【文献】
Eur. J. Immunol.,2009年,vol.39,p.491-506
【文献】
Clin. Cancer Res.,2013年,vol.19,p.5636-5646
【文献】
J. Clin. Immunol.,2012年,vol.32,p.1059-1070
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の抗原認識ドメインの標的はCD123を含み、第2の抗原認識ドメインの標的はCD33を含み、第1の共刺激ドメインはCD28を含み、第2の共刺激ドメインは4-1BBを含み、切断部位はP2Aを含む、請求項1に記載の操作された細胞であって、T細胞である操作された細胞。
単一のポリペプチドがさらに、IL-15/IL-15sushi、IL-15/IL-15sushiアンカー、PD-1、PD-L1、CSF1R、CTAL-4、TIM-3、TGFRベータ、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-15RA、IL-21、それらの機能的フラグメント、またはそれらの組み合わせを含むエンハンサーを含む、請求項1に記載の操作された細胞であって、前記エンハンサーが、第2の切断部位により第1および第2のCARから分離されており、かつ前記操作された細胞及び免疫細胞の増殖を増強することにより、免疫細胞モジュレーターとして機能する、操作された細胞。
細胞増殖性疾患が、形質細胞白血病、多発性骨髄腫、形質細胞腫、アミロイドーシス、waldestromのマクログロブリン腫、重鎖疾患、孤立性骨芽細胞腫、不確定性のモノクローナル性ガンマパシー(MGUS)、または多発性骨髄腫のくすぶりを含む、請求項18に記載の組成物。
第1の抗原認識ドメインの標的はCD123を含み、第2の抗原認識ドメインの標的はCD33を含み、第1の共刺激ドメインはCD28を含み、第2の共刺激ドメインは4-1BBを含み、切断部位はP2Aを含む、請求項18に記載の組成物であって、操作された細胞がT細胞である組成物。
単一のポリペプチドがさらに、IL-15/IL-15sushi、IL-15/IL-15sushiアンカー、PD-1、PD-L1、CSF1R、CTAL-4、TIM-3、TGFRベータ、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-15RA、IL-21、それらの機能的フラグメント、またはそれらの組み合わせを含むエンハンサーを含む、請求項18に記載の組成物であって、前記エンハンサーが、第2の切断部位により第1および第2のCARから分離されており、かつ前記操作された細胞及び免疫細胞増殖を増強することにより、免疫細胞モジュレーターとして機能する、組成物。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】cCARの構成の概略図(以下、「multiple CARまたはcompound CAR」と呼ぶ)。Multiple またはcompound CARは複数の抗原(例えば、cell type 1またはcell type 2または同じcell type)を標的にする。Multiple またはcCAR T細胞による免疫療法は、異なる、あるいは同様の抗原認識ドメイン、ヒンジ(H)領域、膜貫通(TM)ドメイン、様々な共刺激ドメイン(co-stimulatory domain) および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、それぞれ異なる構成要素のCARから構成されるものによる。
【
図2A】cCAR-Tの構成の概略図。構成 は、P2Aペプチドによって連結された複数のモジュラーユニットによるCARであり、SFFVプロモーターにより発現が誘導される、リンカーが切断されると、cCARは分かれ、それぞれCD33および/またはCD123を発現する標的に関与する。新規cCAR構成として、構築物の活性化ドメインには、CD33 CARの区域に4-1BBが、そしてCD123 CAR上にCD28部位が含まれるが、これに限定されない。
【
図2B】ウエスタンブロットによりT細胞 に形質導入されたCD33CD123 cCARの発現を示す。この図は、2つの異なるCARタンパク質、すなわち、CD33 CARおよびCD123 CARの発現を示す。リンカーの切断時にCD33およびCD123 CARの両方を発現するcCAR-T細胞は、2つの明瞭かつ一貫して強いタンパク質バンドを示す。緑色蛍光タンパク質(GFP)は陰性対照として利用。
【
図2C】フローサイトメトリー解析で形質導入の効率を表す。上パネルは、UCB(臍帯血)およびPB(末梢血)で使用する前に最大形質導入効率を測定するために、293FT HEK(ヒト胚性腎臓)細胞で試験したCD33CD123cCAR(またはCD33CD123-2G-CARとも呼ぶ)のレンチウイルス力価を示す。下部パネルは、CD33CD123cCAR構築物およびコントロールとしてのGFP形質導入細胞を含むレンチウイルスベクターで形質導入されたCD33CD123cCAR(CD33CD123-2G-CARとも呼ばれる)T細胞を示す。黄色の丸で示されたパーセンテージは、形質導入効率のプロキシである。
【
図3】compound CAR(cCAR)を作製する方法を示す概略図。
【
図4】前骨髄球性白血病細胞株HL60とCD33CD123-2G CAR-T細胞(cCAR)とのインキュベーションによる共培養アッセイ。cCAR-T細胞(下のパネル)の能力はコントロールGFP形質導入T細胞(上パネル)を用いて比較する。殺傷効力は、約24時間のインキュベーション後に残っているCD33 +細胞の集団によって測定される(黄色の丸で囲まれている)
【
図5】約100%のCD33および約50-80%のCD123を発現する骨髄性白血病細胞株KG-1aとcCAR-T細胞のインキュベーションによる共培養アッセイ。cCAR-T細胞(下のパネル)をコントロールGFP形質導入T細胞(上パネル)と比較する。殺傷効力は、約24時間のインキュベーション後に残されたCD33 +細胞の集団によって測定される。
【
図6】cCAR-T細胞とAML患者サンプル(ここではAML-9と称する)とのインキュベーションによる共培養アッセイ。患者細胞は、例えば、白血病細胞、単球および他のタイプの芽細胞のような、細胞の混合集団である。CD33およびCD34は白血病細胞の特異的マーカーとして、CAR-T作用の指標として作用する。CAR-Tパネル(右)をコントロールGFP形質導入T細胞(中央)と比較する。殺傷効力は、少なくとも24時間のインキュベーション後に残ったCD33 + / CD34 +細胞の集団によって測定される。
【
図7】B-ALL患者サンプル(ここではSp-BM-B6と呼ぶ)とcCAR-T細胞とのインキュベーションによる共培養アッセイ。患者の細胞は、例えば、白血病細胞、単球および他のタイプの芽細胞のような、細胞の混合集団である。CD34は、白血病細胞の特異的マーカーとして作用する。CAR-Tパネル(右)をコントロールGFP形質導入T細胞(中央)と比較する。殺傷効力は、少なくとも24時間のインキュベーション後に残ったCD34 +細胞の集団によって計測される。
【
図8】NK-92細胞におけるCD33CD123 cCARの発現。CD33CD123 cCARの発現は、ヤギ抗マウスF(ab)2 抗体を用い検出される。
【
図9】cCAR NK-92細胞とHL-60とのインキュベーションによる 共培養アッセイ。cCAR NK-92細胞の働きを、GFPにより形質導入されたNK-92細胞と比較する。殺傷効力は、約24時間のインキュベーション後に残ったCD33 +細胞の集団によって測定される。
【
図10】cCAR NK-92細胞とKG1aとのインキュベーションによる共培養アッセイ。cCAR NK細胞パネルの結果を、GFPにより形質導入されたNK-92細胞の結果と比較する。殺傷効力は、約24時間のインキュベーション後に残ったCD33 +細胞の集団によって計測される。
【
図11】CD33CD123cCAR(CAR-CD33 / 123)NK-92細胞によるHL-60またはKG1aに対する用量依存的応答。殺傷効力は、約24時間のインキュベーション後に残ったCD33 +細胞の集団によって測定される。
【
図12】CD33CD123 cCAR NK-92細胞によるKG11細胞の2つの集団における殺傷能力への対照との比較。アッセイは、CAR-CD33 / 123(CD33CD123cCAR NK-92細胞)と標的細胞kG1aとの間での異なる細胞比率で実施した。殺傷効力は、約24時間のインキュベーション後に残ったCD33 + CD123 +あるいはCD33 + CD123-細胞の集団によって計測される。
【
図13】cCARの略図。構成は、リンカーによって連結されたCARの複数のモジュール単位の発現を誘導するSFFVプロモーターを含む。リンカーの切断時に、cCARは分かれ、様々な標的抗原、CD19および/またはCD20、および/またはCD22および/またはCD138の組合せを発現する標的に関与する。Multiple cCARsは、同じまたは異なる共刺激ドメイン、4-1BB(4-BBとも呼ばれる)および/またはCD28を制限することなく、利用する。
【
図14A】
図14A-C. BCMA-CS1 cCAR構築図(BC1cCAR)。(A)構成は、P2Aペプチドによって連結されたCARの2つのモジュール単位の発現を誘導するSFFVプロモーターからなる。このP2Aペプチドが切断されると、cCARは分かれ、BCMAおよび/またはCS1を発現する標的に関与する。2つのユニットCARは、同じ共刺激ドメイン、4-1BBを使用する。
【
図14B】(B)はフローサイトメトリー分析で、BC1cCAR発現を解析したもので、アイソタイプコントロール(左)に対しBC1cCAR(右、正方形で強調して表示)はF(Ab)2に対して15.3%の陽性を示す。
【
図14C】(C)BCMA cDNA(BCMA-K562)(Kochenderfer、NIHから入手)で形質導入されたK562細胞と共培養することによるBC1cCAR-T細胞 の予備的機能検証。棒グラフは、BCMA-K562細胞株へのコントロールT細胞での作用と比較した時の溶解性ならびにコントロールと比較した時の野生型K562(wt-K562)の溶解性を示す。
【
図14D】BCMA-CS1-2Gの構成は 4-1BBまたはCD28の2つの異なる共刺激ドメインを使用する。構成は、P2Aペプチドによって連結されたCARの2つのモジュール単位の発現を誘導するSFFVプロモーターを含む。このP2Aペプチドが切断されると、cCARは分かれ、BCMAおよび/またはCS1を発現する標的に関与する。2つのユニットCARは、4-1BBまたはCD28のいずれかの異なる共刺激ドメインを使用する。フローサイトメトリー分析により、F(Ab)2を用いることで、まれなBC1cCARの発現がT細胞表面上に同定された(右、四角で強調して表示)。ゲーティングはアイソタイプコントロール(左)に対して行われた。
【
図14E】HEK-293FT細胞におけるBC1cCARおよびBCMA-CS1-2Gのタンパク質発現。HEK-293FT細胞にGFP(レーン1)、BC1cCAR(レーン2)、CD269-CS1-2G(レーン3)のレンチウイルスプラスミドをトランスフェクトし、トランスフェクションの48時間後、上清を除去し、細胞を回収した。回収した細胞を溶解し、マウス抗ヒトCD3z抗体によりウエスタンブロットで解析した。
【
図15】MM1S細胞株による共培養。共培養は24時間未満で行われ、細胞は回収され、フローサイトメトリーにより分析した。標的MM1S細胞(ミエローマ細胞)をCytotracker(CMTMR)色素で標識し、エフェクターT細胞と区別した。抗BCMA(CD269)抗体および抗CS1(CD319)抗体によって個体群を分別した。
図15A、フローサイトメトリーによる共培養の結果。
図15B、E:T比と溶解度のグラフでの要約(右)。
【
図16】RPMI-8226細胞株での共培養。共培養を24時間未満で行い、細胞を回収し、フローサイトメトリーにより分析した。標的RPMI-8226細胞はCytotracker(CMTMR)色素で標識してエフェクターT細胞と区別した。抗BCMA(CD269)抗体および抗CS1(CD319)抗体によって個体群を区別した。
図16A、フローサイトメトリーによる共培養の結果。
図16B、E:T比と溶解度のグラフでの要約。
【
図17】U266細胞株の共培養。共培養を24時間以内で行い、細胞を回収し、フローサイトメトリーにより分析した。標的U266細胞をCytotracker(CMTMR)色素で標識して、これをエフェクターT細胞と区別した。抗BCMA(CD269)抗体および抗CS1(CD319)抗体によって個体群を区別した。(A)フローサイトメトリーによる共培養の結果。(B)E:T比と溶解度のグラフでの要約。
【
図18A】MM10-G 患者のプライマリーサンプルでの共培養および特異的溶解。共培養を24時間未満で行い、細胞を収集し、フローサイトメトリーにより分析した。標的MM10-G細胞を、Cytotracker(CMTMR)色素で標識して、これをエフェクターT細胞と区別した。抗BCMA(CD269)抗体および抗CS1(CD319)抗体によって個体群をゲートした。注目すべきことに、ゲーティングによりMM10-Gが異なるBCMA +およびCS1 +集団を提示することを示す。
図18A、フローサイトメトリーによる共培養の結果。
【
図19A】MM7-G患者のプライマリーサンプルでの共培養および特異的溶解。共培養を24時間未満で行い、細胞を回収し、フローサイトメトリーにより分析した。標的MM7-G細胞を、Cytotracker(CMTMR)色素で標識して、これをエフェクターT細胞と区別した。抗BCMA(CD269)抗体および抗CS1(CD319)抗体によって個体群をゲートした。
図19A、フローサイトメトリーによる共培養の結果。
【
図20A】MM11-G患者のプライマリーサンプルでの共培養および特異的溶解。共培養を24時間未満で行い、細胞を収集し、フローサイトメトリーにより分析した。標的MM11-G細胞を、Cytotracker(CMTMR)色素で標識して、これをエフェクターT細胞と区別した。抗BCMA(CD269)抗体および抗CS1(CD319)抗体によって個体群を分別した。
図20A、フローサイトメトリーによる共培養の結果。
【
図21】CD269-CS1-BBCAR T細胞は、in vivoで抗白血病効果を示す。致死量以下の照射を受けたNSGマウスに、測定可能な腫瘍形成を誘導するため、翌日ルシフェラーゼ発現MM.1S多発性骨髄腫細胞を静脈注射した。3日後、8×106個のCD269-CS1-BBCAR NK細胞またはベクターコントロールNK細胞をマウスに静脈注射した。3日目、6日目、および8日目に、マウスにRediJect D-Luciferinを皮下注射し、IVISイメージングで解析した。CD269-CS1-BBCAR NKおよびベクターコントロールT細胞を注射したマウスでの平均光強度を比較した。
【
図22】
図21の研究に基づいて2つのグループ間でパーセント生存率を測定及び比較した。
【
図23】CRISPR/Cas9干渉システム。sgRNAおよびCas9ピューロマイシンの発現は、それぞれU6プロモーターおよびSFFVプロモーターによって誘導される。Cas9は、E2A自己切断配列によってピューロマイシン耐性遺伝子に連結されている。
【
図24】血液悪性腫瘍を標的とするCAR TまたはNK細胞の作製ステップの一例を提供する概略図である。
【
図25】CRISPR/Cas9レンチウイルスシステムを用いた安定したCD45ノックダウンNK-92細胞の作製および細胞の選別。フローサイトメトリー分析により、NK-92細胞の表面上のCD45発現レベルを示した(左パネル)。sgCD45B CRISPRをNK-92細胞に形質導入した後、形質導入細胞を、ピューロマイシンを含む培地中で数週間培養した。CD45陰性NK-92細胞を、CD45抗体を用いて決定し、選別した。安定なNK45i-92(CD45ノックダウン)NK-92細胞の純度を、フローサイトメトリー分析(右パネル)により決定した。このデータは、NK45i-92細胞が首尾よく作製され、得られたことを示している。
【
図26】野生型、GFP形質導入NK-92またはNK45i-92NK細胞の細胞増殖曲線。NK-92細胞におけるCD45ノックダウン(KD)に起因する細胞増殖の効果を評価するために、NK-92(●)、GFP形質導入NK-92(■)およびNK45i-92(▲)を24ウェルプレートに播種してから48時間および96時間後に細胞数を計数した。IL-2は48時間時点に添加した。(n = 3回の独立した重複実験を行った)。データは平均+ S.Dである。これらのデータは、NK-92上のCD45受容体をノックダウンしても、非形質導入NK-92細胞またはGFP形質導入NK-92細胞と比べ同様の細胞増殖曲線を示すことを示した。
【
図27A】CCRF-CEM(標的:T)およびGFP NK-92細胞またはGFP NK45i-92細胞(エフェクター:E)、5:1(E:T)比率による共培養アッセイ。16時間のインキュベーション。(A)フローサイトメトリーによる分析、CCRF-CEMのみ培養(左パネルの青色のドット)、CCRF-CEMおよびコントロールGFP形質導入NK-92細胞(中央パネル)またはGFP NK45i-92細胞(右パネル)を共培養した。全パネル中の青色の点は、残存する標的CCRF-CEM細胞を示し、赤色のドットは共培養アッセイにおけるエフェクター細胞を示す。全てのインキュベーションタイムは16時間であり、エフェクターT細胞:標的細胞の比は5:1であった。全て重複実験で行った。
【
図27B】(B)棒グラフは、GFP形質導入NK45i-92細胞による細胞溶解のパーセントを、CCRF-CEMとの共培養アッセイにおいてコントロールGFP形質導入NK92細胞との結果を比較して示している。これらのデータは、NK-92細胞におけるCD45のノックダウンは、GFP-コントロールNK-92細胞と比較して、CCRF-CEM細胞に対する殺傷活性に有意差を示さないことを示唆する。青いドットは左上画分にある。
【
図28A】CCRF-CEM(標的:T)およびGFP NK-92、CD5CAR NK-92またはCD5CAR NK45i-92細胞(エフェクター:E)との共培養アッセイ。5:1(E:T)比でおこなった。16時間でのインキュベーション、(A) CCRF-CEMのみ(左パネル)、CCRF-CEMおよび対照GFP NK-92細胞(中央左パネル)、CD5CAR NK-92細胞(中央右パネル)、あるいはCD5CAR NK45i-92細胞(右パネル)と共培養した フローサイトメトリー分析の結果を右から左に示す。全パネル中の青色の点は、残存する標的CCRF-CEM細胞を示し、赤色のドットは共培養アッセイにおけるエフェクター細胞を示す。インキュベーションタイムはすべて16時間であり、エフェクターT細胞:標的細胞の比率は5:1である。全てデュプリケートの実験で行なわれた。
【
図28B】(B)棒グラフは、CCRF-CEMとの共培養アッセイにおけるコントロールGFP NK92細胞との結果を比較したCD5CAR NK-92細胞またはCD5CAR NK45i-92細胞による細胞溶解のパーセントを示す。データは平均+ S.Dである。CD5CAR NK細胞およびCD5CAR NK45i-92細胞の両方は、コントロールGFP NK-92細胞と比較して、CD5陽性CCRF-CEMに対して100%近い細胞殺傷活性を示す。これらのデータは、CD5CAR NK細胞およびCD5CAR NK45i-92細胞が、GFPコントロールNK-92細胞と比較してCD5を発現するCCRF-CEM細胞をインビトロ共培養アッセイで効果的に溶解することができ、CD45のノックダウンが NK-92細胞における殺傷活性への細胞機能に対し影響を及ぼさないことを示す。パネルの4画分の左上の青い点は左から 最初の2つのパネルに見られる。
【
図29A】CD45CARの構造およびその発現の構成。(A)CD45CARレンチウイルスベクターの模式図。CD45CAR構成は、リーダー配列、抗CD45scFv、ヒンジドメイン(H)、膜貫通ドメイン(TM)、2つの共刺激ドメイン(CD28および4-1BB)を含むモジュール化されたシグナル伝達ドメインであり、第3世代CARと定義され、細胞内シグナル伝達ドメインCD3ゼータを含む。
【
図29B】(B)では、HEK-293FT細胞にGFP(レーン1)およびCD45CAR(レーン2)のレンチウイルスプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、上清を除去し、細胞を回収した。細胞をウエスタンブロット用に溶解し、マウス抗ヒトCD3z抗体で調べた。
【
図30A】NK
45i-92細胞へのCD45CARの形質導入およびCD45CAR形質導入細胞の選別。(A)フローサイトメトリー分析によって、CD45CARレンチウイルスをNK
45i-92細胞に形質導入した後、NK
45i-92上のCD45CARの発現レベル(右パネルでの青丸で囲まれている領域)をNK
45i-92細胞(左パネル)と比較検討した。CD45CAR発現NK
45i-92細胞を選別し、細胞表面上のCD45発現レベルをフローサイトメトリー分析により測定した。
【
図30B】(B)細胞表面上に約87%のCD45CAR発現していることがフローサイトメトリー分析によって検出された。
【
図31A】CCRF-CEM(標的:T)およびGFP NK-92またはCD45CAR NK
45i-92細胞(エフェクター:E)との共培養アッセイ。5:1(E:T)比である。16時間のインキュベーション。(A)CCRF-CEMおよび対照GFP形質導入NK-92細胞(左パネル)またはCD45CAR NK
45i-92細胞(右パネル)との共培養におけるフローサイトメトリー分析。全てのパネル中の青い点は、残りの標的CCRF-CEM細胞を示し、赤色のドットは共培養アッセイにおけるエフェクターNK-92細胞を示す。インキュベーションタイムはすべて16時間であり、エフェクターT細胞:標的細胞の比率は5:1である。全て重複実験で行った。
【
図31B】(B)棒グラフは、CCRF-CEMとの共培養アッセイにおけるCD45CAR NK
45i-92細胞による細胞溶解率を、コントロールGFP NK92細胞との結果で比較して示している。データは平均
+ S.Dである。CD45CAR NK
45i-92細胞は、コントロールGFP NK-92細胞と比較して、CCRF-CEM細胞に対して約70%の細胞溶解度を示す。これらのデータは、CD45CAR NK
45i-92細胞がGFP-コントロールNK-92細胞と比較してCD45を発現するCCRF-CEM細胞をin vitro共培養アッセイで効果的に溶解することを示唆している。
【
図32A】Jurkat細胞(標的:T)およびGFP-コントロールまたはCD45CAR NK
45i-92細胞(エフェクター:E)を用いた共培養アッセイ。5:1または2:1(E:T)比である。6時間のインキュベーション。(A)Jurkat細胞をCMTMR細胞トラッカー色素で染色した後、フローサイトメトリー解析を行った。これらのデータは、Jurkat細胞がCD45陽性(左パネル)であり、かつ、ほぼ CD56陰性細胞(右パネル)であることを示す。
【
図32B】(B)Jurkat細胞(標的:T)およびコントロールまたはCD45CAR NK
