特許第6961541号(P6961541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961541
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】車両空調装置用の送風装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/06 20060101AFI20211025BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20211025BHJP
   B60H 1/12 20060101ALI20211025BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B60H3/06 611A
   B60H1/00 102G
   B60H1/12 631A
   B60H1/32 613R
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-120190(P2018-120190)
(22)【出願日】2018年6月25日
(65)【公開番号】特開2020-1462(P2020-1462A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2020年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】荒木 大助
【審査官】 町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/074339(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0170147(US,A1)
【文献】 特表2017−505397(JP,A)
【文献】 特開2013−136259(JP,A)
【文献】 実開平06−078027(JP,U)
【文献】 特開2008−120219(JP,A)
【文献】 特開2018−091274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 3/06
B60H 1/00
B60H 1/12
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を取り込むための外気導入口(11)と、内気を取り込むための少なくとも一つの内気導入口(12,13)と、前記外気導入口及び前記内気導入口の一方または両方から取り込まれた空気が通過するフィルタ(50)を、その空気流入面(51)が上を向くように支持するフィルタ支持部(14)と、前記フィルタ支持部に前記フィルタを挿入するためのフィルタ挿入口(15)とを有する空気取入ハウジング(10)と、
前記フィルタ(50)を通過した空気を吸い込むための吸込口(31)を有するスクロールハウジング(30)と、
前記スクロールハウジング(30)内に収容され、回転軸線(Ax)周りに回転駆動される羽根車(40)と、
前記空気取入ハウジング(10)の内部空間のうちの前記フィルタ(50)の空気流入面(51)よりも上方の空間を、第1空間(16A)と第2空間(16B)とに区画するとともに、前記空気流入面(51)を、前記第1空間に面した第1領域(51A)と前記第2空間に面した第2領域(51B)とに区画する下端を有する分離壁(20)と、
前記第1空間(16A)に導入する空気を内気または外気のいずれとするかの選択、及び前記第2空間(16B)に導入する空気を内気または外気のいずれとするかの選択を行うために前記空気取入ハウジング(10)に設けられた、少なくとも第1切替ドア(18)及び第2切替ドア(19)を含む複数の切替ドアと、
前記吸込口(31)を介して前記スクロールハウジング(30)内に挿入された分離筒(60)であって、下流端(61)が前記羽根車(40)の翼列(41)の内側に位置するとともに、上流端(62)が前記フィルタ(50)の下向きの空気流出面(52)の近傍に開口し、前記フィルタ(50)の前記第1領域(51A)を通過した空気が前記分離筒の外側を通って前記羽根車の翼列(41)の第1回転軸線方向部分(41A)に流入し、かつ、前記フィルタ(50)の前記第2領域(52A)を通過した空気が前記分離筒の内側を通って前記羽根車の翼列の第2回転軸線方向部分(41B)に流入するように設けられた分離筒(60)と、
を備え、
