特許第6961550号(P6961550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961550二酸化塩素ガスの発生消滅方法および二酸化塩素ガス発生消滅用キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961550
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】二酸化塩素ガスの発生消滅方法および二酸化塩素ガス発生消滅用キット
(51)【国際特許分類】
   C01B 11/02 20060101AFI20211025BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20211025BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20211025BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20211025BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20211025BHJP
   A61L 9/12 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C01B11/02 F
   C01B11/02 G
   A01N59/00 A
   A01P1/00
   A01P3/00
   A61L9/01 F
   A61L9/12
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-147030(P2018-147030)
(22)【出願日】2018年8月3日
(65)【公開番号】特開2020-19696(P2020-19696A)
(43)【公開日】2020年2月6日
【審査請求日】2018年12月27日
【審判番号】不服2020-2475(P2020-2475/J1)
【審判請求日】2020年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】503214656
【氏名又は名称】株式会社アマテラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博正
(72)【発明者】
【氏名】藤田 哲悠
(72)【発明者】
【氏名】藤田 征士
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼富 廣志
【合議体】
【審判長】 日比野 隆治
【審判官】 金 公彦
【審判官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−77004(JP,A)
【文献】 特開2001−170147(JP,A)
【文献】 特開2009−535076(JP,A)
【文献】 「二酸化塩素の自主運営基準設定のための評価について −ガス製品−」,日本二酸化塩素工業会,2014年3月,p.1−12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B11/02
A61L 9/00- 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25質量%以下の亜塩素酸塩を含む水性液であるA剤とガス発生剤を含む水性液であるB剤とを接触させることにより二酸化塩素ガスを発生させるガス発生工程と、
前記二酸化塩素ガスに1質量%以上5質量%以下の二酸化塩素還元剤を含む水性液であるC剤を接触させることにより前記二酸化塩素ガスを消滅させて残存する前記二酸化塩素ガスの濃度を0.1ppm以下とする消滅工程と、を備え、
前記二酸化塩素還元剤は、エリソルビン酸およびその塩、ならびにアスコルビン酸およびその塩からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む二酸化塩素ガスの発生消滅方法。
【請求項2】
25質量%以下の亜塩素酸塩を含む水性液であるA剤と、ガス発生剤を含む水性液であるB剤と、1質量%以上5質量%以下の二酸化塩素還元剤を含む水性液であるC剤と、で構成され、
前記二酸化塩素還元剤は、エリソルビン酸およびその塩、ならびにアスコルビン酸およびその塩からなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、
前記A剤と前記B剤とを接触させることにより二酸化塩素ガスを発生させ、
前記二酸化塩素ガスに前記C剤を接触させることにより前記二酸化塩素ガスを消滅させて残存する前記二酸化塩素ガスの濃度を0.1ppm以下とする二酸化塩素ガス発生消滅用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉、塵、皮屑(ひせつ)、真菌などのアレルギー誘発物質の処理、病原菌、ウイルス、有害化学物質(たとえば、タバコ煙、ホルムアルデヒド)などの有害物質の処理、環境浄化、屋内外および食品の脱臭、防カビおよび防腐などに広く使用される二酸化塩素ガスの発生消滅方法および二酸化塩素ガス発生消滅キットに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素(ClO2)は、強い酸化力を有していることから、花粉、塵、皮屑、真菌などのアレルギー誘発物質の処理、病原菌、ウイルス、有害化学物質(たとえば、タバコ煙、ホルムアルデヒド)などの有害物質の処理、環境浄化、屋内外および食品の脱臭、防カビおよび防腐などに広く使用される。このように広い用途に使用される有用な二酸化塩素を持続的に発生させる方法およびそのための組成物が提案されている。