45i-92細胞(エフェクター:E)を用いた共培養アッセイでのフローサイトメトリーによる解析。共培養アッセイの比率は、5:1または2:1(E:T)で行った。左パネルは、コントロールGFPまたはCD45CAR NK
45i-92細胞と5:1(E:T)比の共培養において、右のパネルは、コントロールGFPまたはCD45CAR NK
45i-92細胞との2: 1(E:T)比率の結果である。パネル中の青い点は、共培養アッセイ後の、残りの標的Jurkat細胞を示し、赤色の点は、共培養アッセイ後のエフェクター細胞を示す。インキュベーションタイムはすべて6時間であった。全て重複実験で行った。
【
図32C】(C)棒グラフは、5:1または2:1(E:T)比率におけるコントロールGFP NK92細胞と比較したCD45CAR NK
45i-92細胞による細胞溶解率を示す。データは平均
+ S.Dである。CD45CAR NK
45i-92細胞は、コントロールGFP NK-92細胞と比較して、Jurkat細胞に対して約60%の細胞溶解率を、両条件において示す。このデータは、CD45CAR NK
45i-92細胞が、GFPコントロールNK-92細胞と比較して細胞表面上のCD45を発現するJurkat細胞をin vitro共培養アッセイで効果的に溶解することを示唆している。
【
図33A】
図33A-C. GFP-NK-92細胞(標的:T)および非形質導入NK-92細胞またはCD45CAR NK
45i-92細胞(エフェクター:E)との共培養アッセイ。5:1または2:1(E:T)比率で行った。6時間のインキュベーション。(A)GFPコントロールNK-92細胞を用いたフローサイトメトリー解析。これらのデータは、GFPコントロールNK-92細胞の約99%がGFP陽性細胞(緑色の点)であることを証明している。
【
図33B】(B)GFPコントロールNK-92細胞(標的:T)および非形質導入の、あるいはCD45CAR NK
45i-92細胞(エフェクター:E)を用いた共培養アッセイにおけるフローサイトメトリー解析。共培養アッセイの比は、5:1または2:1(E:T)で行った。左パネルは、非形質導入またはCD45CAR NK
45i-92細胞と5:1(E:T)比率での共培養において、右パネルは非形質導入またはCD45CAR NK
45i-92細胞との2: 1(E:T)比率である。パネル中の緑色の点は、共培養アッセイによって残された標的GFP NK-92細胞を示し、赤色のドットは共培養アッセイ後のエフェクター細胞を示す。インキュベーション時間は6時間であった。全て重複実験で行った。
【
図33C】(C)棒グラフは、5:1または2:1(E:T)比率での非形質導入NK-92細胞と比較した、CD45CAR NK
45i-92細胞によるGFP NK-92細胞の細胞溶解率を示す。データは平均
+ S.Dである。CD45CAR NK
45i-92細胞は、非形質導入NK-92細胞と比較して、GFP NK-92細胞に対して2:1(E:T)比率で約20%の、5:1(E:T)比で約55%のGFP 92細胞を溶解することを示した。このデータは、CD45CAR NK
45i-92細胞が、非形質導入NK-92細胞と比較して細胞表面上のCD45を発現するGFP NK-92細胞をin vitro共培養アッセイで効果的に溶解することを示唆する。緑色の点は、各パネルの右上の画分にみられる。
【
図33D】
図33D-E. CD45b-BBまたはCD45b-28のNK
45i-92細胞への形質導入およびCD45b-BBまたはCD45b-28 NK
45i-92形質導入細胞の選別。(D)CD45b-BBまたはCD45b-28レンチウイルスをNK
45i-92細胞に形質導入した後、NK
45i-92上のCD45b-BB CARまたはCD45b-28 CARの発現レベル(中間パネルで、青で囲まれた領域)を NK
45i-92細胞(左パネル)と比較してフローサイトメトリー分析で検討した。
【
図33E】(E)CD45b-BBまたはCD45b-28 CARを発現するNK
45i-92細胞を、フローサイトメトリー分析によって選別した。フローサイトメトリー解析により、細胞表面上に約74%のCD45b-BB CAR または約82%のCD45b-28 CARが発現していることが検出された。
【
図33F】
図33F-G. REH細胞(標的:T)およびGFP NK-92細胞、CD45CAR NK
45i-92細胞、CD45b-BB NK
45i-92細胞またはCD45b-28 NK
45i-92細胞(エフェクター:E)との共培養アッセイ。5:1(E:T)比である。20時間でのインキュベーション。(F) 共培養のフローサイトメトリーによる解析、REH 細胞のみ(左パネル)、REH細胞およびコントロールGFP形質導入NK-92細胞(第2左パネル)、CD45CAR NK
45i-92細胞(中央パネル)、CD45b-BB NK
45i-92細胞(左パネルから4番目)またはCD45b-28 NK
45i-92細胞(右パネル)。全パネル中の青い点は、共培養アッセイ後の残存した標的REH細胞を示し、赤色のドットは、共培養アッセイ後のエフェクターGFPまたはCARs-NK-92細胞を示す。REHはB急性リンパ芽球性細胞株である。インキュベーションタイムはすべて20時間であり、エフェクターNK細胞:標的細胞の比率は5:1である。全て重複実験で行った。
【
図33G】(G)棒グラフは、REH細胞との共培養アッセイにおけるコントロールGFP NK92細胞と比較した、CD45CAR NK
45i-92細胞、CD45b-BB NK
45i-92細胞またはCD45b-28 NK
45i-92細胞による細胞溶解率を示す。データは平均
+ S.Dである。コントロールGFP NK-92細胞と比較して CD45CAR NK
45i-92細胞は約76%の細胞を溶解し、CD45b-BB NK
45i-92細胞は約79%の細胞溶解度を示し、CD45b-28 NK
45i-92細胞は REH細胞に対して100%細胞溶解を示す。これらのデータは、3つの全てのCD45CARsがREH細胞を効果的に溶解することを示唆している。
【
図34A】TまたはNK細胞における構造およびその発現を説明するための模式図。(A)CAR(第3世代)とsushi / IL-15の組み合わせを発現ベクター上に構築し、それらの発現はSFFVプロモーターによって誘導される。sushi/IL-15を含むCARは、P2A切断配列と連結している。sushi/IL-15部分は、sushiドメインに融合された、26アミノ酸ポリプロリンリンカーを介してIL-5に連結されたIL-2シグナルペプチドから構成される。
【
図34B】(B)CARおよびsushi/IL15は、TまたはNK細胞上に存在する。
【
図35A】CD4IL15RA-CARの発現。(A)HEK-293FT細胞に、GFP(レーン1)およびCD4IL15RA CAR(レーン2)、および陽性コントロールのCD4CAR(レーン3)のレンチウイルスプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、上清を除去し、細胞をマウス抗ヒトCD3z抗体によるウェスタンブロットのために回収した。
【
図35B】(B)HEK-293細胞に、トランスフェクトされたHEK-293FT細胞からのGFP(左)またはCD4IL15RA-CAR(右)ウイルス上清のいずれかで形質導入した。3日間のインキュベーション後、細胞を採取し、ヤギ抗マウスF(Ab’)2で染色し、フローサイトメトリーで分析した。
【
図36】CD4IL15RACARのNK細胞への形質導入。トランスフェクトしたHEK-293FT細胞由来のGFP(左)またはCD4IL15RACAR(右)ウィルス上清のいずれかでNK-92細胞へ形質導入した。2回目の形質導入は、最初の形質導入の24時間後に行った。2回目の形質導入の24時間後、細胞を採取し、洗浄し、IL-2を含む新鮮な培地上の組織培養プレートに移した。3日間のインキュベーション後、細胞を採取し、ヤギ抗マウスF(Ab’)2 抗体またはヤギIgG(対照)を用いて1:250で30分間染色した。細胞を洗浄し、ストレプトアビジン-PEコンジュゲートを用い1:500比で染色し、その後洗浄を行い、2%ホルマリンで懸濁し、フローサイトメトリーで解析した。
【
図37】CD4IL15RACARのT細胞への形質導入。左はウェスタンブロットの結果である。HEK-293FT細胞を、GFP(レーン1)およびCD4IL15RA-CAR(レーン2)のレンチウイルスプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、上清を除去し、マウス抗ヒトCD3ゼータ抗体を用いたウェスタンブロットを行う為、細胞を回収した。右はCD4IL15RACAR発現を示す。トランスフェクトしたHEK-293FT細胞由来のGFP(左)またはCD4IL15RACAR(右)ウイルス上清のいずれかで臍帯血バフィーコート由来の活性化T細胞へ形質導入した。2回目の形質導入を最初の形質導入の24時間後に行った。2回目の形質導入の24時間後、細胞を採取し、洗浄し、新鮮な培地およびIL-2を含む組織培養プレートに移した。3日間のインキュベーション後、細胞を採取し、ヤギ抗マウスF(Ab’)2 抗体またはアイソタイプコントロールで30分間染色した。GFP(左)またはCD4IL15RA(右)のいずれかで形質導入した。細胞を洗浄し、1:250比率でストレプトアビジン-PEコンジュゲートを用い染色し、洗浄し、2%ホルマリン中に懸濁させ、フローサイトメトリーで解析した。
【
図38A】CD4CAR NK-92細胞およびCD4IL15RA CAR NK-92細胞は、共培養においてKARPAS 299 T白血病細胞を殺傷する。(A)GFPコントロール(右上)、CD4CAR(左下)、またはCD4IL15RA(右下)レンチウイルス上清のいずれかを形質導入したNK-92細胞を、KARPAS 299細胞と5:1の比率でインキュベートした。4時間における共培養後、細胞をマウス抗ヒトCD4(APC)およびCD3(PerCp)抗体で染色し、フローサイトメトリー(N=2)で解析した。左上のパネルは、Karpas 299細胞のみの標識を示す。
【
図38B】(B)溶解した標的細胞の割合をグラフに示す。
【
図39】CD4CAR NK-92細胞およびCD4IL15RA CAR NK-92細胞は、共培養においてCD4を発現するMOLT4 T白血病細胞を殺傷する。GFPコントロール(左)、CD4CAR(中央)またはCD4IL15RA(右から2番目)のレンチウイルス上清のいずれかを用いて形質導入されたNK-92細胞を、エフェクター:標的比1:1または2:1でMOLT4細胞と共にインキュベートした。一晩の共培養の後、細胞をマウス抗ヒトCD4(APC)およびCD56(PerCp)抗体で染色し、フローサイトメトリー(N=2)で解析した。右上のパネルは、標識されたMOLT4細胞のみを示す。溶解した標的細胞の割合をグラフに示す。
【
図40】CD4IL15RACAR T細胞は、CD4CARよりもin vivoでより強力な抗白血病効果を示す。NSGマウスを致死量以下で照射し、測定可能な腫瘍形成を誘導する為、翌日に静脈内(尾静脈)よりルシフェラーゼ発現MOLM13細胞を注射した。3日後、マウスに1治療単位の8×10
6 のCD4CAR、またはCD4IL15RACAR T細胞、またはベクターコントロールT 細胞を静脈注射した。3、6、9および11日目に、マウスにRediJect D-Luciferinを皮下注射し、IVISイメージングにより解析した。
【
図41】
図40の研究に基づく3種類のマウスの腫瘍縮小率の測定並びに比較。ベクターコントロールT細胞を注射したマウスとCD4CARおよびCD4IL15RACAR T細胞を注射マウスについて測定した平均光強度を比較したところ腫瘍縮小率との相関関係がみられた。2つのセットそれぞれにおいて、CD4CAR Tの結果が左側に、CD4IL15RA CAR Tの結果が右側に示される。
【
図42】6ウェル組織培養プレート中の10%FBSを含むDMEM培地中でそれぞれ示された容量のEF1-GFPまたはSFFV-GFPウイルス上清のいずれかでHEK293細胞に形質導入した。培養培地は翌朝交換された。48時間後、10倍の拡大率で形質導入された細胞のGFPシグナルをEVOS蛍光顕微鏡にて視覚化した。
【
図43】
図42のデータに基づくEF1-GFPまたはSFFV-GFPウイルス上清のいずれかを形質導入したHEK293細胞を トリプシン処理し回収し、ホルマリン中に懸濁させ、FITCチャネルを用いたフローサイトメトリー分析によりGFP +細胞の割合を同定した。
【
図44】低用量あるいは高容量のEF1-GFPまたはSFFV-GFPウイルス上清のいずれかを用い形質導入した活性化臍帯血バフィーコートT細胞を培養、形質導入後7、14、21および28日後のGFP +細胞の割合を、細胞をホルマリン中に懸濁させ、FITCチャネルを用いてフローサイトメトリーにより解析した。(A)低または高用量のウイルス上清のいずれかで形質導入された細胞についてのGFP + T細胞の割合。(B)高量のEF1-GFP上清で形質導入されたGFP + T細胞の割合と少量のSFFV-GFP上清で形質導入されたT細胞におけるGFP +細胞のパーセントとの比較。(50μLのSFFV-GFPおよび1mLのEF1-GFP上清を使用した)。(N=2)。
【
図45】悪性形質細胞におけるリガンド受容体相互作用。APRILリガンドは、TAC1またはBCMAに結合する。BAFFリガンドは、TAC1、BCMA、またはBAFF-Rに結合する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)構成、その作製方法および使用方法を提供する。
【0021】
キメラ抗原レセプター(CAR)ポリペプチドは、シグナルペプチド、抗原認識ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、少なくとも1つの共刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む。
【0022】
第1世代CARは、細胞内シグナル伝達ドメインとしてCD3zを含むが、第2世代CARは、様々なタンパク質由来の少なくとも1つの単一共刺激ドメインを含む。共刺激ドメインの例には、CD28、CD2、4-1BB(CD137、あるいは「4-BB」とも呼ばれる)、およびOX-40(CD124)が含まれるが、これらに限定されない。第3世代のCARには、CD28、4-1BB、CD134(OX-40)、CD2および/またはCD137(4-1BB)などの2つの共刺激ドメインが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は交互に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基を有する化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質またはペプチドの配列とすることができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸を有する任意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書中で使用される場合、短鎖、一般に当該技術分野では例えばペプチド、オリゴペプチド、およびオリゴマーとも言及されており、そして長鎖、一般に当該技術分野ではタンパク質と呼ばれ、それには多くの種類が存在する、これら両者について言及する。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの改変体、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0024】
「シグナルペプチド」は、輸送および局在化を指向するペプチド配列、そしてある細胞オルガネラ(小胞体など)および/または細胞表面に結合することができるいかなるペプチドを含むペプチド配列。
【0025】
シグナルペプチドは、本開示において、細胞膜および細胞表面への輸送を指示し、正確な局在を提供する、如何なる分泌タンパク質または膜貫通タンパク質のペプチド、ポリペプチドである。特に、本開示のシグナルペプチドは、本開示における細胞膜へ指示する本開示のポリペプチドであり、それらポリペプチドの細胞外部分が細胞表面に提示され、膜貫通部分が原形質膜に及んでおり、活性ドメインが細胞質部分、または細胞の内部に存在する。
【0026】
この実施例では、シグナルペプチドは、小胞体(ER)を通過した後に切断される、すなわち切断可能なシグナルペプチドである。この実施例では、シグナルペプチドは、I型、II型、III型またはIV型のヒトタンパク質である。この実施例では、シグナルペプチドは、免疫グロブリン重鎖シグナルペプチドを含む。
【0027】
「抗原認識ドメイン」には、標的の抗原、受容体、ペプチドリガンド、またはタンパク質リガンドに選択的であるかまたは標的とするポリペプチドに選択的なポリペプチドが含まれる。
【0028】
抗原認識ドメインは、リガンド結合および/またはシグナル伝達に関連する、如何なる多種多様な細胞外ドメインまたは分泌タンパク質のいずれかから得ることができる。抗原認識ドメインは、Ig軽鎖の一部と結合したIg重鎖の一部を含み、標的抗原に特異的に結合する一本鎖断片可変(scFv)として構成し得る。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であってもよく、または標的抗原に特異的に結合する任意のタイプであってもよい。別の実施例において、抗原認識ドメインは、受容体またはリガンドでもあり得る。特定の実施例では、標的抗原は特定の疾患状態に特異的であり、疾患状態とは、compound CAR構造上の少なくとも1つのキメラ受容体構造によって認識され得るどんな種類の細胞表面抗原かもしれない。特定の実施例では、キメラ受容体は、特定のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が存在するか、または作製することができる、如何なる癌に関するものであり得る。特に、神経芽腫、肺小細胞癌、メラノーマ、卵巣癌、腎細胞癌、結腸癌、ホジキンリンパ腫および小児急性リンパ芽球性白血病などの癌は、キメラ受容体に特異的な抗原を有する。
【0029】
標的特異的抗原認識ドメインは、好ましくは、標的の抗原に対する抗体または標的の抗原に結合するペプチド、または標的の抗原に結合する抗体に結合するペプチドまたはタンパク質、または標的上の受容体に結合するペプチドまたはタンパク質リガンド(成長因子、サイトカイン、またはホルモンを含むが、これらに限定されない)、または標的上 に結合するペプチドまたはタンパク質リガンドに結合する受容体に由来するドメイン(増殖因子受容体、サイトカイン受容体またはホルモンレセプターを含むが、これらに限定されない)を標的とすることができる抗原結合ドメインを含む。
【0030】
この実施例では、抗原認識ドメインは、標的に対して(選択的な)のモノクローナルまたはポリクローナル抗体の結合部分または可変領域を含む。
【0031】
別の実施例では、抗原認識ドメインは、ラクダ科の単一ドメイン抗体またはその一部を含む。この実施例では、ラクダ科単一ドメイン抗体は、ラクダ科動物に見出される重鎖抗体、またはVHH抗体を含む。ラクダのVHH抗体(例えば、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、およびアルパカ)は、ラクダ科単鎖抗体の可変断片を指し(Nguyenら、2001; Muyldermans、2001参照)、また、ラクダの、ラクダ由来の組み換えVHH抗体、またはラクダのVHH合成抗体からの単離されたVHH抗体を含む。
【0032】
別の実施例では、抗原認識ドメインは、それらの同族受容体に関与するリガンドを含む。一例として、APRILは、TAC1受容体またはBCMA受容体に結合するリガンドである。本明細書中に開示される発明によれば、抗原認識ドメインは、APRILまたはそのフラグメントを含む。さらなる例として、BAFFは、BAFF-R受容体またはBCMA受容体に結合するリガンドである。本明細書中に開示される発明によれば、抗原認識ドメインは、BAFFまたはその断片を含む。別の実施例において、抗原認識ドメインはヒト化される。
【0033】
抗原認識ドメインは、その配列内にいくつかの可変性を含み、依然として本明細書に開示される標的に対して選択的であり得ることが理解される。したがって、抗原認識ドメインのポリペプチドは、本明細書中に開示される抗原認識ドメインポリペプチドと少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、または少なくとも70%同一であり、依然として本明細書中に記載され、本開示の範囲内にあると考えられる。
【0034】
標的にはインターロイキン6受容体、NY-ESO-1、アルファフェトプロテイン(AFP)、グリピカン-3(GPC3)、BCMA、BAFF-R、TACI、LeY、CD5、CD13、CD14、CD15、CD19、CD20、CD22、CD33、CD41、CD61、CD64、CD68、CD117、CD123、CD138、CD267、CD269、CD38、Flt3受容体、CS1、CD45、ROR1、PSMA、MAGE A3、糖脂質、グリピカン3、F77、GD-2、WT1、CEA、HER-2/neu、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、α-フェトプロテイン、CA19-9、CA72-4、NY-ESO、FAP、ErbB、c-Met、MART- 1, CD30、EGFRvIII、免疫グロビン kappa and lambda、CD38、CD52、CD3、CD4、CD8、CD5、CD7、CD2そしてCD138らが含まれる。
【0035】
別の実施例では、標的は任意の部分のインターロイキン6受容体、NY-ESO-1、アルファフェトプロテイン(AFP)、グリピカン-3(GPC3)、BCMA、BAFF-R、TACI、LeY、CD5、CD13、CD14、CD15、CD19、CD20、CD22、CD33、CD41、CD61、CD64、CD68、CD117、CD123、CD138、CD267、CD269、CD38、Flt3受容体、CS1、CD45、TACI、ROR1、PSMA、MAGE A3、糖脂質、グリピカン3、F77、GD-2、WT1、CEA、HER-2 / neu、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、α-フェトプロテイン、CA19-9、CA72-4、NY-ESO、FAP、ErbB、c-Met、MART-1、CD30、EGFRvIII、免疫グロビン kappa and lambda、CD38、CD52、CD3、CD4、CD8、CD5、CD7、CD2およびCD138ら任意のタンパクを含む。
【0036】
この実施例では、標的は インターロイキン6受容体、NY-ESO-1、アルファフェトプロテイン(AFP)、グリピカン-3(GPC3)、BCMA、BAFF-R、TACI、LeY、CD5、CD13、CD14、CD15、CD19、CD20、CD22、CD33、CD41、CD61、CD64、CD68、CD117、CD123、CD138、CD267、CD269、CD38、Flt3受容体、CS1、CD45、TACI、ROR1、PSMA、MAGE A3、糖脂質、グリピカン3、F77、GD-2、WT1、CEA、HER-2 / neu、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、α-フェトプロテイン、CA19-9、CA72-4、NY-ESO、FAP、ErbB、c-Met、MART-1、CD30、EGFRvIII、免疫グロビン kappa and lambda、CD38、CD52、CD3、CD4、CD8、CD5、CD7、CD2およびCD138ポリペプチドの露出表面部位を含む。
