(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記評価部は、前記湿式冷却塔に投入される水の温度と前記湿式冷却塔から吐出される水の温度と大気の湿球温度とに基づいて、前記湿式冷却塔の性能の低下が、劣化によるものか、障害によるものかを判定する
請求項1に記載の状態評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〈第1の実施形態〉
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
【0016】
《水処理システムの構成》
図1は、一実施形態に係る発電プラントの構成を示す概略ブロック図である。
発電プラント10は、ボイラ11、蒸気タービン12、発電機13、復水器14、純水装置15、湿式冷却塔16、蒸気循環ライン101、第1補給ライン102、第1排水ライン103、第1薬注ライン104、冷却水循環ライン105、第2補給ライン106、第2排水ライン107、第2薬注ライン108、排水処理装置109、状態評価装置110を備える。
【0017】
ボイラ11は、水を蒸発させて蒸気を発生させる。
蒸気タービン12は、ボイラ11が発生させた蒸気により回転する。
発電機13は、蒸気タービン12の回転エネルギーを電力に変換する。
復水器14は、蒸気タービン12から排出される蒸気と冷却水とを熱交換させ、蒸気を水に戻す。
純水装置15は、純水を生成する。
【0018】
湿式冷却塔16は、復水器14で熱交換された冷却水を冷却する。湿式冷却塔16には、冷却水の蒸発を促すためのファン161と湿式冷却塔16の近傍の湿球温度を計測する湿球温度計162とが設けられる。ファン161は、台数制御またはインバータ制御によって風量を調節可能に構成される。
【0019】
蒸気循環ライン101は、蒸気タービン12、復水器14、およびボイラ11に水および蒸気を循環させるラインである。蒸気循環ライン101のうち復水器14とボイラ11との間には、第1給水ポンプ1011が設けられる。第1給水ポンプ1011は、復水器14からボイラ11へ向けて水を圧送する。
【0020】
第1補給ライン102は、純水装置15が生成する純水を蒸気循環ライン101に供給するためのラインである。第1補給ライン102には、第2給水ポンプ1021が設けられる。第2給水ポンプ1021は、復水器14への水張り時に使用される。運転中において第1補給ライン102内の水は、復水器14の減圧により純水装置15から復水器14へ向けて圧送される。
【0021】
第1排水ライン103は、蒸気循環ライン101を循環する水の一部を、ボイラ11から排水処理装置109へ排出するためのラインである。
第1薬注ライン104は、蒸気循環ライン101に防食剤、防スケール剤、スライムコントロール剤などの薬剤を供給するためのラインである。第1薬注ライン104は、薬剤を貯留する第1薬剤タンク1041と、第1薬剤タンク1041から蒸気循環ライン101へ薬剤を供給する第1薬注ポンプ1042とを備える。
【0022】
冷却水循環ライン105は、復水器14および湿式冷却塔16に冷却水を循環させるラインである。冷却水循環ライン105には、第3給水ポンプ1051、冷却水質センサ1052、循環水量センサ1053、冷却塔入口水温センサ1054、冷却塔出口水温センサ1055が設けられる。第3給水ポンプ1051は、湿式冷却塔16から復水器14へ向けて冷却水を圧送する。
冷却水質センサ1052は、冷却水循環ライン105を循環する冷却水の水質を検出する。センサによって検出される水質の例としては、電気伝導率、pH値、塩濃度、金属濃度、COD(Chemical Oxygen Demand)、BOD(Biochemical Oxygen Demand)、微生物濃度、およびシリカ濃度、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。冷却水質センサ1052は、検出した水質を示す循環水質指標値を状態評価装置110に出力する。循環水量センサ1053は、冷却水循環ライン105を循環する冷却水の流量を検出する。循環水量センサ1053は、検出した水量を示す循環水量を状態評価装置110に出力する。冷却塔入口水温センサ1054は、湿式冷却塔16に投入される冷却水の温度を検出する。冷却塔入口水温センサ1054は、検出した温度を示す冷却塔入口水温を状態評価装置110に出力する。冷却塔出口水温センサ1055は、湿式冷却塔16から吐出される冷却水の温度を検出する。冷却塔出口水温センサ1055は、検出した温度を示す冷却塔出口水温を状態評価装置110に出力する。
