特許第6961440号(P6961440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961440発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961440
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   C08J9/18CET
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-188451(P2017-188451)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-65073(P2019-65073A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】根岩 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】沓水 竜太
(72)【発明者】
【氏名】矢野 義仁
(72)【発明者】
【氏名】坂本 遼平
【審査官】 千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−022911(JP,A)
【文献】 特開2013−075941(JP,A)
【文献】 特開2005−002268(JP,A)
【文献】 特開2011−202076(JP,A)
【文献】 特開平09−100366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00−9/42
B29C44/00−44/60;67/20−67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、
前記発泡剤がペンタンとイソブタンを含み、ペンタンおよびイソブタンの総量100重量%に対してイソブタンが20重量%超55重量%以下であり、
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が1000kg/m超1060kg/m以下である、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をかさ倍率80倍に予備発泡させた後30℃で24時間養生した時の予備発泡粒子の平均セル径が380μm以下である、請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記ポリスチレン系樹脂組成物が、難燃剤を前記ポリスチレン系樹脂組成物100重量%において0.5〜6重量%含有する、請求項1または2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡粒子であり、予備発泡させた後30℃で24時間養生した時のかさ倍率が75倍以上である、予備発泡粒子。
【請求項5】
炭素系輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなるポリスチレン系樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイスから加圧循環水中に押出し、回転カッターで切断して粒子化する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
前記発泡剤が発泡剤総量100重量%に対してイソブタンを20重量%超55重量%以下含み、
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が1000kg/m超1060kgm以下であり、
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をかさ倍率80倍に予備発泡させた後30℃で24時間養生した時の予備発泡粒子の平均セル径が380μm以下である、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
炭素系輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなるポリスチレン系樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイスから加圧循環水中に押出し、回転カッターで切断して粒子化する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
前記発泡剤が発泡剤総量100重量%に対してイソブタンを20重量%超55重量%以下含み、
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が1000kg/m超1060kgm以下であり、
前記加圧循環水の水圧が0.9MPa以上1.5MPa以下である、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
炭素系輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなるポリスチレン系樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイスから加圧循環水中に押出し、回転カッターで切断して粒子化する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
前記発泡剤がペンタンおよびイソブタンを含み、ペンタンおよびイソブタンの総量100重量%に対してイソブタンが20重量%超55重量%以下であり、
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が1000kg/m超1060kg/m以下である、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
前記発泡剤がペンタンとブタンとを含有する、請求項5または6に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をかさ倍率80倍に予備発泡させた後30℃で24時間養生した時の予備発泡粒子の平均セル径が380μm以下である、請求項6または7に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
前記加圧循環水の水圧が0.9MPa以上1.5MPa以下である、請求項5または7に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂発泡体は、軽量性、断熱性、及び緩衝性等を有するバランスに優れた発泡体であり、従来から食品容器箱、保冷箱、緩衝材、及び住宅等の断熱材として広く利用されている。
【0003】
中でも、近年、地球温暖化等の諸問題に関連し、住宅等建築物の断熱性向上による省エネルギー化が志向されつつあり、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を用いて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の需要拡大が期待される。そのため、当該ポリスチレン系樹脂発泡体の発泡性や断熱性の向上について種々の検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1によれば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、ブタンとペンタンとを20:80〜80:20の割合で含有する発泡剤を使用し、かつ、発泡倍率が1.05〜1.25倍となるように内部に複数の気泡を形成させ、当該気泡を予備発泡における気泡核として機能させることで、均質な発泡性を発揮させて強度特性に優れた発泡成形体が得られることが開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、輻射伝熱抑制剤、臭素系難燃剤を含有させ、炭素数4の炭化水素と炭素数5の炭化水素の含有比率が2/98〜20/80であることで、高い断熱性および難燃性が両立でき、さらには熟成期間を必要としない発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得られることが開示されている。
【0006】
特許文献3では、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、体積抵抗率1.0×10Ω・cm以下の導電性カーボンブラックを含有させ、輻射伝熱抑制剤として機能させることで、断熱性能に優れた発泡成形体を得られることが開示されている。
【0007】
特許文献4では、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体とポリスチレン樹脂との質量比が20:80〜80:20であり、黒鉛を基材樹脂100重量部に対して0.1〜6重量部で含有させることで、優れた耐熱性能および断熱性能を示すスチレン系樹脂発泡成形体を得られることが開示されている。
【0008】
特許文献5では、ポリスチレン系樹脂、黒鉛、及び臭素系難燃剤を混練してなるポリスチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散させる分散工程と、スチレン系単量体を上記ポリスチレン系樹脂粒子に含浸、重合させる重合工程と、重合中または重合後に発泡剤を樹脂粒子に含浸させて発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得る発泡剤含浸工程とを有する製造方法によって、優れた断熱性能および難燃性能を示すポリスチレン系樹脂発泡成形体が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−136688号
