(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。説明中の上下等の方向を示す用語は、重力加速度方向を基準とした現実の方向とは異なる場合がある。
【0009】
図1は、実施形態に係る全熱交換素子用シートを示す断面模式図、
図2は全熱交換素子用シートに対する外気と還気の流れを
図1と異ならせた断面模式図である。全熱交換素子用シート1は、多孔質部材2と多孔質部材2の一方の面に設けられた膜3とを具備し、多孔質部材2と膜3との積層体は水蒸気分離体としての機能を有する。
【0010】
このような全熱交換素子用シート1に対し、コスト面などを考慮して通常は導入側を変化させないが、以下に説明するように導入側を夏と冬で変化させてもよい。
【0011】
例えば、外気110aが還気110cよりも高温多湿である場合、
図1に示すように外気110aは主に膜3の表面を流路(図示せず)に沿って流通して吸気110bとして室内に排出され、還気110cは主に多孔質部材2の表面を流路(図示せず)に沿って通過して排気110dとして室外に排出される。外気110a及び還気110cは、例えば互いに向き合うように流通させているが、全熱交換の設計により互いに交差して流通させてもよい。このように外気110aを全熱交換素子用シート1の膜3表面、還気110cを全熱交換素子用シート1の多孔質部材2表面、に沿って流通させることによって、外気110aに含まれる水蒸気及び熱は全熱交換素子用シート1を透過して低湿低温に調整された還気110c側に移動する。
【0012】
他方、外気110aが還気110cよりも低温低湿である場合、
図2に示すように還気110cは主に膜3の表面を流路(図示せず)に沿って通過して排気110dとして室外に排出され、外気110aは主に多孔質部材2の表面を流路(図示せず)に沿って通過して吸気110bとして室内に排出される。還気110c及び外気110aは、互いに向き合うように流通させる。このように還気110cを全熱交換素子用シート1の膜3表面、外気110aを全熱交換素子用シート1の多孔質部材2表面、に沿って流通させることによって、還気110cに含まれる水蒸気及び熱(顕熱と潜熱)は全熱交換素子用シート1を透過して外気110a側に移動する。従って、全熱交換素子用シート1は外気110aと還気110cとの間で全熱を交換することができる。
【0013】
外気及び還気は、互いに接触しないように全熱交換素子用シート1の表面を流路に沿って通過させ、水蒸気とその他の気体とを効率よく分離することが好ましい。また、全熱交換素子用シート1は温度と湿度を効率よく交換する機能を有することが求められる。全熱の交換効率をより高めるためには、例えば水蒸気透過速度Vsと水蒸気と水蒸気を除く気体(空気等)とを分離する能力を示す分離率αとの両方が高いことが好ましい。
【0014】
全熱交換素子用シート1の水蒸気透過速度Vsは、50g/h/m
2/kPa以上、80g/h/m
2/kPa、さらに120g/h/m
2/kPaであることが求められる。全熱交換素子用シートの水蒸気透過速度Vsは、次式(1)により表される。全熱交換素子用シート1の水蒸気透過速度Vsが低いと、全熱の交換効率が低下し、全熱交換器としてのロスが大きくなる虞がある。
【0015】
全熱交換素子用シート1の水蒸気透過速度Vs(g/h/m
2/kPa)=(全熱交換素子用シート1を透過した水分量(g))/(全熱交換素子用シート1を水分が透過した時間(h))/(全熱交換素子用シート1の面積(m
2))/(全熱交換素子用シート1の両面における水蒸気圧差(kPa))…(1)
全熱交換素子用シート1の水蒸気と水蒸気を除く気体との分離率αは、10以上、20以上、さらに50以上であることが求められる。分離率αは、次式(2)により表される。
【0016】
α=[(全熱交換素子用シート1を透過した水のモル数)/(排気7dの乾燥空気のモル数)]/[(外気7aの水のモル数)/(外気7aの乾燥空気のモル数)]…(2)
分離率αが低すぎると、水蒸気と水蒸気を除く気体との分離が困難になり、還気が効率よくおこなわれなくなる。その結果、室内の二酸化炭素等の排出が低下し、十分な換気のために余分な風量が必要になる。