【0023】
第2補給ライン106は、水源から取水される原水を、補給水として冷却水循環ライン105に供給するためのラインである。第2補給ライン106には、第4給水ポンプ1061および補給水質センサ1062が設けられる。第4給水ポンプ1061は、水源から湿式冷却塔16へ向けて補給水を圧送する。補給水質センサ1062は、検出した水質を示す補給水質指標値を状態評価装置110に出力する。
第2排水ライン107は、冷却水循環ライン105を循環する水の一部を排水処理装置109へ排出するためのラインである。第2排水ライン107には、ブロー弁1071および排水質センサ1072が設けられる。ブロー弁1071は、冷却水循環ライン105から排水処理装置109へブローする排水の量を制限する。
【0024】
第2薬注ライン108は、冷却水循環ライン105に薬剤を供給するためのラインである。第2薬注ライン108は、薬剤を貯留する第2薬剤タンク1081と、第2薬剤タンク1081から冷却水循環ライン105へ薬剤を供給する第2薬注ポンプ1082とを備える。
【0025】
排水処理装置109は、第1排水ライン103および第2排水ライン107から排出された排水に、酸、アルカリ、凝集剤、またはその他の薬剤を注入する。排水処理装置109は、薬剤により処理された排水を廃棄する。
【0026】
状態評価装置110は、湿球温度計162が検出した湿球温度、冷却塔入口水温センサ1054が検出した冷却塔入口水温、冷却塔出口水温センサ1055が検出した冷却塔出口水温に基づいて、湿式冷却塔16の性能の低下状態を評価する。
【0027】
《状態評価装置の構成》
図2は、一実施形態に係る状態評価装置の構成を示す概略ブロック図である。
状態評価装置110は、情報取得部1101、温度差算出部1102、正規化部1103、履歴記憶部1104、変化率算出部1105、評価部1106、出力部1107を備える。
【0028】
情報取得部1101は、湿球温度計162が検出した大気の湿球温度、冷却塔入口水温センサ1054が検出した冷却塔入口水温、冷却塔出口水温センサ1055が検出した冷却塔出口水温を取得する。
温度差算出部1102は、冷却塔入口温度と冷却塔出口温度の温度差を算出する。
【0029】
正規化部1103は、大気の湿球温度に基づいて温度差を正規化した正規温度差を算出する。つまり、正規化部1103は、既知の定格性能関数と、湿球温度と、冷却塔入口温度と冷却塔出口温度の温度差とに基づいて、所定の湿球温度(例えば定格湿球温度)における温度差である正規温度差を算出する。定格性能関数とは、湿式冷却塔16の定格性能として湿式冷却塔16の製造時に設計される関数であって、湿球温度と冷却塔入口温度と冷却塔出口温度の温度差との関係を表す。
図3は、定格性能関数の例を示す図である。定格性能関数において、冷却塔入口温度と冷却塔出口温度の温度差は、湿球温度について単調増加する。例えば、正規化部1103は、計測された湿球温度を定格性能関数に代入して求められる温度差と、定格湿球温度に係る温度差との比を求め、計測された冷却塔入口温度と冷却塔出口温度の温度差に当該比を乗算することで、正規温度差を算出することができる。
【0030】
履歴記憶部1104は、時刻に関連付けて正規温度差を記憶する。
変化率算出部1105は、正規化部1103が算出した正規温度差と履歴記憶部1104が記憶する正規温度差の履歴とに基づいて正規温度差の変化率を算出する。変化率算出部1105は、例えば正規温度差の時系列を微分することで変化率を算出することができる。
【0031】
