(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態による建設機械としてハイブリッド式の油圧ショベルを例に挙げて、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1および
図2は、第1の実施の形態によるハイブリッド式の油圧ショベル1を示している。
図1に示すように、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に設けられ掘削作業等を行う多関節構造の作業装置5とを備えている。下部走行体2および上部旋回体4は、油圧ショベル1の車体を構成している。下部走行体2は、走行動作を行うための油圧モータ2Aを備えている。旋回装置3は、旋回動作を行うための油圧モータ3Aを備えている。なお、下部走行体2としてクローラ式を例示したが、ホイール式でもよい。
【0014】
作業装置5は、フロントアクチュエータ機構である。作業装置5は、例えばブーム5A、アーム5B、バケット5Cと、これらを駆動するブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fとによって構成されている。作業装置5は、上部旋回体4の旋回フレーム6に取付けられている。作業装置5は、油圧ポンプ8が送出する作動油により駆動される。なお、作業装置5は、バケット5Cを備えたものに限らず、例えばグラップル等を備えたものでもよい。
【0015】
上部旋回体4は、例えばディーゼルエンジンのような内燃機関であるエンジン7と、エンジン7によって駆動される油圧ポンプ8(メインポンプ)とを備えている。また、エンジン7には、アシスト発電モータ10が機械的に接続されている。このため、油圧ポンプ8は、アシスト発電モータ10によっても駆動される。油圧ポンプ8は、作動油を送出する。この作動油によって、下部走行体2と、上部旋回体4と、作業装置5とがそれぞれ独立して動作する。
【0016】
具体的には、下部走行体2は、走行用の油圧モータ2Aに油圧ポンプ8から作動油が供給されることによって、一対のクローラ2B(
図1は片側のみ図示)を駆動する。上部旋回体4は、旋回用の油圧モータ3Aに油圧ポンプ8から作動油が供給されることによって、旋回装置3を駆動する。また、シリンダ5D〜5Fは、油圧ポンプ8から供給される作動油によって、伸長または縮小する。これにより、作業装置5は、俯仰の動作を行い、例えば掘削、整地の作業を行う。また、上部旋回体4は、キャブ9を備えている。オペレータは、キャブ9に搭乗して、油圧ショベル1を操作する。
【0017】
次に、油圧ショベル1の電動系の駆動システムについて、
図2を参照して説明する。
図2において、アシスト発電モータ10は、エンジン7に機械的に結合されている。アシスト発電モータ10およびエンジン7は、油圧発生機である油圧ポンプ8を駆動する。このため、アシスト発電モータ10は、油圧ポンプ8を駆動する電動機を構成している。油圧ポンプ8から送出される作動油は、オペレータによる操作に基づいて、コントロールバルブ11で分配される。これにより、ブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5F、走行用の油圧モータ2A、および旋回用の油圧モータ3Aは、油圧ポンプ8から供給される作動油によって駆動する。
【0018】
アシスト発電モータ10は、エンジン7を動力源に発電機として働きバッテリモジュール21への電力供給を行う発電と、バッテリモジュール21からの電力を動力源にモータとして働きエンジン7および油圧ポンプ8の駆動をアシストする力行との2通りの役割を果たす。従って、アシスト発電モータ10がモータとして駆動するときは、アシスト発電モータ10は、バッテリモジュール21の電力により駆動される。
【0019】
アシスト発電モータ10は、電力変換器となる第1のインバータ12を介して、正極側と負極側とで一対の直流母線13A,13B(DCケーブル)に接続されている。第1のインバータ12は、例えばトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のようなスイッチング素子を複数用いて構成されている。第1のインバータ12は、アシスト発電モータ10を制御する。
【0020】
アシスト発電モータ10の発電時には、第1のインバータ12は、アシスト発電モータ10からの交流電力を直流電力に変換してバッテリモジュール21に供給する。アシスト発電モータ10の力行時には、第1のインバータ12は、直流母線13A,13Bの直流電力を交流電力に変換してアシスト発電モータ10に供給する。
【0021】
旋回電動モータ14は、アシスト発電モータ10またはバッテリモジュール21からの電力によって駆動される。旋回電動モータ14は、例えば三相誘導電動機によって構成され、油圧モータ3Aと共に上部旋回体4に設けられている。旋回電動モータ14は、油圧モータ3Aと協働して旋回装置3を駆動する。
