特許第6961448号(P6961448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961448
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】多重制御式の液圧回路
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/05 20060101AFI20211025BHJP
   F16K 17/18 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   F15B11/05 A
   F16K17/18
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-196883(P2017-196883)
(22)【出願日】2017年10月10日
(65)【公開番号】特開2018-63048(P2018-63048A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2020年6月30日
(31)【優先権主張番号】1659756
(32)【優先日】2016年10月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル リシェ
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−224301(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0121256(US,A1)
【文献】 特開2008−202704(JP,A)
【文献】 米国特許第5315826(US,A)
【文献】 特開2009−204086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22
F15B 21/14
F16K 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ(1)により吐出された作動液を、複数の消費器(Ri)の負荷圧に応じて制御ライン(LS)の圧力(PLS)により制御された流量でかつ調整された圧力(Pp)で前記消費器(Ri)に供給する多重制御式の液圧回路であって、
前記回路は、前記消費器(Ri)にそれぞれ接続された複数の液圧モジュール(Mi)から形成されており、該液圧モジュール(Mi)は、分配器(11)を有し、該分配器(11)の、オペレータにより作動させられるスプール(12)が、前記消費器(Ri)に供給される可変の流量を圧力補償器(15)を介して調整し、該圧力補償器(15)は、入口(U)で前記分配器(11)の可変絞り(20)の出口に接続されていて、出口(V)で逆止弁(155)を介して、接続された前記消費器(Ri)への供給路に接続されており、
前記圧力補償器(15)は、その前記入口(U)と前記出口(V)との間の連通を制御するプランジャ(150)を有し、
前記プランジャ(150)の一方の面(152)が、前記制御ライン(LS)の制御圧(PLS)にさらされており、該制御圧(PLS)と前記ポンプの前記圧力(Pp)との間の差に相当する一定の圧力差に従って前記プランジャを移動させるために、該プランジャ(150)の他方の面(151)が、前記圧力を前記分配器(11)の前記出口に伝達し、
前記プランジャ(150)は、該プランジャ(150)の位置に応じて前記入口(U)のラインと前記出口(V)とを連通させる側方通路(30)を有する、
多重制御式の液圧回路において、
前記複数の液圧モジュール(Mi)は、それぞれ孔(154)を有しており、前記制御ライン(LS)は、前記孔(154)の上部を貫通し、前記出口(V)は前記孔(154)の面から延びており、前記入口(U)は前記孔(154)の下方の部分に開口しており、前記側方通路(30)は、前記孔(154)内部の前記プランジャ(150)の位置に応じて、前記入口(U)と前記出口(V)とを可変断面に沿って連通させ、
前記圧力補償器(15)は、前記孔(154)内部における前記プランジャ(150)の位置にかかわらず、前記出口(V)を前記制御ライン(LS)に接続する、絞り(33,33a)を備える流体接続路(31,32)を有することを特徴とする、多重制御式の液圧回路。
