(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記充電ユニットは、充電機構としてペルチェ素子を含み、前記真空断熱材の外部から熱が加えられることで、ゼーベック効果により生じた電力により、前記バッテリーを充電すること
を特徴とする請求項1に記載の真空断熱材。
前記圧力センサは、熱電対型真空センサ、ピエゾ抵抗型真空センサ及びクリスタル真空センサの中から選択された2つ以上の真空センサを併用したものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の真空断熱材。
【背景技術】
【0002】
真空断熱材は、発泡スチロールよりも断熱性能の高い断熱材として冷蔵庫、魔法瓶、住宅やプラントの外壁等の様々な分野に多用されている。この真空断熱材は、例えば、内部に多くの空隙をもつ多孔体からなる芯材に、芯材を封入する袋状のガスバリア性フィルムを被せて減圧し、ガスバリア性フィルムの開口部を熱溶着(ヒートシール)し、ガスバリア性フィルムの外側に外層を設けて構成することができる。
【0003】
一般に、真空断熱材は、長期的に運用することで経年劣化が進行し、外部から空気等のガスが長い時間をかけて徐々に内部に流入して、ガスの流入による断熱性能が低下するという問題を有しており、長期的な運用・性能予測の面で課題をかかえている。そして、真空断熱材の施工後に断熱性能を確認する方法は乏しく、真空断熱材を取り外して熱伝導率等を測定することによって、正確な断熱性能の変化を読み取るしか方法が無かった。
【0004】
そこで、長期にわたって真空断熱材の性能をモニタリングするために、真空断熱材の断熱性能に直接的に関係する真空度に加えて、温度、湿度、ガス分子等の様々な情報を測定し、真空断熱材の内側の情報を外部に送信可能な機構を内側に備えた真空断熱材が従来技術として提案されている。
【0005】
例えば、特許第4641565号公報(特許文献1)に記載の真空断熱パネルは、芯材にガスバリア性の外皮材を被せ、周辺の温度の計測が可能な温度センサ部、温度センサ部による計測結果を無線通信可能な通信部、及びバッテリーが外皮材の内側に配置されるように構成されている。また、特開2012−136254号公報(特許文献2)に記載の真空断熱パネルは、断熱材をガスバリア性フィルムで覆い、内部を真空にした断熱パネルにおいて、外皮材の内側に少なくとも真空センサと、真空センサで検知した真空データを外部に送信可能な通信部と、バッテリーを設けられている。その他、特開2015−513327号公報(特許文献3)にも同様の真空断熱パネルが記載されている。
【0006】
このように、センサを内蔵した従来の真空断熱パネルは、真空断熱パネルの真空度や、周辺の温度を計測することができ、計測値を外部に送信し、真空断熱パネルの断熱性能をモニタリングすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来例の真空断熱材には、センサ等を用いて内部の物性を測定することには多くの課題があり、その解決に至っていない。主な課題は4つあり、1つ目の課題は、長期的な物性測定手法である。一般的な真空断熱材の使用年数は半年以上となっており、長期的な運用が見込まれるが、上記従来例の真空断熱パネルのように、バッテリーを内部に搭載した場合、長期的な運用に耐え得る十分な電力を継続して供給することができず、すぐに測定ができなくなることが予想される。
【0009】
2つ目の課題は、真空下では内部が1Pa程度の時約10t/m
2の力が断熱材表面に加わり、センサ、ケーブル、無線送信機等の表面に大きな力が加わる為、それらを保護できるように構成する必要がある。
【0010】
そして、3つ目の課題は、圧力測定の方法として、例えば、特開2012−136254号公報(特許文献2)では、ピラニ、隔膜、静電容量型、マイクロメカニカル真空計等を用いているが、大きさの面でピラニ・隔膜真空計は真空断熱材内部に挿入することは困難である。静電容量型の真空計は小型のタイプがあるものの、精度不十分である。
【0011】
最後に、4つ目の課題は、真空性能を発揮するために、真空断熱材は内部に繊維で多数の独立した部屋(pore、 セルとも呼ぶ)を構成することでガスの流入を防止してガス熱伝導率を抑制できるが、センサによって真空断熱材内部のスペースが埋まってしまうとガス流入を防止するセルの容積が減ってしまう。そのため、真空断熱材の内部分圧がセンサ無しに比べて上昇し、断熱性能が落ちやすくなる。よって、センサのサイズについては、なるべく小型化できることが望ましい。
【0012】