【0022】
旋回電動モータ14は、第2のインバータ15を介して直流母線13A,13Bに接続されている。旋回電動モータ14は、バッテリモジュール21やアシスト発電モータ10からの電力を受けて駆動する力行と、旋回制動時の余分なトルクで発電してバッテリモジュール21を蓄電する回生との2通りの役割を果たす。第2のインバータ15は、第1のインバータ12と同様に、スイッチング素子を複数用いて構成されている。第2のインバータ15は、旋回電動モータ14を制御する。
【0023】
キースイッチ16は、アシスト発電モータ10を駆動させる駆動位置(ON)とアシスト発電モータ10を停止させる停止位置(OFF)とを有している。キースイッチ16は、ONとなったときに、車体の起動信号を車体コントローラ17とバッテリユニット20に通知する。キースイッチ16は、OFFとなったときに、起動信号の出力を停止する。
【0024】
車体コントローラ17は、第1のインバータ12と第2のインバータ15とにトルク指令を出力する。通常動作の場合は、バッテリモジュール21を充電または放電させるために、車体コントローラ17は、バッテリユニット20のバッテリコントローラ22(充放電制御部23)に充放電指令を出力する。一方、例えばバッテリユニット20を廃棄する場合には、バッテリモジュール21を完全に放電させるために、車体コントローラ17は、バッテリユニット20のバッテリコントローラ22(充放電制御部23)に放電指令を出力する。
【0025】
車体コントローラ17は、バッテリユニット20の状態をモニタ18に表示させる。アシスト発電モータ10は、第1のインバータ12を介してバッテリモジュール21に接続されている。アシスト発電モータ10は、車体コントローラ17の出力するトルク指令に従って、油圧ポンプ8のアシスト、およびバッテリモジュール21への充電を行う。旋回電動モータ14は、第2のインバータ15を介してバッテリモジュール21に接続されている。旋回電動モータ14は、車体コントローラ17の出力するトルク指令に従って、上部旋回体4の旋回動作時に油圧モータ3Aのアシスト、および回生制動によるバッテリモジュール21への充電を行う。
【0026】
次に、バッテリユニット20の具体的な構成について、
図2を参照して説明する。バッテリユニット20は、バッテリモジュール21と、バッテリコントローラ22とを備えている。
【0027】
バッテリモジュール21は、第1のインバータ12に接続され、電力の充電および放電を行う蓄電装置を構成している。バッテリモジュール21は、リチウムイオン二次電池からなるセル(図示せず)を複数備えている。バッテリモジュール21は、複数のセルが互いに直列接続された組電池によって構成されている。バッテリモジュール21の正極側の端子は、正極側の直流母線13Aに接続されている。バッテリモジュール21の負極側の端子は、負極側の直流母線13Bに接続されている。バッテリモジュール21は、アシスト発電モータ10から供給される電荷によって充電される。バッテリモジュール21は、アシスト発電モータ10および旋回電動モータ14に電荷を供給して放電する。バッテリモジュール21の充電および放電に関する許可と禁止は、充放電制御部23によって制御されている。
【0028】
バッテリモジュール21の両端には、電圧検出器21Aが接続されている。電圧検出器21Aは、バッテリモジュール21の両端の電圧V(バッテリ電圧)を検出する。電圧検出器21Aは、電圧Vを充放電制御部23に出力する。
【0029】
バッテリコントローラ22は、車体コントローラ17からの充放電指令に基づいてバッテリモジュール21の充電および放電を制御する充放電制御部23と、バッテリモジュール21の放電情報を記憶する情報記憶部24と、を有している。
【0030】
バッテリコントローラ22は、通常動作モード、放電モード、充放電禁止モードの3つの動作モードを備えている。バッテリコントローラ22は、通常動作の場合は、通常動作モードになる。通常動作モードでは、バッテリコントローラ22は、充放電制御部23によってバッテリモジュール21の充電および放電を許可する。
【0031】
バッテリコントローラ22は、車体コントローラ17から放電指令を受信した場合は、放電モードになる。放電モードでは、バッテリコントローラ22は、充放電制御部23によって安全電圧までバッテリモジュール21を放電し、放電情報を情報記憶部24に記憶する。
【0032】
バッテリコントローラ22は、情報記憶部24から放電情報を読み出した場合は、充放電禁止モードになる。充放電禁止モードでは、バッテリコントローラ22は、充放電制御部23によってバッテリモジュール21の充電および放電を禁止する。
【0033】
