(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる形態で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、以下に示される複数の実施の形態は、適宜組み合わせることが可能である。
【0048】
なお、実施の形態において説明する半導体装置は、位相変調部と、FPC(Flexible Printed Circuits)と、位相復調部と、コントローラICと、表示パネル等によって構成される。したがって、半導体装置を表示装置、電子機器などと言い換える場合がある。
【0049】
また、図面等において、大きさ、層の厚さ、領域等は、明瞭化のため誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。
【0050】
また、図面等において、同一の要素または同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0051】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0052】
また、本明細書等において、「上」や「下」などの配置を示す用語は、構成要素の位置関係が、「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0053】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0054】
また、本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。
【0055】
また、本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0056】
また、本明細書等において、「電圧」とは、ある電位と基準の電位(例えば、グラウンド電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧と電位差とは言い換えることができる。
【0057】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む、少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域、またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域、またはソース電極)の間にチャネル領域を有しており、チャネル領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0058】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0059】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。つまり、nチャネル型のトランジスタのオフ電流とは、ソースに対するゲートの電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低いときのドレイン電流、という場合がある。
【0060】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソースを流れる電流を言う場合がある。
【0061】
また、本明細書等では、オフ電流と同じ意味で、リーク電流と記載する場合がある。また、本明細書等において、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態にあるときに、ソースとドレインの間に流れる電流を指す場合がある。
【0062】
また、本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い表現での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう)などに分類される。例えば、トランジスタの活性層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用、及びスイッチング作用の少なくとも1つを有する場合、当該金属酸化物を、金属酸化物半導体(metal oxide semiconductor)、略してOSと呼ぶことができる。また、OSトランジスタ、またはOS FETと記載する場合においては、金属酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
【0063】
(実施の形態1)
本実施の形態では、位相変調部と、FPCと、位相復調部と、コントローラICと、表示パネルと、を有する半導体装置について説明する。
【0064】
図1(A)は、半導体装置110の構成例を示す斜視図である。
図1(B)は、領域131付近を示す上面図であり、
図1(C)は、領域132付近を示す上面図である。
【0065】
図1(A)乃至
図1(C)に示す、半導体装置110は、表示パネル111、FPC112、基板113、コントローラIC115、位相復調部121、位相変調部125、およびCPU116を有する。
【0066】
CPU116は、携帯電話やノート型PCなどの電子機器において、情報を処理する機能を有するとともに、画像データを生成する機能を有する。画像データを生成する機能は、CPUに限定されるものではなく、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)が画像データを生成する場合もある。何が画像データを生成するかは、電子機器によって異なるため、本明細書等においては、CPU116を「ホスト」と呼ぶ場合がある。
【0067】
CPU116と位相変調部125は、基板113上に設けられており、FPC112は、表示パネル111と基板113を電気的に接続している。位相復調部121とコントローラIC115は、表示パネル111と同一基板上に設けられている。
【0068】
図1(A)および
図1(B)の例では、位相復調部121とコントローラIC115は、COG(Chip on Glass)方式で実装されているが、実装方式に特段の制約はなく、COF(Chip on Flexible)方式、TAB(Tape Automated Bonding)方式などでもよい。
【0069】
位相復調部121は、移相器122および復調器123を有する。位相変調部125は、移相器126および変調器127を有する。移相器122は、復調器123と同一チップに設けることも可能であるが、後述するように、実効波長の1/4の線路長が必要となるため、復調器123のチップサイズが大きくなってしまう。
図1(A)および
図1(B)の例では、移相器122を、復調器123とは別に設けている。移相器126と変調器127の関係も同様である。
【0070】
さらに、移相器122については、表示パネル111の画素等を形成する工程で、形成することができる。つまり、移相器122は、表示パネル111が有する画素等と、同一基板上に集積することができる。
【0071】
<<画像データ>>
図2は、画像データの流れを説明する図である。
【0072】
CPU116は画像データを生成し(ステップS1)、位相変調部125は、画像データを搬送波と掛け合わせ、高周波信号を生成する(ステップS2)。位相変調部125では、移相器126を使って、90度位相のずれた信号を生成する。なお、本実施の形態において、画像データはデジタル信号であり、搬送波はアナログの高周波信号である。
【0073】
ステップS2で生成された高周波信号は、FPC112を介して伝送され(ステップS3)、位相復調部121において、高周波信号から画像データが取り出される(ステップS4)。コントローラIC115は、取り出された画像データを必要に応じて加工し、タイミング信号等とともに表示パネル111に供給する(ステップS5)。
【0074】
表示パネル111は、コントローラIC115からの信号を受けて、表示を行う(ステップS6)。
【0075】
なお、CPU116と位相変調部125の間に、必要に応じてシリアライザを設けてもよい。CPU116から出力される画像データをシリアル変換し、位相変調部125に入力することができる。この場合、位相復調部121とコントローラIC115の間に、デシリアライザを設ける。
【0076】
<<位相変調部>>
図3(A)は、位相変調部125の構成例を説明する回路図である。
【0077】
位相変調部では、発振器で生成された搬送波の一部の特性を、入力された信号にもとづいて変化させる。特に、入力された信号がデジタル信号の場合、搬送波の位相を変化させる、位相偏移変調と呼ばれる技術を使うことができる。
図3(A)に示す、位相変調部125は、位相偏移変調の一種で4つの位相を使用する、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)と呼ばれる技術を使った例である。
【0078】
位相変調部125は、ミキサ151、発振器152、移相器126、および位相調整部153を有する。位相変調部125は、4つの位相を使用し、2bitのデジタル信号を搬送波にのせることができる。P0(t)、P1(t)は、位相変調部125に入力されるデジタル信号である。
【0079】
発振器152は、搬送波Ci(t)を生成する。移相器126は、搬送波Ci(t)の位相を90度遅らせたCq(t)を生成する。搬送波Ci(t)とCq(t)は、それぞれミキサ151で、デジタル信号P0(t)、P1(t)と掛け合わされる。その結果が足し合わされ、高周波信号Pqpsk(t)が生成され、位相変調部125から出力される。また、位相調整部153では、搬送波Ci(t)の位相を微調整した搬送波Ci´(t)が生成され、位相変調部125から出力される。
【0080】
図3(B)は、ミキサ151の構成例を説明する回路図である。
【0081】
図3(B)に示す、ミキサ151は、トランジスタTr5、容量素子C5乃至C7、およびインダクタL5乃至L7を有する。
【0082】
ミキサ151は、Pinにデジタル信号が入力され、Cinに搬送波が入力され、生成された高周波信号がPoutから出力される。なお、V1乃至V3には、定電位電源が入力され、それぞれL5乃至L7に入力される。C5とL5、C6とL6、およびC7とL7は、それぞれ整合回路を形成している。
【0083】
図3(B)に示す、ミキサ151は、ミキサとして最低限の機能を有しているが、より周波数適用範囲が広い、雑音に強い等の特徴を有する、シングルバランスドミキサや、ダブルバランスドミキサ等を適用してもよい。
【0084】
図3(C)は、位相調整部153の構成例を説明する回路図である。
【0085】
図3(C)に示す、位相調整部153は、抵抗素子R5、R6、容量素子C8、およびインダクタL8を有する。
【0086】
位相調整部153は、FPC112等の伝送特性を考慮して、位相を微調整する機能を有する。
【0087】
また、位相調整部153の別の構成例を後述する。
【0088】
なお、位相変調部125は、QPSKと呼ばれる技術を使った例を示したが、搬送波の位相に加えて振幅も変化させる直角位相振幅変調(QAM、Quadrature Amplitude Modulation)と呼ばれる技術を使うこともできる。直角位相振幅変調は、QPSKよりもデータ伝送能力において優れているが、FPC112には高周波信号の減衰があり、データ伝送の安定性においては直角位相振幅変調よりQPSKが好ましい。
【0089】
<<移相器>>
図4(A)は、移相器の構成例を説明するレイアウト図である。
【0090】
本明細書等では、位相変調部125で移相器126、および位相復調部121で移相器122が使われている。移相器126および移相器122は、
図4(A)に示す線路を用いて構成することができる。
【0091】
図4(A)に示す線路は、配線161、162、163を有する。配線162、163はGNDであり、配線161は搬送波Ci(t)を伝送する。配線161の線路長を、搬送波Ci(t)の実効波長の1/4とすることで、位相を90度遅らせることができる。例えば、搬送波Ci(t)が10GHzの場合、光速3.0×10
8m/sを10×10
9Hzで割り、真空での波長が30mmであることがわかる。実効波長は、真空での波長に、実効誘電率の平方根の逆数をかけたものに近似されるので、30mmより小さい値となる。なお、移相器126と移相器122において、配線構造や実効誘電率が異なる場合、移相器126と移相器122の線路長も異なる。
【0092】
<<FPC>>
図4(B)乃至
図4(D)は、FPC112の構成例を説明する断面図である。
【0093】
FPC112は、基板113上に設けられた位相変調部125と、表示パネル111上に設けられた位相復調部121とを、電気的に接続する。さらに、FPC112は、高周波信号の伝送特性を考慮した構造を有する構成が好ましい。高周波信号の伝送特性を考慮した構造とは、例えば、マイクロストリップ構造、ストリップ構造、コプレナー構造がある。
【0094】
図4(B)に、FPC112がマイクロストリップ構造を有する例を示す。
図4(B)に示すFPC112は、配線165、166、および誘電体167、168を有する。配線166はGNDであり、配線165に比べて十分幅の広い配線である。誘電体167は、配線165と配線166の間に設けられ、誘電体168は、配線165上に設けられている。配線166にはメッシュ状の配線を使うこともできる。
【0095】
マイクロストリップ構造は、ストリップ構造に比べてコストと性能のバランスがよい、また設計しやすい、という特徴を有する。マイクロストリップ構造は、後述する、コプレナー構造と組み合わせることができる。
【0096】
図4(C)に、FPC112がストリップ構造を有する例を示す。
図4(C)に示すFPC112は、配線170、171、172、および誘電体173、174を有する。配線171、172はGNDであり、配線170に比べて十分幅の広い配線である。誘電体173は、配線170と配線172の間に設けられ、誘電体174は、配線171と配線170の間に設けられている。配線171、172にはメッシュ状の配線を使うこともできる。
【0097】
ストリップ構造は、マイクロストリップ構造およびコプレナー構造に比べて、高周波信号の伝送特性が優れるという特徴を有する。ストリップ構造も、後述する、コプレナー構造と組み合わせることができる。
【0098】
図4(D)に、FPC112がコプレナー構造を有する例を示す。
図4(D)に示すFPC112は、配線175、176、177、および誘電体178、179を有する。配線176、177はGNDである。誘電体178上に、配線175、176、177が設けられ、配線175、176、177上に、誘電体179が設けられている。
【0099】
コプレナー構造は、マイクロストリップ構造およびストリップ構造に比べて、配線や誘電体の層数を少なくすることができる。
【0100】
なお、
図4(B)乃至
図4(D)において、断面図は、基材や保護膜等を省略している。
【0101】
<<位相調整部>>
図5は、位相調整部153の別の構成例を説明する回路図である。
【0102】
図5に示す、位相調整部155は、伝送線路1乃至3と、トランジスタTr11、Tr12、Tr21、Tr22、Tr31、Tr32と、容量素子C11、C12、C21、C22、C31、C32、および抵抗素子R11、R21、R31、を有する。
【0103】
位相調整部155には、高周波信号PH_INと、制御データPH_D1乃至PH_D3、および制御信号PH_S1乃至PH_S3が入力される。位相調整部155は、FPC112等の伝送特性を考慮して、高周波信号PH_INの位相を変化させ、調整する。位相調整部155が高周波信号PH_INの位相を変化させる量は、制御データPH_D1乃至PH_D3によって制御される。また、制御信号PH_S1乃至PH_S3は、制御データPH_D1乃至PH_D3を取り込むタイミングを、それぞれ制御する。そして、位相調整部155は、位相を調整した高周波信号PH_OUTを出力する。
【0104】
位相調整部155が有する伝送線路1乃至3には、例えば、
図4(A)に示した移相器を使用することができる。伝送線路1乃至3において、高周波信号PH_INの位相変化量はそれぞれ異なり、例えば、伝送線路1は位相を90度遅らせ、伝送線路2は位相を180度遅らせ、伝送線路3は位相を270度遅らせるように設計することができる。
【0105】
また、トランジスタTr12は位相を90度遅らせた高周波信号PH_INを、トランジスタTr22は位相を180度遅らせた高周波信号PH_INを、トランジスタTr32は位相を270度遅らせた高周波信号PH_INを、それぞれ、伝達する割合を定めている。
【0106】
次に、
図6(A)乃至(D)に、トランジスタTr12、Tr22、およびTr32に使用される、トランジスタの回路図と、レイアウト例を示す図、および小信号等価回路との関係を示す。
図6(A)は回路図であり、
図6(B)はレイアウト例を示す図、
図6(C)はトランジスタがオンの状態にあるときの小信号等価回路、
図6(D)はトランジスタがオフの状態にあるときの小信号等価回路である。
【0107】
トランジスタは、ゲートと、ドレインと、ソースの、三つの端子を有する(
図6(A)参照)。
図6(B)に示すように、トランジスタは、ドレインとソースの間にチャネル領域を有し、チャネル領域の幅をW、チャネル領域とゲートが重なる領域におけるゲートの幅をLとする。トランジスタがオンの状態にあるときの小信号等価回路は、ドレインとソースの間は簡易的に抵抗素子Ronで表され、ゲートには抵抗素子Rgを介して容量素子Cgs(ゲートとソースとの容量)と、容量素子Cgd(ゲートとドレインとの容量)が電気的に接続された状態で表される(
図6(C)参照)。また、トランジスタがオフの状態にあるときの小信号等価回路は、ドレインとソースの間は容量素子Cdsで表され、ゲートには抵抗素子Rgを介して容量素子Cgsと抵抗素子Rgs、および容量素子Cgdと抵抗素子Rgdが、電気的に接続された状態で表される。(
図6(D)参照)。
【0108】
ここで、トランジスタTr12がオンの状態、トランジスタTr22とトランジスタTr32がオフの状態にある場合を考える。トランジスタTr12のドレインとソースの間のオン抵抗をRonで表し、トランジスタTr22とトランジスタTr32のドレインとソースの間を、容量素子Cdsで表す。容量素子Cdsは、周波数に依存するリアクタンス成分を持ち、インピーダンスで表すと、1/(jωCds)である(jは虚数単位、ωは角周波数)。
【0109】
容量素子Cdsは、ωが大きくなるほど、すなわち信号の周波数が高くなるほど、インピーダンスの絶対値が低くなり、トランジスタTr22と容量素子C22、およびトランジスタTr32と容量素子C32は、高周波信号をグラウンドへ逃がす役割を果たす。
【0110】
その結果、位相調整部155が出力する高周波信号PH_OUTは、高周波信号PH_INの位相を180度遅らせた成分と270度遅らせた成分が少なく、高周波信号PH_INの位相を90度遅らせた信号に近いものとなる。
【0111】
同様に、トランジスタTr12と、トランジスタTr22、およびトランジスタTr32のオンやオフの状態を変更することで、高周波信号PH_OUTを、高周波信号PH_INの位相を180度遅らせた信号に近いものや、高周波信号PH_INの位相を270度遅らせた信号に近いものとすることができる。また、トランジスタTr12と、トランジスタTr22、およびトランジスタTr32のオンやオフの状態を変更することで、高周波信号PH_OUTを、高周波信号PH_INの位相を90度から270度の範囲で遅らせた信号とすることができる。
【0112】
このように、位相調整部155は、入力された高周波信号PH_INの位相を変化させ、FPC112等の伝送特性を考慮して調整することができる。また、位相調整部155を位相復調部121に設け、FPC112を介して伝送された高周波信号の位相を調整してもよい。
【0113】
また、トランジスタTr11、Tr21、Tr31は、それぞれ、制御信号PH_S1乃至PH_S3に従って、制御データPH_D1乃至PH_D3を取り込む役割を果たしている。トランジスタTr11、Tr21、Tr31に使用されるトランジスタとして、オフ電流が低いトランジスタを適用することが好ましい。トランジスタTr11、Tr21、Tr31をオフ電流が低いトランジスタとすることで、取り込んだ制御データPH_D1乃至PH_D3を、長期間保存することができる。例えば、オフ電流が低いトランジスタとして、後述する、OSトランジスタを適用することができる。