そこで、上述の課題をすべて解決するために、本発明では、真空断熱材の内側に、熱電対型真空センサ又はピエゾ抵抗型真空センサ又はクリスタル真空センサ(クリスタルゲージ)又はそれらを併用したものである圧力センサと、バッテリーと、充電ユニットと、少なくとも圧力値を含む測定データを送信する送信ユニットとを含む小型無線真空計を設け、圧力センサを微小電気機械システム(MEMS)で形成し、充電ユニットを外部電源との電気的な接続なしにバッテリーを充電するように構成した真空断熱材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る真空断熱材の1つの実施形態として、真空断熱材は、芯材と、前記芯材を覆うガスバリア性フィルムと、前記ガスバリア性フィルムの外側に設けられた外層とを含み、内部を減圧密封し、
前記真空断熱材は、前記外層よりも内側に、小型無線真空計を含み、
前記小型無線真空計は、圧力センサと、前記圧力センサに電力を供給するバッテリーと、前記バッテリーを充電する充電ユニットと、前記圧力センサで測定された、少なくとも圧力値を含む測定データを送信する送信ユニットと
を少なくとも含み、
前記圧力センサは、微小電気機械システム(MEMS)で形成され、
前記充電ユニットは、外部電源との電気的な接続なしに前記バッテリーを充電する充電機構を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記充電ユニットは、充電機構としてペルチェ素子を含み、前記真空断熱材の外部から熱が加えられることで、ゼーベック効果により生じた電力により、前記バッテリーを充電することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記充電ユニットは、充電機構として受電側コイルを含み、前記真空断熱材の外部にある送電側コイルとの非接触給電により、前記バッテリーを充電することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記非接触給電は、前記受電側コイルと前記送電側コイルとの間で発生する誘導磁束を利用して電力を伝送する方式である電磁誘導方式を用いたことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記非接触給電は、送電側共振回路に含まれる前記送信側コイルに電流が流れることにより発生した磁場の振動が、同じ周波数で共振する受電側共振回路に含まれる前記受信側コイルに伝わることで、磁界共鳴させて電力を伝送する方式である磁界共鳴方式を用いたことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記圧力センサは、熱電対型真空センサであることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記圧力センサは、ピエゾ抵抗型真空センサであることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記圧力センサは、クリスタル真空センサであることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記圧力センサは、熱電対型真空センサ、ピエゾ抵抗型真空センサ及びクリスタル真空センサの中から選択された2つ以上の真空センサを併用したものであることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記小型無線真空計の体積は、前記真空断熱材の体積の7.5%以下であることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記小型無線真空計の体積は、前記真空断熱材の体積の5.0%以下であることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記小型無線真空計の厚みは、12mm以下であることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記真空断熱材の厚みは、25mm以下であり、かつ、前記小型真空計の厚みよりも厚いことを特徴とする。
【0026】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記小型無線真空計は、温度センサ、湿度センサ、各種分子種を計測するセンサ及び内部時計のうち少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする。
【0027】