【0017】
前述した多孔質部材2及び膜3について以下に詳述する。
<多孔質部材2>
多孔質部材2は、有機繊維を主成分として含み、空気透過係数K(m
2)は、1×10
-14〜3×10
-13である。空気透過係数Kは、次のような方法により測定することができる。
【0018】
空気透過係数Kはダルシーの法則により、式(3)のように書き表される。あるシート状のサンプル(ここでは水蒸気分離シート)を開口部の面積がA(m
2)のシールで挟み込み、シートの片面に圧力P2、もう一方の面にP1(P2>P1、P1は通常大気圧)をかける。その際の圧力差をΔP(=P2−P1)とし、厚み方向に漏れ出た気体の流量をQ、シートの厚みをL、μを空気の動粘性係数(0.000018Pa・s)とすると、式(3)よりKが求められる。
【0019】
Q=K×A×ΔP/(μ×L)・・・(3)
このような空気透過係数Kを有する多孔質部材2は、高い水蒸気透過速度を有し、かつその表面に設ける適切な膜の性状により高い水蒸気分離率を示す。
【0020】
すなわち、
図3は多孔質部材の表面への繊維径1nm以上50nm以下の無機繊維(例えば擬ベーマイトナノファイバ)のローディング量(g/m
2)と、当該ローディング量での水蒸気分離率αの関係を示す図である。多孔質部材表面に擬ベーマイトナノファイバの分散液を例えば塗布して膜を形成する工程において、初期には多孔質部材表面の凹凸又は開放気孔内に擬ベーマイトナノファイバが埋め込まれ、その後擬ベーマイトナノファイバが積み重なって互いに繋がることにより膜として形成される。このような膜形成において、
図3に示すように初期には膜のピンホール又は亀裂に起因して水蒸気分離率αが低くなるが、ピンホール又は亀裂のない膜になると、水蒸気分離率αが急激に高くなる。
図3に示す4つの曲線は、性状の異なる多孔質部材を用いた例で、多孔質部材の性状により水蒸気分離率αが急激に高くなるローディング量が異なる。これらの曲線から、水蒸気分離率α=20のローディング量を立ち上がりローディング量として定めた。
【0021】
図4は、多孔質部材の空気透過係数K(m
2)[横軸]と多孔質部材の水蒸気透過速度(g/h/m
2/kPa)[左縦軸]の関係、及び多孔質部材の空気透過係数K[横軸]と水蒸気分離率の立ち上りローディング量[右縦軸]の関係、を示す図である。多孔質部材2の水蒸気透過速度Vsは、次式(4)により表される。多孔質部材2の水蒸気透過速度Vs(g/h/m
2/kPa)=(多孔質部材2を透過した水分量(g))/(多孔質部材2を水分が透過した時間(h))/(多孔質部材の面積(m
2))/(多孔質部材の両面における水蒸気圧差(kPa))…(4)
多孔質部材の水蒸気透過速度の要求特性は、50以上である。立ち上りローディング量の要求特性は、多過ぎる、つまり膜の厚さを厚くし過ぎると、コストの上昇、膜の亀裂発生の虞、及び水蒸気透過速度の低下を招ことから、15g/m
2以下である。実施形態に係る全熱交換素子用シートの多孔質部材の空気透過係数K(m
2)を1×10
-14〜3×10
-13の範囲(
図4に示す2本の一点鎖線の間)に規定することによって、これらの水蒸気透過速度及び立ち上りローディング量の要求特性を満たすことができる。
【0022】
従って、空気透過係数Kを規定した多孔質部材を備えた全熱交換素子用シートは、多孔質部材の一方の面に立ち上りローディング量が少ない、比較的薄い膜を設けた形態でも、膜による高い水蒸気分離率αを示し、同時に水蒸気透過速度Vsを向上できる。
【0023】
前記空気透過係数Kを有する多孔質部材2は、20μm以下のモード径が10μm以下であることが好ましい。20μm以下のモード径とは、20μm以下の細孔径のピーク位置を示す。このようなモード径を有する多孔質部材2は、当該多孔質部材2の一方の面により少ない無機繊維の立ち上がりローディング量で亀裂、ボイドの発生をより低減した、良好な膜3を設けることが可能になる。より好ましい20μm以下のモード径は、9μm以下である。
【0024】
モード径は、次のような方法により測定することができる。
【0025】
