(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961459
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】予備電源の放電試験方法および監視装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20211025BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20211025BHJP
G08B 23/00 20060101ALI20211025BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20211025BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
G01R31/392
G08B17/00 D
G08B23/00 530B
G01R31/00
H02J7/00 Q
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-205733(P2017-205733)
(22)【出願日】2017年10月25日
(65)【公開番号】特開2019-78636(P2019-78636A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】魚住 広樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 長志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲橋▼ 匠
【審査官】
田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−212132(JP,A)
【文献】
特開2015−111071(JP,A)
【文献】
特開昭60−106336(JP,A)
【文献】
特開平03−203523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/36−31/396、
31/00、
31/24−31/25、
H02J 7/00−7/12、
7/34−7/36、
9/00−11/00、
G08B 23/00−31/00、
17/00、
19/00−21/24、
H01M 10/42−10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を内蔵した予備電源装置からダミー負荷へ所定の電流を所定時間流すことで前記予備電源装置が所望の性能を有するか否か試験する予備電源の放電試験方法であって、
停電からの電源復旧時または予備電源試験終了時の前記予備電源装置の測定電圧に基づいて、電源復旧後または予備電源試験終了後の前記予備電源装置の充電に要する充電必要時間を算出する充電必要時間算出工程と、
電源復旧時または予備電源試験終了時からの経過時間を計時する経過時間計時工程と、
予備電源試験の開始指令入力があった際に前記経過時間が前記充電必要時間よりも長いか否か判定する判定工程と、を含み、
前記判定工程において前記経過時間が前記充電必要時間よりも長いと判定されたことに応じて前記予備電源装置の放電試験を開始するが、前記予備電源装置の電圧を測定し、該測定電圧が所定の第1設定電圧よりも低い場合には予備電源の放電試験を開始しないことを特徴とする予備電源の放電試験方法。
【請求項2】
前記測定電圧が前記第1設定電圧よりも低いと判定した場合に、前記予備電源装置内の前記電池が不良であることを示す情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の予備電源の放電試験方法。
【請求項3】
予備電源の放電試験の終了時の前記測定電圧が、前記第1設定電圧よりも高い所定の第2設定電圧よりも高いか否かを判定し、
前記測定電圧が前記第2設定電圧よりも低い場合には前記予備電源装置は異常であると判定し、異常であることを示す情報を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の予備電源の放電試験方法。
【請求項4】
予備電源の放電試験の終了時の前記測定電圧が前記第1設定電圧よりも高い所定の第2設定電圧よりも低いと判定した場合には、前記測定電圧が前記第1設定電圧よりも高いか低いかを判定し、
前記測定電圧が前記第1設定電圧よりも低いと判定した場合には前記予備電源装置内の前記電池が不良であることを示す情報を生成し、
前記測定電圧が前記第1設定電圧よりも高いと判定した場合には当該判定が所定回数以上なされたことを条件に前記予備電源装置内の前記電池が不良であることを示す情報を生成することを特徴とする請求項3に記載の予備電源の放電試験方法。
【請求項5】
電池を内蔵した予備電源装置と、前記予備電源装置の電圧を測定する電圧測定手段と、前記予備電源装置からダミー負荷へ所定の電流を所定時間流すことで前記予備電源装置が所望の性能を有するか否かの試験を実行可能な予備電源試験装置と、を備えた監視装置であって、