前記空気取入ハウジング(10)内に少なくとも外気が導入されるときには、少なくとも前記第1空間(16A)に外気が導入され、前記空気取入ハウジング内に少なくとも内気が導入されるときには、少なくとも前記第2空間(16B)に内気が導入されるものにおいて、
前記フィルタ(50)の前記空気流入面(51)を上方から見て、前記フィルタ挿入口(15)から遠い側を前、前記フィルタ挿入口に近い側を後と呼ぶこととしたときに、前記第1領域(51A)は、前記フィルタの前記空気流入面の前端縁(58)から後端縁(53)まで連続的に延び、前記第2領域(51B)はその前端(55)から前記後端縁(53)まで連続的に延びていることを特徴とする、車両空調装置用の送風装置。
【請求項2】
前記第2領域の前端(55)は前記フィルタ(50)の前記空気流入面(51)の前端縁(58)よりも後方に位置し、前記フィルタ挿入口(15)から前を見たときの左側を左、前記フィルタ挿入口から前を見たときの右側を右と呼ぶこととしたときに、前記第2領域(51B)の後端は前記フィルタ(50)の前記空気流入面(51)の後端縁(53)の左右方向に関して中央部分(53C)に位置し、前記第1領域(51A)は、前記フィルタの流入面の前端縁(58)の全域から後方に延び、2つに分岐して前記第2領域(51B)の左側及び右側を後方に延びて、前記フィルタの空気流入面の後端縁(53)の左側部分(53L)及び右側部分(53R)で終端する、請求項1記載の送風装置。
【請求項3】
前記フィルタ(50)の前記空気流入面(51)を上方から見て、前記第2領域(51B)の前端部(54)は前記前端(55)に近づくに従って左右方向幅(W1)が狭くなっている、請求項2記載の送風装置。
【請求項4】
前記第2領域(51B)の前記前端部(54)の輪郭は、前記前端(55)の位置に頂点を有し、前記頂点から左後方に延びる左部分(56L)と、前記頂点から右後方に延びる右部分(56R)とを有する、請求項3記載の送風装置。
【請求項5】
前記分離壁(20)は、前記第1空間(16A)と前記第2空間(16B)とを連通させる連通口(21)を有し、前記第2切替ドア(19)は前記連通口を開閉するために設けられている、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の送風装置。
【請求項6】
前記連通口(21)の左右方向幅(W2)は、前記フィルタ(50)の前記空気流入面(51)から遠くなるに従って大きくなる、請求項5に記載の送風装置。
【請求項7】
前記空気取入ハウジング(10)は、前記少なくとも一つの内気導入口として第1内気導入口(12)及び第2内気導入口(13)を有しており、前記外気導入口(11)及び前記第1内気導入口が前記第1空間(16A)に開口しており、前記第2内気導入口が前記第2空間(16B)に開口しており、前記第1切替ドア(18)が、前記外気導入口及び前記第1内気導入口の一方を開放し他方を閉鎖するように設けられ、前記第2切替ドア(19)が、前記連通口(21)及び前記第2内気導入口の一方を開放し他方を閉鎖するように設けられている、請求項5または6に記載の送風装置。
【請求項8】
第1切替ドア(18)はロータリードアであり、前記第2切替ドア(19)が片持ちドアである、請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両空調装置用の送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内外気二層流モード(以下、簡便のため単に「二層流モード」と呼ぶ)に対応可能な車両用空調装置が知られている(例えば特許文献1を参照)。この車両用空調装置は、送風装置と、空気調和(加熱、冷却、除湿等)のための熱交換器を有する熱交換部と、熱交換部で調和された空気を車室内に分配する複数の吹出口を有する配風部と、を備えている。空調装置が二層流モードで運転されているときには、送風装置から別々に送り出された内気及び外気が、熱交換部に設けられた上側通路及び下側通路をそれぞれ通って配風部に送られ、車室内に吹き出される。
【0003】