【請求項2】
前記流体接続路(31,32)は、前記プランジャの、前記出口(V)に常に向かい合っている片側の面と、前記プランジャ(150)の、前記制御ライン(LS)に開口している上部(152)とを接続することによって、前記プランジャ(150)を貫通していることを特徴とする、請求項1記載の液圧回路。
【請求項3】
前記補償器(15)は、
前記入口(U)を起点としていて、前記分配器(11)から到来した流量に応じた前記プランジャ(150)の平衡位置に依存して変化する断面により前記出口(V)に側方で開口する出口を有する前記側方通路(30)と、
前記分配器の前記出口の圧力が前記制御圧(PLS)よりも低いときに、前記プランジャの押下げ位置で前記側方通路(30)用の前記出口を閉鎖する分離領域(34)と、
前記プランジャ(150)が押下げ位置にあるときに開放し続けている、前記分離領域(34)の上側で前記出口(V)に開口している前記流体接続路(31,32)と、
を有することを特徴とする、請求項1記載の液圧回路。
【請求項4】
前記流体接続路(31,32)は、横方向通路(32)であって、該横方向通路を前記側方通路(30)の開口から分離する分離領域(34)の上側で前記出口(V)に開口している横方向通路(32)と、前記プランジャ(150)の上部(152)に開口している長手方向通路(31)と、から形成されていることを特徴とする、請求項1記載の液圧回路。
【請求項5】
前記接続路の前記絞り(33)は、前記長手方向通路(31)内に形成されていることを特徴とする、請求項記載の液圧回路。
【請求項6】
前記流体接続路(31a,32a)は、横方向通路(32a)であって、前記側方通路(30)の開口との間に設けられた分離領域(34a)の上側で前記出口(V)に開口している横方向通路(32a)と、上部(152a)の下側で側方に開口している上方の横方向通路(35a)に開口している長手方向通路(31a)と、から形成されており、前記絞り(33a)は、前記上方の横方向通路(35a)を前記プランジャの前記上部(152a)に接続していて、前記ライン(LS)に開口していることを特徴とする、請求項1または2記載の液圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプにより吐出された作動液を、複数の消費器の負荷圧に応じて制御ラインの圧力により制御された流量でかつ調整された圧力で前記消費器に供給する多重制御式の液圧回路であって、
− 前記回路は、前記消費器にそれぞれ接続された複数の液圧モジュールから形成されており、該液圧モジュールは、分配器を有し、該分配器の、オペレータにより作動させられるスプールが、前記消費器に供給される可変の流量を圧力補償器を介して調整し、該圧力補償器は、入口で前記分配器の可変絞りの出口に接続されていて、出口で逆止弁を介して、接続された前記消費器への供給路に接続されており、
前記圧力補償器は、その前記入口と前記出口との間の連通を制御するプランジャを有し、
前記プランジャの一方の面が、前記制御ラインの制御圧にさらされており、該制御圧と前記ポンプの前記圧力との間の差に相当する一定の圧力差に従って前記プランジャを移動させるために、該プランジャの他方の面が、前記圧力を前記分配器の前記出口に伝達し、
前記プランジャは、該プランジャの位置に応じて前記入口のラインと前記出口とを連通させる側方通路を有する、
多重制御式の液圧回路に関する。
【0002】
背景技術
このような多重制御式の液圧回路はすでに公知であり、特に欧州特許第0566449号明細書には、圧力の補償と最大圧の選択とを組み合わせた液圧式の分配器が記載されている。
【0003】
この分野で言及されている先行技術は興味深いが、このように制御される液圧回路にさらに柔軟性および有効性を与えるために、特に移行段階に対する液圧式の分配器の動作を改善することが望ましい。
【0004】
発明の概要および利点
そのために、本発明は、上述した形態の多重制御式の液圧回路において、前記圧力補償器は、前記プランジャの位置にかかわらず、前記出口を前記制御ラインに接続する、絞りを備える流体接続路を有することを特徴とする、多重制御式の液圧回路を目的とする。