【0037】
別の実施例では、標的抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)またはEBV(エプスタインバーウイルス)抗原由来のE6およびE7などのその一部またはその表面露出領域等のウイルス性または真菌性の抗原含む。
【0038】
この実施例では、配列番号24を含むTACI抗原認識ドメイン。
【0039】
この実施例では、配列番号25を含むBCMA抗原認識ドメイン。
【0040】
この実施例では、配列番号26を含むCS1抗原認識ドメイン。
【0041】
この実施例では、配列番号27を含むBAFF-R抗原認識ドメイン。
【0042】
この実施例では、配列番号28を含むCD33抗原認識ドメイン。
【0043】
この実施例では、配列番号29を含むCD123抗原認識ドメイン。
【0044】
この実施例では、配列番号30を含むCD19抗原認識ドメイン。
【0045】
この実施例では、配列番号31を含むCD20抗原認識ドメイン。
【0046】
別の実施例では、配列番号32を含むCD20抗原認識ドメイン。
【0047】
この実施例では、配列番号33を含むCD22抗原認識ドメイン。
【0048】
この実施例では、配列番号34を含むCD45抗原認識ドメイン。
【0049】
例えば、ヒンジ領域は 、キメラ抗原受容体、および少なくとも1つの共刺激ドメインおよびシグナル伝達ドメインの配列の間に位置するが、これに限定されない。
【0050】
ヒンジ配列は、例えば、ヒトまたはその一部を含む、いかなる属からの任意の適切な配列から得ることができる。そのようなヒンジ領域は当該技術分野において公知である。この実施例では、ヒンジ領域は、CD-8アルファ、CD28、4-1BB、OX40、CD3-ゼータ、T細胞レセプターαまたはβ鎖、CD3ゼータ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4 、CD5、CD8、CD8a、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、それらの機能的誘導体、およびそれらの組み合わせを含むヒトタンパクのヒンジ領域を含む。
【0051】
この実施例では、ヒンジ領域はCD8ヒンジ領域を含む。
【0052】
いくつかの実施例では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、およびIgD)から選択されるものを含むが、これに限定されない。
【0053】
膜貫通ドメインは、細胞膜に及ぶ疎水性ポリペプチドを含む。特に、膜貫通ドメインは、細胞膜の一方の側(細胞外)から細胞膜の向こう側(細胞内または細胞質)に及ぶ。
【0054】
膜貫通ドメインは、アルファヘリックスまたはベータバレルの形状で、またはそれらの組み合わせであり得る。膜貫通ドメインは、多くの膜貫通セグメント、各アルファ - ヘリックス、ベータシート、またはそれらの組み合わせを有するポリトピックタンパク質を含む。
【0055】
この実施例では、CARの構造のドメインの1つに もともと関連する膜貫通ドメインが使用される。別の実施例では、同一または異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとそのような ドメインの結合を避けるため、あるいは、レセプター複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、膜貫通ドメインは選択またはアミノ酸置換によって修飾される。
【0056】
例えば、膜貫通ドメインは、T細胞レセプターαまたはβ鎖の膜貫通ドメイン、CD3ゼータ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD7、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD68、CD134、CD137、ICOS、CD41、CD154、それらの機能的誘導体、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0057】
この実施例では、膜貫通ドメインは、ドメインのアミノ酸残基の25%超、50%超または75%超がロイシンおよびバリンなどの疎水性残基であるように人工的に設計される。この実施例では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンの三つ組が合成膜貫通ドメインの各末端に見出される。
【0058】
この実施例では、膜貫通ドメインはCD8膜貫通ドメインである。別の実施例では、膜貫通ドメインはCD28膜貫通ドメインである。そのような膜貫通ドメインは当該分野で公知である。
【0059】
シグナル伝達ドメインおよび共刺激ドメインは、免疫細胞を活性化する、あるいは少なくも少なくともいくつかの局面の免疫細胞シグナル伝達経路を活性化するためのポリペプチドを含む。
【0060】
この実施例では、シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ、共通FcRγ(FCER1G)、FcγRIIa、FcRβ(FcイプシロンRib)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、DNAX活性化タンパク質12(DAP12)、それらの活性断片、それらの機能的誘導体、およびそれらの組み合わせを含む、それら機能的シグナル伝達ドメインのポリペプチドを含む。そのようなシグナル伝達ドメインは当該分野で公知である。
【0061】
この実施例では、CARポリペプチドは、1つ、あるいは1つ以上の共刺激ドメインを含む。この実施例では、共刺激ドメインは、OX40、CD27、CD28、CD30、CD40、PD-1、CD2、CD7、CD258、ナチュラルキラーグループ2メンバーC(NKG2C)、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)、B7-H3 あるいはCD83、ICAM-1、LFA-1(CD11a / CD18)、ICOS、および4-1BB(CD137)の少なくとも1つに結合するリガンド、その活性断片、その機能的誘導体、およびそれらの組み合わせを含めたタンパク質由来の機能的シグナル伝達ドメインである。
【0062】
本明細書中で使用される場合、少なくとも1つの共刺激ドメインおよびシグナル伝達ドメインは、細胞内ドメインとしてまとめて言及しているかもしれない。本明細書中で使用される場合、ヒンジ領域および抗原認識は、細胞外ドメインとしてまとめて言及しているかもしれない。
【0063】
本開示はさらに、上記のキメラ抗原レセプターポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0064】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの鎖として定義される。
【0065】
ポリヌクレオチドは、DNAおよびRNAが含まれる。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書中で使用される場合、核酸およびポリヌクレオチドは同様の意味でもある。当業者であれば、核酸がポリヌクレオチドであり、これを加水分解してモノマー「ヌクレオチド」にすることができるという一般的な知識を有する。モノマーヌクレオチドを加水分解してヌクレオシドにすることができる。本明細書中で使用される ポリヌクレオチドは 、すなわち例えば、組換えライブラリーまたは細胞からの通常のクローニング技術およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの合成手段によるクローニング、当技術分野で利用可能な任意の手段によって得られるすべての核酸配列が含まれるがこれに限定されない。
【0066】
CARをコードするポリヌクレオチドは、いかなる従来の方法によって、特定のCARのアミノ酸配列から容易に調製される。アミノ酸配列をコードする塩基配列は前述のNCBI RefSeq IDから、または GenBenkのアクセッション番号から各ドメインのアミノ酸配列を 取得することができ、本発明の核酸は、標準的な分子生物学および/または化学的手順により調製することができる。例えば、塩基配列を元に、ポリヌクレオチドを合成することができ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてcDNAライブラリーから得られたDNA断片を 組み合わせることで、本発明のポリヌクレオチドを調製することができる。
【0067】
この実施例では、本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、遺伝子、発現カセットまたはクローニングカセットの一部である。
【0068】
上記のポリヌクレオチドは、ベクターにクローニングすることができる。「ベクター」は、単離されたポリヌクレオチドを含み、単離されたポリヌクレオチドを細胞の内部に届けるために使用される構成物である。線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド、ファージミド、コスミドおよびウイルスを含むが、これらに限定されない多数のベクターが当該分野で公知である。ウイルスには、ファージ、ファージ誘導体が含まれる。したがって、用語「ベクター」は、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスを含む。この用語はまた、例えばポリリジン化合物、リポソームなどの核酸の細胞への移動を容易にする非プラスミドおよび非ウイルス化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。この実施例では、ベクターには、クローニングベクター、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、組み込みベクター、および配列決定ベクターが含まれる。
【0069】
この実施例では、ベクターはウイルスベクターである。この実施例では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである。一実施形態では、操作された細胞は、ポリヌクレオチド配列を発現するためにウイルスに形質導入される。
【0070】
哺乳動物細胞への遺伝子導入のための多くのウイルスベースのシステムが開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムのための便利なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、ベクターに挿入され、当該分野で既知の技術を用いてレトロウイルス粒子にパッケージングされる。次いで、組換えウイルスを単離し、in vivoまたはex vivoのいずれかの手段で患者の細胞に送達することができる。多くのレトロウイルス系が当該分野で公知である。いくつかの実施例では、アデノウイルスベクターが使用される。多くのアデノウイルスベクターが当該分野で既知である。この実施例では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0071】
ウイルスベクター技術は当技術分野で周知であり、例えばSambrookら(2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)および他のウイルス学および分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスが含まれるが、これらに限定されない。一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生命体において機能する複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つ以上の選択マーカーを含む(例えば、WO 01/96584; WO 01/29058;および米国特許第6,326,193号)。
【0072】
レンチウイルスベクターは、高い効率でヒトT細胞に遺伝子を導入する能力に関してよく知られているが、ベクターにコードされた遺伝子の発現は、その発現を促進する内部プロモーターに依存する。強力なプロモーターは、追加の共刺激ドメインまたは増殖性サイトカインをコードする遺伝子を有する増加したCARの構成サイズが等量の発現を保証しないため、第3世代または第4世代のCARの作製に特に重要である。異なる強度および細胞型特異性を有する様々なプロモーターが存在する。CAR T細胞を用いる遺伝子治療は、T細胞が十分なCAR本体を発現し、長期間にわたり発現を維持する能力に依存している。EF-1αプロモーターは、CAR発現のために一般的に選択されている。
【0073】
本発明は、T細胞またはNK細胞における高レベルの遺伝子発現のための強力なプロモーターを持つ発現ベクターに依存する。さらなる実施例において、本発明者は、T細胞またはNK細胞におけるCARsの高レベル発現に有用な強力なプロモーターを開示する。特定の実施例では、SFFVプロモーターと関連した強力なプロモーターは、発現ベクターに選択的に導入されることで、T細胞またはNK細胞において高レベルの発現を獲得し、長期間にわたって発現を維持することができる。CARs、T細胞共刺激因子およびサイトカインが発現されたものを 免疫療法に使用する。
【0074】
適切なプロモーターの一例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに連結された操作されうる任意のポリヌクレオチド配列で高レベルの発現を誘導することができる強力な構成的プロモーター配列である。
【0075】
適切なプロモーターの別の例は、伸長増殖因子-1a(EF-1a)である。しかしながら、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン - バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびにアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、クレアチンキナーゼプロモーターなどのヒト遺伝子プロモーターが挙げられるが、これらに限定されることなく、他の構成的プロモーター配列も使用される。さらに、本開示は構成性プロモーターの使用に限定されるべきではなく、誘導性プロモーターも本開示の一部として考慮される。誘導性プロモーターの使用することで、連結されたポリヌクレオチド配列の発現を望む 場合、発現をオンにすることができる分子スイッチあるいは発現が望ましくない場合に発現をオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例には、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
キメラ抗原レセプターポリヌクレオチドの発現は、例えば、限定されるものではないが、SFFV(脾臓フォーカス形成ウイルス)(例えば、配列番号23)またはヒト伸長因子11α(EF)プロモーター、CAG(CMVエンハンサーを有するニワトリβ-アクチンプロモーター)プロモーター、ヒト伸長因子1α(EF)プロモーターが利用される。低強度/低発現プロモーターの例としては、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、ユビキチンC(UBC)プロモーター、およびホスホグリセレートキナーゼ1(PGK)プロモーター、またはその一部を含め、限定されるものではないが、それらを含め利用される。キメラ抗原受容体の誘導性発現は、例えば、限定されるものではないがTRE3GV(全ての世代、好ましくは第3世代を含むTet応答エレメント )を含めたテトラサイクリン応答性プロモーター、誘導性プロモーター(Clontech Laboratories, Mountain View, CA)またはその一部またはそれらの組み合わせを含むこれらが 使われることで、目的を達成するかもしれない。
【0077】
好ましい実施例では、プロモーターは、SFFVプロモーターまたはその誘導体である。予想外にも、SFFVプロモーターは、本開示において、形質導入された細胞においてより強い発現およびより高い持続性を示すことが発見されている。
【0078】
「発現ベクター」とは、発現されるヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用性エレメントを含む。発現のための他の要素は、宿主細胞によってまたはインビトロ発現系において供給され得る。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、裸であるかまたはリポソームに含まれる)およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)など、当技術分野で公知のものすべてが含まれる。発現ベクターは、バイシストロニックまたはマルチシストロン発現ベクターであり得る。バイシストロニックまたはマルチシストロン発現ベクターは、(1)各オープンリーディングフレームに融合された複数のプロモーター、(2)遺伝子間のスプライシングシグナルの挿入、発現が単一のプロモーターによって誘導される遺伝子の融合、(3)遺伝子間でのタンパク質分解切断部位の挿入(自己切断ペプチド)、そして(iv)遺伝子間に内部リボソーム進入部位(IRES)の挿入などが含まれる。
【0079】
この実施例では、本開示は、少なくとも1つのキメラ抗原レセプターポリペプチドまたはポリヌクレオチドを有する操作された細胞を提供する。
【0080】
「遺伝子操作された細胞」は、遺伝子、DNAまたはRNA配列、またはタンパク質もしくはポリペプチドの付加または修飾によって、修飾、形質転換、または操作される任意の生体の、如何なる細胞を意味する。本開示の単離された細胞、宿主細胞、および遺伝子操作された細胞は、キメラ抗原レセプターまたはキメラ抗原レセプター複合体をコードするDNAまたはRNA配列を含有すし、キメラ受容体を細胞表面に発現するNK細胞およびT細胞のような、単離された免疫細胞を含む。例えば、NK細胞を活性化またはTリンパ球活性した単離された宿主細胞および操作された細胞は、癌の治療および感染性疾患の治療のために使用され得る。
【0081】
この実施例では、操作された細胞は免疫調節細胞を含む。免疫調節細胞には、CD4 T細胞(ヘルパーT細胞)、CD8 T細胞(細胞傷害性T細胞、CTL)、および記憶T細胞またはT記憶幹細胞などのT細胞が含まれる。別の実施例において、T細胞には、ナチュラルキラーT細胞(NK T細胞)が含まれる。
【0082】
この実施例では、操作された細胞はナチュラルキラー細胞を含む。ナチュラルキラー細胞は当該分野でよく知られている。この実施例では、ナチュラルキラー細胞には、NK-92細胞などの細胞株が含まれる。NK細胞株のさらなる例には、NKG、YT、NK-YS、HANK-1、YTS細胞、およびNKL細胞などが含まれる。
【0083】
NK細胞は、GvHDのリスクなしに抗腫瘍効果をもたらし、T細胞と比較して短命である。したがって、NK細胞は、癌細胞を破壊した直後に枯渇されるため、改変された細胞を取り除くために、CARの構成上での誘導性自殺遺伝子導入の必要性を減らすであろう。
【0084】
本開示によれば、驚くべきことに、NK細胞は、本明細書中に開示されるキメラ抗原レセプターポリペプチドを含み、発現するように操作さることで、その後、容易に利用可能な細胞であることが見出された。
【0085】
同種異系または自己NK細胞は、急速な免疫応答を誘導するが、その寿命が限られているため血液循環系から比較的急速に消失する。従って、驚くべきことに、出願人らは CAR細胞に基づく療法を使用した場合の、持続的な副作用の懸念が減少することを発見した。
【0086】
この開示は、cCARを作製する方法を含む。いくつかの実施例において、cCARは、T細胞を用いて作製される。別の実施例では、cCARは、末梢血または臍帯血から単離された初代NK細胞あるいはNK-92細胞 を使用しており、疾患または癌を有する任意の哺乳類に「既成品」として投与される。
【0087】
本発明の1つの側面によれば、本発明に従ってNK細胞は、増殖させ、CARポリヌクレオチドをトランスフェクトされることができる。NK細胞は、臍帯血、末梢血、iPS細胞および胚性幹細胞から得ることができる。本発明の1つの側面によれば、NK-92細胞は、増殖させ、CARをトランスフェクトさせ得るかもしれない。NK-92は、ナチュラルキラー(NK)細胞の特色および特徴を有する持続的に増殖する細胞株である(Arai、Meagherら、2008)。NK-92細胞株はIL-2依存性があり、安全であり(Arai、Meagher et al。2008)、且つ実現可能であることが証明されている。CAR発現NK-92細胞は、フィーダー細胞との共培養の有無に関わらず、血清フリー培地中で増殖させることができる。目的のCARを保有するNK-92細胞の純粋な集団は、選別することで得ることができる。
【0088】
この実施例では、操作された細胞は、MHC認識に関与するTCR(T細胞受容体)の構成要素を不活性化するために修飾された、ドナーから得られた同種異系T細胞を含む。その結果として、TCR欠損T細胞は移植片対宿主病(GVHD)を引き起こさないであろう。
【0089】
いくつかの実施例において、操作された細胞は、細胞表面抗原の発現を妨げるように修飾されるのかもしれない。例えば、操作された細胞は、その発現および細胞表面上の存在を妨げるよう、ネイティブCD45遺伝子を欠失させるように遺伝子改変されるかもしれない。
【0090】
いくつかの実施例では、操作された細胞は、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターまたはプラスミドなどのベクター上に組み込まれ得る誘導性自殺遺伝子(「安全スイッチ」)または安全スイッチの組み合わせをもつ。「安全スイッチ」の導入はcompound CARの安全性の側面を大幅に向上させ、標的腫瘍または標的外の腫瘍毒性を制限する。「安全スイッチ」は、カスパーゼ9遺伝子、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ(CD)またはシトクロムP450などの誘導性自殺遺伝子であり、しかしこれに限定されない。望ましくない改変T細胞を排除するための他の安全スイッチは、T細胞におけるCD20またはCD19または切断型表皮成長因子受容体の発現を含む。すべての可能な安全スイッチが考えられており、本発明で盛り込まれている。
【0091】
いくつかの実施例では、自殺遺伝子は、操作された細胞ゲノムに組み込まれる。
【0092】
この実施例では、本開示は、CD45キメラ抗原レセプターポリヌクレオチドを有する操作細胞を提供する。この実施例では、CD45 CARポリペプチドは、配列番号13を含み 、ポリヌクレオチド配列SEQ ID NO 14に対応する。別の実施例では、CD45 CARポリペプチドは配列番号15を含み、ポリヌクレオチド配列配列番号16に対応する。別の実施例では、CD45 CARポリペプチドは、配列番号17を含み、ポリヌクレオチド配列配列番号18に対応する。