充放電制御部23は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。充放電制御部23の入力部は、キースイッチ16、車体コントローラ17、バッテリモジュール21、電圧検出器21A、情報記憶部24に接続されている。充放電制御部23の出力部は、インバータ12,15、車体コントローラ17、バッテリモジュール21、情報記憶部24に接続されている。
【0034】
充放電制御部23は、
図3に示す動作モードの判定処理のプログラムを実行する。即ち、車体コントローラ17からの放電指令を受信しない場合は、充放電制御部23は、通常動作モード処理を実行する。この場合、充放電制御部23は、バッテリモジュール21の充電および放電を許可する。充放電制御部23は、車体コントローラ17からの充放電指令に基づいて、バッテリモジュール21の充電および放電を制御する。
【0035】
車体コントローラ17からの放電指令を受信した場合は、充放電制御部23は、放電モード処理を実行する。この場合、充放電制御部23は、
図4に示す放電モード処理のプログラムを実行する。このとき、充放電制御部23は、バッテリモジュール21の電荷を、放電させる。
【0036】
具体的には、充放電制御部23は、バッテリモジュール21の電荷を、例えば第1のインバータ12を介してアシスト発電モータ10に放電させる。なお、充放電制御部23は、バッテリモジュール21の電荷を、例えば第2のインバータ15を介して旋回電動モータ14に放電させてもよい。充放電制御部23は、バッテリモジュール21の電圧Vと、安全電圧となる規定値V1とを比較する。充放電制御部23は、電圧Vが規定値V1よりも大きい場合に、放電を継続する。充放電制御部23は、電圧Vが規定値V1以下の場合に、放電を停止する。このとき、充放電制御部23は、放電情報を情報記憶部24に記憶させる。これに加え、充放電制御部23は、放電情報を車体コントローラ17へ通知する。
【0037】
また、充放電制御部23は、油圧ショベル1の起動時には、
図5に示す起動処理のプログラムを実行する。即ち、充放電制御部23は、キースイッチ16からの起動信号を受信する。このとき、充放電制御部23は、情報記憶部24から放電情報を読み込む。情報記憶部24に放電情報が記憶されていた場合は、充放電制御部23は、充放電禁止モード処理を実行する。即ち、充放電制御部23は、バッテリモジュール21の充電および放電を禁止する。これに加え、充放電制御部23は、放電情報を車体コントローラ17に通知する。これにより、車体コントローラ17は、放電情報をモニタ18に表示させる。
【0038】
一方、情報記憶部24に放電情報が記憶されていない場合は、充放電制御部23は、通常モード処理を実行する。即ち、充放電制御部23は、バッテリモジュール21の充電および放電を許可する。充放電制御部23は、車体コントローラ17からの充放電指令に基づいて、通常通りバッテリモジュール21を充電または放電させる。
【0039】
情報記憶部24は、例えば不揮発性メモリによって構成されている。情報記憶部24は、充放電制御部23に接続されている。放電情報は、初期状態の情報記憶部24から削除されている。充放電制御部23が放電処理を完了すると、充放電制御部23は、情報記憶部24に放電情報を出力する。これにより、情報記憶部24は、放電処理が完了したときに、放電情報を記憶する。
【0040】
次に、動作モードの判定処理について、
図3を参照して説明する。動作モードの判定処理は、予め決められた制御周期で繰り返し実行される。
【0041】
ステップS1では、充放電制御部23は、車体コントローラ17からの放電指令を受信したか否かを判定する。充放電制御部23が放電指令を受信していない場合には、ステップS1で「NO」と判定し、ステップS2に移行する。ステップS2では、バッテリコントローラ22は、通常動作モードになり、バッテリモジュール21の充電および放電を許可する。これにより、充放電制御部23は、車体コントローラ17からの充放電指令に基づいてバッテリモジュール21の充電および放電を制御する。
【0042】
一方、充放電制御部23が放電指令を受信した場合には、ステップS1で「YES」と判定し、ステップS3に移行する。ステップS3では、バッテリコントローラ22は、通常動作モードから放電モードに切り替わる。このとき、バッテリコントローラ22は、
図4に示す放電モード処理を実行する。
【0043】
次に、バッテリコントローラ22による放電モード処理について、
図4を参照して説明する。
【0044】
まず、ステップS11では、充放電制御部23は、第1のインバータ12を制御して、バッテリモジュール21の電荷をアシスト発電モータ10に放電させる。このとき、バッテリモジュール21の電荷を旋回電動モータ14に放電させてもよい。
【0045】
