(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行車体と、前記走行車体に設けられる複数のアウトリガと、を備え、前記アウトリガのそれぞれは、前記走行車体の外側へ張出し可能な建設機械において、前記建設機械の周囲の障害物について判断する障害物判断装置であって、
作動されることにより、第1の検知対象範囲において前記障害物を検知するとともに、前記アウトリガの中の1つである特定のアウトリガが張出すことにより、前記特定のアウトリガの少なくとも一部が前記第1の検知対象範囲に位置する第1の障害物センサと、
前記第1の障害物センサが前記障害物を検知した場合において、前記障害物の存在を警告させるプロセッサであって、前記特定のアウトリガの張出し量を取得するとともに、前記特定のアウトリガの前記張出し量が閾値以上の場合は、前記第1の障害物センサの作動を停止させるプロセッサと、
作動されることにより、前記第1の検知対象範囲とは異なる第2の検知対象範囲において前記障害物を検知するとともに、いずれの状態においても全ての前記アウトリガが前記第2の検知対象範囲の外に位置する第2の障害物センサと、
を具備し、
前記プロセッサは、前記第2の障害物センサが前記障害物を検知した場合においても、前記障害物の存在を警告させるとともに、前記特定のアウトリガの前記張出し量が前記閾値以上であるか否かに関係なく、前記第2の障害物センサを作動させる、
障害物判断装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のある実施形態について、
図1乃至
図5を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の障害物判断装置10が搭載される建設機械であるクレーン1を示す。
図1では、クレーン1を鉛直上側から視た状態を概略的に示す。
図1に示すように、クレーン1は、走行車体2と、走行車体2上に走行車体2に対して旋回可能に配置される旋回体3と、を備える。クレーン1の走行時においては、
図1の状態のように、旋回体3の前方側が、走行車体2の前方側(矢印X1側)と一致又は略一致する。旋回体3は、クレーン1の操作等が行われる運転室5を備える。
【0011】
旋回体3には、ブーム7の一端が取付けられる。ブーム7は、旋回体3と一緒に走行車体2に対して旋回するとともに、旋回体3に対して起伏可能である。クレーン1の走行時等の旋回体3の前方側が走行車体2の前方側と一致又は略一致する状態では、ブーム7は、旋回体3に対して伏状し、旋回体3から走行車体2の前方側へ向かって延設される。また、ブーム7は、運転室5に対して旋回体3の幅方向の一方側に並設される。したがって、走行時等の旋回体3の前方側が走行車体2の前方側と一致又は略一致する状態では、ブーム7は、運転室5に対して走行車体2の幅方向(矢印W1及び矢印W2で示す方向)の一方側に並設される。また、ある実施例では、走行時等の旋回体3の前方側が走行車体2の前方側と一致又は略一致する状態において、ブーム7は、走行車体2の前方側に向かうにつれて鉛直下側に向かう状態に、延設される。なお、別のある実施例では、旋回体3の前方側が走行車体2の前方側と一致又は略一致する状態において、ブーム7は、水平又は略水平に延設されてもよい。
【0012】
走行車体2には、複数のアウトリガ11〜14が設けられる。本実施形態では、走行車体2の前方部に一対のアウトリガ(前方アウトリガ)11,12が設けられ、走行車体2の後方部に一対のアウトリガ(後方アウトリガ)13,14が設けられる。すなわち、走行車体2に、二対のアウトリガ11〜14が設けられる。本実施形態では、アウトリガ11は、走行車体2の左側面において前方部に設けられ、アウトリガ12は、走行車体2の右側面において前方部に設けられる。また、アウトリガ13は、走行車体2の左側面において後方部に設けられ、アウトリガ14は、走行車体2の右側面において後方部に設けられる。
【0013】
また、本実施形態では、走行車体2に、複数(本実施形態では4つ)の障害物センサ15〜18が配置される。障害物センサ15〜18のそれぞれは、例えば、超音波センサである。そして、障害物センサ15〜18のそれぞれは、作動されることにより、超音波を用いて検知対象範囲(Z1〜Z4の対応する1つ)において障害物を検知する。なお、障害物センサ15〜18のそれぞれは、作動が停止されている状態では、検知対象範囲(Z1〜Z4の対応する1つ)においても、障害物を検知しない。
【0014】