【0003】
たとえば、特開平11−278808号公報(特許文献1)は、溶存二酸化塩素ガス、亜塩素酸塩およびpH調整剤を構成成分に有する純粋二酸化塩素液剤、上記純粋二酸化塩素液剤および高吸水性樹脂を含有するゲル状組成物、上記純粋二酸化塩素液剤および泡剤を含有する発泡性組成物、ならびに上記純粋二酸化塩素液剤、上記ゲル状組成物、および上記発泡性組成物を入れるための容器を提案する。
【0004】
また、特開2005−29430号公報(特許文献2)は、亜塩素酸塩水溶液に、有機酸または無機酸と、粉状のガス発生調節剤またはガス発生調節剤と、吸水性樹脂と、を添加し、ゲル化させて二酸化塩素ガスを持続的に発生させる二酸化塩素ガスの発生方法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−278808号公報
【特許文献2】特開2005−29430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開平11−278808号公報(特許文献1)および特開2005−29430号公報(特許文献2)によれば、二酸化塩素ガスを連続的に発生させる方法が提案されているが、発生する二酸化塩素ガスは強い刺激臭を有しているため、使用後の二酸化塩素ガスによる刺激臭が問題となっている。このため、人が多く集まる場所(たとえば、室内、自動車内など)においては、花粉、塵、皮屑、真菌などのアレルギー誘発物質の処理、病原菌、ウイルス、有害化学物質(たとえば、タバコ煙、ホルムアルデヒド)などの有害物質の処理、環境浄化、屋内外および食品の脱臭、防カビおよび防腐などへの二酸化塩素ガスの使用には、使用中のみならず使用後も人の退避が必要であるなどの問題があり、多くの制約があった。
【0007】
本発明は、発生させた二酸化塩素ガスを使用後に消滅させることにより、上記問題を解決することができる二酸化塩素ガスの発生消滅方法および二酸化塩素ガス発生消滅用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ある局面に従えば、亜塩素酸塩を含むA剤とガス発生剤を含むB剤とを接触させることにより二酸化塩素ガスを発生させるガス発生工程と、二酸化塩素ガスに二酸化塩素還元剤を含むC剤を接触させることにより二酸化塩素ガスを消滅させるガス消滅工程と、を備える二酸化塩素ガスの発生消滅方法である。
【0009】
本発明のかかる局面における二酸化塩素ガスの発生消滅方法において、二酸化塩素還元剤は、過酸化水素、エリソルビン酸およびその塩、ならびにアスコルビン酸およびその塩からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことができる。
【0010】
本発明は、別の局面に従えば、亜塩素酸塩を含むA剤と、ガス発生剤を含むB剤と、二酸化塩素還元剤を含むC剤と、で構成され、A剤とB剤とを接触させることにより二酸化塩素ガスを発生させ、二酸化塩素ガスにC剤を接触させることにより二酸化塩素ガスを消滅させる二酸化塩素ガス発生消滅用キットである。
【0011】
本発明のかかる局面における二酸化塩素ガス発生消滅用キットにおいて、二酸化塩素還元剤は、過酸化水素、エリソルビン酸およびその塩、ならびにアスコルビン酸およびその塩からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発生させた二酸化塩素ガスを使用後に消滅させることにより、使用後の二酸化塩素ガスによる刺激臭を低減できる二酸化塩素ガスの発生消滅方法および二酸化塩素ガス発生消滅用キットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、二酸化塩素ガスの発生消滅方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1:二酸化塩素ガスの発生消滅方法>
図1を参照して、本発明のある実施形態である二酸化塩素ガスの発生消滅方法は、亜塩素酸塩を含むA剤とガス発生剤を含むB剤とを接触させることにより二酸化塩素ガスを発生させるガス発生工程S10と、二酸化塩素ガスに二酸化塩素還元剤を含むC剤を接触させることにより二酸化塩素ガスを消滅させるガス消滅工程S20と、を備える。本実施形態の二酸化塩素ガスの発生消滅方法は、上記のガス発生工程S10と上記のガス消滅工程S20とを備えることにより、発生させた二酸化塩素ガスを使用後に消滅させることができるため、使用後の二酸化塩素ガスによる刺激臭を低減できる。これにより、二酸化塩素ガス使用後の人の退避を早期に解除できる。ここで、二酸化塩素ガスの使用とは、被処理体の処理に有効な使用であれば特に制限はなく、二酸化塩素ガスを花粉、塵、皮屑、真菌などのアレルギー誘発物質の処理、病原菌、ウイルス、有害化学物質(たとえば、タバコ煙、ホルムアルデヒド)などの有害物質の処理、環境浄化、屋内外および食品の脱臭、防カビおよび防腐などへの広い範囲での使用を含む。