送風装置は、少なくとも1つのドアにより開閉可能な外気導入口及び内気導入口を備えた空気取入ハウジングを備えている。空気取入ハウジング内に取り込まれた空気を濾過するため、空気取入ハウジング内にフィルタが設けられている。二層流モード時には、外気導入口から取り込まれた外気は、フィルタを通過した後に、スクロールハウジングの吸気口を介してスクロールハウジング内に挿入された分離筒の外側を通ってスクロールハウジング内に導入され、羽根車の上半部を通って、上側通路に向けて吐出される。内気導入口から取り込まれた内気は、フィルタを通過した後に、分離筒の内側を通ってスクロールハウジング内に導入され、羽根車の下半部を通って、下側通路に向けて吐出される。空気取入ハウジング内のフィルタより上流側の空間は、二層流モード時に、フィルタの上流側で外気と内気とが混合することを防止するために、分離壁によって、二層流モード時に外気が通過する部分と内気が通過する部分とに分割されている。フィルタの下面である空気流出面には分離筒の上端が近接し、フィルタの上面である空気流入面には分離壁の下端が近接している。
【0004】
空気取入ハウジング内に、外気と一緒に枯れ葉などの大ダストが入り、フィルタの上面に乗ることがある(特許文献2を参照)。汚れた古いフィルタを新しいフィルタと交換するために空気取入ハウジングのスロットから引き抜くときに、フィルタの上面上の大ダストが分離壁の下端に引っ掛かることにより、フィルタ上に留まらずに、フィルタの下方に、例えばスクロールハウジング内に落下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−505397号公報
【特許文献2】特開2015−217750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、二層流モードに対応可能な車両用空調装置の送風装置において、フィルタを空気取入ハウジングから取り外すときにフィルタの上面上に乗っているダスト、例えば木の葉のような大きなダストが、フィルタから落下する可能性を低下させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、外気を取り込むための外気導入口と、内気を取り込むための少なくとも一つの内気導入口と、外気導入口及び内気導入口の一方または両方から取り込まれた空気が通過するフィルタを、その空気流入面が上を向くように支持するフィルタ支持部と、フィルタ支持部にフィルタを挿入するためのフィルタ挿入口とを有する空気取入ハウジングと、フィルタを通過した空気を吸い込むための吸込口を有するスクロールハウジングと、スクロールハウジング内に収容され、回転軸線周りに回転駆動される羽根車と、空気取入ハウジングの内部空間のうちのフィルタの空気流入面よりも上方の空間を、第1空間と第2空間とに区画するとともに、空気流入面を、第1空間に面した第1領域と第2空間に面した第2領域とに区画する下端を有する分離壁と、第1空間に導入する空気を内気または外気のいずれとするかの選択、及び第2空間に導入する空気を内気または外気のいずれとするかの選択を行うために空気取入ハウジングに設けられた、少なくとも第1切替ドア及び第2切替ドアを含む複数の切替ドアと、吸込口を介してスクロールハウジング内に挿入された分離筒であって、下流端が羽根車の翼列の内側に位置するとともに、上流端がフィルタの下向きの空気流出面の近傍に開口し、フィルタの第1領域を通過した空気が分離筒の外側を通って羽根車の翼列の第1回転軸線方向部分に流入し、かつ、フィルタの第2領域を通過した空気が分離筒の内側を通って羽根車の翼列の第2回転軸線方向部分に流入するように設けられた分離筒と、を備え、空気取入ハウジング内に少なくとも外気が導入されるときには、少なくとも第1空間に外気が導入され、空気取入ハウジング内に少なくとも内気が導入されるときには、少なくとも第2空間に内気が導入される車両空調装置用の送風装置が提供される。この送風装置は、フィルタの空気流入面を上方から見て、フィルタ挿入口から遠い側を前、フィルタ挿入口に近い側を後と呼ぶこととしたときに、第1領域は、フィルタの空気流入面の前端縁から後端縁まで連続的に延び、第2領域はその前端から後端縁まで連続的に延びていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明の一実施形態によれば、第1領域及び第2領域がともにフィルタの空気流入面の後端縁まで連続的に延びているため、フィルタの空気流入面上に乗っている木の葉のような大ダストがフィルタを引き抜くときに分離壁の下端部に接触したとしても、フィルタの空気流入面上から落下する可能性を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両空調装置用の送風装置を前後方向に延びる鉛直平面で切断することにより得た概略子午断面図である。