本実施形態では、障害物センサ15は、走行車体2の左側面において前方部に設けられ、障害物センサ16は、走行車体2の前方端面の左端に設けられる。また、障害物センサ17は、走行車体2の後方端面の左端に設けられ、障害物センサ18は、走行車体2の後方端面で、かつ、走行車体2の幅方向について中央部に設けられる。走行時等の旋回体3の前方側が走行車体2の前方側と一致又は略一致する状態では、障害物センサ(第1の障害物センサ)15は、ブーム7に対して運転室5が位置する側とは反対側に位置する。したがって、旋回体3の前方側が走行車体2の前方側と一致又は略一致する状態では、ブーム7は、走行車体2の幅方向について、障害物センサ15と運転室5との間に配置される。また、旋回体3の前方側が走行車体2の前方側と一致又は略一致する状態では、障害物センサ(第1の障害物センサ)15は、アウトリガ(前方アウトリガ)11,12に対して後方側(矢印X2側)で、かつ、運転室5に対して前方側に位置する。
【0015】
図2及び
図3は、走行車体2の左側面の前方部に設けられるアウトリガ11及びその近傍の構成を示す。
図2及び
図3に示すように、アウトリガ11は、走行車体2の幅方向について伸縮する水平伸縮部21と、鉛直方向について伸縮する鉛直伸縮部22と、を備える。作業時においては、水平伸縮部21を伸長することにより、走行車体2の幅方向について外側へアウトリガ11を張出す。そして、鉛直伸縮部22を伸長し、アウトリガ11を地盤に接地させる。なお、アウトリガ12〜14のそれぞれも、アウトリガ11と同様に、水平伸縮部及び鉛直伸縮部を備える。そして、作業時には、アウトリガ12〜14のそれぞれも、アウトリガ11と同様に、走行車体2の幅方向について外側へ張出され、地盤に接地される。前述のようにアウトリガ11〜14が地盤に接地されることにより、走行車体2が支持される。
【0016】
ここで、
図2は、アウトリガ11〜14の中の1つであるアウトリガ(特定のアウトリガ)11が張出されていない状態を示し、
図3は、アウトリガ11が張出された状態を示す。
図2のようなアウトリガ11が走行車体2の幅方向の外側へ張出されていない状態では、アウトリガ11は、障害物センサ(第1の障害物センサ)15の検知対象範囲(第1の検知対象範囲)Z1の外に位置する。一方、
図3のようにアウトリガ11が走行車体2の幅方向の外側へ張出されると、アウトリガ11の少なくとも一部が、障害物センサ15の検知対象範囲(第1の検知対象範囲)Z1に位置する。例えば、アウトリガ11の張出し量(張出し長さ)Lが閾値Lth以上になることにより、アウトリガ11の一部が、障害物センサ15の検知対象範囲Z1に位置する。
【0017】
なお、いずれの状態においても、アウトリガ11以外のアウトリガ12〜14のそれぞれは、障害物センサ(第1の障害物センサ)15の検知対象範囲(第1の検知対象範囲)Z1の外に位置する。また、障害物センサ15以外の障害物センサ(第2の障害物センサ)16〜18のそれぞれは、検知対象範囲(Z2〜Z4の対応する1つ)を有するが、いずれの状態においても、全てのアウトリガ11〜14は、検知対象範囲(第2の検知対象範囲)Z2〜Z4の外に位置する。なお、本実施形態では、検知対象範囲Z1〜Z4(第1の検知対象範囲Z1及び第2の検知対象範囲Z2〜Z4)は、互いに対して異なる。
【0018】
図4は、障害物判断装置10の概略構成を示す。障害物判断装置10は、建設機械であるクレーン1の周囲の障害物について判断する。
図4に示すように、障害物判断装置10は、前述の障害物センサ15〜18に加えて、プロセッサ(コントローラ)25及び記憶媒体26を備える。プロセッサ25は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application specific integrated circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を備える集積回路又は回路構成(circuitry)等である。プロセッサ25は、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。プロセッサ25での処理は、プロセッサ25又は記憶媒体26に記憶されたプログラムに従って行われる。また、記憶媒体26には、プロセッサ25で用いられる処理プログラム、及び、プロセッサ25での演算で用いられるパラメータ、関数及びテーブル等が記憶される。
【0019】
プロセッサ25は、障害物センサ15〜18の作動を制御する。また、障害物判断装置10には、警告部27が設けられる。プロセッサ25は、障害物センサ15〜18のそれぞれが作動している状態において、障害物センサ15〜18での検知結果に基づいて、警告部27の作動を制御する。本実施形態では、プロセッサ25は、障害物センサ15〜18のいずれかが対応する検知対象範囲(Z1〜Z4の対応するいずれか)において障害物を検知した場合に、警告部27を作動させ、障害物の存在を警告させる。この際、警告部27は、音の発信、光の点灯、及び、画面表示等のいずれかによって、警告を行う。