【0093】
Multiple CARユニット
本開示は、少なくとも2つの異なるCARポリペプチドを有する操作された細胞の詳細を提供する。
【0094】
本明細書中で使用される場合、compound CAR(cCAR)またはmultiple CARは、少なくとも2つの異なるキメラ抗原レセプターポリペプチドを有する操作された細胞を指す。本明細書で用いられる「異なるキメラ抗原レセプターポリペプチド」は、ユニークな抗原認識ドメイン、シグナルペプチド、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、少なくとも1つの補助刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを有する。したがって、2つのユニークなキメラ抗原レセプターポリペプチドは、異なる抗原認識ドメインを有するであろう。シグナルペプチド、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、少なくとも1つの共刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインは、2つの異なるキメラ抗原レセプターポリペプチド間で同じであっても異なっていてもよい。本明細書で使用されるように、キメラ抗原レセプター(CAR)単位は、異なるキメラ抗原レセプターポリペプチド、またはそれを同様にコードするポリヌクレオチドを指す。
【0095】
本明細書中で使用される場合、ユニークな抗原認識ドメインは、標的に特異的である、または単一の標的または標的の単一のエピトープを標的にするかの一つでもある。
【0096】
いくつかの実施例では、compound CARは同じ抗原を標的とする。例えば、cCARは、単一の抗原の異なるエピトープまたは異なる部分を標的とする。いくつかの実施例では、compound CARに存在するそれぞれのCAR単位は、同様または異なる疾患状態における、異なる抗原を標的とする、あるいは、疾患状態によって引き起こされる副作用に特異的な異なる抗原を標的とする。
【0097】
いくつかの実施例では、compound CARは2つの異なる抗原を標的とする。
【0098】
様々なCAR単位を有するcompound CARsの作成は大変挑戦的である、
【0099】
様々なCAR単位を有するcompound CARsの作成は大変挑戦的である、
【0100】
(1)CAR-CAR相互作用が有害な影響を及ぼすかもしれず、適切なCAR設計がこの悪影響を相殺する鍵である、(2)単一構成のcompound CARは発現カセットの長さを増加させる可能性がある、その結果、ウイルス力価およびタンパク質発現レベルの低下を引き起こすかもしれない、(3)単一のベクター内にmultiple CARsを発現させる為の、様々なCARボディ要素を含み、特に戦略を選択するため 、適切な設計が必要である、(4)CARのさらなる単位を有するcompound CARに対して強力なプロモーターは特に重要である、(5)CARのヒンジ領域は、各CARユニット間のヒンジ領域の相互作用が好ましくは回避されるように設計する必要がある、(6)細胞で発現する2つまたはそれ以上CARユニットが毒性作用を引き起こすかもしれない(CARとCARの相互作用)。出願人は、新規且つ驚くべきCARの構成並びに、これらのハードルを克服する方法を提供する。
【0101】
この実施例では、本開示は、multiple CARユニットを有する操作された細胞を提供する。これにより、単一の操作された細胞が複数の抗原を標的とすることが可能になる。複数の表面マーカーまたは抗原を同時にmultiple CAR単位で標的とすることにより、耐性クローンの選択が妨げられ、腫瘍の再発が減少する。様々なドメインおよび活性化部位を含む個々の CARの構成を持つMultiple CAR T細胞免疫療法はいずれの悪性腫瘍に対してもまだ展開されていない。
【0102】
本発明のひとつの側面では、cCARは、multiple CAR単位を含む。いくつかの実施例では、cCARは、少なくとも2つのCAR単位を含む。別の実施例において、cCARは、少なくとも3つのCAR単位を含む。別の実施例において、cCARは、少なくとも4つのユニットを含む。
【0103】
この実施例では、本開示は、それぞれが異なる抗原認識ドメインを有する、少なくとも2つの異なるキメラ抗原レセプターポリペプチドを有する操作細胞を提供する。
【0104】
好ましい実施例では、少なくとも2つの異なるキメラ抗原レセプターポリペプチドを有する操作細胞は、末梢血または臍帯血から単離された初代NK細胞であり、またNK-92細胞であり、疾患または癌を有する任意の哺乳類に「既製品」として投与される。
【0105】
この実施例では、操作された細胞は、(i)第1の抗原認識ドメイン、第1のシグナルペプチド、第1のヒンジ領域、第1の膜貫通ドメイン、第1の共刺激ドメイン、および第1のシグナル伝達ドメインを含む第1のキメラ抗原レセプターポリペプチド、(ii)第2の抗原認識ドメイン、第2のシグナルペプチド、第2のヒンジ領域、第2の膜貫通ドメイン、第2の共刺激ドメイン、および第2のシグナル伝達ドメインを含む第2のキメラ抗原レセプターポリペプチド。第1の抗原認識ドメインは、第2の抗原認識ドメインとは異なる。
【0106】
好ましい実施例おいて、各操作されたCAR単位ポリヌクレオチドは、相同組換えを回避するために異なるヌクレオチド配列を有する。
【0107】
この実施例において、第1の抗原認識ドメインの標的は、インターロイキン6受容体、NY-ESO-1、アルファフェトプロテイン(AFP)、グリピカン-3(GPC3)、BAFF-R、BCMA、TACI、LeY、CD5、CD13、CD14、CD15、CD19、CD20、CD22、CD33、CD41、CD61、CD64、CD68、CD117、CD123、CD138、CD267、CD269、CD38、Flt3 受容体そして CS1など、これらの組み合わせから選ばれ、第2の抗原認識ドメインの標的はインターロイキン6受容体、NY-ESO-1、アルファフェトプロテイン(AFP)、グリピカン-3(GPC3)、BAFF-R、BCMA、TACI、LeY、CD5、CD13、CD14、CD15、CD19、CD20、CD22、CD33、CD41、CD61、CD64、CD68、CD117、CD123、CD138、CD267、CD269、CD38、Flt3 受容体そして CS1これらの組み合わせからなるグループより選ばれる。
【0108】
この実施例では、操作された細胞はCD19抗原認識ドメインを有する第1のキメラ抗原レセプターポリペプチドおよびCD20認識ドメインを有する第2のキメラ抗原レセプターポリペプチドを含む。この実施例では、この操作された細胞は、配列番号3のポリペプチドと配列番号4に対応するポリヌクレオチドとを含む。
【0109】
この実施例では、操作された細胞は、CD19抗原認識ドメインを有する第1のキメラ抗原レセプターポリペプチドおよびCD22抗原認識ドメインを有する第2のキメラ抗原レセプターポリペプチドを含む。この実施例では、この操作された細胞は、配列番号5のポリペプチドと配列番号6に対応するポリヌクレオチドとを含む。
【0110】
この実施例では、操作された細胞は、CD19抗原認識ドメインを有する第1のキメラ抗原レセプターポリペプチドおよびCD123抗原認識ドメインを有する第2のキメラ抗原レセプターポリペプチドを含む。この実施例では、この操作された細胞は、配列番号7のポリペプチドと配列番号8に対応するポリヌクレオチドとを含む。
【0111】
この実施例では、操作された細胞は、CD33抗原認識ドメインを有する第1のキメラ抗原レセプターポリペプチドおよびCD123抗原認識ドメインを有する第2のキメラ抗原レセプターポリペプチドを含む。この実施例では、この操作された細胞は、配列番号9のポリペプチドと配列番号10に対応するポリヌクレオチドとを含む。別の実施例では、この操作された細胞は、配列番号11のポリペプチドと配列番号12に対応するポリヌクレオチドとを含む。
【0112】
この実施例では、操作された細胞は、BAFF-R抗原認識ドメインを有する第1のキメラ抗原レセプターポリペプチドおよびCS1抗原認識ドメインを有する第2のキメラ抗原レセプターポリペプチドを含む。
【0113】
この実施例では、操作された細胞は、CD269抗原認識ドメインを有する第1のキメラ抗原レセプターポリペプチドおよびCS1抗原認識ドメインを有する第2のキメラ抗原レセプターポリペプチドを含む。この実施例では、この操作された細胞は、配列番号19のポリペプチドと配列番号20に対応するポリヌクレオチドとを含む。この実施例では、この操作された細胞は、配列番号21のポリペプチドと配列番号22に対応するポリヌクレオチドとを含む。
【0114】
この実施例では、操作された細胞は、CD33抗原認識ドメインを有する第1のキメラ抗原レセプターポリペプチドおよびCD123抗原認識ドメインを有する第2のキメラ抗原レセプターポリペプチドを含む。
【0115】
この実施例では、各CARユニットは、同一または異なるヒンジ領域を含む。別の実施例では、各CARユニットは、同一または異なる膜貫通領域を含む。別の実施例では、各CAR単位は、同一または異なる細胞内ドメインを含む。
【0116】
この実施例では、各CAR単位は、CD3ゼータ鎖シグナル伝達ドメインを含む。
【0117】
この実施例では、各別個のCARユニットは、相互作用を回避するために異なる共刺激ドメインを含む。例えば、第1のキメラ抗原レセプターポリペプチドは、4-BB共刺激ドメインを含み、そして第2のキメラ抗原レセプターポリペプチドは、CD28共刺激ドメインを含む。
【0118】
別の実施例では、ヒンジ領域は、望ましくない分子内または分子間相互作用を引き起こし得るアミノ酸を排除するように設計される。例えば、ヒンジ領域は、ジスルフィド結合の形成を防止するためにシステイン残基を排除または最小化するように設計される。別の実施例において、ヒンジ領域は、疎水性残基を排除または最小化して、望ましくない疎水性相互作用を防止するように設計される。
【0119】
Compound CARは、単独または組み合わせて標的を殺傷させることができる。Multipleまたはcompound CARは、同じまたは異なるヒンジ領域、同じまたは異なる膜貫通、同じまたは異なる共刺激性および同一または異なる細胞内ドメインを含む。好ましくは、ヒンジ領域は、相互作用部位を避けるように選択される。
【0120】
本発明のcompound CARは、T細胞またはNK細胞中の同一または異なる腫瘍集団を標的とすることができる。例えば、第1のCARは、巨大な腫瘍集団を標的とし、次の、または第2のCARは、癌再発を避けるために、例えば、癌または白血病幹細胞を根絶するかもしれない。
【0121】
本発明によれば、驚くべきことに、異なるまたは同じ腫瘍集団を標的とするTまたはNK細胞中のcompound CARが、CAR殺傷活性に耐性の癌細胞を引き起こし、それにより癌からの標的抗原のダウンレギュレーションを引き起こす、腫瘍因子と戦うことが見出した。驚くべきことに、これにより、「抗原逃避」および、異なる腫瘍細胞が異なる表面抗原発現プロファイルを示すことでの腫瘍の不均一性により癌細胞が CAR療法から「隠す」ことが可能になることも見出された。
【0122】
CARポリペプチドおよびエンハンサーを有する操作された細胞
別の実施例において、本開示は、少なくとも1つのキメラ抗原レセプターポリペプチドおよびエンハンサーを有する操作された細胞を提供する。
【0123】
この実施例では、本開示は、少なくとも2つの異なるキメラ抗原レセプターポリペプチドおよびエンハンサーを有する操作細胞を提供する。
【0124】
本明細書中で使用される場合、エンハンサーは、キメラ抗原レセプターポリペプチドを有する操作された細胞の活性を促進または強化する生体分子を含む。エンハンサーにはサイトカインも含まれる。別の実施例において、エンハンサーは、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、PD-1、PD-L1、CSF1R、CTAL-4、TIM-3 そしてTGFR-beta、同受容体、および機能的な断片を含む。
【0125】
エンハンサーは、本明細書に記載される操作された細胞によって発現され、操作された細胞の表面上に提示され得るか、またはエンハンサーは、操作された細胞によって周囲の細胞外空間に分泌され得る。サーフェスディスプレイおよび分泌の方法は、当技術分野において周知である。例えば、エンハンサーは、細胞外空間へのサーフェスディスプレイまたは分泌を提供するペプチドとの融合タンパク質であるかもしれない。
【0126】
エンハンサーの効果は、エンハンサーレセプターおよびその機能的フラグメントなどのさらなる因子によって補完されるかもしれない。さらなる因子は、融合タンパク質としてエンハンサーと同時発現されてもよく、または別個のペプチドとして発現されて細胞外空間に分泌されてもよい。
【0127】
この実施例では、エンハンサーはIL-15である。この場合、さらなる因子はIL-15レセプターおよびその機能的フラグメントである。機能的フラグメントには、IL-15レセプター、IL-15RA、およびIL-15RAのsushiドメインが含まれる。適切なsushiドメインの一例は、配列番号35に含まれる。本開示によれば、本明細書中に開示される任意のキメラ抗原レセプターポリペプチドは、ヒトインターロイキン2シグナルペプチドを有するヒトインターロイキン15、配列番号36を含む。
【0128】
インターロイキン(IL)-15およびその特異的受容体鎖であるIL-15Rα(IL-15-RA)は、NKおよびCD8 T細胞を含む様々なエフェクター細胞において重要な機能的役割を果たす。CD8 + T細胞は、IL-2、IL-7、IL21またはIL-15を含むが、これらに限定されない自己分泌成長因子を発現するように改変され、インビボへの移転後の生存を維持する。理論に縛られることを望むものではないが、IL-15は、CD4欠損を克服して、初代および記憶のCD8T細胞を誘導し得ると考えられている。CD8 T細胞上のIL-15-RAまたはIL-15 IL-RA融合体の過剰発現は、インビトロおよびインビボでその生存および増殖を有意に増強する。いくつかの実施例では、CD4CARまたは任意のCARは、IL-15、IL15RAおよびIL-15 / IL-15RまたはIL15-RA / IL-15あるいはそれらの組み合わせの一部または半分以上の発現を行うことで、CAR TまたはNKの生存または増殖を増強し、記憶CAR CD8 + T細胞の増殖を改善する。
【0129】
本開示は、本明細書に記載のCARおよびIL-15、IL15RAおよびIL-15 / IL-15RまたはIL15-RA / IL-15、または一部、または組み合わせの任意の1つあるいは半分以上を有する操作された細胞はCAR TまたはNKの生存または持続性もしくは増殖を増強することで、患者の癌を治療するために使用される。
【0130】
この実施例では、操作された細胞は、CD4キメラ抗原レセプターポリペプチドおよびIL-15RA(配列番号1)および対応するポリヌクレオチド(配列番号2)を包含する。
【0131】
操作された細胞を作製する方法
本明細書に開示されるいかなるポリヌクレオチドのいずれかは、当技術分野で既知の任意の方法によって操作された細胞に導入され得る。
【0132】
この実施例では、CARポリヌクレオチドは、本明細書に開示される任意のウイルスベクターによって操作された細胞に送達される。
【0133】
この実施例では、安全性プロファイルまたは治療指数の向上を達成するために、本明細書中に開示される任意の操作細胞は、一過性RNA修飾「生分解性」バージョンまたは誘導体、またはそれらの組み合わせとして構築される。本発明のRNA修飾CARは、T細胞またはNK細胞に電気穿孔されるかもしれない。compound CARの発現は、数日にわたって徐々に減少し得るかもしれない。
【0134】
本発明のいくつかの実施例では、本明細書中に開示される任意の操作された細胞は、ウイルスDNAなしで宿主ゲノムにCAR DNAを組み込むトランスポゾンシステム(「Sleeping Beauty」とも呼ばれる)で構築することができるかもしれない。
【0135】
Multiple CARユニットを有する操作された細胞を作製する方法
別の実施例では、本開示は、少なくとも2つのCARユニットを有する操作された細胞を作製する方法を提供する。
【0136】
いくつかの実施形態では、CARの複数の単位が、バイシストロンまたはマルチシストロン発現ベクターを用いてT細胞またはNK細胞で発現される。バイシストロン性またはマルチシストロン性のベクターを構築するために用いることができるいくつかの戦略があり、限定されるものではないが、(1)CARのオープンリーディングフレームに融合した複数のプロモーター、(2)CARのユニット間のスプライシングシグナルの挿入、発現が単一のプロモーターによって誘導されるCARの融合、(3)CARのユニット間のタンパク質分解切断部位の挿入(自己切断ペプチド)、(iv)内部リボソーム侵入部位(IRES)の挿入などがあげられる。
【0137】
好ましい実施例では、複数のCAR単位が単一のオープンリーディングフレーム(ORF)で発現され、それによって複数のCAR単位を有する単一のポリペプチドが作製される。この実施例では、高効率切断部位を含むアミノ酸配列またはリンカーがそれぞれのCAR単位の間に配置される。
【0138】
本明細書中で使用される場合、高い切断効率とは、翻訳されたタンパク質の50%以上、70%以上、80%以上または90%以上が切断されると定義される。切断効率は、Kim 2011によって記載されているように、ウエスタンブロット解析によって評価されるかもしれない。
【0139】
さらに、好ましい実施例では、ウェスタンブロット分析で示されるように、等量の切断されたものが存在する。
【0140】
高効率切断部位の例として、ブタ・テスコウイルス-1 2A(P2A)、FMDV 2A(本明細書ではF2Aと略記する)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)、Thosea asignaウイルス(T2A)、細胞質多角体病ウイルス2A(BmCPV2A)および軟化病ウイルス2A(BmIFV2A)、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。好ましい実施例では、高効率切断部位はP2Aである。高効率切断部位は、Kim JH, Lee S-R, Li L-H, Park H-J, Park J-H, Lee KY, et al. (2011) High Cleavage Efficiency of a 2A Peptide Derived from Porcine Teschovirus-1 in Human Cell Lines, Zebrafish and Mice. PLoS ONE 6(4): e18556の記載を参照により、本明細書に使用されている。
【0141】
ここでの実施例において、複数のCAR単位が単一のオープンリーディングフレーム(ORF)下で発現され、発現は強力なプロモーターの制御下にある。強力なプロモーターの例として、SFFVプロモーターおよびその誘導体が含まれる。
【0142】
操作された細胞はCARポリペプチドおよびエンハンサーを有する
別の実施例では、本開示は、少なくとも1つのCARユニットおよびエンハンサーを発現する操作された細胞を作製する方法を提供する。
【0143】
いくつかの実施例では、少なくとも1つのCARユニットおよびエンハンサーが、バイシストロンまたはマルチシストロン発現ベクターを用いてT細胞またはNK細胞で発現される。バイシストロンまたはマルチシストロンのベクターを構築するために用いることができるいくつかの戦略があり、限定されるものではないが、(1)CARのオープンリーディングフレームに融合された複数のプロモーター、(2)CARのユニット間のスプライシングシグナルの挿入、および発現が単一のプロモーターによって誘導されるCARの融合、(3)CARのユニット間へのタンパク質分解切断部位(自己切断ペプチド)の挿入、(4)内部リボソーム侵入部位(IRES)の挿入がある。
【0144】
好ましい実施例では、複数のCAR単位が単一のオープンリーディングフレーム(ORF)で発現され、それによって少なくとも1つのCAR単位およびエンハンサーを有する単一のポリペプチドが作製される。この実施例では、高効率切断部位を含むアミノ酸配列またはリンカーが、各CAR単位間およびCAR単位とエンハンサーとの間に配置される。この実施例では、ORFは強力なプロモーターの制御下にある。強力なプロモーターの例には、SFFVプロモーターおよびその誘導体が含まれる。
【0145】
さらに、好ましい実施例ではウェスタンブロット分析で示されるように、等量の切断されたものが存在する。
【0146】
本明細書に開示される構成物を用いた治療方法
別の実施例では、本発明は、癌治療における同種異系移植の前におけるコンディショニングのため、CD45を標的化する方法を提供する。CD45は、白血球共通抗原(LCA)としても知られており、赤血球および血小板を除いて造血起源の事実上すべての細胞上で発現されるチロシンホスファターゼである。ほとんどの血液悪性腫瘍はCD45を発現する。例えば、85%〜90%の急性リンパ性白血病および骨髄性白血病は、CD45を発現する。CD45は非造血起源には見出されない。さらに、CD45は、悪性細胞および白血球上の細胞当たり約200,000分子の平均コピー数の高密度で発現される。CD45は、様々な血液悪性腫瘍に対する理想的な標的である。しかしながら、CAR TおよびNK細胞もCD45を発現する。内因性CD45の不活性化がなければ、CD45を標的とすとした武装したCAR TまたはNK細胞は、結果、自己殺傷を引き起こし得るかもしれない。
【0147】
驚くべきことに、本発明のmultiple CARs (Compound CARs, cCAR)は、癌細胞がCAR活性に抵抗する、すなわち癌細胞表面からの標的抗原のダウンレギュレーションまたは異種発現に抵抗する重要なメカニズムと戦うことが見出された。このメカニズムは癌細胞がCAR療法から「隠れる」ことを可能にし、これは「抗原逃避」とも呼ばれる現象である。本開示は、2つあるいはそれ以上の抗原の組み合わせを認識して腫瘍を迅速に排除することによって癌抗原逃避に対して先制するものである。
【0148】
本発明は、cCARを用いたマルチ抗原の同時標的化方法であって、標的抗原の喪失またはダウンレギュレーションに基づく腫瘍選択の可能性を最小限に抑えることによって腫瘍制御を改善する方法を提供する。
【0149】
開示される発明は、腫瘍細胞中に存在する異なるまたは同じ表面抗原を標的とするT細胞またはNK細胞でのcompound(multipleまたはcoumpound)cCARを含む。本発明のcompoundキメラ抗原レセプターは、リンカーによって連結され、同一または異なる抗原を標的とする少なくとも複数のキメラレセプターでの構成物を含む。例えば、compound CAR(cCAR)構成中に存在するそれぞれのCAR構成は、抗原認識ドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび/または細胞質ドメインを含む。細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインは、そのようないかなる求められるドメイン由来でありえる。Multiple CARの構成はリンカーでリンクされている。Compound CAR構成の発現はプロモーターによって誘導される。リンカーは、ペプチドまたはタンパク質の一部であってもよく、タンパク質またはペプチドが生成された後に自己切断される(自己切断ペプチドとも呼ばれる)。