図2図1の送風装置のフィルタより上方の構成を示す概略斜視図である。
図3】分離壁を前方から見た正面図である。
図4】フィルタの空気流入面上の第1領域及び第2領域について説明する平面図である。
図5A】分離壁と大ダストとの接触について説明する説明図である。
図5B】分離壁と大ダストとの接触について説明する説明図である。
図5C】分離壁と大ダストとの接触について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して本発明の車両空調装置の送風装置の実施形態について説明する。各図では、Rが車両の右方、Lが車両の左方、Frが車両の前方、Rrが車両の後方、Uが車両の上方、Dが車両の下方をそれぞれ意味している。送風装置は図示された向きで車両に設置される場合が多いが、送風装置の設置方向は図示例に限定されるものではなく、例えば図示方向に対して多少傾斜していてもよい(但し、フィルタの空気流入面が上を向いている場合に限る。)
【0011】
送風装置は、外気を取り込むための外気導入口11と、内気を取り込むための少なくとも一つの内気導入口(図示例では第1内気導入口12及び第2内気導入口13)とを有する空気取入ハウジング10を有している。
【0012】
空気取入ハウジング10には、外気導入口11、第1内気導入口12及び第2内気導入口13のうちの2つから導入された内気及び/又は外気が通過するフィルタ50を、その空気流入面51が上を向くように支持するフィルタ支持部14が設けられている。フィルタ支持部14は、例えばフィルタ50を前後方向にスライド可能に支持するスロットとして形成することができる。また、空気取入ハウジング10の後部の外壁には、フィルタ支持部14に対応する位置に、フィルタ挿入口15が形成されている。
【0013】
空気取入ハウジング10の内部空間のうちのフィルタ50の空気流入面51より上方の空間は、分離壁20によって、前側の第1空間16Aと後側の第2空間16Bとに区画されている。外気導入口11及び第1内気導入口12が第1空間16Aに開口しており、第2内気導入口13が第2空間16Bに開口している。分離壁20には、第1空間16Aと第2空間16Bとを連通させる連通口21が設けられている。
【0014】
空気取入ハウジング10内には、少なくとも1つのドア(切替ドア)が、特に図示された実施形態では第1切替ドア18及び第2切替ドア19が設けられている。第1切替ドア18は、外気導入口11及び第1内気導入口12の一方を開放し他方を閉鎖することができる。第2切替ドア19は、連通口21及び第2内気導入口13の一方を開放し他方を閉鎖することができる。
【0015】
第1切替ドア18はロータリードアとして構成され、第2切替ドア19は片持ちドア(cantilever door)として構成されている。用語「ロータリードア」は、回転軸(18s)から離れた湾曲した壁体(空気導入口の開閉に関与する壁面)を有するドアを意味する。用語「片持ちドア」は、回転軸(19s)から一方向に延びる、空気導入口の開閉に関与する一つの壁体を備えたドアを意味する。
【0016】
フィルタ支持部14により適正な位置に支持されたフィルタ50の空気流入面51は、分離壁20の下端23により、第1空間16Aに面した第1領域51Aと、第2空間16Bに面した第2領域51Bとに区画されている。つまり、第1領域51A及び第2領域51Bは、フィルタ支持部14により適正な位置に支持されたフィルタ50と、分離壁20の下端部との位置関係によって定義される。
【0017】
空気取入ハウジング10の下部には、送風機、図示された実施形態では片吸込式の遠心送風機のケーシングとしてのスクロールハウジング30が設けられている。スクロールハウジング30の少なくとも一部が、空気取入ハウジング10の少なくとも一部と一体成形されていてもよい。
【0018】
スクロールハウジング30の上面中央部にはベルマウスとも呼ばれる吸込口31が設けられている。この吸込口31を介して、フィルタ50を通過した空気がスクロールハウジング30内に吸い込まれる。
【0019】
スクロールハウジング30の内部空間の中央部には、羽根車40が収容されている。羽根車40は、電動モータ45により、鉛直方向に延びる回転軸線Ax周りに回転駆動される。羽根車40は、回転軸線Axを中心とする円周方向に並んだ複数の翼からなる翼列41を有している。
【0020】