【0015】
二酸化塩素ガスについて、米国の労働安全衛生局(OSHA)は、1日8時間の暴露(PEL−TWA:時間加重平均値)で0.1ppmを暴露限界として設定している。日本においては、暴露限界に関する基準値は存在しないが、二酸化塩素ガスによる空間消毒の暫定的な安全基準と想定されている。これらのことから、二酸化塩素ガスの使用後に人の退避を解除するためには、二酸化塩素ガスの濃度を0.1ppm以下にする必要があると考えられる。
【0016】
[ガス発生工程]
ガス発生工程S10は、亜塩素酸塩を含むA剤とガス発生剤を含むB剤とを接触させることにより二酸化塩素ガスを発生させる工程である。かかるガス発生工程S10により、上記使用に供する二酸化塩素ガスを効率よく発生させることができる。
【0017】
(A剤)
A剤は、亜塩素酸塩を含む。A剤は、亜塩素酸塩を含むものであれば特に制限はないが、後述するB剤と効率よく接触して効率よく二酸化塩素ガスを発生させる観点から、亜塩素酸塩を含む液体であることが好ましく、亜塩素酸塩を含む水性液がより好ましい。ここで、水性液とは、亜塩素酸塩などの溶質および/または分散質を除いた溶媒および/または分散媒が水を主成分(溶媒および/または分散媒中の水の含有量が50質量%以上)とする水性溶液および/または水性分散液をいう。A液は、上記観点から、亜塩素酸塩を含む水性液であることがさらに好ましく、亜塩素酸塩水性液であることが特に好ましい。
A剤に含まれる亜塩素酸塩は、後述するB剤に含まれるガス発生剤との接触により二酸化塩素ガスを発生させる亜塩素酸塩であれば特に制限はなく、たとえば、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)、亜塩素酸カリウム(KClO2)、亜塩素酸リチウム(LiClO2)などの水素を除く第1族元素(アルカリ金属元素)の亜塩素酸塩、亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO22)、亜塩素酸ストロンチウム(Sr(ClO22)、亜塩素酸バリウム(Ba(ClO22)、亜塩素酸マグネシウム(Mg(ClO22)などの第2族元素の亜塩素酸塩などが挙げられる。これらの中で、市販されている亜塩素酸ナトリウムが入手しやすく使用上も問題がない。なお、A剤は、後述するB剤と接触して二酸化塩素ガスを発生することが阻害されない限り、および、有害な副生成物を発生させない限り、亜塩素酸塩以外の物質を含んでいてもよい。A剤に含まれる亜塩素酸塩以外の物質としては、水酸化ナトリウム(NaOH)などのアルカリなどが挙げられる。たとえば、80質量%以上のNaClO2を含有するシルブライト(日本カーリット社製シルブライト80)が、A剤として好適に用いられる。
【0018】
亜塩素酸塩水性液は、水性の溶媒および/または分散媒に、上記の少なくとも1つの亜塩素酸塩を所定濃度で溶解および/または分散させることにより得られる。亜塩素酸ナトリウムを水に溶解させる場合としては、液体では漂白剤として使用させる市販の25質量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液や、固体では市販の86質量%品、80質量%品、79質量%品または76質量%品が好適に用いられる。また、亜塩素酸塩水性液の濃度は、劇毒物および危険物に該当せず取り扱いが容易な観点から25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0019】
(B剤)
B剤は、ガス発生剤を含む。B剤は、ガス発生剤を含むものであれば特に制限はないが、上記A剤と効率よく接触して効率よく二酸化塩素ガスを発生させる観点から、ガス発生剤を含む液体であることが好ましく、ガス発生剤を含む水性液がより好ましい。ここで、水性液とは、ガス発生剤などの溶質および/または分散質を除いた溶媒および/または分散媒が水を主成分(溶媒および/または分散媒中の水の含有量が50質量%以上)とする水性溶液および/または水性分散液をいう。B液は、上記観点から、ガス発生剤を含む水溶液またはガス発生剤を含む水分散液であることがさらに好ましく、ガス発生剤水溶液またはガス発生剤水分散液であることが特に好ましい。
【0020】
B剤に含まれるガス発生剤は、上記のA剤に含まれる亜塩素酸塩との接触により、二酸化塩素ガスを発生させるガス発生剤であれば特に制限はなく、たとえば、塩酸などの無機酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸などが挙げられる。これらの中で、塩酸、クエン酸などが入手しやすく使用上も問題がない。なお、B剤は、上記のA剤と接触して二酸化塩素ガスを発生することが阻害されない限り、および、有害な副生成物を発生させない限り、ガス発生剤以外の物質を含んでいてもよい。
【0021】
ガス発生剤水性液は、水性の溶媒および/または分散媒に、上記の少なくとも1つのガス発生剤を所定濃度で溶解および/または分散させることにより得られる。塩酸を水に溶解させる場合としては、市販の塩酸(35質量%品)を水で希釈して、5質量%以上15質量%以下の塩酸水溶液が好適に用いられる。クエン酸を水に溶解させる場合としては、20質量%以上40質量%以下のクエン酸水溶液が好適に用いられる。ここで、希釈水は、二酸化塩素ガスの発生を阻害しないかぎり特に制限はないが、不純物が少ない観点から、蒸留水、イオン交換水、RO(逆浸透)水などの精製水が好ましい。