【0005】
この流体接続路が設けられていることによって、圧力補償器が多重制御式の液圧回路に特定の動作の柔軟性を与える。制御圧が、負荷が最も大きい消費器によって制御ラインに加えられる最大圧に制限されないからである。
【0006】
圧力補償器を介して消費器の回路同士の間で流体を入れ換えることにより、圧力のレベルが変動し、一定値に固定されない。
【0007】
別の有利な特徴によれば、前記流体接続路は、前記プランジャの、前記出口に常に向かい合っている片側の面と、前記プランジャの、前記制御ラインに開口している上部とを接続することによって、前記プランジャを貫通している。
【0008】
一般的な意味で持続的な接続路である流体接続路を実現することは、実現が容易であるため、技術的に極めて興味深い解決手段である。
【0009】
別の特徴によれば、前記補償器は、
前記入口を起点としていて、前記分配器から到来した流量に応じた前記プランジャの平衡位置に依存して変化する断面により前記出口に側方で開口する出口を有する前記側方通路と、
前記分配器の前記出口の圧力が前記制御圧よりも低いときに、前記プランジャの押下げ位置で前記側方通路用の前記出口を閉鎖する分離領域と、
前記プランジャが押下げ位置にあるときに開放し続けている、前記分離領域の上側で前記出口に開口している前記流体接続路と、
を有する。
【0010】
別の有利な特徴によれば、前記流体接続路は、横方向通路であって、該横方向通路を前記側方通路の開口から分離する分離領域の上側で前記出口に開口している横方向通路と、前記プランジャの上部に開口している長手方向通路と、から形成されている。
【0011】
本発明によれば、前記接続路の前記絞りは、前記長手方向通路内に形成されていることが好ましく、これによって、絞りの製作が容易になり、絞りが横方向通路に設けられる形態よりも好ましい。実際、横方向通路は、プランジャの両側を開放して補償器の出口との連通を確実にする。
【0012】
別の有利な特徴によれば、前記流体接続路は、横方向通路であって、前記側方通路の開口との間に設けられた分離領域の上側で前記出口に開口している横方向通路と、上部の下側で側方に開口している上方の横方向通路に開口している長手方向通路と、から形成されており、前記絞りは、前記上方の横方向通路を前記プランジャの前記上部に接続していて、前記ラインに開口している。
【0013】
この変化実施形態は、制御ラインの作動液をピストンプランジャおよび他の消費器の回路に流出させる他の流体接続路に設けられた絞りの通路区分と比較して、メイン回路のピストンプランジャを接続管路に接続する絞り区分を変更するという利点を有する。
【0014】
全体として、制御管路と補償器の出口との間の持続的な流体接続により、回路を制御するために、動作に極めて有利な柔軟性を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付の図面に示した多重制御式の液圧回路の例を用いて本発明をさらに詳細に以下に説明する。
図1】2つのモジュールを有する多重制御式の液圧回路を示す図である。
図1A図1の回路のモジュールの一例を拡大して図式化した詳細図である。
図2A】公知の圧力補償器を停止位置で示す断面図である。
図2B】公知の圧力補償器を平衡位置で示す断面図である。
図2C】公知の圧力補償器を行程終端位置で示す断面図である。
図3A】本発明による圧力補償器の第1の実施の形態を停止位置で示す図である。
図3B】本発明による圧力補償器の第1の実施の形態を平衡位置で示す図である。
図3C】本発明による圧力補償器の第1の実施の形態を行程終端位置で示す図である。
図4A】本発明による圧力補償器の第2の実施の形態を停止位置で示す図である。
図4B】本発明による圧力補償器の第2の実施の形態を平衡位置で示す図である。
図4C】本発明による圧力補償器の第2の実施の形態を行程終端位置で示す図である。
図5】2つのモジュールから形成された多重制御式の液圧回路の一例を極めて概略的に示す図である。
【0016】
図面の説明において、「下」および「上」という表現は、図面の方向に対応している。
【0017】
発明の実施の形態の説明