【0150】
この実施例では、本発明のcompound CARは、骨髄異形成症候群および急性骨髄性白血病(AML)を標的とする。骨髄異形成症候群(MDS)は、最も高齢者の中で頻繁に発生する難治性の造血幹細胞悪性腫瘍であり、毎年約14,000の新規症例が米国で発生しています。約30-40%のMDSの症例がAMLに進行する。人口の高齢化に伴い、MDSの発生率は増加し続けています。MDSおよびAMLは、かなり研究されているが、十分な治療法は開発されていない。
【0151】
本発明の構成および方法は、癌の治療としての免疫療法における一次および共刺激シグナルの両方を送達するTリンパ球またはNK細胞の集団を作製するために使用され、とりわけ肺癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、結腸癌、腎細胞癌、卵巣癌、脳癌、肉腫、白血病およびリンパ腫などの治療が挙げられる。
【0152】
免疫療法薬は、一般に、免疫エフェクター細胞および分子に依存し、癌細胞を標的化し、そして破壊することである。エフェクターは、直接的または間接的に腫瘍細胞標的と相互作用する表面分子を有するリンパ球であるかもしれない。様々なエフェクター細胞として、細胞傷害性T細胞、NK細胞およびNK-92細胞が含まれる。種々のエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞、NK細胞およびNK-92細胞が含まれる。本発明に記載の構成および方法は、化学療法、外科手術、放射線療法、遺伝子療法などの癌のための他のタイプの療法と併せて利用することができるかもしれない。本発明に記載の構成および方法は、炎症、免疫疾患および感染症などの免疫応答に依存する他の疾患でも利用されるかもしれない。
【0153】
いくつかの実施例では、本発明のcompound CARは、微小残存病変を有し、もはや化学療法に応答しない患者に対して完全な寛解を達成することにより、骨髄移植に対する橋渡しとして機能し得るかもしれない。他の実施例では、compound CARは、白血病細胞を除去し、その後の骨髄幹細胞レスキューで白血球減少をサポートする。
【0154】
いくつかの実施形態では、本開示のcompound CARは、癌細胞が標的抗原のダウンレギュレーションによってCAR活性に抵抗する重要なメカニズムに対して戦うことができる。別の実施例では、本発明のcompound CARはまた、癌細胞の不均一性と戦うことができ、これは、通常のCAR T / NK細胞療法において重大なる挑戦でもある。さらなる実施例では、開示されるcompound CARは、第1のCARが大きな腫瘍集団を標的とし、別のCARが癌再発を回避するために癌または白血病幹細胞を根絶するように設計される。
【0155】
この施形態では、本開示は、CD33抗原またはCD123抗原、あるいは両方有する細胞を、CD33抗原認識ドメインおよびCD123抗原認識ドメインを有するキメラ抗原レセプターポリペプチドの少なくとも1つを有する操作細胞と接触させることによって標的とする細胞を破壊する方法を提供する。操作された細胞は、T細胞またはNK細胞であり得る。
【0156】
CD33抗原およびCD123抗原の少なくとも1つを有する細胞は、急性骨髄性白血病、前駆急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄増殖性新生物、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、芽球性形質細胞腫樹状腫瘍(BPDCN)、ホジキンリンパ腫、肥満細胞症およびヘアリーセル白血病細胞である。
【0157】
別の実施形態では、本開示は、造血幹細胞移植のための骨髄破壊的移植前治療レジメンを提供する方法を提供する。この実施例では、CD33ユニットおよびCD123ユニットを有するTまたはNK操作細胞が、それを必要とする患者に投与される。
【0158】
さらなる実施例では、本開示は、CD123またはCD33を発現する白血病幹細胞(LSC)またはバルク白血病細胞、またはその両方を根絶または死滅させる方法を提供する。この実施例では、CD33ユニットおよびCD123ユニットを有するTまたはNK操作細胞が、それを必要とする患者に投与される。
【0159】
さらなる例では、TまたはNK細胞中のcompound CARは、CD34 + CD38-白血病幹細胞またはCD123またはCD33またはその両方を発現するバルク白血病細胞を根絶または死滅させるために使用され得るかもしれない。
【0160】
いくつかの実施形態では、compound CARは、CD19またはCD20抗原またはその両方を発現する細胞を標的とする。別の実施例では、compound CARは、CD19またはCD22抗原またはその両方を発現する細胞を標的とする。標的細胞は、限定するものではないが、B細胞リンパ腫または白血病などの癌細胞であるかもしれない。さらなる実施例では、標的抗原は、ROR1、PSMA、MAGE A3、糖脂質、グリピカン3、F77、GD-2、WT1、CEA、HER-2 / neu、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE- 6、αフェトプロテイン、CA19-9、CA72-4、NY-ESO、FAP、ErbB、c-Met、MART-1、CD30、EGFRvIII,、免疫グロブリン kappaそしてlambda、CD38、CD52、CD3、CD4、CD8、CD5、CD7、CD2そしてCD138からなるグループより少なくとも1つは含まれるがこれに限定されない。標的抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)またはEBV(エプスタインバーウイルス)抗原由来のE6およびE7などのウイルスまたは真菌抗原を含むこともできる。
【0161】
いくつかの実施例では、compound CARは、CD19またはCD123抗原またはその両方を発現する細胞を標的とする。標的細胞は、限定するものではないが、B細胞リンパ腫または白血病などの癌細胞である。
【0162】
さらなる実施例では、compound CARは、CS1および/またはB細胞成熟抗原(BCMA)またはその両方を発現する細胞を標的とする。別の実施例では、標的細胞は、限定されないが、多発性骨髄腫などの悪性形質細胞である。
【0163】
いくつかの実施例では、compound CARは、CS1、BCMA、CD267、BAFF-R、CD38、CD138、CD52、CD19、CD20、インターロイキン6受容体およびNY-ESO-1抗原を含むがこれらに限定されない複数の抗原を発現する細胞を標的とする。別の実施例では、標的細胞は、限定されないが、多発性骨髄腫などの悪性形質細胞である。
【0164】
いくつかの実施例では、compound CARは、アルファフェトプロテイン(AFP)およびグリピカン-3(GPC3)を含むがこれに限定されない複数の抗原を発現する細胞を標的とする。別の実施例において、標的細胞は、肝細胞癌、線維芽細胞腫、肝芽細胞腫、未分化胚性肉腫および肝臓の間葉性腫瘍、肺扁平上皮細胞癌、精巣非分化胚細胞腫瘍、脂肪肉腫、卵巣および奇形卵黄嚢腫瘍、卵巣絨毛癌、卵巣明細胞癌、および胎盤部位栄養芽腫が挙げられる。
【0165】
本発明によれば、異なるまたは同じ抗原を標的とするcompound CARsを含むT細胞またはNK細胞は、腫瘍エスケープを相殺し、腫瘍細胞の同時標的化を可能にする。
【0166】
本明細書中に開示されるcompound CARを含むTまたはNK宿主細胞は、本開示において具体的に表現される。compound CARのヌクレオチドおよび構成、配列、宿主細胞、ベクターは、本開示の一部であると考えられ、本明細書において具体的に示される。
【0167】
いくつかの実施例では、compound CARは、現在開発中または市販されている任意の化学療法剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施例では、compound CARは、血液悪性腫瘍、癌、非血液悪性腫瘍、炎症性疾患、HIVおよびHTLVなどの感染性疾患および他のものを含むが、これらに限定されない疾患の第一選択治療として投与される。この実施例において、compound CARを発現するT細胞は、適応免疫療法として同一または異なるcompound CARを発現するNK細胞と同時投与される。compound CAR NK細胞は、迅速で、生来の活性を標的細胞に提供するが、compound T細胞は相対的な持続性適応免疫活性を提供する。
【0168】
この実施形態では、compound CARを発現する細胞は、哺乳動物、例えば、化学療法に耐性であり、骨髄幹細胞移植に適格でない患者への骨髄幹移植への橋渡しとして投与される。
【0169】
いくつかの実施例では、compound CARは、導入遺伝子を同時発現し、標的の腫瘍病変においてIL-12などの形質転換産物を放出し、さらに腫瘍微小環境を調節する。
【0170】
この実施例において、compound CARを発現する細胞は、疾患に対する治療の一部として、骨髄の骨髄アブレーションのために哺乳動物に投与される。
【0171】
特定の実施例では、compound CARを発現する細胞は、T細胞またはNK細胞であり得、哺乳動物、例えば、人間に投与される。提示される開示は、compound CARの投与によって、障害または疾患を有する哺乳動物を治療する方法を含む。標的細胞は、感染性疾患、炎症および自己免疫疾患のような他のいかなる疾患状態で影響される細胞や癌細胞なのかもしれない。
【0172】
本発明は、compound CARの断片、突然変異体または変異体(例えば、修飾形態)の使用及び、T / NK細胞の刺激および増殖を誘導する能力を保持する抗原の使用を含むことを意図する。「タンパク質の形態」は、少なくとも1つのCARまたは抗原と有意な相同性を共有し、T / NK細胞への刺激および増殖を達成することができるタンパク質を意味することが意図される。本明細書で使用する「生物学的に活性な」または「生物学的に活性な形態のタンパク質」という用語は、細胞の抗腫瘍活性をもたらすことができるタンパク質または変異体の形態を含むことを意味する。
【0173】
本発明の構成物および方法は、癌の治療としての免疫療法における一次および共刺激シグナルの両方を送達するT細胞またはNK細胞の集団を作製するために使用され、特に肺癌、メラノーマ、乳癌、前立腺癌、結腸癌、腎細胞癌、卵巣癌、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、白血病およびリンパ腫が挙げられる。本発明に記載の構成物および方法は、化学療法、外科手術、放射線療法、遺伝子療法などの癌のための他のタイプの療法と併せて利用することができる。
【0174】
いくつかの実施例では、本発明は、CARまたはcompound CAR T細胞 あるいはNK細胞を 患者に投与することによって、自己免疫疾患の患者のB細胞、未成熟B細胞、記憶B細胞、形質芽細胞、長期生存形質細胞、または形質細胞の減少方法を開示する。CARの標的細胞は、抗原であるBCMA、TACIおよびBAFF-Rの1つまたは2つ、または全てを発現するBまたは形質細胞である。自己免疫疾患には、全身性強皮症、多発性硬化症、乾癬、皮膚炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎など)、全身性エリテマトーデス、血管炎、関節リウマチ、シェーグレン症候群、多発性筋炎、肉芽腫症および血管炎、アジソン病、抗体複合体媒介性疾患および抗糸球体基底膜疾患が挙げられる。
【0175】
複数の細胞外細胞マーカーが、腫瘍関連抗原として有用性がり、したがってCAR T / NK細胞療法の潜在的標的として現在研究されている。しかし、健康な組織上でのこれらの抗原の発現は、有害事象(on-target, off-tumor)をもたらす、標的外への毒性は主要な安全性の懸念事項として残っている。さらに、CAR T / NK細胞療法の主要な制限は、腫瘍形成に必須ではない分子を標的とする場合、抗原エスケープの変異体を選択する可能性があることである。したがって、標的抗原の発現がほとんどまたは全くないままで存続する悪性細胞は、それらのCARの高親和性作用にもかかわらず、CAR T / NK細胞から回避し得る。
【0176】
本発明によれば、ナチュラルキラー(NK)細胞は、CARによる殺傷のための代替の細胞傷害性エフェクターである。T細胞とは異なり、NK細胞は前活性化を必要とせず、恒常的に細胞溶解性機能を示す。NK細胞においてcCARのさらなる発現は、NK細胞が癌、特にNK細胞治療に耐性の癌細胞を効果的に殺すことを可能にする。
【0177】
さらに、NK細胞は、移植片対宿主病(GvHD)を誘発するリスクなしに、抗癌効果をもたらすことが知られている。
【0178】
研究により、CD34 + CD38-AML細胞上にCD123の異常な過剰発現が示されたが、正常骨髄対応CD34 + CD38-にはCD123を発現しなかった(Jordan、Upchurchら、2000)。CD123 +、CD34 + CD38-のこの集団は、これらの細胞が免疫不全マウスにおいて白血病プロセスを開始および維持することができるので、LSCs (Chronic Myeloid Leukemia Stem Cells)として考えられている。
【0179】
CD34 + / CD38- / CD123 + LSCの数は、AML患者の臨床転帰を予測するために使用することができる。AML患者において15%を超えるCD34 + / CD38- / CD123 +細胞は、完全寛解の欠如および好ましくない細胞遺伝学的プロファイルと関連している。さらに、1%を超えるCD34 + / CD38- / CD123 +細胞の存在はまた、無病生存期間および全生存率に悪影響を及ぼし得る。
【0180】
現在、MDSおよびAMLの治療法は、白血病性芽細胞が非常に豊富であり、明らかに患者にとって最も当面の問題であるため、白血病芽細胞に焦点を当てている。重要なことに、白血病幹細胞(LSCs)は、他の白血病細胞(「ブラスト」細胞)の大部分とはかなり異なり、それらはまれな亜集団を構成する。芽細胞を死滅させることで短期間の救済となるが、LSCsを破壊しなければ、常に再成長し、患者の病気は再発する。MDS疾患の恒久的な治癒を達成するためには、LSCsを破壊することが不可欠です。残念なことに、標準的な薬物レジメンは、MDSまたはAMLのLSCに対して有効ではない。したがって、白血病幹細胞集団および巨大な白血病集団の両方を特異的に標的とすることができる新しい治療法を開発することが重要である。本発明で開示されるcompound CARは、これらの集団の両方を標的とし、本明細書に具体的に記載している。
【0181】
本発明によれば、驚くべきことに、NK細胞は、治癒のための同種異系間の製品として使用され得る既製品を提供することが見出された。したがって、本発明によれば、cCAR細胞療法は、現在の技術水準によって要求されるような、患者特異的な基準で実施される必要がある。本発明の出願人は、患者のリンパ球または腫瘍浸潤したリンパ球を効果的なCAR細胞に基づく治療を行う為に単離する必要がない、新規の免疫療法を発見した。
【0182】
同種または自己NK細胞は、急速な免疫応答を誘導すると予想されるが、その寿命が限られているため血液循環系から比較的急速に消失する。したがって、本出願人らは、驚くべきことに、cCAR細胞に基づく療法を使用することで、持続的な副作用の懸念が減少することを発見した。
【0183】
本発明の1つの側面によれば、NK細胞を本発明に従ってcCARで増殖させ、トランスフェクトすることができる。NK細胞は、臍帯血、末梢血、iPS細胞および胚性幹細胞から得られる。本発明の1つの側面によれば、NK-92細胞は、増殖でき、cCARをトランスフェクトされ得る。NK-92は、ナチュラルキラー(NK)細胞の特色および特徴を有する持続的に増殖する細胞株である。NK-92細胞株はIL-2依存性であり、安全かつ適した細胞であることが証明されている。cCAR発現NK-92細胞は、フィーダー細胞との共培養の有無にかかわらず、無血清培地中で増殖させることができる。関心のあるcCARを保有する興味深いNK-92の純粋な集団は、選別することで得ることができる。
【0184】
適切な表面標的抗原の同定は、適応免疫療法においてCAR T / NK細胞を開発するための前提条件である。
【0185】
本発明の1つの側面において、CD123抗原は、cCAR療法の標的の1つである。CD123(インターロイキン3受容体のアルファ鎖)が急性骨髄性白血病(AML)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、ヘアリーセル白血病および芽球性形質細胞様樹状腫瘍を含む様々な血液悪性腫瘍で過剰発現する。CD123は、正常な造血幹細胞上に存在しないか、または最小限に発現される。さらに重要なことに、CD123は、白血病幹細胞(LSC)に関連する白血病細胞のサブセットで発現され、そのアブレーションは難治性疾患および再発の予防に不可欠である。
【0186】
本発明の一側面において、CD33抗原は、cCAR治療の標的の1つである。CD33は、急性骨髄性白血病において悪性細胞の90%に発現する膜貫通受容体である。したがって、本発明によれば、CD123およびCD33の標的抗原は、安全性の観点から特に魅力的である。
【0187】
本発明によれば、compound CD33CD123CARsは、慢性骨髄性白血病(CML)集団の治療的処置に非常に有効であり得る。慢性骨髄性白血病(CML)では、CD34 + CD38-である細胞の稀なサブセットが存在する。この集団はLSCからなると考えられている。LSCの数の増加は、疾患の進行に関連する。低分子Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、CP-CML患者の全生存期間を有意に改善することが示されている。しかしながら、LSCは、TKI療法に対して耐性であると考えられている。CMLの治療にCML耐性LSCを標的とする新規療法が緊急に必要であり、新規治療は本発明に開示されたcompound CD33CD123 CARsにおいて具体に示される。CD123発現は、CD34 + CD38-集団において高い。本発明によれば、compound CD33CD123CARsは、この集団の治療的処置に非常に有効である。
【0188】
本発明のこの施形例では、cCARはCD123およびCD33の両方を発現する白血病細胞を治療処置として使用する。CD33は、骨髄系統、骨髄性白血病芽球および成熟単球の細胞上に発現するが、正常な多能性造血幹細胞では発現しない(Griffin、Linchら、1984)。CD33は、CML、骨髄増殖性新生物、およびMDSにおける白血病細胞において広く発現される。
【0189】
急性骨髄性白血病(AML)患者のかなりの数が標準的な化学療法レジメンに難治性であり、また治療後の疾患の再発を経験するため(Burnett 2012)、AMLに対するCAR T細胞免疫療法の開発は、求められるより良い医療としての可能性を秘めている。これらの患者の大部分において、白血病細胞は、CD123およびCD33の両方を発現し、本明細書に開示されるcompound CD33CD123 CARsは、広く臨床での適用性を与える。したがって、本発明は、複数の白血病関連抗原を標的とする複数のCARを含み、それによって、共刺激ドメイン活性化の相乗効果により白血病幹細胞を含む白血病細胞を標的とする抗原逃避メカニズムを相殺し、それにより、より強力で安全で効果的な治療法を提供する新規のmultiple cCAR T / NK細胞構造を開示する。
【0190】
本発明はさらに、標的抗原を同時発現する細胞に対するより強化された抗腫瘍活性を有し、さらに1つの抗原のみを発現する腫瘍細胞に対する感受性をも保持するcompound CAR構造を開示する。さらに、compound CARの各CARは、1つまたは2つの共刺激ドメインを持ち、そして特定の標的の存在下において強力な殺傷能力をもつ。
【0191】
乳癌および上皮卵巣癌を含む固形腫瘍を標的とするトランスシグナリングCARsの二重特異性に関する前臨床研究において、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインは、第二世代のCARからの共刺激ドメインから離れている。換言すれば、1つのCARは、共刺激ドメインのない第1世代のCARを含み、別のCARは、CD3ゼータ細胞内ドメインを欠いている。したがって、両方の標的抗原の存在が、T細胞の活性化および強力な殺傷のために必要とされる。したがって、それらは、標的特異性を増加させるが、感度を犠牲にして、2つの標的抗原のうちの1つの健康な組織での発現によって引き起こされる腫瘍外の毒性を減少させる方法として提案された。この実施例では、compound CARは、compound CD123CD19 CARである。B-ALLの集団のサブセットの90%以上が CD123を発現することが示されている。AMLやMDSと同様に、B-ALLにはまれなLSC集団が存在すると考えられています。したがって、本発明に従って白血病性幹細胞および巨大な白血病集団の両方を標的とすることは、B-ALLsに適用することができる。本発明によれば、CD19がB細胞リンパ球集団の異なる段階で広く発現されるので、B-ALLにおいて発現されるCD123およびCD19表面抗原が標的であり得る。
【0192】
多発性骨髄腫(MM)は、米国で2番目に一般的な血液悪性腫瘍であり、骨髄または骨髄外腔部位に蓄積されたクローン性形質細胞に由来する。MMは、約4.5年の生存期間中央値である治癒不可能な疾患である(Kumar、Rajkumarら2008)。前臨床開発における抗骨髄腫CARsが開発され、CAR標的にはCD38、CS1、B細胞成熟抗原(BCMA)およびCD38が含まれる。しかしながら、表面抗原発現の不均一性は、悪性形質細胞(Ruiz-Arguelles and San Miguel 1994)において一般的に起こり、CARsにとって困難な標的となる。悪性形質細胞も低レベルのCD19を発現する。これまで、骨髄腫幹細胞はCD19を含むいくつかのB細胞マーカーも発現することが示されている。この集団を標的にすることは、骨髄腫の治療において、標準的な治療と他の骨髄腫CAR療法と併用することで効果的であり得る。
【0193】
多発性骨髄腫(MM)は、形質細胞のクローン性増殖を伴う血液学的悪性腫瘍である。治療の重要な進歩にもかかわらず、骨髄腫は治癒不可能な疾患のままである。したがって、新規の治療アプローチが緊急に必要とされている。
【0194】
CS1(CD319またはSLAMF7とも呼ばれる)は、SLAMF7遺伝子によってコードされるタンパク質である。表面抗原CS1は、正常な形質細胞および骨髄腫細胞(悪性形質細胞)の堅牢なマーカーである。
【0195】
B細胞成熟抗原(BCMA)またはCD269とも呼ばれる腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー17(TNFRSF17)は、ほぼ専ら形質細胞および悪性形質細胞の末期段階で発現する。その発現は他の組織にはなく、CAR TまたはNK細胞の標的としての可能性を示している。