【特許文献2】特開2014−118474号
【特許文献3】国際公開WO2016/017813号
【特許文献4】特開2014−148558号
【特許文献5】特開2015−101702号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高倍率発泡が可能な炭素系輻射伝熱抑制剤含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一般的に、ポリスチレン系樹脂発泡成形体にグラファイト等の輻射伝熱抑制剤を使用することで断熱性の向上が図られるものの、発泡倍率は低下する傾向にあり、高倍率に発泡させると予備発泡粒子が収縮する問題がある。
【0012】
上記特許文献1は、気泡を制御することで長期のビーズライフと高強度とを両立したポリスチレン系樹脂発泡成形体を得る発明ではあるが、グラファイト等の炭素系輻射伝熱抑制剤を配合した系での高発泡倍率および断熱性の両立に関する観点がない。
【0013】
特許文献2は、炭素数4の炭化水素と炭素数5の炭化水素の含有比率が2/98〜20/80と規定されているが、本願発明者らが検討したところ、かさ倍率80倍以上の高発泡倍率のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得るためには炭素数4の炭化水素は多いほうが好ましい。この点から、炭素数4の炭化水素と炭素数5の炭化水素の含有比率が2/98〜20/80である特許文献2の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、より高発泡倍率化できるために改善する余地がある。
【0014】
同様に、ポリスチレン系樹脂発泡成形体に導電性カーボンブラックを含有させ、高断熱性能を達成する特許文献3の発明に関しても、高倍率発泡に関する観点がない。カーボンブラック等の無機物質が多量に含まれると発泡倍率は低下し、高倍率に発泡させると予備発泡粒子に収縮が生じる場合がある。コスト面を考慮すると、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の発泡倍率は高くでき、樹脂量を削減できることが好ましい。この点から高発泡倍率化に関しては改善する余地がある。
【0015】
特許文献4、特許文献5はポリスチレン系樹脂に黒鉛を含有させることで優れた断熱性能を発揮させる発明であるが、いずれも重合法により作製されており、黒鉛の分散性の観点から、輻射伝熱抑制剤の効果を十分に発揮できていない虞がある。また、黒鉛等の無機物質が凝集して存在していると、セル膜が破泡しやすくなり、発泡性は低下する傾向にあると考えられる。この点から、高断熱性能および高発泡倍率化に関して改善する余地がある。
【0016】
そこで、本発明者らが上述した課題を解決すべく検討をしたところ、発泡剤としてイソブタンを特定量含有し、かつ、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度を高くすることによって、高発泡倍率、かつ、低熱伝導率であるポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製することに成功し、本発明を完成するにいたった。
【0017】
すなわち、本発明は、炭素系輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、前記発泡剤がペンタンとイソブタンを含み、ペンタンおよびイソブタンの総量100重量%に対してイソブタンが20重量%超55重量%以下であり、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が1000kg/m超1060kg/m以下である、
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(以下、「本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子」と称することがある。)に関する。
【0018】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をかさ倍率80倍に予備発泡させた後30℃で24時間養生した時の予備発泡粒子の平均セル径が380μm以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、上記ポリスチレン系樹脂組成物が、難燃剤を前記ポリスチレン系樹脂組成物100重量%において0.5〜6重量%含有することが好ましい。
【0020】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、上記に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡粒子であり、予備発泡させた後30℃で24時間養生した時のかさ倍率が75倍以上であることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、炭素系輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなるポリスチレン系樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイスから加圧循環水中に押出し、回転カッターで切断して粒子化する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、
前記発泡剤が、発泡剤総量100重量%に対してイソブタンを20重量%超55重量%以下含み、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が1000kg/m超1060kg/m以下である、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法(以下、「本発明の第一の製造方法」と称することがある。)に関する。
【0022】
本発明は、炭素系輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなるポリスチレン系樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイスから加圧循環水中に押出し、回転カッターで切断して粒子化する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、前記発泡剤がペンタンおよびイソブタンを含み、ペンタンおよびイソブタンの総量100重量%に対してイソブタンを20重量%超55重量%以下であり、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が1000kg/m超1060kg/m以下である、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法(以下、本発明の第二の製法)と称することがある。)に関する。
【0023】
本発明の第一の製造方法において、上記発泡剤はペンタンとブタンとを含有することが好ましい。
【0024】
本発明の第一および第二の製造方法において、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をかさ倍率80倍に予備発泡させた後30℃で24時間養生した時の予備発泡粒子の平均セル径が380μm以下であることが好ましい。
【0025】
本発明の第一および第二の製造方法において、前記加圧循環水の水圧が0.9MPa以上1.5MPa以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子によれば、高発泡倍率および高断熱性を両立したポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子]
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、炭素系輻射伝熱抑制剤を含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、ポリスチレン系樹脂粒子中に炭素系輻射伝熱抑制剤および発泡剤を含有させたものである。本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、前記発泡剤がペンタンとイソブタンを含み、ペンタンおよびイソブタンの総量100重量%に対してイソブタンが20重量%超55重量%以下であり、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が1000kg/m超1060kg/m以下であることにより、高発泡倍率および高断熱性を両立したポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0028】