図1には、リザーバ2内の液体を取り出す調整可能なポンプ1により吐出された、調整された圧力下の作動液を消費器R1、Ri(i=1,2,…)に供給する多重制御式の液圧回路100が示してある。
【0018】
液圧回路100により制御される装置によって個数が異なる消費器Riは、例えば複動シリンダまたは単動シリンダであるが、アクチュエータまたは回転モータであってもよい。作動液は、消費器から流出すると、回路を通ってリザーバ2に戻される。
【0019】
多重制御式の液圧回路100は複数のモジュールMi(i=1,2,…)から形成され、これらのモジュールはそれぞれ消費器Riに接続され、作動液を調整された圧力Prで供給する管路Pと、リザーバ2への戻し管路Tとに並列接続されている。供給管路Pは、圧力を最大レベルPmに制限する圧力制限器3を有し、この圧力制限器3の出口はリザーバ2に接続されている。
【0020】
ポンプ1は制御圧ラインLSによって制御され、この制御圧ラインLSは、モジュールMiに接続されていて、消費器Riの負荷圧に応じてモジュールにより供給される制御圧Pcを伝達する。
【0021】
ラインP,LS,Tとも呼ばれる管路は、積層したプレートの形態のモジュールMiを貫通した孔によって実現される。モジュールMiの積層体は、ポンプ1およびリザーバ2に接続するための入口モジュールMoと、管路を閉じる終端モジュールMexとを備えている。
【0022】
モジュールMiは全て同じ構造であるので、説明もモジュールMiおよびその消費器Ri(i=1…)に限定する。
【0023】
各モジュールMiは分配器11を備え、分配器のスプール12は、オペレータが制御する消費器Riを用いて実施される操作に応じて、オペレータによって作動させられる。オペレータは、消費器Riに供給される液体の流量を調整する。この液体は、スプール12(その絞り20)の単純な操作によって、分配器11に組み合わされた圧力補償器15を介して供給される。一般的な機能が公知である圧力補償器15について、以下に言及する。
【0024】
このように、各モジュールMiは、能動出口16、制御圧Pcの入口17(出口)(ラインLS)、圧力下にある作動液の入口18(ラインP)およびリザーバ2に向かう出口19(ラインT)を有する。
【0025】
慣例により、消費器Riの作動液が出て行く/戻る2つの接続部が、1つの能動出口とみなされる。「出て行く」方向のみが重要であり、消費器Riが制御される方向によって2つの管路が逆転されるからである。
【0026】
作動液を供給する入口18は、分配器11を通ってラインUを介して圧力補償器15の入口に接続され、この圧力補償器の出口Vは、戻りながら分配器11を通って消費器Riに作動液を供給する。したがって、分配器は、消費器Riが複動型である場合には、消費器の一方または他方のチャンバに作動液を供給するために、方向転換の役割を果たし、消費器が単動型である場合には、一方の液圧チャンバにのみ作動液を直接供給し、方向転換の機能は有さない。方向転換の機能は、スプール12によって実現される。
【0027】
本明細書で使用した従来例によれば、スプール12は、消費器Riの入口と出口とを遮断する中立位置に対する中間区分S1を有する。この区分S1は、スプール12の位置決めに相応して、消費器のチャンバA,Bを直接接続するか(供給およびリザーバへの戻り)またはチャンバA,Bへの供給を入れ換えて接続するために、可変断面の通路(絞り20)を有する区分S2,S3により両側から挟まれる。逆転区分S3は、単動型の消費器には設けられない。
【0028】
モジュールMiの液圧回路はLUDV方式のもので、分配器11の絞り20の下流に補償器15があり、圧力補償器15が絞り20の上流に設置されるLS方式とは逆である。ただし、いずれの組付けの事例も、圧力制御ラインを従来どおり「制御圧ラインLS」と称する。
【0029】
図1Aは、単一のモジュールMiを拡大して簡略的に示している。このモジュールMiでは、ラインP,LS,T同士の間の管路の線および分配器11ならびに補償器15について、能動ライン、つまり、液体循環ラインおよび圧力伝達ラインだけを残している。そのために、分配器11の図に残されているものは、スプール12の可変断面のライン(絞り20)を下流に向かってラインUを介して補償器15の入口U1に接続したものおよび補償器の面151に圧力を伝達するための接続路U2だけである。ラインVは、補償器15の出口から消費器Riまでを接続する接続路である。ラインLSは、作動液を通流させるために、入口LS1に接続され、圧力Pcを伝達するために、分岐路LS2を介してプランジャ150の面152に接続される。この面152は、さらに、予荷重ばね153の作用を受けることができる。