【0114】
<<位相復調部>>
図7(A)は、位相復調部121の構成例を説明する回路図である。
【0115】
位相復調部121は、ミキサ151、移相器122、およびLPF(Low Pass Filter)154を有する。位相復調部121は、位相変調部125から出力された高周波信号Pqpsk(t)から、2bitのデジタル信号P0(t)、P1(t)を取り出す機能を有する。
【0116】
位相復調部121には、高周波信号Pqpsk(t)と搬送波Ci´(t)が入力される。移相器122は、搬送波Ci´(t)の位相を90度遅らせたCq´(t)を生成する。搬送波Ci´(t)とCq´(t)は、ミキサ151で高周波信号Pqpsk(t)と掛け合わされる。その結果生成された信号P0´(t)、P1´(t)を、LPF154に入力し、高調波成分を取り除くと、デジタル信号P0(t)、P1(t)と振幅のみ異なる信号P0´´(t)、P1´´(t)が得られる。この様子を、式を使って説明する。
【0117】
2bitのデジタル信号P0(t)、P1(t)を、
P0(t)=Cos{πm
0(t)} (a1)
P1(t)=Cos{πm
1(t)} (a2)
で表し、搬送波Ci(t)とCq(t)を、
Ci(t)=A
cCos{ω
ct+φ
c} (a3)
Cq(t)
=A
cCos{ω
ct+φ
c−π/2}
=A
cSin{ω
ct+φ
c} (a4)
とすると、
Pqpsk(t)=P0(t)×Ci(t)+P1(t)×Cq(t) (a5)
である。
【0118】
次に、
α=ω
ct+φ
c (a6)
Ci´(t)≒Ci(t) (a7)
Cq´(t)≒Cq(t) (a8)
とすると、
P0´(t)
=Ci´(t){P0(t)×Ci(t)+P1(t)×Cq(t)}
=A
c2{P0(t)×Cos
2(α)+P1(t)×Sin(α)Cos(α)}
=A
c2/2×P0(t)+A
c2/2×{P0(t)×Cos(2α)+P1(t)×Sin(2α)} (a9)
と導かれる。式a9は、デジタル信号P0(t)の振幅が変化したものと、搬送波Ci(t)、Cq(t)の2倍の周波数を有する高調波の和を表している。そこで、高調波成分をLPF154で取り除くと、
P0´´(t)=A
c2/2×P0(t) (a10)
となる。
【0119】
同様に、
P1´(t)
=Cq´(t){P0(t)×Ci(t)+P1(t)×Cq(t)}
=A
c2{P0(t)×Sin(α)Cos(α)+P1(t)×Sin
2(α)}
=A
c2/2×P1(t)+A
c2/2×{P0(t)×Sin(2α)−P1(t)×Cos(2α)} (a11)
式a11は、デジタル信号P1(t)の振幅が変化したものと、搬送波Ci(t)、Cq(t)の2倍の周波数を有する高調波の和を表している。高調波成分をLPF154で取り除くと、
P1´´(t)=A
c2/2×P1(t) (a12)
となる。
【0120】
このようにして、位相復調部121は、デジタル信号P0(t)、P1(t)の振幅がA
c2/2倍された信号P0´´(t)、P1´´(t)を出力する。
【0121】
図7(B)は、LPF154の構成例を説明する回路図である。
【0122】
図7(B)に示す、LPF154は、抵抗素子R7と容量素子C9を有する。
【0123】
信号P0´(t)とP1´(t)に含まれる、搬送波Ci(t)またはCq(t)の2倍の周波数を有する高調波と、デジタル信号P0(t)またはP1(t)とは、周波数帯域が離れているため、LPF154は比較的容易に高調波成分を取り除くことができる。
【0124】
以上のように、デジタル信号を、搬送波の一部の特性を変化させることで伝送することができる。ここで、搬送波は伝送されるデジタル信号よりも高い周波数を用いるため、デジタル信号のまま伝送を行うよりも、早い伝送速度を期待できる。伝送速度が早くなると、シリアライザを用いてデジタル信号をシリアル変換し、伝送に要する配線数を減らすことができる。
【0125】
例えば、フルハイビジョンの画像データを伝送するのに必要な伝送速度(1秒あたりの情報量)は、フレーム周波数が60Hz、色深度が12ビットの場合、約2.24Gbpsである。フルハイビジョンの画像データを、LVDSを使って伝送すると、12ペア(24本)の配線が必要であった。一方、非特許文献1では、60GHz無線通信で変調方式にQPSKを使った場合、3.1Gbpsを実現したと報告されている。そのため、本発明の一形態である半導体装置を使用することで、伝送に要する配線数を減らすことができる。
【0126】
なお、位相変調部、および位相復調部に使われるトランジスタは、シリコントランジスタとすることができる。半導体プロセス技術の発展により、高価な化合物半導体ではなく、シリコントランジスタでも、例えば、5GHzを超える信号を扱うことができる。非特許文献1には、Si−CMOS技術を使って60GHz無線通信を実現したと報告されている。
【0127】
コントローラIC115が、比較的新しいプロセスルールで製造されている場合、コントローラIC115内に位相復調部を設けることも可能である。ここで、比較的新しいプロセスルールとは、130nmプロセス、好ましくは90nmプロセス、より好ましくは65nmプロセスより新しいプロセスを指す。
【0128】
また、位相復調部121に使われるトランジスタは、表示パネル111の画素等に用いられるトランジスタと同じ半導体材料を用いて形成してもよい。すなわち、位相復調部121に使われるトランジスタは、表示パネル111の画素等に用いられるトランジスタと同じ工程で形成してもよい。そうすることで、半導体装置110はその製造工程を簡略化することができる。
【0129】
<<コントローラIC>>
図8は、コントローラIC115の構成例を示すブロック図である。また、
図9は、表示パネル111の構成例を示すブロック図である。
【0130】
コントローラIC115は、インターフェース201、フレームメモリ202、デコーダ203、コントローラ204、クロック生成回路205、レジスタ206、タイミングコントローラ207、画像処理部210、メモリ209、およびソースドライバ208を有する。
【0131】
表示パネル111は、画素アレイ311、ゲートドライバ313、ゲートドライバ314、コントローラIC115、移相器122、復調器123、およびFPC112を有する。なお、ゲートドライバ313、ゲートドライバ314は、どちらか一方のみでもよい。
【0132】
コントローラIC115は、コントローラIC115が有するインターフェース201を介して、CPU116と通信を行う。CPU116からは、画像データおよび各種制御信号等が、位相変調部125、FPC112、および位相復調部121を介して、コントローラIC115に送られる。比較的データ量が小さい各種制御信号等は、FPC112を介して、コントローラIC115に送ってもよい。また、コントローラIC115から出力される信号等は、FPC112を介して、CPU116に送られる。
【0133】
フレームメモリ202は、コントローラIC115に入力された画像データを保存するためのメモリである。CPU116から圧縮された画像データが送られる場合、フレームメモリ202は、圧縮された画像データを格納することができる。その場合、デコーダ203は、圧縮された画像データを伸長する。または、デコーダ203を、フレームメモリ202とインターフェース201の間に配置し、画像データを伸長してからフレームメモリ202に保存してもよい。
【0134】
画像処理部210は、画像データに対して各種画像処理を行う機能を有する。例えば、画像処理部210は、ガンマ補正回路211、調光回路212、調色回路213を有する。画像処理部210で処理された画像データは、メモリ209を経て、ソースドライバ208に出力される。メモリ209は、画像データを一時的に格納するためのメモリである。ソースドライバ208は、入力された画像データを処理し、画素アレイ311のソース線に書き込む機能を有する。
【0135】
クロック生成回路205は、コントローラIC115で使用されるクロック信号を生成する機能を有する。また、タイミングコントローラ207は、ソースドライバ208、表示パネル111のゲートドライバ313、314で使用する、各種タイミング信号を生成する機能を有する。なお、
図8において、クロック信号や電源線などは省略している。
【0136】
レジスタ206は、コントローラIC115の動作に用いられるデータを格納する。レジスタ206が格納するデータには、画像処理部210が各種画像処理を行うために使用するパラメータ、タイミングコントローラ207が各種タイミング信号の波形生成に用いるパラメータなどがある。
【0137】
コントローラIC115は、タッチセンサコントローラ224を有してもよい。表示パネル111が、タッチセンサユニット225と組み合わせて用いられる場合、タッチセンサユニット225を制御し、得られたタッチ位置などの情報を出力する。タッチ位置などの情報は、インターフェース201等を介して、CPU116に送られる。なお、タッチセンサユニット225としては、投影型静電容量方式、表面型静電容量方式、抵抗膜方式、超音波表面弾性波方式、光学方式、電磁誘導方式など、任意の検出方式のタッチセンサユニット225を利用することができる。
【0138】
コントローラIC115は、センサコントローラ221を有してもよい。センサコントローラ221には、光センサ222が電気的に接続され、外光223の明るさや色調を測定することができる。
【0139】
例えば、外光223の明るさを測定することで、調光回路212は、外光223の明るさに応じて、表示パネル111の輝度を調整することができる。外光223の明るさが暗い環境においては、表示パネル111の輝度を低くすることで、まぶしさを減少し、消費電力を低減することができる。外光223の明るさが明るい環境においては、表示パネル111の輝度を高くすることで、視認性に優れた表示を行うことができる。これらの調整は、使用者の設定した輝度を中心に行ってもよい。ここでは、当該調整を調光、あるいは調光処理と呼ぶ。また、当該処理を実行する回路を調光回路と呼ぶ。
【0140】
また、外光223の色調を測定することで、調色回路213は、外光223の色調に応じて、表示パネル111の色調を補正することができる。例えば、夕暮れ時の赤みがかった環境においては、表示パネル111の使用者の目は色順応をおこし、赤みがかった色を白と感じるようになる。この場合、表示パネル111の表示は青白く見えてしまうため、表示パネル111のR(赤)成分を強めることで、色調を補正することができる。ここでは、当該補正を調色、あるいは調色処理と呼ぶ。また、当該処理を実行する回路を調色回路と呼ぶ。
【0141】
画像処理部210は、表示パネル111の仕様によって、RGB−RGBW変換回路など、他の処理回路を有してもよい。RGB−RGBW変換回路とは、RGB(赤、緑、青)画像データを、RGBW(赤、緑、青、白)画像データに変換する機能を有する。すなわち、表示パネル111がRGBW4色の画素を有する場合、画像データ内のW(白)成分を、W(白)画素を用いて表示することで、消費電力を低減することができる。なお、表示パネル111がRGBYの4色の画素を有する場合、例えば、RGB−RGBY(赤、緑、青、黄)変換回路を用いることができる。
【0142】
なお、コントローラIC115が有するそれぞれの回路は、CPU116の規格、表示パネル111の仕様等によって、適宜取捨される。
【0143】
<<表示パネル>>
画素アレイ311は、複数の画素30を有し、それぞれの画素30はトランジスタを用いて駆動されるアクティブ型の素子である。画素30は、発光素子30bを有する。
【0144】
発光素子30bには、例えば、有機EL(Electro Luminescence)、無機EL、QLED(Quantum−dot Light Emitting Diode)、LED(Light Emitting Diode)等を適用することができる。
【0145】
ゲートドライバ313、314は、画素30を選択するためのゲート線を駆動する機能をもつ。画素30にデータ信号を供給するソース線を駆動するソースドライバは、コントローラIC115に設けられている。コントローラIC115は、表示パネル111の動作を統括的に制御する機能を備える。コントローラIC115の数は、画素アレイ311が有する画素数に応じて決定される。
【0146】
図9の例では、画素アレイ311と共にゲートドライバ313、314が同一基板上に集積されている例を示しているが、ゲートドライバ313、314を専用ICとすることもできる。あるいは、コントローラIC115に、ゲートドライバ313またはゲートドライバ314を組み込んでもよい。
【0147】
ソースドライバ208についても、ゲートドライバ313、314と同様である。
図8、
図9の例では、ソースドライバ208はコントローラIC115に組み込まれているが、ソースドライバ208を専用ICとしてもよい。または、ソースドライバ208を画素アレイ311と同一基板上に集積してもよい。
【0148】
なお、画素30に使用されるトランジスタはOSトランジスタであり、Siトランジスタに比べてオフ電流が低いトランジスタである。
【0149】
OSトランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有することが好ましい。また、OSトランジスタに適用される金属酸化物は、インジウム(In)および亜鉛(Zn)の少なくとも一方を含む酸化物であることが好ましい。
【0150】
このような酸化物としては、In−M−Zn酸化物、In−M酸化物、Zn−M酸化物、In−Zn酸化物(元素Mは、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、シリコン(Si)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、バナジウム(V)、ベリリウム(Be)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、またはタングステン(W)など)が代表的である。OSトランジスタは、チャネル幅1μmあたりのオフ電流を1yA/μm(y;ヨクト、10
−24)以上1zA/μm(z;ゼプト、10
−21)以下程度に低くすることができる。
【0151】
また、OSトランジスタには、CAC(Cloud−Aligned Composite)−OSを用いることが好ましい。CAC−OSの詳細については、実施の形態3で説明する。
【0152】
もしくは、画素30に使用されるトランジスタとして、オフ電流が低ければOSトランジスタを適用しないことができる。例えば、バンドギャップが大きい半導体を用いたトランジスタを適用してもよい。バンドギャップが大きい半導体とは、バンドギャップが2.2eV以上の半導体を指す場合がある。例えば、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ダイヤモンドなどが挙げられる。
【0153】
画素30に、オフ電流が低いトランジスタを用いることで、表示画面を書き換える必要がない場合(すなわち静止画を表示する場合)、一時的にゲートドライバ313、314、およびソースドライバ208を停止することができる(「アイドリングストップ」または「IDS駆動」)。IDS駆動によって、表示パネル111の消費電力を低減することができる。
【0154】
なお、断面構成例など、表示パネル111のより具体的な構成例については、実施の形態2および実施の形態3で説明する。本実施の形態では、画素30が発光素子30bを有する例を説明したが、これに限定されず、画素30は透過素子や反射素子等を有していてもよい。または、2種類以上の素子を有していてもよい。
【0155】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0156】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示す表示パネル111の一例について、
図10乃至
図12を用いて説明を行う。
【0157】
図10は、表示パネル111の斜視概略図である。表示パネル111は、基板951上に形成された表示領域935と、周辺回路領域901と、配線965等を有する。
図10では表示パネル111に、コントローラIC115、移相器122、復調器123及びFPC112が実装されている例を示している。
【0158】
周辺回路領域901には、表示領域935に信号を供給するための回路が含まれる。周辺回路領域901に含まれる回路としては、例えば、ゲートドライバ等がある。
【0159】
配線965は、表示領域935および周辺回路領域901に信号および電力を供給する機能を有する。当該信号及び電力は、FPC112を介して外部から、またはコントローラIC115から配線965に入力される。
【0160】
図10では、COG方式により、基板951にコントローラIC115が設けられている例を示すが、コントローラIC115は、COF方式等によりFPCに実装してもよい。コントローラIC115は、実施の形態1に示すコントローラIC115に相当する。
【0161】
図10には、表示領域935の一部の拡大図を示している。表示領域935には、複数の画素10がマトリクス状に配置されている。
【0162】
次に、画素10について、
図11(A1)(A2)(B)を用いて説明する。
【0163】
図11(A1)に、画素10を表示面側から見たときの上面概略図を示す。
図11(A1)に示す画素10は、3つの副画素を有する。各副画素には、発光素子940(
図11(A1)(A2)には図示しない)、トランジスタ910、及びトランジスタ912が設けられている。また、
図11(A1)に示す各副画素では、発光素子940の発光領域(発光領域916R、発光領域916G、または発光領域916B)を示している。なお、発光素子940は、トランジスタ910及びトランジスタ912側に光を射出する、所謂ボトムエミッション型の発光素子とする。
【0164】
また、画素10は、配線902、配線904、及び配線906等を有する。配線902は、例えば走査線として機能する。配線904は、例えば信号線として機能する。配線906は、例えば発光素子に電位を供給する電源線として機能する。また、配線902と配線904とは、互いに交差する部分を有する。また、配線902と配線906とは、互いに交差する部分を有する。なお、ここでは、配線902と配線904、及び配線902と配線906とが交差する構成について例示したが、これに限定されず、配線904と配線906とが交差する構成としてもよい。
【0165】
トランジスタ910は、選択トランジスタとして機能する。トランジスタ910のゲートは、配線902と電気的に接続されている。トランジスタ910のソースまたはドレインの一方は、配線904と電気的に接続されている。
【0166】
トランジスタ912は、発光素子に流れる電流を制御するトランジスタである。トランジスタ912のゲートは、トランジスタ910のソースまたはドレインの他方と電気的に接続されている。トランジスタ912のソースまたはドレインの一方は配線906と電気的に接続され、他方は発光素子940の一対の電極の一方と電気的に接続されている。
【0167】
図11(A1)では、発光領域916R、発光領域916G、及び発光領域916Bが、それぞれ縦方向に長い短冊状の形状を有し、横方向にストライプ状に配列している。
【0168】
ここで、配線902、配線904、及び配線906は遮光性を有する。またこれ以外の層、すなわち、トランジスタ910、トランジスタ912、トランジスタに接続する配線、コンタクト、容量等を構成する各層には、透光性を有する膜を用いると好適である。
図11(A2)は、
図11(A1)に示す画素10を、可視光を透過する透過領域10tと、可視光を遮る遮光領域10sと、に分けて明示した例である。このように、透光性を有する膜を用いてトランジスタを作製することで、各配線が設けられる部分以外を透過領域10tとすることができる。また、発光素子の発光領域を、トランジスタ、トランジスタに接続する配線、コンタクト、容量などと重ねることができるため、画素の開口率を高めることができる。
【0169】