評価部1106は、正規温度差および正規温度差の変化率に基づいて、湿式冷却塔16の性能の低下状態を評価する。具体的には、評価部1106は、正規温度差の変化率が所定の変化率閾値以上である場合に、性能の低下が障害によるものであると判定する。また、評価部1106は、正規温度差の変化率が所定の閾値未満である場合に、性能の低下が劣化によるものであると判定する。ここで、湿式冷却塔16の劣化の例としては、湿式冷却塔16の内部にスケーリングやファウリングが生じることによって熱交換率が低下することなどが挙げられる。また湿式冷却塔16の障害の例としては、異物の混入や湿式冷却塔16の破損などが挙げられる。また評価部1106は、正規温度差が所定の温度差閾値未満であるか否かを判定することで、性能の低下が許容しうるものであるか否かを判定する。
【0032】
温度差閾値は、例えば、湿式冷却塔16の洗浄に要する時間において得られる売電収入額および洗浄に係るコストの和と、当該温度差閾値の値に相当する性能低下による電力損失額とが等しくなるような値に設定される。このような値に設定されることで、湿式冷却塔16の正規温度差が温度差閾値以上である場合、湿式冷却塔16の洗浄に要する時間において得られる売電収入額および洗浄に係るコストの和が、性能低下による電力損失額以下になる。他方、湿式冷却塔16の正規温度差が温度差閾値未満である場合、湿式冷却塔16の洗浄に要する時間において得られる売電収入額および洗浄に係るコストの和が、性能低下による電力損失額より大きくなる。
【0033】
出力部1107は、評価部1106によって評価された性能の低下状態に基づいて情報を出力する。例えば、出力部1107は、評価部1106において障害による性能の低下が発生しており、かつ正規温度差が所定の閾値未満であると評価された場合に、障害が発生したこと、および点検を推奨する旨を出力する。また例えば、出力部1107は、評価部1106において劣化による性能の低下が発生しており、かつ正規温度差が所定の閾値未満であると評価された場合に、劣化により性能が低下していること、および湿式冷却塔16の洗浄または部品の交換を推奨する旨を出力する。出力部1107による出力は、例えばネットワークを介して管理者が所持するコンピュータに情報を送信することであってもよいし、ディスプレイに情報を表示することであってもよい。
【0034】
《状態評価装置の動作》
図4は、一実施形態に係る状態評価装置の動作を示すフローチャートである。
状態評価装置110は、
図3に示す状態評価処理を定期的に実行する。まず情報取得部1101は、湿球温度計162が検出した大気の湿球温度、冷却塔入口水温センサ1054が検出した冷却塔入口水温、冷却塔出口水温センサ1055が検出した冷却塔出口水温を取得する(ステップS1)。温度差算出部1102は、冷却塔入口温度と冷却塔出口温度の温度差を算出する(ステップS2)。
【0035】
正規化部1103は、既知の定格性能関数と、湿球温度と、冷却塔入口温度と冷却塔出口温度の温度差とに基づいて正規温度差を算出する(ステップS3)。正規化部1103は、算出した正規温度差を、現在時刻に関連付けて履歴記憶部1104に記録する(ステップS4)。変化率算出部1105は、履歴記憶部1104が記憶する正規温度差の時系列に基づいて正規温度差の変化率を算出する(ステップS5)。
【0036】
評価部1106は、正規温度差が所定の温度差閾値未満であるか否かを判定する(ステップS6)。正規温度差が温度差閾値以上である場合(ステップS6:NO)、評価部1106は湿式冷却塔16の性能が低下していない、または湿式冷却塔16の性能の低下状態が許容しうる程度であると評価し、処理を終了する。
【0037】
他方、正規温度差が温度差閾値未満である場合(ステップS6:YES)、評価部1106は、正規温度差の変化率の絶対値が所定の変化量閾値未満であるか否かを判定する(ステップS7)。
正規温度差の変化率の絶対値が所定の閾値未満である場合(ステップS7:YES)、評価部1106は、湿式冷却塔16の性能の低下が劣化によるものであると評価する。この場合、出力部1107は、湿式冷却塔16の劣化により性能が低下していること、および湿式冷却塔16の洗浄または部品の交換を推奨する旨を出力する(ステップS8)。
他方、正規温度差の変化率が所定の閾値以上である場合(ステップS7:NO)、評価部1106は、湿式冷却塔16の性能の低下が障害によるものであると評価する。この場合、出力部1107は、湿式冷却塔16に障害が発生していること、および湿式冷却塔16の点検を推奨する旨を出力する(ステップS9)。