ポリスチレン系樹脂発泡成形体にグラファイト等の輻射伝熱抑制剤を使用することで断熱性の向上が図られる。しかし、グラファイト等の無機物質の添加量を増加していくと発泡倍率は低下し、高倍率に発泡させると予備発泡粒子が収縮する問題がある。定かではないが、この問題は、無機物質が主因となり、予備発泡時に予備発泡粒子中のセル膜に穴が開き、発泡時に発泡剤が樹脂中から抜けやすくなり内圧を保持できなくなると推定され、そのために発泡後に収縮が生じやすくなると考えられる。予備発泡粒子が収縮した場合には、収縮した予備発泡粒子を養生させることによって回復させられるものの、養生後の倍率管理が困難となることが予見される。また、生じた収縮が大きければ、発泡倍率を回復させるために高温で養生させる必要があり、高温で養生することが可能な養生サイロがさらに必要となり、養生の際に多量の熱エネルギーが必要となるためコストがかかる。特に、生じた収縮がさらに大きければ、予備発泡粒子が挫屈してしまい、高温で養生しても発泡倍率が回復しにくくなり、発泡倍率の基準を満たさなくなるため、歩留まりが低下する。
【0029】
上記問題を本発明者らが検討したところ、発泡剤としてペンタンのみを用いた炭素系輻射伝熱抑制剤含有発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を高倍率に発泡すると、予備発泡直後に予備発泡粒子に収縮が生じることがあることを突き止めた。また、炭素系輻射伝熱抑制剤を含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子では、ペンタンおよびブタンの総量100重量%に対してイソブタンの配合比率が20重量%以下であると、発泡直後に収縮が生じやすく、収縮が生じた予備発泡粒子を30℃で24時間養生後も所定の発泡倍率まで回復しないことを見出した。
【0030】
一般にペンタンに比べてブタンの方がポリスチレン系樹脂に対する溶解度は低いため過飽和になりやすく、高発泡倍率化に寄与しやすいと考えられる。特にイソブタンはノルマルブタンに比べて分子構造がかさ高く、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子中から発泡剤が逸散しにくくなるため、高発泡倍率化が可能となる。一方、ペンタンで高発泡倍率化を達成するためには発泡剤を多量に添加する必要があり、特に溶融押出法においては、樹脂の粘度が著しく低下することで、ポリスチレン系樹脂粒子作製時のカッティング性が低下し、安定したサンプル採取が困難になることが懸念される。また、発泡剤を多量に添加するとポリスチレンに対しての可塑効果が大きくなり、発泡時のセル壁強度が低下することで収縮が生じてしまうと考えられる。そこで、ペンタンに比べて発泡性が優れるイソブタンをペンタンおよびブタンの総量100重量%に対してイソブタンの配合比率を20重量%より多くすることで高発泡倍率化が可能となることを見出した。
【0031】
しかし、発泡剤としてペンタンおよびブタンの総量100重量%に対してイソブタンが20重量%超であっても、発泡直後に収縮が生じやすくなることがある。
【0032】
予備発泡直後の発泡粒子の収縮は発泡剤の内圧、予備発泡粒子の平均セル径や独立気泡率に影響を受けると考えられる。ポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなるポリスチレン系樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイスから加圧循環水中に押出時に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の発泡を抑制できなければ、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が低くなる。また、押出時の高温状態では、蒸気による予備発泡時と比較して樹脂粘度は低くなる。樹脂粘度が低い状態で発泡すると、気泡が破泡しやすくなるため独立気泡率は低下する傾向であると考えられる。本発明では、押出時の発泡を抑制し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度を1000kg/m超とすることで、予備発泡直後の収縮を抑制することが可能であり、高発泡倍率の予備発泡粒子を得ることが可能となる。
【0033】
更には、グラファイト等の炭素系輻射伝熱抑制剤は気泡の核剤としても作用するため、炭素系輻射伝熱抑制剤を含有した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、セル径が小さくなりやすく、輻射熱を抑制しやすいため、より優れた断熱性能を発現させることが可能となる。
【0034】

(ポリスチレン系樹脂)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に用いられるポリスチレン系樹脂組成物は、基材樹脂としてポリスチレン系樹脂を含む。ポリスチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体(ポリスチレンホモポリマー)のみならず、本発明の効果を損なわない範囲で、スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体とスチレンとの共重合体であっても良い。これらは一種のみであってもよいし、2種以上を組みあせて使用してもよい。
【0035】
スチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体としては、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン等のスチレン誘導体;ジビニルベンゼン等の多官能性ビニル化合物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;ブタジエン等のジエン系化合物又はその誘導体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2)−クロロフェニルマレイミド、N−(4)−ブロモフェニルマレイミド、N−(1)−ナフチルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド化合物等があげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本発明においては、耐衝撃吸収性や耐熱性の観点から、例えば、ジエン系ゴム強化ポリスチレン、アクリル系ゴム強化ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル系樹脂等をブレンドすることもできる。
【0037】
本発明で用いられるポリスチレン系樹脂としては、比較的安価で、特殊な方法を用いずに低圧の水蒸気等で発泡成形ができ、断熱性、難燃性、緩衝性のバランスに優れることから、スチレンホモポリマーを含むことが好ましい。
【0038】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ポリスチレン系樹脂を主成分としながら、他の樹脂を併用してもよい。他の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂など、上述のスチレンと共重合可能な他の単量体又はその誘導体の単独重合体や、それらの共重合体が挙げられる。
【0039】
(炭素系輻射伝熱抑制剤)
本発明においては、炭素系輻射伝熱抑制剤を発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に添加することにより、高い断熱性を有するポリスチレン系樹脂発泡成形体が得られる。ここで、炭素系輻射伝熱抑制剤とは、近赤外又は赤外領域(例えば、800〜3000nm程度の波長域)の光を反射、散乱又は吸収する特性を有する炭素材料をいう。炭素系輻射伝熱抑制剤としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、グラフェン、カーボンブラック、膨張黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられるが、中でもポリスチレン系樹脂中への分散性とコストの点からグラファイトが好ましい。
【0040】
グラファイトとしては、例えば、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、球状黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。なお、本明細書において、「鱗片状」という用語は、鱗状、薄片状又は板状のものをも包含する。これらの黒鉛は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、輻射伝熱抑制効果が高い点から、鱗片状黒鉛を主成分とする黒鉛混合物が好ましく、鱗片状黒鉛がより好ましい。高発泡倍率化、断熱性、および、成形性の観点から、グラファイトの平均粒径が1〜9μmであることが好ましく、2〜6μmであることがより好ましい。グラファイトは平均粒径が小さいほど製造コストが高くなる。平均粒径1μm未満のグラファイトは粉砕のコストを含む製造コストが高いため、非常に高価であり、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のコストが高くなる傾向がある。一方、平均粒径が9μmを超えると、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造する際にセル膜が破れやすくなるため、高発泡倍率化が難しくなったり、成形容易性が低下したり、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の圧縮強度が低下したりする傾向がある。ここでいう、グラファイトの平均粒径は、JIS Z8825−1に準拠したMie理論に基づきレーザー回折・散乱法により算出されるD50粒径を指す。