【0022】
(A剤とB剤との接触)
A剤とB剤との接触により、A剤に含まれる亜塩素酸塩とB剤に含まれるガス発生剤とが反応して二酸化塩素ガスを発生する。A剤とB剤とを接触させる比は、特に制限はないが、効率的に反応させて効率的に二酸化塩素ガスを発生させる観点から、(A剤に含まれる亜塩素酸塩):(B剤に含まれるガス発生剤)は、モル比で、ガス発生剤が塩酸の場合は1:3から3:1までの範囲が好ましく、ガス発生剤がクエン酸の場合は1:2から4:1までの範囲が好ましい。
【0023】
A剤とB剤とを接触させる方法は、A剤に含まれる亜塩素酸塩とB剤に含まれるガス発生剤とが反応するように接触させる方法であれば特に制限はなく、たとえば、A剤およびB剤のいずれもが固体の場合は、水性溶媒(水の含有量が50質量%以上の溶媒をいう、以下同じ)および/または水性分散媒(水の含有量が50質量%以上の分散媒をいう、以下同じ)を加えて、A剤とB剤とを混合する方法が挙げられる。また、A剤およびB剤のいずれか一方が水性液(水性溶液および/または水性分散液)であり、他方が固体の場合は、その水性液とその固体とを混合する方法が挙げられる。また、A剤およびB剤がいずれもが水性液である場合は、両方の水性液を混合する方法が挙げられる。A剤に含まれる亜塩素酸塩とB剤に含まれるガス発生剤とを効率よく反応させることにより効率的に二酸化塩素ガスを発生させる観点から、A剤およびB剤は、いずれか一方が水性溶液であることが好ましく、いずれもが水性溶液であることがより好ましい。
【0024】
[ガス消滅工程]
ガス消滅工程S20は、二酸化塩素ガスに二酸化塩素還元剤を含むC剤を接触させることにより二酸化塩素ガスを消滅させる工程である。かかるガス消滅工程S20により、発生させて使用させた後の二酸化塩素ガスを効率的に消滅させることにより、使用後の二酸化塩素ガスによる刺激臭を低減することができる。
【0025】
(C剤)
使用後の二酸化塩素ガスの消滅に用いられるC剤は、二酸化塩素還元剤を含む。C剤は、二酸化塩素還元剤を含むものであれば特に制限はないが、二酸化塩素ガスに効率よく接触して効率よく二酸化塩素ガスを消滅させる観点から、二酸化塩素還元剤を含む液体であることが好ましく、二酸化塩素還元剤を含む水性液がより好ましい。ここで、水性液とは、二酸化塩素還元剤などの溶質および/または分散質を除いた溶媒および/または分散媒が水を主成分(溶媒および/または分散媒中の水の含有量が50質量%以上)とする水性溶液および/または水性分散液をいう。C液は、上記観点から、二酸化塩素還元剤を含む水性溶液が好ましく、二酸化塩素還元剤水性溶液がより好ましい。
【0026】
C剤に含まれる二酸化塩素還元剤は、二酸化塩素を還元することにより二酸化塩素ガスを消滅する二酸化塩素還元剤であれば特に制限はなく、過酸化水素、エリソルビン酸およびその塩、アスコルビン酸およびその塩などが挙げられる。二酸化塩素を還元する能力が高いため二酸化塩素ガスの刺激臭を抑制する能力が高く、当該二酸化塩素還元剤自体の毒性が低く、かつ二酸化塩素を還元する際にも有毒物質の発生がなく安全性が高い観点から、二酸化塩素還元剤は、過酸化水素、エリソルビン酸およびその塩、ならびにアスコルビン酸およびその塩からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。さらに、二酸化塩素還元剤は、二酸化塩素を還元する際にも有毒物質の発生がないことによる安全性がより高い観点から、過酸化水素がより好ましく、二酸化塩素を還元する能力がより高いとともに当該二酸化塩素還元剤自体が食品添加物であることによる安全性がより高い観点から、エリソルビン酸およびその塩、ならびにアスコルビン酸およびその塩からなる群から選ばれる少なくとも1つが好ましい。ここで、エリソルビン酸塩は、二酸化塩素の還元を阻害しないかぎり特に制限はないが、入手が容易な観点からエリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウムなどのエリソルビン酸アルカリ金属塩が好ましい。また、アスコルビン酸塩は、二酸化塩素の還元を阻害しないかぎり特に制限はないが、入手が容易な観点からアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸アルカリ金属塩が好ましい。さらにアスコルビン酸には、互いに鏡像異性体であるD体のD−アスコルビン酸とL体のL−アスコルビン酸(ビタミンC)とがあり、入手が容易な観点から、L−アスコルビン酸がより好ましい。なお、C剤は、二酸化塩素を還元することにより二酸化塩素ガスを消滅することが阻害されない限り、および、有害な副生成物を発生させない限り、二酸化塩素還元剤以外の物質を含んでいてもよい。
【0027】
ここで、還元剤として一般的に用いられる亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムは、弱酸性雰囲気中で有毒な二酸化硫黄ガス、亜硫酸ガス、硫化水素ガスなどを発生させる場合があるため、好ましくない。また、強い還元剤である塩酸ヒドロキシルアミンは、蒸気の毒性が高く、また高温に加熱されると爆発の危険性があるため、好ましくない。