前記予備電源試験装置は、
停電からの電源復旧時または予備電源試験の終了時の前記予備電源装置の測定電圧に基づいて、電源復旧後または予備電源試験終了後の前記予備電源装置の充電に要する充電必要時間を算出する充電必要時間算出手段と、
電源復旧時または予備電源試験終了時からの経過時間を計時する経過時間計時手段と、
予備電源試験の開始指令入力があった際に前記経過時間が前記充電必要時間よりも長いか否か判定する判定手段と、を備え、
前記判定手段によって前記経過時間が前記充電必要時間よりも長いと判定されたことに応じて前記予備電源装置の放電試験を実施するが、前記予備電源装置の電圧を測定し、該測定電圧が所定の第1設定電圧よりも低い場合には予備電源の放電試験を開始しないことを特徴とする監視装置。
【請求項6】
表示装置と、表示すべき情報があることを報知する情報報知ランプと、情報を表示することを指令するための操作ボタンと、備え、
前記予備電源試験装置は、前記予備電源試験の終了時に前記情報報知ランプを点灯もしくは点滅させ、前記操作ボタンが操作されたことに基づいて前記表示装置に前記放電試験の結果を表示させるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災受信機あるいは火災監視制御盤のような監視装置に設けられている電池を内蔵した予備電源が所望の性能を有するか否か試験する予備電源の放電試験方法および予備電源試験装置を備えた監視装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災感知器からの検出信号を受信して火災を警報する火災受信機や火災監視制御盤を備えた防災監視システムにおいては、商用交流電源で動作する主電源装置とは別に、停電時にバックアップするための二次電池(バッテリ)を内蔵した予備電源装置が設けられている。
火災受信機の予備電源装置に使用されている二次電池は、通常の監視状態にあっては、商用交流電源の整流平滑で得られた直流電圧で充電状態におかれているが、長期間使用している間に、二次電池の劣化等が進み充電容量が不足した状態になるおそれがあることから、定期的にまた必要に応じて予備電源装置の試験が実施されている。なお、予備電源試験は、火災受信機に設けられている予備電源試験スイッチを操作することで実施するように構成されることが多い。
【0003】
従来、予備電源試験スイッチを操作している間、商用交流電源に基づいた直流電源電圧を供給から予備電源(バッテリ)による直流電源電圧の供給に切り替えると共に、予備電源にダミー負荷を接続して試験し、予備電源試験制御部は、予備電源試験スイッチのオンを検出してから一定時間を経過した時に、予備電源試験を強制的に終了させるように構成しているものがある(特許文献1)。
【0004】
また、特許文献2には、試験スイッチの釦操作によりバックアップ用の蓄電池を疑似抵抗に放電させる試験回路と、試験スイッチの釦操作による試験回路の放電動作を所定時間継続される保持タイマー手段と、保持タイマー手段により蓄電池の放電を所定時間継続させた後の蓄電池の出力レベルを基準レベルと比較し判別する電圧レベル判別手段と、この電圧レベル判別手段による判別結果を表示する表示部とを備えた電池試験装置に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−35156号公報
【特許文献2】実開昭64−5178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている予備電源試験装置にあっては、試験中は、予備電源(バッテリ)による直流電源電圧の供給に切り替えるようにしているため、試験時間が長くなると放電量が多くなり、試験終了後にバッテリの残量が少なくなってしまい、停電発生時に所定保証時間以上動作できなくなるおそれがある。
また、特許文献2に記載されている電池試験装置にあっては、試験スイッチの釦操作により試験回路の放電動作を開始する構成である。そのため、放電時間が長く設定されている放電試験(例えば10分)に適用した場合、試験終了後、再充電で電池電圧が回復する前に試験スイッチの釦が再度操作されると放電試験を開始するため、予備電池の劣化が進み易いという課題がある。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、比較的短い時間に繰り返し放電試験が実施されることによって電池の劣化が進んでしまうのを防止することができる予備電源試験方法および監視装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、電池の劣化で放電試験終了後に予備電池の残量が少なくなってしまい、予備電源を内蔵している装置が停電発生時に所定保証時間以上動作できなくなるのを回避することができる予備電源試験方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、劣化がある程度進んでいる予備電源を検出して電池交換を促すことができる予備電源試験方法および監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本出願に係る発明は、