スクロールハウジング30の外周壁からスクロールハウジング30の中心部に向けて突出する仕切壁33がスクロールハウジング30のほぼ全周にわたって設けられている。この仕切壁33により、スクロールハウジング30の内部空間のうちの羽根車40の半径方向外側の領域が上下に分割され、上側の第1空気流路32Aと下側の第2空気流路32Bとが形成されている。
【0021】
仕切壁33は、スクロールハウジング30の吐出口(これは図1の断面には現れない)まで連続的に延びている。すなわち、上側の第1空気流路32A及び下側の第2空気流路32Bは、仕切壁33により上下に隔離されたまま、図1の紙面に垂直な方向に開口する図示されない吐出口まで延びている。
【0022】
図示はしないが、当業者にとって周知の通り、スクロールハウジング30の上側の第1空気流路32A及び下側の第2空気流路32は、車両用空調装置の熱交換部に設けられた上側空気通路及び下側空気通路に流入し、そこで熱交換器を通過することにより調和され、その後、配風部に流入し、所定の吹出口(デフロスタ吹出口、ベント吹出口、フット吹出口等)から車室内に吹き出される。
【0023】
スクロールハウジング30内には、吸込口31を介して分離筒60が挿入されている。分離筒60の下流端61は、羽根車40の翼列41の半径方向内側に位置する。分離筒60の上流端62は、フィルタ50の下向きの空気流出面52の近傍に開口している。分離筒60の少なくとも一部が、空気取入ハウジング10及び/又はスクロールハウジング30の少なくとも一部と一体成形されていてもよい。
【0024】
フィルタ50の空気流入面51の上方からフィルタ50を見たときに、分離筒60の上流端62の輪郭は、フィルタ50の空気流入面51上に規定された第2領域51Bの輪郭(これは分離壁20の下端23の輪郭でもある)に概ね一致している。
【0025】
従って、フィルタ50の第2領域51Bを通過した空気は、分離筒60の内側を通ってスクロールハウジング30内に流入し、次いで、羽根車40の翼列の下側の第2回転軸線方向部分41Bに流入し、次いで、下側の第2空気流路32Bに流入し、最後に、図示しない吐出口を介してスクロールハウジング30から吐出される。空気が分離筒60の下部近傍を通過するときに、羽根車40の一部を成すコーン部42の上面と分離筒60の下部の内面により、回転軸線Ax方向の下方に向けて流れてきた空気が、半径方向外向きに転向される。
【0026】
一方、フィルタ50の第1領域51Aを通過した空気は、分離筒60の外側を通ってスクロールハウジング30内に流入し、次いで、羽根車40の翼列の上側の第1回転軸線方向部分41Aに流入し、次いで、上側の第1空気流路32Aに流入し、最後に、図示しない吐出口を介してスクロールハウジング30から吐出される。空気が分離筒60の下部近傍を通過するときに、分離筒60の下部の外面により、回転軸線Ax方向の下方に向けて流れてきた空気が、半径方向外向きに転向される。
【0027】
空調装置すなわち送風装置が二層流モードで運転されるときには、第1切替ドア18が外気導入口11を開放するとともに第1内気導入口12を閉鎖し、第2切替ドア19が分離壁20の連通口21を閉鎖するとともに第2内気導入口13を開放する。従って、外気がフィルタ50の第1領域51Aを通過し、内気がフィルタ50の第2領域51Bを通過する。
【0028】
送風装置が外気モードで運転されるときには、第1切替ドア18が外気導入口11を開放するとともに第1内気導入口12を閉鎖し、第2切替ドア19が分離壁20の連通口21を開放するとともに第2内気導入口13を閉鎖する。従って、外気がフィルタ50の第1領域51A及び第2領域51Bを通過する。
【0029】
送風装置が内気モードで運転されるときには、第1切替ドア18が外気導入口11を閉鎖するとともに第1内気導入口12を開放し、第2切替ドア19が分離壁20の連通口21を閉鎖するとともに第2内気導入口13を開放する。従って、内気がフィルタ50の第1領域51A及び第2領域51Bを通過する。
【0030】
なお、外気モード時には、外気は一旦第1空間に16Aに入った後に分離壁20の連通口21を通って第2空間16Bに入る。このとき、連通口21の開口面積が小さいと、通気抵抗が大きくなり、第2空間16B、第2領域51B、及び分離筒60の外側を通ってスクロールハウジング30内に流入する外気の流量が小さくなってしまう。一方で、後に詳述するように、フィルタ50を引き抜くときに空気流入面51上からの大ダストの落下を防止するために、分離壁20の下端23により規定される第2領域51Bの幅(左右方向幅)を大きくすることは困難であるので、連通口21の下端部の左右方向幅も大きくすることが困難である。この下端部寸法の制約下で、連通口21の開口面積を大きくするため、連通口21の左右方向幅W2を、下端部において比較的小さくし、上にゆくほど大きくしている。そうすることにより、第2領域51Bの左右方向幅を大きくすることなく連通口21の開口面積を大きくすることができる。