【0196】
悪性形質細胞は、CD269およびCS1について様々な割合での抗原不均一性を示す。CD269またはCS1のいずれかを標的とする単一のCAR単位製品は、バルク腫瘍の細胞の大部分を標的とすることができ、その結果、最初の強い抗腫瘍応答がもたらされる。続いて、残存する稀な非標的細胞が増殖し、疾患の再発を引き起こす。多発性骨髄腫は特に不均一であるが、この現象は他の白血病または腫瘍にも確実に当てはまる可能性がある。BCMA CAR T細胞を用いたNIHの最近の臨床試験は、多発性骨髄腫を有する一部の患者において完全な応答を示す有望な結果を示した。しかしながら、これらの患者は17週間後に再発し、これは抗原エスケープによる可能性がある。抗原エスケープは、CD19 CARおよびNY-ESO1 CAR T細胞による治療においても見られる。従って、再発を防止するために、より有効なCAR T細胞による治療が緊急に必要とされている。
【0197】
本発明の1つの側面において、BCMAおよびCS1は、BCMACS1 CAR療法の標的である。
【0198】
いくつかの実施例では、compound CARは、BCMAまたはCS1抗原またはその両方を発現する細胞を標的とする。標的細胞は、限定するものではないが、リンパ腫、または白血病または形質細胞新生物のような癌細胞であるかもしれない。さらなる実施例では、形質細胞新生物は形質細胞白血病、多発性骨髄腫、形質細胞腫、重鎖疾患、アミロイドーシス、waldestromのマクログロブリン腫、重鎖疾患、孤立性骨芽細胞腫、不確定性のモノクローナル性ガンマパシー(MGUS)およびくすぶり多発性骨髄腫から選択される。
【0199】
BAFF(B細胞活性化因子)およびAPRIL(増殖誘導性リガンド)は、TACI(TNFRSF1 3BまたはCD267とも呼ばれる)およびBCMAに高親和性で特異的に結合する2つのTNF相同体である。BAFF(BLySとしても知られている)はBAFF-Rに結合し、機能的にB細胞の後期段階の生存および増殖の増強に関与する。BAFFはいくつかの自己免疫疾患を伴うことが示されている。APRILは、抗体クラススイッチの亢進において重要な役割を果たす。BAFFおよびAPRILの両方は、悪性形質細胞の増殖および残存因子として関与している。
【0200】
悪性形質細胞におけるリガンド - 受容体の相互関係を
図45に記載する。
【0201】
いくつかの実施例では、compound CARは、TACIまたはCS1抗原またはその両方を発現する細胞を標的とする。別の実施例では、compound CARは、TACIまたはCS1抗原またはその両方を発現する細胞を標的とする。標的細胞は、限定するものではないが、リンパ腫、または白血病または形質細胞新生物のような癌細胞であってもよい。さらなる実施例では、形質細胞白血病は、形質細胞白血病、多発性骨髄腫、形質細胞腫、重鎖疾患、アミロイドーシス、waldestromのマクログロブリン腫、重鎖疾患、孤立性骨芽細胞腫、不確定性のモノクローナル性ガンマパシー(MGUS)およびくすぶり多発性骨髄腫から選択される。標的細胞は、B細胞、未成熟B細胞、ナイーブB細胞、中心芽細胞、セントロサイト、記憶B細胞、形質芽細胞、長期生存形質細胞、形質細胞の1種または2種または複数の異なる細胞種であってもよい。これらの細胞は、全身性強皮症、多発性硬化症、乾癬、皮膚炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎など)、全身性エリテマトーデス、血管炎、関節リウマチ、シェーグレン症候群、多発性筋炎、肉芽腫症および血管炎、アジソン病、抗原 - 抗体複合体媒介疾患、および抗糸球体基底膜疾患が挙げられる。
【0202】
いくつかの実施例では、compound CARは、BAFF-RまたはCS1抗原またはその両方を発現する細胞を標的とする。別の実施例では、compound CARは、BAFF-RまたはCS1抗原またはその両方を発現する細胞を標的とする。標的細胞は、限定するものではないが、リンパ腫、または白血病または形質細胞新生物のような癌細胞であってもよい。さらなる実施では、形質細胞新生物は形質細胞白血病、多発性骨髄腫、形質細胞腫、重鎖疾患、アミロイドーシス、waldestromのマクログロブリン腫、重鎖疾患、孤立性骨芽細胞腫、不確定性のモノクローナル性ガンマパシー(MGUS)およびくすぶり多発性骨髄腫から選択される。
【0203】
いくつかの実施例では、compound CAR(cCAR)は、BAFF-R、BCMA、TACIおよびCS1抗原の1つまたは2つまたはすべてを発現する細胞を標的とする。
【0204】
いくつかの実施例では、cCARにおけるCARの単位は、1)BAFF-R、BCMA、TACIおよびCS1のいずれかに対するscFv、2)ヒンジ領域、3)共刺激ドメインら、および細胞内シグナル伝達ドメイン。
【0205】
いくつかの実施例において、cCARにおけるCARの単位は、1)BCMAまたはTACIまたはBAFF-R結合ドメインまたはAPRIL結合ドメイン、2)ヒンジ領域、3)共刺激ドメインら、および細胞内シグナル伝達ドメイン。
【0206】
さらなる実施例では、BCMAまたはTAC1またはBAFF-R結合ドメインは、APRILおよびBAFF分子の一部またはすべてであり得る。
【0207】
いくつかの実施例では、cCARにおけるCARの単位は、1)BCMAまたはCS1に対するscFv、2)ヒンジ領域、3)共刺激ドメインら、および細胞内シグナル伝達ドメイン。
【0208】
さらなる実施例では、cCARは、1つまたは2つまたは複数のCARを含むことができる。各ユニットCARは、同じかまたは異なるヒンジ領域および共刺激ドメインをもつことができる。
【0209】
さらなる実施例では、標的抗原は、限定するものではないが、ROR1、PSMA、MAGE A3、糖脂質、グリピカン3、F77、GD-2、WT1、CEA、HER-2 / neu、MAGE-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE- 6、αフェトプロテイン、CA 19-9、CA 72-4、NY-ESO、FAP、ErbB、c-Met、MART-1、CD30、EGFRvIII、免疫グロブリンkappaそしてlambda、CD38、CD52、CD3、CD4、CD8、CD5、CD7、CD2そして CD138からなるグループの少なくとも一つより選択される。標的抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)またはEBV(エプスタインバーウイルス)抗原由来のE6およびE7などのウイルスまたは真菌抗原を含むこともできる。
【0210】
いくつかの実施例において、cCARは、CD19またはCD20抗原またはその両方を発現する細胞を標的とする。別の実施例において、cCARは、CD19またはCD22抗原またはその両方を発現する細胞を標的とする。標的細胞は、B細胞リンパ腫または白血病などの癌細胞である。
【0211】
急性移植片対宿主病(GVHD)は、同種造血幹細胞移植後の罹患率および死亡率の最も重要な原因のままである。GVHDのエフェクター期では、α鎖とβ鎖のヘテロ二量体であるT細胞受容体(TCR)がT細胞の表面上に発現し、TCRは宿主細胞上のHLA分子上のいくつかの抗原を認識し、T細胞増殖を増強し、細胞毒を放出することで宿主細胞に損傷を引き起こす。TCR遺伝子の不活性化は潜在的な移植片対宿主反応を予防するのに有効である。TCRの不活性化は、同種抗原、したがってGVHDでのTCR認識の防止をもたらし得る。NK細胞におけるCD45の役割は、T細胞のそれとはかなり異なる。CD45欠損マウス由来のNK細胞は、プロトタイプ腫瘍細胞株Yac-1に対して正常な細胞傷害活性を有する。さらに、CD45欠損NK細胞は正常に増殖し、IL15およびIL-21に応答する。したがって、CD45の破壊または欠失は、NK細胞での殺傷性および増殖に影響しないであろう。本開示は、T細胞またはNK細胞におけるCD45の永久的欠失方法に続き、続いてCD45特異的CARの安定した導入の方法を含む。その結果、操作されたT細胞は、抗原の提示に対する自己殺傷および応答を引き起こすことなく、CD45特異的にリダイレクトされた求められた特性を示す。さらなる実施例では、操作されたT細胞は、悪性疾患または他の疾患を治療するための既成治療としての有効性を有し得るかもしれない。本開示は、内因性CD45の不活性化または欠失によりTCRシグナル伝達が減少または失われたときに増殖を可能にするようようなT細胞の操作に関する方法に提示する。TCRシグナル伝達の低下または消失は、GVHDの予防をもたらす可能性がある。
【0212】
さらなる実施例では、CD45の不活性化によるTCRシグナル伝達を低下させるかまたは失うT細胞は、「既成の」治療用製品として使用することができる。
【0213】
本開示は、改変T細胞またはNK細胞の方法、(a)CD45を不活性化することによってT細胞またはNK細胞を修飾すること、(b)これらの改変された細胞を増殖させる、(c)CD45を発現しない修飾T細胞またはNK細胞を選別する、(d)CD45CARを導入することを含む。
【0214】
実施例において、CD45CAR遺伝子をエンコードしたキメラ抗原レセプター(CAR)は、抗原認識ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、およびT細胞活性化ドメインの少なくとも1つを含み、抗原認識ドメインは、細胞上に存在するCD45表面抗原にリダイレクトされたものからなる。抗原認識ドメインは、CD45抗原に対するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む。抗原認識ドメインは、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の結合部位または可変領域を含む。
【0215】
いくつかの実施形態において、改変T細胞は、同種ドナーから得られ、「既製品」として使用される。
【0216】
CAR TまたはNK細胞を用いたCD45の標的化は、TおよびNK細胞がこの表面抗原を発現するので、自己殺傷を引き起こし得るかもしれない。この欠点を克服するために、発明者は、操作されたCRISP / Cas9システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFNs)およびTALEヌクレアーゼ(TALENs)およびメガヌクレアーゼを用いてCD45遺伝子を不活性化することを提案する。CD45の欠失されたTまたはNK細胞は、CD45を発現する新生物を標的とするCARsをその後、形質導入される。
【0217】
本開示は、骨髄、血液および器官における異常細胞または悪性細胞を排除または減少させるための方法を含む。いくつかの実施例において、CD45を発現する悪性細胞は、急性白血病、慢性白血病、BおよびT細胞リンパ腫、骨髄性白血病、急性リンパ芽球性リンパ腫または白血病、原発性滲出液リンパ腫、網内組織球腫、ダウン症候群の一過性骨髄増殖性疾患、リンパ球優性ホジキンリンパ腫、骨髄性白血病または肉腫、樹状細胞腫、組織球性肉腫、腱鞘の巨細胞腫、指状嵌入樹状細胞肉腫、移植後リンパ増殖性疾患などが挙げられる。
【0218】
いくつかの実施形態では、CD45CAR細胞を用いて、骨髄幹細胞移植のための造血細胞を除去すると同時に、白血病/リンパ腫細胞または移植片拒絶反応が可能な免疫細胞を除去することによって骨髄内に空間を作ることができる。
【0219】
さらなる実施例において、CD45CAR細胞は、それらが幹細胞を受ける骨髄移植を受ける前に、患者の前治療のために使用され得るかもしれない。さらなる実施例では、CD45CARは、造血幹細胞移植のための骨髄芽球調節レジメンとして使用され得る。
【0220】
いくつかの実施例において、CD45CAR細胞は、幹細胞移植および/または化学療法後の残存疾患の治療または予防するために利用される。
【0221】
いくつかの実施例において、CD45CARは、発現している遺伝子またはカセットの一部である。好ましい実施例では、発現遺伝子またはカセットは、CD45CARに加えて、アクセサリー遺伝子またはタグまたはその一部を含み得るかもしれない。アクセサリー遺伝子は、カスパーゼ9遺伝子、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ(CD)またはシトクロムP450を含むが、これらに限定されない誘導性自殺遺伝子またはその一部であり得るかもしれない。「自殺遺伝子」でのアブレーション方は、遺伝子治療の安全性を向上させ、特定の化合物または分子によって活性化された場合にのみ細胞を死滅させる。いくつかの実施例では、自殺遺伝子は誘導性であり、二量体化(CID)の特定の化学誘導体を使用して活性化される。
【0222】
いくつかの実施例では、安全スイッチは、c-mycタグ、CD20、CD52(Campath)、トランケートされたEGFR遺伝子(EGFRt)またはその一部またはそれらの組み合わせであるアクセサリータグなどを含むことができる。アクセサリータグは、非免疫原性の選択ツールとして、または追跡マーカーとして使用され得るかもしれない。
【0223】
いくつかの実施例では、安全スイッチは、RSV F糖タンパク質A2株(NSELLSLINDMPITNDQKKLMSNN)の254〜277残基に対応する24残基ペプチドを含むことができる。
【0224】
いくつかの実施例において、安全スイッチは、モノクローナル抗TNFα薬剤によって結合されたTNFαのアミノ酸配列を含み得る。
【0225】
本明細書に記載の操作された細胞のいずれかの投与では、CAR増強剤の同時投与を追加することができるかもしれない。より良好な治療結果のために、CAR増強剤の例としては、CAR活性を増強する、しかしながらこれに限定されない、免疫チェックポイント経路を標的とする薬剤、コロニー刺激因子-1受容体(CSF1R)の阻害剤などの免疫調節薬が挙げられる。免疫チェックポイント経路を標的とする薬剤には、阻害性免疫受容体CTLA-4、PD-1、およびPD-L1に結合し、CTLA-4およびPD-1 / PD-L1遮断をもたらす小分子、タンパク質または抗体が含まれる。本明細書で使用されるように、増強剤は、上記で述べられたエンハンサーをも含む。
【0226】
本明細書で使用する「患者」には、哺乳動物が含まれる。本明細書で言及される哺乳動物は、任意の哺乳動物であり得る。本明細書で使用される「哺乳動物」という用語は、マウスおよびハムスターのようなげっ歯類の哺乳動物、およびウサギのようなLagomorphaの哺乳動物を含むが、これらに限定されない任意の哺乳動物を意味する。哺乳動物は、Felines(ネコ)およびCanines(イヌ)を含む、order Carnivora からのものであってもよいかもしれない。哺乳類は、Bovines(ウシ)およびSwines(ブタ)またはEquines(ウマ)を含むorder Artiodactylaからのものであってもよいかもしれない。好ましくは、哺乳動物はヒトである。患者には被験者が含まれる。
【0227】
特定の実施例では、患者は、0〜6ヶ月齢、6〜12ヶ月齢、1〜5歳齢、5〜10歳齢、5〜12歳齢、10〜15歳、15〜20歳のヒトである、13〜19歳、20〜25歳、25〜30歳、20〜65歳、30〜35歳、35〜40歳、40〜45歳、45〜50歳、50歳55〜60歳、60〜65歳、65〜70歳、70〜75歳、75〜80歳、80〜85歳、85〜90歳、90〜95歳年齢は95歳から100歳である。
【0228】
本明細書で述べられるように、操作された細胞の「有効量」および「治療有効量」という用語は、所望の治療または生理学的または効果または治療効果を提供するのに十分な量の操作細胞を意味する。そのような効果または治療効果には、細胞性疾患の症状の軽減または改善が含まれる。望ましくない効果、例えば、副作用は、時に所望の治療効果と共に現れる。それゆえ、従事者は潜在的な効果と潜在的なリスクとのバランスを取って、適宜な「有効量」が何であるかを判断する。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢および患者の一般的な状態、投与様式、その他などに依存して、患者によって異なるであろう。したがって、正確な「有効量」を指定することは不可能かもしれない。しかしながら、いかなる個人の場合でも、適切な「効果的な量」という用語は、該当業界による通常の技術を用いて決定されえる。一般的に、特定の操作された細胞または操作された細胞群は、標的細胞の増殖を減少させるのに十分な量および条件下で与えられる。
【0229】
癌の治療、阻害または予防のためのデリバリーシステムでの投与後、熟練した専門家に周知の様々な技術を用いることで治療用の操作細胞の有効性を評価することができる。
【0230】
例えば、化学療法アジュバントと共に送達される治療用に操作された細胞が、癌細胞の負荷を軽減するか、またはさらなる増殖を予防することを観察することによって、対象の癌の治療または阻害するのに有効であることを当業者は理解するであろう。癌細胞の負荷は、例えば、特定の癌細胞の核酸の存在を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応アッセイを用いて、または血液中の特定の癌細胞マーカーの同定、たとえば抗体を用いての被験体または患者からのサンプル(例えば、血液に限定されないが)の測定、または、患者の循環する癌細胞抗体レベルの量を測定することによる、当該分野で既知の方法によって測定することができる。
【0231】
本明細書を通して、量は範囲および下限および上限の境界によって定義される。各下限の境界は、各上限の境界と組み合わせ範囲を定義することができる。下部境界と上部境界はそれぞれ別の要素として考慮すべきである。
Deleted sentence from p67-18 to p69-5 because Janapnes words could not distinguish those english words by japanes
【0232】
本明細書中で使用される場合、XXXX抗原認識ドメインは、XXXXに対して選択的なポリペプチドである。したがって、XXXXがターゲットである。例えば、CD38抗原認識ドメインは、CD38に特異的なポリペプチドである。
【0233】
本明細書中で使用される場合、CDXCARは、CDX抗原認識ドメインを有するキメラ抗原受容体を指す。
【0234】
本開示は、以下に示す実例を参照してよりよく理解されかもしれない。以下の実施例は、本明細書で請求される化合物、組成物、物品、デバイスおよび/または方法がどのように作られ、評価されるかについての完全な開示および記載を当業者に提供するために提示され、純粋に模範の例示であり、本開示を限定するものではない。
【実施例】
【0235】
compound CAR (cCAR)の作成
CD33CD123 cCARの構造は、
図1Aの概略図に従う。それは、2つの異なるCARのユニットを有する機能的なcompound CAR(cCAR)の発現を誘導するSFFV(脾臓フォーカス形成ウイルス)プロモーターを含む。抗原受容体は、抗CD33および抗CD123のscFv(一本鎖可変断片)ヌクレオチド配列を頭部につける。ピコルナウイルス由来のP2Aペプチドは、バイシストロン性遺伝子構造の自己切断ダイナミクスの非常に効率的な機構のために利用される。自己切断P2Aペプチドは、発現中における2つの独立したCARユニット、CD33CAR、およびCD123CARを 一緒に連結するのに役立つ。文献中で一般的に使用されている内部リボソーム進入部位(IRES)に対するこのアプローチの利点は、小さいサイズおよび高い切断効率もつ2Aペプチドを上流および下流の2つの単位タンパク質間にはさめることである。さらに、自己切断P2Aペプチドの使用は、IRESが適用された場合に、IRESの前後の遺伝子間の発現レベルの差の問題を回避することができる。
【0236】
モジュラーユニットであるCD33CARは、CD33 scFvドメイン、CD8aヒンジ領域、CD8a膜貫通ドメイン、4-BB共刺激ドメインおよびCD3ゼータ鎖の細胞内ドメインを含む。第2のモジュラーCAR、CD123CARは、CD33CARと同じヒンジ、膜貫通および細胞内シグナル伝達ドメインを有するが、異なるscFvおよび共刺激ドメインを有する。CD33 CARはそれに対応する抗原を認識し、CD123 CARはそれに対応する抗原に結合する。ヒンジ領域は、ジスルフィド相互作用が回避されるように設計された。異なる共刺激ドメイン、4-BBおよびCD28を使用した。CD33CD123 compound CARをレンチウイルスプラスミドにサブクローニングした。
【0237】
高効率compound CAR (cCAR)の作製
Compound CARレンチウイルスは 、
図2に示すように大きなサイズのインサートを含むベクターのため、力価を増加させるために2倍量のベクターDNAを使用した以外は、Lipofectamine 2000 の製造業者の指示に従った方法を用いてHEK-293FT細胞へトランスフェクションさせることで作製した。12から16時間のインキュベーション後、Lipofectamineを含む培地を除去し、10%FBS、20mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウムおよび1mM酪酸ナトリウムを含むDMEM培地と交換した。約24時間後、上清を採取し、冷蔵し、新鮮な培地と交換した。さらに約24時間後、これを回収し、前の上清と合わせ、0.45μMフィルターディスクで濾過した。上清を一定分量にに分割し、液体窒素で急速凍結し、-80℃で保存した。HEK-293 FT細胞を回収し、凍結保存し、その後の電気泳動およびウェスタンブロッティングのために溶解した。
【0238】
PB(末梢血)またはCB(ヒト臍帯血)バフィーコート細胞を、抗CD3抗体およびIL-2で2日間活性化した。cCARレンチウイルス上清を、レトロネクチンでコートしたマルチウェルプレート上にスピノクレーションした。活性化T細胞を、形質導入効率を高めるために約0.3×10
6細胞/ mLの低濃度でレンチウイルス上清を含む複数のウェル上にて 形質導入した(
図2)。
【0239】
最初のオーバーナイトでの形質導入の後、細胞が異常に見えない限り、細胞を洗浄せずに2回目の形質導入のために、次のウイルスをコートしたプレートに直接添加した。2回目のオーバーナイトでの形質導入の後、細胞を洗浄し、合わせ、組織培養処理プレートでインキュベートした。CAR T細胞を、共培養殺傷アッセイの前に約5日間まで増殖させた。インキュベーションの約3日後、ビオチンと結合したヤギ抗マウスF(Ab ')2またはヤギIgG(アイソタイプ)抗体と共に細胞をインキュベートし、洗浄し、続いてストレプトアビジン-PEおよび抗ヒトCD3抗体とともにインキュベートした。洗浄し、2%ホルマリン中に懸濁させた後、細胞をフローサイトメトリーで分析して、形質導入効率を決定した。
【0240】
CD33CD123 cCAR特性評価
Compound CARの構築を確認するため、トランスフェクトされたCD33CD123 cCAR HEK293T細胞をウェスタンブロットでの解析を行った。抗CD3ゼータモノクローナル抗体を用いたイムノブロットは、compund CAR CD3ゼータ融合タンパク質の予測されるサイズのバンドを示した(
図1B)。重要なことに、同レベルの強度の2つの異なるバンドシグナルがブロット上で観察され、P2Aペプチドによる高い切断作用が成功したと予期された。期待されるように、GFPコントロールベクターについては予期されたように、CD3ゼータの発現は見られなかった。scFvの表面発現を、HEK293細胞(
