥離時に生じる静電気が、被剥離層に含まれる機能素子に悪影響を及ぼすこと(半導体素子が静電気により破壊されるなど)を抑制できる。
【0043】
または、本実施の形態では、まず、基板上に水素を含む層を形成する。次に、水素を含む層上に酸素を含む層を形成する。次に、酸素を含む層上に、樹脂または樹脂前駆体を含む材料を用いて、第1の層を形成する。次に、第1の層に対して第1の加熱処理を行うことで、樹脂層を形成する。次に、樹脂層上に被剥離層を形成する。被剥離層として、樹脂層の端部を覆う絶縁層を形成し、樹脂層上に、絶縁層を介して、トランジスタを形成する。被剥離層の少なくとも一部を形成した後、第2の加熱処理を行うことが好ましい。次に、樹脂層の少なくとも一部を基板から分離することで、分離の起点を形成する。そして、被剥離層と基板とを分離する。第1の加熱処理及び第2の加熱処理は、それぞれ、酸素を含む雰囲気下で行うことが好ましい。第1の加熱処理及び第2の加熱処理では、それぞれ、酸素を含むガスを流すことが好ましい。
【0044】
酸素を含む層上には、樹脂層が接する部分と、絶縁層が接する部分と、が設けられる。絶縁層は、樹脂層の端部を覆って設けられる。絶縁層は、樹脂層に比べて、酸素を含む層に対する密着性が高い。樹脂層の端部を覆って絶縁層を設けることで、樹脂層が酸素を含む層から意図せず剥がれることを抑制できる。例えば、基板の搬送時などに樹脂層が剥がれることを抑制できる。そして、分離の起点を形成することで、所望のタイミングで、酸素を含む層と樹脂層とを分離することができる。つまり、本実施の形態では、剥離のタイミングを制御でき、かつ、高い剥離性を実現できる。これにより、剥離工程、及び表示装置の作製工程の歩留まりを高めることができる。
【0045】
本発明の一態様において、トランジスタのチャネル形成領域に用いる材料に特に限定はない。例えば、シリコン、金属酸化物などを用いることができる。
【0046】
トランジスタのチャネル形成領域に、低温ポリシリコン(LTPS(Low Temperature Poly−Silicon))を用いる場合、樹脂層は、耐熱性の高い材料を用い、厚膜で形成することが好ましい。これにより、高温プロセスが可能となり、かつ、レーザ結晶化の工程でのダメージを緩和することができる。例えば、第1の加熱処理の温度は、400℃以上600℃以下が好ましく、450℃以上550℃以下がより好ましい。樹脂層の厚さは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましく、10μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。樹脂層が十分に厚いことで、レーザ結晶化の工程でのダメージを緩和することができる。樹脂層の5%重量減少温度は、400℃以上600℃以下が好ましく、450℃以上600℃以下がより好ましく、500℃以上600℃以下がさらに好ましい。
【0047】
本発明の一態様において、トランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を有することが好ましい。金属酸化物は、酸化物半導体として機能することができる。
【0048】
トランジスタのチャネル形成領域にLTPSを用いる場合、500℃から550℃程度の温度をかける必要があるため、上述の通り、樹脂層に耐熱性が求められる。また、レーザ結晶化の工程でのダメージを緩和するため、樹脂層の厚膜化が必要となる。
【0049】
一方、チャネル形成領域に金属酸化物を用いたトランジスタは、350℃以下、さらには300℃以下で形成することができる。そのため、樹脂層に高い耐熱性は求められない。したがって、樹脂層の耐熱温度を低くすることができ、材料の選択の幅が広がる。また、チャネル形成領域に金属酸化物を用いたトランジスタは、レーザ結晶化の工程が不要であるため、樹脂層の厚さを薄くすることができる。樹脂層に高耐熱性が要求されず、薄膜化できることで、デバイス作製の大幅なコストダウンが期待できる。また、LTPSを用いる場合に比べて、工程が簡略化でき好ましい。
【0050】
本実施の形態では、樹脂層の耐熱温度以下で、トランジスタ等を形成する。樹脂層の耐熱性は、例えば、加熱による重量減少率、具体的には5%重量減少温度等で評価できる。本実施の形態の剥離方法及び表示装置の作製方法では、工程中の最高温度を低くすることができる。例えば、本実施の形態では、樹脂層の5%重量減少温度を、200℃以上550℃以下、200℃以上450℃以下、200℃以上400℃以下、または200℃以上350℃以下とすることができる。そのため、材料の選択の幅が広がる。なお、樹脂層の5%重量減少温度は、550℃より高くてもよい。
【0051】
以下では、本実施の形態の剥離方法及び表示装置の作製方法について、具体的に説明する。
【0052】
なお、表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、原子層成膜(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用いて形成することができる。CVD法としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法や、熱CVD法でもよい。熱CVD法の例として、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic CVD)法を使ってもよい。
【0053】
表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、ナイフコート等の方法により形成することができる。
【0054】
表示装置を構成する薄膜を加工する際には、リソグラフィ法等を用いて加工することができる。または、遮蔽マスクを用いた成膜方法により、島状の薄膜を形成してもよい。または、ナノインプリント法、サンドブラスト法、リフトオフ法などにより薄膜を加工してもよい。フォトリソグラフィ法としては、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、エッチング等により当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法と、感光性を有する薄膜を成膜した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法と、がある。
【0055】
リソグラフィ法において光を用いる場合、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、またはこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外光(EUV:Extreme Ultra−violet)やX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線または電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビームなどのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0056】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウエットエッチング法、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0057】
[剥離方法]
まず、作製基板14上に、水素を含む層20を形成する。そして、水素を含む層20上に、酸素を含む層21を形成する(
図1(A))。
【0058】
作製基板14は、搬送が容易となる程度に剛性を有し、かつ作製工程にかかる温度に対して耐熱性を有する。作製基板14に用いることができる材料としては、例えば、ガラス、石英、セラミック、サファイヤ、樹脂、半導体、金属または合金などが挙げられる。ガラスとしては、例えば、無アルカリガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
【0059】
水素を含む層20は、後の加熱工程において、水素を放出する機能を有する。水素を含む層20は、後の加熱工程において、水を放出する機能を有してもよい。
【0060】
水素を含む層20には、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、又は窒化酸化シリコン膜を用いることができる。水素を含む層20は、酸素及びシリコンのうち一方または双方を含むことが好ましい。
【0061】
なお、本明細書等において「酸化窒化シリコン」とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものをいう。また、本明細書等において、「窒化酸化シリコン」とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものをいう。
【0062】
水素を含む層20は、スパッタリング法、プラズマCVD法などの成膜方法により形成できる。特に、水素を含む層20に含まれる酸化窒化シリコン膜を、シランガス及び亜酸化窒素ガスを含む成膜ガスを用いたプラズマCVD法により成膜することで、多量の水素を膜中に含有させることができるため好ましい。また、成膜ガス中のシランガスの割合を大きくするほど、後の加熱工程において水素の放出量が多くなるため好ましい。
【0063】
また、水素を含む層20には、加熱により水素が放出されるシリコン膜を用いることができる。特に、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)膜を用いることが好ましい。水素化アモルファスシリコン膜は、例えばSiH
4を成膜ガスに含むプラズマCVD法により成膜することができる。また、水素を含む層20には、結晶性を有するシリコン膜を用いてもよい。水素を含む層20に水素を多く含有させるため、水素を含む層20の成膜後に水素を含む雰囲気下で加熱処理をしてもよい。
【0064】
水素を含む層20の厚さが厚いほど、水素の放出量が多くなるため好ましいが、生産性を考慮した厚さに設定することが好ましい。
【0065】
酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、又は窒化酸化シリコン膜などの厚さは、それぞれ、1nm以上1μm以下が好ましく、50nm以上800nm以下がより好ましく、100nm以上600nm以下がさらに好ましい。
【0066】
水素化アモルファスシリコン膜の厚さは、例えば、1nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることがより好ましい。
【0067】
水素を含む層20は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により検出される水素濃度が1.0×10
20atoms/cm
3以上1.0×10
22atoms/cm
3以下、好ましくは5.0×10
20atoms/cm
3以上5.0×10
21atoms/cm
3以下である領域を含むことが好ましい。
【0068】
酸素を含む層21は、後の加熱工程において、水素を含む層20から放出された水素と、酸素を含む層21中の酸素と、が反応することで、水を放出する機能を有する。酸素を含む層21は、後の加熱工程において、酸素を放出する機能を有してもよい。
【0069】
酸素を含む層21の材料には、金属酸化物を好適に用いることができる。
【0070】
金属酸化物としては、例えば、シリコンを含むインジウム錫酸化物(ITSO)、In−Ga−Zn酸化物、酸化アルミニウムが挙げられる。
【0071】
そのほか、金属酸化物としては、酸化インジウム、インジウム錫酸化物(ITO)、タングステンを含むインジウム酸化物、タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、二酸化チタン、チタンを含むインジウム酸化物、チタンを含むITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウムを含むZnO、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ネオジム等が挙げられる。
【0072】
酸素雰囲気下で、酸素を含む層21を形成することが好ましい。例えば、酸素を含むガスを流しながら、スパッタリング法を用いて金属酸化物膜を成膜することで、酸素を含む層21を形成できる。
【0073】
または、金属膜を成膜した後に、当該金属膜に酸素を導入することで、酸素を含む層21を形成することができる。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理等を用いることができる。
【0074】
酸素を含む層21は、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含んでいることが好ましい。
【0075】
酸素を含む層21の厚さは、例えば、1nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることがより好ましい。
【0076】
次に、酸素を含む層21上に、第1の層24を形成する(
図1(B))。
【0077】
図1(B)では塗布法を用いて酸素を含む層21の一面全体に第1の層24を形成する例を示す。これに限られず、印刷法等を用いて第1の層24を形成してもよい。酸素を含む層21上に、島状の第1の層24、開口または凹凸形状を有する第1の層24等を形成してもよい。
【0078】
第1の層24は、各種樹脂材料(樹脂前駆体を含む)を用いて形成することができる。
【0079】
第1の層24は、熱硬化性を有する材料を用いて形成することが好ましい。
【0080】
第1の層24は、感光性を有する材料を用いて形成してもよく、感光性を有さない材料(非感光性の材料ともいう)を用いて形成してもよい。
【0081】
感光性を有する材料を用いると、光を用いたリソグラフィ法により、第1の層24の一部を除去し、所望の形状の樹脂層23を形成することができる。
【0082】
第1の層24は、ポリイミド樹脂またはポリイミド樹脂前駆体を含む材料を用いて形成されることが好ましい。第1の層24は、例えば、ポリイミド樹脂と溶媒を含む材料、またはポリアミック酸と溶媒を含む材料等を用いて形成できる。ポリイミドは、表示装置の平坦化膜等に好適に用いられる材料であるため、成膜装置や材料を共有することができる。そのため本発明の一態様の構成を実現するために新たな装置や材料を必要としない。
【0083】
そのほか、第1の層24の形成に用いることができる樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれら樹脂の前駆体等が挙げられる。
【0084】
第1の層24は、スピンコータを用いて形成することが好ましい。スピンコート法を用いることで、大判基板に薄い膜を均一に形成することができる。
【0085】
第1の層24は、粘度が5cP以上500cP未満、好ましくは5cP以上100cP未満、より好ましくは10cP以上50cP以下の溶液を用いて形成することが好ましい。溶液の粘度が低いほど、塗布が容易となる。また、溶液の粘度が低いほど、気泡の混入を抑制でき、良質な膜を形成できる。
【0086】
そのほか、第1の層24の形成方法としては、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、ナイフコート等が挙げられる。
【0087】
次に、第1の層24に対して第1の加熱処理を行うことで、樹脂層23を形成する(
図1(C))。
【0088】
第1の加熱処理は、酸素を含む雰囲気下で行うことが好ましい。
【0089】
樹脂層23が酸素を多く含むほど、作製基板14から樹脂層23を剥離するために要する力を小さくできる。第1の加熱処理の雰囲気の酸素の割合が高いほど、樹脂層23に多くの酸素を含ませることができ、樹脂層23の剥離性を高めることができる。
【0090】
第1の加熱処理を行うことで、水素を含む層20からは、水素が放出される。そして、当該水素と、酸素を含む層21に含まれる酸素とが反応し、水が生成される。生成された水は、酸素を含む層21から、酸素を含む層21と樹脂層23の間に、放出される。
【0091】
水素を含む層20が水素及び酸素を含む場合、第1の加熱処理を行うことで、水素を含む層20から水が放出されることがある。
【0092】
第1の加熱処理を行うことで、第1の層24または樹脂層23から水が放出されることがある。また、酸素を含む層21から酸素が放出されることがある。例えば、第1の層24または樹脂層23から放出された水素と、酸素を含む層21から放出された酸素が反応して水が生成されることがある。
【0093】
このように、第1の加熱処理を行うことで、酸素を含む層21と樹脂層23との間に水を供給することができる。
【0094】
酸素を含む層21と樹脂層23との間に水が存在することで、酸素を含む層21と樹脂層23の密着性が低くなる。これにより、酸素を含む層21と樹脂層23との界面で容易に分離することができる。
【0095】
また、第1の加熱処理を行うことで、酸素を含む層21と樹脂層23との間で水が膨潤する(水蒸気となり体積が膨張する)。これにより、酸素を含む層21と樹脂層23の密着性を低下させることができる。
【0096】
第1の加熱処理は、例えば、加熱装置のチャンバーの内部を、酸素を含む雰囲気とした状態で行うことができる。または、第1の加熱処理は、大気雰囲気下でホットプレート等を用いて行うことができる。
【0097】
例えば、第1の加熱処理時の雰囲気の酸素分圧は、5%以上100%未満が好ましく、10%以上100%未満がより好ましく、15%以上100%未満がさらに好ましい。
【0098】
第1の加熱処理は、加熱装置のチャンバー内に、酸素を含むガスを流しながら行うことが好ましい。第1の加熱処理は、例えば、酸素ガスのみ、または酸素ガスを含む混合ガスを流しながら行うことが好ましい。具体的には、酸素と、窒素もしくは希ガス(アルゴンなど)と、を含む混合ガスを用いることができる。
【0099】
加熱装置によっては、雰囲気の酸素の割合が高くなると、加熱装置の劣化が生じる場合がある。そのため、酸素ガスを含む混合ガスを用いる際には、混合ガス流量全体に占める酸素ガス流量の割合を、5%以上50%以下とすることが好ましく、10%以上50%以下とすることがより好ましく、15%以上50%以下とすることがさらに好ましい。
【0100】
第1の加熱処理の温度は、200℃以上500℃以下が好ましく、250℃以上475℃以下がより好ましく、300℃以上450℃以下がさらに好ましい。
【0101】
第1の加熱処理の温度が高いほど、樹脂層23の剥離性を高めることができる。
【0102】
第1の加熱処理により、樹脂層23中の脱ガス成分(例えば、水素、水等)を低減することができる。特に、樹脂層23上に形成する各層の作製温度以上の温度で加熱することが好ましい。これにより、トランジスタの作製工程における、樹脂層23からの脱ガスを大幅に抑制することができる。
【0103】
例えば、トランジスタの作製温度が350℃までである場合、樹脂層23となる膜を350℃以上450℃以下で加熱することが好ましく、350℃以上400℃以下がより好ましく、350℃以上375℃以下がさらに好ましい。これにより、トランジスタの作製工程における、樹脂層23からの脱ガスを大幅に抑制することができる。
【0104】