続くステップS12では、充放電制御部23は、バッテリモジュール21の電圧Vと、安全電圧となる規定値V1とを比較する。このとき、規定値V1は、例えば作業者を感電させることがない電圧であり、予め実験的に決められている。電圧Vが規定値V1よりも大きい場合(V>V1)には、ステップS12で「NO」と判定し、ステップS11に戻って、バッテリモジュール21の放電を継続する。一方、電圧Vが規定値V1以下の場合(V≦V1)には、電圧Vが安全電圧まで低下したから、ステップS12で「YES」と判定し、ステップS13に移行する。ステップS13では、バッテリコントローラ22は、放電情報を情報記憶部24に記憶させる。これに加え、充放電制御部23は、放電情報を車体コントローラ17に通知する。
【0046】
次に、バッテリコントローラ22による起動処理について、
図5を参照して説明する。起動処理は、予め決められた制御周期で繰り返し実行される。
【0047】
まず、ステップS21では、充放電制御部23は、キースイッチ16から車体の起動信号を受信したか否かを判定する。充放電制御部23が起動信号を受信していない場合には、ステップS21で「NO」と判定し、そのままリターンする。
【0048】
一方、充放電制御部23が起動信号を受信した場合には、ステップS21で「YES」と判定し、ステップS22に移行する。ステップS22では、充放電制御部23は、情報記憶部24から放電情報を読み込む。このとき、充放電制御部23は、読み込んだ放電情報を、車体コントローラ17に通知する。
【0049】
続くステップS23では、情報記憶部24に放電情報が記憶されていたか否かを判定する。情報記憶部24に放電情報が記憶されていた場合は、ステップS23で「YES」と判定し、ステップS24に移行する。ステップS24では、バッテリコントローラ22は、充放電禁止モードになり、充放電制御部23によってバッテリモジュール21の充電および放電を禁止する。これにより、バッテリモジュール21の再充電が防止される。このとき、車体コントローラ17は、放電情報をモニタ18に表示させる。オペレータは、モニタ18を目視確認することによって、バッテリモジュール21の再充電が不可であることを把握することができる。
【0050】
一方、情報記憶部24に放電情報が記憶されていない場合は、ステップS23で「NO」と判定し、ステップS25に移行する。ステップS25では、バッテリコントローラ22は、通常動作モードになり、バッテリモジュール21の充電および放電を許可する。これにより、充放電制御部23は、車体コントローラ17からの充放電指令に基づいてバッテリモジュール21の充電および放電を制御する。
【0051】
本実施形態における充放電処理および起動処理の具体的な内容について、
図6を参照して説明する。
図6は、車体の起動信号、バッテリモジュール21の電圧V、放電情報、動作モードの時間変化を示している。
【0052】
バッテリコントローラ22は、通常動作の場合は、通常動作モードになる。即ち、放電指令を受信することがなく、かつ、情報記憶部24に放電情報が記憶されていない場合には、バッテリコントローラ22は、通常動作モードになる。
【0053】
充放電制御部23は、通常動作モードで稼働している時刻t11に、車体コントローラ17からの放電指令を受信する。この時点で、バッテリコントローラ22の動作モードは、通常動作モードから放電モードに切り替わる。これにより、充放電制御部23は、バッテリモジュール21の放電を開始する。バッテリモジュール21の電圧Vは、充放電制御部23による放電処理によって徐々に低下していく。時刻t12では、バッテリモジュール21の電圧Vが規定値V1以下になる。このとき、充放電制御部23は、放電情報を情報記憶部24に記憶して、放電処理を完了する。その後、キースイッチ16が操作されて、車体の起動信号がONからOFFに切り替わる。これにより、バッテリコントローラ22は、起動信号のOFFを判別した時刻t13で、放電モードを終了する。
【0054】
放電モードの終了後である時刻t14で、キースイッチ16をOFFからONに操作すると、再度車体が起動する。このとき、充放電制御部23は、キースイッチ16から起動信号を受信する。充放電制御部23は、起動信号を受信すると、情報記憶部24から放電情報を読み出す。このとき、情報記憶部24に放電情報が記憶されているから、バッテリコントローラ22は、充放電禁止モードになって、充放電制御部23によってバッテリモジュール21の充電および放電を禁止する。この結果、バッテリモジュール21に対する再充電が防止される。
【0055】
かくして、第1の実施の形態によれば、バッテリコントローラ22は、通常動作の場合は、通常動作モードとなって、充放電制御部23によってバッテリモジュール21の充電および放電を許可する。このとき、充放電制御部23は、車体コントローラ17からの充放電指令に基づいてバッテリモジュール21の充電および放電を制御する。これにより、例えばアシスト発電モータ10に力行動作や発電動作を実行させることができる。