【0028】
二酸化塩素還元剤水性液は、水性の溶媒および/または分散媒に、上記の少なくとも1つの二酸化塩素還元剤を所定濃度で溶解および/または分散させることにより得られる。過酸化水素を水に溶解させる場合としては、1質量%以上5質量以下の過酸化水素水溶液(過酸化水素水)が好適に用いられる。エリソルビン酸またはその塩を水に溶解させる場合としては、1質量%以上5質量%以下のエリソルビン酸またはその塩の水溶液が好適に用いられる。アスコルビン酸またはその塩を水に溶解させる場合としては、1質量%以上5質量%以下のアスコルビン酸またはその塩の水溶液が好適に用いられる。
【0029】
(二酸化塩素ガスとC剤との接触)
A剤とB剤との接触により二酸化塩素ガスが発生する。発生した二酸化塩素ガスは空気中に発散して被処理体(アレルギー誘発物質、有害物質など)の処理に使用される。使用後の二酸化塩素ガスとC剤とを接触させることにより、二酸化塩素ガスを還元により消滅させて、二酸化塩素ガスによる刺激臭を低減できる。特に発生した使用後の二酸化塩素ガスが多い場合は、発生した二酸化塩素ガスとC剤との接触により、二酸化塩素ガスによる刺激臭を大きく低減できる。これにより、二酸化塩素ガス使用後の人の退避を早期に解除できる。
【0030】
発生した二酸化塩素ガスとC剤とを接触させる比は、特に制限はないが、効率的に二酸化塩素ガスを消滅させる観点から、(A剤とB剤との接触により発生した二酸化塩素):(C剤に含まれる二酸化塩素還元剤)が、モル比で、100:1から1:3までの範囲が好ましく、50:1から2:3までの範囲が好ましい。このようにA剤とB剤との接触により発生した二酸化塩素に対するC剤に含まれる二酸化塩素還元剤の好適なモル比の範囲が広いのは、二酸化塩素ガスを発生および消滅させる空間の大きさによって二酸化塩素ガスと二酸化塩素還元剤との接触効率が大きく異なるからである。二酸化塩素ガスを発生および消滅させる空間が大きくなるほど、二酸化塩素ガスおよび二酸化塩素還元剤の空間への拡散および壁への吸着が大きくなることにより、二酸化塩素ガスと二酸化塩素還元剤との接触効率が低下するため、A剤とB剤との接触により発生した二酸化塩素に対するC剤に含まれる二酸化塩素還元剤の好適なモル比が大きくなる。また、過酸化水素は、エリソルビン酸およびその塩ならびにアスコルビン酸およびその塩に比べて二酸化塩素の還元力が小さいため、A剤とB剤との接触により発生した二酸化塩素に対するC剤に含まれる二酸化塩素還元剤の好適なモル比が大きくなる。
【0031】
発生した二酸化塩素ガスとC剤とを接触させる方法は、特に制限はないが、発生した後空気中に発散した二酸化塩素ガスと効率よく接触して効率よく二酸化塩素ガスを消滅させる観点から、発生した後空気中に飛散した二酸化塩素ガスにC剤をミスト状にして接触させる方法、たとえば二酸化塩素ガスにC剤を噴霧する方法が好ましい。また、上記観点から、C剤は二酸化塩素還元剤を含む水性溶液であることが好ましく、二酸化塩素還元剤水性溶液であることがより好ましい。
【0032】
発生した二酸化塩素ガスとC剤とを接触させる回数は、特に制限はないが、発生した後空気中に発散した二酸化塩素ガスと効率よく接触して効率よく二酸化塩素ガスを消滅させる観点から、複数回であることが好ましい。特に、二酸化塩素ガスが存在する空間が大きいほど、また、二酸化塩素ガスの濃度が高いほど、C剤と接触させる回数は多いことが好ましい。
【0033】
<実施形態2:二酸化塩素ガス発生消滅用キット>
図1を参照して、本発明の別の実施形態である二酸化塩素ガス発生消滅用キットは、亜塩素酸塩を含むA剤と、ガス発生剤を含むB剤と、二酸化塩素還元剤を含むC剤と、で構成され、A剤とB剤とを接触させることにより二酸化塩素ガスを発生させ、二酸化塩素ガスにC剤を接触させることにより二酸化塩素ガスを消滅させる。本実施形態の二酸化塩素ガス発生消滅用キットは、上記のA剤、B剤、およびC剤で構成され、それらを一定の順序で接触させることにより、発生させた二酸化塩素ガスを使用後に消滅させることができるため、使用後の二酸化塩素ガスによる刺激臭を低減できる。ここで、二酸化塩素ガスの使用とは、被処理体の処理に有効な使用であれば特に制限はなく、二酸化塩素ガスを花粉、塵、皮屑、真菌などのアレルギー誘発物質の処理、病原菌、ウイルス、有害化学物質(たとえば、タバコ煙、ホルムアルデヒド)などの有害物質の処理、環境浄化、屋内外および食品の脱臭、防カビおよび防腐などへの広い範囲での使用を含む。
【0034】
本実施形態の二酸化塩素ガス発生消滅用キットを構成するA剤、B剤、およびC剤、A剤とB剤との接触による二酸化塩素ガスの発生、ならびに二酸化塩素ガスとC剤との接触による二酸化塩素ガスの消滅は、実施形態1の二酸化塩素ガスの発生消滅方法において説明したA剤、B剤、およびC剤、ガス発生工程、ならびにガス消滅工程と同じであるため、それらの説明を繰り返さない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
本実施例は、3人のパネラー全てが強く認めるタバコなどによる悪臭がある乗用車(テスラ社製モデルS)内でエアコンを「中」で動作させることによる空気循環雰囲気下において、A剤とB剤との接触によるClO2ガス(二酸化塩素ガス、以下同じ)の発生ならびに発生したClO2ガスとC剤との接触によるClO2ガスの消滅を行なったものである。