トランジスタの作製における最高温度と、第1の加熱処理の温度を等しくすると、第1の加熱処理を行うことで表示装置の作製における最高温度が高くなることを防止できるため、好ましい。
【0105】
第1の加熱処理の時間が長いほど、樹脂層23の剥離性を高めることができる。
【0106】
処理時間を長くすることで、加熱温度が比較的低い場合であっても、加熱温度がより高い条件の場合と同等の剥離性を実現できる場合がある。そのため、加熱装置の構成により加熱温度を高められない場合には、処理時間を長くすることが好ましい。
【0107】
第1の加熱処理の時間は、例えば、5分以上24時間以下が好ましく、30分以上12時間以下がより好ましく、1時間以上6時間以下がさらに好ましい。なお、第1の加熱処理の時間はこれに限定されない。例えば、第1の加熱処理を、RTA(Rapid Thermal Annealing)法を用いて行う場合などは、5分未満としてもよい。
【0108】
加熱装置としては、電気炉や、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって被処理物を加熱する装置等、様々な装置を用いることができる。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。RTA装置を用いることによって、処理時間を短縮することができるので、量産する上で好ましい。また、加熱処理はインライン型の加熱装置を用いて行ってもよい。
【0109】
ここで、例えば、表示装置の平坦化層等に樹脂を用いる場合には、当該樹脂が酸化され、変質してしまうことを防ぐために、酸素がほとんど含まれない条件で、かつ、樹脂が硬化する温度範囲においてできるだけ低い温度で、加熱することが一般的である。しかしながら、本発明の一態様では、樹脂層23となる第1の層24の表面を露出させ、酸素を積極的に含ませた雰囲気に暴露した状態で、比較的高い温度(例えば200℃以上の温度)で加熱する。これにより、樹脂層23に、高い剥離性を付与することができる。
【0110】
なお、加熱処理により、樹脂層23の厚さは、第1の層24の厚さから変化する場合がある。例えば、第1の層24に含まれていた溶媒が除去されることや、硬化が進行し密度が増大することにより、体積が減少し、第1の層24よりも樹脂層23が薄くなる場合がある。または、加熱処理時に酸素が含まれることにより、体積が増大し、第1の層24よりも樹脂層23が厚くなる場合もある。
【0111】
第1の加熱処理を行う前に、第1の層24に含まれる溶媒を除去するための熱処理(プリベーク処理ともいう)を行ってもよい。プリベーク処理の温度は用いる材料に応じて適宜決定することができる。例えば、50℃以上180℃以下、80℃以上150℃以下、または90℃以上120℃以下で行うことができる。または、第1の加熱処理がプリベーク処理を兼ねてもよく、第1の加熱処理によって、第1の層24に含まれる溶媒を除去してもよい。
【0112】
樹脂層23は、可撓性を有する。作製基板14は、樹脂層23よりも可撓性が低い。
【0113】
樹脂層23の厚さは、0.01μm以上10μm未満であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上2μm以下であることがさらに好ましい。樹脂層を薄く形成することで、低コストで表示装置を作製できる。また、表示装置の軽量化及び薄型化が可能となる。また、表示装置の可撓性を高めることができる。低粘度の溶液を用いることで、樹脂層23を薄く形成することが容易となる。ただし、これに限定されず、樹脂層23の厚さは、10μm以上としてもよい。例えば、樹脂層23の厚さを10μm以上200μm以下としてもよい。樹脂層23の厚さを10μm以上とすることで、表示装置の剛性を高めることができるため好適である。
【0114】
樹脂層23の熱膨張係数は、0.1ppm/℃以上50ppm/℃以下であることが好ましく、0.1ppm/℃以上20ppm/℃以下であることがより好ましく、0.1ppm/℃以上10ppm/℃以下であることがさらに好ましい。樹脂層23の熱膨張係数が低いほど、加熱により、トランジスタ等を構成する層にクラックが生じることや、トランジスタ等が破損することを抑制できる。
【0115】
表示装置の表示面側に樹脂層23が位置する場合、樹脂層23は、可視光に対する透光性が高いことが好ましい。
【0116】
次に、樹脂層23上に、被剥離層25を形成する(
図1(D))。
【0117】
被剥離層25として、例えば、絶縁層、機能素子(トランジスタ、表示素子など)を設けることができる。
【0118】
被剥離層25は、絶縁層を有することが好ましい。当該絶縁層は、後の加熱工程において、水素を含む層20、酸素を含む層21、及び樹脂層23などから放出される水素、酸素、及び水をブロックする機能を有することが好ましい。
【0119】
被剥離層は、例えば、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、又は窒化酸化シリコン膜を有することが好ましい。例えば、窒化シリコン膜を、シランガス、水素ガス、及びアンモニア(NH
3)ガスを含む成膜ガスを用いたプラズマCVD法により成膜する。絶縁層の厚さは特に限定されない。例えば、50nm以上600nm以下、好ましくは100nm以上300nm以下の厚さとすることができる。
【0120】
水素、酸素、及び水をブロックする機能を有する絶縁層を形成した後、第2の加熱処理を行うことが好ましい。
【0121】
第1の加熱処理は、第1の層24を硬化して樹脂層23を形成する工程のため、第1の層24の表面を露出した状態で行う。そのため、加熱により生成された水の一部が、第1の層24または樹脂層23の表面から外部に放出されてしまうことがある。また、第1の加熱処理の後に樹脂層23上に形成する膜の成膜条件(例えば高温下、還元雰囲気下など)によっては、樹脂層23に含まれる酸素の割合が低下してしまうことがある。
【0122】
そのため、樹脂層23の表面が露出していない状態で第2の加熱処理を行うことが好ましい。これにより、第2の加熱処理によって発生した水素や水が樹脂層23の表面から外部に放出されることを抑制できる。第2の加熱処理は、樹脂層23上に形成する被剥離層の少なくとも一部を形成した後に行うことができる。また、トランジスタ等の機能素子の作製工程における加熱処理が、第2の加熱処理を兼ねてもよい。
【0123】
第2の加熱処理は、酸素を含む雰囲気下で行うことが好ましい。
【0124】
第2の加熱処理を行うことで、樹脂層23に多くの酸素を含ませることができる。また、第2の加熱処理を行うことで、酸素を含む層21と樹脂層23との界面に水を供給することができる。
【0125】
第2の加熱処理を行うことで、水素を含む層20からは、水素が放出される。そして、当該水素と、酸素を含む層21に含まれる酸素とが反応し、水が生成される。生成された水は、酸素を含む層21から、酸素を含む層21と樹脂層23の間に、放出される。
【0126】
酸素を含む層21と樹脂層23との間に水が存在することで、酸素を含む層21と樹脂層23の密着性が低くなる。これにより、酸素を含む層21と樹脂層23との界面で容易に分離することができる。
【0127】
また、第2の加熱処理を行うことで、酸素を含む層21と樹脂層23との間で水が膨潤する(水蒸気となり体積が膨張する)。これにより、酸素を含む層21と樹脂層23の密着性を低下させることができる。
【0128】
第2の加熱処理は、例えば、加熱装置のチャンバーの内部を、酸素を含む雰囲気とした状態で行うことができる。または、第2の加熱処理は、大気雰囲気下でホットプレート等を用いて行うことができる。
【0129】
例えば、第2の加熱処理時の雰囲気の酸素分圧は、5%以上100%未満が好ましく、10%以上100%未満がより好ましく、15%以上100%未満がさらに好ましい。
【0130】
第2の加熱処理は、加熱装置のチャンバー内に、酸素を含むガスを流しながら行うことが好ましい。第2の加熱処理は、例えば、酸素ガスのみ、または酸素ガスを含む混合ガスを流しながら行うことが好ましい。具体的には、酸素と、窒素もしくは希ガス(アルゴンなど)と、を含む混合ガスを用いることができる。
【0131】
加熱装置によっては、雰囲気の酸素の割合が高くなると、加熱装置の劣化が生じる場合がある。そのため、酸素ガスを含む混合ガスを用いる際には、混合ガス流量全体に占める酸素ガス流量の割合を、5%以上50%以下とすることが好ましく、10%以上50%以下とすることがより好ましく、15%以上50%以下とすることがさらに好ましい。
【0132】
第2の加熱処理の温度は、200℃以上500℃以下が好ましく、250℃以上475℃以下がより好ましく、300℃以上450℃以下がさらに好ましい。
【0133】
第2の加熱処理の温度が高いほど、樹脂層23の剥離性を高めることができる。
【0134】
第2の加熱処理の温度は、第1の加熱処理の温度以下であることが好ましい。これにより、第2の加熱処理において、樹脂層23からの脱ガスがトランジスタなどの機能素子に入り込むことを抑制できる。
【0135】
第2の加熱処理の時間が長いほど、樹脂層23の剥離性を高めることができる。
【0136】
処理時間を長くすることで、加熱温度が比較的低い場合であっても、加熱温度がより高い条件の場合と同等の剥離性を実現できる場合がある。そのため、加熱装置の構成により加熱温度を高められない場合には、処理時間を長くすることが好ましい。
【0137】
第2の加熱処理の時間は、例えば、5分以上24時間以下が好ましく、30分以上12時間以下がより好ましく、1時間以上6時間以下がさらに好ましい。なお、第2の加熱処理の時間はこれに限定されない。例えば、第2の加熱処理を、RTA法を用いて行う場合などは、5分未満としてもよい。
【0138】
そして、被剥離層25上に保護層を形成する。保護層は、表示装置の最表面に位置する層である。保護層は、可視光に対する透過性が高いことが好ましい。保護層が、有機絶縁膜を有すると、表示装置の表面に傷がつくことや、クラックが生じてしまうことを抑制できるため好ましい。
【0139】
図1(E)には、接着層75bを用いて被剥離層25上に基板75aを貼り合わせた例を示す。
【0140】
接着層75bには、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤等の各種硬化型接着剤を用いることができる。また、接着シート等を用いてもよい。
【0141】
基板75aには、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン、アラミド等)、ポリシロキサン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ABS樹脂、セルロースナノファイバー等を用いることができる。基板75aには、可撓性を有する程度の厚さのガラス、石英、樹脂、金属、合金、半導体等の各種材料を用いてもよい。
【0142】
次に、作製基板14と樹脂層23とを分離する。酸素を含む層21と樹脂層23との密着性が低いため、酸素を含む層21と樹脂層23との界面で分離が生じる(
図1(F))。
【0143】
例えば、樹脂層23に垂直方向に引っ張る力をかけることにより、作製基板14と樹脂層23とを分離することができる。具体的には、基板75aの上面の一部を吸着し、上方に引っ張ることにより、作製基板14から樹脂層23を引き剥がすことができる。
【0144】
ここで、分離時に、分離界面に水や水溶液など、水を含む液体を添加し、該液体が分離界面に浸透するように分離を行うことで、分離を容易に行うことができる。また、分離時に生じる静電気が、トランジスタなどの機能素子に悪影響を及ぼすこと(半導体素子が静電気により破壊されるなど)を抑制できる。
【0145】
分離前に、樹脂層23の一部を作製基板14から分離することで、分離の起点を形成してもよい。例えば、作製基板14と樹脂層23との間に、刃物などの鋭利な形状の器具を差し込むことで分離の起点を形成してもよい。または、基板75a側から鋭利な形状の器具で樹脂層23を切り込み、分離の起点を形成してもよい。または、レーザアブレーション法等のレーザを用いた方法で、分離の起点を形成してもよい。
【0146】
本実施の形態では、水素を含む層20、酸素を含む層21、及び樹脂層23(または第1の層24)を積層し、加熱処理を行う。これにより、酸素を含む層21と樹脂層23との間に水を供給し、酸素を含む層21と樹脂層23との密着性を低下させることができる。そのため、樹脂層23の一面全体にレーザ照射を行うことなく、作製基板14と樹脂層23とを分離することができる。これにより、低コストで表示装置を作製することができる。
【0147】
[作製方法例1]
次に、本実施の形態の表示装置の作製方法例について説明する。先に説明した剥離方法と同様の部分について、説明を省略することがある。
【0148】
まず、作製基板14上に、水素を含む層20を形成する。そして、水素を含む層20上に、酸素を含む層21を形成する(
図2(A))。水素を含む層20及び酸素を含む層21については、上記剥離方法における記載を参照できる。
【0149】
次に、酸素を含む層21上に、第1の層24を形成する(
図2(B))。第1の層24については、上記剥離方法における記載を参照できる。
【0150】
本実施の形態では、感光性及び熱硬化性を有する材料を用いて第1の層24を形成する。なお、第1の層24は、非感光性の材料を用いて形成してもよい。
【0151】
第1の層24を成膜した後、溶媒を除去するための熱処理(プリベーク処理)を行い、その後フォトマスクを用いて露光を行う。続いて、現像処理を施すことで、不要な部分を除去することができる。次に、所望の形状に加工された第1の層24に対して第1の加熱処理を行うことで、樹脂層23を形成する(
図2(C))。
図2(C)では、島状の樹脂層23を形成する例を示す。
【0152】
なお、樹脂層23の形状は1つの島状に限られず、例えば、複数の島状、開口を有する形状などでもよい。また、ハーフトーンマスクもしくはグレートーンマスクを用いた露光技術、または多重露光技術などを用い、樹脂層23の表面に凹凸形状を形成してもよい。
【0153】
第1の層24または樹脂層23上にレジストマスク、ハードマスク等のマスクを形成し、エッチングすることで、所望の形状の樹脂層23を形成することができる。この方法は、非感光性の材料を用いる場合に特に好適である。
【0154】
例えば、樹脂層23上に無機膜を形成し、無機膜上にレジストマスクを形成する。レジストマスクを用いて、無機膜をエッチングした後、無機膜をハードマスクに用いて、樹脂層23をエッチングすることができる。
【0155】
ハードマスクとして用いることができる無機膜としては、各種無機絶縁膜や、導電層に用いることができる金属膜及び合金膜などが挙げられる。
【0156】
マスクを極めて薄い厚さで形成し、エッチングと同時にマスクを除去することができると、マスクを除去する工程を削減でき、好ましい。
【0157】
第1の加熱処理の詳細は、上記剥離方法における第1の加熱処理の記載を参照できる。
【0158】
次に、樹脂層23上に、絶縁層31を形成する(
図2(D))。絶縁層31は、樹脂層23の端部を覆って形成される。酸素を含む層21上には、樹脂層23が設けられていない部分が存在する。そのため、酸素を含む層21上に接して絶縁層31を形成することができる。
【0159】
絶縁層31は、樹脂層23の耐熱温度以下の温度で形成する。第1の加熱処理の温度以下の温度で形成することが好ましく、第1の加熱処理の温度より低い温度で形成してもよい。
【0160】
絶縁層31は、樹脂層23に含まれる不純物が、後に形成するトランジスタや表示素子に拡散することを防ぐバリア層として用いることができる。例えば、絶縁層31は、樹脂層23を加熱した際に、樹脂層23に含まれる水分等がトランジスタや表示素子に拡散することを防ぐことが好ましい。そのため、絶縁層31は、バリア性が高いことが好ましい。
【0161】
絶縁層31としては、例えば、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。また、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜、及び酸化ネオジム膜等を用いてもよい。また、上述の絶縁膜を2以上積層して用いてもよい。特に、樹脂層23上に窒化シリコン膜を形成し、窒化シリコン膜上に酸化シリコン膜を形成することが好ましい。
【0162】
無機絶縁膜は、成膜温度が高いほど緻密でバリア性の高い膜となるため、高温で形成することが好ましい。
【0163】
絶縁層31の成膜時の基板温度は、室温(25℃)以上350℃以下が好ましく、100℃以上300℃以下がさらに好ましい。
【0164】
次に、絶縁層31上に、トランジスタ40を形成する(
図2(E))。
【0165】
表示装置が有するトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、プレーナ型のトランジスタとしてもよいし、スタガ型のトランジスタとしてもよいし、逆スタガ型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート構造またはボトムゲート構造のいずれのトランジスタ構造としてもよい。または、チャネルの上下にゲート電極が設けられていてもよい。
【0166】
ここではトランジスタ40として、金属酸化物層44を有する、ボトムゲート構造のトランジスタを作製する場合を示す。金属酸化物層44は、トランジスタ40の半導体層として機能することができる。金属酸化物は、酸化物半導体として機能することができる。
【0167】
本実施の形態において、トランジスタの半導体には、酸化物半導体を用いる。シリコンよりもバンドギャップが広く、且つキャリア密度の小さい半導体材料を用いると、トランジスタのオフ状態における電流を低減できるため好ましい。
【0168】
トランジスタ40は、樹脂層23の耐熱温度以下の温度で形成する。トランジスタ40は、第1の加熱処理の温度以下の温度で形成することが好ましく、第1の加熱処理の温度より低い温度で形成してもよい。
【0169】
具体的には、まず、絶縁層31上に導電層41を形成する。導電層41は、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することで形成できる。
【0170】
導電膜の成膜時の基板温度は、室温以上350℃以下が好ましく、室温以上300℃以下がさらに好ましい。
【0171】
表示装置が有する導電層には、それぞれ、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、もしくはタングステン等の金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いることができる。または、酸化インジウム、インジウム錫酸化物(ITO)、タングステンを含むインジウム酸化物、タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、チタンを含むインジウム酸化物、チタンを含むITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウムを含むZnO、またはシリコンを含むITO等の透光性を有する導電材料を用いてもよい。また、不純物元素を含有させる等して低抵抗化させた、多結晶シリコンもしくは酸化物半導体等の半導体、またはニッケルシリサイド等のシリサイドを用いてもよい。また、グラフェンを含む膜を用いることもできる。グラフェンを含む膜は、例えば酸化グラフェンを含む膜を還元して形成することができる。また、不純物元素を含有させた酸化物半導体等の半導体を用いてもよい。または、銀、カーボン、もしくは銅等の導電性ペースト、またはポリチオフェン等の導電性ポリマーを用いて形成してもよい。導電性ペーストは、安価であり、好ましい。導電性ポリマーは、塗布しやすく、好ましい。