本発明に係る真空断熱材の好ましい実施形態として、前記送信ユニットは、1GHz未満のサブギガ帯無線又は2.4GHz帯無線又は5GHz帯無線によって、前記測定データを送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の1つの実施形態に係る真空断熱材は、外部電源との電気的な接続なしに前記バッテリーを充電する充電機構を含む充電ユニットを設けたことで、長期的な運用に耐え得る十分な電力を継続して供給することができる。また、真空断熱材に含まれる小型無線真空計の圧力センサをMEMSで形成し、小型無線真空計の体積を真空断熱材の体積の7.5%以下、好ましくは5.0%以下となるように真空断熱材を構成したことで、小型無線真空計の表面積が小さくなり、真空下で小型無線真空計に加わる力を弱くすることができ、小型無線真空計を保護することができる。
【0029】
そして、小型無線真空計を上述のとおり極力小さく構成したことで、真空断熱材の内部に繊維で構成された多数の独立したセルのスペースを埋めずに、ガス流入を防止して断熱性能を低下させない十分なセルの容積を確保することができる。さらに、真空断熱材に含まれる小型無線真空計の圧力センサに熱電対型真空センサ又はピエゾ抵抗型真空センサ又はクリスタル真空センサ又はそれらを併用したものを採用したことで、小型無線真空計でありながら、真空断熱材の内部に挿入することが困難なピラニ真空計等の大きな真空計と同等の測定精度を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、実施の形態を説明するための全ての図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る真空断熱材に含まれる小型無線真空計の部品構成を示すブロック図である。小型無線真空計10は、圧力センサ1と、オペアンプ2と、A/Dコンバータ3と、CPU・無線送信ユニット4と、温湿度センサ・内部時計5と、充電ユニット6と、DC/DCコンバータ7と、バッテリー8とを含むことができる。
【0033】
圧力センサ1は、真空断熱材内部の圧力を測定し、圧力センサ1に接続されたオペアンプ2は、測定された圧力値のアナログ信号を増幅することができる。オペアンプ2に接続されたA/Dコンバータ3は、増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、A/Dコンバータ3に接続されたCPU・無線送信ユニット4は、デジタル信号を受け取り、受け取ったデジタル信号を測定データとして、1GHz未満のサブギガ帯無線又は2.4GHz帯無線又は5GHz帯無線によって外部の受信ユニット(図示せず)に送信することができる。
【0034】
CPU・無線送信ユニット4の周波数帯は、無線送信可能な周波数帯であれば、どれでも選択が可能であるが、送信距離の問題から1GHz以下範囲が好ましい。920MHz帯はISMバンド帯を利用しており、1回の送信にかかる消費電力も大きい。しかしながら、920MHz帯は2.4GHz帯に比べて、回折性が高いので障害物を回りこんで通信することができ、電波の到達距離も長いことから、真空断熱材の外層表面から数mの送信が可能である。
【0035】
一方、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信を含む2.4GHz帯の通信方法では、消費電力は少ないが、電波の到達距離は、一般的な真空断熱材の外層表面から5cm程度である。壁内部に真空断熱材を設置した場合の計測が難しいが、壁厚の薄い所や、壁から真空断熱材の表面が剥き出しである場合に用いることができる。
【0036】
外部の受信ユニットは、測定データの受信時に測定電圧を記録し、既知の校正値(電圧/圧力)の変換値から圧力値に変換することができ、変換で出力される圧力値は、例えば、受信ユニットで実行されるプログラムによって計算される。
【0037】
圧力センサ1は、微小電気機械システム(MEMS)で形成された熱電対型真空センサを用いることができる。また、圧力センサ1は、MEMSで形成された熱電対型真空センサを用いることもできる。
【0038】
CPU・無線送信ユニット4に接続された温湿度センサ・内部時計5は、例えば、I2C通信等のシリアル通信で直接CPUに信号を送信することができる。CPU・無線送信ユニット4は、温湿度センサ・内部時計5からの信号を無線で外部の受信ユニットに送信することができる。なお、温湿度センサについては無くても、圧力センサ1により真空断熱材の内側の圧力を測定することが可能な為、必要がない場合には、小型無線真空計10の構成に含めなくてもよい。つまり、温湿度センサは、真空断熱材の内部に侵入する水蒸気圧の問題を確認する等の必要な場合に応じて、小型無線真空計10に含めることができる。さらに、各種分子種(二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、VOC等)を計測するセンサも小型無線真空計10に含めることができる。すなわち、小型無線真空計10は、温度センサ、湿度センサ、各種分子種を計測するセンサ及び内部時計のうち少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0039】