【0038】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態に係る状態評価装置110は、冷却塔入口温度と冷却塔出口温度と大気の湿球温度とに基づいて、湿式冷却塔16の性能の低下状態を評価する。これにより、状態評価装置110は、湿式冷却塔16の現在の性能を定量化することができるため、湿式冷却塔16の性能の低下状態を適切に評価することができる。また、状態評価装置110が定期的に性能の低下状態を評価することで、発電プラント10の管理者は、湿式冷却塔16の性能の低下状態をモニタリングし、適切な処置のタイミングを計ることができる。
【0039】
また、第1の実施形態に係る状態評価装置110は、冷却塔入口温度と冷却塔出口温度と大気の湿球温度とに基づいて、湿式冷却塔16の性能の低下が、劣化によるものか、障害によるものかを判定する。これにより、発電プラント10の管理者は、湿式冷却塔16の性能の劣化の理由に応じた処置をとることができる。
特に、第1の実施形態に係る状態評価装置110は、湿式冷却塔16の性能の低下状態に基づいて、湿式冷却塔16の洗浄の要否、部品の交換の要否、および点検の要否を判定する。これにより、発電プラント10の管理者は、湿式冷却塔16の性能の劣化の理由に応じた適切な処置をとることができる。
【0040】
《変形例》
なお、第1の実施形態に係る状態評価装置110の評価部1106は、正規温度差の変化率の絶対値が所定の閾値未満であるか否かを判定することで、性能の低下が障害によるものであるか劣化によるものであるかを評価するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る評価部1106は、正規温度差の二回微分値が正数である場合に、性能の低下が障害によるものであると評価し、正規温度差の二回微分値が正数でない場合に、性能の低下が劣化によるものであると評価してもよい。これは、湿式冷却塔16の性能の低下が劣化によるものである場合、正規温度差の変化率が時間の経過とともに減少していくのに対し、湿式冷却塔16の性能の低下が障害によるものである場合、湿式冷却塔16の状態が急変することで正規温度差の変化率が一時的に増大するためである。
【0041】
〈第2の実施形態〉
湿式冷却塔16の劣化により性能が低下した場合、管理者は、湿式冷却塔16の洗浄を行うか、部品の交換を行うかの何れかにより、湿式冷却塔16の性能を回復することができる。
湿式冷却塔16の部品を交換する場合、湿式冷却塔16の洗浄と比較して長い時間の間、湿式冷却塔16を停止する必要があり、また交換する部品の費用および人件費だけ多くのコストが発生する。他方、湿式冷却塔16の部品を交換する場合、部品のアップグレードを図ることで湿式冷却塔16の性能をさらに向上させることが可能となる。
湿式冷却塔16の洗浄を行う場合、部品の交換と比較して短時間かつ低コストで湿式冷却塔16の性能を回復することができる。他方、湿式冷却塔16の状態によっては、湿式冷却塔16の洗浄では十分に性能を回復できないこともある。
【0042】
第2の実施形態に係る状態評価装置110は、湿式冷却塔16の状態に基づいて、湿式冷却塔16を洗浄すべきか部品を交換すべきかを提示する。
【0043】
《状態評価装置の構成》
図5は、一実施形態に係る状態評価装置の構成に係る概略ブロック図である。
第2の実施形態に係る状態評価装置110は、第1の実施形態の構成に加え、さらにモデル記憶部1111、回復方法決定部1112、種類決定部1113を備える。また、第2の実施形態に係る情報取得部1101は、第1の実施形態で取得する状態量に加え、さらに補給水質センサ1062が計測した補給水質指標値、冷却水質センサ1052が計測した冷却水質指標値、循環水量センサ1053が計測した循環水量を取得する。
【0044】
モデル記憶部1111は、湿球温度、冷却塔入口水温、冷却塔出口水温、補給水質指標値、冷却水質指標値、および循環水量を入力とし、湿式冷却塔16の性能の回復方法を出力するためのモデルを記憶する。モデルは、例えばニューラルネットワークなどの機械学習モデルである。第2の実施形態に係る性能の回復方法は、洗浄または部品の交換である。