【0172】
続いて、絶縁層32を形成する。絶縁層32は、絶縁層31に用いることのできる無機絶縁膜を援用できる。
【0173】
続いて、金属酸化物層44を形成する。金属酸化物層44は、金属酸化物膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該金属酸化物膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することで形成できる。
【0174】
金属酸化物膜の成膜時の基板温度は、350℃以下が好ましく、室温以上200℃以下がより好ましく、室温以上130℃以下がさらに好ましい。
【0175】
金属酸化物膜は、不活性ガス及び酸素ガスのいずれか一方または双方を用いて成膜することができる。なお、金属酸化物膜の成膜時における酸素の流量比(酸素分圧)に、特に限定はない。ただし、電界効果移動度が高いトランジスタを得る場合においては、金属酸化物膜の成膜時における酸素の流量比(酸素分圧)は、0%以上30%以下が好ましく、5%以上30%以下がより好ましく、7%以上15%以下がさらに好ましい。
【0176】
金属酸化物膜は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウム及び亜鉛を含むことが好ましい。
【0177】
金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上であることが好ましく、2.5eV以上であることがより好ましく、3eV以上であることがさらに好ましい。このように、エネルギーギャップの広い金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0178】
金属酸化物膜は、スパッタリング法により形成することができる。そのほか、PLD法、PECVD法、熱CVD法、ALD法、真空蒸着法などを用いてもよい。
【0179】
続いて、導電層43a及び導電層43bを形成する。導電層43a及び導電層43bは、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。導電層43a及び導電層43bは、それぞれ、金属酸化物層44と接続される。
【0180】
なお、導電層43a及び導電層43bの加工の際に、レジストマスクに覆われていない金属酸化物層44の一部がエッチングにより薄膜化する場合がある。
【0181】
導電膜の成膜時の基板温度は、室温以上350℃以下が好ましく、室温以上300℃以下がさらに好ましい。
【0182】
以上のようにして、トランジスタ40を作製できる(
図2(E))。トランジスタ40において、導電層41の一部はゲートとして機能し、絶縁層32の一部はゲート絶縁層として機能し、導電層43a及び導電層43bは、それぞれソースまたはドレインのいずれか一方として機能する。
【0183】
次に、トランジスタ40を覆う絶縁層33を形成する(
図3(A))。絶縁層33は、絶縁層31と同様の方法により形成することができる。
【0184】
また、絶縁層33として、酸素を含む雰囲気下で成膜した酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜等の酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。さらに、当該酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜上に窒化シリコン膜などの酸素を拡散、透過しにくい絶縁膜を積層することが好ましい。酸素を含む雰囲気下で形成した酸化物絶縁膜は、加熱により多くの酸素を放出しやすい絶縁膜とすることができる。このような酸素を放出する酸化物絶縁膜と、酸素を拡散、透過しにくい絶縁膜を積層した状態で、加熱処理を行うことにより、金属酸化物層44に酸素を供給することができる。その結果、金属酸化物層44中の酸素欠損、及び金属酸化物層44と絶縁層33の界面の欠陥を修復し、欠陥準位を低減することができる。これにより、極めて信頼性の高い表示装置を実現できる。
【0185】
以上の工程により、樹脂層23上に絶縁層31、トランジスタ40、及び絶縁層33を形成することができる(
図3(A))。
【0186】
この段階において、後述する方法を用いて作製基板14とトランジスタ40とを分離することで、表示素子を有さないデバイスを作製することができる。例えば、トランジスタ40や、トランジスタ40に加えて容量素子、抵抗素子、及び配線などを形成することで、半導体装置を作製することができる。
【0187】
次に、絶縁層33上に絶縁層34を形成する(
図3(B))。絶縁層34は、後に形成する表示素子の被形成面を有する層であるため、平坦化層として機能することが好ましい。絶縁層34は、絶縁層31に用いることのできる有機絶縁膜または無機絶縁膜を援用できる。
【0188】
絶縁層34は、樹脂層23の耐熱温度以下の温度で形成する。絶縁層34は、第1の加熱処理の温度以下の温度で形成することが好ましく、第1の加熱処理の温度より低い温度で形成してもよい。
【0189】
絶縁層34に有機絶縁膜を用いる場合、絶縁層34の形成時に樹脂層23にかかる温度は、室温以上350℃以下が好ましく、室温以上300℃以下がさらに好ましい。
【0190】
絶縁層34に無機絶縁膜を用いる場合、成膜時の基板温度は、室温以上350℃以下が好ましく、100℃以上300℃以下がさらに好ましい。
【0191】
次に、絶縁層34及び絶縁層33に、導電層43bに達する開口を形成する。
【0192】
その後、導電層61を形成する(
図3(C))。導電層61は、その一部が発光素子60の画素電極として機能する。導電層61は、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。
【0193】
導電層61は、樹脂層23の耐熱温度以下の温度で形成する。導電層61は、第1の加熱処理の温度以下の温度で形成することが好ましく、第1の加熱処理の温度より低い温度で形成してもよい。
【0194】
導電膜の成膜時の基板温度は、室温以上350℃以下が好ましく、室温以上300℃以下がさらに好ましい。
【0195】
次に、導電層61の端部を覆う絶縁層35を形成する(
図3(C))。絶縁層35は、絶縁層31に用いることのできる有機絶縁膜または無機絶縁膜を援用できる。
【0196】
絶縁層35は、樹脂層23の耐熱温度以下の温度で形成する。絶縁層35は、第1の加熱処理の温度以下の温度で形成することが好ましく、第1の加熱処理の温度より低い温度で形成してもよい。
【0197】
絶縁層35に有機絶縁膜を用いる場合、絶縁層35の形成時に樹脂層23にかかる温度は、室温以上350℃以下が好ましく、室温以上300℃以下がさらに好ましい。
【0198】
絶縁層35に無機絶縁膜を用いる場合、成膜時の基板温度は、室温以上350℃以下が好ましく、100℃以上300℃以下がさらに好ましい。
【0199】
ここで、第2の加熱処理を行うタイミングについて説明する。
【0200】
第2の加熱処理は、第1の加熱処理の後から、剥離工程の前までの間に行うことができる。特に、水素を含む層20、酸素を含む層21、及び樹脂層23などから放出される水素、酸素、及び水をブロックする機能を有する絶縁層を形成した後に行うことが好ましい。これにより、第2の加熱処理によって発生した水素や水が樹脂層23の表面から外部に放出されることを抑制できる。また、表示素子として有機EL素子を作製する場合など、耐熱性の低い膜を形成する場合は、当該膜を形成する前に行うことが好ましい。
【0201】
第2の加熱処理は、例えば、上述の絶縁層31を形成した後、ゲート絶縁層として機能する絶縁層32を形成した後、トランジスタ40を形成した後、絶縁層33を形成した後、絶縁層34を形成した後、または絶縁層35を形成した後に行うことができる。
【0202】
トランジスタの形成工程における加熱処理が、第2の加熱処理を兼ねることができる場合がある。
【0203】
第2の加熱処理については、上記剥離方法における記載を参照できる。なお、第2の加熱処理の後に形成する膜は、第2の加熱処理の温度以下の温度で形成することが好ましく、第2の加熱処理の温度より低い温度で形成してもよい。
【0204】
次に、EL層62及び導電層63を形成する(
図3(D))。導電層63は、その一部が発光素子60の共通電極として機能する。EL層62の耐熱性は低い場合が多いため、第2の加熱処理は、EL層62を成膜する前に行うことが好ましい。
【0205】
EL層62は、蒸着法、塗布法、印刷法、吐出法などの方法で形成することができる。EL層62を画素毎に作り分ける場合、メタルマスクなどの遮蔽マスクを用いた蒸着法、またはインクジェット法等により形成することができる。EL層62を画素毎に作り分けない場合には、メタルマスクを用いない蒸着法を用いることができる。
【0206】
EL層62には、低分子系化合物及び高分子系化合物のいずれを用いることもでき、無機化合物を含んでいてもよい。
【0207】
導電層63は、蒸着法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0208】
導電層63は、樹脂層23の耐熱温度以下かつEL層62の耐熱温度以下の温度で形成する。また、第1の加熱処理の温度以下の温度で形成することが好ましく、第1の加熱処理の温度より低い温度で形成してもよい。
【0209】
以上のようにして、発光素子60を形成することができる(
図3(D))。発光素子60は、一部が画素電極として機能する導電層61、EL層62、及び一部が共通電極として機能する導電層63が積層された構成を有する。
【0210】
ここでは、発光素子60として、トップエミッション型の発光素子を作製する例を示したが、本発明の一態様はこれに限られない。
【0211】
発光素子は、トップエミッション型、ボトムエミッション型、デュアルエミッション型のいずれであってもよい。光を取り出す側の電極には、可視光を透過する導電膜を用いる。また、光を取り出さない側の電極には、可視光を反射する導電膜を用いることが好ましい。
【0212】
次に、導電層63を覆って絶縁層74を形成する(
図3(D))。絶縁層74は、発光素子60に水などの不純物が拡散することを抑制する保護層として機能する。発光素子60は、絶縁層74によって封止される。導電層63を形成した後、大気に曝すことなく、絶縁層74を形成することが好ましい。
【0213】
絶縁層74は、樹脂層23の耐熱温度以下かつ発光素子60の耐熱温度以下の温度で形成する。絶縁層74は、第1の加熱処理の温度以下の温度で形成することが好ましく、第1の加熱処理の温度より低い温度で形成してもよい。
【0214】
絶縁層74は、例えば、上述した絶縁層31に用いることのできるバリア性の高い無機絶縁膜が含まれる構成とすることが好ましい。また、無機絶縁膜と有機絶縁膜を積層して用いてもよい。
【0215】
絶縁層74は、ALD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。ALD法及びスパッタリング法は低温成膜が可能であるため好ましい。ALD法を用いると絶縁層74のカバレッジが良好となり好ましい。
【0216】
次に、絶縁層74上に保護層75を形成する(
図3(D))。保護層75としては、
図1(E)に示すように、接着層75b及び基板75aを用いてもよい。
【0217】
次に、樹脂層23に分離の起点を形成する(
図4(A1)、(A2))。
【0218】
例えば、保護層75側から、樹脂層23の端部よりも内側に刃物などの鋭利な形状の器具65を差し込み、枠状に切れ目64を入れる。
【0219】
または、樹脂層23に、枠状にレーザ光を照射してもよい。
【0220】
なお、1枚の作製基板で複数の表示装置を形成する(多面取りする)場合、1つの樹脂層23を用いて、複数の表示装置を形成することができる。例えば、
図4(A2)の切れ目64の内側に、複数の表示装置が配置される。これにより、複数の表示装置を一度にまとめて作製基板と分離することができる。
【0221】
または、複数の樹脂層23を用いて、表示装置ごとに樹脂層23を作り分けてもよい。
図4(A3)では、作製基板上に、4つの樹脂層23を形成する例を示す。4つの樹脂層23それぞれに、枠状に切れ目64を入れることで、各表示装置を異なるタイミングで作製基板と分離することができる。
【0222】
作製方法例1では、酸素を含む層21上に、樹脂層23が接する部分と、絶縁層31が接する部分と、を設ける。酸素を含む層21と絶縁層31との密着性は、酸素を含む層21と樹脂層23との密着性よりも高い。そのため、樹脂層23が酸素を含む層21から意図せず剥がれることを抑制できる。そして、分離の起点を形成することで、所望のタイミングで、酸素を含む層21と樹脂層23とを分離することができる。したがって、剥離のタイミングを制御でき、かつ、高い剥離性を実現できる。これにより、剥離工程、及び表示装置の作製工程の歩留まりを高めることができる。
【0223】
次に、作製基板14とトランジスタ40とを分離する(
図4(B))。
【0224】
作製方法例1では、水素を含む層20、酸素を含む層21、及び樹脂層23(または第1の層24)を積層し、加熱処理を行う。これにより、酸素を含む層21と樹脂層23との間に水を供給し、酸素を含む層21と樹脂層23との密着性を低下させることができる。そのため、樹脂層23の一面全体にレーザ照射を行うことなく、作製基板14と樹脂層23とを分離することができる。これにより、低コストで表示装置を作製することができる。
【0225】
[表示装置の構成例1]
図5(A)は、表示装置10Aの上面図である。
図5(B)、(C)は、それぞれ、表示装置10Aの表示部381の断面図及びFPC372との接続部の断面図の一例である。
【0226】
表示装置10Aは、上記の作製方法例1を用いて作製することができる。表示装置10Aは、曲がった状態に保持することや、繰り返し曲げることなどが可能である。
【0227】
表示装置10Aは、保護層75及び基板29を有する。保護層75側が表示装置の表示面側である。表示装置10Aは、表示部381及び駆動回路部382を有する。表示装置10AにはFPC372が貼り付けられている。
【0228】
作製基板14から分離することで露出した樹脂層23と、基板29とを、接着層28を用いて貼り合わせることが好ましい。基板29は、表示装置10Aの支持基板として機能することができる。
【0229】
本実施の形態の剥離方法を用いることで、作製基板14を剥離し、基板29に、作製基板14上に作製したトランジスタ40及び発光素子60等を転置することができる。
【0230】
接着層28には、接着層75bに用いることができる材料を適用することができる。基板29には、基板75aに用いることができる材料を適用することができる。
【0231】
接続体76を介して、導電層43cとFPC372とが電気的に接続されている(
図5(B)、(C))。導電層43cは、トランジスタのソース及びドレインと同一の材料及び同一の工程で形成することができる。
【0232】
接続体76としては、様々な異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)及び異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)等を用いることができる。
【0233】
図5(C)に示す表示装置は、トランジスタ40を有さず、トランジスタ49を有している点、及び、絶縁層33上に着色層97を有する点で、
図5(B)の構成と異なる。ボトムエミッション型の発光素子60を用いる場合、発光素子60よりも基板29側に着色層97を有していてもよい。
【0234】
図5(C)に示すトランジスタ49は、
図5(B)に示すトランジスタ40の構成に加えて、ゲートとして機能する導電層45を有する。
【0235】
トランジスタ49には、チャネルが形成される半導体層を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。このような構成とすることで、トランジスタの閾値電圧を制御することができる。2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を供給することによりトランジスタを駆動してもよい。このようなトランジスタは他のトランジスタと比較して電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させることができる。その結果、高速駆動が可能な回路を作製することができる。さらには、回路部の占有面積を縮小することが可能となる。オン電流の大きなトランジスタを適用することで、表示装置を大型化、または高精細化したときに配線数が増大したとしても、各配線における信号遅延を低減することが可能であり、表示ムラを抑制することができる。
【0236】
または、2つのゲートのうち、一方に閾値電圧を制御するための電位を与え、他方に駆動のための電位を与えることで、トランジスタの閾値電圧を制御することができる。
【0237】
上述の通り、酸素を含む雰囲気下で加熱処理を行うことで、樹脂層23の一面全体にレーザ照射を行うことなく、作製基板から樹脂層23を剥離することができる。そのため、本実施の形態の表示装置の作製方法を適用して作製された表示装置が有する樹脂層23は、酸素を多く含むことが分析により確認できることがある。具体的には、樹脂層23の剥離面側の表面(作製基板側の表面ともいえる。
図5(B)、(C)では接着層28と接する面に相当する。)に対して、X線光電子分光法(XPS:X‐ray Photoelectron Spectroscopy)を用いた分析で、酸素濃度を求めることができる。特に、樹脂層23の接着層28側の面に対して行うX線光電子分光分析で求められる酸素濃度が、10atomic%以上であることが好ましく、15atomic%以上であることがより好ましい。
【0238】
[作製方法例2]
まず、上記剥離方法と同様に、作製基板14上に、水素を含む層20から絶縁層31までを形成する(
図6(A))。
【0239】
次に、絶縁層31上にトランジスタ80を形成する(
図6(B))。
【0240】
ここではトランジスタ80として、金属酸化物層83と2つのゲートを有するトランジスタを作製する場合を示す。
【0241】
トランジスタ80は、樹脂層23の耐熱温度以下の温度で形成する。第1の加熱処理の温度以下の温度で形成することが好ましく、第1の加熱処理の温度より低い温度で形成してもよい。
【0242】
具体的には、まず、絶縁層31上に導電層81を形成する。導電層81は、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することで形成できる。
【0243】
続いて、絶縁層82を形成する。絶縁層82は、絶縁層31に用いることのできる無機絶縁膜を援用できる。
【0244】
続いて、金属酸化物層83を形成する。金属酸化物層83は、金属酸化物膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該金属酸化物膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することで形成できる。金属酸化物層83は、金属酸化物層44に用いることのできる材料を援用できる。