電池を内蔵した予備電源装置からダミー負荷へ所定の電流を所定時間流すことで前記予備電源装置が所望の性能を有するか否か試験する予備電源の放電試験方法において、
停電からの電源復旧時または予備電源試験終了時の前記予備電源装置の測定電圧に基づいて、電源復旧後または予備電源試験終了後の前記予備電源装置の充電に要する充電必要時間を算出する充電必要時間算出工程と、
電源復旧時または予備電源試験終了時からの経過時間を計時する経過時間計時工程と、
予備電源試験の開始指令入力があった際に前記経過時間が前記充電必要時間よりも長いか否か判定する判定工程と、を含み、
前記判定工程において前記経過時間が前記充電必要時間よりも長いと判定されたことに応じて前記予備電源装置の放電試験を開始する
が、前記判定工程において前記経過時間が前記充電必要時間よりも短いと判定された場合には前記予備電源装置の放電試験を開始しないようにしたものである。
【0009】
上記のような工程を有する放電試験方法によれば、予備電源の放電試験開始の際に、電源復旧または前回放電試験からの経過時間が、当該電池の充電に要する時間よりも短い場合には放電試験が開始されないため、比較的短い時間に繰り返し放電試験が実施されることによって、電池の劣化が進んでしまうのを防止しつつ予備電源の放電試験を実施することができる。
【0010】
また、上記方法によれば、電池の劣化で予備電源の放電試験開始の際の電池電圧が所定電圧以下である場合には放電試験が開始されないため、試験終了後に電池の残量が少なくなってしまい、電池を内蔵している予備電源装置が停電発生時に所定の保証時間以上動作できなくなる事態に陥るのを回避することができる。
【0011】
さらに、望ましくは、前記測定電圧が前記第1設定電圧よりも低いと判定した場合に、前記予備電源装置内の前記電池が不良であることを示す情報を生成するようにする。
かかる方法によれば、第1設定電圧を適切に選択しておくことで、劣化している予備電池を検出することができ、生成した電池不良を示す情報を出力することによって監視者に対して電池の交換を促すことができる。
【0012】
また、望ましくは、予備電源の放電試験の終了時の前記測定電圧が、前記第1設定電圧よりも高い所定の第2設定電圧よりも高いか否かを判定し、
前記測定電圧が前記第2設定電圧よりも低い場合には前記予備電源装置は異常であると判定し、異常であることを示す情報を生成するようにする。
かかる方法によれば、第1設定電圧を適切に選択しておくことで、劣化が少し進んでいる予備電池を検出することができ、生成した異常を示す情報を出力することによって監視者に対して電池の状態を認知させることができる。
【0013】
さらに、望ましくは、予備電源の放電試験の終了時の前記測定電圧が前記第1設定電圧よりも高い所定の第2設定電圧よりも低いと判定した場合には、前記測定電圧が前記第1設定電圧よりも高いか低いかを判定し、
前記測定電圧が前記第1設定電圧よりも低いと判定した場合には前記予備電源装置内の前記電池が不良であることを示す情報を生成し、
前記測定電圧が前記第1設定電圧よりも高いと判定した場合には当該判定が所定回数以上なされたことを条件に前記予備電源装置内の前記電池が不良であることを示す情報を生成するようにする。
【0014】
かかる方法によれば、劣化している予備電池を検出することができ、生成した電池不良を示す情報を出力することによって監視者に対して電池の交換を促すことができるとともに、劣化がある程度進んでいる予備電源を検出することができ、生成した異常を示す情報を出力することによって監視者に対して電池の状態を認知させることができる。
【0015】
本出願の他の発明は、電池を内蔵した予備電源装置と、前記予備電源装置の電圧を測定する電圧測定手段と、前記予備電源装置からダミー負荷へ所定の電流を所定時間流すことで前記予備電源装置が所望の性能を有するか否かの試験を実行可能な予備電源試験装置と、を備えた監視装置において、
前記予備電源試験装置は、
停電からの電源復旧時または予備電源試験の終了時の前記予備電源装置の測定電圧に基づいて、電源復旧後または予備電源試験終了後の前記予備電源装置の充電に要する充電必要時間を算出する充電必要時間算出手段と、
電源復旧時または予備電源試験終了時からの経過時間を計時する経過時間計時手段と、
予備電源試験の開始指令入力があった際に前記経過時間が前記充電必要時間よりも長いか否か判定する判定手段と、を備え、
前記判定手段によって前記経過時間が前記充電必要時間よりも長いと判定されたことに応じて前記予備電源装置の放電試験を実施する
が、前記判定工程において前記経過時間が前記充電必要時間よりも短いと判定された場合には前記予備電源装置の放電試験を開始しないように構成したものである。
【0016】