【0036】
1.ClO2ガス発生消滅用キットの作製
A剤として25質量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液10gと、B剤として10質量%の塩酸水溶液17gと、C剤として2.5質量%のエリソルビン酸ナトリウム水溶液300gと、を準備した。C剤を300gとしたのは、トリガー式噴霧器に入れて噴霧させるためであり、ClO2ガスを消滅させてその濃度を0.1ppm以下にするのに必要なC剤の量は後述のように極めて少量であった。
【0037】
2.A剤とB剤との接触によるClO2ガスの発生
底面が58mm×58mmで開口面が83mm×83mmで高さが30mmの逆正四角錐台形状のPET(ポリエチレンテレフタレート)製容器内で、A剤の全量とB剤の全量とを混合させることにより接触させてClO2ガスを発生させた。A剤とB剤との混合により接触させた時からの経過時間と上記乗用車内のClO2ガスの濃度を表1にまとめた。ClO2ガスの濃度は、1.0ppm以上の濃度について北川式検知管を用いて測定し、1.0ppm未満の濃度についてはガステック低濃度検知管のNo.23MまたはNo.23Lを用いて測定した。ClO2ガスの濃度測定は、上記乗用車内の気密性を確保した状態で上記の検知管の測定部を上記乗用車内に挿入することにより行った。
【0038】
3.発生したClO2ガスとC剤との接触によるClO2ガスの消滅
上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から90分間経過時にClO2ガス濃度を測定した後に、発生したClO2ガスが残存している上記乗用車内から接触後のA剤およびB剤を取出すとともに、トリガー式噴霧器に入れたC剤を上記乗用車内で5回(全体で4.75g)噴霧した。上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から95分間経過後(すなわちC剤の噴霧時から5分間経過後)における乗用車内のClO2ガス濃度を表1に示した。表1に示すように、このときのClO2ガスの濃度は、0.05ppmであり、米国の労働安全衛生局(OSHA)が設定する8時間暴露(PEL−TWA)における許容暴露濃度である0.1ppm以下であった。このとき、上記乗用車内のClO2ガスによる刺激臭は、3人のパネラー全てがごくわずかに認めるが不快を感じない程度まで低減していた。また、このとき、乗用車内のタバコなどによる悪臭は、3人のパネラー全てが認めず、消失していた。なお、エアコンのドレイン臭についても、3人のパネラー全てが認めず、消失していた。
【0039】
【表1】
【0040】
(実施例2)
本実施例は、3人のパネラー全てが強く認めるタバコなどによる悪臭がある乗用車(トヨタ社製アクア)内でエアコンを「中(表示値24)」で動作させることによる空気循環雰囲気下において、A剤とB剤との接触によるClO2ガスの発生ならびに発生したClO2ガスとC剤との接触によるClO2ガスの消滅を行なったものである。
【0041】
1.ClO2ガス発生消滅用キットの作製
A剤として25質量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液10gと、B剤として10質量%の塩酸水溶液17gと、C剤として2.5質量%のL−アスコルビン酸水溶液300gと、を準備した。ここで、C剤を300gとしたのは、トリガー式噴霧器に入れて噴霧させるためであり、ClO2ガスを消滅させてその濃度を0.1ppm以下にするのに必要なC剤の量は後述のように極めて少量であった。
【0042】
2.A剤とB剤との接触によるClO2ガスの発生
実施例1と同じ形状および大きさのPET製容器内で、A剤の全量とB剤の全量とを混合させることにより接触させてClO2ガスを発生させた。A剤とB剤との混合により接触させた時からの経過時間と上記乗用車内のClO2ガスの濃度を表2にまとめた。ClO2ガスの濃度は、1.0ppm以上の濃度について北川式検知管を用いて測定し、1.0ppm未満の濃度についてはガステック低濃度検知管のNo.23MまたはNo.23Lを用いて測定した。ClO2ガスの濃度測定は、上記乗用車内の気密性を確保した状態で上記の検知管の測定部を上記乗用車内に挿入することにより行った。
【0043】
3.発生したClO2ガスとC剤との接触によるClO2ガスの消滅
上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から90分間経過時にClO2ガス濃度を測定した後に、発生したClO2ガスが残存している上記乗用車内から接触後のA剤およびB剤を取出すとともに、トリガー式噴霧器に入れたC剤を上記乗用車内で5回(全体で4.75g)噴霧した。上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から95分間経過後(すなわちC剤の噴霧時から5分間経過後)における上記乗用車内のClO2ガス濃度を表2に示した。表2に示すように、このときのClO2ガスの濃度は、0.05ppmであり、米国の労働安全衛生局(OSHA)が設定する8時間暴露(PEL−TWA)における許容暴露濃度である0.1ppm以下であった。このとき、上記乗用車内のClO2ガスによる刺激臭は、3人のパネラー全てがごくわずかに認めるが不快を感じない程度まで低減していた。また、このとき、上記乗用車内のタバコなどによる悪臭は、3人のパネラー全てが認めず、消失していた。なお、エアコンのドレイン臭についても、3人のパネラー全てが認めず、消失していた。