なお、画素の面積に対する透過領域の面積の割合が高いほど、発光素子の光取り出し効率を高めることができる。例えば、画素の面積に対する、透過領域の面積の割合は、1%以上95%以下、好ましくは10%以上90%以下、より好ましくは20%以上80%以下とすることができる。特に40%以上または50%以上とすることが好ましく、60%以上80%以下であるとより好ましい。
【0170】
また、
図11(A2)に示す一点鎖線A−Bの切断面に相当する断面図を
図11(B)に示す。なお、
図11(B)では、上面図において図示していない、発光素子940、容量素子913、及び周辺回路領域901などの断面も合わせて図示している。周辺回路領域901としては、走査線駆動回路部または信号線駆動回路部として用いることができる。また、周辺回路領域901は、トランジスタ911を有する。
【0171】
図11(B)に示すように、発光素子940からの光は、破線の矢印に示す方向に射出される。発光素子940の光は、トランジスタ910、トランジスタ912、及び容量素子913等を介して外部に取り出される。したがって、容量素子913を構成する膜などについても、透光性を有すると好ましい。容量素子913が有する透光性の領域の面積が広いほど、発光素子940から射出される光の減衰を抑制することができる。
【0172】
なお、周辺回路領域901において、トランジスタ911については、遮光性であってもよい。周辺回路領域901のトランジスタ911などを遮光性とすることで、駆動回路部の信頼性や、駆動能力を高めることができる。すなわち、トランジスタ911を構成するゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極に、遮光性を有する導電膜を用いることが好ましい。またこれらに接続される配線も同様に、遮光性を有する導電膜を用いることが好ましい。
【0173】
次に、画素10の別の一例について
図12(A1)(A2)(B)を用いて説明する。
【0174】
図12(A1)に、画素10の上面概略図を示す。
図12(A1)に示す画素10は、4つの副画素を有する。
図12(A1)では、画素10において、副画素が縦に2つ、横に2つ配列している例を示している。各副画素には、透過型の液晶素子930(
図12(A1)(A2)には図示しない)及びトランジスタ914等が設けられている。
図12(A1)では、画素10に、配線902及び配線904が、それぞれ2本ずつ設けられている。
図12(A1)に示す各副画素では、液晶素子の表示領域(表示領域918R、表示領域918G、表示領域918B、及び表示領域918W)を示している。バックライトユニット(BLU)から射出される光は、トランジスタ914等を介して、液晶素子930に入射される。
【0175】
また、画素10は、配線902及び配線904等を有する。配線902は、例えば走査線として機能する。配線904は、例えば信号線として機能する。配線902と配線904とは、互いに交差する部分を有する。
【0176】
トランジスタ914は、選択トランジスタとして機能する。トランジスタ914のゲートは、配線902と電気的に接続されている。トランジスタ914のソースまたはドレインの一方は、配線904と電気的に接続されており、他方は、液晶素子930と電気的に接続されている。
【0177】
ここで、配線902及び配線904は遮光性を有する。またこれ以外の層、すなわち、トランジスタ914、トランジスタ914に接続する配線、コンタクト、容量等を構成する各層には、透光性を有する膜を用いると好適である。
図12(A2)は、
図12(A1)に示す画素10を、可視光を透過する透過領域10tと、可視光を遮る遮光領域10sと、に分けて明示した例である。このように、透光性を有する膜を用いてトランジスタを作製することで、各配線が設けられる部分以外を透過領域10tとすることができる。液晶素子の透過領域をトランジスタ、トランジスタに接続する配線、コンタクト、容量等と重ねることができるため、画素の開口率を高めることができる。
【0178】
なお、画素の面積に対する透過領域の面積の割合が高いほど、透過光の光量を増大させることができる。例えば、画素の面積に対する、透過領域の面積の割合は、1%以上95%以下、好ましくは10%以上90%以下、より好ましくは20%以上80%以下とすることができる。特に40%以上または50%以上とすることが好ましく、60%以上80%以下であるとより好ましい。
【0179】
また、
図12(A2)に示す一点鎖線C−Dの切断面に相当する断面図を
図12(B)に示す。なお、
図12(B)では、上面図において図示していない、液晶素子930、着色膜931、遮光膜932、容量素子915、周辺回路領域901等の断面も合わせて図示している。周辺回路領域901としては、走査線駆動回路部または信号線駆動回路部として用いることができる。また、周辺回路領域901は、トランジスタ911を有する。
【0180】
図12(B)に示すように、バックライトユニット(BLU)からの光は、破線の矢印に示す方向に射出される。バックライトユニット(BLU)の光は、トランジスタ914、及び容量素子915等を介して外部に取り出される。したがって、トランジスタ914、及び容量素子915を構成する膜などについても、透光性を有すると好ましい。トランジスタ914、容量素子915等が有する透光性の領域の面積が広いほど、バックライトユニット(BLU)の光を効率良く使用することができる。
【0181】
なお、
図12(B)に示すように、バックライトユニット(BLU)からの光は、着色膜931を介して外部に取り出してもよい。着色膜931を介して取り出すことで、所望の色に着色することができる。着色膜931としては、赤(R)、緑(G)、青(B)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄色(Y)等から選択することができる。
【0182】
また、
図11及び
図12に示す基板、トランジスタ、配線、容量素子等には、以下に示す材料を用いることができる。
【0183】
基板951は透光性を有することが好ましい。基板951として、例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、可撓性基板(フレキシブル基板)、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどを用いてもよい。
【0184】
トランジスタが有する半導体膜は、透光性を有する半導体材料を用いて形成することができる。透光性を有する半導体材料としては、金属酸化物、または酸化物半導体等が挙げられる。酸化物半導体は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウム及び亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0185】
トランジスタが有する導電膜は、透光性を有する導電性材料を用いて形成することができる。透光性を有する導電性材料は、インジウム、亜鉛、錫の中から選ばれた一種、または複数種を含むことが好ましい。具体的には、In酸化物、In−Sn酸化物(ITO:Indium Tin Oxideともいう)、In−Zn酸化物、In−W酸化物、In−W−Zn酸化物、In−Ti酸化物、In−Sn−Ti酸化物、In−Sn−Si酸化物、Zn酸化物、Ga−Zn酸化物などが挙げられる。
【0186】
また、トランジスタが有する導電膜に、不純物元素を含有させる等して低抵抗化させた酸化物半導体を用いてもよい。当該低抵抗化させた酸化物半導体は、酸化物導電体(OC:Oxide Conductor)ということができる。
【0187】
例えば、酸化物導電体は、酸化物半導体に酸素欠損を形成し、当該酸素欠損に水素を添加することで、伝導帯近傍にドナー準位が形成される。酸化物半導体にドナー準位が形成されることで、酸化物半導体は、導電性が高くなり導電体化する。
【0188】
なお、酸化物半導体は、エネルギーギャップが大きい(例えば、エネルギーギャップが2.5eV以上である)ため、可視光に対して透光性を有する。また、酸化物導電体も、可視光に対して酸化物半導体と同程度の透光性を有する。
【0189】
また、酸化物導電体は、トランジスタが有する半導体膜に含まれる金属元素を一種類以上有することが好ましい。同一の金属元素を有する酸化物半導体を、トランジスタを構成する層のうち2層以上に用いることで、製造装置(例えば、成膜装置、加工装置等)を2以上の工程で共通で用いることが可能となるため、製造コストを抑制することができる。
【0190】
本実施の形態に示す表示装置が有する画素の構成とすることで、発光素子及びバックライトユニットのいずれか一方または双方から射出される光を効率よく使用することができる。したがって、消費電力が抑制された、優れた表示装置を提供することができる。
【0191】
次に、表示パネル111に使用可能なトランジスタの構成例について説明を行う。
【0192】
<OSトランジスタの構成例1>
まず、トランジスタの構造の一例として、トランジスタ3200aについて、
図13(A)(B)(C)を用いて説明する。
図13(A)はトランジスタ3200aの上面図である。
図13(B)は、
図13(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、
図13(C)は、
図13(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。なお、
図13(A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ3200aの構成要素の一部(ゲート絶縁層としての機能を有する絶縁層等)を省略して図示している。なお、以下において、一点鎖線X1−X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1−Y2方向をチャネル幅方向と呼称する場合がある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面においても
図13と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
【0193】
トランジスタ3200aは、絶縁層3224上の導電層3221と、絶縁層3224及び導電層3221上の絶縁層3211と、絶縁層3211上の金属酸化物層3231と、金属酸化物層3231上の導電層3222aと、金属酸化物層3231上の導電層3222bと、金属酸化物層3231、導電層3222a、及び導電層3222b上の絶縁層3212と、絶縁層3212上の導電層3223と、絶縁層3212及び導電層3223上の絶縁層3213と、を有する。
【0194】
また、絶縁層3211及び絶縁層3212は、開口部3235を有する。導電層3223は、開口部3235を介して、導電層3221と電気的に接続される。
【0195】
ここで、絶縁層3211は、トランジスタ3200aの第1のゲート絶縁層としての機能を有し、絶縁層3212は、トランジスタ3200aの第2のゲート絶縁層としての機能を有し、絶縁層3213は、トランジスタ3200aの保護絶縁層としての機能を有する。また、トランジスタ3200aにおいて、導電層3221は、第1のゲートとしての機能を有し、導電層3222aは、ソースまたはドレインの一方としての機能を有し、導電層3222bは、ソースまたはドレインの他方としての機能を有する。また、トランジスタ3200aにおいて、導電層3223は、第2のゲートとしての機能を有する。
【0196】
なお、トランジスタ3200aは、所謂チャネルエッチ型のトランジスタであり、デュアルゲート構造である。
【0197】
また、トランジスタ3200aは、導電層3223を設けない構成にすることもできる。この場合、トランジスタ3200aは、所謂チャネルエッチ型のトランジスタであり、ボトムゲート構造である。
【0198】
図13(B)(C)に示すように、金属酸化物層3231は、導電層3221、及び導電層3223と対向するように位置し、2つのゲートの機能を有する導電層に挟まれている。導電層3223のチャネル長方向の長さ、及び導電層3223のチャネル幅方向の長さは、金属酸化物層3231のチャネル長方向の長さ、及び金属酸化物層3231のチャネル幅方向の長さよりもそれぞれ長く、金属酸化物層3231の全体は、絶縁層3212を介して導電層3223に覆われている。
【0199】
別言すると、導電層3221及び導電層3223は、絶縁層3211及び絶縁層3212に設けられる開口部3235において接続され、且つ金属酸化物層3231の側端部よりも外側に位置する領域を有する。
【0200】
このような構成を有することで、トランジスタ3200aに含まれる金属酸化物層3231を、導電層3221及び導電層3223の電界によって電気的に囲むことができる。トランジスタ3200aのように、第1のゲート及び第2のゲートの電界によって、チャネル領域が形成される金属酸化物層を、電気的に囲むトランジスタのデバイス構造をSurrounded channel(S−channel)構造と呼ぶことができる。
【0201】
トランジスタ3200aは、S−channel構造を有するため、第1のゲートの機能を有する導電層3221によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に金属酸化物層3231に印加することができるため、トランジスタ3200aの電流駆動能力が向上し、高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、トランジスタ3200aを微細化することが可能となる。また、トランジスタ3200aは、金属酸化物層3231が、第1のゲートの機能を有する導電層3221及び第2のゲートの機能を有する導電層3223によって囲まれた構造を有するため、トランジスタ3200aの機械的強度を高めることができる。
【0202】
例えば、金属酸化物層3231は、Inと、M(Mは、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウム)と、Znと、を有すると好ましい。
【0203】
また、金属酸化物層3231は、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有すると好ましい。一例としては、金属酸化物層3231のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=4:2:3近傍とすると好ましい。ここで、近傍とは、Inが4の場合、Mが1.5以上2.5以下であり、且つZnが2以上4以下を含む。または、金属酸化物層3231のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=5:1:6近傍とすると好ましい。
【0204】
また、金属酸化物層3231は、CAC−OSであると好適である。金属酸化物層3231が、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有し、且つCAC−OSであることで、トランジスタ3200aの電界効果移動度を高くすることができる。なお、CAC−OSの詳細については、後述する。
【0205】
また、s−channel構造であるトランジスタ3200aは電界効果移動度が高く、且つ駆動能力が高いので、トランジスタ3200aを駆動回路、代表的にはゲート信号を生成するゲートドライバに用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)表示装置を提供することができる。また、トランジスタ3200aを、表示装置が有する信号線へ信号の供給を行うソースドライバ(とくに、ソースドライバが有するシフトレジスタの出力端子に接続されるデマルチプレクサ)に用いることで、表示装置に接続される配線数が少ない表示装置を提供することができる。
【0206】
また、トランジスタ3200aはそれぞれチャネルエッチ構造のトランジスタであるため、低温ポリシリコンを用いたトランジスタと比較して、作製工程数が少ない。また、トランジスタ3200aは、金属酸化物層をチャネル領域に用いているため、低温ポリシリコンを用いたトランジスタのように、レーザ結晶化工程が不要である。これらのため、大面積基板を用いた表示装置であっても、製造コストを低減することが可能である。さらに、ウルトラハイビジョン(「4K解像度」、「4K2K」、「4K」)、スーパーハイビジョン(「8K解像度」、「8K4K」、「8K」)のように高解像度であり、且つ大型の表示装置において、トランジスタ3200aのように電界効果移動度が高いトランジスタを駆動回路及び表示部に用いることで、短時間での書き込みが可能であり、表示不良を低減することが可能であり好ましい。
【0207】
また、金属酸化物層3231と接する絶縁層3211及び絶縁層3212は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域(過剰酸素領域)を有することがより好ましい。別言すると、絶縁層3211及び絶縁層3212は、酸素を放出することが可能な絶縁膜である。なお、絶縁層3211及び絶縁層3212に過剰酸素領域を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁層3211及び絶縁層3212を形成する、もしくは成膜後の絶縁層3211及び絶縁層3212を酸素雰囲気下で熱処理すればよい。
【0208】
金属酸化物層3231としては、金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることができる。
【0209】
金属酸化物層3231がIn−M−Zn酸化物の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In>Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5等が挙げられる。
【0210】
また、金属酸化物層3231が、In−M−Zn酸化物で形成される場合、スパッタリングターゲットとしては、多結晶のIn−M−Zn酸化物を含むターゲットを用いると好ましい。多結晶のIn−M−Zn酸化物を含むターゲットを用いることで、結晶性を有する金属酸化物層3231を形成しやすくなる。なお、成膜される金属酸化物層3231の原子数比は、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、金属酸化物層3231に用いるスパッタリングターゲットの組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の場合、成膜される金属酸化物層3231の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の近傍となる場合がある。
【0211】
また、金属酸化物層3231は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0212】
また、金属酸化物層3231は、非単結晶構造であると好ましい。非単結晶構造は、例えば、CAAC(C−Axis Aligned Crystalline)、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAACは最も欠陥準位密度が低い。
【0213】
金属酸化物層3231としては、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い金属酸化物膜を用いることで、優れた電気特性を有するトランジスタを作製することができ好ましい。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性または実質的に高純度真性とよぶ。なお、金属酸化物膜中の不純物としては、代表的には水、水素などが挙げられる。本明細書等において、金属酸化物膜中から水及び水素を低減または除去することを、脱水化、脱水素化と表す場合がある。また、金属酸化物膜、または酸化物絶縁膜中に酸素を添加することを、加酸素化と表す場合があり、加酸素化され且つ化学量論的組成よりも過剰の酸素を有する状態を過酸素化状態と表す場合がある。
【0214】
高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、該金属酸化物膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物膜は、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×10
6μmでチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、例えば、1×10
−13A以下という特性を得ることができる。
【0215】
絶縁層3213は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。または、絶縁層3213は、窒素及びシリコンを有する。また、絶縁層3213は、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキングできる機能を有する。絶縁層3213を設けることで、金属酸化物層3231からの酸素の外部への拡散と、絶縁層3212に含まれる酸素の外部への拡散と、外部から金属酸化物層3231への水素、水等の入り込みを防ぐことができる。
【0216】
絶縁層3213としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化物絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。
【0217】
<OSトランジスタの構成例2>
次に、トランジスタの構造の一例として、トランジスタ3200bについて、
図14(A)(B)(C)を用いて説明する。
図14(A)はトランジスタ3200bの上面図である。
図14(B)は、
図14(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、
図14(C)は、
図14(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0218】
トランジスタ3200bは、金属酸化物層3231、導電層3222a、導電層3222b、および絶縁層3212が積層構造である点において、トランジスタ3200aと異なる。
【0219】
絶縁層3212は、金属酸化物層3231、導電層3222a及び導電層3222bの上の絶縁層3212aと、絶縁層3212aの上の絶縁層3212bを有する。絶縁層3212は、金属酸化物層3231に酸素を供給する機能を有する。すなわち、絶縁層3212は、酸素を有する。また、絶縁層3212aは、酸素を透過することのできる絶縁層である。なお、絶縁層3212aは、後に形成する絶縁層3212bを形成する際の、金属酸化物層3231へのダメージ緩和膜としても機能する。
【0220】
絶縁層3212aとしては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下の酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0221】
また、絶縁層3212aは、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が3×10
17spins/cm
3以下であることが好ましい。これは、絶縁層3212aに含まれる欠陥密度が多いと、該欠陥に酸素が結合してしまい、絶縁層3212aにおける酸素の透過性が減少してしまう。
【0222】
なお、絶縁層3212aにおいては、外部から絶縁層3212aに入った酸素が全て絶縁層3212aの外部に移動せず、絶縁層3212aにとどまる酸素もある。また、絶縁層3212aに酸素が入ると共に、絶縁層3212aに含まれる酸素が絶縁層3212aの外部へ移動することで、絶縁層3212aにおいて酸素の移動が生じる場合もある。絶縁層3212aとして酸素を透過することができる酸化物絶縁層を形成すると、絶縁層3212a上に設けられる、絶縁層3212bから脱離する酸素を、絶縁層3212aを介して金属酸化物層3231に移動させることができる。
【0223】
また、絶縁層3212aは、窒素酸化物に起因する準位密度が低い酸化物絶縁層を用いて形成することができる。なお、当該窒素酸化物に起因する準位密度は、金属酸化物膜の価電子帯の上端のエネルギー(Ev_os)と金属酸化物膜の伝導帯の下端のエネルギー(Ec_os)の間に形成され得る場合がある。上記酸化物絶縁層として、窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化シリコン膜、または窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化アルミニウム膜等を用いることができる。
【0224】
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)において、窒素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出量が1×10
18/cm
3以上5×10
19/cm
3以下である。なお、アンモニアの放出量は、膜の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上550℃以下の加熱処理による放出量とする。
【0225】
窒素酸化物(NO
x、xは0よりも大きく2以下、好ましくは1以上2以下)、代表的にはNO
2またはNOは、絶縁層3212aなどに準位を形成する。当該準位は、金属酸化物層3231のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物が、絶縁層3212a及び金属酸化物層3231の界面に拡散すると、当該準位が絶縁層3212a側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁層3212a及び金属酸化物層3231界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。
【0226】
また、窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応する。絶縁層3212aに含まれる窒素酸化物は、加熱処理において、絶縁層3212bに含まれるアンモニアと反応するため、絶縁層3212aに含まれる窒素酸化物が低減される。このため、絶縁層3212a及び金属酸化物層3231の界面において、電子がトラップされにくい。
【0227】
絶縁層3212aとして、上記酸化物絶縁層を用いることで、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
【0228】
また、上記酸化物絶縁層は、SIMSで測定される窒素濃度が6×10
20atoms/cm
3以下である。
【0229】
基板温度が220℃以上350℃以下であり、シラン及び一酸化二窒素を用いたPECVD法を用いて、上記酸化物絶縁層を形成することで、緻密であり、且つ硬度の高い膜を形成することができる。
【0230】
絶縁層3212bは、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁層である。上記の酸化物絶縁層は、加熱により酸素の一部が脱離する。なお、TDSにおいて、上記の酸化物絶縁層は、酸素の放出量が1.0×10
19atoms/cm
3以上、好ましくは3.0×10
20atoms/cm
3以上の領域を有する。また、上記の酸素の放出量は、TDSにおける加熱処理の温度が50℃以上650℃以下、または50℃以上550℃以下の範囲での総量である。また、上記の酸素の放出量は、TDSにおける酸素原子に換算しての総量である。
【0231】
絶縁層3212bとしては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上400nm以下の、酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0232】
また、絶縁層3212bは、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が1.5×10
18spins/cm
3未満、さらには1×10
18spins/cm
3以下であることが好ましい。なお、絶縁層3212bは、絶縁層3212aと比較して金属酸化物層3231から離れているため、絶縁層3212aより、欠陥密度が多くともよい。
【0233】
また、絶縁層3212は、同種の材料の絶縁層を用いることができるため、絶縁層3212aと絶縁層3212bの界面が明確に確認できない場合がある。したがって、本実施の形態においては、絶縁層3212aと絶縁層3212bの界面は、破線で図示している。なお、本実施の形態においては、絶縁層3212aと絶縁層3212bの2層構造について説明したが、これに限定されず、例えば、絶縁層3212aの単層構造、あるいは3層以上の積層構造としてもよい。
【0234】
トランジスタ3200bにおいて、金属酸化物層3231は、絶縁層3211上の金属酸化物層3231_1と、金属酸化物層3231_1上の金属酸化物層3231_2と、を有する。なお、金属酸化物層3231_1及び金属酸化物層3231_2は、それぞれ同じ元素を有する。例えば、金属酸化物層3231_1及び金属酸化物層3231_2は、上述の金属酸化物層3231が有する元素を、それぞれ独立に有することが好ましい。
【0235】
また、金属酸化物層3231_1及び金属酸化物層3231_2は、それぞれ独立に、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有すると好ましい。一例としては、金属酸化物層3231_1及び金属酸化物層3231_2のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=4:2:3近傍とすると好ましい。ここで、近傍とは、Inが4の場合、Mが1.5以上2.5以下であり、且つZnが2以上4以下を含む。または、金属酸化物層3231_1及び金属酸化物層3231_2のIn、M、及びZnの原子数の比を、In:M:Zn=5:1:6近傍とすると好ましい。このように、金属酸化物層3231_1及び金属酸化物層3231_2を概略同じ組成とすることで、同じスパッタリングターゲットを用いて形成できるため、製造コストを抑制することが可能である。また、同じスパッタリングターゲットを用いる場合、同一チャンバーにて真空中で連続して金属酸化物層3231_1及び金属酸化物層3231_2を成膜することができるため、金属酸化物層3231_1と金属酸化物層3231_2との界面に不純物が取り込まれるのを抑制することができる。
【0236】
ここで、金属酸化物層3231_1は、金属酸化物層3231_2よりも結晶性が低い領域を有していてもよい。なお、金属酸化物層3231_1及び金属酸化物層3231_2の結晶性としては、例えば、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)を用いて分析する、あるいは、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて分析することで解析できる。
【0237】
金属酸化物層3231_1の結晶性が低い領域が過剰酸素の拡散経路となり、金属酸化物層3231_1よりも結晶性の高い金属酸化物層3231_2にも過剰酸素を拡散させることができる。このように、結晶構造が異なる金属酸化物層の積層構造とし、結晶性の低い領域を過剰酸素の拡散経路とすることで、信頼性の高いトランジスタを提供することができる。
【0238】
また、金属酸化物層3231_2が、金属酸化物層3231_1より結晶性が高い領域を有することにより、金属酸化物層3231に混入しうる不純物を抑制することができる。特に、金属酸化物層3231_2の結晶性を高めることで、導電層3222a及び導電層3222bを加工する際のダメージを抑制することができる。金属酸化物層3231の表面、すなわち金属酸化物層3231_2の表面は、導電層3222a及び導電層3222bの加工の際のエッチャントまたはエッチングガスに曝される。しかしながら、金属酸化物層3231_2は、結晶性が高い領域を有する場合、結晶性が低い金属酸化物層3231_1と比較してエッチング耐性に優れる。したがって、金属酸化物層3231_2は、エッチングストッパとして機能する。
【0239】
また、金属酸化物層3231_1は、金属酸化物層3231_2よりも結晶性が低い領域を有することで、キャリア密度が高くなる場合がある。
【0240】
また、金属酸化物層3231_1のキャリア密度が高くなると、金属酸化物層3231_1の伝導帯に対してフェルミ準位が相対的に高くなる場合がある。これにより、金属酸化物層3231_1の伝導帯の下端が低くなり、金属酸化物層3231_1の伝導帯下端と、ゲート絶縁膜(ここでは、絶縁層3211)中に形成されうるトラップ準位とのエネルギー差が大きくなる場合がある。該エネルギー差が大きくなることにより、ゲート絶縁膜中にトラップされる電荷が少なくなり、トランジスタのしきい値電圧の変動を小さくできる場合がある。また、金属酸化物層3231_1のキャリア密度が高くなると、金属酸化物層3231の電界効果移動度を高めることができる。
【0241】
なお、トランジスタ3200bにおいては、金属酸化物層3231を2層の積層構造にする例を示したが、これに限定されず、3層以上積層する構成にしてもよい。
【0242】
トランジスタ3200bが有する導電層3222aは、導電層3222a_1と、導電層3222a_1上の導電層3222a_2と、導電層3222a_2上の導電層3222a_3と、を有する。また、トランジスタ3200bが有する導電層3222bは、導電層3222b_1と、導電層3222b_1上の導電層3222b_2と、導電層3222b_2上の導電層3222b_3と、を有する。
【0243】
例えば、導電層3222a_1、導電層3222b_1、導電層3222a_3、及び導電層3222b_3としては、チタン、タングステン、タンタル、モリブデン、インジウム、ガリウム、錫、及び亜鉛の中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有すると好適である。また、導電層3222a_2及び導電層3222b_2としては、銅、アルミニウム、及び銀の中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有すると好適である。
【0244】
より具体的には、導電層3222a_1、導電層3222b_1、導電層3222a_3、及び導電層3222b_3にIn−Sn酸化物またはIn−Zn酸化物を用い、導電層3222a_2及び導電層3222b_2に銅を用いることができる。
【0245】
また、導電層3222a_1の端部は、導電層3222a_2の端部よりも外側に位置する領域を有し、導電層3222a_3は、導電層3222a_2の上面及び側面を覆い、且つ導電層3222a_1と接する領域を有する。また、導電層3222b_1の端部は、導電層3222b_2の端部よりも外側に位置する領域を有し、導電層3222b_3は、導電層3222b_2の上面及び側面を覆い、且つ導電層3222b_1と接する領域を有する。
【0246】
上記構成とすることで、導電層3222a及び導電層3222bの配線抵抗を低くし、且つ金属酸化物層3231への銅の拡散を抑制できるため好適である。
【0247】
<OSトランジスタの構成例3>
次に、トランジスタの構造の一例として、トランジスタ3200cについて、
図15(A)(B)(C)を用いて説明する。
図15(A)はトランジスタ3200cの上面図である。
図15(B)は、
図15(A)に示す一点鎖線X1−X2間における切断面の断面図に相当し、
図15(C)は、
図15(A)に示す一点鎖線Y1−Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0248】
図15(A)(B)(C)に示すトランジスタ3200cは、絶縁層3224上の導電層3221と、導電層3221上の絶縁層3211と、絶縁層3211上の金属酸化物層3231と、金属酸化物層3231上の絶縁層3212と、絶縁層3212上の導電層3223と、絶縁層3211、金属酸化物層3231、及び導電層3223上の絶縁層3213と、を有する。なお、金属酸化物層3231は、導電層3223と重なるチャネル領域3231iと、絶縁層3213と接するソース領域3231sと、絶縁層3213と接するドレイン領域3231dと、を有する。
【0249】
また、絶縁層3213は、窒素または水素を有する。絶縁層3213と、ソース領域3231s及びドレイン領域3231dと、が接することで、絶縁層3213中の窒素または水素がソース領域3231s及びドレイン領域3231d中に添加される。ソース領域3231s及びドレイン領域3231dは、窒素または水素が添加されることで、キャリア密度が高くなる。
【0250】
また、トランジスタ3200cは、絶縁層3213上の絶縁層3215と、絶縁層3213及び絶縁層3215に設けられた開口部3236aを介して、ソース領域3231sに電気的に接続される導電層3222aと、絶縁層3213及び絶縁層3215に設けられた開口部3236bを介して、ドレイン領域3231dに電気的に接続される導電層3222bと、を有していてもよい。
【0251】
絶縁層3215としては、酸化物絶縁膜を用いることができる。また、絶縁層3215としては、酸化物絶縁膜と、窒化物絶縁膜との積層膜を用いることができる。絶縁層3215として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn酸化物などを用いればよい。また、絶縁層3215としては、外部からの水素、水等のバリア膜として機能する膜であることが好ましい。
【0252】
絶縁層3211は、第1のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁層3212は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。また、絶縁層3213及び絶縁層3215は保護絶縁膜としての機能を有する。
【0253】
また、絶縁層3212は、過剰酸素領域を有する。絶縁層3212が過剰酸素領域を有することで、金属酸化物層3231が有するチャネル領域3231i中に過剰酸素を供給することができる。よって、チャネル領域3231iに形成されうる酸素欠損を過剰酸素により補填することができるため、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0254】
なお、金属酸化物層3231中に過剰酸素を供給させるためには、金属酸化物層3231の下方に形成される絶縁層3211に過剰酸素を供給してもよい。この場合、絶縁層3211中に含まれる過剰酸素は、金属酸化物層3231が有するソース領域3231s、及びドレイン領域3231dにも供給されうる。ソース領域3231s、及びドレイン領域3231d中に過剰酸素が供給されると、ソース領域3231s、及びドレイン領域3231dの抵抗が高くなる場合がある。
【0255】
一方で、金属酸化物層3231の上方に形成される絶縁層3212に過剰酸素を有する構成とすることで、チャネル領域3231iにのみ選択的に過剰酸素を供給させることが可能となる。あるいは、チャネル領域3231i、ソース領域3231s、及びドレイン領域3231dに過剰酸素を供給させたのち、ソース領域3231s及びドレイン領域3231dのキャリア密度を選択的に高めることで、ソース領域3231s、及びドレイン領域3231dの抵抗が高くなることを抑制することができる。
【0256】
また、金属酸化物層3231が有するソース領域3231s及びドレイン領域3231dは、それぞれ、酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損と結合する元素を有すると好ましい。当該酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損と結合する元素としては、代表的には水素、ホウ素、炭素、窒素、フッ素、リン、硫黄、塩素、チタン、希ガス等が挙げられる。また、希ガス元素の代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。上記酸素欠損を形成する元素が、絶縁層3213中に1つまたは複数含まれる場合、上記酸素欠損を形成する元素は、絶縁層3213からソース領域3231s及びドレイン領域3231dに拡散する。または、上記酸素欠損を形成する元素を、不純物添加処理によりソース領域3231s及びドレイン領域3231d中に添加してもよい。もしくは、絶縁層3213からの拡散と、不純物添加処理の双方により、上記酸素欠損を形成する元素を、ソース領域3231s及びドレイン領域3231d中に添加してもよい。