【0245】
続いて、絶縁層84及び導電層85を形成する。絶縁層84は、絶縁層31に用いることのできる無機絶縁膜を援用できる。絶縁層84及び導電層85は、絶縁層84となる絶縁膜と、導電層85となる導電膜とを成膜した後、レジストマスクを形成し、当該絶縁膜及び当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。
【0246】
次に、金属酸化物層83、絶縁層84、及び導電層85を覆う絶縁層33を形成する。絶縁層33は、絶縁層31と同様の方法により形成することができる。
【0247】
絶縁層33は、水素を含むことが好ましい。絶縁層33に含まれる水素が、絶縁層33と接する金属酸化物層83に拡散し、金属酸化物層83の一部が低抵抗化する。絶縁層33に接する金属酸化物層83は低抵抗領域として機能するため、トランジスタ80のオン電流の増大及び電界効果移動度の向上が可能である。
【0248】
次に、絶縁層33に、金属酸化物層83に達する開口を形成する。
【0249】
続いて、導電層86a及び導電層86bを形成する。導電層86a及び導電層86bは、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。導電層86a及び導電層86bは、それぞれ、絶縁層33の開口を介して金属酸化物層83と電気的に接続される。
【0250】
以上のようにして、トランジスタ80を作製できる(
図6(B))。トランジスタ80において、導電層81の一部はゲートとして機能し、絶縁層84の一部はゲート絶縁層として機能し、絶縁層82の一部はゲート絶縁層として機能し、導電層85の一部はゲートとして機能する。金属酸化物層83はチャネル領域と低抵抗領域とを有する。チャネル領域は絶縁層84を介して導電層85と重なる。低抵抗領域は導電層86aと接続される部分と、導電層86bと接続される部分と、を有する。
【0251】
次に、絶縁層33上に絶縁層34から発光素子60までを形成する(
図6(C))。これらの工程は作製方法例1を参照できる。
【0252】
ここで、第2の加熱処理を行うタイミングについて説明する。
【0253】
第2の加熱処理は、第1の加熱処理の後から剥離工程の前までの間に行うことができる。特に、水素を含む層20、酸素を含む層21、及び樹脂層23などから放出される水素、酸素、及び水をブロックする機能を有する絶縁層を形成した後に行うことが好ましい。また、表示素子として有機EL素子を作製する場合など、耐熱性の低い膜を形成する場合は、当該膜を形成する前に行うことが好ましい。
【0254】
第2の加熱処理は、例えば、上述の絶縁層31を形成した後、ゲート絶縁層として機能する絶縁層82を形成した後、絶縁層33を形成した後、トランジスタ80を形成した後、絶縁層34を形成した後、または絶縁層35を形成した後に行うことができる。
【0255】
トランジスタの形成工程における加熱処理が、第2の加熱処理を兼ねることができる場合がある。
【0256】
第2の加熱処理については、上記剥離方法における記載を参照できる。なお、第2の加熱処理の後に形成する膜は、第2の加熱処理の温度以下の温度で形成することが好ましく、第2の加熱処理の温度より低い温度で形成してもよい。
【0257】
また、
図6(A)〜(C)までの工程とは独立して、
図7(A)、(B)の工程を行う。まず、作製基板14上に水素を含む層20を形成する工程と同様に、作製基板91上に、水素を含む層92を形成する。次に、水素を含む層20上に酸素を含む層21を形成する工程と同様に、水素を含む層92上に、酸素を含む層94を形成する。次に、酸素を含む層21上に樹脂層23を形成する工程と同様に、酸素を含む層94上に第1の層を形成し、第1の加熱処理を行うことで、樹脂層93を形成する。そして、樹脂層23上に絶縁層31を形成する工程と同様に、樹脂層93上に、樹脂層93の端部を覆う絶縁層95を形成する(
図7(A))。絶縁層95を形成した後に、第2の加熱処理を行うことが好ましい。
【0258】
次に、絶縁層95上に、着色層97及び遮光層98を形成する(
図7(B))。
【0259】
着色層97として、カラーフィルタ等を用いることができる。着色層97は発光素子60の表示領域と重なるように配置する。
【0260】
遮光層98として、ブラックマトリクス等を用いることができる。遮光層98は、絶縁層35と重なるように配置する。
【0261】
次に、作製基板14のトランジスタ80等が形成されている面と、作製基板91の樹脂層93等が形成されている面とを、接着層99を用いて貼り合わせる(
図7(C))。
【0262】
次に、樹脂層23に分離の起点を形成する(
図8(A)、(B))。作製基板14と作製基板91はどちらを先に分離してもよい。ここでは、作製基板91よりも先に作製基板14を分離する例を示す。
【0263】
例えば、作製基板14側から、樹脂層23に、枠状にレーザ光66を照射する(
図8(B)に示すレーザ光の照射領域67参照)。作製基板14及び作製基板91にガラスなどの硬質基板を用いる場合に好適である。
【0264】
分離の起点を形成するために用いるレーザには特に限定はない。例えば、連続発振型のレーザやパルス発振型のレーザを用いることができる。レーザ光の照射条件(周波数、パワー密度、エネルギー密度、ビームプロファイル等)は、作製基板や樹脂層の厚さ、材料等を考慮して適宜制御する。
【0265】
作製方法例2では、酸素を含む層21上に、樹脂層23が接する部分と、絶縁層31が接する部分と、を設ける。酸素を含む層21と絶縁層31との密着性は、酸素を含む層21と樹脂層23との密着性よりも高い。そのため、樹脂層23が酸素を含む層21から意図せず剥がれることを抑制できる。同様に、酸素を含む層94上には、樹脂層93が接する部分と、絶縁層95が接する部分と、を設ける。酸素を含む層94と絶縁層95との密着性は、酸素を含む層94と樹脂層93との密着性よりも高い。そのため、樹脂層93が酸素を含む層94から意図せず剥がれることを抑制できる。
【0266】
そして、樹脂層23または樹脂層93の一方のみに分離の起点を形成する。樹脂層23と樹脂層93とで、分離の起点を形成するタイミングを変えることができるため、作製基板14と作製基板91をそれぞれ別工程で分離することができる。これにより、剥離工程、及び表示装置の作製工程の歩留まりを高めることができる。
【0267】
レーザ光66は、樹脂層23の一面全体に照射する必要はなく、部分的に照射する。そのため、高価かつランニングコストの高いレーザ装置は不要である。
【0268】
次に、作製基板14とトランジスタ80とを分離する(
図9(A))。ここでは、枠状にレーザ光66を照射した内側の部分(
図8(B)に示すレーザ光の照射領域67の内側の部分ともいえる。)と、作製基板14とを分離する例を示す。また、
図9(A)では、枠状にレーザ光66を照射した外側の部分において、接着層99中で分離が生じる(接着層99が凝集破壊する)例を示すが、これに限られない。例えば、照射領域67の外側において、接着層99は絶縁層95または絶縁層33との間で分離が生じる(界面破壊または接着破壊が生じるともいう)場合がある。
【0269】
作製方法例2では、水素を含む層20、酸素を含む層21、及び樹脂層23(または第1の層24)を積層し、加熱処理を行う。これにより、酸素を含む層21と樹脂層23との間に水を供給し、酸素を含む層21と樹脂層23との密着性を低下させることができる。そのため、樹脂層23の一面全体にレーザ照射を行うことなく、作製基板14と樹脂層23とを分離することができる。これにより、低コストで表示装置を作製することができる。
【0270】
次に、作製基板14から分離することで露出した樹脂層23と、基板29とを、接着層28を用いて貼り合わせる(
図9(B))。基板29は、表示装置の支持基板として機能することができる。
【0271】
次に、樹脂層93に分離の起点を形成する(
図10(A))。
【0272】
図10(A)では、基板29側から、樹脂層93の端部よりも内側に刃物などの鋭利な形状の器具65を差し込み、枠状に切れ目を入れる。基板29に樹脂を用いる場合に好適である。
【0273】
または、樹脂層23に分離の起点を形成した際と同様に、作製基板91側から、樹脂層93に、枠状にレーザ光を照射してもよい。
【0274】
分離の起点を形成することで、所望のタイミングで、作製基板91と樹脂層93とを分離することができる。したがって、剥離のタイミングを制御でき、かつ、高い剥離性を実現できる。これにより、剥離工程、及び表示装置の作製工程の歩留まりを高めることができる。
【0275】
次に、作製基板91とトランジスタ80とを分離する(
図10(B))。ここでは、枠状に切れ目を入れた内側の部分と作製基板91とを分離する例を示す。
【0276】
作製方法例2では、水素を含む層92、酸素を含む層94、及び樹脂層93(または第1の層)を積層し、加熱処理を行う。これにより、酸素を含む層94と樹脂層93との間に水を供給し、酸素を含む層94と樹脂層93との密着性を低下させることができる。そのため、樹脂層93の一面全体にレーザ照射を行うことなく、作製基板91と樹脂層93とを分離することができる。これにより、低コストで表示装置を作製することができる。
【0277】
次に、作製基板91から分離することで露出した樹脂層93と、基板22とを、接着層13を用いて貼り合わせる(
図11(A))。基板22は、表示装置の支持基板として機能することができる。
【0278】
図11(A)において、発光素子60の発光は、着色層97、絶縁層95、及び樹脂層93を通して、表示装置の外部に取り出される。そのため、樹脂層93の可視光の透過率は高いことが好ましい。本発明の一態様では、樹脂層93の厚さを薄くすることができる。そのため、樹脂層93の可視光の透過率を高め、発光素子60の光取り出し効率の低下を抑制できる。
【0279】
樹脂層93を除去してもよい。これにより、発光素子60の光取り出し効率をさらに高めることができる。
図11(B)では、樹脂層93を除去し、接着層13を用いて絶縁層95に基板22を貼り合わせた例を示す。
【0280】
接着層13には、接着層75bに用いることができる材料を適用できる。
【0281】
基板22には、基板75aに用いることができる材料を適用できる。
【0282】
作製方法例2は、本発明の一態様の剥離方法を2回行って表示装置を作製する例である。本発明の一態様では、表示装置を構成する機能素子等は、全て作製基板上で形成するため、精細度の高い表示装置を作製する場合においても、可撓性を有する基板には、高い位置合わせ精度が要求されない。よって、簡便に可撓性を有する基板を貼り付けることができる。
【0283】
[変形例]
作製方法例2(
図7(C))では、接着層99が、酸素を含む層21と絶縁層31とが接している部分、及び酸素を含む層94と絶縁層95とが接している部分の双方と重ねて設けられる場合を示した。
【0284】
酸素を含む層21と絶縁層31の密着性、及び酸素を含む層94と絶縁層95の密着性は、それぞれ、酸素を含む層21と樹脂層23の密着性、及び酸素を含む層94と樹脂層93の密着性よりも高い。
【0285】
酸素を含む層21と絶縁層31の界面または酸素を含む層94と絶縁層95の界面で剥離を行うと、剥離不良が生じるなど、剥離の歩留まりが低下することがある。そのため、樹脂層に分離の起点を枠状に形成した後、樹脂層と重なる部分のみを作製基板と分離する工程が好適である。
【0286】
一方、
図12(A)、(B)に示すように、接着層99を、酸素を含む層21と絶縁層31とが接している部分、及び酸素を含む層94と絶縁層95とが接している部分とは重ねない構成とすることができる。
【0287】
例えば、流動性の低い接着剤、または接着シートなどを接着層99に用いると、接着層99を島状に形成することが容易である(
図12(A))。
【0288】
または、枠状の隔壁96を形成し、隔壁96に囲まれた内側に接着層99を充填し硬化してもよい(
図12(B))。
【0289】
隔壁96を表示装置の構成要素として用いる場合、隔壁96には、硬化した樹脂を用いることが好ましい。このとき、隔壁96も、酸素を含む層21と絶縁層31とが接している部分、及び酸素を含む層94と絶縁層95とが接している部分とは重ねないことが好ましい。
【0290】
隔壁96を表示装置の構成要素として用いない場合、隔壁96には、未硬化または半硬化の樹脂を用いることが好ましい。このとき、隔壁96を、酸素を含む層21と絶縁層31とが接している部分、及び酸素を含む層94と絶縁層95とが接している部分の一方または双方と重ねてもよい。
【0291】
本実施の形態では、隔壁96に未硬化の樹脂を用い、隔壁96が、酸素を含む層21と絶縁層31とが接している部分、及び酸素を含む層94と絶縁層95とが接している部分と重ならない例を示す。
【0292】
接着層99が、酸素を含む層21と絶縁層31とが接している部分、及び酸素を含む層94と絶縁層95とが接している部分と重ならない構成における分離の起点の形成方法について説明する。以下では、作製基板91を剥離する例を示す。作製基板14を剥離する場合にも同様の方法を用いることができる。
【0293】
図13(A)〜(E)では、作製基板91と樹脂層93とを分離する場合のレーザ光66の照射位置を説明する。
【0294】
図13(A)に示すように、樹脂層93と接着層99とが重なる領域の少なくとも1か所に、レーザ光66を照射することで、分離の起点を形成できる。
【0295】
分離の起点に、作製基板91と樹脂層93を引き離す力が集中することが好ましいため、接着層99の中央部よりも端部近傍に分離の起点を形成することが好ましい。特に、端部近傍の中でも、辺部近傍に比べて、角部近傍に分離の起点を形成することが好ましい。
【0296】
図13(B)〜(E)に、レーザ光の照射領域67の一例を示す。
【0297】
図13(B)では、接着層99の角部に1か所、レーザ光の照射領域67を示す。
【0298】
連続的もしくは断続的にレーザ光を照射することで、実線状もしくは破線状の分離の起点を形成することができる。
図13(C)では、接着層99の角部に3か所、レーザ光の照射領域67を示す。
図13(D)では、レーザ光の照射領域67が、接着層99の一辺に接し、かつ接着層99の一辺に沿って伸びている例を示す。
図13(E)に示すように、レーザ光の照射領域67が、接着層99と樹脂層93とが重なる領域だけでなく、硬化状態でない隔壁96と樹脂層93とが重なる領域に位置してもよい。
【0299】
その後、作製基板91と樹脂層93とを分離することができる。なお、作製基板14側に隔壁96の一部が残存することがある。隔壁96は、除去してもよいし、除去せず、次の工程に進んでもよい。
【0300】
[表示装置の構成例2]
図14(A)は、表示装置10Bの上面図である。
図14(B)は、表示装置10Bの表示部381の断面図及びFPC372との接続部の断面図の一例である。
【0301】
表示装置10Bは、上記の作製方法例2を用いて作製することができる。表示装置10Bは、曲がった状態に保持することや、繰り返し曲げることなどが可能である。
【0302】
表示装置10Bは、基板22及び基板29を有する。基板22側が表示装置10Bの表示面側である。表示装置10Bは、表示部381及び駆動回路部382を有する。表示装置10BにはFPC372が貼り付けられている。
【0303】
接続体76を介して、導電層86cとFPC372とが電気的に接続されている(
図14(B))。導電層86cは、トランジスタのソース及びドレインと同一の材料及び同一の工程で形成することができる。
【0304】
上述の通り、酸素を含む雰囲気下で加熱処理を行うことで、樹脂層の一面全体にレーザ照射を行うことなく、作製基板から樹脂層を剥離することができる。そのため、本実施の形態の表示装置の作製方法を適用して作製された表示装置が有する樹脂層は、酸素を多く含むことが分析により確認できることがある。具体的には、樹脂層の剥離面側の表面に対して、XPSを用いた分析で、酸素濃度を求めることができる。樹脂層23の接着層28側の面に対して行うX線光電子分光分析で求められる酸素濃度が、10atomic%以上であることが好ましく、15atomic%以上であることがより好ましい。樹脂層93の接着層13側の面に対して行うX線光電子分光分析で求められる酸素濃度が、10atomic%以上であることが好ましく、15atomic%以上であることがより好ましい。
【0305】
以上のように、本実施の形態の剥離方法は、作製基板上に、水素を含む層、酸素を含む層、及び樹脂層を積層し、加熱によって樹脂層の作製基板に対する剥離性を制御する。線状レーザビームの照射など、高価な装置が必要な処理が不要であるため、低コストである。また、酸素を含む層上に樹脂層が接する部分と、絶縁層が接する部分とを設けることで、所望のタイミングで、作製基板から樹脂層を剥離することができる。したがって、本実施の形態の剥離方法を用いて、低コストかつ量産性高く表示装置等を作製できる。
【0306】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0307】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置とその作製方法について図面を用いて説明する。
【0308】
本実施の形態の表示装置は、可視光を反射する第1の表示素子と、可視光を発する第2の表示素子とを有する。
【0309】
本実施の形態の表示装置は、第1の表示素子が反射する光と、第2の表示素子が発する光のうち、いずれか一方、または両方により、画像を表示する機能を有する。
【0310】
第1の表示素子には、外光を反射して表示する素子を用いることができる。このような素子は光源を持たない(人工光源を使用しない)ため、表示の際の消費電力を極めて小さくすることが可能となる。
【0311】
第1の表示素子には、代表的には反射型の液晶素子を用いることができる。または、第1の表示素子として、シャッター方式のMEMS(Micro Electro Mechanical System)素子、光干渉方式のMEMS素子の他、マイクロカプセル方式、電気泳動方式、エレクトロウェッティング方式、電子粉流体(登録商標)方式等を適用した素子などを用いることができる。
【0312】
第2の表示素子には、発光素子を用いることが好ましい。このような表示素子が射出する光は、その輝度や色度が外光に左右されることがないため、色再現性が高く(色域が広く)、コントラストの高い、鮮やかな表示を行うことができる。
【0313】
第2の表示素子には、例えばOLED(Organic Light Emitting Diode)、LED(Light Emitting Diode)、QLED(Quantum−dot Light Emitting Diode)などの自発光性の発光素子を用いることができる。
【0314】
本実施の形態の表示装置は、第1の表示素子のみを用いて画像を表示する第1のモード、第2の表示素子のみを用いて画像を表示する第2のモード、並びに、第1の表示素子及び第2の表示素子を用いて画像を表示する第3のモードを有し、これらのモードを自動または手動で切り替えて使用することができる。
【0315】