【0030】
プランジャ150の面151に作用するラインUの圧力Puは、ラインUとラインVとの間の通路を閉鎖する方向に作用する面152にかかる圧力とは逆の押圧力を開放方向に加える。
【0031】
したがって、簡略化した線は、完全に透明である分配器11を再び通過することなしに、補償器15の出口から能動出口16に向かう直接的な接続路を示しており、分配器を通る接続路は、消費器のチャンバへの供給を逆にするためにしか必要とならない。
【0032】
消費器Riの液体の戻し路は、消費器Riの液体がリザーバ2に、例えば直接戻る無圧の液体であるため、省略されている。
【0033】
この簡略図では、補償器15のプランジャ150が、図3A〜3Cまたは図4A〜4Cの3つの位置にそれぞれ示した本発明の補償器のプランジャである。
【0034】
モジュールMiは、消費器Ri(i=1,2,…,n)を制御する多重制御式の液圧回路100(図1)のモジュール(Mi=1,2,…,n)の代表である。消費器Riは、必然的にそれぞれ異なる負荷(圧)を有し、公知の機能によれば、ある特定の瞬間に最も高い負荷を有する消費器Rjを備えたモジュールMjは、この負荷を制御圧PLSとしてポンプ1にかけ、このポンプは、この圧力に応じて、それぞれ異なるモジュールMiに作動液を供給する。
【0035】
この構成では、モジュールMjにより加えられた制御圧PLSが、各分配器11の接続部を介した等しい圧力差によって他のモジュールMiにおいて有効になり(つまり、このモジュールMiの分配器が、このモジュールに接続された消費器をアクティブに制御し)、その結果、分配器は、ポンプ1によりラインPに吐出された流量を、各モジュールMiの分配器11のスプール12によって調整された単一の通路断面(絞り20)に応じて分配する。この分配は決まっているわけではない。多重制御式の液圧回路100では、一部のモジュールが停止しているときに、他のモジュールが作動しているため、モジュールMiの機能性が変化するからである。つまり、消費器の負荷が最大になっている優位のモジュールは、ポンプ1を制御するために、毎回圧力を加え、作動しているモジュールの各スプール12の通路断面の新たな断面積に応じて、その後、その流量が上記と同じ条件で分配される。
【0036】
それぞれ異なるモジュールMiの状態が変化すると、圧力の変動が起こり、これによって、各モジュールMiの動作に急激な変動が生じる。これに対して、本発明は、優位のモジュールの負荷と他のモジュールとの間における先行技術による硬直化した関係を柔軟にすることによって、多重制御式の液圧回路100の動作を流動化して改善している。
【0037】
この状況を詳述するために、本発明による圧力補償器(図3A〜3Cおよび図4A〜4C)と比較して、以下に圧力補償器を一般的に説明する(図2A〜2C)。
【0038】
図2A〜2Cは、初期位置(図2A)、平衡位置(図2B)および行程終端位置(図2C)における公知の圧力補償器25を備えたモジュールMiを示している。
【0039】
補償器25は、プランジャ250を収容する孔154を有する。ラインLSは、孔154の上部を貫通し、流出管Vは孔154の面から延びており、流入管Uは孔154の下方の部分に開口している。管路Uは、分配器11のスプール12の通路20の出口に接続されている。管路Vは、モジュールMiの能動出口16および消費器Riに接続されている補償器25の流出管である。
【0040】
プランジャ250は、
側方通路230(または全周にわたって分配された通路の集合体)と、
プランジャ250の上面152の下側でプランジャの上部に設けられた横方向管路232に開口している、絞り233を備えた長手方向通路231と、
を有する。
【0041】
側方通路230は、孔154内でのプランジャ250の位置に応じて、管路Uと管路Vとを可変断面に沿って連通させる。
【0042】