【0041】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子における炭素系輻射伝熱抑制剤の含有量は、ポリスチレン系樹脂組成物100重量%において2〜10重量%であることが好ましい。目的とする発泡倍率に制御しやすいと共に、熱伝導率低減効果等のバランスの点から、3〜7重量%であることがより好ましく、3〜6重量%がさらに好ましい。炭素系輻射伝熱抑制剤の含有量が2重量%以上であれば熱伝導率低減効果が十分であり、一方、10重量%以下であれば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から予備発泡粒子及びポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造する際にセル膜が破れにくくなるため、高発泡倍率化がし易くなり、発泡倍率の制御が容易になる。
【0042】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、炭素系輻射伝熱抑制剤の他に、他の輻射伝熱抑制剤を添加してもよい。公知の輻射伝熱抑制剤であれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム系化合物、亜鉛系化合物、マグネシウム系化合物、チタン系化合物、熱線反射剤、硫酸金属塩、アンチモン系化合物、金属酸化物、熱線吸収剤、金属粒子等が挙げられる。
【0043】
(発泡剤)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子においては、ペンタンとブタンとを併用する。
【0044】
ブタンとしては、イソブタンが必須であり、ペンタンおよびイソブタンの総量100重量%において、イソブタンが20重量%超55重量%以下含まれる。予備発泡直後の収縮抑制による高発泡倍率化と生産安定性の観点から、イソブタンは25重量%〜50重量%が好ましく、25重量%〜45重量%がより好ましく、25重量%〜40重量%が特に好ましい。前記イソブタンが20重量%超であれば、高発泡倍率化が可能であり、一方、55重量%以下であれば、溶融押出法で製造する場合において、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子作製時の発泡を抑制することができ、カッティングが可能となり、ダイスの閉塞が抑制され、サンプル採取が安定化する。
【0045】
本発明で用いられる発泡剤は、上記のようにペンタンおよびブタンを含むものであれば、その他の炭素数4〜5の炭化水素発泡剤を使用してもよい。例えば、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルブタン、ネオペンタン、又はシクロペンタン等の炭化水素が挙げられる。ペンタンとしては、ノルマルペンタンおよびイソペンタンは混合して用いることが好ましく、ノルマルペンタンおよびイソペンタンを重量比(ノルマルペンタン/イソペンタン)で100/0〜60/40で使用することがより好ましい。30℃で24時間養生後の予備発泡粒子の倍率の回復と自己消火性の観点から、98/2〜60/40がより好ましい。また、ポリスチレン樹脂に対する溶解性の観点から、ノルマルブタンの添加量は少ないほうが好ましく、ペンタンおよびブタンの総量100重量%において、ノルマルブタンは3重量%以下で使用することが好ましい。
【0046】
発泡剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂組成物100重量部に対して、4〜10重量部であることが好ましい。発泡剤の添加量が4重量部以上では、発泡力が十分あり高発泡倍率化し易くなり、高発泡倍率のポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造し易くなる。また、発泡剤の量が10重量部以下であれば難燃性能が悪化し難くなると共に、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造する際の製造時間(成形サイクル)が短くなるため、製造コストを抑えることができる。なお、発泡剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂組成物100重量部に対して、4.5〜9重量部であることがより好ましく、5〜8重量部であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂、炭素系輻射伝熱抑制剤及び発泡剤を含有し、必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、ラジカル発生剤、及びその他の添加剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の任意成分を含有してもよい。本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、好ましくは、ポリスチレン系樹脂、炭素系輻射伝熱抑制剤、発泡剤及び難燃剤を含有し、難燃剤を除く上述の任意成分の少なくとも1種を含有してもよく、より好ましくは、ポリスチレン系樹脂、炭素系輻射伝熱抑制剤、発泡剤、難燃剤及び熱安定剤を含有し、難燃剤及び熱安定剤を除く上述の任意成分の少なくとも1種を含有してもよく、さらに好ましくは、ポリスチレン系樹脂、炭素系輻射伝熱抑制剤、発泡剤、難燃剤、熱安定剤及び造核剤を含有し、難燃剤、熱安定剤及び造核剤を除く上述の任意成分の少なくとも1種を含有してもよい。
【0048】
(難燃剤)
本発明で用いることができる難燃剤としては、特に限定されず、従来からポリスチレン系樹脂発泡成形体に用いられる公知の難燃剤をいずれも使用できるが、その中でも、難燃性付与効果が高い臭素系難燃剤が好ましい。本発明で用いることができる臭素系難燃剤としては、例えば、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル))、2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル))等の臭素化ビスフェノール系化合物、臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン・ブタジエン共重合体、臭素化スチレン・ブタジエングラフト共重合体等の臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、特表2009−516019号公報に開示されている)、テトラブロモシクロオクタン等が挙げられる。これら臭素系難燃剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
難燃剤は、目的とする発泡倍率に制御しやすいと共に、炭素系輻射伝熱抑制剤添加時の難燃性等のバランスの点から、ポリスチレン系樹脂組成物100重量%において難燃剤は0.5〜6重量%であることが好ましく、1〜4重量%であることがより好ましい。含有量が0.5重量%以上であると、難燃性付与効果が小さくならず、6重量%以下である、得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の強度が低下し難い。
【0050】
(熱安定剤)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子においては、さらに、熱安定剤を併用することによって、製造工程における難燃剤の分解による難燃性の悪化及び発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の劣化を抑制することができる。
【0051】
本発明における熱安定剤は、用いられるポリスチレン系樹脂の種類、発泡剤の種類及び含有量、炭素系輻射伝熱抑制剤の種類及び含有量、難燃剤の種類及び含有量等に応じて、適宜組み合わせて用いることができる。
【0052】
本発明で用いられる熱安定剤としては、ポリスチレン系樹脂組成物の熱重量分析における1%重量減少温度を任意に制御できる点から、ヒンダードアミン化合物、リン系化合物、エポキシ化合物が望ましい。熱安定剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
熱安定剤は、目的とする発泡倍率に制御しやすいと共に、炭素系輻射伝熱抑制剤添加時の難燃性等のバランスの点から、ポリスチレン系樹脂組成物100重量%において熱安定剤は0.5〜3重量%であることが好ましい。0.5重量%以上であると難燃剤の分解が生じ難く、難燃性付与効果が小さくならず、3重量%以下であると得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の強度が低下し難い。
【0054】
(その他の添加剤)