図1C)および初代T細胞(
図1C)についてもテストした。
【0241】
compound CD33CD23CARレンチウィルスの、HEK293細胞株における形質導入効率についての検査のため、フローサイトメトリー(Beckman Coulter)により分析した(
図1C)。フローサイトメトリーは、HEK細胞の約67%がCD33CD123 CARを発現することを示した。ヒト末梢血(PB)は、自己T細胞療法にしばしば用いられる。ヒトPBバフィコート細胞を抗CD3抗体およびIL-2で活性化し、CD4CARまたはコントロール(GFP)レンチウイルスのいずれかで形質導入した。形質導入後、フローサイトメトリー分析は、T細胞の約22%がCD33CD123CARを発現することを示した(
図1C)。
【0242】
結果
臍帯血(UCB)および末梢血(PB)由来のCD33CD123cCAR T細胞は、CD33発現腫瘍細胞を特異的に殺す
CD33CD123 cCAR T細胞またはGFP T細胞(コントロール)を、0.5:1から50:1、好ましくは約2:1、5:1、10:1、20:1、50:1(約100,000、200,000、500,000、約100万、または200万個のエフェクター細胞と約50,000、100,000、200,000個の標的細胞)の範囲の比率で標的細胞とともにIL-2を含まない約1-2mLのT細胞培養培地中で約24時間インキュベートした。標的細胞は、白血病患者由来の白血病細胞株および白血病細胞であった。共培養の約24時間後、細胞をマウス抗ヒトCD33、CD123、CD34およびCD3抗体で染色した。
【0243】
CD33CARおよびCD123 CARを発現するCD33CD123 cCAR T細胞を作製し、HL60およびKG-1a細胞系を用いて抗白血病機能を試験した。HL60細胞株は、CD33を高度に発現する前骨髄球性白血病細胞株である。その細胞集団の約100%がCD33 +であり、それのわずかなサブセット(<10%)がdim CD123 +である。培養において、この細胞系を用いてCD33発現白血病細胞を標的とすることに重点を置いてCD33CD123 CARの有効性を決定するためにテストした。さらに、HL60におけるCD33の強力な発現のために、CD33CD123cCARの作用はかなり強い可能性がある。実際に、エフェクター対標的細胞の様々な比率の24時間の共培養条件下で、CD33CD123cCARは有意な白血病細胞への殺傷作用を示した(
図3)。CB由来のCD33CD123 CAR T細胞を、HL60細胞を死滅させる能力について最初に試験した。約0.5:1から50:1、好ましくは1:1から約5:1、より好ましくは約2:1から4:1の範囲の低エフェクター:標的(E:T)比で約24時間のインキュベーションにより、CD33CD123 CAR 細胞はGFPコントロールと比較してCD33発現HL60細胞の約55%の細胞を除去した。約5:1の比率では、殺傷能は約82%に上昇した。
【0244】
末梢血単核細胞(PBMC)に由来するCD33CD123 CARは、HL60と比較し、約100%であるが弱いCD33のシグナルを持ち、並び50-80%CD123を発現する骨髄性白血病細胞株KG1aと共培養した。従って、KG1aは、CD33CD123 CARが標的とする抗原に対して二重陽性である、比較的二重の標的細胞集団である。約24時間のインキュベーションにて、約0.5:1〜50:1の範囲の低エフェクター:標的(E:T)比で検討した。約2:1の低いE:T比ではCD33CD123 CARは、約26%の中適度な抗白血病活性を示し、E:T比が10:1に増加すると、KG1aの殺傷はGFPコントロールと比較し約62%となり(
図4)、KG1aよりも多くのCAR作用を利用するHL60への殺傷作用の有効性がCD33マーカーでの強度が指標であり得ることを示す。これらの実験は、CD33CD123 CARの全体の機能が関連する抗原提示細胞集団にしている証拠を提供する。
【0245】
さらなるcompound CAR、CD33CD123-BB cCARが作製された。このcompound CARは、2つの独立したCAR単位である、CD33およびCD123を含む。第1のCARは、CD33へ結合するscFv を含み、第2のCARは、CD123を認識する異なるscFvを有する。両方のCARは、同じヒンジ領域、膜貫通型、共刺激性および細胞内ドメインを含む。CD33CD123-BB cCARレンチウイルスを産生させ、それらのKG-1a細胞における殺傷能を試験した。
図5に示すように、約10:1の比率で実質的に死滅したが、CD33CD123 cCARよりも効力が低くかった。
【0246】
CD33CD123 cCARは、CD33および/またはCD123を発現する患者サンプルに対しての活性を有する
細胞株での実験に加えて、個々のCARユニットの機能を試験するために、患者の試料についての研究も実施した。侵攻性の急性骨髄性白血病(AML)であるAML-9は、CD33CD123 cCARの有効性を試験するために用いられた。AML-9サンプル中の複数の細胞型を含む患者細胞集団の不均一性のために、白血病芽球は、2つの陽性マーカーであったCD34およびCD33でゲートされた。白血病細胞のこのCD33 + CD34 +集団の枯渇は、GFPコントロールと比較してCAR T細胞では48%であることが観察された(
図6)。
【0247】
CD123陽性およびCD33陰性であった白血病細胞もまた試験した。この目的のために、ヒトB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)サンプルであるSp-BM-B6を選択した。この試料中の全ての白血病性芽球はCD34+ CD33- であり、CD123に対して約50%以上陽性であった。CD33CD123 cCAR T細胞によるCD34 +白血病細胞集団の減少は、GFPコントロールと比較して約86%であった(
図7)。細胞株およびヒトの試料研究に基づいて、本発明者らのデータは、compound CD33CD123 CARがCD33またはCD123またはその両方を発現する白血病細胞を標的とすることができることを強く示唆するものである。
【0248】
CD33またはCD23またはその両方を発現する白血病細胞を標的とするCD33CD123 cCAR NK細胞
ナチュラルキラー(NK)細胞はCD56+ CD3-であり、CD8+ T細胞のような感染細胞および腫瘍細胞を効率的に殺すことができる。CD8+ T細胞とは異なり、NK細胞は、細胞を殺すために活性化を必要とせずに腫瘍に対して細胞傷害性を発揮する。NK細胞は、サイトカインストームによる潜在的に致命的な合併症を回避できるので、より安全なエフェクター細胞である。しかしながら、CD33またはCD123または両方のCAR NK細胞を用いて、白血病を死滅させることに関しては完全に未開発である。
【0249】
CD33CD123 cCAR NK 細胞の作製
NK-92細胞に、CD33CD123 CARレンチウイルス上清を、2度にわたる連続したオーバーナイトでの形質導入方で形質導入を行い、方法としてはレトロネクチンおよびウイルスをコーティングしたプレートをそれぞれの形質導入時に交換した。形質導入した細胞を3または4日間増殖させ、次いでCARの発現をフローサイトメトリーによって分析した。細胞を採取し、ヤギ抗マウスF(Ab ')2と約1:250の割合で約30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、懸濁させ、ストレプトアビジン-PEで約30分間染色した。細胞を洗浄し、2%ホルマリン中に懸濁させ、フローサイトメトリーにより分析した。次いで、CD33CD123cCARを発現するNK-92細胞を上記のように標識し、FACSAria上で選別し、F(Ab ')2でラベルされた細胞の上部0.2%を収集し、培養した。選別して培養した細胞のその後の標識では、抗マウスF(Ab ')2についてNK-92細胞は約89%の陽性を示した(
図8)。
【0250】
CD33CD123 cCAR NK細胞は、白血病細胞を効率的に溶解または殺傷する
最初に、我々は、共培養においてHL-60癌細胞株を死滅させる能力を測定することにより、CD33CD123 cCAR NK-92細胞の機能を試験した。実質的にすべてのHL-60細胞はCD33を高発現するが、この細胞株でのCD123発現は10%(弱)未満である。したがって、CD33CD123cCARの殺傷能力は、cCARがCD33を適切に標的化している能力 に依存する可能性が高い。
【0251】
CD33CD123 cCAR NK-92細胞を、IL-2を含まないNK細胞培地中で約24時間、HL-60細胞とともに共培養した。インキュベーション後、CD33CD123cCAR NK-92細胞を標識し、非CARであるGFP NK-92細胞をコントロールとして比較した。コントロールのGFP NK-92細胞と比較して、CD33CD123 cCAR NK-92細胞によるHL-60細胞の劇的な殺傷が観察された。さらに、CD33CD123 cCAR NK-92細胞の殺傷能力は、用量依存性であり、コントロールと比較して 約10対1の細胞比率ではほぼ100%であった(
図9および11)。
【0252】
骨髄性白血病細胞株を用いた続いての共培養実験は、HL-60のものと比較して中程度の強さのレベルであるが、すべての細胞においてCD33を発現するKG1aを用いて実施された。CD123抗原はKG1a細胞の約50〜80%に発現する。実験デザインは、上記で述べられている、最初のHL-60殺傷アッセイの実験と同様、同じインキュベーション時間、同じ、エフェクター:癌細胞比および、同じくGFP NK-92細胞をコントロールに用いた。結果は、GFP NK-92細胞コントロールと比較し、CD33CD123 cCAR NK-92細胞によるKG1a細胞の顕著な殺傷力が用量依存的に示された。エフェクター:標的の比が10:1である場合、CD33CD123cCAR NK-92細胞によるKG1a細胞の殺傷力は、GFPコントロールのものと比較して約85%であった(
図10および11)。
【0253】
KG1a細胞の解析により、KG1a細胞は2つの異なる集団、CD33 + CD123-およびCD33 + CD123-を示した。
図11は、両方の集団で見られる細胞の殺傷が用量依存的に増加することを示した。驚くべきことに、二重陽性集団は、エフェクター細胞比の増加に伴いついてより高い効率的死滅を示し、CD33およびCD123の2つのモジュラーCARによる相乗効果の可能性を示唆した(
図12)。
【0254】
CD19CD20、CD19CD22、CD19CD138cCARの作製
3つのcCARは、上記のCD33CD123 cCARと同様の方法を用いて作製された(
図13)。
【0255】
多発性骨髄腫の治療のためのBCMA CS1 cCARおよびBCMA CD19 cCARを含むcCARの作製
CD38、CS1、CD138、B細胞成熟抗原(BCMA)およびCD38を含む標的抗原に対するcCARsの前臨床研究が展開されている。CD19 CARはまた、第I相臨床試験において多発性骨髄腫の治療に対していくつかの有効性を示した。しかし、表面抗原発現の不均一性が悪性形質細胞で一般的に生じることから(Ruiz-Arguelles and San Miguel 1994)、単一の標的がこの疾患を治療するのに十分であるとは考えにくい。BCMA CS1 cCAR、BCMA CD19 cCAR、BCMA CD38 cCARおよびBCMA CD138 cCARが作製され、実験デザインは上記のCD33CD123 cCARのものと同様であった。
【0256】
多発性骨髄腫治療のためのBCMA CS1 cCAR(BC1cCAR)を含むcCARの作製
BCMA CS1 cCAR(BC1cCAR)の作製および特性評価
BC1cCARのモジュールデザインは、自己切断P2Aペプチドを挟んで、抗CD269(BCMA、B細胞成熟抗原)一本鎖可変断片(scFv)領域と抗CD319(CS1)scFvと融合した 、CD8由来のヒンジ(H)および膜貫通(TM)領域、そしてタンデム4-1BB共活性化ドメイン、ならびにCD3ζシグナル伝達ドメインに連結した形を含むように設計される(
図14A)。強力な脾臓フォーカス形成ウイルスプロモーター(SFFV)およびCD8リーダー配列を、BC1cCARのCAR分子のT細胞表面上での効率的な発現のために使用した。2つのユニットCARは、同じ共刺激ドメインである、4-1BBを使用する。トランスフェクトされたBC1cCAR HEK293T細胞を、compound構造の確認のために、ウエスタンブロット分析を行った。抗CD3モノクローナル抗体を用いたイムノブロットにおいて、compound CAR CD3融合タンパク質での予測される大きさのバンドを示した(
図14E)。重要なことに、P2Aペプチドの高切断作用の成功により同様の強度の2つの別個のバンドのシグナルが観察された。期待されたように、GFPコントロールベクターについてはCD3の発現は見られなかった。
【0257】
BC1cCAR (cCAR) T-cellsの作製
臍帯血(UCB)バフィーコートから単離したT細胞を、2日間の活性化後にBC1cCARレンチウイルスを用い形質導入を行った。2つのCARsユニットは、同じ共刺激ドメイン4-1BBを使用した。BC1cCARの形質導入効率は、フローサイトメトリーによって 約15%であると決定された(
図14B)。BC1cCAR T細胞を、骨髄腫マーカーであるBCMAおよびCS1らが陰性であるCML(慢性骨髄性白血病)細胞株で最初に試験した。予想通り、野生型K562に対して、コントロールT細胞またはBC1cCAR T細胞のいずれからも溶解させなかった(
図14C)。BCMA-K562(Kochenderfer、NIH)は、BCMAを発現するcDNAで形質導入されたK562細胞で、細胞集団の80%以上でBCMAを発現する。BC1cCAR T細胞をこの細胞株と2:1および5:1のE:T比で共培養し、コントロールと比較して30%を超える溶解を示した(
図14C)。これらの結果は、CS1CAR T細胞のように、その他のCARに対する抗原を形質導入した細胞株で行われた他の1共培養実験の結果と適合する。
【0258】
しかしながら、BCMA-CS1-2G(cCAR)の各ユニットについて4-BBまたはCD28のいずれかの異なる共刺激ドメインを使用した場合、低い CAR表面発現が検出された。これは、共刺激ドメインの適切な選択が、T細胞に対する表面CAR発現を確実にするために重要である(
図14D)。HEK細胞でのタンパク質発現はウエスタンブロッティングにより検出されたが(
図14E)、CD269-CS1-2Gレンチウイルス上清を形質導入した活性化T細胞では表面発現が検出できなかった。これは、発現したタンパク質を細胞膜に運ぶことができないことが原因である可能性があった。将来、より良い細胞表面上での発現を可能にするために、この構造の配列を至適化する必要があるかもしれない。
【0259】
BC1cCAR T細胞は、BCMA +およびCS1 +細胞株を特異的に溶解する
BC1cCAR T-cells による細胞障害活性を評価するため、MM1S(BMCA + CS1 +)、RPMI-8226(BCMA + CS1-)およびU266(BCMA + CS1dim)らの骨髄腫細胞株と共培養アッセイを行った。標的細胞を溶解するBC1cCAR T細胞の能力は、フローサイトメトリー解析によって定量化し、標的細胞をCytotracker色素(CMTMR)で染色した。24時間の共培養において、BC1cCARはMM1S細胞の実質的に完全な溶解を示し、2:1のE:T比で標的細胞の90%以が減少し、および5:1のE:Tでの95%以上の減少を示した(
図15)。RPMI-8226細胞において、BC1cCARはE:T比2:1で70%以上のBCMA +標的細胞を溶解し、5:1のE:Tで75%以上を溶解した(
図16)。U266標的細胞との24時間の共培養において、BC1cCARはBCMA
+U266細胞の80%を2:1のE:T比で溶解し、飽和状態に達した(
図17)。
【0260】
BC1cCAR T細胞は、一次患者の骨髄腫サンプルにおけるBCMA +およびCS1 +集団を特異的に標的とする
MM10-G患者サンプルのフローサイトメトリー分析で、明瞭かつ一貫したBCMA +およびCS1 +集団サブセットを明らかにする(
図18)。MM7-Gサンプルは完全なBCMA + CS1 +表現型を示し、一方、MM11-Gは骨髄吸引物であるという性質に起因すると思われるノイズの多いBCMA
dim CS1
dimの表現型を示す。24時間後、BC1cCAR T細胞は、E:T比5:1で75%以上の溶解を示し、10:1で85%以上に増加し(
図19)、MM7-Gの一次患者試料の強いアブレーションを示す。MM11-G(
図20)に対して、BC1cCAR T細胞はE:T = 10:1でBCMA + CS1 +集団の45%以上を溶解することができた。
【0261】
BC1cCARは、24時間にわたってMM10-G共培養物中のBCMA + CS1 +およびBCMA-CS1 +のサブセット集団を有意にアブレートすることによって、標的化されかつ特異的な溶解能力を示す。2:1のE:T比で、BC1cCAR T細胞はBCMA + CS1 +集団の60%および70%のCS1 +のみの集団をアブレートする。5:1のE:T比では、CS1 +のみの集団のアブレーションは80%に増加する(
図18)。
【0262】
BC1cCAR T細胞は、インビボで腫瘍の有意な 制御および 減少を示す
C1cCAR T細胞のインビボでの抗腫瘍活性を評価するために、我々は、ルシフェラーゼ発現MM.1S細胞(多発性骨髄腫細胞株)を致死量以下で照射したNSGマウスに静脈注射し、測定可能な白血病形成を誘発することができる、異種マウスモデルを開発した。腫瘍細胞の注射3日後に、マウスに、8×10
6個のBC1cCAR T細胞またはベクターコントロールT細胞を単回用量で静脈注射した。3日目、6日目、および8日目に、マウスにRediJect D-Luciferin(Perkin Elmer)を皮下注射し、腫瘍負荷をIVISイメージングにより測定した(
図21)。BC1cCAR T細胞またはベクターコントロールT細胞で治療した後の腫瘍細胞のパーセンテージを比較するため、測定した平均光強度をそれぞれのマウスで比較した。Unpaired T検定(P = 0.0001)では、2つのグループ間で8日目までに、BC1cCAR T細胞の注射グールプでは、コントロールグループと比較し、光強度がより少なく、したがって腫瘍負荷が少ない非常に有意な差を示した(p <0.0001)。1日目およびその後1日おきに、腫瘍サイズ面積を測定し、2つのグループ間の平均腫瘍サイズを比較した(
図21)。要約すると、これらのインビボデータは、CD269-CS1-BBCAR T細胞が、ベクターコントロールT細胞と比較した場合、MM.1Sを注射したNSGマウスにおける腫瘍負荷を有意に低下させることを示す。
【0263】
CD45 CAR 治療
目的の遺伝子を標的とするために、3対のsgRNAをCHOPCHOPで設計する。次いで、遺伝子特異的sgRNAを、ヒトCas9およびE2A自己切断リンカーと連結したピューロマイシン耐性遺伝子を発現するレンチウイルスベクター(Lenti U6-sgRNA-SFFV-Cas9-puro-wpre) にクローニングする。U6-sgRNAカセットはCas9エレメントの前にある。sgRNAおよびCas9puroの発現は、それぞれU6プロモーターおよびSFFVプロモーターによって誘導される(
図23)。
【0264】
以下の遺伝子特異的sgRNA配列を使用し、構築した。
【0265】
本発明の非限定的な実施例において、見本的な遺伝子特異的sgRNAは、以下に示すように設計および構築されている:
CD45 sgRNA 構造:
Lenti-U6-sgCD45a-SFFV-Cas9-puro GTGGTGTGAGTAGGTAA
Lenti-U6-sgCD45b-SFFV-Cas9-puro GAGTTTTGCATTGGCGG
Lenti-U6-sgCD45c-SFFV-Cas9-puro GAGGGTGGTTGTCAATG
【0266】
図24は、血液悪性腫瘍を標的とするCD45 CAR TまたはNK細胞の作製の段階を示す。
【0267】
NK細胞上のCD45を標的とするCRISPR / Casヌクレアーゼ
レンチウイルスに保有された遺伝子特異的sgRNAを用いてNK-92細胞を形質導入した。NK-92細胞におけるCD45発現の消失は、フローサイトメトリー解析によって判定した。NK-92細胞のCD45陰性集団を選別し、増殖させた(
図25)。選別後に増殖させたCD45陰性NK-92細胞を用いてCD45CAR NK細胞を作製した。得られたCD45CAR NK細胞を用いて、CD45 +細胞を殺傷させる能力においてテストした。
【0268】
CRISPR / Casヌクレアーゼ標的後のCD45不活性化NK-92細胞(NK
45i-92)における機能的特性解析
我々は、CD45のCRISPR / Casヌクレアーゼによる不活性化後、NK
45i-92細胞の細胞増殖が野生型NK-92細胞の増殖と同様であることを実証した(
図26)。CD45の不活性化は、NK-92の細胞増殖に全く有意に影響しなかった。さらに、NK
45i-92細胞の溶解能は、細胞を白血病細胞であるCCRFと共培養した場合、野生型NK-92の溶解能と一致していることを示した(
図27)。
【0269】
CD45-不活性化NK-92がCAR溶解と互換性があることを実証するために、NK
45i -92細胞および野生型NK-92にCD5CARまたはGFPを発現するレンチウイルスをそれぞれ形質導入した。得られたCD5CAR NK
45i -92細胞およびGFP NK
45i-92をFACSで選別し、標的細胞を殺傷させる能力を比較するために使用した。CD5CAR NK
45i-92細胞は、CD5が標的である白血病細胞、CCRF-CEM細胞と共培養した場合、比(E:T)、2:1および5:1の割合で強い殺傷能力を示した。我々は、インビトロでの実験においてCD5CAR NK
45i-92とCD5 CAR NK-92細胞と でCCRF-CEM細胞に対し、同様の殺傷効力があることを示した(
図28)。これは、CD45発現の喪失がCAR NK細胞の抗腫瘍活性を低下させないことを示唆している。
【0270】
CD45CARコンストラクトの作製
我々は次に、NK
45i-92細胞中のCD45CARが白血病細胞中のCD45抗原に応答することを調べる。我々はCD45CARを作製した。CD45CARは、CD3ζシグナル伝達ドメインが連結された抗CD45一本鎖可変断片(scFv)領域、CD8由来ヒンジ(H)および膜貫通(TM)領域およびタンデムCD28および4-1BB共活性化ドメインからなる29A)。強力な脾臓フォーカス形成ウイルスプロモーター(SFFV)およびCD8リーダー配列を使用した。CD45CARタンパク質は、CD45CARレンチウイルスプラスミドでトランスフェクトされたHEK293-FT細胞を用いたウエスタンブロットで適切なベクターコントロールと比較によって明らかにされた。さらに、抗CD3ゼータモノクローナル抗体を用いたイムノブロットにより、ベクターコントロールはバンドが見られなかったが、CD45CARタンパク質の予測されるサイズのバンドが目的のサンプルからみられた(
図29B)。
【0271】
CD45CAR NK