LUDV方式で動作する公知の補償器25を以下に説明する。
【0043】
最初の始動時(図2A)には、プランジャ250が下側の位置にあり、圧力が、制御ラインLSにも、ポンプPのラインおよび管路Uにも存在せず、ポンプが停止している。
【0044】
ポンプ1を始動させると、出口に流量が圧力ΔP0で生じる。この圧力は、少なくとも1つの補償器25によって伝達され(回路の分配器を作動させると仮定する)、よって、制御ラインLSでは制御圧PLSがPLS=ΔP0となってプランジャ250の面152に到達し、ポンプ1の制御圧が、最終的に分配器が要求した圧力に到達するように段階的に上昇する。
【0045】
通常の動作では(図2B)、補償器25が平衡を保っている。つまり、2つの面151、152が同じ圧力になっている(面の作動面積は同等であると仮定される)ということである。そのため、分配器11の出口が、上面152に加えられた圧力PLSを下面151に伝達するプランジャ250により加えられた圧力PLSを受け、分配器の入口は、ポンプ1の出口の圧力Ppを受けている。
【0046】
ところが、圧力PLSで制御されたポンプ1は、作動液を圧力Pp=PLS+ΔP0で送り出す。ΔP0は、出口で圧力Ppにするために、ポンプが制御圧に加える圧力の差である。
【0047】
このように、分配器11は一定の圧力差ΔP1=ΔP0を受けるため、分配器の流量Q1は、分配器11を操作するオペレータによって制御される(可変)開口断面20に左右されるにすぎない。
【0048】
補償器25の入口Uと出口Vとの間の連通は、圧力差ΔP2=PV−Pu(=PLS)にさらされ、よって、この圧力差はΔP2=ΔP0である。この圧力差は一定である。
【0049】
そのため、平衡を保っている補償器25のUとVとの間の通路断面は、流量Q1が分配器11によって通路断面に課されるため、自動的に調整される。
【0050】
補償器25が、圧力PLSを補足することで作用する予荷重ばねを有している場合、状況はやや変化するが、上記の動作原理は同じままである。
【0051】
動作は、出口の圧力PVが負荷の圧力を下回っていないと仮定している。さもないと、逆止弁155が、消費器Riに作動液を供給するために、開口することができない。この事例は、液圧システムの動作開始時に相当し、そのとき、制御圧PLS=0であり、ポンプ1は圧力ΔP0で作動液を送出し始め、その後、段階的に制御圧PLSは、作動している消費器の最も高い負荷圧に達する。
【0052】
圧力Puによって発生し、面151に加えられる押圧力が、他方の面152に加えられる押圧力を上回った場合、プランジャ250が行程終端位置に到達し、管路Vの入口を完全に開放し、管路UをラインLSと連通させて、絞り233によって小さくなった圧力PuをラインLSに伝達する(図2C)。
【0053】
プランジャ250は、その圧力をラインLS内に制御圧として加えてポンプ1を制御し、それによって、消費器Riの負荷が最も大きいモジュールMiの圧力の調整器として機能する。作動している他のモジュールMiでは、補償器が圧力調整弁として機能する。状況は、ある特定の瞬間に最も大きい負荷を供給するモジュールMiの状況に応じて変化する。
【0054】
この流量の分配は自体有利であるが、すでに前述したように、1つのモジュールが停止している場合または別のモジュールが作動している場合に動作が硬直化しているという欠点を有する。
【0055】
本発明による圧力補償器15,15aにより、この問題を軽減または回避することが可能になる。
【0056】
図3A〜3Cは、管路LS,U,Vを有するモジュールMiの孔154内に設置した本発明による圧力補償器15の第1の実施の形態を示している。予荷重ばね153は図示していない。
【0057】
図3A〜3Cは、初期位置(図3A)、平衡位置(図3B)および行程終端位置(図3C)における圧力補償器15を備えたモジュールMiを示している。
【0058】
補償器15は、プランジャ150を収容する孔154を有する。ラインLSは、孔154の上部を貫通し、流出管Vは孔154の面から延びており、流入管Uは孔154の下方の部分に開口している。管路Uは、分配器11のスプール12の通路20の出口に接続されている。管路Vは、モジュールMiの能動出口16および消費器Riに接続されている補償器15の流出管である。