一般的に、メソ孔からマクロ孔にかけての細孔径分布を測定する際に用いる、水銀圧入式ポロシーメーターを用いて、多孔質部材の細孔容量及びモード径を求めた。測定は、表面張力の高い水銀に圧力を加え、固体表面の細孔もしくは隙間の中に圧入し、その際に加えた圧力と押し込まれた水銀容積との関係から細孔分布を求める方法である。測定の際に、サンプル間の隙間やサンプル−セル間を測定値として拾わないよう、サンプルセットには注意する必要がある。モード径は、細孔径分布グラフ上にて現れたピークの一番高い位置を読み取った値である。また、細孔容量は押し込まれた水銀の容量そのもので、かけた圧力により細孔の孔の大きさがわかる。
【0026】
前記空気透過係数Kを有する多孔質部材2は、20μm以下の細孔の容量が0.4mL/g以上であることが好ましい。このような細孔容量を有する多孔質部材2を備えた全熱交換素子用シート1は、水蒸気透過速度Vsをさらに向上することができる。
【0027】
細孔の容量は、モード径の測定方法と同様な方法により測定することができる。
【0028】
多孔質部材2に含まれる有機繊維は、繊維径が1μm以上100μm以下、より好ましくは1μm以上50μm以下であることが望ましい。有機繊維は、高い柔軟性を有し、低コストであるため好ましい。多孔質部材2は、複数種の有機繊維を含んでもよい。
【0029】
有機繊維は、例えば合成繊維や天然繊維等を用いることができる。天然繊維は、例えセルロースを主成分として含む。有機繊維は、径方向に平であってもよい。多孔質部材2は、例えば不織布、紙、有機多孔質体、又は合成繊維、天然繊維からなる成形体(紙を含む)であってもよい。多孔質部材2は、繊維径1μm以下の有機ナノ繊維の集合体であってもよい。有機ナノ繊維の集合体を用いることにより、多孔質部材2と膜3との結合力を増加させて、膜3が多孔質部材2から剥離するのを防ぐことができる。
【0030】
多孔質部材2の厚さは、特に限定されないが、好ましくは30μm以上3mm以下、さらに好ましくは50μm以上1mm以下である。多孔質部材2を薄くし過ぎると、ハンドリングの際、たわみ等の変形が生じ、多孔質部材2の一面に設けた膜3に亀裂等の欠陥が生じるだけでなく、破損する虞がある。また、多孔質部材2を厚くし過ぎると、水蒸気透過速度Vsが低下するだけでなく、熱伝導が低下するため、熱交換のロスが生じることが懸念される。
【0031】
多孔質部材2の密度は、好ましくは0.8g/cm
3以下、より好ましくは0.7g/cm
3以下である。密度を高くし過ぎると、水蒸気の透過抵抗が高くなり、全熱の交換効率が低下する虞がある。
【0032】
多孔質部材2の体積気孔率(細孔の体積率)は、好ましくは20%以上80%以下、より好ましくは25%以上70%以下である。多孔質部材2の体積気孔率が20%未満であると、水蒸気の透過抵抗が高くなり、全熱の交換効率が低下する虞がある。多孔質部材2の体積気孔率が80%を超えると、多孔質部材2の強度が低下して、多孔質部材2の一面に設けた膜3に亀裂が発生し、後述するウェットシールの形成を阻害する虞がある。なお、多孔質部材2の体積気孔率や細孔の形状(平均孔径等)は、水銀圧入法により測定することができる。
<膜3>
膜3は、多孔質部材2の一方の面に設けられる。膜3は、繊維径1nm以上50nm以下の無機繊維を含む。OH基を有する無機繊維は、水蒸気が吸着しやすいため好ましい。無機繊維の繊維長は、0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。無機繊維は、繊維径が1nm以上10nm以下、繊維長が1μm以上3μm以下であることがより好ましい。繊維長を0.5μmよりも短くすると、繊維同士が絡み合う力が小さく、膜形成する際に亀裂が発生しやすくなる虞がある。繊維長が15μmよりも長くすると、繊維径に対するアスペクト比が大きくなり過ぎて繊維が折れやすくなる。無機繊維は、耐熱性が高いため好ましい。膜3は、複数種の無機繊維を含んでもよい。
【0033】