【0257】
不純物元素が酸化物半導体膜に添加されると、酸化物半導体膜中の金属元素と酸素の結合が切断され、酸素欠損が形成される。または、不純物元素が酸化物半導体膜に添加されると、酸化物半導体膜中の金属元素と結合していた酸素が不純物元素と結合し、金属元素から酸素が脱離され、酸素欠損が形成される。これらの結果、酸化物半導体膜においてキャリア密度が増加し、導電性が高くなる。
【0258】
また、導電層3221は、第1のゲート電極としての機能を有し、導電層3223は、第2のゲート電極としての機能を有し、導電層3222aは、ソース電極としての機能を有し、導電層3222bは、ドレイン電極としての機能を有する。
【0259】
また、
図15(C)に示すように、絶縁層3211及び絶縁層3212には開口部3237が設けられる。また、導電層3221は、開口部3237を介して、導電層3223と、電気的に接続される。よって、導電層3221と導電層3223には、同じ電位が与えられる。なお、開口部3237を設けずに、導電層3221と、導電層3223と、に異なる電位を与えてもよい。または、開口部3237を設けずに、導電層3221を遮光膜として用いてもよい。例えば、導電層3221を遮光性の材料により形成することで、チャネル領域3231iに照射される下方からの光を抑制することができる。
【0260】
また、
図15(B)(C)に示すように、金属酸化物層3231は、第1のゲート電極として機能する導電層3221と、第2のゲート電極として機能する導電層3223のそれぞれと対向するように位置し、2つのゲート電極として機能する導電膜に挟まれている。
【0261】
また、トランジスタ3200cもトランジスタ3200a及びトランジスタ3200bと同様にS−channel構造をとる。このような構成を有することで、トランジスタ3200cに含まれる金属酸化物層3231を、第1のゲート電極として機能する導電層3221及び第2のゲート電極として機能する導電層3223の電界によって電気的に取り囲むことができる。
【0262】
トランジスタ3200cは、S−channel構造を有するため、導電層3221または導電層3223によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に金属酸化物層3231に印加することができるため、トランジスタ3200cの電流駆動能力が向上し、高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能であるため、トランジスタ3200cを微細化することが可能となる。また、トランジスタ3200cは、金属酸化物層3231が、導電層3221、及び導電層3223によって取り囲まれた構造を有するため、トランジスタ3200cの機械的強度を高めることができる。
【0263】
なお、トランジスタ3200cを、導電層3223の金属酸化物層3231に対する位置、または導電層3223の形成方法から、TGSA(Top Gate Self Align)型のFETと呼称してもよい。
【0264】
なお、トランジスタ3200cにおいても、トランジスタ3200bと同様に金属酸化物層3231を2層以上積層する構成にしてもよい。
【0265】
また、トランジスタ3200cにおいて、絶縁層3212が導電層3223と重なる部分にのみ設けられているが、これに限られることなく、絶縁層3212が金属酸化物層3231を覆う構成にすることもできる。また、導電層3221を設けない構成にすることもできる。
【0266】
本実施の形態は、少なくともその一部を他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0267】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した表示パネル111の別の一例として、発光素子と反射素子を有するハイブリッド型表示パネルについて、断面構成例を説明する。
【0268】
<断面構成例1>
図16に、表示パネル111の断面構成例を示す。
図16には、FPC112を含む一部の領域、ゲートドライバ313または314における一部の領域472、画素アレイ311における一部の領域471を、それぞれ切断したときの断面の一例を示す。
【0269】
表示パネル111は、基板411と基板412の間に、絶縁層420を有する。また基板411と絶縁層420の間に、発光素子401、トランジスタ403、トランジスタ404、トランジスタ405、着色層413等を有する。また絶縁層420と基板412の間に、液晶素子402、着色層414等を有する。また基板412と絶縁層420は接着層467を介して接着され、基板411と絶縁層420は接着層468を介して接着されている。
【0270】
着色層413、414には、赤色(R)、緑色(G)、または青色(B)等を透過するカラーフィルタを用いることができる。一方、着色層414には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)等を透過するカラーフィルタを用いてもよい。
【0271】
トランジスタ405は、液晶素子402と電気的に接続し、トランジスタ404は、発光素子401と電気的に接続する。トランジスタ404とトランジスタ405は、いずれも絶縁層420の基板411側の面上に形成されているため、これらを同一の工程を用いて作製することができる。
【0272】
基板412には、着色層414、遮光層465、絶縁層428、および液晶素子402の共通電極として機能する導電層442、配向膜464b、絶縁層429等が設けられている。絶縁層429は、液晶素子402のセルギャップを保持するためのスペーサとして機能する。
【0273】
絶縁層420の基板411側には、絶縁層421、絶縁層422、絶縁層423、絶縁層424、絶縁層425等の絶縁層が設けられている。絶縁層421は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層422、絶縁層423、および絶縁層424は、各トランジスタを覆って設けられている。また絶縁層424を覆って絶縁層425が設けられている。絶縁層424および絶縁層425は、平坦化層としての機能を有する。なお、ここではトランジスタ等を覆う絶縁層として、絶縁層422、絶縁層423、絶縁層424の3層を有する場合について示しているが、これに限らず4層以上であってもよいし、単層、または2層であってもよい。また平坦化層として機能する絶縁層424は、不要であれば設けなくてもよい。
【0274】
また、トランジスタ403、トランジスタ404、およびトランジスタ405は、一部がゲートとして機能する導電層451、一部がソースまたはドレインとして機能する導電層452、半導体層461を有する。ここでは、同一の導電膜を加工して得られる複数の層に、同じハッチングパターンを付している。
【0275】
液晶素子402は反射型の液晶素子である。液晶素子402は、導電層441a、液晶463、導電層442が積層された積層構造を有する。また、導電層441aの基板411側に接して、可視光を反射する導電層441bが設けられている。導電層441bは開口416を有する。また、導電層441aおよび導電層442は、可視光を透過する材料を含む。また、液晶463と導電層441aの間に配向膜464aが設けられ、液晶463と導電層442の間に配向膜464bが設けられている。また、基板412の外側の面には、偏光板466を有する。
【0276】
液晶素子402において、導電層441bは可視光を反射する機能を有し、導電層442は可視光を透過する機能を有する。基板412側から入射した光は、偏光板466により偏光され、導電層442、液晶463を透過し、導電層441bで反射する。そして、液晶463および導電層442を再度透過して、偏光板466に達する。このとき、導電層441bと導電層442の間に与える電圧によって液晶の配向を制御し、光の光学変調を制御することができる。すなわち、偏光板466を介して射出される光の強度を制御することができる。また、光は着色層414によって特定の波長領域以外の光が吸収されることにより、取り出される光は、例えば赤色を呈する光となる。
【0277】
発光素子401は、ボトムエミッション型の発光素子である。発光素子401は、絶縁層420側から導電層455、EL層462、および導電層456bの順に積層された積層構造を有する。また導電層456bを覆って導電層456aが設けられている。導電層456bは可視光を反射する材料を含み、導電層455および導電層456aは可視光を透過する材料を含む。発光素子401が発する光は、着色層413、絶縁層420、開口416、導電層442等を介して、基板412側に射出される。
【0278】
ここで、
図16に示すように、開口416には可視光を透過する導電層441aが設けられていることが好ましい。これにより、開口416と重なる領域においてもそれ以外の領域と同様に液晶463が配向するため、これらの領域の境界部で液晶の配向不良が生じ、意図しない光が漏れてしまうことを抑制できる。
【0279】
ここで、基板412の外側の面に配置する偏光板466として直線偏光板を用いてもよいが、円偏光板を用いることもできる。円偏光板としては、例えば、直線偏光板と1/4波長位相差板を積層したものを用いることができる。これにより、外光反射を抑制することができる。また、外光反射を抑制するために光拡散板を設けてもよい。また、偏光板の種類に応じて、液晶素子402に用いる液晶素子のセルギャップ、配向、駆動電圧等を調整することで、所望のコントラストが実現されるようにすればよい。
【0280】
導電層455の端部を覆う絶縁層426上には、絶縁層427が設けられている。絶縁層427は、絶縁層420と基板411が必要以上に接近することを抑制するスペーサとしての機能を有する。また、EL層462や導電層456aを遮蔽マスク(メタルマスク)を用いて形成する場合には、当該遮蔽マスクが被形成面に接触することを抑制するための機能を有していてもよい。なお、絶縁層427は不要であれば設けなくてもよい。
【0281】
トランジスタ404のソースまたはドレインの一方は、導電層454を介して発光素子401の導電層455と電気的に接続されている。
【0282】
トランジスタ405のソースまたはドレインの一方は、接続部407を介して導電層441bと電気的に接続されている。導電層441bと導電層441aは接して設けられ、これらは電気的に接続されている。ここで、接続部407は、絶縁層420に設けられた開口を介して、絶縁層420の両面に設けられる導電層同士を接続する部分である。
【0283】
基板411と基板412が重ならない領域には、接続部408が設けられている。接続部408は、接続層417を介してFPC112と電気的に接続されている。接続部408は接続部407と同様の構成を有している。接続部408の上面は、導電層441aと同一の導電膜を加工して得られた導電層が露出している。これにより、接続部408とFPC112とを接続層417を介して電気的に接続することができる。
【0284】
接着層467が設けられる一部の領域には、接続部409が設けられている。接続部409において、導電層441aと同一の導電膜を加工して得られた導電層と、導電層442が、接続体415により電気的に接続されている。したがって、基板412側に形成された導電層442に、基板411側に接続されたFPC112から入力される信号または電位を、接続部409を介して供給することができる。
【0285】
接続体415としては、例えば導電性の粒子を用いることができる。導電性の粒子としては、有機樹脂またはシリカなどの粒子の表面を金属材料で被覆したものを用いることができる。金属材料としてニッケルや金を用いると接触抵抗を低減できるため好ましい。また、ニッケルをさらに金で被覆するなど、2種類以上の金属材料を層状に被覆させた粒子を用いることが好ましい。また、接続体415として、弾性変形、または塑性変形する材料を用いることが好ましい。このとき導電性の粒子である接続体415は、
図16に示すように上下方向に潰れた形状となる場合がある。こうすることで、接続体415と、これと電気的に接続する導電層との接触面積が増大し、接触抵抗を低減できるほか、接続不良などの不具合の発生を抑制することができる。
【0286】
接続体415は、接着層467に覆われるように配置することが好ましい。例えば、硬化前の接着層467に接続体415を分散させておけばよい。
【0287】
図16では、領域472の例として、トランジスタ403が設けられている例を示している。
【0288】
図16では、トランジスタ403およびトランジスタ404の例として、チャネルが形成される半導体層461を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。一方のゲートは導電層451により、他方のゲートは絶縁層422を介して半導体層461と重なる導電層453により構成されている。このような構成とすることで、トランジスタのしきい値電圧を制御することができる。このとき、2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を供給することによりトランジスタを駆動してもよい。このようなトランジスタは他のトランジスタと比較して電界効果移動度を高めることが可能であり、オン電流を増大させることができる。その結果、高速駆動が可能な回路を作製することができる。さらには、回路部の占有面積を縮小することが可能となる。オン電流の大きなトランジスタを適用することで、表示パネルを大型化、または高精細化したときに配線数が増大したとしても、各配線における信号遅延を低減することが可能であり、表示ムラを抑制することができる。
【0289】
なお、領域472が有するトランジスタと、領域471が有するトランジスタは、同じ構造であってもよい。また領域472が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよいし、異なる構造のトランジスタを組み合わせて用いてもよい。また、領域471が有する複数のトランジスタは、全て同じ構造であってもよいし、異なる構造のトランジスタを組み合わせて用いてもよい。
【0290】
各トランジスタを覆う絶縁層422、絶縁層423のうち少なくとも一方は、水や水素などの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。すなわち、絶縁層422または絶縁層423はバリア膜として機能させることができる。このような構成とすることで、トランジスタに対して外部から不純物が拡散することを効果的に抑制することが可能となり、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
【0291】
基板412側において、着色層414、遮光層465を覆って絶縁層428が設けられている。絶縁層428は、平坦化層としての機能を有していてもよい。絶縁層428により、導電層442の表面を概略平坦にできるため、液晶463の配向状態を均一にできる。
【0292】
<断面構成例2>
また、本発明の一態様の表示パネルは、
図17に示すように、画素に設けられる第1のトランジスタと、第2のトランジスタが重なる領域を有する構成であってもよい。このような構成とすることで、一画素あたりの面積を小さくすることができ、高精細な画像が表示できる画素密度の高い表示パネルを形成することができる。
【0293】
例えば、発光素子401を駆動するためのトランジスタであるトランジスタ404と、トランジスタ406が重なる領域を有するように構成することができる。または、液晶素子402を駆動するためのトランジスタ405と、トランジスタ404およびトランジスタ406の一方が重なる領域を有するように構成してもよい。
【0294】
<断面構成例3>
また、本発明の一態様の表示パネルは、
図18に示すように、表示パネル111aと表示パネル111bが接着層469を介して貼り合わされた構成であってもよい。表示パネル111aは、領域471aに液晶素子402およびトランジスタ405を有し、領域471aを駆動する領域472aにトランジスタ403aを有する。表示パネル111bは、領域471bに発光素子401およびトランジスタ404、406を有し、領域471bを駆動する領域472bにトランジスタ403bを有する。
【0295】
このような構成とすることで、表示パネル111aおよび表示パネル111bのそれぞれに適した作製工程を用いることができ、製品歩留りを向上させることができる。
【0296】
<<各構成要素について>>
以下では、上記に示す各構成要素について説明する。
【0297】
<基板>
表示パネルが有する基板には、平坦面を有する材料を用いることができる。表示素子からの光を取り出す側の基板には、該光を透過する材料を用いる。例えば、ガラス、石英、セラミック、サファイヤ、有機樹脂などの材料を用いることができる。
【0298】
厚さの薄い基板を用いることで、表示パネルの軽量化、薄型化を図ることができる。さらに、可撓性を有する程度の厚さの基板を用いることで、可撓性を有する表示パネルを実現できる。
【0299】
また、発光を取り出さない側の基板は、透光性を有していなくてもよいため、上記に挙げた基板の他に、金属基板等を用いることもできる。金属基板は熱伝導性が高く、基板全体に熱を容易に伝導できるため、表示パネルの局所的な温度上昇を抑制することができ、好ましい。可撓性や曲げ性を得るためには、金属基板の厚さは、10μm以上200μm以下が好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0300】
金属基板を構成する材料としては、特に限定はないが、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属、もしくはアルミニウム合金またはステンレス等の合金などを好適に用いることができる。
【0301】
また、金属基板の表面を酸化する、または表面に絶縁膜を形成するなどにより、絶縁処理が施された基板を用いてもよい。例えば、スピンコート法やディップ法などの塗布法、電着法、蒸着法、またはスパッタリング法などを用いて絶縁膜を形成してもよいし、酸素雰囲気で放置するまたは加熱するほか、陽極酸化法などによって、基板の表面に酸化膜を形成してもよい。
【0302】
可撓性を有し、可視光に対する透過性を有する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂等が挙げられる。特に、熱膨張係数の低い材料を用いることが好ましく、例えば、熱膨張係数が30×10
−6/K以下であるポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、PET等を好適に用いることができる。また、ガラス繊維に有機樹脂を含浸した基板や、無機フィラーを有機樹脂に混ぜて熱膨張係数を下げた基板を使用することもできる。このような材料を用いた基板は、重量が軽いため、該基板を用いた表示パネルも軽量にすることができる。
【0303】
上記材料中に繊維体が含まれている場合、繊維体は有機化合物または無機化合物の高強度繊維を用いる。高強度繊維とは、具体的には引張弾性率またはヤング率の高い繊維のことを言い、代表例としては、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエチレン系繊維、アラミド系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ガラス繊維、または炭素繊維が挙げられる。ガラス繊維としては、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Qガラス等を用いたガラス繊維が挙げられる。これらは、織布または不織布の状態で用い、この繊維体に樹脂を含浸させ樹脂を硬化させた構造物を、可撓性を有する基板として用いてもよい。可撓性を有する基板として、繊維体と樹脂からなる構造物を用いると、曲げや局所的押圧による破損に対する信頼性が向上するため、好ましい。
【0304】
または、可撓性を有する程度に薄いガラス、金属などを基板に用いることもできる。または、ガラスと樹脂材料とが接着層により貼り合わされた複合材料を用いてもよい。
【0305】