第1のモードでは、第1の表示素子と外光を用いて画像を表示する。第1のモードは光源が不要であるため、極めて低消費電力なモードである。例えば、表示装置に外光が十分に入射されるとき(明るい環境下など)は、第1の表示素子が反射した光を用いて表示を行うことができる。例えば、外光が十分に強く、かつ外光が白色光またはその近傍の光である場合に有効である。第1のモードは、文字を表示することに適したモードである。また、第1のモードは、外光を反射した光を用いるため、目に優しい表示を行うことができ、目が疲れにくいという効果を奏する。
【0316】
第2のモードでは、第2の表示素子による発光を利用して画像を表示する。そのため、照度や外光の色度によらず、極めて鮮やかな(コントラストが高く、且つ色再現性の高い)表示を行うことができる。例えば、夜間や暗い室内など、照度が極めて低い場合などに有効である。また周囲が暗い場合、明るい表示を行うと使用者が眩しく感じてしまう場合がある。これを防ぐために、第2のモードでは輝度を抑えた表示を行うことが好ましい。これにより、眩しさを抑えることに加え、消費電力も低減することができる。第2のモードは、鮮やかな画像(静止画及び動画)などを表示することに適したモードである。
【0317】
第3のモードでは、第1の表示素子による反射光と、第2の表示素子による発光の両方を利用して表示を行う。第1のモードよりも鮮やかな表示をしつつ、第2のモードよりも消費電力を抑えることができる。例えば、室内照明下や、朝方や夕方の時間帯など、照度が比較的低い場合、外光の色度が白色ではない場合などに有効である。
【0318】
このような構成とすることで、周囲の明るさによらず視認性が高く、利便性の高い表示装置または全天候型の表示装置を実現できる。
【0319】
本実施の形態の表示装置は、第1の表示素子を有する第1の画素と、第2の表示素子を有する第2の画素とをそれぞれ複数有する。第1の画素と第2の画素は、それぞれ、マトリクス状に配置されることが好ましい。
【0320】
第1の画素及び第2の画素は、それぞれ、1つ以上の副画素を有する構成とすることができる。例えば、画素には、副画素を1つ有する構成(白色(W)など)、副画素を3つ有する構成(赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の3色、または、黄色(Y)、シアン(C)、及びマゼンタ(M)の3色など)、または、副画素を4つ有する構成(赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、白色(W)の4色、または、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、黄色(Y)の4色など)を適用できる。
【0321】
本実施の形態の表示装置は、第1の画素と第2の画素のどちらでも、フルカラー表示を行う構成とすることができる。または、本実施の形態の表示装置は、第1の画素では白黒表示またはグレースケールでの表示を行い、第2の画素ではフルカラー表示を行う構成とすることができる。第1の画素を用いた白黒表示またはグレースケールでの表示は、文書情報など、カラー表示を必要としない情報を表示することに適している。
【0322】
図15〜
図17を用いて、本実施の形態の表示装置の構成例について説明する。
【0323】
<構成例1>
図15は、表示装置300Aの斜視概略図である。表示装置300Aは、基板351と基板361とが貼り合わされた構成を有する。
図15では、基板361を破線で明示している。
【0324】
表示装置300Aは、表示部362、回路364、配線365等を有する。
図15では表示装置300AにIC(集積回路)373及びFPC372が実装されている例を示している。そのため、
図15に示す構成は、表示装置300A、IC、及びFPCを有する表示モジュールということもできる。
【0325】
回路364としては、例えば走査線駆動回路を用いることができる。
【0326】
配線365は、表示部362及び回路364に信号及び電力を供給する機能を有する。当該信号及び電力は、FPC372を介して外部から、またはIC373から配線365に入力される。
【0327】
図15では、COG(Chip On Glass)方式またはCOF(Chip on Film)方式等により、基板351にIC373が設けられている例を示す。IC373は、例えば走査線駆動回路または信号線駆動回路などを有するICを適用できる。なお、表示装置300A及び表示モジュールは、ICを設けない構成としてもよい。また、ICを、COF方式等により、FPCに実装してもよい。
【0328】
図15には、表示部362の一部の拡大図を示している。表示部362には、複数の表示素子が有する電極311bがマトリクス状に配置されている。電極311bは、可視光を反射する機能を有し、液晶素子180の反射電極として機能する。
【0329】
また、
図15に示すように、電極311bは開口451を有する。さらに表示部362は、電極311bよりも基板351側に、発光素子170を有する。発光素子170からの光は、電極311bの開口451を介して基板361側に射出される。発光素子170の発光領域の面積と開口451の面積とは等しくてもよい。発光素子170の発光領域の面積と開口451の面積のうち一方が他方よりも大きいと、位置ずれに対するマージンが大きくなるため好ましい。特に、開口451の面積は、発光素子170の発光領域の面積に比べて大きいことが好ましい。開口451が小さいと、発光素子170からの光の一部が電極311bによって遮られ、外部に取り出せないことがある。開口451を十分に大きくすることで、発光素子170の発光が無駄になることを抑制できる。
【0330】
図16に、
図15で示した表示装置300Aの、FPC372を含む領域の一部、回路364を含む領域の一部、及び表示部362を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を示す。
【0331】
図16に示す表示装置300Aは、基板351と基板361の間に、トランジスタ201、トランジスタ203、トランジスタ205、トランジスタ206、液晶素子180、発光素子170、絶縁層220、着色層131、着色層134等を有する。基板361と絶縁層220は接着層141を介して接着されている。基板351と絶縁層220は接着層142を介して接着されている。
【0332】
基板361には、着色層131、遮光層132、絶縁層121、及び液晶素子180の共通電極として機能する電極113、配向膜133b、絶縁層117等が設けられている。基板361の外側の面には、偏光板135を有する。絶縁層121は、平坦化層としての機能を有していてもよい。絶縁層121により、電極113の表面を概略平坦にできるため、液晶層112の配向状態を均一にできる。絶縁層117は、液晶素子180のセルギャップを保持するためのスペーサとして機能する。絶縁層117が可視光を透過する場合は、絶縁層117を液晶素子180の表示領域と重ねて配置してもよい。
【0333】
液晶素子180は反射型の液晶素子である。液晶素子180は、画素電極として機能する電極311a、液晶層112、電極113が積層された積層構造を有する。電極311aの基板351側に接して、可視光を反射する電極311bが設けられている。電極311bは開口451を有する。電極311a及び電極113は可視光を透過する。液晶層112と電極311aの間に配向膜133aが設けられている。液晶層112と電極113の間に配向膜133bが設けられている。
【0334】
液晶素子180において、電極311bは可視光を反射する機能を有し、電極113は可視光を透過する機能を有する。基板361側から入射した光は、偏光板135により偏光され、電極113、液晶層112を透過し、電極311bで反射する。そして液晶層112及び電極113を再度透過して、偏光板135に達する。このとき、電極311bと電極113の間に与える電圧によって液晶の配向を制御し、光の光学変調を制御することができる。すなわち、偏光板135を介して射出される光の強度を制御することができる。また光は着色層131によって特定の波長領域以外の光が吸収されることにより、取り出される光は、例えば赤色を呈する光となる。
【0335】
図16に示すように、開口451には可視光を透過する電極311aが設けられていることが好ましい。これにより、開口451と重なる領域においてもそれ以外の領域と同様に液晶層112が配向するため、これらの領域の境界部で液晶の配向不良が生じ、意図しない光が漏れてしまうことを抑制できる。
【0336】
接続部207において、電極311bは、導電層221bを介して、トランジスタ206が有する導電層222aと電気的に接続されている。トランジスタ206は、液晶素子180の駆動を制御する機能を有する。
【0337】
接着層141が設けられる一部の領域には、接続部252が設けられている。接続部252において、電極311aと同一の導電膜を加工して得られた導電層と、電極113の一部が、接続体243により電気的に接続されている。したがって、基板361側に形成された電極113に、基板351側に接続されたFPC372から入力される信号または電位を、接続部252を介して供給することができる。
【0338】
接続体243としては、例えば導電性の粒子を用いることができる。導電性の粒子としては、有機樹脂またはシリカなどの粒子の表面を金属材料で被覆したものを用いることができる。金属材料としてニッケルや金を用いると接触抵抗を低減できるため好ましい。またニッケルをさらに金で被覆するなど、2種類以上の金属材料を層状に被覆させた粒子を用いることが好ましい。また接続体243として、弾性変形、または塑性変形する材料を用いることが好ましい。このとき導電性の粒子である接続体243は、
図16に示すように上下方向に潰れた形状となる場合がある。こうすることで、接続体243と、これと電気的に接続する導電層との接触面積が増大し、接触抵抗を低減できるほか、接続不良などの不具合の発生を抑制することができる。
【0339】
接続体243は、接着層141に覆われるように配置することが好ましい。例えば硬化前の接着層141に、接続体243を分散させておけばよい。
【0340】
発光素子170は、ボトムエミッション型の発光素子である。発光素子170は、絶縁層220側から画素電極として機能する電極191、EL層192、及び共通電極として機能する電極193の順に積層された積層構造を有する。電極191は、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ205が有する導電層222aと接続されている。トランジスタ205は、発光素子170の駆動を制御する機能を有する。絶縁層216が電極191の端部を覆っている。電極193は可視光を反射する材料を含み、電極191は可視光を透過する材料を含む。電極193を覆って絶縁層194が設けられている。発光素子170が発する光は、着色層134、絶縁層220、開口451、電極311a等を介して、基板361側に射出される。
【0341】
液晶素子180及び発光素子170は、画素によって着色層の色を変えることで、様々な色を呈することができる。表示装置300Aは、液晶素子180を用いて、カラー表示を行うことができる。表示装置300Aは、発光素子170を用いて、カラー表示を行うことができる。
【0342】
トランジスタ201、トランジスタ203、トランジスタ205、及びトランジスタ206は、いずれも絶縁層220の基板351側の面上に形成されている。これらのトランジスタは、同一の工程を用いて作製することができる。
【0343】
液晶素子180と電気的に接続される回路は、発光素子170と電気的に接続される回路と同一面上に形成されることが好ましい。これにより、2つの回路を別々の面上に形成する場合に比べて、表示装置の厚さを薄くすることができる。また、2つのトランジスタを同一の工程で作製できるため、2つのトランジスタを別々の面上に形成する場合に比べて、作製工程を簡略化することができる。
【0344】
液晶素子180の画素電極は、トランジスタが有するゲート絶縁層を挟んで、発光素子170の画素電極とは反対に位置する。
【0345】
ここで、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、オフ電流が極めて低いトランジスタ206を適用した場合や、トランジスタ206と電気的に接続される記憶素子を適用した場合などでは、液晶素子180を用いて静止画を表示する際に画素への書き込み動作を停止しても、階調を維持させることが可能となる。すなわち、フレームレートを極めて小さくしても表示を保つことができる。本発明の一態様では、フレームレートを極めて小さくでき、消費電力の低い駆動を行うことができる。
【0346】
トランジスタ203は、画素の選択、非選択状態を制御するトランジスタ(スイッチングトランジスタ、または選択トランジスタともいう)である。トランジスタ205は、発光素子170に流れる電流を制御するトランジスタ(駆動トランジスタともいう)である。
【0347】
絶縁層220の基板351側には、絶縁層211、絶縁層212、絶縁層213、絶縁層214等の絶縁層が設けられている。絶縁層211は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層212は、トランジスタ206等を覆って設けられる。絶縁層213は、トランジスタ205等を覆って設けられている。絶縁層214は、平坦化層としての機能を有する。なお、トランジスタを覆う絶縁層の数は限定されず、単層であっても2層以上であってもよい。
【0348】
各トランジスタを覆う絶縁層の少なくとも一層に、水や水素などの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。これにより、絶縁層をバリア膜として機能させることができる。このような構成とすることで、トランジスタに対して外部から不純物が拡散することを効果的に抑制することが可能となり、信頼性の高い表示装置を実現できる。
【0349】
トランジスタ201、トランジスタ203、トランジスタ205、及びトランジスタ206は、ゲートとして機能する導電層221a、ゲート絶縁層として機能する絶縁層211、ソース及びドレインとして機能する導電層222a及び導電層222b、並びに、半導体層231を有する。ここでは、同一の導電膜を加工して得られる複数の層に、同じハッチングパターンを付している。
【0350】
トランジスタ201及びトランジスタ205は、トランジスタ203及びトランジスタ206の構成に加えて、ゲートとして機能する導電層223を有する。
【0351】
トランジスタ201及びトランジスタ205には、チャネルが形成される半導体層を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。このような構成とすることで、トランジスタの閾値電圧を制御することができる。2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を供給することによりトランジスタを駆動してもよい。このようなトランジスタは他のトランジスタと比較して電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させることができる。その結果、高速駆動が可能な回路を作製することができる。さらには、回路部の占有面積を縮小することが可能となる。オン電流の大きなトランジスタを適用することで、表示装置を大型化、または高精細化したときに配線数が増大したとしても、各配線における信号遅延を低減することが可能であり、表示ムラを抑制することができる。
【0352】
または、2つのゲートのうち、一方に閾値電圧を制御するための電位を与え、他方に駆動のための電位を与えることで、トランジスタの閾値電圧を制御することができる。
【0353】
表示装置が有するトランジスタの構造に限定はない。回路364が有するトランジスタと、表示部362が有するトランジスタは、同じ構造であってもよく、異なる構造であってもよい。回路364が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよく、2種類以上の構造が組み合わせて用いられていてもよい。同様に、表示部362が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよく、2種類以上の構造が組み合わせて用いられていてもよい。
【0354】
導電層223には、酸化物を含む導電材料を用いることが好ましい。導電層223を構成する導電膜の成膜時に、酸素を含む雰囲気下で成膜することで、絶縁層212に酸素を供給することができる。成膜ガス中の酸素ガスの割合を90%以上100%以下の範囲とすることが好ましい。絶縁層212に供給された酸素は、後の熱処理により半導体層231に供給され、半導体層231中の酸素欠損の低減を図ることができる。
【0355】
特に、導電層223には、低抵抗化された金属酸化物を用いることが好ましい。このとき、絶縁層213に水素を放出する絶縁膜、例えば窒化シリコン膜等を用いることが好ましい。絶縁層213の成膜中、またはその後の熱処理によって導電層223中に水素が供給され、導電層223の電気抵抗を効果的に低減することができる。
【0356】
絶縁層213に接して着色層134が設けられている。着色層134は、絶縁層214に覆われている。
【0357】
基板351と基板361とが重ならない領域には、接続部204が設けられている。接続部204では、配線365が接続層242を介してFPC372と電気的に接続されている。接続部204は接続部207と同様の構成を有している。接続部204の上面は、電極311aと同一の導電膜を加工して得られた導電層が露出している。これにより、接続部204とFPC372とを接続層242を介して電気的に接続することができる。
【0358】
基板361の外側の面に配置する偏光板135として直線偏光板を用いてもよいが、円偏光板を用いることもできる。円偏光板としては、例えば直線偏光板と1/4波長位相差板を積層したものを用いることができる。これにより、外光反射を抑制することができる。また、偏光板の種類に応じて、液晶素子180に用いる液晶素子のセルギャップ、配向、駆動電圧等を調整することで、所望のコントラストが実現されるようにする。
【0359】
なお、基板361の外側には各種光学部材を配置することができる。光学部材としては、偏光板、位相差板、光拡散層(拡散フィルムなど)、反射防止層、及び集光フィルム等が挙げられる。また、基板361の外側には、ゴミの付着を抑制する帯電防止膜、汚れを付着しにくくする撥水性の膜、使用に伴う傷の発生を抑制するハードコート膜等を配置してもよい。
【0360】
基板351及び基板361には、それぞれ、ガラス、石英、セラミック、サファイヤ、有機樹脂などを用いることができる。基板351及び基板361に可撓性を有する材料を用いると、表示装置の可撓性を高めることができる。
【0361】
液晶素子180としては、例えば垂直配向(VA:Vertical Alignment)モードが適用された液晶素子を用いることができる。垂直配向モードとしては、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。
【0362】
液晶素子180には、様々なモードが適用された液晶素子を用いることができる。例えばVAモードのほかに、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード等が適用された液晶素子を用いることができる。
【0363】