CPU・無線送信ユニット4に接続されたバッテリー6は、CPU・無線送信ユニット4及び該ユニットに電気的に接続されたその他の部品(素子)に電力を供給することができる。また、バッテリー6は、DC/DCコンバータ7を介して充電ユニット8に接続され、充電ユニット8は、バッテリー6を充電するための電力を供給することができる。DC/DCコンバータ7は、充電ユニット8から得られる電圧を、バッテリー6の充電に必要な電圧に変換することができる。
【0040】
充電ユニット8は、充電機構としてペルチェ素子又は非接触給電用のコイルを採用することができる。充電ユニット8の充電機構としてペルチェ素子を用いた場合には、ペルチェ素子に熱が加えられることで、ゼーベック効果により生じた電力を、DC/DCコンバータ7を介してバッテリー6に供給することができる。例えば、バッテリー6として、85mAhの小型リチウムイオンポリマー(LiPo)バッテリーを採用した場合には、充電ユニット8のペルチェ素子に80℃の熱を約5分間加えることで、当該小型LiPoバッテリーの充電を完了することができる。80℃の熱を約5分間加える程度であれば、真空断熱材にはほぼダメージを与えずに充電することができる。
【0041】
充電ユニット8は、充電機構として非接触給電用のコイルを用いた場合、電磁誘導方式又は磁界共鳴方式によって生じた電力を、DC/DCコンバータ7を介してバッテリー6に供給することができる。例えば、電磁誘導方式の場合、充電ユニット8には受電側コイルが含まれ、真空断熱材の外部の充電器等に含まれる送電側コイルと、受電側コイルとの間で発生する誘電磁束を利用して生じた電力を充電ユニット8で受け取ることができる。
【0042】
また、電界共鳴方式の場合、受電側コイルは受電側共振回路に含まれ、送電側コイルは送電側共振回路に含まれる。充電器送電側共振回路に含まれる送信側コイルに電流が流れることにより発生した磁場の振動が、同じ周波数で共振する受電側共振回路に含まれる受信側コイルに伝わることで、磁界共鳴させて生じた電力を充電ユニット8で受け取ることができる。
【0043】
小型無線真空計10は、真空断熱材の減圧密閉された内部に設けられる。真空断熱材は、芯材と、該芯材を覆うガスバリア性フィルムと、該ガスバリア性フィルムの外側に設けられた外層とを含み、小型無線真空計10は、真空断熱材の外層よりも内側、好ましくは、ガスバリア性フィルムの内側に含まれる。
【0044】
このように、小型無線真空計10は、外部電源との電気的な接続なしにバッテリーを充電できる充電機構を含む充電ユニットを設けたことで、小型無線真空計10が真空断熱材に内蔵されても、長期的な運用に耐え得る十分な電力を継続して供給することができる。
【0045】
真空断熱材の芯材としては、真空断熱材分野で用いられているものを特に制限なく用いることができる。具体例としては、連続気泡硬質ポリウレタンフォーム、無機繊維、有機繊維、無機粉体、エアロゲル等を使用することができる。ハンドリング、断熱性の観点から、シート状に形成された無機繊維が好ましい。無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナやシリカ等のセラミック繊維、スラグウール繊維、ロックウール繊維等が挙げられる。これらの中では、断熱性、成形加工性等の観点から、ガラス繊維が好ましい。なお、芯材の耐熱性を向上させるため、ステンレス鋼、クロム−ニッケル系合金、高ニッケル合金、高コバルト合金等の耐熱性金属繊維を少量混合することもできる。芯材は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0046】
本発明の一実施形態に係る真空断熱材において、吸着剤が芯材と共に袋状のガスバリア性フィルムに封入されてもよい。吸着剤は、例えば、窒素、酸素、二酸化炭素等のガス、及び/又は水分を吸着する物質である。吸着剤としては、酸化カルシウム、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、酸化バリウム、バリウム−リチウム合金又はこれらの混合物等が挙げられる。ガス吸着性能及び生産性の観点から、酸化カルシウムが好ましい。吸着剤は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0047】