【0031】
送風装置が二層流モード及び外気モードで運転されるときには、空気取入ハウジング10内に外気と一緒に木の葉等の比較的大きなサイズのダスト(以下、「大ダスト」と呼ぶ)が取り込まれる可能性がある。大ダストは、フィルタ50の空気流入面51上に乗る(捕捉される)。大ダストは、第1領域51A及び第2領域51Bのいずれにも存在し得る。
【0032】
次に、フィルタ50の空気流入面51における第1領域51A及び第2領域51Bの設定について説明する。第1領域51A及び第2領域51Bの定義から明らかなように、第1領域51Aと第2領域51Bとの境界線51C(これは、第2領域51Bの「輪郭線51C」とも呼ばれる。)は、フィルタ支持部14により適正な位置に支持されたフィルタ50の空気流入面51に近接する分離壁20の下端23の形状と概ね一致する。
【0033】
フィルタ50がフィルタ挿入口15を通ってフィルタ支持部14から引き抜かれるときには、フィルタ50は後向き(Rr方向)に移動する。従って、図5Aに示す大ダストL0のように、その大ダストから後方(つまりフィルタ50の引き抜き方向であるRr方向)に向けて引いた直線が境界線51Cと接触または交差することなく空気流入面51の後端縁53に到達するのであれば、その大ダストは、フィルタ50がフィルタ支持部14から完全に引き抜かれるまでの間、分離壁20の下端23と接触することはない。従って、空気流入面51上においてこのような位置にある大ダストは、フィルタ50の引き抜きが完了するまでの間、フィルタ50の空気流入面51上に乗ったままとなり、フィルタ50から落下することはない。
【0034】
例えば図5Aに示す大ダストL1及び図5Bに示す大ダストL2のように、その大ダストから後方に向けて引いた直線が境界線51Cと接触または交差するのであれば、その大ダストは、フィルタ50がフィルタ支持部14から完全に引き抜かれるまでの間に分離壁20の下端23(あるいはその近傍)と接触する。空気流入面51上においてこのような位置にある大ダストが、フィルタ50の引き抜きが完了するまでの間にフィルタ50の空気流入面51上に留まり続けられるか否かは、主に、大ダストと分離壁20の下端23との接触角(θ)に依存する(接触角(θ)のみに依存するわけではない)。
【0035】
ここで、接触角(θ)とは、大ダストからフィルタ50の引き抜き方向に向けて引いた直線と分離壁20の下端23(あるいは境界線51C)とが交わる位置において、当該直線と当該下端23(あるいは境界線51C)とが成す角度を意味する。
【0036】
図5Aに示すように、比較的小さい接触角(θ1)の場合、フィルタ50を引き抜く過程で分離壁20の下端23に大ダストL1が衝突したとしても、分離壁20の下端23に押されることにより大ダストL1はフィルタ50の空気流入面51上を左右方向(図5Aでは右方向)にずれてゆき、分離壁20の下端23に引っ掛かること(つまり、分離壁20の下端23に捕捉されてしまうこと)はない。つまり、大ダストL1は、フィルタ50の引き抜きが完了するまでの間、フィルタ50の空気流入面51上に乗ったままとなり、フィルタ50から落下することはない。なお、この場合、勿論のこと、大ダストL1がずれてゆく側にある第1領域51Aは、大ダストL1が存在している位置から空気流入面51の後端縁53まで連続的に延びていなければならない。
【0037】
図5Bに示すように、比較的大きい接触角(θ2)の場合、フィルタ50を引き抜く過程で分離壁20の下端23に大ダストL2が衝突すると、大ダストL2がフィルタ50上で左右方向に移動することができないか、移動できたとしても移動量が小さい。つまり、大ダストL2は、フィルタ50の引き抜きが完了するまでの間、ずっと分離壁20の下端23に引っ掛かったままフィルタ50の空気流入面51上を空気流入面51に対して相対的に前方にずれてゆき、最終的にフィルタ50から落下する。
【0038】