液晶素子は、液晶の光学的変調作用によって光の透過または非透過を制御する素子である。液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(横方向の電界、縦方向の電界または斜め方向の電界を含む)によって制御される。液晶素子に用いる液晶としては、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0364】
液晶材料としては、ポジ型の液晶、またはネガ型の液晶のいずれを用いてもよく、適用するモードや設計に応じて最適な液晶材料を用いることができる。
【0365】
液晶の配向を制御するため、配向膜を設けることができる。なお、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を液晶に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性である。また、ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。
【0366】
反射型の液晶素子を用いる場合には、表示面側に偏光板135を設ける。またこれとは別に、表示面側に光拡散板を配置すると、視認性を向上させられるため好ましい。
【0367】
偏光板135よりも外側に、フロントライトを設けてもよい。フロントライトとしては、エッジライト型のフロントライトを用いることが好ましい。LEDを備えるフロントライトを用いると、消費電力を低減できるため好ましい。
【0368】
発光素子、トランジスタ、絶縁層、導電層、接着層、接続層等に用いることができる材料については、それぞれ、実施の形態1の説明を参照できる。
【0369】
<構成例2>
図17(A)に、表示装置300Bの表示部の断面図を示す。
【0370】
図17(A)に示す表示装置300Bは、基板351と基板361の間に、トランジスタ40、トランジスタ80、液晶素子180、発光素子170、絶縁層220、着色層131、着色層134等を有する。
【0371】
トランジスタ40及びトランジスタ80の構成及び作製方法については、実施の形態1を参照できる。
【0372】
液晶素子180では、外光を電極311bが反射し、基板361側に反射光を射出する。発光素子170は、基板361側に光を射出する。液晶素子180及び発光素子170の構成については、構成例1を参照できる。
【0373】
基板361には、着色層131、絶縁層121、及び液晶素子180の共通電極として機能する電極113、配向膜133bが設けられている。
【0374】
液晶層112は、配向膜133a及び配向膜133bを介して、電極311a及び電極113の間に挟持されている。
【0375】
トランジスタ40は、絶縁層212及び絶縁層213で覆われている。絶縁層213と着色層134は、接着層142によって、絶縁層194と貼り合わされている。
【0376】
表示装置300Bは、液晶素子180を駆動するトランジスタ40と発光素子170を駆動するトランジスタ80とを、異なる面上に形成するため、それぞれの表示素子を駆動するために適した構造、材料を用いて形成することが容易である。
【0377】
<構成例3>
図17(B)に、表示装置300Cの表示部の断面図を示す。
【0378】
図17(B)に示す表示装置300Cは、電極311a上に絶縁層31を有する点で、表示装置300Bと異なる。
【0379】
絶縁層31を有することで、絶縁層31よりも基板361側から、トランジスタ40、トランジスタ80、及び発光素子170に、不純物が入り込むことを抑制でき、好ましい。
【0380】
<表示装置300Aの作製方法例>
次に、
図18〜
図20を用いて、本実施の形態の表示装置の作製方法について、具体的に説明する。以下では、
図16に示す表示装置300Aの作製方法の一例について説明する。
図18〜
図20では特に表示装置300Aの表示部362に着目して、作製方法を説明する。なお、
図18〜
図20ではトランジスタ203の図示を省略する。
【0381】
まず、基板361上に、着色層131を形成する(
図18(A))。着色層131は、感光性の材料を用いて形成することで、フォトリソグラフィ法等により島状に加工することができる。なお、表示部362の非表示領域や
図16に示す回路364等では、基板361上に遮光層132を設ける。
【0382】
次に、着色層131及び遮光層132上に、絶縁層121を形成する。
【0383】
絶縁層121は、平坦化層として機能することが好ましい。絶縁層121には、アクリル、エポキシなどの樹脂を好適に用いることができる。
【0384】
絶縁層121には、無機絶縁膜を適用してもよい。絶縁層121としては、例えば、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。また、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜、及び酸化ネオジム膜等を用いてもよい。また、上述の絶縁膜を2以上積層して用いてもよい。
【0385】
次に、電極113を形成する。電極113は、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。電極113は、可視光を透過する導電材料を用いて形成する。
【0386】
次に、電極113上に、絶縁層117を形成する。絶縁層117には、有機絶縁膜を用いることが好ましい。
【0387】
次に、電極113及び絶縁層117上に、配向膜133bを形成する(
図18(A))。配向膜133bは、樹脂等の薄膜を形成した後に、ラビング処理を行うことで形成できる。
【0388】
また、
図18(A)を用いて説明した工程とは独立して、
図18(B)から
図20(A)までに示す工程を行う。
【0389】
まず、作製基板14上に、水素を含む層20から絶縁層31までを形成する(
図18(B))。これらの工程については、実施の形態1の剥離方法及び作製方法例1を参照できる。
【0390】
次に、絶縁層31上に電極311aを形成し、電極311a上に電極311bを形成する(
図18(C))。電極311bは、電極311a上に開口451を有する。電極311a及び電極311bは、それぞれ、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。電極311aは、可視光を透過する導電材料を用いて形成する。電極311bは、可視光を反射する導電材料を用いて形成する。
【0391】
次に、絶縁層220を形成する。そして、絶縁層220に電極311bに達する開口を設ける。
【0392】
絶縁層220は、樹脂層23に含まれる不純物が、後に形成するトランジスタや表示素子に拡散することを防ぐバリア層として用いることができる。絶縁層220は、例えば、樹脂層23を加熱した際に、樹脂層23に含まれる水分等がトランジスタや表示素子に拡散することを防ぐことが好ましい。そのため、絶縁層220は、バリア性が高いことが好ましい。
【0393】
絶縁層220としては、絶縁層121に用いることができる無機絶縁膜及び樹脂等を用いることができる。
【0394】
次に、絶縁層220上に、トランジスタ205及びトランジスタ206を形成する。
【0395】
トランジスタに用いる半導体材料は特に限定されず、例えば、第14族の元素、化合物半導体または酸化物半導体を半導体層に用いることができる。代表的には、シリコンを含む半導体、ガリウムヒ素を含む半導体、またはインジウムを含む酸化物半導体等を適用できる。
【0396】
ここではトランジスタ206として、半導体層231として金属酸化物層を有する、ボトムゲート構造のトランジスタを作製する場合を示す。トランジスタ205は、トランジスタ206の構成に導電層223及び絶縁層212を追加した構成であり、2つのゲートを有する。金属酸化物は、酸化物半導体として機能することができる。
【0397】
具体的には、まず、絶縁層220上に、導電層221a及び導電層221bを形成する。導電層221a及び導電層221bは、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することで形成できる。ここで、絶縁層220の開口を介して、導電層221bと電極311bとが接続する。
【0399】
絶縁層211としては、例えば、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。また、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜、及び酸化ネオジム膜等を用いてもよい。また、上述の絶縁膜を2以上積層して用いてもよい。
【0400】
無機絶縁膜は、成膜温度が高いほど緻密でバリア性の高い膜となるため、高温で形成することが好ましい。無機絶縁膜の成膜時の基板温度は、室温(25℃)以上350℃以下が好ましく、100℃以上300℃以下がさらに好ましい。
【0401】
続いて、半導体層231を形成する。本実施の形態では、半導体層231として、金属酸化物層を形成する。金属酸化物層は、金属酸化物膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該金属酸化物膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することで形成できる。
【0402】
続いて、導電層222a及び導電層222bを形成する。導電層222a及び導電層222bは、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。導電層222a及び導電層222bは、それぞれ、半導体層231と接続される。ここで、トランジスタ206が有する導電層222aは、導電層221bと電気的に接続される。これにより、接続部207では、電極311bと導電層222aを電気的に接続することができる。
【0403】
なお、導電層222a及び導電層222bの加工の際に、レジストマスクに覆われていない半導体層231の一部がエッチングにより薄膜化する場合がある。
【0404】
以上のようにして、トランジスタ206を作製できる。
【0405】
次に、トランジスタ206を覆う絶縁層212を形成する。絶縁層212は、トランジスタ205及びトランジスタ206がそれぞれ有する半導体層231、導電層222a、及び導電層222bを覆うように形成される。次に、トランジスタ205の導電層223を絶縁層212上に形成する。
【0406】
絶縁層212は、絶縁層211と同様の方法により形成することができる。
【0407】
トランジスタ205が有する導電層223は、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。
【0408】
以上のようにして、トランジスタ205を作製できる。
【0409】
次に、トランジスタ205及びトランジスタ206を覆う絶縁層213を形成する。絶縁層213は、絶縁層211と同様の方法により形成することができる。
【0410】
また、絶縁層212として、酸素を含む雰囲気下で成膜した酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜等の酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。さらに、当該酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜上に、絶縁層213として、窒化シリコン膜などの酸素を拡散、透過しにくい絶縁膜を積層することが好ましい。酸素を含む雰囲気下で形成した酸化物絶縁膜は、加熱により多くの酸素を放出しやすい絶縁膜とすることができる。このような酸素を放出する酸化物絶縁膜と、酸素を拡散、透過しにくい絶縁膜を積層した状態で、加熱処理を行うことにより、金属酸化物層に酸素を供給することができる。その結果、金属酸化物層中の酸素欠損、及び金属酸化物層と絶縁層212の界面の欠陥を修復し、欠陥準位を低減することができる。これにより、極めて信頼性の高い表示装置を実現できる。
【0411】
次に、絶縁層213上に、着色層134を形成し(
図18(C))、その後、絶縁層214を形成する(
図18(D))。着色層134は、電極311bの開口451と重なるように配置する。
【0412】
着色層134は、着色層131と同様の方法により形成することができる。絶縁層214は、後に形成する表示素子の被形成面を有する層であるため、平坦化層として機能することが好ましい。絶縁層214は、絶縁層121に用いることのできる樹脂または無機絶縁膜を援用できる。
【0413】
次に、絶縁層212、絶縁層213、及び絶縁層214に、トランジスタ205が有する導電層222aに達する開口を形成する。
【0414】
次に、電極191を形成する。電極191は、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。ここで、トランジスタ205が有する導電層222aと電極191とが接続する。電極191は、可視光を透過する導電材料を用いて形成する。
【0415】
次に、電極191の端部を覆う絶縁層216を形成する。絶縁層216は、絶縁層121に用いることのできる樹脂または無機絶縁膜を援用できる。絶縁層216は、電極191と重なる部分に開口を有する。
【0416】
次に、EL層192及び電極193を形成する。電極193は、その一部が発光素子170の共通電極として機能する。電極193は、可視光を反射する導電材料を用いて形成する。
【0417】
EL層192の形成後に行う各工程は、EL層192にかかる温度が、EL層192の耐熱温度以下となるように行う。電極193は、蒸着法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0418】
以上のようにして、発光素子170を形成することができる。発光素子170は、発光領域が着色層134及び電極311bの開口451と重なるように作製する。
【0419】
次に、電極193を覆って絶縁層194を形成する。絶縁層194は、発光素子170に水などの不純物が拡散することを抑制する保護層として機能する。発光素子170は、絶縁層194によって封止される。電極193を形成した後、大気に曝すことなく、絶縁層194を形成することが好ましい。
【0420】
絶縁層194は、例えば、上述した絶縁層121に用いることができる無機絶縁膜を適用することができる。特に、絶縁層194は、バリア性の高い無機絶縁膜を含むことが好ましい。また、無機絶縁膜と有機絶縁膜を積層して用いてもよい。
【0421】
絶縁層194の成膜時の基板温度は、EL層192の耐熱温度以下であることが好ましい。絶縁層194は、ALD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。ALD法及びスパッタリング法は低温成膜が可能であるため好ましい。ALD法を用いると絶縁層194のカバレッジが良好となり好ましい。
【0422】
次に、絶縁層194の表面に、接着層142を用いて基板351を貼り合わせる(
図18(D))。
【0423】
接着層142には、実施の形態1で例示した、接着層75bに用いることができる材料を適用することができる。
【0424】
基板351には、実施の形態1で例示した、基板75aに用いることができる材料を適用することができる。
【0425】
次に、樹脂層23に分離の起点を形成し、作製基板14と樹脂層23とを分離する(
図19(A))。
図19(A)では、樹脂層23と酸素を含む層21との界面で分離が生じる例を示す。なお、酸素を含む層21側に樹脂層23の一部が残存する場合がある。
【0426】
次に、樹脂層23及び絶縁層31を除去することが好ましい。例えば、ドライエッチング法などを用いて樹脂層23及び絶縁層31を除去することができる。これにより、電極311aが露出する(
図19(B))。なお、電極311a上に絶縁層31を残存させてもよく、さらに絶縁層31上に樹脂層23を残存させてもよい。
【0427】
次に、露出した電極311aの表面に、配向膜133aを形成する(
図20(A))。配向膜133aは、樹脂等の薄膜を成膜した後に、ラビング処理を行うことにより形成できる。
【0428】
そして、
図18(A)を用いて説明した工程が完了した基板361と、
図20(A)までの工程が完了した基板351とを、液晶層112を挟んで貼り合わせる(
図20(B))。
図20(B)では示さないが、
図16等に示すように、基板351と基板361とは接着層141で貼り合わされる。接着層141は、接着層142に用いることのできる材料を援用できる。
【0429】
図20(B)に示す液晶素子180は、一部が画素電極として機能する電極311a(及び電極311b)、液晶層112、一部が共通電極として機能する電極113が積層された構成を有する。液晶素子180は、着色層131と重なるように作製する。
【0430】
基板361の外側の面には、偏光板135を配置する。
【0431】
以上により、表示装置300Aを作製することができる。
【0432】
<表示装置300Bの作製方法例>
次に、
図21〜
図23を用いて、本実施の形態の表示装置の作製方法について、具体的に説明する。以下では、
図17(A)に示す表示装置300Bの作製方法の一例について説明する。なお、表示装置300Aの作製方法例と同様の部分については、説明を省略することがある。
【0433】
まず、表示装置300Aの作製方法例と同様に、基板361上に、着色層131、絶縁層121、電極113、及び配向膜133bを順に形成する(
図21(A))。
【0434】
また、
図21(A)を用いて説明した工程とは独立して、
図21(B)に示す工程を行う。
【0435】
まず、基板351上に、トランジスタ80を形成する。トランジスタ80の構成及び作製方法は、実施の形態1を参照することができる。
【0436】
次に、絶縁層214、絶縁層216、発光素子170、及び絶縁層194を形成する(
図21(B))。絶縁層214、絶縁層216、発光素子170、及び絶縁層194の構成及び作製方法は、表示装置300Aの作製方法例を参照することができる。
【0437】
また、
図21(A)を用いて説明した工程、及び
図21(B)を用いて説明した工程とは独立して、
図21(C)から
図21(D)までに示す工程を行う。
【0438】
まず、作製基板14上に、水素を含む層20から絶縁層31までを形成する(
図21(C))。これらの工程については、実施の形態1の剥離方法及び作製方法例1を参照できる。
【0439】
次に、絶縁層31上に電極311aを形成し、電極311a上に電極311bを形成する(
図21(D))。電極311a及び電極311bは、それぞれ、導電膜を成膜した後、レジストマスクを形成し、当該導電膜をエッチングした後にレジストマスクを除去することにより形成できる。電極311aは、可視光を透過する導電材料を用いて形成する。電極311bは、可視光を反射する導電材料を用いて形成する。
【0440】
次に、絶縁層220を形成する(
図21(D))。そして、絶縁層220に電極311bに達する開口を設ける。なお、トランジスタ40の作製工程中に、絶縁層220とトランジスタ40のゲート絶縁層とを一括で加工して、電極311bに達する開口を設けることもできる。
【0441】
次に、絶縁層220上に、トランジスタ40を形成する。トランジスタ40の構成及び作製方法は、実施の形態1を参照することができる。
【0442】
次に、トランジスタ40を覆う絶縁層212を形成し、絶縁層212上に絶縁層213を形成し、絶縁層213上に着色層134を形成する(