本発明に用いられるガスバリア性フィルムは、ガスバリア性を有するフィルムであれば特に制限はないが、シール層及びガスバリア層を積層したものが好ましく、芯材に接する側から順にシール層、ガスバリア層及び1層以上の樹脂フィルム層を積層したものがより好ましい。ガスバリア性フィルムの厚さは、特に制限はないが、通常50〜200μmであり、好ましくは60〜180μmである。
【0048】
ガスバリア層は、ガスを透過しない層であり、真空断熱材の真空度の低下を防ぐ観点から用いられる。ガスバリア層としては、金属箔や、樹脂フィルム上に蒸着膜を形成した蒸着フィルム等が挙げられる。蒸着フィルムは、蒸着法、スパッタ法等により、基材上に蒸着膜を形成することにより得られる。ガスバリア性及び経済的観点から、金属箔及び蒸着材料のいずれにおいても、好ましくは、アルミニウムが用いられる。
【0049】
蒸着フィルムの基材となる樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、メタキシリレンジアミン・アジピン酸縮合体等のポリアミド樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、アクリル酸エステルとメチルメタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニルを部分ケン化した物等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂から製造されるフィルムが用いられる。
【0050】
ガスバリア層の厚さは特に制限はないが、金属箔の場合は、1〜60μmであり、好ましくは5〜30μmである。厚さが1μm以上であれば、金属箔の強度が高く、ピンホールの形成等が抑えられる。蒸着フィルムの場合は、ガスバリア層の厚さは、10〜60μm、好ましくは12〜30μmであり、そのうち蒸着膜の厚さは、0.2〜3.0μm、好ましくは0.5〜2.0μmである。蒸着膜の厚さが0.2μm以上であればガスバリア性を発揮でき、3.0μm以下であれば蒸着膜形成の技術的な困難さは大きくはない。ガスバリア層に用いられる金属箔や蒸着フィルムは公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0051】
シール層は、加熱により融着可能な樹脂である。熱融着可能な樹脂であれば、特に制限はない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアクリロニトリル、PET、エチレン−ビニルアルコール共重合体、又はそれらの混合体からなるフィルム等を用いることができる。好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアルコール共重合体が用いられる。ポリエチレンは、0.90〜0.98g/cm
3の密度のものが好ましい。ポリプロピレンは、0.85〜0.95g/cm
3の密度のものが好ましい。シール層の厚さは特に制限はないが、通常10〜100μmであり、好ましくは25〜60μmである。シール層に用いられる樹脂は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0052】
樹脂フィルム層は、ガスバリア層を保護する目的で、ガスバリア層上に任意に設けられる層である。樹脂フィルム層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、メタキシリレンジアミン・アジピン酸縮合体等のポリアミド樹脂;ポリビニルアルコール、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、アクリル酸エステルとメチルメタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂から製造されるフィルムが用いられる。好ましくは、PET、ナイロン6又はナイロン66である。これらの樹脂フィルムには、有機質、無機質のフィラーを添加することもできる。これらの樹脂は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。樹脂フィルム層には、ガスバリア性フィルムのガスバリア性能を更に向上させるために、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルアルコール等のビニルモノマーを重合、共重合させて得られるガスバリア性樹脂を塗布したり、積層したり、それらの粒子を樹脂フィルム層中に混合分散させることもできる。樹脂フィルム層の厚さは特に制限はないが、通常5〜40μmであり、好ましくは10〜30μmである。樹脂フィルム層に用いられる樹脂は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0053】