【0044】
【表2】
【0045】
(実施例3)
本実施例は、3人のパネラー全てが強く認めるホルムアルデヒドによる悪臭がある6畳室(容量21.7m3:2.93m×3.37m×2.2m)内において、A剤とB剤との接触によるClO2ガスの発生ならびに発生したClO2ガスとC剤との接触によるClO2ガスの消滅を行なったものである。
【0046】
1.ClO2ガス発生消滅用キットの作製
A剤として25質量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液18gと、B剤として30質量%のクエン酸水溶液30gと、C剤として2.5質量%のエリソルビン酸ナトリウム水溶液300gと、を準備した。C剤を300gとしたのは、トリガー式噴霧器に入れて噴霧させるためであり、ClO2ガスを消滅させてその濃度を0.1ppm以下にするのに必要なC剤の量は後述のように少量であった。
【0047】
2.A剤とB剤との接触によるClO2ガスの発生
実施例1と同じ形状および大きさのPET製容器内で、A剤の全量とB剤の全量とを混合させることにより接触させてClO2ガスを発生させた。A剤とB剤との混合により接触させた時からの経過時間と6畳室内のClO2ガスの濃度を表3にまとめた。ClO2ガスの濃度は、1.0ppm以上の濃度について北川式検知管を用いて測定し、1.0ppm未満の濃度についてはガステック低濃度検知管のNo.23MまたはNo.23Lを用いて測定した。
【0048】
3.発生したClO2ガスとC剤との接触によるClO2ガスの消滅
上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から6.25時間経過後に、発生したClO2ガスが残存している上記6畳室内から接触後のA剤およびB剤を取出すとともに、トリガー式噴霧器に入れたC剤を上記6畳室内で35回(全体で33.25g)噴霧した(C剤の1次噴霧という、以下同じ)。ここで、C剤の1次噴霧は以下の要領で行なった。上記6畳室内を、出入口ドアから奥に向かって、それぞれ同じ大きさの領域の表領域、中領域、および奥領域に分けて、奥領域の表側から奥側に向けて均一に広がるように15回それぞれ異なる場所で噴霧し、中領域の表側から奥側に向けて均一に広がるように10回それぞれ異なる場所で噴霧し、表領域の奥側から表側に向けて均一に広がるように10回それぞれ異なる場所で噴霧した。上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から7.25時間経過後(すなわちC剤の1次噴霧時から1時間経過後)における上記6畳室内のClO2ガス濃度は、表3に示すように、0.75ppmに低減した。
【0049】
次に、A剤とB剤との混合により接触させた時から7.5時間経過後に、上記C剤を上記6畳室内で10回(全体で9.5g)噴霧した(C剤の2次噴霧という、以下同じ)。ここで、C剤の2次噴霧は、上記奥領域の表側から奥側に向けて均一に広がるように4回それぞれ異なる場所で噴霧し、中領域の表側から奥側に向けて均一に広がるように3回それぞれ異なる場所で噴霧し、表領域の奥側から表側に向けて均一に広がるように3回それぞれ異なる場所で噴霧した。上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から8.5時間経過後(すなわちC剤の2次噴霧時から1時間経過後)における上記6畳室内のClO2ガス濃度は、表3に示すように、0.10ppmに低減し、米国の労働安全衛生局(OSHA)が設定する8時間暴露(PEL−TWA)における許容暴露濃度の上限である0.1ppmmまで低減した。
【0050】
さらに、A剤とB剤との混合により接触させた時から8.75時間経過後に、上記C剤を上記6畳室内でC剤を2回(全体で1.9g)噴霧した(C剤の3次噴霧という、以下同じ)。ここで、C剤の3次噴霧は以下の要領で行なった。上記6畳室内を、出入口ドアから奥に向かって、それぞれ同じ大きさの領域の表側領域および奥側領域に分けて、奥側領域の表側から奥側に向けて1回噴霧し、表側領域の奥側から表側に向けて1回噴霧した。上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から9.0時間経過後(すなわちC剤の3次噴霧時から0.25時間経過後)における上記6畳室内のClO2ガス濃度は、表3に示すように、0.05ppmに低減し、米国の労働安全衛生局(OSHA)が設定する8時間暴露(PEL−TWA)における許容暴露濃度である0.1ppm以下であった。このとき、上記6畳室内のClO2ガスによる刺激臭は、3人のパネラーが全てがごくわずかに認めるが不快を感じない程度まで低減していた。また、このとき、上記6畳室内のホルムアルデヒドによる悪臭は、3人のパネラー全てが認めず、消失していた。なお、エアコンのドレイン臭についても、3人のパネラー全てが認めず、消失していた。
【0051】
【表3】
【0052】
(実施例4)