可撓性を有する基板に、表示パネルの表面を傷などから保護するハードコート層(例えば、窒化シリコン、酸化アルミニウムなど)や、押圧を分散可能な材質の層(例えば、アラミド樹脂など)等が積層されていてもよい。また、水分等による表示素子の寿命の低下等を抑制するために、可撓性を有する基板に透水性の低い絶縁膜が積層されていてもよい。例えば、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の無機絶縁材料を用いることができる。
【0306】
基板は、複数の層を積層して用いることもできる。特に、ガラス層を有する構成とすると、水や酸素に対するバリア性を向上させ、信頼性の高い表示パネルとすることができる。
【0307】
<トランジスタ>
トランジスタは、ゲート電極として機能する導電層と、半導体層と、ソース電極として機能する導電層と、ドレイン電極として機能する導電層と、ゲート絶縁層として機能する絶縁層と、を有する。上記では、ボトムゲート構造のトランジスタを適用した場合を示している。
【0308】
なお、本発明の一態様の表示パネルが有するトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、プレーナ型のトランジスタとしてもよいし、スタガ型のトランジスタとしてもよいし、逆スタガ型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート型またはボトムゲート型のいずれのトランジスタ構造としてもよい。または、チャネル領域の上下にゲート電極が設けられていてもよい。
【0309】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0310】
また、トランジスタに用いる半導体材料としては、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である金属酸化物を用いることができる。代表的には、インジウムを含む金属酸化物などであり、例えば、後述するCAC−OSなどを用いることができる。
【0311】
シリコンよりもバンドギャップが広く、且つキャリア密度の小さい金属酸化物を用いたトランジスタは、その低いオフ電流により、トランジスタと直列に接続された容量素子に蓄積した電荷を長期間に亘って保持することが可能である。
【0312】
半導体層は、例えばインジウム、亜鉛およびM(アルミニウム、チタン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、スズ、ネオジムまたはハフニウム等の金属)を含むIn−M−Zn系酸化物で表記される膜とすることができる。
【0313】
半導体層を構成する金属酸化物がIn−M−Zn系酸化物の場合、In−M−Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8等が好ましい。なお、成膜される半導体層の原子数比はそれぞれ、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0314】
本実施の形態で例示したボトムゲート構造のトランジスタは、作製工程を削減できるため好ましい。またこのとき金属酸化物を用いることで、多結晶シリコンよりも低温で形成できる、半導体層よりも下層の配線や電極の材料、基板の材料として、耐熱性の低い材料を用いることが可能なため、材料の選択の幅を広げることができる。例えば、極めて大面積のガラス基板などを好適に用いることができる。
【0315】
半導体層としては、キャリア密度の低い金属酸化物膜を用いる。例えば、半導体層は、キャリア密度が1×10
17/cm
3以下、好ましくは1×10
15/cm
3以下、さらに好ましくは1×10
13/cm
3以下、より好ましくは1×10
11/cm
3以下、さらに好ましくは1×10
10/cm
3未満であり、1×10
−9/cm
3以上のキャリア密度の金属酸化物を用いることができる。そのような金属酸化物を、高純度真性または実質的に高純度真性な金属酸化物と呼ぶ。これにより不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低いため、安定な特性を有する金属酸化物であるといえる。
【0316】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性および電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とするトランジスタの半導体特性を得るために、半導体層のキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0317】
半導体層を構成する金属酸化物において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、半導体層において酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、半導体層におけるシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、2×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは2×10
17atoms/cm
3以下とする。
【0318】
また、アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、金属酸化物と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大してしまうことがある。このため半導体層における二次イオン質量分析法により得られるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは2×10
16atoms/cm
3以下にする。
【0319】
また、半導体層を構成する金属酸化物に窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている金属酸化物を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため半導体層における二次イオン質量分析法により得られる窒素濃度は、5×10
18atoms/cm
3以下にすることが好ましい。
【0320】
また、半導体層は、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、c軸に配向した結晶を有するCAAC−OS(C−Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor、または、C−Axis Aligned and A−B−plane Anchored Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC−OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0321】
非晶質構造の金属酸化物膜は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質構造の酸化物膜は、例えば、完全な非晶質構造であり、結晶部を有さない。
【0322】
なお、半導体層が、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC−OSの領域、単結晶構造の領域のうち、二種以上を有する混合膜であってもよい。混合膜は、例えば上述した領域のうち、いずれか二種以上の領域を含む単層構造、または積層構造を有する場合がある。
【0323】
<CAC−OSの構成>
以下では、本発明の一態様で開示されるトランジスタに用いることができるCAC−OSの構成について説明する。
【0324】
本明細書等において、金属酸化物とは、広い表現での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体などに分類される。例えば、トランジスタの活性層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、OS FETと記載する場合においては、金属酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
【0325】
本明細書において、金属酸化物が、導電体の機能を有する領域と、誘電体の機能を有する領域とが混合し、金属酸化物全体では半導体として機能する場合、CAC−OS、またはCAC−metal oxideと定義する。
【0326】
つまり、CAC−OSとは、例えば、酸化物半導体を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、0.5nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、酸化物半導体において、一つあるいはそれ以上の元素が偏在し、該元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、0.5nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
【0327】
特定の元素が偏在した領域は、該元素が有する性質により、物理特性が決定する。例えば、金属酸化物を構成する元素の中でも比較的、絶縁体となる傾向がある元素が偏在した領域は、誘電体領域となる。一方、金属酸化物を構成する元素の中でも比較的、導体となる傾向がある元素が偏在した領域は、導電体領域となる。また、導電体領域、および誘電体領域がモザイク状に混合することで、材料としては、半導体として機能する。
【0328】
つまり、本発明の一態様における金属酸化物は、物理特性が異なる材料が混合した、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)の一種である。
【0329】
なお、酸化物半導体は、少なくともインジウムを含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、元素M(Mは、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)が含まれていてもよい。
【0330】
例えば、In−Ga−Zn酸化物におけるCAC−OS(CAC−OSの中でもIn−Ga−Zn酸化物を、特にCAC−IGZOと呼称してもよい)とは、インジウム酸化物(以下、InO
X1(X1は0よりも大きい実数)とする)、またはインジウム亜鉛酸化物(以下、In
X2Zn
Y2O
Z2(X2、Y2、およびZ2は0よりも大きい実数)とする)と、ガリウム酸化物(以下、GaO
X3(X3は0よりも大きい実数)とする)、またはガリウム亜鉛酸化物(以下、Ga
X4Zn
Y4O
Z4(X4、Y4、およびZ4は0よりも大きい実数)とする)などと、に材料が分離することでモザイク状となり、モザイク状のInO
X1、またはIn
X2Zn
Y2O
Z2が、膜中に均一に分布した構成(以下、クラウド状ともいう)である。
【0331】
つまり、CAC−OSは、GaO
X3が主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域とが、混合している構成を有する複合酸化物半導体である。なお、本明細書において、例えば、第1の領域の元素Mに対するInの原子数比が、第2の領域の元素Mに対するInの原子数比よりも大きいことを、第1の領域は、第2の領域と比較して、Inの濃度が高いとする。
【0332】
なお、IGZOは通称であり、In、Ga、Zn、およびOによる1つの化合物をいう場合がある。代表例として、InGaO
3(ZnO)
m1(m1は自然数)、またはIn
(1+x0)Ga
(1−x0)O
3(ZnO)
m0(−1≦x0≦1、m0は任意数)で表される結晶性の化合物が挙げられる。
【0333】
上記結晶性の化合物は、単結晶構造、多結晶構造、またはCAAC構造を有する。なお、CAAC構造とは、複数のIGZOのナノ結晶がc軸配向を有し、かつa−b面においては配向せずに連結した結晶構造である。
【0334】
一方、CAC−OSは、酸化物半導体の材料構成に関する。CAC−OSとは、In、Ga、Zn、およびOを含む材料構成において、一部にGaを主成分とするナノ粒子状領域が観察され、一部にInを主成分とするナノ粒子状領域が観察され、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。従って、CAC−OSにおいて、結晶構造は副次的な要素である。
【0335】
なお、CAC−OSは、組成の異なる二種類以上の膜の積層構造は含まないものとする。例えば、Inを主成分とする膜と、Gaを主成分とする膜との2層からなる構造は、含まない。
【0336】
なお、GaO
X3が主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0337】
なお、ガリウムの代わりに、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれている場合、CAC−OSは、一部に該元素を主成分とするナノ粒子状領域が観察され、一部にInを主成分とするナノ粒子状領域が観察され、それぞれモザイク状にランダムに分散している構成をいう。
【0338】
<CAC−OSの解析>
続いて、各種測定方法を用い、基板上に成膜した酸化物半導体について測定を行った結果について説明する。
【0339】
<試料の構成と作製方法>
以下では、本発明の一態様に係る9個の試料について説明する。各試料は、それぞれ、酸化物半導体を成膜する際の基板温度、および酸素ガス流量比を異なる条件で作製する。なお、試料は、基板と、基板上の酸化物半導体と、を有する構造である。
【0340】
各試料の作製方法について、説明する。
【0341】
まず、基板として、ガラス基板を用いる。続いて、スパッタリング装置を用いて、ガラス基板上に酸化物半導体として、厚さ100nmのIn−Ga−Zn酸化物を形成する。成膜条件は、チャンバー内の圧力を0.6Paとし、ターゲットには、酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])を用いる。また、スパッタリング装置内に設置された酸化物ターゲットに2500WのAC電力を供給する。
【0342】
なお、酸化物を成膜する際の条件として、基板温度を、意図的に加熱しない温度(以下、室温またはR.T.ともいう)、130℃、または170℃とした。また、Arと酸素の混合ガスに対する酸素ガスの流量比(以下、酸素ガス流量比ともいう)を、10%、30%、または100%とすることで、9個の試料を作製する。
【0343】
<X線回折による解析>
本項目では、9個の試料に対し、X線回折(XRD:X−ray diffraction)測定を行った結果について説明する。なお、XRD装置として、Bruker社製D8 ADVANCEを用いた。また、条件は、Out−of−plane法によるθ/2θスキャンにて、走査範囲を15deg.乃至50deg.、ステップ幅を0.02deg.、走査速度を3.0deg./分とした。
【0344】
図19にOut−of−plane法を用いてXRDスペクトルを測定した結果を示す。なお、
図19において、上段には成膜時の基板温度条件が170℃の試料における測定結果、中段には成膜時の基板温度条件が130℃の試料における測定結果、下段には成膜時の基板温度条件がR.T.の試料における測定結果を示す。また、左側の列には酸素ガス流量比の条件が10%の試料における測定結果、中央の列には酸素ガス流量比の条件が30%の試料における測定結果、右側の列には酸素ガス流量比の条件が100%の試料における測定結果、を示す。
【0345】
図19に示すXRDスペクトルは、成膜時の基板温度を高くする、または、成膜時の酸素ガス流量比の割合を大きくすることで、2θ=31°付近のピーク強度が高くなる。なお、2θ=31°付近のピークは、被形成面または上面に略垂直方向に対してc軸に配向した結晶性IGZO化合物(CAAC−IGZOともいう)であることに由来することが分かっている。
【0346】
また、
図19に示すXRDスペクトルは、成膜時の基板温度が低い、または、酸素ガス流量比が小さいほど、明確なピークが現れなかった。従って、成膜時の基板温度が低い、または、酸素ガス流量比が小さい試料は、測定領域のa−b面方向、およびc軸方向の配向は見られないことが分かる。
【0347】
<電子顕微鏡による解析>
本項目では、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料を、HAADF(High−Angle Annular Dark Field)−STEM(Scanning Transmission Electron Microscope)によって観察、および解析した結果について説明する(以下、HAADF−STEMによって取得した像は、TEM像ともいう)。
【0348】
HAADF−STEMによって取得した平面像(以下、平面TEM像ともいう)、および断面像(以下、断面TEM像ともいう)の画像解析を行った結果について説明する。なお、TEM像は、球面収差補正機能を用いて観察した。なお、HAADF−STEM像の撮影には、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM−ARM200Fを用いて、加速電圧200kV、ビーム径約0.1nmφの電子線を照射して行った。
【0349】
図20(A)は、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料の平面TEM像である。
図20(B)は、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料の断面TEM像である。
【0350】
<電子線回折パターンの解析>
本項目では、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料に、プローブ径が1nmの電子線(ナノビーム電子線ともいう)を照射することで、電子線回折パターンを取得した結果について説明する。
【0351】
図20(A)に示す、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料の平面TEM像において、黒点a1、黒点a2、黒点a3、黒点a4、および黒点a5で示す電子線回折パターンを観察する。なお、電子線回折パターンの観察は、電子線を照射しながら0秒の位置から35秒の位置まで一定の速度で移動させながら行う。黒点a1の結果を
図20(C)、黒点a2の結果を
図20(D)、黒点a3の結果を
図20(E)、黒点a4の結果を
図20(F)、および黒点a5の結果を
図20(G)に示す。
【0352】
図20(C)、
図20(D)、
図20(E)、
図20(F)、および
図20(G)より、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測できる。また、リング状の領域に複数のスポットが観測できる。
【0353】
また、
図20(B)に示す、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料の断面TEM像において、黒点b1、黒点b2、黒点b3、黒点b4、および黒点b5で示す電子線回折パターンを観察する。黒点b1の結果を
図20(H)、黒点b2の結果を
図20(I)、黒点b3の結果を
図20(J)、黒点b4の結果を
図20(K)、および黒点b5の結果を
図20(L)に示す。
【0354】
図20(H)、
図20(I)、
図20(J)、
図20(K)、および
図20(L)より、リング状に輝度の高い領域が観測できる。また、リング状の領域に複数のスポットが観測できる。
【0355】
ここで、例えば、InGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、InGaZnO
4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる回折パターンが見られる。つまり、CAAC−OSは、c軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、リング状の回折パターンが確認される。つまり、CAAC−OSは、a軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。
【0356】