ガスバリア性フィルムは、袋状に形成される。袋状とは、中に芯材及び吸着剤を入れられる形状である。ガスバリア性フィルムを袋状に形成する工程には、特に制限はない。例えば、ガスバリア性フィルムがシール層有する場合に、互いのシール層が接するように2枚のガスバリア性フィルムを重ねて、芯材及び吸着剤を納める部位の周りを、芯材及び吸着剤の挿入のための開口部を残して熱融着することにより、ガスバリア性フィルムを袋状に形成してもよい。
【0054】
本発明に用いられる外層は、紙及び/又は不織布である。紙とは、植物繊維その他の繊維を膠着させて製造した物である。有機繊維及び無機繊維のいずれも紙の材料として使用し得る。紙の材料となる有機繊維としては、例えば、植物由来の繊維、合成繊維等があり、紙の材料となる無機繊維は、例えば、鉱物、金属からなる繊維、合成繊維等がある。不織布とは、繊維シート、ウェブまたはバットで、線が一方向またはランダムに配向しており、交流、及び/又は融着、及び/又は接着によって繊維間が結合されたものである。有機繊維及び無機繊維のいずれも不織布の材料として使用し得る。
【0055】
不織布の材料となる有機繊維は天然繊維及び化学繊維を含み、天然繊維としては綿、羊毛、フェルト、麻、パルプ、絹等があり、化学繊維としてはレーヨン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル繊維、ビニロン、アラミド繊維、アセテート等がある。不織布の原料となる無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、鉱物繊維等がある。好ましい材料は、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンである。紙及び不織布は公知であり、市場において容易に入手することができるか、又は調製可能である。
【0056】
外層の厚さは、0.01mm〜3mmであり、好ましくは0.03〜0.5mmである。外層の目付は特に制限はないが、好ましくは10〜200g/m
2であり、より好ましくは20〜100g/m
2である。
【0057】
外層は、例えば、ラミネートによって、ガスバリア性フィルムの、芯材と接しない側(真空断熱材の外側)に接着される。ラミネートの方法としては、ドライラミネート、押し出しラミネート、ホットメルトラミネート、ウェットラミネート、サーマルラミネート等が挙げられる。
【0058】
本発明の一実施形態に係る真空断熱材は、板状である。板状とは、薄く平たい形状を言い、対向する2つの面及びこれら2つの面を接続する側周面を有する。外層は、板状の真空断熱材の少なくとも片面の一部を覆っており、好ましくは、使用する際に熱源側に配置される面の縁を枠状に覆っている。外層は、好ましくは真空断熱材の側周面も覆っており、より好ましくは真空断熱材の全面(すなわち、両面及び側周面)を覆っている。また、複数の真空断熱材を組み合わせて用いる場合には、真空断熱材同士の継ぎ目部分における熱の漏洩を防ぐために、側周面を外層で覆うことが有利である。
【0059】
以下、本発明の真空断熱材について、実施例により詳細に説明する。しかしながら、本発明は、実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0060】
小型無線真空計の精度確認試験
図1に示したブロック図と実質的に同一な小型無線真空計10を構成し、圧力センサ1としてMEMS加工された熱電対型真空センサを採用した。DC/DCコンバータ7として、Linear Technology社製LTC3105を採用した。当該DC/DCコンバータは、250mVの小電圧で起動する昇圧コンバータであり、最大5.0Vまで昇圧可能である。バッテリー6は、過放電しない電池であればよく、例えば、85mAhの小型リチウムイオンポリマー(LiPo)バッテリーを採用した。LiPoバッテリーのサイズが大きくなれば、LiPoバッテリーの容量は増える関係にあるが、本実施例では、真空断熱材に内設可能な小型無線真空計10を実現するために、サイズが大きくなるのを抑えるという観点から、LiPoバッテリーは、85mAhの電池を採用した。当然のことながら、真空断熱材の断熱性能を阻害することがなければLiPoバッテリーのサイズを変えて、ほかの容量の電池を選択してもよい。
【0061】
真空断熱材内部に小型無線真空計を入れ、真空断熱材には真空用排気穴を設ける為配管を接続し、
図2に示すような接続を行った。