上記のことから明らかなように、接触角(θ)は小さい程好ましい。接触角(θ)は、フィルタ50の引き抜き方向に対して15度以下が好ましく、10度以下がより好ましい。しかしながら、空気取入ハウジング10の前側に外気導入口11を配置するとともに後側に内気導入口12,13を配置した構成では、第2領域51Bを第1領域51Aよりも後方に位置させること(第2領域51Bの前端よりも第1領域51Aの前端が前に位置していること)が、空気取入ハウジング10内の円滑な空気の流れを実現する上で好ましい。この配置を採用する場合は、第2領域51Bの前端付近において接触角(θ)が大きくなる傾向がある。このことを踏まえた上で、図4に示した第1領域51A及び第2領域51Bの配置及び形状について説明する。
【0039】
図4に示した配置においては、フィルタ50の空気流入面51を上方から見て、第1領域51Aは、フィルタ50の空気流入面51の前端縁58から後端縁53まで連続的に延びており、かつ、第2領域51Bも、第2領域51Bの前端55から空気流入面51の後端縁53まで連続的に延びている(以下、簡便のため、この配置条件を、「条件1」とも呼ぶ)。この条件1を満足するとき、大ダストがフィルタ50の空気流入面51上のどの位置にあろうが、「フィルタ50の引き抜きが完了するまでの間、大ダストがフィルタ50の空気流入面51上に乗ったままとなり、送風装置から排出される確率」(この確率を、以下、簡便のため「残留確率」と呼ぶ)は少なくともゼロではなくなる。残留確率は、大きいほど好ましい。そして、条件1以外の条件、例えば接触角(θ)の分布を適切に設定すれば、空気流入面51上の任意の位置に存在する大ダストの残留確率を100%に近づけてゆくことが可能となる。
【0040】
一方、条件1を満たさない典型的な例として、境界線51Cが、図4中の点を通り、空気流入面51の左端縁59Lから右端縁59Rまで連続的に延びている場合が考えられる(この場合、境界線51Cよりも前方の領域が第1領域51A、後方の領域が第2領域51Bとなる。)。この場合、第1領域51A内の全ての位置にある大ダストの残留確率はゼロである。
【0041】
より詳細に述べると、図4に示した実施形態においては、第2領域51Bの前端55はフィルタ50の空気流入面51の前端縁58よりも後方に位置し、第2領域51Bの後端は前記フィルタ50の空気流入面51の後端縁53の左右方向に関して中央部分53Cに位置している。一方、第1領域51Aは、フィルタ50の空気流入面51の前端縁58の全域から後方に延び、2つに分岐して第2領域51Bの左側及び右側を後方に延びて、フィルタ50の空気流入面51の後端縁53の左側部分53L及び右側部分53Rで終端している。
【0042】
図4に示す実施形態では、第2領域51Bは、概ね半円形の輪郭(これは境界線51Cの一部をなす)を有する前端部54(この部分は、図2に示した概ね舌片の形状を有する分離壁20の前端部22に対応している。)と、それより後方の後部57とを有する。
【0043】
後部57の輪郭は、前後方向(フィルタ引き抜き方向)に沿って延びる2つの直線57L,57R(これらも各々が境界線51Cの一部をなす)から構成されている。従って、第2領域51B内のどの位置に大ダストが存在していても、その大ダストから後方に引いた直線が境界線51Cと交差することはないため、その大ダストの残留確率(残留確率1)はほぼ100%である。また、同様の理由により、フィルタ50の引き抜き開始前に第1領域51Aのうちの第2領域51Bの前方の領域以外の領域内に存在する大ダストの残留確率(残留確率2)はほぼ100%である。
【0044】
後部57の輪郭をなす2つの直線57L,57Rは、厳密に(製造誤差は許容される)前後方向(座標上のFr−Rr方向)に延びていることが好ましく、そうすることにより、上記の残留確率1及び残留確率2の両方をほぼ100%とすることができる。しかしながら、直線57L,57Rは前後方向に対して小さな角度(前述した接触角(θ)に対応)を成していても構わない。
【0045】
後部57の輪郭を上記のように設定することにより、フィルタ50の空気流入面51上にある大ダストの残留確率に実質的に影響を及ぼすのは、第2領域51B(境界線51C)の前端部54の形状、つまり、分離壁20の下端23(下端23付近も含む)の形状となる。つまり、フィルタ50の引き抜き開始前に第1領域51Aのうちの第2領域51Bの前方の領域内に存在する大ダストから後方に引いた直線だけが、境界線51C(特に半円形の前端部54に対応する部分)と交差するからである。
【0046】
図4に示す実施形態では、前述した接触角(θ)は第2領域51B(境界線51C)の前端部54の前端55において最大値をとり、約90度である。接触角(θ)が大きい部分の長さが長いと、その部分で大ダストが分離壁20の下端23に引っ掛かりそこに留まり易くなる。