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のポリスチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、ラジカル発生剤、加工助剤、耐光性安定剤、造核剤、発泡助剤、帯電防止剤、顔料等の着色剤よりなる群から選ばれる1種以上のその他添加剤を含有していてもよい。ラジカル発生剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、又はポリ−1,4−イソプロピルベンゼン等が挙げられる。加工助剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン等が挙げられる。耐光性安定剤としては、前述したヒンダードアミン類、リン系安定剤、エポキシ化合物の他、フェノール系抗酸化剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類等が挙げられる。造核剤としては、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、タルク等の無機化合物、メタクリル酸メチル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の高分子化合物、ポリエチレンワックス等のオレフィン系ワックス、メチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド等の脂肪酸ビスアマイド等が挙げられる。発泡助剤としては、大気圧下での沸点が200℃以下である溶剤を望ましく使用でき、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル等が挙げられる。なお、帯電防止剤及び着色剤としては、各種樹脂組成物に用いられるものを特に限定なく使用できる。これらの他の添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0055】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、見かけ密度が1000kg/m超1060kg/m以下である。発泡性の観点から、1000kg/m超であることが好ましく、1010kg/m以上であることがより好ましい。一方、断熱性能の観点から、1055kg/m以下であることが好ましく、1050kg/m以下であることがより好ましく、1040kg/m以下が特に好ましい。また、一般的なポリスチレン系樹脂の密度は1050kg/m〜1060kg/mであるため、発泡を抑制できた際には上記の密度の値に収束するはずである。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が1000kg/m超1060kg/m以下であることによって、ポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなるポリスチレン系樹脂溶融物は押出時の発泡が抑制されると考えられる。押出時の発泡を抑制した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることで、予備発泡粒子中の独立気泡率が高くなり、セル構造の強度が高くなるために、予備発泡直後の収縮を抑制することが可能になったと考えられる。
【0056】
また、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が低ければ、予備発泡粒子は収縮しやすく、予備発泡直後の収縮が大きければ予備発泡粒子のセルが挫屈してしまい、高温で養生しても倍率は回復しなくなるところ、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は収縮が抑制されるため、予備発泡粒子を高温で養生する必要がなくなり、養生後の倍率管理が容易となる。さらに、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度を高くすることで、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のかさ密度も低くならないため、充填しやすくなるために保管時のスペースを小さくすることができる。
【0057】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をかさ倍率80倍に予備発泡後30℃で24時間養生した後の予備発泡粒子の平均セル径が380μm以下となることが好ましく、350μm以下であることがより好ましく、300μm以下が特に好ましい。一方、下限は、独立気泡率の観点から、80μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましく、130μm以上が特に好ましい。平均セル径が380μm以下であることで、極端なセルの肥大化が抑制でき、発泡粒子中のセル数が極端に少なくならず、発泡粒子の構造体としての強度が低下することを抑制できる。セル径が極端に肥大化すると、セル壁が厚くなり、柔軟性が低下するため、予備発泡直後に収縮が生じるとセル壁に挫屈が生じ、発泡粒子の構造体としての強度が低下すると考えられる。また、平均セル径を380μm以下にすることにより、予備発泡粒子中に存在するセル数が増加し、輻射熱が小さくなり、熱伝導率が良好になる。一方、平均セル径が80μm以上であることで、セル膜が極端に薄くならず、無機物質による破泡を抑制でき、独立気泡率の低下を抑制できると考えられる。
【0058】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子において、上記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子を30℃で24時間養生した後のかさ倍率は75倍以上であることが好ましく、かさ倍率80倍以上がより好ましい。上記予備発泡粒子のかさ倍率が75倍以上であることで、上記予備発泡粒子を成形してなるポリスチレン系樹脂発泡成形体の密度が低下し、より軽量化されたポリスチレン系樹脂発泡成形体の作製が可能となる。また、かさ倍率を高くすることで使用する樹脂量を削減できるためコストダウンにも繋がる。
【0059】
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法]
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、公知の溶融混練法で得ることができ、具体的には、ポリスチレン系樹脂、炭素系輻射伝熱抑制剤および発泡剤を押出機で溶融混練し(溶融混練工程)、溶融混練物を押出機先端に取り付けられた小孔を有するダイスを通じて加圧循環水で満たされたチャンバー内に押出し(押出工程)、押出直後の溶融混練物を回転カッターにより切断すると共に、加圧循環水により冷却固化する(冷却工程)ことにより製造することができる。好ましくは、次の本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法で得られる。
【0060】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法は、炭素系輻射伝熱抑制剤を含むポリスチレン系樹脂組成物および発泡剤からなるポリスチレン系樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイスから加圧循環水中に押出し、回転カッターで切断して粒子化する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、前記発泡剤が、(A)発泡剤総量100重量%に対してイソブタンを20重量%超55重量%以下含む、または、(B)ペンタンおよびイソブタンの総量100重量%に対してイソブタンを20重量%超55重量%以下含み、かつ、
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度が1000kg/m超1060kg/m以下である(以下、「本発明の製法」と称することがある)。
【0061】
本発明の製法における構成のうち、前記[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子]で説明した各構成は本発明の製法においても同様に適用できる。
【0062】
本発明の製法においては、ポリスチレン系樹脂と各種成分との分散性の観点から、予め、二軸の攪拌機を備えた(例えばバンバリーミキサー等)混練装置を用いてポリスチレン系樹脂と各種成分とを荷重をかけて混練して混練物を作製し、得られた混練物とポリスチレン系樹脂とを押出機に投入して溶融混練した後、粒子状に切断することが好ましい。
【0063】
本発明の製法の好ましい一形態としては、、ポリスチレン系樹脂及び炭素系輻射伝熱抑制剤を、例えばバンバリーミキサー等の二軸の攪拌機を備えた混練装置により混練してマスターバッチを作製し、作製したマスターバッチと新たなポリスチレン系樹脂と、発泡剤と、必要に応じて難燃剤等その他の成分とを押出機で溶融混練し、得られた樹脂溶融物を押出機先端に取り付けられた小孔を有するダイスを通して加圧循環水で満たされたカッターチャンバー内に押出し、押出直後から回転カッターにより切断すると共に、加圧循環水により冷却固化する。この際、押出機での溶融混練は単独の押出機を使用する場合、押出機を複数連結する場合、押出機とスタティックミキサーやスクリューを有さない攪拌機など第二の混練装置を併用する場合があり、適宜選択することができる。
【0064】
ポリスチレン系樹脂及び炭素系輻射伝熱抑制剤を、二軸の攪拌機を備えた混練装置、例えば荷重をかけた状態で樹脂の混練が可能なインテンシブミキサー、インターナルミキサー、又はバンバリーミキサー等、により混練してマスターバッチを作製することが好ましい。この場合、マスターバッチの濃度は特に限定されないが、炭素系輻射伝熱抑制剤の濃度20重量%〜80重量%で作製することが、混練性とコストとのバランスから好ましい。作製したマスターバッチ、ポリスチレン系樹脂、発泡剤、必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、他の添加剤を第1の押出機及び必要に応じて押出機に付随する第2の混練装置で溶融混練し、得られた樹脂溶融物を所定の温度に冷却した後、小孔を有するダイスを通じて、加圧循環水で満たされたカッターチャンバー内に押出す。この押出直後から、回転カッターにより切断してペレット化すると共に、得られたペレット(樹脂粒子)を加圧循環水により冷却固化して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることができる。なお、難燃剤、熱安定剤等の他の添加剤についても、同様に、予め、ポリスチレン系樹脂と他の添加剤とのマスターバッチを作製して、押出機等に投入するようにしても構わない。さらに、炭素系輻射伝熱抑制剤や難燃剤、熱安定剤およびその他の添加剤はマスターバッチ化を行わずに、原料を直接押出機に投入するようにしても構わない。