また、微結晶を有する酸化物半導体(nano crystalline oxide semiconductor。以下、nc−OSという。)に対し、大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。また、nc−OSに対し、小さいプローブ径の電子線(例えば50nm未満)を用いるナノビーム電子線回折を行うと、輝点(スポット)が観測される。また、nc−OSに対しナノビーム電子線回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。さらに、リング状の領域に複数の輝点が観測される場合がある。
【0357】
成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料の電子線回折パターンは、リング状に輝度の高い領域と、該リング領域に複数の輝点を有する。従って、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料は、電子線回折パターンが、nc−OSになり、平面方向、および断面方向において、配向性は有さない。
【0358】
以上より、成膜時の基板温度が低い、または、酸素ガス流量比が小さい酸化物半導体は、アモルファス構造の酸化物半導体膜とも、単結晶構造の酸化物半導体膜とも明確に異なる性質を有すると推定できる。
【0359】
<元素分析>
本項目では、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray spectroscopy)を用い、EDXマッピングを取得し、評価することによって、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料の元素分析を行った結果について説明する。なお、EDX測定には、元素分析装置として日本電子株式会社製エネルギー分散型X線分析装置JED−2300Tを用いる。なお、試料から放出されたX線の検出にはSiドリフト検出器を用いる。
【0360】
EDX測定では、試料の分析対象領域の各点に電子線照射を行い、これにより発生する試料の特性X線のエネルギーと発生回数を測定し、各点に対応するEDXスペクトルを得る。本実施の形態では、各点のEDXスペクトルのピークを、In原子のL殻への電子遷移、Ga原子のK殻への電子遷移、Zn原子のK殻への電子遷移及びO原子のK殻への電子遷移に帰属させ、各点におけるそれぞれの原子の比率を算出する。これを試料の分析対象領域について行うことにより、各原子の比率の分布が示されたEDXマッピングを得ることができる。
【0361】
図21には、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料の断面におけるEDXマッピングを示す。
図21(A)は、Ga原子のEDXマッピング(全原子に対するGa原子の比率は1.18乃至18.64[atomic%]の範囲とする)である。
図21(B)は、In原子のEDXマッピング(全原子に対するIn原子の比率は9.28乃至33.74[atomic%]の範囲とする)である。
図21(C)は、Zn原子のEDXマッピング(全原子に対するZn原子の比率は6.69乃至24.99[atomic%]の範囲とする)である。また、
図21(A)、
図21(B)、および
図21(C)は、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料の断面において、同範囲の領域を示している。なお、EDXマッピングは、範囲における、測定元素が多いほど明るくなり、測定元素が少ないほど暗くなるように、明暗で元素の割合を示している。また、
図21に示すEDXマッピングの倍率は720万倍である。
【0362】
図21(A)、
図21(B)、および
図21(C)に示すEDXマッピングでは、画像に相対的な明暗の分布が見られ、成膜時の基板温度R.T.、および酸素ガス流量比10%で作製した試料において、各原子が分布を持って存在している様子が確認できる。ここで、
図21(A)、
図21(B)、および
図21(C)に示す実線で囲む範囲と破線で囲む範囲に注目する。
【0363】
図21(A)では、実線で囲む範囲は、相対的に暗い領域を多く含み、破線で囲む範囲は、相対的に明るい領域を多く含む。また、
図21(B)では実線で囲む範囲は、相対的に明るい領域を多く含み、破線で囲む範囲は、相対的に暗い領域を多く含む。
【0364】
つまり、実線で囲む範囲はIn原子が相対的に多い領域であり、破線で囲む範囲はIn原子が相対的に少ない領域である。ここで、
図21(C)では、実線で囲む範囲において、右側は相対的に明るい領域であり、左側は相対的に暗い領域である。従って、実線で囲む範囲は、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1などが主成分である領域である。
【0365】
また、実線で囲む範囲はGa原子が相対的に少ない領域であり、破線で囲む範囲はGa原子が相対的に多い領域である。
図21(C)では、破線で囲む範囲において、左上の領域は、相対的に明るい領域であり、右下側の領域は、相対的に暗い領域である。従って、破線で囲む範囲は、GaO
X3、またはGa
X4Zn
Y4O
Z4などが主成分である領域である。
【0366】
また、
図21(A)、
図21(B)、および
図21(C)より、In原子の分布は、Ga原子よりも、比較的、均一に分布しており、InO
X1が主成分である領域は、In
X2Zn
Y2O
Z2が主成分となる領域を介して、互いに繋がって形成されているように見える。このように、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域は、クラウド状に広がって形成されている。
【0367】
このように、GaO
X3などが主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域とが、偏在し、混合している構造を有するIn−Ga−Zn酸化物を、CAC−OSと呼称することができる。
【0368】
また、CAC−OSにおける結晶構造は、nc構造を有する。CAC−OSが有するnc構造は、電子線回折像において、単結晶、多結晶、またはCAAC構造を含むIGZOに起因する輝点(スポット)以外にも、数か所以上の輝点(スポット)を有する。または、数か所以上の輝点(スポット)に加え、リング状に輝度の高い領域が現れるとして結晶構造が定義される。
【0369】
また、
図21(A)、
図21(B)、および
図21(C)より、GaO
X3などが主成分である領域、及びIn
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域のサイズは、0.5nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下で観察される。なお、好ましくは、EDXマッピングにおいて、各元素が主成分である領域の径は、1nm以上2nm以下とする。
【0370】
以上より、CAC−OSは、金属元素が均一に分布したIGZO化合物とは異なる構造であり、IGZO化合物と異なる性質を有する。つまり、CAC−OSは、GaO
X3などが主成分である領域と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域と、に互いに相分離し、各元素を主成分とする領域がモザイク状である構造を有する。
【0371】
ここで、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域は、GaO
X3などが主成分である領域と比較して、導電性が高い領域である。つまり、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域を、キャリアが流れることにより、酸化物半導体としての導電性が発現する。従って、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域が、酸化物半導体中にクラウド状に分布することで、高い電界効果移動度(μ)が実現できる。
【0372】
一方、GaO
X3などが主成分である領域は、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1が主成分である領域と比較して、絶縁性が高い領域である。つまり、GaO
X3などが主成分である領域が、酸化物半導体中に分布することで、リーク電流を抑制し、良好なスイッチング動作を実現できる。
【0373】
従って、CAC−OSを半導体素子に用いた場合、GaO
X3などに起因する絶縁性と、In
X2Zn
Y2O
Z2、またはInO
X1に起因する導電性とが、相補的に作用することにより、高いオン電流(Ion)、および高い電界効果移動度(μ)を実現することができる。
【0374】
また、CAC−OSを用いた半導体素子は、信頼性が高い。従って、CAC−OSは、表示パネルをはじめとするさまざまな半導体装置に最適である。
【0375】
また、半導体層にCAC−OSを有するトランジスタは電界効果移動度が高く、且つ駆動能力が高いので、該トランジスタを、駆動回路、代表的にはゲート線を駆動するゲートドライバに用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)表示パネルを提供することができる。また、該トランジスタを、表示パネルが有するソース線へデータ信号を供給するソースドライバに用いることで、接続される配線数が少ない表示パネルを提供することができる。
【0376】
また、半導体層にCAC−OSを有するトランジスタは、低温ポリシリコンを用いたトランジスタとは異なり、レーザ結晶化工程が不要である。このため、大面積基板を用いた表示パネルであっても、製造コストを低減することが可能である。さらに、ウルトラハイビジョン(4K2K)、スーパーハイビジョン(8K4K)のように高解像度、且つ大型の表示パネルにおいても、半導体層にCAC−OSを有するトランジスタをゲートドライバなどの駆動回路および画素アレイに用いることで、短時間での書き込みが可能であり好ましい。
【0377】
または、トランジスタのチャネルが形成される半導体にシリコンを用いてもよい。シリコンとしてアモルファスシリコンを用いてもよいが、特に結晶性を有するシリコンを用いることが好ましい。例えば、微結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンなどを用いることが好ましい。特に、多結晶シリコンは、単結晶シリコンに比べて低温で形成でき、且つアモルファスシリコンに比べて高い電界効果移動度と高い信頼性を備える。
【0378】
本実施の形態で例示したボトムゲート構造のトランジスタは、作製工程を削減できるため好ましい。またこのときアモルファスシリコンを用いることで、多結晶シリコンよりも低温で形成できるため、半導体層よりも下層の配線や電極の材料、基板の材料として、耐熱性の低い材料を用いることが可能なため、材料の選択の幅を広げることができる。例えば、極めて大面積のガラス基板などを好適に用いることができる。一方、トップゲート型のトランジスタは、自己整合的に不純物領域を形成しやすいため、特性のばらつきなどを低減することができ好ましい。このとき特に、多結晶シリコンや単結晶シリコンなどを用いる場合に適している。
【0379】
<導電層>
トランジスタのゲート、ソースおよびドレインのほか、表示パネルを構成する各種配線および電極などの導電層に用いることのできる材料としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金などが挙げられる。またこれらの材料を含む膜を単層で、または積層構造として用いることができる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、チタン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、その上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、その上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛等の酸化物を用いてもよい。また、マンガンを含む銅を用いると、エッチングによる形状の制御性が高まるため好ましい。
【0380】
また、透光性を有する導電性材料としては、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などの導電性酸化物またはグラフェンを用いることができる。または、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、またはチタンなどの金属材料や、該金属材料を含む合金材料を用いることができる。または、該金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)などを用いてもよい。なお、金属材料、合金材料(またはそれらの窒化物)を用いる場合には、透光性を有する程度に薄くすればよい。また、上記材料の積層膜を導電層として用いることができる。例えば、銀とマグネシウムの合金とインジウムスズ酸化物の積層膜などを用いると、導電性を高めることができるため好ましい。これらは、表示パネルを構成する各種配線および電極などの導電層に用いることができる。
【0381】
<絶縁層>
各絶縁層に用いることのできる絶縁材料としては、例えば、アクリル、エポキシなどの樹脂、シロキサン結合を有する樹脂の他、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料を用いることもできる。
【0382】
また、発光素子は、一対の透水性の低い絶縁膜の間に設けられていることが好ましい。これにより、発光素子に水等の不純物が侵入することを抑制でき、装置の信頼性の低下を抑制できる。
【0383】
透水性の低い絶縁膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の窒素と珪素を含む膜や、窒化アルミニウム膜等の窒素とアルミニウムを含む膜等が挙げられる。また、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜等を用いてもよい。
【0384】
例えば、透水性の低い絶縁膜の水蒸気透過量は、1×10
−5[g/(m
2・day)]以下、好ましくは1×10
−6[g/(m
2・day)]以下、より好ましくは1×10
−7[g/(m
2・day)]以下、さらに好ましくは1×10
−8[g/(m
2・day)]以下とする。
【0385】
<液晶素子>
液晶素子としては、例えば垂直配向(VA:Vertical Alignment)モードが適用された液晶素子を用いることができる。垂直配向モードとしては、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。
【0386】
また、液晶素子には、様々なモードが適用された液晶素子を用いることができる。例えばVAモードのほかに、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、ゲストホストモード等が適用された液晶素子を用いることができる。
【0387】
なお、液晶素子は、液晶の光学的変調作用によって光の透過または非透過を制御する素子である。なお、液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(横方向の電界、縦方向の電界または斜め方向の電界を含む)によって制御される。なお、液晶素子に用いる液晶としては、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0388】
また、液晶材料としては、ポジ型の液晶、またはネガ型の液晶のいずれを用いてもよく、適用するモードや設計に応じて最適な液晶材料を用いればよい。
【0389】
また、液晶の配向を制御するため、配向膜を設けることができる。なお、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性である。また、ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示パネルの不良や破損を軽減することができる。
【0390】
また、液晶素子として、透過型の液晶素子、反射型の液晶素子、または半透過型の液晶素子などを用いることができる。
【0391】
本発明の一態様では、特に反射型の液晶素子を用いることができる。
【0392】
透過型または半透過型の液晶素子を用いる場合、一対の基板を挟むように、2つの偏光板を設ける。また偏光板よりも外側に、バックライトを設ける。バックライトとしては、直下型のバックライトであってもよいし、エッジライト型のバックライトであってもよい。LED(Light Emitting Diode)を備える直下型のバックライトを用いると、ローカルディミングが容易となり、コントラストを高めることができるため好ましい。また、エッジライト型のバックライトを用いると、バックライトを含めたモジュールの厚さを低減できるため好ましい。
【0393】
反射型の液晶素子を用いる場合には、表示面側に偏光板を設ける。またこれとは別に、表示面側に光拡散板を配置すると、視認性を向上させられるため好ましい。
【0394】
また、反射型、または半透過型の液晶素子を用いる場合、偏光板よりも外側に、フロントライトを設けてもよい。フロントライトとしては、エッジライト型のフロントライトを用いることが好ましい。LED(Light Emitting Diode)を備えるフロントライトを用いると、消費電力を低減できるため好ましい。
【0395】
<発光素子>
発光素子としては、自発光が可能な素子を用いることができ、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでいる。例えば、有機EL、無機EL、QLED、LED等を用いることができる。
【0396】
発光素子は、トップエミッション型、ボトムエミッション型、デュアルエミッション型などがある。光を取り出す側の電極には、可視光を透過する導電膜を用いる。また、光を取り出さない側の電極には、可視光を反射する導電膜を用いることが好ましい。
【0397】
EL層は少なくとも発光層を有する。EL層は、発光層以外の層として、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、またはバイポーラ性の物質(電子輸送性および正孔輸送性が高い物質)等を含む層をさらに有していてもよい。
【0398】
EL層には低分子系化合物および高分子系化合物のいずれを用いることもでき、無機化合物を含んでいてもよい。EL層を構成する層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0399】
陰極と陽極の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、EL層に陽極側から正孔が注入され、陰極側から電子が注入される。注入された電子と正孔はEL層において再結合し、EL層に含まれる発光物質が発光する。
【0400】
発光素子として、白色発光の発光素子を適用する場合には、EL層に2種類以上の発光物質を含む構成とすることが好ましい。例えば、2以上の発光物質の各々の発光が補色の関係となるように、発光物質を選択することにより白色発光を得ることができる。例えば、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)、O(橙)等の発光を示す発光物質、またはR、G、Bのうち2以上の色のスペクトル成分を含む発光を示す発光物質のうち、2以上を含むことが好ましい。また、発光素子からの発光のスペクトルが、可視光領域の波長(例えば350nm乃至750nm)の範囲内に2以上のピークを有する発光素子を適用することが好ましい。また、黄色の波長領域にピークを有する材料の発光スペクトルは、緑色および赤色の波長領域にもスペクトル成分を有する材料であることが好ましい。
【0401】
EL層は、一の色を発光する発光材料を含む発光層と、他の色を発光する発光材料を含む発光層とが積層された構成とすることが好ましい。例えば、EL層における複数の発光層は、互いに接して積層されていてもよいし、いずれの発光材料も含まない領域を介して積層されていてもよい。例えば、蛍光発光層と燐光発光層との間に、当該蛍光発光層または燐光発光層と同一の材料(例えばホスト材料、アシスト材料)を含み、且ついずれの発光材料も含まない領域を設ける構成としてもよい。これにより、発光素子の作製が容易になり、また、駆動電圧が低減される。