【0020】
また、クレーン1には、変位センサ(ストロークセンサ)31が設けられ、変位センサ31は、アウトリガ(特定のアウトリガ)11での水平伸縮部21の変位を検知する。そして、変位センサ31は、アウトリガ11での水平伸縮部21の変位に関連する電圧値を出力する。プロセッサ25は、変位センサ31からの電圧値を取得する。そして、プロセッサ25は、変位センサ31からの電圧値に基づいて、走行車体2の幅方向の外側へのアウトリガ11の張出し量を算出する。したがって、プロセッサ25は、変位センサ31での検知結果に基づいて、アウトリガ11の張出し量(張出し長さ)を取得する。
【0021】
プロセッサ25は、アウトリガ11〜14の中の1つであるアウトリガ(特定のアウトリガ)11の張出し量(張出し長さ)Lに基づいて、障害物センサ15の作動を制御する。本実施形態では、プロセッサ25は、アウトリガ11の張出し量Lが閾値Lth以上の場合は、障害物センサ(第1の障害物センサ)15の作動を停止させる。すなわち、アウトリガ11の一部が、障害物センサ15の検知対象範囲Z1に位置する場合は、障害物センサ15は作動されず、障害物センサ15によって障害物が検知されない。また、プロセッサ25は、アウトリガ11の張出し量Lが閾値Lth以上であるか否かに関係なく、所定の条件を満たせば、障害物センサ(第2の障害物センサ)16〜18を作動させる。このため、所定の条件を満たせば、アウトリガ11の張出し量Lが閾値Lth以上であっても、障害物センサ16〜18のそれぞれは、対応する検知対象範囲(Z2〜Z4の対応する1つ)において障害物を検知する。
【0022】
また、クレーン1には、パーキングブレーキ36が設けられる。パーキングブレーキ36は、クレーン1の停止時に作動され、移動時又は走行時に解除される。プロセッサ25は、パーキングブレーキ36が解除されているか否かを判断する。本実施形態では、プロセッサ25は、パーキングブレーキ36が解除されていない場合は、アウトリガの11の張出し量Lが閾値Lth以上であるか否かに関係なく、障害物センサ15〜18の作動を停止させる。プロセッサ25は、パーキングブレーキ36が解除されている場合は、障害物センサ16〜18を作動させる。なお、ある実施例では、走行車体2の後方端面の中央部に設けられる障害物センサ18については、パーキングブレーキ36が解除されている場合でも、走行車体2が後方側へ移動している状態でのみ、作動される。この場合、パーキングブレーキ36が解除されていても、走行車体2が前方側へ移動している間は、障害物センサ18の作動が停止される。
【0023】
次に、本実施形態の障害物判断装置10及びクレーン1の作用及び効果について、説明する。
図5は、プロセッサ25によって行われる、障害物センサ15〜18のそれぞれの作動の判断処理を示す。判断処理おいては、プロセッサ25は、パーキングブレーキ36が解除されているか否かを判断する(S101)。パーキングブレーキ36が解除されている場合は(S101−Yes)、プロセッサ25は、障害物センサ(第2の障害物センサ)16〜18のそれぞれを作動させる又は作動を維持する(S102)。なお、ある実施例では、パーキングブレーキ36が解除されている場合に、プロセッサ25は、走行車体2が前方側に移動しているか、又は、後方側に移動しているかを判断する。そして、プロセッサ25は、障害物センサ18に関しては、走行車体2が後方側に移動している場合のみ、作動させる又は作動を維持し、走行車体2が前方側に移動している場合は、作動を停止させる又は作動停止を維持する。
【0024】
S102の処理を行うと、プロセッサ25は、アウトリガ(特定のアウトリガ)11に対応する変位センサ31からの電圧値を取得する(S103)。そして、プロセッサ25は、取得した電圧値に基づいて、アウトリガ11の張出し量(張出し長さ)Lを算出し、張出し量Lを取得する(S104)。この際、プロセッサ25は、例えば、記憶媒体26等に記憶され、かつ、変位センサ31からの電圧値と張出し量Lとの関係を示す関数又はテーブル等を用いて、張出し量Lを算出する。そして、プロセッサ25は、取得したアウトリガ11の張出し量Lが閾値Lth以上であるか否かを判断する(S105)。
【0025】