上記のような構成を有する監視装置によれば、予備電源の放電試験の開始の際に、電源復旧または前回放電試験からの経過時間が、当該電池の充電に要する時間よりも短い場合には放電試験が開始されないため、比較的短い時間に繰り返し放電試験が実施されることによって、電池の劣化が進んでしまうのを防止しつつ予備電源の放電試験を実施することができる。
【0017】
また、望ましくは、表示装置と、表示すべき情報があることを報知する情報報知ランプと、情報を表示することを指令するための操作ボタンと、備え、
前記予備電源試験装置は、前記予備電源試験の終了時に前記情報報知ランプを点灯もしくは点滅させ、前記操作ボタンが操作されたことに基づいて前記表示装置に前記放電試験の結果を表示させるように構成する。
かかる構成によれば、監視者は必要に応じて予備電源の放電試験の結果を表示部に表示させて予備電源装置の状態を正確に把握することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の予備電源の放電試験方法および監視装置によれば、比較的短い時間に繰り返し放電試験が実施されることによって電池の劣化が進んでしまうのを防止することができる。また、電池の劣化で放電試験終了後に電池の残量が少なくなってしまい、停電発生時に所定保証時間以上動作できなくなるのを回避することができる。さらに、劣化がある程度進んでいる予備電源を検出して電池交換を促すことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る予備電源試験装置を備えた火災受信機の一構成例を示す正面図である。
【
図2】実施形態の火災受信機内に設けられている予備電源試験装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明に係る予備電源試験装置による放電試験の手順の一実施例を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態の予備電源試験装置による放電試験の手順の他の実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明に係る予備電源試験装置を備えた火災受信機の前面パネルの構成例が示されている。
図1の火災受信機10は、建物の防災センターや中央管理室に設置され、建物内に設置された感知器や発信機からの火災信号を受信し、地区音響装置を鳴動させて火災の発生を音響で知らせるとともに、当該火災受信機10の前面パネルに設けられているランブ等の表示により火災発生を報知する機能を有する。また、火災受信機10の筐体内には、予備電源装置および該予備電源装置の試験を行う予備電源試験装置が設けられている。
【0021】
火災受信機10の前面パネルには、
図1に示すように、交流電源の投入や火災発報、発信機信号の入力など火災受信機の動作状態を各種ランプの点灯で表示する主操作部11と、火災発報した回線や感知器線断線が発生した回線を表示する火報回線用の地区表示部12、火災が発生した場所や防排煙端末等の作動した場所を表示する防排煙回線用の地区表示部13、火災の発生等を知らせるスピーカ14、受信機の音響やベル(地区音響)を停止させるための押釦を備えた音響操作部15、受信機の動作モードや後述の電池試験が実施された際の結果等の情報を表示するLCD(液晶パネル)などからなる情報表示部16、表示内容を変更するためのシフトボタンなどを有する表示操作部17、受信機の火災内容・異常内容などを情報表示部16に表示させて確認するため情報ボタン18aおよび情報ランプ18bを有する情報操作部18などを備える。
【0022】
上記情報操作部18においては、監視者へ知らせる要因があると情報ランプ18bが点滅し、情報ボタン18aを押すことで情報表示部16に火災情報及び異常情報が表示される。また、火災受信機10の前面パネルの下部には開閉可能な子扉10aが設けられ、該子扉10aの内側に、後述の電池試験の開始を指令する電池試験スイッチボタン19Aや火災試験の開始を指令する火災試験スイッチボタン19B、試験からの復旧を指令する試験復旧ボタン19C、火災試験からの復旧を指令する火災復旧ボタン19Dなどを有する内部操作部19が設けられている。
【0023】
上記表示操作部17には、表示内容を順送りするためのシフトボタン(△)、逆送りするためのシフトボタン(▽)、表示モードを元に戻すための「戻り」ボタン、表示モードを決定するための「決定」ボタン17Dが設けられている。
また、図示しないが、上記操作部(11、17、18)からの指令入力を受けて各表示部(12、13、16)やスピーカ14を駆動する制御基板が火災受信機10の筐体の内部に設置されている。さらに、商用交流電源の停電時に上記制御基板等へ電源を供給する予備電源装置と、該予備電源装置の試験を行う予備電源試験装置が火災受信機10の筐体の内部に設けられている。
【0024】
図2に、本実施形態の火災受信機内に設けられている予備電源試験装置の構成例を示す。