図21(D))。
【0443】
図21(B)を用いて説明した工程が完了した基板351と、
図21(D)までの工程が完了した作製基板14とを、接着層142を用いて貼り合わせる(
図22(A))。
【0444】
次に、樹脂層23に分離の起点を形成する。そして、作製基板14と樹脂層23とを分離する(
図22(B))。
図22(B)では、樹脂層23と酸素を含む層21との界面で分離が生じる例を示す。なお、酸素を含む層21側に樹脂層23の一部が残存する場合がある。
【0445】
次に、樹脂層23及び絶縁層31を除去することが好ましい。例えば、ドライエッチング法などを用いて樹脂層23及び絶縁層31を除去することができる。これにより、電極311aが露出する(
図23(A))。なお、電極311a上に絶縁層31を残存させてもよく、さらに絶縁層31上に樹脂層23を残存させてもよい。
【0446】
次に、露出した電極311aの表面に、配向膜133aを形成する(
図23(B))。
【0447】
そして、
図21(A)を用いて説明した工程が完了した基板361と、
図23(B)までの工程が完了した基板351とを、液晶層112を挟んで貼り合わせる(
図23(C))。
図23(C)では示さないが、基板351と基板361とは接着層で貼り合わされる。
【0448】
図23(C)に示す液晶素子180は、一部が画素電極として機能する電極311a(及び電極311b)、液晶層112、一部が共通電極として機能する電極113が積層された構成を有する。液晶素子180は、着色層131と重なるように作製する。
【0449】
以上により、表示装置300Bを作製することができる。
【0450】
以上のように、本実施の形態の表示装置は、2種類の表示素子を有し、複数の表示モードを切り替えて使用することができるため、周囲の明るさによらず視認性が高く、利便性が高い。
【0451】
実施の形態1で説明した方法を用いることで、樹脂層23の一面全体にレーザ照射を行うことなく、作製基板14から樹脂層23を剥離することができる。そのため、低コストで表示装置を作製することができる。また、樹脂層23が作製基板14から意図しないタイミングで剥がれることを抑制できる。剥離のタイミングを制御でき、かつ、高い剥離性を実現できるため、剥離工程、及び表示装置の作製工程の歩留まりを高めることができる。
【0452】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0453】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2で説明した表示装置の、より具体的な構成例について
図24〜
図26を用いて説明する。
【0454】
図24(A)は、表示装置400のブロック図である。表示装置400は、表示部362、回路GD、及び回路SDを有する。表示部362は、マトリクス状に配列した複数の画素410を有する。
【0455】
表示装置400は、複数の配線G1、複数の配線G2、複数の配線ANO、複数の配線CSCOM、複数の配線S1、及び複数の配線S2を有する。複数の配線G1、複数の配線G2、複数の配線ANO、及び複数の配線CSCOMは、それぞれ、矢印Rで示す方向に配列した複数の画素410及び回路GDと電気的に接続する。複数の配線S1及び複数の配線S2は、それぞれ、矢印Cで示す方向に配列した複数の画素410及び回路SDと電気的に接続する。
【0456】
なお、ここでは簡単のために回路GDと回路SDを1つずつ有する構成を示したが、液晶素子を駆動する回路GD及び回路SDと、発光素子を駆動する回路GD及び回路SDとを、別々に設けてもよい。
【0457】
画素410は、反射型の液晶素子と、発光素子を有する。
【0458】
図24(B1)〜(B4)に、画素410が有する電極311の構成例を示す。電極311は、液晶素子の反射電極として機能する。
図24(B1)、(B2)の電極311には、開口451が設けられている。
【0459】
図24(B1)、(B2)には、電極311と重なる領域に位置する発光素子360を破線で示している。発光素子360は、電極311が有する開口451と重ねて配置されている。これにより、発光素子360が発する光は、開口451を介して表示面側に射出される。
【0460】
図24(B1)では、矢印Rで示す方向に隣接する画素410が異なる色に対応する画素である。このとき、
図24(B1)に示すように、矢印Rで示す方向に隣接する2つの画素において、開口451が一列に配列されないように、電極311の異なる位置に設けられていることが好ましい。これにより、2つの発光素子360を離すことが可能で、発光素子360が発する光が隣接する画素410が有する着色層に入射してしまう現象(クロストークともいう)を抑制することができる。また、隣接する2つの発光素子360を離して配置することができるため、発光素子360のEL層を遮蔽マスク等により作り分ける場合であっても、高い精細度の表示装置を実現できる。
【0461】
図24(B2)では、矢印Cで示す方向に隣接する画素410が異なる色に対応する画素である。
図24(B2)においても同様に、矢印Cで示す方向に隣接する2つの画素において、開口451が一列に配列されないように、電極311の異なる位置に設けられていることが好ましい。
【0462】
非開口部の総面積に対する開口451の総面積の比の値が小さいほど、液晶素子を用いた表示を明るくすることができる。また、非開口部の総面積に対する開口451の総面積の比の値が大きいほど、発光素子360を用いた表示を明るくすることができる。
【0463】
開口451の形状は、例えば多角形、四角形、楕円形、円形または十字等の形状とすることができる。また、細長い筋状、スリット状、市松模様状の形状としてもよい。また、開口451を隣接する画素に寄せて配置してもよい。好ましくは、開口451を同じ色を表示する他の画素に寄せて配置する。これにより、クロストークを抑制できる。
【0464】
また、
図24(B3)、(B4)に示すように、電極311が設けられていない部分に、発光素子360の発光領域が位置していてもよい。これにより、発光素子360が発する光は、表示面側に射出される。
【0465】
図24(B3)では、矢印Rで示す方向に隣接する2つの画素410において、発光素子360が一列に配列されていない。
図24(B4)では、矢印Rで示す方向に隣接する2つの画素410において、発光素子360が一列に配列されている。
【0466】
図24(B3)の構成は、隣接する2つの画素410が有する発光素子360どうしを離すことができるため、上述の通り、クロストークの抑制、及び、高精細化が可能となる。また、
図24(B4)の構成では、発光素子360の矢印Cに平行な辺側に、電極311が位置しないため、発光素子360の光が電極311に遮られることを抑制でき、高い視野角特性を実現できる。
【0467】
回路GDには、シフトレジスタ等の様々な順序回路等を用いることができる。回路GDには、トランジスタ及び容量素子等を用いることができる。回路GDが有するトランジスタは、画素410に含まれるトランジスタと同じ工程で形成することができる。
【0468】
回路SDは、配線S1と電気的に接続される。回路SDには、例えば、集積回路を用いることができる。具体的には、回路SDには、シリコン基板上に形成された集積回路を用いることができる。
【0469】
例えば、COG方式またはCOF方式等を用いて、画素410と電気的に接続されるパッドに回路SDを実装することができる。具体的には、異方性導電膜を用いて、パッドに集積回路を実装できる。
【0470】
図25は、画素410の回路図の一例である。
図25では、隣接する2つの画素410を示している。
【0471】
画素410は、スイッチSW1、容量素子C1、液晶素子340、スイッチSW2、トランジスタM、容量素子C2、及び発光素子360等を有する。また、画素410には、配線G1、配線G2、配線ANO、配線CSCOM、配線S1、及び配線S2が電気的に接続されている。また、
図25では、液晶素子340と電気的に接続する配線VCOM1、及び発光素子360と電気的に接続する配線VCOM2を示している。
【0472】
図25では、スイッチSW1及びスイッチSW2にトランジスタを用いた場合の例を示している。
【0473】
スイッチSW1のゲートは、配線G1と接続されている。スイッチSW1のソース及びドレインのうち一方は、配線S1と接続され、他方は、容量素子C1の一方の電極、及び液晶素子340の一方の電極と接続されている。容量素子C1の他方の電極は、配線CSCOMと接続されている。液晶素子340の他方の電極が配線VCOM1と接続されている。
【0474】
スイッチSW2のゲートは、配線G2と接続されている。スイッチSW2のソース及びドレインのうち一方は、配線S2と接続され、他方は、容量素子C2の一方の電極、及びトランジスタMのゲートと接続されている。容量素子C2の他方の電極は、トランジスタMのソースまたはドレインの一方、及び配線ANOと接続されている。トランジスタMのソースまたはドレインの他方は、発光素子360の一方の電極と接続されている。発光素子360の他方の電極は、配線VCOM2と接続されている。
【0475】
図25では、トランジスタMが半導体を挟む2つのゲートを有し、これらが接続されている例を示している。これにより、トランジスタMが流すことのできる電流を増大させることができる。
【0476】
配線G1には、スイッチSW1を導通状態または非導通状態に制御する信号を与えることができる。配線VCOM1には、所定の電位を与えることができる。配線S1には、液晶素子340が有する液晶の配向状態を制御する信号を与えることができる。配線CSCOMには、所定の電位を与えることができる。
【0477】
配線G2には、スイッチSW2を導通状態または非導通状態に制御する信号を与えることができる。配線VCOM2及び配線ANOには、発光素子360が発光する電位差が生じる電位をそれぞれ与えることができる。配線S2には、トランジスタMの導通状態を制御する信号を与えることができる。
【0478】
図25に示す画素410は、例えば反射モードの表示を行う場合には、配線G1及び配線S1に与える信号により駆動し、液晶素子340による光学変調を利用して表示することができる。また、透過モードで表示を行う場合には、配線G2及び配線S2に与える信号により駆動し、発光素子360を発光させて表示することができる。また両方のモードで駆動する場合には、配線G1、配線G2、配線S1及び配線S2のそれぞれに与える信号により駆動することができる。
【0479】
なお、
図25では一つの画素410に、一つの液晶素子340と一つの発光素子360とを有する例を示したが、これに限られない。
図26(A)は、一つの画素410に一つの液晶素子340と4つの発光素子360(発光素子360r、360g、360b、360w)を有する例を示している。
図26(A)に示す画素410は、
図25とは異なり、1つの画素で発光素子を用いたフルカラーの表示が可能である。
【0480】
図26(A)では
図25の例に加えて、画素410に配線G3及び配線S3が接続されている。
【0481】
図26(A)に示す例では、例えば4つの発光素子360に、それぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、及び白色(W)を呈する発光素子を用いることができる。また液晶素子340として、白色を呈する反射型の液晶素子を用いることができる。これにより、反射モードの表示を行う場合には、反射率の高い白色の表示を行うことができる。また透過モードで表示を行う場合には、演色性の高い表示を低い電力で行うことができる。
【0482】
図26(B)に、
図26(A)に対応した画素410の構成例を示す。画素410は、電極311が有する開口部と重なる発光素子360wと、電極311の周囲に配置された発光素子360r、発光素子360g、及び発光素子360bとを有する。発光素子360r、発光素子360g、及び発光素子360bは、発光面積がほぼ同等であることが好ましい。
【0483】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0484】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様で開示されるトランジスタに用いることができる金属酸化物について説明する。以下では特に、金属酸化物とCAC(Cloud−Aligned Composite)−OSの詳細について説明する。
【0485】
CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC−OSまたはCAC−metal oxideを、トランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC−OSまたはCAC−metal oxideに付与することができる。CAC−OSまたはCAC−metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0486】
また、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0487】
また、CAC−OSまたはCAC−metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0488】
また、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC−OSまたはCAC−metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0489】
すなわち、CAC−OSまたはCAC−metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0490】
CAC−OSとは、例えば、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つあるいはそれ以上の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上2nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
【0491】
なお、金属酸化物は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、元素M(Mは、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウム)が含まれていてもよい。
【0492】
例えば、CAC−OSの構成を有するIn−M−Zn酸化物とは、インジウム酸化物(以下、InO
X1(X1は0よりも大きい実数)とする。)、またはインジウム亜鉛酸化物(以下、In
X2Zn
Y2O
Z2(X2、Y2、およびZ2は0よりも大きい実数)とする。)と、元素Mの酸化物(以下、MO
X3(X3は0よりも大きい実数)とする。)、または元素Mの亜鉛酸化物(以下、M
X4Zn
Y4O
Z4(X4、Y4、およびZ4は0よりも大きい実数)とする。)などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInO
X1、またはIn
X2Zn
Y2O
Z2が、膜中に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。
【0493】
つまり、CAC−OSの構成を有するIn−M−Zn酸化物は、MO
X3が主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域とが、混合している金属酸化物である。従って、金属酸化物を複合金属酸化物と記載する場合がある。なお、本明細書において、例えば、第1の領域の元素Mに対するInの原子数比が、第2の領域の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、第1の領域は、第2の領域と比較して、Inの濃度が高いとする。
【0494】
なお、CAC−OSの構成を有する金属酸化物とは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まないものとする。例えば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まない。
【0495】
具体的に、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OS(CAC−OSの中でもIn−Ga−Zn酸化物を、特にCAC−IGZOと呼称してもよい。)について説明する。In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSは、InO
X1、またはIn
X2Zn
Y2O
Z2と、ガリウム酸化物(以下、GaO
X5(X5は0よりも大きい実数)とする。)、またはガリウム亜鉛酸化物(以下、Ga
X6Zn
Y6O
Z6(X6、Y6、およびZ6は0よりも大きい実数)とする。)などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInO
X1、またはIn
X2Zn
Y2O
Z2がクラウド状である金属酸化物である。
【0496】
つまり、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSは、GaO
X5が主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域とが、混合している構成を有する複合金属酸化物である。また、GaO
X5が主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0497】
なお、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、およびOによる1つの化合物をいう場合がある。代表例として、InGaO
3(ZnO)
m1(m1は自然数)、またはIn
(1+x0)Ga
(1−x0)O
3(ZnO)
m0(−1≦x0≦1、m0は任意数)で表される結晶性の化合物が挙げられる。
【0498】
上記結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、またはCAAC(c−axis aligned crystal)構造を有する。なお、CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa−b面においては配向せずに連結した層状の結晶構造である。
【0499】
本明細書等において、CAC−IGZOとは、In、Ga、Zn、およびOを含む金属酸化物において、Gaを主成分とする複数の領域と、Inを主成分とする複数の領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している状態の金属酸化物と定義することができる。
【0500】
In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSにおける結晶性は、電子線回折で評価することができる。例えば、電子線回折パターン像において、リング状に輝度の高い領域が観察される。また、リング状の領域に複数のスポットが観察される場合がある。
【0501】