無機繊維は、特に限定されないが、親水性材料であることが好ましい。親水性材料は、例えばアルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、及び鉄(Fe)からなる群から選ばれる少なくとも一つを含む酸化物や水酸化物;アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むアルミノケイ酸塩;マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、及びストロンチウム(Sr)からなる群から選ばれる少なくとも一つを含む炭酸塩;Mg、Ca、及びSrからなる群から選ばれる少なくとも一つを含むリン酸塩;Mg、Ca、Sr、及びAlからなる群から選ばれる少なくとも一つを含むチタン酸塩;又はこれらの複合物若しくは混合物等を用いることができる。また、金属水酸化物を前駆体とし、これを加水分解等で結合させ、反応を途中で止めてOH基の数を制御することにより形成された金属化合物であってもよい。
【0034】
具体的な親水性材料は、例えばアルミナ(ベーマイト又は擬ベーマイトを含む)、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、フェライト、ゼオライト、ハイドロキシアパタイト、チタン酸バリウム、又はその水和物等が挙げられるが、これらに限定されない。このような親水性材料からなる無機繊維を含む膜3は、耐熱性をより向上することができる。
【0035】
無機繊維は、ベーマイト又は擬ベーマイトを含んでいることが特に好ましい。擬ベーマイトは、ベーマイトと結晶構造の一部が異なるアルミナ水和物を含む材料である。ベーマイト及び擬ベーマイトは、表面や結晶の層間にOH基が多く存在するため、水蒸気を吸着しやすく、ウェットシールの形成に有利である。
【0036】
次に、実施形態に係る全熱交換素子用シートの製造方法の一例を説明する。
【0037】
有機繊維を主成分として含み、空気透過係数K(m
2)は、1×10
-14〜3×10
-13であるシート状の多孔質部材を作製する。当該多孔質部材の一面に繊維径1nm以上50nm以下の無機繊維の分散液を塗布し、乾燥することによって、多孔質部材の一方の面に膜が形成された全熱交換素子用シートを製造する。無機繊維の分散液は、例えば無機繊維を水に分散した液である。
【0038】
以上説明した全熱交換素子用シート1は、有機繊維を主成分として含み、空気透過係数K(m
2)が1×10
-14〜3×10
-13である多孔質部材2と、当該多孔質部材の一方の面に設けられた繊維径1nm以上50nm以下の無機繊維を含む膜3とを備えるため、多孔質部材2で高い水蒸気透過速度を担わせ、膜3で高い水蒸気透過速度及び水蒸気と水蒸気を除く気体との分離率を担わせることができ、膜3の表面に接触して流通する外気又は還気の水蒸気を効率的に透過してその反対側、つまり多孔質部材2の面に移動させることができる。
【0039】
前記空気透過係数Kを有する多孔質部材2は、当該多孔質部材2の一方の面に亀裂、ボイドの発生を低減した良好な膜3を設けることが可能になり、膜3の水蒸気と水蒸気を除く気体との分離率を向上(例えば20倍以上)することが可能になる。同時に、当該多孔質部材2を備えた全熱交換素子用シート1の水蒸気透過速度を向上することができる。
【0040】
実施形態において、20μm以下のモード径が10μm以下である多孔質部材2は、当該多孔質部材2の一方の面に亀裂、ボイドの発生をより低減した、一層良好な膜3を設けることが可能になり、水蒸気の分離率をさらに向上できる。
【0041】
実施形態において、20μm以下の細孔の容量が0.4m
3/g以上である多孔質部材2を備えた全熱交換素子用シート1は、水蒸気透過速度を一層向上できる。
【0042】
実施形態において、多孔質部材2が繊維径1μm以上100μm以下の有機繊維を含む形態にすることによって、シート自体に柔軟性を付与しつつ、高い水蒸気透過速度を実現できる。
【0043】
他方、膜3が繊維径1nm以上50nm以下の無機繊維を含むことによって、成膜時やシートのたわみによる膜3の亀裂を抑制し、強度を向上させることができる。また、ナノサイズの無機繊維で構成される膜3は、無機繊維間に細孔が作られるため、外気等に含まれる水蒸気はケルビンの毛管凝縮理論により凝縮されて細孔内に満たされ、ウェットシールを形成する。ウェットシールは、外気等に含まれる水蒸気を吸着して膜3から多孔質部材2に移動させることができる。また、ウェットシールは水蒸気を除く気体の透過を抑制できる。