図2に示すように、本実施形態における予備電源試験装置は、火災受信機10の筐体内に設けられている電池試験制御基板20と、予備電源装置30の電圧を検出する電圧測定部22と、計時用のタイマー23とを備える。
電池試験制御基板20には、電池試験の開始を指令する電池試験ボタン19Aや情報操作部18の情報ボタン18aおよび表示操作部17のシフトボタン17A,17B、「戻り」ボタン17C、「決定」ボタン17Dからの指令信号が入力され、電池試験制御基板20はこれらの入力手段からの信号に応じて上記情報表示部16の表示駆動制御および情報ランプ18bの点灯駆動制御を行うように構成されている。
なお、電池試験制御基板20には、主電源/予備電源切替装置や電池充電/電池接続監視装置などの公知の装置(回路)が搭載されている(図示省略)。
【0025】
図3には、火災受信機10の筐体内に設けられている予備電源試験装置による10分間放電試験方法の手順の一実施例のフローチャートが示されている。なお、放電試験は、予備電源からダミー負荷に所定の電流を所定時間(例えば10分)流すことで実行される。
図3に示す放電試験は、子扉10aの内側の内部操作部19(
図1参照)に設けられている電池試験スイッチボタン19Aと前面パネルに設けられている決定スイッチボタン17Dが同時に押圧(オン操作)されることで開始される。すると、先ず前回の停電時に主電源から予備電源へ切り替えられた後、電源復旧時に予備電源から主電源に戻った時(切り替えられた時)から今回の放電試験操作が開始される時までの経過時間、または前回の放電試験終了時から今回の放電試験操作開始時までの経過時間が、電源復旧時または前回の放電試験終了時に算出された予備電源装置内の電池のフル充電に必要な時間(ステップS9参照)よりも長くなっているか否か判定する(ステップS1)。
【0026】
ここで、電池の充電に必要な時間を経過していない(ステップS1:No)と判定すると、ステップS10へ移行して、その旨および次回の10分間放電試験が実施可能になるまでの残り時間(充電必要時間−経過時間)を、火災受信機10の前面パネルに設けられている情報表示部16に表示する。
一方、ステップS1で、電池の充電に必要な時間を経過している(Yes)と判定すると、ステップS2へ進んで「電池試験」を示すランプを点灯して10分間放電試験を開始し、電圧測定部22により予備電源装置内の電池の電圧を測定する(ステップS3)。
【0027】
そして、測定された電池電圧が、予め設定されている所定値Va(例えば12.0V)以上であるか否か判定する(ステップS4)。ここで、電池電圧が所定値Va以上でない(No)と判定すると、情報表示部16に電池充電異常終了が表示される。また、表示する情報があることを示す情報ランプ18bを点灯もしくは点滅して強制終了する。その後、情報ボタン18aを押すと、情報表示部16に異常(終了)の原因(この場合は電池不良)が表示される。
また、ステップS4で、電池電圧が所定値Va以上である(Yes)と判定すると、ステップS5へ進んで、火災受信機10の前面パネルの情報表示部16に経過時間(または残り時間)と測定電圧を表示する。
【0028】
その後、ステップS6へ進んで、電池試験スイッチボタンB1が押圧(オン操作)された否か判定する。そして、試験スイッチがオンされた(Yes)と判定すると、ステップS11へ進んで、測定された電池電圧が、予め設定されている所定値Vb(例えば20.4V)以上であるか否か判定し、電池電圧が所定値Vb以上である(Yes)と判定すると、放電試験を強制終了する。その後、情報表示部16に終了の状態(予備電源正常)が表示される。また、ステップS11で電池電圧が所定値Vb以上でない(No)と判定すると、放電試験を強制終了し、情報表示部16に強制終了の状態(予備電源異常)が表示される。また、情報ランプ18bを点灯もしくは点滅する。その後、情報ボタン18aを押すと、情報表示部16に終了の原因(予備電源異常)が再度表示される。
【0029】
一方、ステップS6で、試験スイッチがオンされてない(No)と判定すると、ステップS7へ進んで放電試験を開始してから10分を経過したか否か判定する。ここで、10分を経過していない(No)と判定すると、ステップS3へ戻って上記処理(S3〜S6)繰り返す。
また、ステップS7で、10分を経過した(Yes)と判定すると、ステップS8へ進んで、電池電圧が所定値Vb(例えば20.4V)以上であるか否か判定し、電池電圧が所定値以上でない(No)と判定すると、情報表示部16に終了の状態(予備電源異常)が表示される。また、情報ランプ18bを点灯もしくは点滅する。その後、情報ボタン18aを押すと、情報表示部16に異常(終了)の原因(放電試験異常)が表示される。
【0030】
一方、ステップS8で、電池電圧が所定値Vb(例えば20.4V)以上である(Yes)と判定すると、ステップS9へ進んで、電池電圧に基づいて予備電源装置内の電池のフル充電に必要な時間を算出してメモリに記憶してから、情報ランプ18bを点灯もしくは点滅して放電試験を終了する。その後、情報ボタン18aを押すと、情報表示部16に終了の状態(放電試験正常)が表示される。また、表示操作部17のシフトボタンを押すと、ステップS9で算出したフル充電に必要な時間を表示させることができる。