【0059】
図3Aの概略図によれば、プランジャ150は、
側方通路30(または全周にわたって分配された通路の集合体)と、
プランジャ150の上面152に開口している、絞り33を備えた長手方向通路31と、
孔154内でのプランジャの回転位置および長手方向位置にかかわらず、長手方向通路31に接続されていて、流出管Vに開口している接続通路32と、
を有する。
【0060】
側方通路30は、孔154内でのプランジャ150の位置に応じて、管路Uと管路Vとを可変断面に沿って連通させる。
【0061】
図3A,3Bと図1Aとを照らし合わせると、液体通過管路U1は側方通路30から形成され、圧力管路U2はプランジャ150の下方の管路Uの開口である。液体管路LS1は長手方向通路31と接続通路32との連通路であり、圧力管路LS2は孔154へのラインLSの開口である。
【0062】
絞り33を有する長手方向通路31は、一方では、上部152に開口しており、他方では、側方通路30の上側でこの側方通路30に連通していない、プランジャ150の下側の部分を貫通する接続通路32に開口している。この接続通路32の開口と一方または両方の側方通路30との間には、分離領域34が残されている。プランジャ150の下方の部分35は、押付け当接部を形成している。
【0063】
プランジャ150の(上)面152への押圧力は、流入管Uと流出管Vとの間の連通U/Vを閉鎖する方向に働き、圧力Puにより生じる、他方の(下)面151に加えられる逆の押圧力は、連通U/Vを開放する方向に働く。
【0064】
通常の運転では(図3B)、プランジャ150が、面152に加えられて面151に伝達される圧力PLSにより平衡位置にもたらされ、これによって、圧力PLSが、流量Q1を絞り20により調整する分配器11に到達する。
【0065】
図3Cの行程終端位置を含むプランジャ150の全ての位置において、ラインLSは、絞り33を有する長手方向通路31および横方向通路32によって管路Vに連通しており、これによって、ラインLS内の圧力PLSが管路内の圧力よりも高い場合には、ラインLSの液体が管路V,Uに向かって流れる。プランジャ150が過度に押し下げられて、分離領域34が管路Uと管路Vとの間の連通を遮断し、ラインLSと管路Vとの間の接続しか残さなくなるのは、管路U内に圧力が存在しない極端な位置だけである。
【0066】
ただし、1つの変化形態によれば、分離領域34は設けられていない。
【0067】
プランジャ150の可変の全ての平衡位置では、通路31および接続通路32を通してラインLSとの正または負の漏れを伴って、管路Vと管路Uとの間に一定でない連通がある。
【0068】
説明しかつ図示した実施の形態に対して択一的な形態として、管路Vと管路LSとの間の持続的な接続が、プランジャ150ではなく、補償器15のボディで行われてもよい。この解決手段は興味深いが、接続路(31−32)を備えたプランジャ150の解決手段は、より大きな柔軟性および製造の容易さの利点を有している。要求に応じて、接続路31−32を備えたプランジャまたは接続路31−32を備えていないプランジャを同じモジュールに設けることが可能であるからである。
【0069】
本発明による補償器15では、それぞれ異なるモジュールMiを接続するラインLSが、プランジャ150内の「漏れ」経路によって液体交換を実施するので、ラインLSの、ポンプ1の動作を制御する圧力PLSは、負荷圧が最も高い調整器Riに接続されたモジュールにより加えられる圧力よりも小さくなる。
【0070】
この「曖昧な(floue)」制御圧PLSは、LUDV方式で動作する装置に加えられる最大制御圧よりも小さく、本発明によれば、特にそれぞれ異なるモジュールMiの停止/始動に際して、液圧装置を一層柔軟に動作させることを可能にする。
【0071】
本発明による補償器15の上述した例では、下面151は、全体的にかつ実質的にプランジャ150の下側の表面であり、この状況は上面152の場合にも当てはまる。両方の面151,152の有効な液圧面積は、通路31,32,33による接続に基づき可変に減少させられる。
【0072】
図4A〜4Cは、本発明による圧力補償器15aの変化形態を示している。この変化形態では、プランジャ150aの上部152aが図3A〜3Cの実施の形態と異なっている。