【0044】
次に、実施形態に係る全熱交換素子を詳述する。
【0045】
全熱交換素子は、前述した全熱交換素子用シートを複数備えた構造を有する。
図5は、実施形態に係る全熱交換素子を示す斜視図である。全熱交換素子10は、複数枚、例えば6枚の前述した全熱交換素子用シート1と、2枚(最下層及び最上層に配置される)の補強シート12a,12bと、複数枚(例えば7枚)の断面波形、例えば断面三角波形の流路部材13と備えている。
【0046】
全熱交換素子用シート1は、その膜3が例えば下面に位置するように互いに一定の間隔を積層されている。補強シート12a,12bは、積層体の最上層及び最下層に全熱交換素子用シート1に対して一定の間隔をあけて配置されている。断面三角波形の流路部材13は、補強シート12a、6枚の全熱交換素子用シート1及び補強シート12bの間に交互に例えば90°の角度で交差するように介在して固定されている。流路部材13は、特に限定されないが、例えばパルプを主成分とする紙製シートを波形に加工したもの、又はポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の汎用樹脂、或いはステンレス等の金属から作ることができる。第1の直線状流路21は、全熱交換素子用シート1の膜3と断面三角波形の流路部材13の断面三角波で囲まれて形成されている。第2の直線状流路22は、全熱交換素子用シート1の多孔質部材2と断面三角波形の流路部材13の断面三角波で囲まれて形成されている。第1、第2の直線状流路21,22は、全熱交換素子用シート1を挟んで例えば90°の角度で交差するように配置されている。
【0047】
次に、実施形態に係る全熱交換器を詳述する。
【0048】
全熱交換器は、前述した全熱交換素子を備えている。
図6は、夏場の全熱交換を説明するための実施形態に係る全熱交換器を示す概略図である。すなわち、全熱交換器100は筐体101を備えている。筐体101内には、前述した
図5に示す全熱交換素子10が配置されている。
【0049】
筐体101内は、第1〜第4の区画室104a〜104dが全熱交換素子10を囲むように横方向の仕切壁102及び縦方向の隔壁103で区画されている。第1〜第4の区画室104a〜104dは全熱交換素子1の第1、第2の直線状流路(図示せず)の開口端とそれぞれ対向する箇所において、開放されている。第1〜第4の区画室104a〜104dは、それぞれ筐体101の左上部、右上部、左下部及び右下部に配置されている。
【0050】
第1、第3の区画室104a,104cがそれぞれ位置する筐体101の左側壁105aには、それぞれ第1、第3の開口部106a,106cが設けられている。第2、第4の区画室104b,104dがそれぞれ位置する筐体101の右側壁105bには、それぞれ第2、第4の開口部106b,106dが設けられている。第3の区画室104c内の第3の開口部106cが位置する左側壁105aには、第1のファン107aが配置されている。第4の区画室104d内の第4の開口部106cが位置する右側壁105bには、第2のファン107bが配置されている。
【0051】
このような全熱交換素子10を備えた全熱交換器100は、次のような操作により全熱交換がなされる。
<夏場の高温多湿の時期の全熱交換>
第2のファン107bを駆動することにより、室外から矢印に示す外気(還気よりも高温多湿)110aは第4の開口部106d、第4の区画室104dを通して全熱交換素子10の複数の第1の直線状流路(図示せず)内に
図1に示す全熱交換素子用シート1の膜3表面に接触して流通し、さらに他方の第1の区画室104a、第1の開口部106aを通して矢印に示す吸気110bとして室内に導入される。同時に、第1のファン107aを駆動することにより、室内から矢印に示す還気110cは第3の開口部106c、第3の区画室104cを通して全熱交換素子10の複数の第2の直線状流路(図示せず)内に