【0056】
また、バッテリコントローラ22は、車体コントローラ17からバッテリモジュール21を完全に放電させるための放電指令を受信した場合は、放電モードとなって、充放電制御部23によって安全電圧までバッテリモジュール21を放電し、放電情報を情報記憶部24に記憶させる。これにより、バッテリモジュール21は、その電圧Vが低下して、廃棄可能な状態になる。これに加え、情報記憶部24に放電情報が記憶されるから、放電情報を読み出すことによって、バッテリモジュール21の放電状態を容易に確認することができる。
【0057】
バッテリコントローラ22は、情報記憶部24から放電情報を読み出した場合は、放電禁止モードとなって、充放電制御部23によってバッテリモジュール21の充電および放電を禁止する。このように、バッテリコントローラ22は、車体稼働時に放電情報の有無を確認することができる。このため、情報記憶部24に放電情報が記録されたバッテリモジュール21は、その再充電を防止することができる。
【0058】
また、バッテリモジュール21およびバッテリコントローラ22は、交換可能なバッテリユニット20を構成している。このため、バッテリモジュール21を廃棄するために、車体からバッテリユニット20を取り外した場合には、取り外されたバッテリユニット20にバッテリコントローラ22が付属されている。このとき、バッテリコントローラ22の情報記憶部24には、放電情報が記憶されている。このため、廃棄すべきバッテリモジュール21を備えたバッテリユニット20を誤って車体に取り付けた場合でも、車体を起動するときに、放電情報に基づいて、バッテリモジュール21の再充電を防止することができる。
【0059】
また、油圧ショベル1は、放電情報を表示するためのモニタ18を備えている。このため、オペレータは、モニタ18を目視確認することによって、バッテリモジュール21の充電および放電が禁止されていることを容易に把握することができる。
【0060】
次に、
図7および
図8を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態の特徴は、バッテリコントローラは、放電禁止モードでは、開閉器を用いてインバータとバッテリモジュールとの間を遮断することにある。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
第2の実施の形態による油圧ショベル31は、バッテリユニット32を備えている。バッテリユニット32は、第1の実施の形態によるバッテリユニット20と同様に、バッテリモジュール21と、バッテリコントローラ34とを備えている。これに加えて、バッテリユニット32は、第1のインバータ12とバッテリモジュール21との間を電気的に接続または遮断する開閉器33を備えている。
【0062】
開閉器33は、バッテリモジュール21と直流母線13A,13Bとの間に設けられている。開閉器33は、例えばリレーによって構成されている。開閉器33は、常時は遮断状態になっている。開閉器33は、充放電制御部35から励磁電流が供給されることによって、接続状態になる。即ち、開閉器33は、バッテリコントローラ34の充放電制御部35によって、接続状態と遮断状態が制御される。バッテリコントローラ34が通常動作モードまたは放電モードのときには、開閉器33は、接続状態になる。一方、バッテリコントローラ34が充放電禁止モードのときには、開閉器33は、遮断状態になる。なお、開閉器33は、リレーに限らず、充放電制御部35によって制御可能な各種のスイッチによって構成してもよい。
【0063】
バッテリコントローラ34は、第1の実施の形態によるバッテリコントローラ22と同様に、充放電制御部35と、情報記憶部24とを有している。充放電制御部35は、第1の実施の形態による充放電制御部23と同様に構成されている。但し、充放電制御部35は、開閉器33の接続状態と遮断状態を制御する。この点で、充放電制御部35は、第1の実施の形態による充放電制御部23とは異なっている。
【0064】
バッテリコントローラ34(充放電制御部35)は、第1の実施の形態によるバッテリコントローラ22と同様に、
図3に示す動作モードの判定処理、
図4に示す放電処理、
図5に示す起動処理を実行する。
【0065】
但し、バッテリコントローラ34は、
図5中のステップS24で、充放電禁止モードになった場合、充放電制御部35によって開閉器33を接続状態から遮断状態に切り替える。これにより、バッテリモジュール21の充電および放電が禁止され、バッテリモジュール21の再充電が防止される。このとき、車体コントローラ17は、放電情報をモニタ18に表示させる。
【0066】
一方、バッテリコントローラ34は、