【0065】
発泡剤としてペンタンおよびブタンを併用する場合、ペンタンおよびブタンが添加されればその添加方法は特に問われず、添加は同時に添加してもよいし、いずれか一方を先に添加後もう一方を添加するようにしてもよい。
【0066】
本発明の製法で用いるイソブタンの添加量は、発泡剤総量100重量%に対して20重量%超55重量%以下であるか、または、ペンタンおよびイソブタンの総量100重量%に対してイソブタンが20重量%超55重量%以下である。溶融押出法で製造する場合に、イソブタンが55重量%超であると、カッティングが困難となり、ダイスが閉塞することでサンプル採取が困難となる。
【0067】
押出機の溶融混練部の設定温度は、100℃〜250℃が好ましい。また、押出機にポリスチレン系樹脂及び各種成分を供給してから溶融混練終了までの押出機内滞留時間が10分以下であることが好ましい。押出機の溶融混練部での設定温度が250℃以下、及び/又は、溶融混練終了までの押出機内滞留時間が10分以下であれば、難燃剤を添加した場合に難燃剤の分解を生じることなく、所望の難燃性が得ることができ、所望の難燃性を付与する為に難燃剤を過剰に添加する必要もない。一方、押出機の溶融混練部での設定温度が100℃以上であると、押出機の負荷が大きくならず押出が安定になり、添加する成分の分散性が良好になる。
【0068】
ここで、押出機の溶融混練部とは、単軸又は二軸スクリューを有する押出機から構成される場合はフィード部以降から下流側最終押出機先端までを意味する。第1の押出機に付随してスタティックミキサーやスクリューを有さない攪拌機など第2の混練装置を併用する場合は第一押出機のフィード部から第2の混練装置の先端までを意味する。
【0069】
加圧循環水の水圧は、0.9MPa以上1.5MPa以下であることが好ましく、0.95MPa以上1.4MPa以下であることがより好ましい。水圧が0.9MPa以上であれば、発泡を抑制でき、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の嵩密度が高くなり、発泡倍率の低下や輸送効率の低下が生じにくくなる。一方、水圧が1.5MPa以下であることにより、水圧によって回転カッターが押し戻されず、押出された溶融樹脂が回転カッターに巻きつくことがなく、安定生産できる。また、溶融された樹脂に加わる歪が大きくならず、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の形状が良好になり、発泡性や成形性に優れると考えられる。
【0070】
本発明で用いられるダイスは特に限定されないが、例えば、直径0.3mm〜2.0mm、好ましくは0.4mm〜1.0mmの小孔を有するものが挙げられる。
【0071】
加圧循環水に押出された溶融樹脂を切断する切断装置としては、特に限定されないが、例えば、ダイリップに接触する回転カッターで切断されて小球化され、遠心脱水機まで移送されて脱水・集約される装置、等が挙げられる。
【0072】
[ポリスチレン系樹脂発泡成形体]
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、特に限定されないが、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を所定の発泡倍率に発泡させて予備発泡粒子とし、この予備発泡粒子を用いて成形を行なう予備発泡法により、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造することができる。
【0073】
ポリスチレン系樹脂発泡成形体は発泡倍率が高いほど原料である発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の使用量が少なくなることから、本発明によれば、高発泡倍率のポリスチレン系樹脂発泡成形体をより安価に製造することができる。なお、グラファイトを含有させた従来の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子においては高倍率発泡は困難であった。しかし、本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及び本発明の製造方法で得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子によれば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含まれるイソブタンの含有量、および、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度を制御することで高倍率発泡が可能となり、軽量で取扱性が良く、かつより安価な断熱材を供給することができる。
【0074】
本発明の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、公知の予備発泡工程、例えば、水蒸気によって10〜110倍に発泡させて予備発泡粒子とし(予備発泡工程)、必要に応じて一定時間養生させた後、公知の成形機を用い、予備発泡粒子を水蒸気によって成形されてポリスチレン系樹脂発泡成形体が作製される。使用される金型の形状により、複雑な形の型物成形体やブロック状の成形体を得ることができる。
【0075】
(予備発泡工程)
予備発泡工程は、予備発泡機を用い、従来の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡と同様にして実施できる。
【0076】
予備発泡機としては公知のものを使用でき、例えば、撹拌装置を備え、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が収容される缶と、該缶の下方に設置され、水蒸気を該缶に供給する蒸気チャンバーと、予備発泡粒子排出口とを備えた予備発泡機が用いられる。
【0077】
水蒸気投入時の缶内圧力(ケージ圧)は特に限定されないが、好ましくは0.001〜0.15MPa、より好ましくは0.01〜0.10MPa、さらに好ましくは0.03〜0.08MPaである。缶内圧力が0.01MPa以上であると、高発泡倍率を得る場合に、予備発泡における水蒸気投入時間を500秒以下にすることができる。缶内圧力が0.15MPa以下であると、水蒸気の圧力を高くすることが必要なくなり、ブロッキング現象の発生数が低下し、予備発泡収率が高くなる。
【0078】
また、予備発泡工程は、連続法及びバッチ法のいずれでも行なうことができる。
【0079】
連続法は、缶内への発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の供給、及び缶上部に設けられた排出口からの予備発泡粒子の排出を連続的に行なう方法である。予備発泡粒子の発泡倍率は、例えば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の缶内への時間当たりの投入量(重量)を適宜選択することにより調整できる。連続法の場合は缶内へ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が供給されてから予備発泡粒子が排出されるまでの予備発泡機缶内での滞留時間を水蒸気投入時間とする。
【0080】
また、バッチ法は、缶内に所定量の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を入れ、これを所定の発泡倍率に予備発泡させた後に水蒸気の供給を停止し、次いで必要に応じて空気を缶内に吹き込んで予備発泡粒子を冷却及び乾燥し、缶内から取り出す方法である。予備発泡粒子の発泡倍率は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のバッチあたりの缶内への投入量(重量)を適宜選択することにより調整できる。バッチ法は、投入された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を所定容積まで予備発泡させる方法であることから、バッチ当りの投入量を減らすほど、得られる予備発泡粒子の発泡倍率は高くなる。
【0081】
また、予備発泡直後の予備発泡粒子は養生を行う方が良い。予備発泡時は発泡粒子内に水蒸気が存在するが、発泡後の冷却工程において水蒸気が水に凝縮するため予備発泡直後の予備発泡粒子内部は減圧状態となる。減圧状態の際に予備発泡粒子のセル壁強度が低ければ、収縮が容易に生じる場合がある。さらに、予備発泡粒子の独立気泡率が低ければ、セル構造体の強度が低下し、収縮しやすくなる。そのため予備発泡粒子内部を空気と置換し、大気圧に戻す養生工程が有効となる。本発明のポリスチレン系樹脂発泡性粒子の予備発泡粒子は、予備発泡直後の収縮が抑えられるため、養生工程により所望どおりの発泡倍率まで回復されうる。
【0082】
養生時の温度は特に限定されないが、好ましくは20〜80℃、より好ましくは、25〜70℃、さらに好ましくは30〜60℃である。養生温度が20℃以上であると、減圧状態であった予備発泡粒子内部に空気が導入され易くなり、発泡粒子内部が大気圧に戻り易くなる。養生温度が80℃以下であると、予備発泡粒子に存在する発泡剤が逸散し難くなり、発泡力が低下せず、成形体の表面美麗性が低下しない。