図1に示す全熱交換素子用シート1の多孔質部材2表面に接触して流通し、さらに第2の区画室104b、第2の開口部106bを通して矢印に示す排気110dとして室外に排出される。
【0052】
このような全熱交換素子10において、外気110aは全熱交換素子10の第1の直線状流路(図示せず)に導入されて、
図1に示す全熱交換素子用シート1の膜3表面に接触して流通され、還気110cは全熱交換素子用シート1を挟んで第1の直線状流路と交差する第2の直線状流路(図示せず)に導入されて、
図1に示す全熱交換素子用シート1の多孔質部材2表面に接触して流通される。このとき、外気110aは還気110cに比べて高温多湿であるため、全熱交換素子10において外気110aに含まれる水蒸気及び熱は全熱交換素子用シート1を通して還気110c側に移動される。
<冬場の低温低湿の時期の全熱交換>
図6を用いて説明した夏場の全熱交換に対して、冬場も外気、還気を同様な流路を流通して全熱交換を行うことができる。また、冬場の全熱交換は、外気及び還気の導入流路、並びに第1、第2のファンによる送気方向をそれぞれ
図7に示すように切り替えてもよい。
図7は、冬場の全熱交換を説明するための実施形態に係る全熱交換器を示す概略図である。
【0053】
すなわち、第2のファン107bを駆動することにより、室内から矢印に示す還気110cは第1の開口部106a、第1の区画室104aを通して全熱交換素子10の複数の第1の直線状流路(図示せず)内に
図1に示す全熱交換素子用シート1の膜3表面に接触して流通し、さらに第4の区画室104d、第4の開口部106dを通して矢印に示す排気110dとして室外に排出される。同時に、第1のファン107aを駆動することにより、室外から矢印に示す外気(還気よりも低温低湿)110aは第2の開口部106b、第2の区画室104bを通して全熱交換素子10の第2の直線状流路(図示せず)内に多孔質部材2表面に接触して流通し、さらに第3の区画室104c,第3の開口部106cを通して矢印に示す吸気110bとして室内に導入される。
【0054】
このような全熱交換素子10において、還気110cは第1の直線状流路(図示せず)に導入されて、
図1に示す全熱交換素子用シート1の膜3表面に接触して流通され、外気110aは全熱交換素子用シート1を挟んで第1の直線状流路と交差する第2の直線状流路(図示せず)に導入されて、
図1に示す全熱交換素子用シート1の多孔質部材2表面に接触して流通される。このとき、外気110aが還気110cに比べて低温低湿であるため、全熱交換素子10において還気110cに含まれる水蒸気及び熱は全熱交換素子用シート1を通して外気110a側に移動される。
【0055】
従って、全熱交換器100に組み込まれた全熱交換素子10は水蒸気透過速度Vsと分離率αの両方が高い全熱交換用素子1を備えるため、外気と還気との間で全熱を効率的に交換することができる。
【0056】
なお、流路部材13の断面波形は、断面三角波形に限らず、断面矩形波形、断面台形波形であってもよい。断面波形は、その山及び谷の形状が略同一、又は同一であることが好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を詳細に説明する。
(実施例1)
紙を主成分とし、空気透過係数K(m
2)が1×10
−13のシート状の多孔質部材を用意した。多孔質部材は、20μm以下のモード径が7μm、20μm以下の細孔の容量が0.45mL/gであった。当該多孔質部材の一方の面に平均直径4nm、平均長さ1μmの擬ベーマイトナノファイバを分散した水系分散液を塗布し、乾燥して厚さ10μmの膜を形成して全熱交換素子用シートを製造した。
(実施例2)
紙を主成分とし、空気透過係数K(m
2)が8×10
−14、20μm以下のモード径が6.4μm、20μm以下の細孔の容量が0.41mL/gのシート状の多孔質部材を用いた以外、実施例1と同様な全熱交換素子用シートを製造した。
(比較例1)
紙を主成分とし、空気透過係数K(m
2)が1×10
−11、20μm以下のモード径が27μm、20μm以下の細孔の容量が0.6mL/gのシート状の多孔質部材を用いた以外、実施例1と同様な全熱交換素子用シートを製造した。