張出し量Lが閾値Lthより小さい場合は(S105−No)、プロセッサ25は、アウトリガ11が障害物センサ(第1の障害物センサ)15の検知対象範囲(第1の検知対象範囲)Z1の外に位置すると判断する。そして、プロセッサ25は、障害物センサ15を作動させる又は作動を維持する(S106)。一方、張出し量Lが閾値Lth以上場合は(S105−Yes)、プロセッサ25は、アウトリガ11の少なくとも一部が障害物センサ(第1の障害物センサ)15の検知対象範囲(第1の検知対象範囲)Z1に位置すると判断する。そして、プロセッサ25は、障害物センサ15の作動を停止させる又は作動停止を維持する(S107)。また、S101においてパーキングブレーキ36が解除されていない場合は(S101−No)、プロセッサ25は、全ての障害物センサ15〜18について、作動を停止させる又は作動停止を維持する(S108)。
【0026】
クレーン1の作業現場においては、走行車体2を移動させることにより、アウトリガ11〜14のそれぞれの接地位置を微調整することがある。この際、アウトリガ11〜14のそれぞれにおいて鉛直伸縮部(22)は収縮され、アウトリガ11〜14のそれぞれは地盤に接地していない。ただし、アウトリガ11〜14のそれぞれにおいて水平伸縮部(21)は伸長され、アウトリガ11〜14のそれぞれは、走行車体2の幅方向について外側に張出される。したがって、アウトリガ11〜14のそれぞれの接地位置の微調整においては、アウトリガ11〜14のそれぞれが張出された状態で、走行車体2が移動する。また、作業現場においては、軽荷重の吊荷を吊り上げた状態で、走行車体2を移動させることがある。この場合も、アウトリガ11〜14のそれぞれが張出された状態で、走行車体2が移動する。
【0027】
本実施形態では、アウトリガ(特定のアウトリガ)11が張出されることにより、アウトリガ11の張出し量Lが閾値Lth以上となり、アウトリガ11の少なくとも一部が障害物センサ(第1の障害物センサ)15の検知対象範囲X1に位置する。ただし、本実施形態では、アウトリガ11の張出し量Lが閾値Lth以上の場合、プロセッサ25によって、障害物センサ15の作動が停止される。このため、アウトリガ11〜14のそれぞれの接地位置の微調整、及び、軽荷重の吊荷を吊り上げた状態での移動等において、アウトリガ11の少なくとも一部が障害物センサ15の検知対象範囲X1に位置する状態で走行車体2を移動させても、アウトリガ11は、障害物センサ15によって障害物として検知されない。したがって、アウトリガ11〜14のそれぞれの接地位置の微調整、及び、軽荷重の吊荷を吊り上げた状態での移動等において、アウトリガ11が障害物であるとプロセッサ25が誤って判断することが、有効に防止される。そして、アウトリガ11が障害物であると誤って判断されないため、アウトリガ11が障害物であると判断されたことに基づく警告が継続されることも、防止される。
【0028】
また、本実施形態では、障害物センサ15以外の障害物センサ(第2の障害物センサ)16〜18は、クレーン1の移動時には、アウトリガ11の張出し量Lが閾値Lth以上であるか否かに関係なく、プロセッサ25によって作動される。このため、アウトリガ11〜14のそれぞれの接地位置の微調整、及び、軽荷重の吊荷を吊り上げた状態での移動等においては、障害物センサ15以外の障害物センサ16〜18によって、クレーン1の周囲の障害物が適切に検知される。
【0029】
また、本実施形態では、いずれのアウトリガ11〜14も、障害物センサ16の検知対象範囲(第2の検知対象範囲)Z2の外で、かつ、障害物センサ17の検知対象範囲(第2の検知対象範囲)Z3の外で、かつ、障害物センサ18の検知対象範囲(第2の検知対象範囲)Z4の外に位置する。このため、障害物センサ16〜18が作動されても、アウトリガ11〜14のそれぞれは、障害物センサ16〜18によって障害物として検知されない。したがって、アウトリガ11〜14のそれぞれの接地位置の微調整、及び、軽荷重の吊荷を吊り上げた状態での移動等において、障害物判断装置10によって、クレーン1の周囲の障害物について適切な判断が行われる。
【0030】
なお、障害物センサ(例えば15〜18)の数及び位置等は、前述の実施形態等に限るものではない。障害物センサ(例えば15〜18)は、走行車体(例えば2)に1つ以上設けられていればよい。そして、特定のアウトリガ(例えば11)を張出すことにより、走行車体(例えば2)に設けられる障害物センサ(例えば15〜18)の1つ(例えば15)の検知対象範囲(例えばX1)に、特定のアウトリガ(例えば11)の少なくとも一部が位置すればよい。
【0031】
また、前述の障害物判断装置10は、走行車体に複数のアウトリガが設けられる建設機械であれば、クレーン1以外の建設機械にも適用可能である。
【0032】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。