In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構造であり、IGZO化合物と異なる性質を有する。つまり、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSは、GaO
X5などが主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域と、に互いに分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状である構造を有する。
【0502】
なお、ガリウムの代わりに、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムが含まれている場合、CAC−OSは、一部に該金属元素を主成分とするナノ粒子状に観察される領域と、一部にInを主成分とするナノ粒子状に観察される領域とが、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。
【0503】
ここで、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域は、GaO
X5などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、導電性が発現する。従って、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域が、金属酸化物中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
【0504】
一方、GaO
X5などが主成分である領域は、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、GaO
X5などが主成分である領域が、金属酸化物中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
【0505】
従って、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSを半導体素子に用いた場合、GaO
X5などに起因する絶縁性と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(I
on)、高い電界効果移動度(μ)、及び低いオフ電流(I
off)を実現することができる。
【0506】
In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSを用いた半導体素子は、信頼性が高い。従って、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OSは、ディスプレイをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
【0507】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0508】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示モジュール及び電子機器について説明する。
【0509】
図27に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002との間に、FPC8003に接続されたタッチパネル8004、FPC8005に接続された表示パネル8006、フレーム8009、プリント基板8010、及びバッテリ8011を有する。
【0510】
例えば、本発明の一態様を用いて作製された表示装置を、表示パネル8006に用いることができる。これにより、高い歩留まりで表示モジュールを作製することができる。
【0511】
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチパネル8004及び表示パネル8006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0512】
タッチパネル8004としては、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル8006に重畳して用いることができる。また、タッチパネル8004を設けず、表示パネル8006に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。
【0513】
フレーム8009は、表示パネル8006の保護機能の他、プリント基板8010の動作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレーム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0514】
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であっても良いし、別途設けたバッテリ8011による電源であってもよい。バッテリ8011は、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0515】
また、表示モジュール8000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加して設けてもよい。
【0516】
本発明の一態様により、曲面を有し、信頼性の高い電子機器を作製できる。また、本発明の一態様により、可撓性を有し、信頼性の高い電子機器を作製できる。
【0517】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0518】
また、本発明の一態様の表示装置は、外光の強さによらず、高い視認性を実現することができる。そのため、携帯型の電子機器、装着型の電子機器(ウェアラブル機器)、及び電子書籍端末などに好適に用いることができる。
【0519】
図28(A)、(B)に示す携帯情報端末800は、筐体801、筐体802、表示部803、表示部804、及びヒンジ部805等を有する。
【0520】
筐体801と筐体802は、ヒンジ部805で連結されている。携帯情報端末800は、折り畳んだ状態(
図28(A))から、
図28(B)に示すように展開させることができる。
【0521】
本発明の一態様を用いて作製された表示装置を、表示部803及び表示部804のうち少なくとも一方に用いることができる。これにより、高い歩留まりで携帯情報端末を作製することができる。
【0522】
表示部803及び表示部804は、それぞれ、文書情報、静止画像、及び動画像等のうち少なくとも一つを表示することができる。表示部に文書情報を表示させる場合、携帯情報端末800を電子書籍端末として用いることができる。
【0523】
携帯情報端末800は折り畳むことができるため、可搬性が高く、汎用性に優れる。
【0524】
筐体801及び筐体802は、電源ボタン、操作ボタン、外部接続ポート、スピーカ、マイク等を有していてもよい。
【0525】
図28(C)に示す携帯情報端末810は、筐体811、表示部812、操作ボタン813、外部接続ポート814、スピーカ815、マイク816、カメラ817等を有する。
【0526】
本発明の一態様を用いて作製された表示装置を、表示部812に用いることができる。これにより、高い歩留まりで携帯情報端末を作製することができる。
【0527】
携帯情報端末810は、表示部812にタッチセンサを備える。電話を掛ける、或いは文字を入力するなどのあらゆる操作は、指やスタイラスなどで表示部812に触れることで行うことができる。
【0528】
また、操作ボタン813の操作により、電源のON、OFF動作や、表示部812に表示される画像の種類の切り替えを行うことができる。例えば、メール作成画面から、メインメニュー画面に切り替えることができる。
【0529】
また、携帯情報端末810の内部に、ジャイロセンサまたは加速度センサ等の検出装置を設けることで、携帯情報端末810の向き(縦か横か)を判断して、表示部812の画面表示の向きを自動的に切り替えることができる。また、画面表示の向きの切り替えは、表示部812に触れること、操作ボタン813の操作、またはマイク816を用いた音声入力等により行うこともできる。
【0530】
携帯情報端末810は、例えば、電話機、手帳または情報閲覧装置等から選ばれた一つまたは複数の機能を有する。具体的には、スマートフォンとして用いることができる。携帯情報端末810は、例えば、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、動画再生、インターネット通信、ゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0531】
図28(D)に示すカメラ820は、筐体821、表示部822、操作ボタン823、シャッターボタン824等を有する。またカメラ820には、着脱可能なレンズ826が取り付けられている。
【0532】
本発明の一態様を用いて作製された表示装置を、表示部822に用いることができる。これにより、高い歩留まりでカメラを作製することができる。
【0533】
ここではカメラ820を、レンズ826を筐体821から取り外して交換することが可能な構成としたが、レンズ826と筐体821とが一体となっていてもよい。
【0534】
カメラ820は、シャッターボタン824を押すことにより、静止画、または動画を撮像することができる。また、表示部822はタッチパネルとしての機能を有し、表示部822をタッチすることにより撮像することも可能である。
【0535】
なお、カメラ820は、ストロボ装置や、ビューファインダーなどを別途装着することができる。または、これらが筐体821に組み込まれていてもよい。
【0536】
図29(A)〜(E)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008等を有する。
【0537】
本発明の一態様を用いて作製された表示装置を、表示部9001に好適に用いることができる。これにより、高い歩留まりで電子機器を作製することができる。
【0538】
図29(A)〜(E)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、
図29(A)〜(E)に示す電子機器が有する機能はこれらに限定されず、その他の機能を有していてもよい。
【0539】
図29(A)は腕時計型の携帯情報端末9200を、
図29(B)は腕時計型の携帯情報端末9201を、それぞれ示す斜視図である。
【0540】
図29(A)に示す携帯情報端末9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子9006を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0541】
図29(B)に示す携帯情報端末9201は、
図29(A)に示す携帯情報端末と異なり、表示部9001の表示面が湾曲していない。また、携帯情報端末9201の表示部の外形が非矩形状(
図29(B)においては円形状)である。
【0542】
図29(C)〜(E)は、折り畳み可能な携帯情報端末9202を示す斜視図である。なお、
図29(C)が携帯情報端末9202を展開した状態の斜視図であり、
図29(D)が携帯情報端末9202を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図であり、
図29(E)が携帯情報端末9202を折り畳んだ状態の斜視図である。
【0543】
携帯情報端末9202は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9202が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることにより、携帯情報端末9202を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。例えば、携帯情報端末9202は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0544】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【実施例1】
【0545】
本実施例では、3種類の試料を作製し、それぞれ、昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)分析を行った。
【0546】
[試料の作製]
ガラス基板上に、プラズマCVD法を用いて、厚さ約600nmの酸化窒化シリコン膜を形成することで、試料Aを作製した。酸化窒化シリコン膜は、プラズマCVD法にて、SiH
4ガスとN
2Oガスの流量をそれぞれ75sccm、1200sccmとし、電源電力120W、圧力70Pa、基板温度330℃の条件で形成した。
【0547】
ガラス基板上に、スパッタリング法を用いて、厚さ約100nmのシリコンを含むインジウム錫酸化物(ITSO)膜を形成することで、試料Bを作製した。ITSO膜は、スパッタリング法にて、ArガスとO
2ガスの流量をそれぞれ125sccm、3sccmとし、電源電力3.2kW、圧力0.23Pa、基板温度25℃(室温)の条件で形成した。
【0548】
ガラス基板上に、プラズマCVD法を用いて、厚さ約600nmの酸化窒化シリコン膜を形成し、酸化窒化シリコン膜上に、スパッタリング法を用いて、厚さ約30nmのITSO膜を形成することで、試料Cを作製した。酸化窒化シリコン膜の成膜条件は、試料Aと同様である。ITSO膜の成膜条件は、試料Bと同様である。
【0549】
[TDS分析]
試料A〜試料Cについて、TDS分析により水素分子に相当する質量電荷比(m/z)2で検出される強度の温度依存性を評価した結果を
図30(A)に示す。
【0550】
試料A〜試料Cについて、TDS分析により水分子に相当する質量電荷比(m/z)18で検出される強度の温度依存性を評価した結果を
図30(B)に示す。
【0551】
試料B及び試料Cでは、水素がほとんど検出されなかった。
【0552】
酸化窒化シリコン膜を形成した試料Aは、約250℃から水素が多く検出され、より高温になるほど水素の検出量が多かった。これにより、250℃以上で加熱処理を行うと、酸化窒化シリコン膜から水素が放出されるとわかった。
【0553】
酸化窒化シリコン膜上にITSO膜を形成した試料Cでは、約250℃から水が多く検出され、より高温になるほど水の放出量が多かった。これにより、試料Cに250℃以上で加熱処理を行うと、水が放出されるとわかった。
【0554】
図30(A)、(B)の結果から、試料Cに250℃以上で加熱処理を行うと、酸化窒化シリコン膜から水素が放出し、放出した水素とITSO膜中の酸素とが反応して水が生成されると考えられる。
【実施例2】
【0555】
本実施例では、作製基板から樹脂層を剥離した結果について説明する。
【0556】
[試料の作製]
図1を用いて、本実施例の試料の作製方法について説明する。
【0557】
まず、作製基板14上に、水素を含む層20を形成した(
図1(A))。作製基板14には、厚さ約0.7mmのガラス基板を用いた。水素を含む層20として、厚さ約600nmの酸化窒化シリコン膜を形成した。酸化窒化シリコン膜は、プラズマCVD法にて、SiH
4ガスとN
2Oガスの流量をそれぞれ75sccm、1200sccmとし、電源電力120W、圧力70Pa、基板温度330℃の条件で形成した。
【0558】
次に、水素を含む層20上に、酸素を含む層21を形成した(
図1(A))。酸素を含む層21として、厚さ約100nmのシリコンを含むインジウム錫酸化物(ITSO)膜を形成した。ITSO膜は、スパッタリング法にて、ArガスとO
2ガスの流量をそれぞれ125sccm、3sccmとし、電源電力3.2kW、圧力0.23Pa、基板温度25℃(室温)の条件で形成した。
【0559】
次に、酸素を含む層21上に、第1の層24を形成した(
図1(B))。第1の層24は、非感光性の可溶性ポリイミド樹脂を含む材料を用いて形成した。具体的には、スピンコート法を用いて、室温で、塗布量40ml、塗布時間12.5sec、塗布時の回転数を1000rpmとして、成膜した。
【0560】
次に、第1の層24に第1の加熱処理を行うことで、樹脂層23を形成した(
図1(C))。第1の加熱処理としては、窒素ガスと酸素ガスの混合ガス(580NL/min、酸素濃度20%)を流しながら、180℃で30分のベークを行った後、同じ混合ガスを流しながら、400℃で1時間のベークを行った。ベーク後、樹脂層23の厚さは、約1.1μmであった。
【0561】
次に、樹脂層23上に、被剥離層25を形成した(
図1(D))。ここで形成する被剥離層25は、
図2(D)に示す絶縁層31と絶縁層32(トランジスタのゲート絶縁層)を想定した積層構造とした。具体的には、樹脂層23上に、厚さ約100nmの酸化窒化シリコン膜、厚さ約400nmの窒化シリコン膜、及び厚さ約50nmの酸化窒化シリコン膜をこの順で形成した。これらの膜は、プラズマCVD法を用いて、基板温度330℃の条件で形成した。
【0562】
次に、第2の加熱処理を行った。第2の加熱処理としては、窒素ガスと酸素ガスの混合ガス(580NL/min、酸素濃度20%)を流しながら、400℃で1時間のベークを行った。
【0563】
そして、樹脂層にUV剥離テープを貼り付けた。
【0564】
本実施例の試料について、作製基板14から樹脂層23を剥離する剥離試験を行った。
【0565】
剥離試験には、島津製作所製の小型卓上試験機(EZ−TEST EZ−S−50N)及び日本工業規格(JIS)の規格番号JIS Z0237に準拠する粘着テープ・粘着シート試験方法を用いた。試料の寸法は、126mm×25mmとした。
【0566】
図31に、試料の剥離結果を示す。
図31において、実線より上側が基板75a側であり、下側が作製基板14側である。
【0567】
図31に示すように、基板75a側に樹脂層23が残っており、酸素を含む層21と樹脂層23との界面で分離させることができた。
【0568】
図32に、本実施例の試料について、断面STEM(Scanning Transmission Electron Microscopy)観察を行った結果を示す。
【0569】
図32(A)は、剥離前の試料の断面STEM写真である。具体的には、第2の加熱処理までを行った段階の試料である(
図1(D)参照)。被剥離層25上の層は、観察用に形成したコート層である。
【0570】
図32(B)、(C)は、剥離後の作製基板14側の断面STEM写真である。
図32(C)は、
図32(B)の点線で囲った部分の拡大写真である。酸素を含む層21上の層は、観察用に形成したコート層である。酸素を含む層21とコート層との間に樹脂層23は観察されなかった。
【0571】
また、剥離後の基板75a側の剥離面について、導通を確認したところ、導通しなかった。このことから、基板75a側の剥離面に酸素を含む層21はほとんど残存していないと考えられる。
【0572】
これらの結果からも、酸素を含む層21と樹脂層23との界面で分離したことが確認できた。
【0573】
実施例1の結果から、第1の加熱処理及び第2の加熱処理によって、水素を含む層20から水素が放出され、放出された水素と酸素を含む層21の酸素とが反応し、水が生成されると示唆される。本実施例では、酸素を含む層21と樹脂層23の間に水が存在することで、酸素を含む層21と樹脂層23との密着性が低下し、酸素を含む層21と樹脂層23との界面で分離することができたと考えられる。