(比較例2)
紙を主成分とし、空気透過係数K(m
2)が1×10
−16、20μm以下のモード径が1.3μm、20μm以下の細孔の容量が0.15mL/gのシート状の多孔質部材を用いた以外、実施例1と同様な全熱交換素子用シートを製造した。
【0058】
得られた実施例1,2及び比較例1,2の全熱交換素子用シートの水蒸気透過速度Vs及び水蒸気分離率αを測定した。
【0059】
最初に、全熱交換素子用シートの膜表面に断面三角波形の流路部材を接して配置し、当該膜と流路部材の各波とで囲まれた三角柱をなす複数の第1の直線状流路を形成した。つづいて、全熱交換素子用シートの多孔質部材表面に断面三角波形の流路部材を接して配置し、当該多孔質部材と流路部材の各波とで囲まれた三角柱をなす複数の第2の直線状流路を形成することにより評価用全熱交換セルを組立てた。この全熱交換セルの第1、第2の直線状流路は、互いに対向するとともに、平行になっている。また、第1、第2の直線状流路のピッチ、高さは既存の全熱変換素子に準じる形状とした。
【0060】
前記評価用全熱交換セルの水蒸気透過速度Vs及び水蒸気分離率αを以下の方法により測定した。
【0061】
1)水蒸気透過速度Vsの測定方法
全熱交換セルを恒温恒湿槽内に設置し、その第1の直線状流路の一端に高湿側ダクトを接続した。第1の直線状流路の高湿側ダクトの接続端と反対側に位置する第2の直線状流路の一端に低湿側ダクトを接続した。高湿側ダクトにはファンを介装し、低湿側ダクトには熱交換器が介装した。
【0062】
ファンの駆動により、高湿空気を第1の直線状流路に高湿ダクトを通して供給した。一方、恒温恒湿槽の外部から露点−110℃の窒素を第2の直線状流路に低湿側ダクトを通して供給した。当該窒素が低湿側ダクトを流通する間に、熱交換器で熱交換されて等温にし、乾燥窒素とすることにより、当該乾燥窒素を第2の直線状流路に供給した。すなわち、高湿空気と乾燥窒素は対向流として全熱交換セルの第1、第2の直線状流路にそれぞれ供給した。このとき、第1、第2の直線状流路での通過風速は全熱交換素子の評価時と同一になるようにした。
【0063】
低湿側ダクトの出口において、排気空気の温度、湿度、酸素濃度を測定し、水蒸気透過速度を算出した。
【0064】
2)水蒸気の分離率α
本来、JIS規格に準じて二酸化炭素の透過量を把握する必要があるが、二酸化炭素と酸素では窒素中のガス拡散係数がほぼ同じであることから、本測定では低湿側ダクトの出口からの酸素の透過(濃度)をCO
2の透過の代わりとし、水蒸気の分離率を算出した。
また、セルのピッチ、流路高さは既存の全熱交素子に準じる形状とし、通過風速が全熱交素子の評価時と同一になるようにした。高湿空気と低湿空気は対向流で供給した。
【0065】
実施例1、2、及び比較例1,2における水蒸気透過速度Vsと分離率αの値を下記表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
前記表1から明らかなように、空気透過係数Kが1×10
-14〜3×10
-13m
2の多孔質部材を有する全熱交換素子用シートを備えた実施例1、2の評価用全熱交換セルは、水蒸気透過速度Vsと分離率αの両方が高い値を示すことが分かる。
【0068】
これに対し、空気透過係数Kが本発明の範囲(1×10
-14〜3×10
-13m
2)の上限を超える多孔質部材を有する全熱交換素子用シートを備えた比較例1の評価用全熱交換セルは、水蒸気透過速度Vsが高いものの、分離率αが低い値を示す。
【0069】
また、空気透過係数Kが本発明の範囲(1×10
-14〜3×10
-13m
2)の下限未満である多孔質部材を有する全熱交換素子用シートを備えた比較例2の評価用全熱交換セルは、分離率αが高いものの、水蒸気透過速度Vsが低い値を示す。
【0070】
この結果から、実施例1、2の全熱交換素子用シートは比較例1、2の全熱交換素子用シートよりも全熱の交換効率が高いことがわかる。
【0071】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。