図5中のステップS25で、通常動作モードになった場合、充放電制御部35によって開閉器33を接続状態に保持する。これにより、バッテリモジュール21の充電および放電が許可され、充放電制御部35は、車体コントローラ17からの充放電指令に基づいてバッテリモジュール21の充電および放電を制御する。
【0067】
本実施形態における充放電処理および起動処理の具体的な内容について、
図8で説明する。
図8は、車体の起動信号、バッテリモジュール21の電圧V、放電情報、開閉器33の状態、動作モードの時間変化を示している。
【0068】
バッテリコントローラ34は、通常動作の場合は、通常動作モードになる。このとき、バッテリコントローラ34は、充放電制御部35によって開閉器33を接続状態にする。
【0069】
充放電制御部35は、通常動作モードで稼働している時刻t21に、車体コントローラ17からの放電指令を受信する。これにより、充放電制御部35は、バッテリモジュール21の放電を開始する。この時点で、バッテリコントローラ34の動作モードは、通常動作モードから放電モードに切り替わる。バッテリモジュール21の電圧Vは、充放電制御部35による放電処理によって徐々に低下していく。時刻t22では、バッテリモジュール21の電圧Vが規定値V1以下になる。このとき、充放電制御部35は、放電情報を情報記憶部24に記憶して、放電処理を完了する。その後、キースイッチ16が操作されて、車体の起動信号がONからOFFに切り替わる。これにより、バッテリコントローラ34は、起動信号のOFFを判別した時刻t23で、放電モードを終了すると共に、開閉器33を接続状態から遮断状態に切り替える。
【0070】
放電モードの終了後である時刻t24で、キースイッチ16をOFFからONに操作すると、再度車体が起動する。このとき、充放電制御部35は、キースイッチ16から起動信号を受信する。充放電制御部35は、起動信号を受信すると、情報記憶部24から放電情報を読み出す。このとき、情報記憶部24に放電情報が記憶されているから、バッテリコントローラ34は、充放電禁止モードになって、開閉器33の遮断状態を保持する。これにより、バッテリモジュール21の充電および放電が禁止される。この結果、バッテリモジュール21に対する再充電が防止される。
【0071】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、バッテリユニット32は、第1のインバータ12とバッテリモジュール21との間を電気的に接続または遮断する開閉器33を備え、バッテリコントローラ34は、放電禁止モードでは、開閉器33を用いて第1のインバータ12とバッテリモジュール21との間を遮断する。これにより、バッテリモジュール21を完全に放電した場合には、開閉器33によって、バッテリモジュール21の充電および放電を禁止することができる。
【0072】
なお、前記第1の実施の形態では、エンジン7、アシスト発電モータ10およびバッテリユニット20を備えたハイブリッド式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、
図9に示す変形例のように、電動式の油圧ショベル41に適用してもよい。この場合、油圧ショベル41は、エンジンが省かれると共に、バッテリユニット20を外部から充電するための充電器42を備えている。充電器42は、直流母線13A,13Bに接続されている。充電器42は、例えば商用電源のような外部電源に接続するための外部電源接続端子43を有している。充電器42は、外部電源接続端子43から供給される電力をバッテリユニット20に供給し、バッテリユニット20のバッテリモジュール21を充電する。この構成は、第2の実施の形態にも適用することができる。
【0073】
前記各実施の形態では、蓄電装置としてリチウムイオン二次電池からなるバッテリモジュール21を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、蓄電装置は、他の材料からなる二次電池でもよく、キャパシタでもよい。
【0074】
前記各実施の形態では、アシスト発電モータ10および旋回電動モータ14はバッテリユニット20に接続されるものとした。本発明はこれに限らず、旋回電動モータ14を省いて、アシスト発電モータ10のみがバッテリユニット20に接続されてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも適用することができる。
【0075】
前記各実施の形態では、建設機械として油圧ショベル1,31を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、例えばホイールローダのような各種の建設機械に適用可能である。
【0076】
前記各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。