【0047】
しかし、図4に示す実施形態では、第2領域51Bの前端部54の輪郭(境界線51Cの形状)を半円形にすることにより、大ダストが分離壁20の下端23のうちの接触角θが大きい部分に対応する部位に接触したとしても、大ダストは、フィルタ50が引き抜かれてゆくに従って、分離壁20の下端23に沿って左方または右方に向けて移動し、第2領域51Bの後部57の左方または右方に到達する。このため、当該大ダストの残留確率は100%に近い高い値となる。大ダストが、分離壁20の下端23のうちの第2領域51Bの前端55に対応する部位に引っ掛かったままとなる可能性はゼロではないが、非常に低い。
【0048】
第2領域51Bの前端部54の輪郭(前端部54における境界線51Cの輪郭)の形状は図4に示したものに限定されるものではない。例えば、前端55の位置に頂点を有し、当該頂点から左後方に延びる左部分56Lと、前記頂点から右後方に延びる右部分56Rとを有する任意の輪郭とすることができる。前端部54の輪郭としては、図示したような円弧形、楕円弧形、サインカーブの一部、二次曲線の一部、直線等が例示される。左部分56Lと右部分56Rとで形状が異なっていてよい。左部分56L及び右部分56Rの接線がフィルタ引き抜き方向と成す角度(この角度は先に定義した接触角(θ)に対応する)が後方にゆくに従って小さくなるように、左部分56L及び右部分56Rの形状を決定することも好ましい。第2領域51Bの前端部54の左右方向幅W1は、前端55に近づくに従って小さくなっていることも好ましい。第2領域51Bの前端部54は、左右対称であることが好ましいが、必ずしも左右対称でなくてもよい。
【0049】
なお、図示された実施形態においては、特に図1及び図2から良くわかるように、分離壁20の前端部22は、その上面が後方にゆくに従って高くなる舌片形であるが、これには限定されない。例えば、分離壁20の前端部22の左右方向中央部を最も高くして、この最高高さの部分(稜)から左方及び右方にゆくに従って低くなるように、分離壁20の前端部22の上面に傾斜を設けてもよい。また例えば、分離壁20の前端部22を、ラッセル車で用いられる排雪板のような構成(具体的には例えば、2つの板状部材を稜線に沿って接続し、各板状部材が左方(右方)にゆくに従って低くなり、かつ前方にゆくに従って低くなるようにした構成)としてもよい。大ダストは分離壁20の前端部22に乗り上げる可能性があるが、上記のような構成を採用することにより、前端部22に大ダストが一時的に乗り上げたとしても、当該大ダストは傾斜に沿ってフィルタ50上に落下する。
【0050】
図5Cに示すように、第1領域51Aを後側で分岐させずに、第1領域51A及び第2領域51Bを配置してもよい。この場合も前述した条件1に該当しており、接触角θを十分に小さく設定することにより、大ダストL3の残留確率を十分に高くすることができる。但し、図5Cの配置を採用する場合には、外気導入口を右側、内気導入口を左側に設置した方が、空気取入ハウジング10内の空気の流れはスムースになる。つまり、図5Cの配置は、外気導入口を前側、内気導入口を後側に設置した図1に示す実施形態に適用するよりもむしろ、外気導入口を右側、内気導入口を左側に設置した実施形態に適用した方が好ましい。そして、詳述はしないが、第1切替ドア18と第2切替ドア19は図1に示すような前後方向では無く左右方向に開閉し、連通口21も左右方向に開口するよう構成される。
【符号の説明】
【0051】
10 空気取入ハウジング
11 外気導入口
12,13 内気導入口
14 フィルタ支持部
15 フィルタ挿入口
16A 第1空間
16B 第2空間
18 第1切替ドア
19 第2切替ドア
20 分離壁
21 連通口
W2 左右方向幅
30 スクロールハウジング
31 吸込口
Ax 回転軸線
40 羽根車
41 翼列
41A 第1回転軸線方向部分
41B 第2回転軸線方向部分
50 フィルタ
51 空気流入面
51A 第1領域
51B 第2領域
52 空気流出面
53 後端縁
53C 中央部分
53L 左側部分
53R 右側部分
54 前端部
W1 左右方向幅
55 前端
56L 左部分
56R 右部分
58 前端縁
60 分離筒
61 下流端
62 上流端
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C