45i -92 NK 細胞
蛍光活性化細胞選別(FACS)によるCD45NK
45i-92細胞が多く含まれる領域を回収後、ソーティング後にけるCD45CAR NK-92導入効率は87%であるとフローサイトメトリー(
図30)によって測定された。CD45NK
45i -92細胞のFACS収集後、CD45CAR発現レベルは、少なくとも10継代にわたって一貫して安定したままであった。
【0272】
CD45CAR NK
45i -92細胞は、CD45 +白血病細胞を特異的に溶解する。
CD45CAR NK45i -92抗白血病活性を評価するために、T-ALL細胞株である、CCRF-CEMおよびJurkat、ならびにNK細胞株およびNK-92細胞を用いた共培養アッセイを実施した、何故ならばそれら細胞はCD45を発現しているからである(
図31、32、33)。本発明者らは、我々はCD45CAR NK
45i -92細胞が一貫して白血病細胞の強力な溶解を示したことを実証した。CD45CAR NK
45i -92細胞は、標的細胞に対する低有効性(E:T比5:1)で6時間インキュベートした後、60%を超えるCCRF-CEM細胞を効果的に溶解した(
図31)。6時間の共培養後、CD45CAR NK
45i -92細胞はまた、E:T、2:1または5:1の比で約60%のJurkat細胞を殺傷することができた(
図32)。6時間の共培養の後、CD45CAR NK
45i-92細胞は、E:T比2:1で20%CD45陽性NK-92細胞を効率的に溶解し、E:T = 5:1で60%に近い溶解度を示した(
図33A~33C)。
【0273】
CD45標的の血液悪性腫瘍のさらなる分析のために、さらに2つのCARをCD45-28またはCD45-BB CARを発現するレンチウイルスを用いてNK
45i-92細胞を形質導入することでCD45-28およびCD45-BB CARを作製した。CD45-28およびCD45-BB CARは、前述のCD45CARとは異なる新しい抗CD45 scFvを含む。CD45-28 CARはCD28共刺激ドメインを使用し、CD45-BBは4-BB共刺激ドメインを有する。両方のCARともに、CD8由来のヒンジ(H)、膜貫通(TM)領域およびCD3ζシグナル伝達ドメインを使用する。CD45CARは、B急性リンパ芽球性細胞株REHへの強力な溶解を示した。CD45CAR NK
45i-92細胞は、約76%のREH細胞を溶解した。CD45b-BB CAR NK
45i-92細胞およびCD45b-28 CAR NK
45i-92細胞は、コントロールGFP NK-92細胞と比較して、それぞれREH細胞の約79%および100%の溶解能を示した(
図33D〜G)。CD45b-28 CAR NK
45i-92細胞は、REH細胞の溶解力に対し最高値を示した。
【0274】
IL15およびその受容体によるCAR TおよびNK細胞機能の増強
最近の研究により、T細胞の持続性がCAR T細胞の治療効果と良好に相関することが実証されている。最近の試験は、強力かつ持続性の高腫瘍活性を持つように作製された高品質の少数のCAR T細胞を注入することが、量を注入することよりもむしろ 抗腫瘍活性に寄与する上でより重要であることを実証している。
【0275】
インターロイキン(IL)-15は、リンパ球の発達および止血を促進するサイトカインである。IL-15レベルの増加は、T細胞増殖を促進し、T細胞エフェクター応答を増強する。最近の研究からのデータは、IL-15が、抗腫瘍活性に関連する重要な因子の1つである記憶CD8 T細胞の生成および維持にとって重要であることを示している。IL-15は、T細胞の生存、増殖および記憶T細胞の生成などのIL-15媒介作用に寄与するIL-15受容体アルファ鎖(IL15RAまたはRAとも呼ばれる)に結合する。
【0276】
IL-15RAは、T細胞表面のβγ複合体に結合する、そしてT細胞および他のタイプの細胞の細胞表面上のこのIL-15RA /βγ複合体との結合により、IL15が信号をおくる。
【0277】
最近のデータは、IL-15単独のトランスフェクションはT細胞機能に有意に影響しないが、IL-15 / IL-15RAのトランスフェクションはT細胞が生存し、自発的に増殖することを示す。
【0278】
投与されたIL-15単独の有効性は、遊離IL-15RAの利用の可能性およびその短い半減期によって制限され得るかもしれない。可溶性IL-15 / RA複合体の投与は、インビボでのII-15の半減期およびバイオアベイラビリティを大幅に増強した。したがって、IL-15のみではなくこの複合体によるマウスの治療は、記憶CD8 T細胞およびNK細胞の強力な増殖および維持をもたらす。最近の研究は、sushiドメインとも呼ばれるIL-15RAの細胞外領域の一部がIL15の結合に必要であることを示している(WEIら、J. Immunol。、vol.167(1)、p:277-282,2001 )。リンカーを含むIL-15 / RA融合タンパク質またはIL-15 /sushi融合タンパク質は、IL-15および可溶性IL-15RA単独よりも強力である。IL-15 / RAまたはIL-15 /sushiの組み合わせは、IL-15活性を最大にすることができる。しかしながら、インサート配列の長さがトランスフェクション効率および遺伝子発現レベルに影響を及ぼすこともあるので、同じ構造中にCARおよびIl-15 / RAまたはIL15 /sushiの両方を組み込んだデザインがTまたはNK細胞において求める生物学的特性を維持するかどうかは不明である。
【0279】
本開示は、CARおよびIL15 / RAまたはIL15 /sushiの両方を単一の構成に有する操作された細胞の詳細を提供する。いくつかの実施例では、本開示は、より高い力価のウイルスを生成し、CARおよびIL15 / RAまたはIL-15 /sushiの両方を誘導するためのより強力なプロモーターを使用する方法を含む。
【0280】
いくつかの実施例では、本開示は、(1)CD4、CD2、CD3、CD7、CD5、CD45、CD20、CD19、CD33、CD123、CS1、およびB細胞成熟抗原(BCMA)など、限定されるものではないがCARの標的となる抗原を含む 、そして(2)IL-15、(3)IL15RA(RA)またはsushiなどのことを有する操作された細胞を提供する。さらなる実施例において、CARは、キメラ抗原レセプター、CD28、CD2、4-1BBおよびOX40などのような、一つまたはそれ以上の共刺激性の内在ドメイン、細胞内ドメインのCD3ゼータ鎖を含む。さらなる実施例では、これに限定されないが強力なプロモーターは、SFFVであり得る。CARs、IL-15 / RAまたはsushiおよび誘導性自殺遺伝子(「安全スイッチ」)、またそれらの組み合わせを、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターまたはプラスミドなどのベクター上に組み立てることができる。「安全スイッチ」の導入は、安全性プロフィールを大幅に向上させ、CARの標的または腫瘍外への毒性を制限する可能性がある。
【0281】
CD4IL15RA-CARの特性評価
CD4IL15RA-CARが作製され、それはIL15RAに連結した第3世代のCD4CARを含む(
図34)。CAR(第3世代)、sushi / IL-15の組み合わせを発現ベクター上に組み立て、それらの発現をSFFVプロモーターにより誘導する(
図34)。sushi/ IL-15を含むCARは、P2A切断配列と連結している。sushi/ IL-15部分は、sushiドメインにIL-2シグナルペプチドが融合され、26アミノ酸のポリ - プロリンリンカーを介してIL-15に連結されたものからなる(
図34)。
【0282】
CD4IL15RAの構築物を確認するために、HEK293FT細胞を、GFP(コントロール)またはCD4IL15RAのいずれかのレンチウイルスプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションから約60時間後、HEK-293FT細胞および上清の両方を回収した。細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含むRIPAバッファーで溶解し、電気泳動を行った。ゲルをImmobilon FLブロッティング膜に転写し、ブロックし、マウス抗ヒトCD3z抗体を1:500の割合でプローブした。洗浄後、膜をヤギ抗マウスHRPコンジュゲート抗体でプローブし、洗浄し、HyGlo HRP基質での処理後にフィルムに露光した。CD4IL15RA-CARは、レーン3(矢印)の横で、HEK293細胞(レーン2、
図35a)でうまく発現したことを示した。CD4IL15RA-CARレンチウイルス上清を用いて、新鮮なHEK-293細胞への形質導入によってさらに調べた。HEK-293FT細胞由来のGFPまたはCD4IL15RA-CARウイルス上清のいずれかを用いてHEK-293細胞へ形質導入した。Polybreneを4μL/ mLに添加した。16時間後に培地を交換し、ウイルス上清またはポリブレンを含まない培地と交換した。形質導入3日後に、細胞を回収し、ヤギ抗マウスF(Ab’)2抗体を用いて1:250の割合で30分間染色した。細胞を洗浄し、ストレプトアビジン-PEコンジュゲートされた抗体を用い、1:500の比率で染色し、洗浄後、2%のホルマリンに懸濁し、フローサイトメトリーにより解析した。
図35bに示すように、CD4IL15RA-CARレンチウイルスで形質導入されたHEK-293細胞ではF(Ab)2-PEにおいて80%陽性であり(
図35bの丸で囲んだ領域 )、一方、GFPコントロールレンチウイルスによる形質導入された細胞はF(Ab)2-PEにおいて、極僅かに陽性であった( 35b左図)。
【0283】
CD4IL15RA-CAR NK cellsの作製
NK-92細胞にCD4IL15RA-CARレンチウイルス上清で形質導入を行った。5日間のインキュベーション後、細胞を採取し、ヤギ抗マウスF(Ab ')2と1:250の割合で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、懸濁させ、ストレプトアビジン-PEで30分間染色した。細胞を洗浄し、2%ホルマリン中に懸濁させ、フローサイトメトリーにより分析した結果、形質導入細胞のほぼ70%でCD4IL15RA-CARを発現したことがわかった (
図36の丸で囲んだ領域)。CD4IL15RA-CARのさらなる実験的試験には、インビトロおよびインビボでの白血病/リンパ腫殺傷アッセイ、ならびにCD4CARで形質導入された細胞とでの標的殺傷能力および細胞増殖速度の比較検討が含まれる。本発明者はまた、CD19IL15RA-CARを作製するために上記に述べられた、同じ方法を用いた。
【0284】
CD4IL15RA-CAR T cellsの作製
ヒト臍帯バフィーコート細胞にCD4IL15RA-CARレンチウイルス上清を形質導入した。5日間のインキュベーション後、細胞を採取し、ヤギ抗マウスF(Ab ')2と1:250の比率で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、懸濁させ、ストレプトアビジン-PE抗体で30分間染色した。細胞を洗浄し、2%ホルマリン中に懸濁させ、フローサイトメトリーで分析し、その結果、形質導入細胞の63%がCD4IL15RA-CARを発現する ことがわかった(
図37の丸で囲んだ領域 )。CD4IL15RA-CARのさらなる実験的試験には、インビトロおよびインビボでの白血病/リンパ腫殺傷アッセイ、ならびにCD4CARで形質導入された細胞とでの標的殺傷能力および細胞増殖速度の比較検討が含まれる。
【0285】
CD4IL15RACAR NK細胞を、以下のCD4陽性細胞株、Karpas 299およびMOLT4と共培養することにより、インビトロでCD4CAR NK細胞と比較して抗白血病活性について試験した。
Karpas 299細胞株は、患者由来の未分化大型T細胞リンパ腫である。CD4を発現するMOLT4細胞株は、19歳の患者の末梢血から樹立された急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)である。4時間の共培養実験の間に、エフェクター:標的の5:1比率において、CD4IL15RA CAR NK細胞は、CD4CAR NK細胞の殺傷能力(82%、
図38)よりもさらに高い割合で、Karpas 299細胞への著しい殺傷能力(95%)を示した。同様に、MOLT4細胞と1:1で共培養した場合、CD4IL15RA CAR NK細胞は、一晩アッセイ(
図39)においてCD4CAR NK細胞よりも高い速度(84%〜65%)で標的細胞を溶解した。これらの結果は、CD4IL15 CAR NK細胞が、CD4CAR NK細胞同様に腫瘍細胞をアブレートすることができることを示す。
【0286】
CD4CAR およびCD4IL15RA CAR T細胞は、CD4CARよりもin vivoでより強力な抗腫瘍活性を示す
CD4CARおよびCD4IL15RACAR T細胞のインビボでの抗腫瘍活性を評価し、CD4IL15RA CAR T細胞がCD4CAR T細胞に対して、より持続性が増加する可能性を検討するため、本発明者らは、致死以下に照射したNSGマウスに 100%CD4である急性骨髄性白血病細胞株(M5)であるルシフェラーゼ発現MOLM13細胞を静脈注射することで測定可能な腫瘍形成を可能とする異種マウスモデルを開発した。腫瘍細胞注射の3日後、6匹のマウスに、8×10
6個のCD4CAR、CD4IL15RACAR T細胞またはベクターコントロールT細胞を1コースで静脈注射した。3、6、9および11日目に、マウスにRediJect D-Luciferin(Perkin Elmer)を皮下注射し、腫瘍量を IVISイメージングにて測定した(
図40)。6日目において、CD4CAR T細胞での治療マウスは、コントロールと比較して腫瘍量が52%低かったが、一方、CD4IL15RA CAR T細胞での治療マウスは腫瘍負荷量が74%低かった(
図41)。11日目に、ほとんどすべての腫瘍細胞がこれらの群の両方において溶解された。Unpaired T test解析では、コントロールと比較して、CD4CARおよびCD4IL15RACAR T細胞での治療グループは、9日目までで光強度が弱く、より少ない腫瘍量であり、非常に有意な統計差(P = 0.0045)を示した。
【0287】
GFPレポーターを用いたプロモーターテスト
HEK293FT細胞に、SFFV、EF1またはCAGプロモーターの下でGFPを発現するレンチウイルスプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの約60時間後、上清をそれぞれから回収した。相対的ウイルス力価は、最初に、3つのプロモーターのそれぞれからの上清をHEK293細胞に導入することによって決定した。HEK-293FT細胞から得られた、それぞれ3つのGFPウイルス上清を用いてHEK-293細胞に形質導入した。ポリブレンを4μL/ mLまで添加した。16時間後に培地を交換し、ウイルス上清またはポリブレンを含まない培地と交換した。形質導入の3日後、細胞を回収、洗浄し、2%ホルマリン中に懸濁し、GFP発現(FITC)の状態をフローサイトメトリーにより分析した。GFP発現は各試料で見られたが、SFFVプロモーターを用いて作製したウイルスで形質導入した細胞で最も高かった。
【0288】
活性化されたヒト臍帯バフィーコート細胞に、各プロモーターからのGFPレンチウイルス上清(HEK293導入効率の結果に基づく量)を用いて形質導入した。5日間のインキュベーション後、細胞を採取し、洗浄し、2%ホルマリンで懸濁させ、フローサイトメトリーによりGFP発現について分析した。43%の細胞が高レベル(> 10
3)でのGFPを発現したが、プロモーターEF1(15%)およびCAG(3%)を用いたウイルスを形質導入した細胞のGFP発現はかなり低かった。5日後、同じ方法で分析した細胞は、それぞれほぼ同じパーセンテージを示した(それぞれ、46%、15%および3%、
図23)。これらの結果は、SFFVプロモーターがEF1またはCAGプロモーターよりも強い発現をもたらし、発現が形質導入後少なくとも10日間は高いままであることを示す。さらなる実験的試験には、形質導入された細胞の10日間の期間を超えるより長いインキュベーション時間が含まれる。
【0289】
T抗原認識部分(CD4、CD8、CD3、CD5、CD7、およびCD2の少なくとも1つ、またはその一部またはその組合せ)、ヒンジ領域およびT細胞の活性化ドメインの少なくとも1つを含むCAR遺伝子を作製する方法 が提供される。
【0290】
CD33、CD123、CD19、CD20、CD22、CD269、CS1、CD38、CD52、ROR1、PSMA、CD138、およびGPC3あるいはヒンジ領域とT細胞活性化ドメインとの一部あるいは組み合わせを含む、複数のCARユニット(cCAR)の作製方法が提供される。本明細書に引用および/または開示されたすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0291】
提供される方法は、1)CD45を発現する白血病およびリンパ腫を標的とし、自己殺傷を回避するCAR TまたはNK細胞の作製、2)阻害性腫瘍微小環境を克服し、増強された抗腫瘍活性および長期持続性を示すように設計された「armored」CAR TまたはNK細胞の作製。
【0292】
本発明は、上記で説明し例示した実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内で変形形態および修正が可能である。特許、公開された出願、技術論文、学術論文を含む様々な刊行物が、本明細書を通して引用されている。各引用された刊行物は、その全体がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。本発明の態様に関する様々な用語が、明細書および特許請求の範囲全体にわたって使用される。そのような用語は、他に指示がない限り、当該分野において通常の意味を有するものとする。他の特別に定義された用語は、本明細書で提供される定義と一致するように解釈されるべきである。
【0293】
上清中のウイルスベクター粒子の機能力価(フローサイトメトリーによって決定されたGFP細胞の百分率 (%) は、より高い力価のウイルスがより多くの細胞に浸潤し、よりGFP発現の高い割合の細胞集団をもたらすので、代理ウイルス力価調整を可能にする)。
本発明者らの各上清中のウイルスベクター粒子の機能的力価を決定するために、HEK293細胞に、12ウェル組織培養処理プレートの1ウェルあたり30μL(低)、125μL(中)または500μL(高)のいずれかの量で、EF1-GFPまたはSFFV-GFPウイルス上清のいずれかで形質導入した。翌朝、培地を10%FBSを含む DMEMに変更した。
【0294】
次いで、形質導入された細胞をトリプシン処理し、洗浄し、そしてホルマリン中に懸濁させ、フローサイトメトリーで解析した。各条件におけるGFP +細胞の割合を、FITCチャネルを用いたフローサイトメトリーによって測定した(
図43)。いずれの場合においても、SFFV-GFPで形質導入された細胞は、それに相応する容量のEF1-GFPウイルス上清で形質導入した場合よりも高い割合のGFP+細胞を保有していた(低容量ウイルス使用時では50%と18%、中容量では80%と40%、高容量のウイルス使用時では82%と70%の割合のGFP+細胞が見られた)。このことから、最大量のEF1プロモーターウイルスを使用することは、力価に関して言えばSFFVプロモーターウイルスの最低容量を使用することに匹敵し、以下の形質導入実験の結果より、相対的なプロモーター強度の比較を可能であると判断した。
【0295】
形質導入された細胞はまた、各ウェルについて20倍の倍率で、同じ露光条件で、GFPを用いてEVOS蛍光顕微鏡で視覚化された(
図42)。SFFV-GFPウイルス上清で形質導入された細胞は、EF1-GFPウイルスで形質導入された細胞よりも劇的に明るかった。さらに、高いウイルス量の使用下でのEF1プロモーターの画像と、低いウイルス量の使用してでのSFFVプロモーターの画像とを比較することは、同様の蛍光強度を示す。これは、SFFVプロモーターが遺伝子発現のより強力な駆動体であることを指示している。
【0296】
初代T細胞における異なるプロモーターでの表面発現と持続性の比較(フローサイトメトリーによって決定されたT細胞への形質導入によるにGFP細胞の割合は、HEK293細胞での先の実験から予想されるようなGFP細胞集団での予期される差異を示す)
初代T細胞におけるプロモーター形質導入効率および表面発現の持続性を決定するために、活性化された臍帯血バフィーコートT細胞を、レトロネクチン(Clontech)でプレコートした12ウェルの組織培養プレート中で50μLのSFFV-GFPまたは1mLのEF1-GFP ウイルス上清のいずれかを用い形質導入した。2度にわたるオーバーナイトでの形質導入の後、細胞を300 IU/mLのIL-2(Peprotech)を含むT細胞培養培地で培養し、1.0〜4.0×10
6/mLの細胞密度を維持した。細胞を洗浄し、ホルマリン中に懸濁させ、形質導入後7、14、21および28日におけるGFP +細胞の割合をFITCチャンネルを用いてフローサイトメトリー分析を行うことで決定した。GFP +細胞のパーセンテージは、SFFV-GFPで形質導入されたT細胞の方がEF1-GFP形質導入されたT細胞(
図44A)と比較して一貫して高かった。さらなる比較により、より多い量(1mL)のEF1-GFP上清で形質導入されたT細胞が、より少ない量(50μLまたは20倍少ない)のSFFV-GFP上清で形質導入された細胞よりも、7日目と28日目の間で、GFP+の細胞の割合が60%超から40%未満まで減少した(
図44B)。このことは、SFFVプロモーターを用いた形質導入が、形質導入された細胞の形質発現のより良い持続性を維持することを示唆している。
【0297】
BCMAまたはTACIまたはBAFF-R CAR NK細胞またはT細胞はBCMAまたはTACIまたはBAFF-R CAR抗原の少なくとも1つを発現する細胞を標的とする
BCMAまたはTACIまたはBAFF-R NK細胞またはT細胞の少なくとも1つによるCARによる細胞毒性能力を評価するために、BCMAまたはTACIまたはBAFF-Rの少なくとも1つを発現する細胞株または初代ヒト細胞を用いて共培養アッセイを行う。前述のCAR NK細胞またはT細胞が標的細胞を溶解する能力をフローサイトメトリー分析によって定量し、標的細胞はCytotracker色素(CMTMR)で染色した。溶解は、24時間の長い培養時間で観察される。
【0298】
BAFFまたはAPRIL CAR NKまたはT細胞はBCMAまたはTACIまたはBAFF-R抗原の少なくとも1つを発現する細胞を標的とする
CAR中のキメラ抗原受容体は、BCMAまたはTACIまたはBAFF-Rのリガンドである。
【0299】
BCMAまたはTACIまたはBAFF-R NKまたはT細胞の少なくとも1つによるCARによる細胞毒性能力を評価するために、BCMAまたはTACIまたはBAFF-Rの少なくとも1つを発現する細胞株またはヒト初代細胞を用いて共培養アッセイを行った。前述のCAR NK細胞またはT細胞が標的細胞を溶解する能力をフローサイトメトリー分析によって定量し、標的細胞はCytotracker色素(CMTMR)で染色した。溶解は、24時間の長期培養で観察される。
[参考文献]