【0402】
また、発光素子は、EL層を1つ有するシングル素子であってもよいし、複数のEL層が電荷発生層を介して積層されたタンデム素子であってもよい。
【0403】
可視光を透過する導電膜は、例えば、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などを用いて形成することができる。また、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、もしくはチタン等の金属材料、これら金属材料を含む合金、またはこれら金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等も、透光性を有する程度に薄く形成することで用いることができる。また、上記材料の積層膜を導電層として用いることができる。例えば、銀とマグネシウムの合金とインジウム錫酸化物の積層膜などを用いると、導電性を高めることができるため好ましい。また、グラフェン等を用いてもよい。
【0404】
可視光を反射する導電膜は、例えば、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、もしくはパラジウム等の金属材料、またはこれら金属材料を含む合金を用いることができる。また、上記金属材料や合金に、ランタン、ネオジム、またはゲルマニウム等が添加されていてもよい。また、チタン、ニッケル、またはネオジムと、アルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)を用いてもよい。また銅、パラジウム、マグネシウムと、銀を含む合金を用いてもよい。銀と銅を含む合金は、耐熱性が高いため好ましい。さらに、アルミニウム膜またはアルミニウム合金膜に接して金属膜または金属酸化物膜を積層することで、酸化を抑制することができる。このような金属膜、金属酸化物膜の材料としては、チタンや酸化チタンなどが挙げられる。また、上記可視光を透過する導電膜と金属材料からなる膜とを積層してもよい。例えば、銀とインジウム錫酸化物の積層膜、銀とマグネシウムの合金とインジウム錫酸化物の積層膜などを用いることができる。
【0405】
電極は、それぞれ、蒸着法やスパッタリング法を用いて形成すればよい。そのほか、インクジェット法などの吐出法、スクリーン印刷法などの印刷法、またはメッキ法を用いて形成することができる。
【0406】
なお、上述した、発光層、ならびに正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、電子輸送性の高い物質、および電子注入性の高い物質、バイポーラ性の物質等を含む層は、それぞれ量子ドットなどの無機化合物や、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を有していてもよい。例えば、量子ドットを発光層に用いることで、発光材料として機能させることもできる。
【0407】
なお、量子ドット材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料などを用いることができる。また、12族と16族、13族と15族、または14族と16族の元素グループを含む材料を用いてもよい。または、カドミウム、セレン、亜鉛、硫黄、リン、インジウム、テルル、鉛、ガリウム、ヒ素、アルミニウム等の元素を含む量子ドット材料を用いてもよい。
【0408】
<接着層>
接着層としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用いてもよい。
【0409】
また、上記樹脂に乾燥剤を含んでいてもよい。例えば、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウムや酸化バリウム等)のように、化学吸着によって水分を吸着する物質を用いることができる。または、ゼオライトやシリカゲル等のように、物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。乾燥剤が含まれていると、水分などの不純物が素子に侵入することを抑制でき、表示パネルの信頼性が向上するため好ましい。
【0410】
また、上記樹脂に屈折率の高いフィラーや光散乱部材を混合することにより、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、酸化チタン、酸化バリウム、ゼオライト、ジルコニウム等を用いることができる。
【0411】
<接続層>
接続層としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)や、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)などを用いることができる。
【0412】
<着色層>
着色層に用いることのできる材料としては、金属材料、樹脂材料、顔料または染料が含まれた樹脂材料などが挙げられる。
【0413】
<遮光層>
遮光層として用いることのできる材料としては、カーボンブラック、チタンブラック、金属、金属酸化物、複数の金属酸化物の固溶体を含む複合酸化物等が挙げられる。遮光層は、樹脂材料を含む膜であってもよいし、金属などの無機材料の薄膜であってもよい。また、遮光層に、着色層の材料を含む膜の積層膜を用いることもできる。例えば、ある色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜と、他の色の光を透過する着色層に用いる材料を含む膜との積層構造を用いることができる。着色層と遮光層の材料を共通化することで、装置を共通化できるほか工程を簡略化できるため好ましい。
【0414】
本実施の形態は、少なくともその一部を他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0415】
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記実施の形態に記載の表示装置を適用することが可能な情報処理装置について、
図22および
図23を参照しながら説明する。
【0416】
図22および
図23は、本発明の一態様の情報処理装置の構成を説明する図である。
図22(A)は情報処理装置のブロック図であり、
図22(B)乃至
図22(E)は情報処理装置の構成を説明する斜視図である。また、
図23(A)乃至
図23(E)は情報処理装置の構成を説明する斜視図である。
【0417】
<情報処理装置>
本実施の形態で説明する情報処理装置5200Bは、演算装置5210と、入出力装置5220とを、有する(
図22(A)参照)。
【0418】
演算装置5210は、操作情報を供給される機能を備え、操作情報に基づいて画像情報を供給する機能を備える。
【0419】
入出力装置5220は、表示部5230、入力部5240、検知部5250、通信部5290を有し、操作情報を供給する機能および画像情報を供給される機能を備える。また、入出力装置5220は、検知情報を供給する機能、通信情報を供給する機能および通信情報を供給される機能を備える。
【0420】
入力部5240は操作情報を供給する機能を備える。例えば、入力部5240は、情報処理装置5200Bの使用者の操作に基づいて操作情報を供給する。
【0421】
具体的には、キーボード、ハードウェアボタン、ポインティングデバイス、タッチセンサ、音声入力装置、視線入力装置などを、入力部5240に用いることができる。
【0422】
表示部5230は、画像情報を表示する機能を備える。例えば、上記実施の形態に記載の表示パネル111を表示部5230に用いることができる。
【0423】
検知部5250は検知情報を供給する機能を備える。例えば、情報処理装置が使用されている周辺の環境を検知して、検知情報として供給する機能を備える。
【0424】
具体的には、照度センサ、撮像装置、姿勢検出装置、圧力センサ、人感センサなどを検知部5250に用いることができる。
【0425】
通信部5290は通信情報を供給される機能および供給する機能を備える。例えば、無線通信または有線通信により、他の電子機器または通信網と接続する機能を備える。具体的には、無線構内通信、電話通信、近距離無線通信などの機能を備える。
【0426】
《情報処理装置の構成例1.》
例えば、円筒状の柱などに沿った外形を表示部5230に適用することができる(
図22(B)参照)。また、使用環境の照度に応じて、表示方法を変更する機能を備える。また、人の存在を検知して、表示内容を変更する機能を備える。これにより、例えば、建物の柱に設置することができる。または、広告または案内等を表示することができる。または、デジタルサイネージ等に用いることができる。
【0427】
《情報処理装置の構成例2.》
例えば、使用者が使用するポインタの軌跡に基づいて画像情報を生成する機能を備える(
図22(C)参照)。具体的には、対角線の長さが20インチ以上、好ましくは40インチ以上、より好ましくは55インチ以上の表示パネルを用いることができる。または、複数の表示パネルを並べて1つの表示領域に用いることができる。または、複数の表示パネルを並べてマルチスクリーンに用いることができる。これにより、例えば、電子黒板、電子掲示板、電子看板等に用いることができる。
【0428】
《情報処理装置の構成例3.》
例えば、使用環境の照度に応じて、表示方法を変更する機能を備える(
図22(D)参照)。これにより、例えば、スマートウオッチの消費電力を低減することができる。または、例えば、晴天の屋外等の外光の強い環境においても好適に使用できるように、画像をスマートウオッチに表示することができる。
【0429】
《情報処理装置の構成例4.》
表示部5230は、例えば、筐体の側面に沿って緩やかに曲がる曲面を備える(
図22(E)参照)。または、表示部5230は表示パネルを備え、表示パネルは、例えば、前面、側面および上面に表示する機能を備える。これにより、例えば、携帯電話の前面だけでなく、側面および上面に画像情報を表示することができる。
【0430】
《情報処理装置の構成例5.》
例えば、使用環境の照度に応じて、表示方法を変更する機能を備える(
図23(A)参照)。これにより、スマートフォンの消費電力を低減することができる。または、例えば、晴天の屋外等の外光の強い環境においても好適に使用できるように、画像をスマートフォンに表示することができる。
【0431】
《情報処理装置の構成例6.》
例えば、使用環境の照度に応じて、表示方法を変更する機能を備える(
図23(B)参照)。これにより、晴天の日に屋内に差し込む強い外光が当たっても好適に使用できるように、映像をテレビジョンシステムに表示することができる。
【0432】
《情報処理装置の構成例7.》
例えば、使用環境の照度に応じて、表示方法を変更する機能を備える(
図23(C)参照)。これにより、例えば、晴天の屋外等の外光の強い環境においても好適に使用できるように、画像をタブレットコンピュータに表示することができる。
【0433】
《情報処理装置の構成例8.》
例えば、使用環境の照度に応じて、表示方法を変更する機能を備える(
図23(D)参照)。これにより、例えば、晴天の屋外等の外光の強い環境においても好適に閲覧できるように、被写体をデジタルカメラに表示することができる。
【0434】
《情報処理装置の構成例9.》
例えば、使用環境の照度に応じて、表示方法を変更する機能を備える(
図23(E)参照)。これにより、例えば、晴天の屋外等の外光の強い環境においても好適に使用できるように、画像をパーソナルコンピュータに表示することができる。
【0435】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0436】
例えば、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に記載されているものとする。
【0437】
ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0438】
XとYとが直接的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に接続されていない場合であり、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)を介さずに、XとYとが、接続されている場合である。
【0439】
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、オンオフが制御される機能を有している。つまり、スイッチは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。または、スイッチは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有している。なお、XとYとが電気的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合を含むものとする。
【0440】
XとYとが機能的に接続されている場合の一例としては、XとYとの機能的な接続を可能とする回路(例えば、論理回路(インバータ、NAND回路、NOR回路など)、信号変換回路(DA変換回路、AD変換回路、ガンマ補正回路など)、電位レベル変換回路(電源回路(昇圧回路、降圧回路など)、信号の電位レベルを変えるレベルシフタ回路など)、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路(信号振幅または電流量などを大きく出来る回路、オペアンプ、差動増幅回路、ソースフォロワ回路、バッファ回路など)、信号生成回路、記憶回路、制御回路など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、一例として、XとYとの間に別の回路を挟んでいても、Xから出力された信号がYへ伝達される場合は、XとYとは機能的に接続されているものとする。なお、XとYとが機能的に接続されている場合は、XとYとが直接的に接続されている場合と、XとYとが電気的に接続されている場合とを含むものとする。
【0441】
なお、XとYとが電気的に接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟んで接続されている場合)と、XとYとが機能的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の回路を挟んで機能的に接続されている場合)と、XとYとが直接接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟まずに接続されている場合)とが、本明細書等に開示されているものとする。つまり、電気的に接続されている、と明示的に記載されている場合は、単に、接続されている、とのみ明示的に記載されている場合と同様な内容が、本明細書等に開示されているものとする。
【0442】
なお、例えば、トランジスタのソース(又は第1の端子など)が、Z1を介して(又は介さず)、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)が、Z2を介して(又は介さず)、Yと電気的に接続されている場合や、トランジスタのソース(又は第1の端子など)が、Z1の一部と直接的に接続され、Z1の別の一部がXと直接的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)が、Z2の一部と直接的に接続され、Z2の別の一部がYと直接的に接続されている場合では、以下のように表現することが出来る。
【0443】
例えば、「XとYとトランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とは、互いに電気的に接続されており、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yの順序で電気的に接続されている。」と表現することができる。または、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)はYと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この順序で電気的に接続されている」と表現することができる。または、「Xは、トランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とを介して、Yと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この接続順序で設けられている」と表現することができる。これらの例と同様な表現方法を用いて、回路構成における接続の順序について規定することにより、トランジスタのソース(又は第1の端子など)と、ドレイン(又は第2の端子など)とを、区別して、技術的範囲を決定することができる。
【0444】
または、別の表現方法として、例えば、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、少なくとも第1の接続経路を介して、Xと電気的に接続され、前記第1の接続経路は、第2の接続経路を有しておらず、前記第2の接続経路は、トランジスタを介した、トランジスタのソース(又は第1の端子など)とトランジスタのドレイン(又は第2の端子など)との間の経路であり、前記第1の接続経路は、Z1を介した経路であり、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)は、少なくとも第3の接続経路を介して、Yと電気的に接続され、前記第3の接続経路は、前記第2の接続経路を有しておらず、前記第3の接続経路は、Z2を介した経路である。」と表現することができる。または、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、少なくとも第1の接続経路によって、Z1を介して、Xと電気的に接続され、前記第1の接続経路は、第2の接続経路を有しておらず、前記第2の接続経路は、トランジスタを介した接続経路を有し、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)は、少なくとも第3の接続経路によって、Z2を介して、Yと電気的に接続され、前記第3の接続経路は、前記第2の接続経路を有していない。」と表現することができる。または、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、少なくとも第1の電気的パスによって、Z1を介して、Xと電気的に接続され、前記第1の電気的パスは、第2の電気的パスを有しておらず、前記第2の電気的パスは、トランジスタのソース(又は第1の端子など)からトランジスタのドレイン(又は第2の端子など)への電気的パスであり、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)は、少なくとも第3の電気的パスによって、Z2を介して、Yと電気的に接続され、前記第3の電気的パスは、第4の電気的パスを有しておらず、前記第4の電気的パスは、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)からトランジスタのソース(又は第1の端子など)への電気的パスである。」と表現することができる。これらの例と同様な表現方法を用いて、回路構成における接続経路について規定することにより、トランジスタのソース(又は第1の端子など)と、ドレイン(又は第2の端子など)とを、区別して、技術的範囲を決定することができる。
【0445】
なお、これらの表現方法は、一例であり、これらの表現方法に限定されない。ここで、X、Y、Z1、Z2は、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0446】
なお、回路図上は独立している構成要素同士が電気的に接続しているように図示されている場合であっても、1つの構成要素が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。例えば配線の一部が電極としても機能する場合は、一の導電膜が、配線の機能、及び電極の機能の両方の構成要素の機能を併せ持っている。したがって、本明細書における電気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。