図2は、小型無線真空計の精度確認試験の装置構成を示すブロック図である。真空断熱材20の真空用排気孔に配管が接続治具33によって取り付けた。小型無線真空計の精度確認試験の手順は次のとおりである。
1)真空容器用のバルブ32を開き、真空ポンプ30を作動させて真空断熱材内部の減圧を行う。
2)真空断熱材20の内部の圧力が0.5Paになるまで真空引きして一旦バルブ32を閉じる。
3)その後、徐々にバルブ32を開いて真空断熱材20の内部の圧力を調整し、ピラニ真空計31の値と小型無線真空計10から出力される値を比較する。
【0062】
小型無線真空計の精度確認試験の結果、小型無線真空計10の出力値とピラニ真空計の出力値との関係をプロットしたグラフを
図3に示す。
図3は、小型無線真空計の精度確認試験の結果を示すグラフである。グラフの縦軸は、小型無線真空計の圧力(小型圧力計圧力)(Pa)であり、グラフの横軸はピラニ真空計の圧力(ピラニ出力)(Pa)である。四角形(■)でプロットした線が、ピラニ真空計の圧力で小型無線真空計の圧力を割った値(小型無線真空計/ピラニ出力)を表し、ひし形(◇)でプロットした線が、ピラニ真空計の圧力でピラニ真空計の圧力を割った値(ピラニ出力/ピラニ出力)を表す。
【0063】
ひし形(◇)でプロットした線は、ピラニ出力/ピラニ出力の値であるから1.0を示す直線となる。ピラニ真空計31は、真空断熱材20の外部に配置され、真空断熱材20の内部の圧力を高精度で測定することが可能であることから、ピラニ真空計31で測定される値は、小型無線真空計10で測定される値の理想値とみなすことができる。真空断熱材20の内部に配置された小型無線真空計10で測定された値が、ピラニ真空計31で測定された値と同じになれば、四角形(■)でプロットされる小型無線真空計/ピラニ出力の値も1.0となる。つまり、四角形(■)でプロットされる小型無線真空計/ピラニ出力の値が、ひし形(◇)でプロットされるピラニ出力/ピラニ出力の値に近づけは、小型無線真空計10で測定される値は、理想値(ピラニ真空計31で測定される値)に近い値ということである。
【0064】
図3に示す小型無線真空計10の精度確認試験の結果より、小型無線真空計10が示す約300Pa程度までの圧力値が、ピラニ真空計31が示す圧力値とほぼ一致した。つまり、約0Paから約300Pa程度までの範囲では、真空断熱材内部の真空度を正しく測定することが可能であり、その真空度から熱伝導率を予測することが可能となる。繊維系真空断熱材では、当該圧力範囲がカバーできていれば断熱性能の寿命をカバーできると考えられる。なお、当該圧力範囲よりも大きな圧力を測定、及び運用したい場合はMEMS加工されたピエゾ抵抗型真空計を運用することが好ましい。MEMS加工されたピエゾ抵抗型真空計では高真空領域の計測が不確かであり、不十分であるが、約700Pa以降の圧力の計測では十分な精度を得ることができる。
【0065】
ピラニ真空計及びピエゾ抵抗型真空計の他に、圧力センサ10として、クリスタル真空計(クリスタルゲージ)を用いることもできる。一般に、クリスタル真空計は、水晶振動子の共振インピーダンスが圧力に応じて変化するという現象を利用することで、大気圧から1×10
-2Paまでの広い範囲にわたって、再現性が高く、また大気圧付近での安定性の高い測定が可能である。好ましい1つの実施形態としては、圧力センサ10として、熱電対型真空センサ、ピエゾ抵抗型真空センサ及びクリスタル真空センサの中から選択された2つ以上の真空センサを併用したものを採用することもできる。
【0066】
このように、真空断熱材に含まれる小型真空計の圧力センサに熱電対型真空センサ又はピエゾ抵抗型真空センサ又はクリスタル真空センサ又はそれらを併用したものを採用したことで、小型無線真空計でありながら、真空断熱材の内部に挿入することが困難なピラニ真空計等の大きな真空計と同等の測定精度を実現することができる。
【0067】
小型無線真空計を備えた真空断熱材の長期断熱性能試験
一般に、真空断熱材は、内部に空気が透過すると、繊維間で作られる(又は粒子間で作られる)セルによって空気の移動を阻害することができる。しかし、センサを真空断熱材の内部に入れることで、センサの体積分のセルをつぶすことになり、長期性能面で不具合が生じる可能性がある。本試験では、小型無線真空計10に対応する異なるサイズ(体積)のセンサを、真空断熱材内部に挿入して、断熱性能の低下度合について確認を行った。真空断熱材のサンプル及びセンサのサイズ、真空断熱材の材料及び製造法等の概要は、次の表のとおりである。
【0068】
【表1】
ここで、エージングとは真空断熱材の性能低下を速める為に行われる手法であり、一般的には高温加熱で行われる。
【0069】