【0083】
本発明のポリスチレン系樹脂発泡成形体は、例えば、床、壁、屋根等に用いられる建築用断熱材、魚等の水産物を輸送する箱や野菜等の農産物を輸送する箱等の農水産箱、浴室用断熱材及び貯湯タンク断熱材のような各種用途に使用できる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
なお、以下の実施例及び比較例における測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0086】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の見かけ密度測定方法)
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を測定試料としてW(kg)採取し、この測定試料をエタノールが入ったメスシリンダー内に自然落下させ、その質量(kg)と体積(m)を測定し、以下の式に基づき、見かけ密度を測定した。
【0087】
見かけ密度(kg/m)=測定試料の重量(W)/測定試料の体積(V)。
【0088】
(予備発泡粒子のかさ倍率測定方法)
予備発泡粒子を各々測定試料としてW(g)採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させた後にメスシリンダーをたたき試料の見掛け体積V(cm)を一定とし、その質量(g)と体積(cm)を測定し、以下の式に基づき、かさ倍率を測定した。
【0089】
かさ倍率(cm/g)=測定試料の体積(V)/測定試料の重量(W)
予備発泡粒子において、予備発泡機から予備発泡粒子が排出された後5〜10分以内に測定したかさ倍率を予備発泡後に収縮が生じた、発泡直後のかさ倍率と定義する。
【0090】
予備発泡粒子において、収縮後に30℃で24時間養生した後に測定したかさ倍率を養生後のかさ倍率と定義する。
【0091】
(予備発泡粒子の平均セル径測定方法)
(1)観察条件
装置:キーエンス社製 DIGITAL MICROSCOPE VHX−900
観察倍率:100倍
(2)測定条件
予備発泡粒子中の長軸直径に対する垂直二等分面でカミソリを用いて切断し、その断面をキーエンス社製 DIGITAL MICROSCOPEを用いて、観察倍率100倍で写真を撮影する。その断面の中心点から半径1000μmの範囲内において1000μm×1000μm四方の範囲内に存在するセル数をカウントする。そのセル数を用い、以下の式に基づき、平均セル径を算出した。
平均セル径(μm)=2×[1000μm×1000μm/(セル数×円周率)]0.5
(ポリスチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率の測定方法)
一般的に熱伝導率の測定平均温度が大きい方が熱伝導率の値は大きくなることが知られており、断熱性を比較するためには測定平均温度を定める必要がある。本明細書では発泡プラスチック保温材の規格であるJIS A9511:2006Rで定められた23℃を基準に採用した。
【0092】
熱伝導率は、ポリスチレン系樹脂発泡成形体から熱伝導率測定用サンプルを切り出し、サンプルを60℃温度下で48時間静置し、さらに、23℃の温度下にて24時間静置した後に測定した。
【0093】
より詳しくは、ポリスチレン系樹脂発泡成形体から、長さ300mm×幅300mm×25mmのサンプルを切り出した。サンプルを60℃温度下にて48時間静置し、さらに、23℃温度下にて24時間静置した後、熱伝導率測定装置(英弘精機(株)製、HC−074)を用いて、JIS A1412−2:1999に準拠して熱流計法にて平均温度23℃、温度差20℃で熱伝導率を測定した。
【0094】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の生産安定性評価)
実施例および比較例に示した条件で発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造を行い、以下の評価基準に基づき、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の生産安定性の評価を行った。
【0095】
○:安定的にサンプル採取可能
△:ダイスの閉塞が見られるがサンプル採取可能
×:サンプル採取困難。
【0096】
以下に、実施例及び比較例で用いた原材料を示す。
【0097】
(スチレン系樹脂)
(A)スチレンホモポリマー[PSジャパン(株)製、680]
(グラファイト)
(B)グラファイト[(株)丸豊鋳材製作所製、鱗片状黒鉛SGP−40B]
(臭素系難燃剤)
(C)2,2−ビス[4−(2,3−ジブロモ−2−メチルプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]プロパン[第一工業製薬(株)製、SR−130、臭素含有量=66重量%]。
【0098】
(熱安定剤)
(D1)テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジルオキシカルボニル)ブタン[(株)ADEKA製 LA−57]
(D2)ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト[(株)ADEKA製 PEP−36]。
【0099】
(発泡剤)
(E1)ノルマルペンタン[和光純薬工業(株)製、試薬品]
(E2)イソペンタン[和光純薬工業(株)製、試薬品]
(E3)イソブタン[三井化学(株)製]
(その他添加剤)
(F)エチレンビスステアリン酸アミド[日油(株)製、アルフローH−50S]。
【0100】
(製造例1)(グラファイトマスターバッチ(G))
バンバリーミキサーに、ポリスチレン系樹脂(A)49重量%、グラファイト(B)50重量%、エチレンビスステアリン酸アミド(F)1重量%の全重量(A+B+F)が100重量%となる様に原料投入して、5kgf/cmの荷重をかけた状態で加温冷却を行わずに20分間混練した。この際、樹脂温度を測定したところ180℃であった。ルーダーに供給して先端に取り付けられた小穴を有するダイスを通して吐出250kg/hrで押出されたストランド状の樹脂を30℃の水槽で冷却固化させた後、切断してマスターバッチ(G)を得た。マスターバッチ(G)中のグラファイト含有量は50重量%であった。
【0101】
(製造例2)(臭素系難燃剤と熱安定剤との混合物のマスターバッチ(H))
二軸押出機に、ポリスチレン系樹脂(A)を供給して溶融混練した後、押出機途中より臭素系難燃剤(C)、熱安定剤(D1)及び(D2)の混合物を供給して、さらに溶融混練した。ただし、各材料の重量比率は、(A):(C):(D1):(D2)=70:28.5:0.6:0.9、(A)+(C)+(D1)+(D2)=100重量%とした。押出機先端に取り付けられた小穴を有するダイスを通して、吐出300kg/hrで押出されたストランド状の樹脂を20℃の水槽で冷却固化させた後、切断して臭素系難燃剤と熱安定剤との混合物のマスターバッチ(H)を得た。このとき押出機の設定温度は170℃で実施した。
【0102】
(実施例1)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]
ポリスチレン系樹脂(A)、マスターバッチ(H)、及び、グラファイトマスターバッチ(G)を、それぞれブレンダーに投入して、10分間ブレンドし、樹脂混合物を得た。各材料の重量比は、(A):(H):(G)=83.65:8.35:8.00、(A)+(H)+(G)=100重量%であった。
【0103】
得られた樹脂混合物を口径40mmの同方向2軸押出機(第1押出機)と口径90mmの単軸押出機(第2押出機)を直列に連結したタンデム型二段押出機へ供給し、口径40mm押出機の設定温度190℃、回転数150rpmにて溶融混練した。口径40mm押出機(第1押出機)の途中から、上記樹脂混合物の溶融物(樹脂組成物)100重量部に対して、混合ペンタン[ノルマルペンタン(E1)80重量%とイソペンタン(E2)20重量%の混合物]を4.3重量部の割合で圧入し、上記樹脂組成物100重量部に対して、イソブタン(E3)を2.2部圧入し、合計6.5部の発泡剤を添加した。その後、200℃に設定された継続管を通じて、口径90mm押出機(第2押出機)に供給した。
【0104】
口径90mm押出機(第2押出機)にて樹脂温度を160℃まで溶融樹脂を冷却した後、250℃に設定した第2押出機の先端に取り付けられた直径0.65mm、ランド長3.0mmの小孔を36個有するダイスから、吐出量50kg/時間で、温度65℃及び1.3MPaの加圧循環水中に押出した。押出された溶融樹脂は、ダイスに接触する6枚の刃を有する回転カッターを用いて、切断・小粒化され、遠心脱水機に移送されて、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。このとき、第1押出機内滞留時間2分、第2押出機の滞留時間は5分であった。
【0105】
[予備発泡粒子の作製]
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃で1週間以上保管した後に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子にステアリン酸亜鉛を0.04部ドライブレンドした。前記添加剤を含む発泡性ポリスチレン系樹脂粒子880gを予備発泡機[大開工業株式会社製、BHP−300]に投入し、缶内圧力設定を0.05kg/cm〜0.15kg/cmとし、0.10MPaの水蒸気を予備発泡機に導入して、かさ倍率80倍に発泡させ、予備発泡粒子を得た。