【0045】
モデルの学習課程においては、例えば、以下の手法でモデルを学習させることができる。発電プラント10の管理者は、実機において湿式冷却塔16の洗浄が必要になったときに、その時点における上記状態量の組み合わせと、湿式冷却塔16の洗浄に要した時間と、洗浄の完了タイミングから次回洗浄が必要になるタイミングまでのインターバルとを計測する。管理者は、洗浄後のインターバルの間における発電プラント10の売電額から、湿式冷却塔16の洗浄に要した時間の間発電プラント10を停止したことによる損失額および洗浄に係るコストを減算することで、洗浄後の実売電額を算出する。
他方、管理者は、湿式冷却塔16の部品を交換する場合に必要となるコストと、部品の交換に要する時間と、交換後に次回洗浄が必要になるタイミングまでのインターバルとを算定する。管理者は、交換後のインターバルの間における発電プラント10の売電額から、部品の交換に要する時間の間発電プラント10を停止することによる損失額および交換に係るコストを減算することで、交換後の実売電額を算出する。
洗浄後の実売電額が交換後の実売電額を上回る場合、管理者は、上記状態量の組み合わせと、性能の回復方法が洗浄であることを示す情報とを関連付けた教師データを生成し、当該教師データに基づいてモデルを学習させる。
洗浄後の実売電額が交換後の実売電額を下回る場合、管理者は、上記状態量の組み合わせと、性能の回復方法が交換であることを示す情報とを関連付けた教師データを生成し、当該教師データに基づいてモデルを学習させる。
なお、上記の教師データは、必ずしも実機における処理に基づいて生成されなくてもよい。例えば、教師データは、発電プラント10における湿式冷却塔16の劣化のシミュレーションに基づいて、コンピュータが上記の計算をすることで自動生成されてもよい。
【0046】
回復方法決定部1112は、モデル記憶部1111が記憶するモデルに情報取得部1101が取得した各状態量を入力することで、湿式冷却塔16の性能の回復方法を決定する。すなわち、回復方法決定部1112は、性能の低下状態に基づいて、湿式冷却塔16を洗浄すべきか部品を交換すべきかを判定する。
【0047】
種類決定部1113は、回復方法決定部1112が部品を交換すべきと判定した場合に、情報取得部1101が取得した補給水質指標値に基づいて、交換すべき部品の種類を決定する。交換対象の部品の例としては、ノズルおよび充填材が挙げられる。ノズルは、細粒化性能が高いものであるほど、湿式冷却塔16の冷却効率の向上が見込まれる一方で、詰まりによる劣化が生じやすい。また、充填材は、フィルム型充填材のように表面積が広いほど湿式冷却塔16の冷却効率の向上が見込まれる一方で、詰まりによる劣化が生じやすい。他方、充填材は、スプラッシュ型充填材のように表面積が狭いほど湿式冷却塔16の冷却効率の向上率が低い一方で、詰まりによる劣化が生じにくい。
そのため、種類決定部1113は、補給水質指標値が所定の水質閾値以上である(良好である)場合に、細粒化性能の高いノズル、および表面積の広い充填材を、交換すべき部品の種類に決定する。他方、種類決定部1113は、補給水質指標値が所定の水質閾値未満である(不良である)場合に、細粒化性能の低いノズル、および表面積の狭い充填材を、交換すべき部品の種類に決定する。
【0048】
《状態評価装置の動作》
図6は、一実施形態に係る状態評価装置の動作を示すフローチャートである。
第2の実施形態に係る状態評価装置110は、
図6に示す状態評価処理を定期的に実行する。まず情報取得部1101は、湿球温度、冷却塔入口水温、冷却塔出口水温、補給水質指標値、冷却水質指標値、および循環水量を取得する(ステップS21)。温度差算出部1102は、冷却塔入口温度と冷却塔出口温度の温度差を算出する(ステップS22)。
【0049】
正規化部1103は、既知の定格性能関数と、湿球温度と、冷却塔入口温度と冷却塔出口温度の温度差とに基づいて正規温度差を算出する(ステップS23)。正規化部1103は、算出した正規温度差を、現在時刻に関連付けて履歴記憶部1104に記録する(ステップS24)。変化率算出部1105は、履歴記憶部1104が記憶する正規温度差の時系列に基づいて正規温度差の変化率を算出する(ステップS25)。