長期断熱性能試験のために作成した真空断熱材の試験体の一覧を次の表に示す。真空断熱材No1の試験体は、センサを内蔵しない単なる真空断熱材であり、水分吸着剤(CaO 20g)を用いたものである。真空断熱材No2から6の試験体は、センサ1からセンサ5をそれぞれ内蔵した真空断熱材であり、水分吸着剤を用いたものである。真空断熱材No7からNo11の試験体は、センサ1からセンサ5をそれぞれ内蔵した真空断熱材であり、水分吸着剤の他に、ガス吸着剤(5g)を用いたものである。
【表2】
【0070】
真空断熱材No1から11の試験体に対して、表1に示したエージング条件で14日間エージングを行った。エージングによる長期断熱性能試験の0日目、7日目、14日目での各試験体の熱伝導率(W/mK)の値と共に、各試験体の性能評価を次の表に示す。
【表3】
【0071】
表3中の性能評価の判断において、「◎」はセンサを搭載していない真空断熱材No1の試験体の14日目の熱伝導率よりも十分に良い(例えば、真空断熱材No1よりも、熱伝導率が、0.0002以上低い)試験体を示す。「〇」はセンサを搭載していない真空断熱材No1の試験体の14日目の熱伝導率と同等(例えば、真空断熱材No1の熱伝導率±0.0002未満)の試験体を示す。「△」は、センサを搭載していない真空断熱材No1の試験体の14日目の熱伝導率よりも高い(例えば、真空断熱材No1よりも、熱伝導率が、0.0002以上高い)試験体を示す。
【0072】
図4は、真空断熱材の長期断熱性能試験の結果を示すグラフである。
図4に示す折れ線グラフは、エージングによる長期断熱性能試験の0日目、7日目、14日目での各試験体の熱伝導率(W/mK)の値を示す。表3及び
図4に示す熱伝導率の値の変化から、センサを搭載していない真空断熱材No1の試験体の性能低下に対して、センサ1からセンサ4を搭載した真空断熱材No2からNo5の試験体は、性能評価が「〇」であり、エージングによりほぼ同一の性能低下を引き起こしたことが分かる。
【0073】
センサ5を搭載した真空断熱材No6の試験体は、性能評価が「△」であり、センサを搭載していない真空断熱材No1の試験体と比較して、若干性能低下がみられた。しかしながら、センサ5を搭載し、ガス吸着剤を用いた真空断熱材No11の試験体では、性能評価が「〇」であり、ガス吸着剤を用いたことで断熱性能の改善がみられた。同様に、センサ1からセンサ4を搭載し、ガス吸着剤を用いた真空断熱材No7から10の試験体では、性能評価が「◎」であり、センサを搭載していない真空断熱材No1の試験体よりも熱伝導率が低くなり、断熱性能の向上がみられた。
【0074】
センサ1からセンサ5の各々と真空断熱材との体積比率は次の表のとおりである。表中の体積比率は、真空断熱材の体積からセンサ(センサ1から5のいずれか)の体積を引いた体積を真空断熱材の体積で割った値である。つまり、
体積比率=(真空断熱材の体積−センサの体積)/(真空断熱材の体積)
で求められる。
【表4】
【0075】
表3に示す性能評価の結果及び表4に示す体積比率に鑑みれば、真空断熱材にガス吸着剤を用いた仕様であれば、センサのサイズ(体積)が真空断熱材の体積の1割でも動作が可能であるが、ガス吸着剤を用いていない仕様も満たす場合はセンサのサイズ(体積)は、真空断熱材の体積の7.5%以下にするのが望ましく、より望ましくは5.0%以下であることが良い。
【0076】
実際に使用する小型無線真空計10は、圧力センサに充電ユニット8等を搭載するため、表4中のセンサ1の体積の約2.5倍程(4.75 x 10
-5m
3程)の大きさとなるため、上述のとおり体積比率が7.5%以下、好ましくは5.0%以下となるように真空断熱材のサイズ(体積)を決めることが望ましい。つまり、本発明の一実施形態に係る小型無線真空計の体積は、真空断熱材の体積の7.5%以下であり、より好ましくは、5.0%以下である。
【0077】
このように、真空断熱材に含まれる小型無線真空計の圧力センサをMEMSで形成し、小型無線真空計の体積を真空断熱材の体積の7.5%以下、好ましくは5.0%以下となるように真空断熱材を構成したことで、小型無線真空計の表面積が小さくなり、真空下で小型無線真空計に加わる力を弱くすることができ、小型無線真空計を保護することができる。そして、小型無線真空計を上述のとおり極力小さく構成したことで、真空断熱材の内部に繊維で構成された多数の独立したセルのスペースを埋めずに、ガス流入を防止して断熱性能を低下させない十分な部屋の容積を確保することができる。
【0078】
本試験で用いた真空断熱材の厚みは15mmであり、真空断熱材の内部に搭載するために、小型無線真空計の厚み12mm以下であることが望ましい。また、真空断熱材の厚みは、25mm以下であり、かつ、小型真空計の厚みよりも厚ければよい。