【0031】
なお、ステップS9における電池のフル充電に必要な時間の算出は、10分間放電試験の終了時の測定電圧をVdとし、劣化していない電池の充電電圧がVc(例えば28.8V)でフル充電に要する時間がTc(例えば48時間)であるとすると、放電試験を行なった電池の充電に必要な時間T(h)は、次式
T(h)=(Vc-Vd)÷(Vc−Vb)/Tc
を用いて算出することができる。ここで、10分間放電試験の終了時の測定電圧Vdが所定値VbすなわちVd=Vbであった場合には、上式よりT(h)=Tcとなり、必要時間は48時間となる。試験の終了時の測定電圧をVdがVcに近ければ近いほど、(Vc−Vd)の値が小さくなるので、充電必要時間は短くなる。
【0032】
次に、予備電源試験装置による10分間放電試験方法の第2の実施例について、
図4のフローチャートを用いて説明する。
本実施例の手順は、
図2に示す第1実施例とほぼ同じの手順(S1〜S11)を有する。異なるのは、第1実施例にはない処理S12〜S14を有する点である。具体的には、ステップS8で電池電圧が所定値以上でない(No)と判定すると、ステップS12へ移行して、測定された電池電圧が所定値Va(例えば12.0V)以上であるか否か判定する。そして、電池電圧が所定値以上でない(No)と判定すると、情報表示部16に電池充電異常終了が表示され、情報ランプ18bを点灯もしくは点滅して放電試験を強制終了する。その後、情報ボタン18aを押すと、情報表示部16に異常(終了)の原因(電池不良)が表示される。
【0033】
また、ステップS12で、電池電圧が所定値Va(例えば12.0V)以上である(Yes)と判定すると、ステップS13へ進んで判定回数を更新(+1)し、判定回数が所定回数n(例えばn=2)になったか否か判定する(ステップS14)。そして、判定回数が所定回数nになっていない(No)と判定すると、情報ランプ18bを点灯もしくは点滅して放電試験を終了する。ここで、情報ボタン18aを押すと、情報表示部16に終了の状態(予備電源正常)が表示される。
【0034】
一方、ステップS14で判定回数が所定回数nになった(Yes)と判定すると、情報ランプ18bを点灯もしくは点滅して放電試験を終了する。複数回の放電試験で続けて試験後の電池電圧が所定値Vb(例えば20.4V)よりも低くなっている電池は性能が低下していると考えられるためである。その後、情報ボタン18aを押すと、情報表示部16に異常(終了)の原因(予備電源異常)が表示される。
【0035】
上記のように、第2の実施例においては、ステップS12〜S14を設けているため、劣化がある程度進んでいる予備電源(電池交換を必要とするほどまでは劣化していないものの、もう少し劣化が進行すると電池交換が必要になるもの)を検出して報知することで、電池交換を促したり電池交換の時期の判断の情報を提供したりすることができる。
【0036】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、電池試験が途中で終了すると情報ランプ18bを点灯もしくは点滅し、情報ボタン18aを押すと、情報表示部16に終了の原因または状態を表示するようにしているが、自動的に情報表示部16に予備電源の異常の原因または試験終了時の予備電源の状態を表示するようにしても良い。
【0037】
また、前記実施形態では、予備電源装置(電池)の測定値電圧と、劣化していない電池の充電電圧及びその充電電圧でフル充電に必要な時間に基づいて、放電試験開始時の必要充電時間を算出したが、これに限定されるものではない。例えば、必要充電時間の起算時(放電試験終了時又は停電時又は満充電時)から放電試験開始時の放電量から必要充電時間を算出しても良い。具体的には、予備電源装置(電池試験制御基板20)に、電池の出力側の電流値を測定する電流計を設け、放電電流と放電時間の積により放電容量を算出し、充電流値から必要な充電時間を算出しても良い。
【0038】
さらに、前記実施形態では、電池試験スイッチボタン19Aと「決定」ボタン17Dを押すことで放電試験を開始するように構成したものを説明したが、電池試験スイッチボタン19Aを押すことで放電試験を開始するように構成してもよい。
また、以上の説明では、本発明の予備電源試験装置を火災受信機の予備電源試験装置に適用した場合を例にとって説明したが、火災監視制御盤などの監視装置に設けられている予備電源の試験装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 火災受信機(監視装置)
11 主操作部
12 火報回線用の地区表示部
13 防排煙回線用の地区表示部
14 スピーカ
15 音響操作部
16 情報表示部(表示装置)
17 表示操作部
18 情報操作部
18a 情報ボタン(操作ボタン)
18b 情報ランプ(情報報知ランプ)
19 内部操作部
19A 電池試験スイッチボタン(操作ボタン)