【0106】
[ポリスチレン系樹脂発泡成形体の作製]
得られた予備発泡粒子を30℃で24時間養生させた後に、発泡スチロール用成形機[ダイセン工業(株)製、KR−57]に取り付けた型内成形用金型(長さ400mm×幅400mm×厚み50mm)内に充填して、0.06MPaの水蒸気を導入して型内発泡させた後、金型に水を噴霧して冷却した。ポリスチレン系樹脂発泡成形体が金型を押す圧力が0.01MPa(ゲージ圧力)なるまでポリスチレン系樹脂発泡成形体を金型内に保持した後に、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を取り出して、ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得た。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03094W/m・Kであった。
【0107】
作製された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子について、各種特性を上述の測定方法および評価方法により測定および評価した。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子についての測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0108】
(実施例2)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、口径90mm押出機(第2押出機)にて樹脂温度を170℃まで溶融樹脂を冷却した以外は、実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03079W/m・Kであった。
【0109】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0110】
(実施例3)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、口径90mm押出機(第2押出機)にて樹脂温度を180℃まで溶融樹脂を冷却した以外は、実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03082W/m・Kであった。
【0111】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0112】
(実施例4)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、混合ペンタンを4.75重量部、イソブタンを1.75重量部に変更した以外は実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03136W/m・Kであった。
【0113】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0114】
(実施例5)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、混合ペンタンを4.0重量部、イソブタンを2.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03085W/m・Kであった。
【0115】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0116】
(実施例6)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、混合ペンタンを4.8重量部、イソブタンを2.2重量部に変更した以外は、実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03190W/m・Kであった。
【0117】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0118】
(実施例7)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、混合ペンタンを5.3重量部、イソブタンを2.2重量部に変更した以外は、実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03230W/m・Kであった。
【0119】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0120】
(実施例8)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、混合ペンタンを5.8重量部、イソブタンを2.2重量部に変更した以外は、実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03105W/m・Kであった。
【0121】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0122】
(比較例1)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、混合ペンタンを6.5重量部、イソブタンを0重量部に変更し、加圧循環水の水圧を0.8MPaに変更した以外は、実施例1と同様の処理によりポリスチレン系樹脂発泡成形体を作製した。得られたポリスチレン系樹脂発泡性成形体の熱伝導率を上述の測定方法で測定した結果、0.03032W/m・Kであった。
【0123】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0124】
(比較例2)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、加圧循環水の水圧を0.8MPaに変更した以外は、実施例1と同様の処理により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及びその予備発泡粒子を作製した。
【0125】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0126】
(比較例3)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、口径90mm押出機(第2押出機)にて樹脂温度を180℃まで溶融樹脂を冷却し、加圧循環水の水圧を0.8MPaに変更した以外は、実施例1と同様の処理により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子及びその予備発泡粒子を作製した。
【0127】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0128】
(比較例4)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、イソブタンを1.75重量部に変更し、加圧循環水の水圧を0.8MPaに変更した以外は、実施例1と同様の処理により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子およびその予備発泡粒子を作製した。
【0129】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0130】
(比較例5)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、混合ペンタンを6.5重量部、イソブタンを0.5重量部に変更し、加圧循環水の水圧を0.8MPaに変更した以外は、実施例1と同様の処理により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子およびその予備発泡粒子を作製した。
【0131】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0132】
(比較例6)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、混合ペンタンを6.0重量部、イソブタンを1.0重量部に変更し、加圧循環水の水圧を0.8MPaに変更した以外は、実施例1と同様の処理により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子およびその予備発泡粒子を作製した。
【0133】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子および予備発泡粒子の各種特性を実施例1と同様にして測定および評価した。測定結果及び評価結果を表1に示す。
【0134】
(比較例7)
[発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の作製]において、混合ペンタンを3.0重量部、イソブタンを4.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様の処理により発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を作製しようと試みたが、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子作製時にカッティングが困難となり、ダイスが閉塞してしまいサンプル採取が困難であった。
【0135】
【表1】