【0073】
プランジャ150aは長手方向通路31aを有している。この長手方向通路は絞りを有しておらず、プランジャ150同様、下方で横方向通路32aに開口している。また、プランジャは、分離領域34aと、この分離領域の下側の側方通路30aとを有している。
【0074】
上側の部分では、長手方向通路31aが上方の横方向通路35aに達している。この横方向通路35aは両側で開放していて、絞り33aを介してプランジャ150aの上面152aに接続されている。
【0075】
圧力補償器15aの動作は、上方の横方向通路35aが孔154によって覆われている限り、プランジャ15の動作と全体的に同じである。この時点では、プランジャ150aの絞り33aがプランジャ150の絞り33と同等であるからである。絞り33aがもはや干渉しなくなるのは、プランジャ150aの上部がラインLS内に開口した場合だけである。プランジャ150を通した接続が解放されるからである。つまり、この時点でラインLS内にも管路V,U内にも等しい圧力が形成される。したがって、負荷が最大である消費器Rjに接続されたモジュールMjが、ラインLSにこの負荷を加えるのであって、絞り33aにより生じた減圧によって低下させられた圧力を加えるのではない。
【0076】
絞り33aの区分S1と横方向通路35aの区分S2との間の差は、曖昧さの効果を高める。
【0077】
負荷が最も大きい消費器Riに接続されたプランジャ150aの上側の位置では、管路UとラインLSとの間の接続が、横方向通路35aから流出する方向で行われるが、作動している他のモジュールMiの補償器は平衡を保っていると仮定される。つまり、これらのプランジャ150aの横方向通路35aは遮断されていて、ラインLSとラインVまたはラインUとの間の接続が絞り33aを介して行われているということである。
【0078】
図5は、複数のモジュールMiを有する多重制御式の回路100−1の一例であって、そのうちの2つのモジュールM1,M2を示している。
【0079】
両モジュールは図1の構造に相当し、消費器R1,R2の負荷は、それぞれ100barの圧力および200barの圧力である。圧力制限器3は、250barに設定された閾値を有する。
【0080】
消費器R2が停止していて、そのピストンが行程終端位置にあると仮定する。したがって、モジュールM2は、ポンプ1からラインPに吐出された入口圧P=PLS+ΔP0を補償器15−2を通して負荷損失ΔP2を伴ってラインLSに伝達する。
【0081】
消費器R2の停止前の圧力が200barであったと仮定すると、ポンプの圧力Pp(=PLS+ΔP0)が消費器R1の負荷圧P1よりも大きいことを認めることができる。
【0082】
消費器R1が作動しているため、補償器15−1は平衡状態にあり、制御圧PLSを伝達し、これによって、この制御圧が分配器11−1の出口に加えられる。
【0083】
負荷圧がポンプの圧力よりも大きいモジュールは停止し、ポンプの流量の分配は、平均圧の低下によって一層曖昧になる。
【符号の説明】
【0084】
100 多重制御式の液圧回路
11 分配器
12 スプール
S1 スプールの区分
S2 スプールの区分
S3 スプールの区分
15 圧力補償器
150 プランジャ
151 第1の面/下部
152 第2の面/上部
153 予荷重ばね
154 孔
155 逆止弁
30 側方通路
31 長手方向通路
32 横方向通路
33 絞り
34 分離領域
35 上方の横方向通路
25 圧力補償器
250 プランジャ
251 第1の面/下部
252 第2の面/上部
254 孔
230 側方通路
231 横方向通路
232 長手方向通路
233 絞り
16 能動圧の出口
17 制御圧の入口
18 作動液の入口
19 リザーバへの出口
20 スプールの可変絞り
1 調整式ポンプ
2 リザーバ
3 圧力制限器
Mi 分配器モジュール
Ri 消費器
P ポンプライン
T リザーバへの戻しライン
LS 制御圧ライン
PLS 制御圧
Pp ポンプの圧力
U 補償器の入口
V 補償器の出口
図1
図1A
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5