【0050】
評価部1106は、正規温度差が所定の温度差閾値未満であるか否かを判定する(ステップS26)。正規温度差が温度差閾値以上である場合(ステップS26:NO)、評価部1106は湿式冷却塔16の性能が低下していない、または湿式冷却塔16の性能の低下状態が許容しうる程度であると評価し、処理を終了する。
【0051】
他方、正規温度差が温度差閾値未満である場合(ステップS26:YES)、評価部1106は、正規温度差の変化率の絶対値が所定の変化量閾値未満であるか否かを判定する(ステップS27)。
正規温度差の変化率が所定の閾値以上である場合(ステップS27:NO)、評価部1106は、湿式冷却塔16の性能の低下が障害によるものであると評価する。この場合、出力部1107は、湿式冷却塔16に障害が発生していること、および湿式冷却塔16の点検を推奨する旨を出力する(ステップS28)。
【0052】
他方、正規温度差の変化率の絶対値が所定の閾値未満である場合(ステップS27:YES)、回復方法決定部1112は、ステップS21で取得した状態量を、モデル記憶部1111が記憶するモデルに入力することで、性能の回復方法を決定する(ステップS29)。種類決定部1113は、回復方法決定部1112が決定した回復方法が部品の交換であるか否かを判定する(ステップS30)。回復方法決定部1112が決定した回復方法が洗浄である場合(ステップS30:NO)、出力部1107は、湿式冷却塔16の劣化により性能が低下していること、および湿式冷却塔16の洗浄を推奨する旨を出力する(ステップS31)。
【0053】
回復方法決定部1112が決定した回復方法が部品の交換である場合(ステップS30:YES)、種類決定部1113は、ステップS21で取得した補給水質指標値に基づいて交換すべき部品の種類を決定する(ステップS32)。出力部1107は、湿式冷却塔16の劣化により性能が低下していること、および種類決定部1113が決定した種類の部品への交換を推奨する旨を出力する(ステップS33)。
【0054】
《作用・効果》
このように、第2の実施形態に係る状態評価装置110は、湿式冷却塔16の状態量に基づいて、部品を交換すべきか洗浄すべきかを決定する。これにより、発電プラント10の管理者は、湿式冷却塔16の性能を回復させるための適切な処置をとることができる。特に、第2の実施形態においては、部品の交換に係る損益と部品の洗浄に係る損益とに基づいて回復方法を決定することができるため、提示される回復方法は、損失を最小化する回復方法となる。
【0055】
また、第2の実施形態に係る状態評価装置110は、補給水質指標値に基づいて交換すべき部品の種類を決定する。これにより、状態評価装置110は、交換時の補給水の水質に応じた部品のアップグレードを提案することができる。
【0056】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態に係る状態評価装置110は、性能低下が障害によるものか劣化によるものかを、正規温度差に基づいて判定するが、これに限られない。例えば、状態評価装置110は、情報取得部1101が取得した情報を学習済みモデルに入力することで性能低下が障害によるものか劣化によるものかを判定してもよい。
【0057】
図7は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
上述の状態評価装置110は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、上述したモデル記憶部1111に対応する記憶領域を主記憶装置902および補助記憶装置903に確保する。
【0058】
補助記憶装置903の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904または通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0059】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。