本実施例は、3人のパネラー全てが強く認めるホルムアルデヒドによる悪臭がある6畳室(容量21.7m3:2.93m×3.37m×2.2m)内において、A剤とB剤との接触によるClO2ガスの発生ならびに発生したClO2ガスとC剤との接触によるClO2ガスの消滅を行なったものである。
【0053】
1.ClO2ガス発生消滅用キットの作製
A剤として25質量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液18gと、B剤として30質量%のクエン酸水溶液30gと、C剤として3.0質量/体積%(w/v%とも表記する。100mLの水溶液中に3gの過酸化水素が存在する濃度をいう)の過酸化水素水溶液(健栄製薬社製オキシドール)300gと、を準備した。C剤を300gとしたのは、トリガー式噴霧器に入れて噴霧させるためであり、ClO2ガスを消滅させてその濃度を0.1ppm以下にするのに必要なC剤の量は後述のように極めて少量であった。
【0054】
2.A剤とB剤との接触によるClO2ガスの発生
実施例1と同じ形状および大きさのPET製容器内で、A剤の全量とB剤の全量とを混合させることにより接触させてClO2ガスを発生させた。A剤とB剤との混合により接触させた時からの経過時間と6畳室内のClO2ガスの濃度を表4にまとめた。ClO2ガスの濃度は、1.0ppm以上の濃度について北川式検知管を用いて測定し、1.0ppm未満の濃度についてはガステック低濃度検知管のNo.23MまたはNo.23Lを用いて測定した。
【0055】
3.発生したClO2ガスとC剤との接触によるClO2ガスの消滅
上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から6.33時間経過後に、発生したClO2ガスが残存している上記6畳室内から接触後のA剤およびB剤を取出すとともに、トリガー式噴霧器に入れたC剤を上記6畳室内で35回(全体で25.9g)噴霧した(C剤の1次噴霧という、以下同じ)。ここで、C剤の1次噴霧は以下の要領で行なった。上記6畳室内を、出入口ドアから奥に向かって、それぞれ同じ大きさの領域の表領域、中領域、および奥領域に分けて、奥領域の表側から奥側に向けて均一に広がるように15回それぞれ異なる場所で噴霧し、中領域の表側から奥側に向けて均一に広がるように10回それぞれ異なる場所で噴霧し、表領域の奥側から表側に向けて均一に広がるように10回それぞれ異なる場所で噴霧した。上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から7.35時間経過後(すなわちC剤の1次噴霧時から1.02時間経過後)における上記6畳室内のClO2ガス濃度は、表4に示すように、1.40ppmに低減した。
【0056】
次に、A剤とB剤との混合により接触させた時から7.75時間経過後に、上記C剤を上記6畳室内で10回(全体で7.4g)噴霧した(C剤の2次噴霧という、以下同じ)。ここで、C剤の2次噴霧は、上記奥領域の表側から奥側に向けて均一に広がるように4回それぞれ異なる場所で噴霧し、中領域の表側から奥側に向けて均一に広がるように3回それぞれ異なる場所で噴霧し、表領域の奥側から表側に向けて均一に広がるように3回それぞれ異なる場所で噴霧した。上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から8.85時間経過後(すなわちC剤の2次噴霧時から1.1時間経過後)における上記6畳室内のClO2ガス濃度は、表4に示すように、0.55ppmに低減した。
【0057】
さらに、A剤とB剤との混合により接触させた時から9.0時間経過後に、上記C剤を上記6畳室内で10回(全体で7.4g)噴霧した(C剤の3次噴霧という、以下同じ)。ここで、C剤の3次噴霧は、記奥領域の表側から奥側に向けて均一に広がるように4回それぞれ異なる場所で噴霧し、中領域の表側から奥側に向けて均一に広がるように3回それぞれ異なる場所で噴霧し、表領域の奥側から表側に向けて均一に広がるように3回それぞれ異なる場所で噴霧した。上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から10.0時間経過後(すなわちC剤の3次噴霧時から1.0時間経過後)における上記6畳室内のClO2ガス濃度は、表4に示すように、0.23ppmに低減した。
【0058】
さらに、A剤とB剤との混合により接触させた時から10.05時間経過後に、上記C上記6畳室内でC剤を10回(全体で7.4g)噴霧した(C剤の4次噴霧という、以下同じ)。ここで、C剤の4次噴霧は、記奥領域の表側から奥側に向けて均一に広がるように4回それぞれ異なる場所で噴霧し、中領域の表側から奥側に向けて均一に広がるように3回それぞれ異なる場所で噴霧し、表領域の奥側から表側に向けて均一に広がるように3回それぞれ異なる場所で噴霧した。上記のA剤とB剤との混合により接触させた時から11.0時間経過後(すなわちC剤の4次噴霧時から0.95時間経過後)における上記6畳室内のClO2ガス濃度は、表4に示すように、0.05ppmに低減し、米国の労働安全衛生局(OSHA)が設定する8時間暴露(PEL−TWA)における許容暴露濃度である0.1ppm以下であった。このとき、上記6畳室内のClO2ガスによる刺激臭は、3人のパネラーが全てがごくわずかに認めるが不快を感じない程度まで低減していた。また、このとき、上記6畳室内のホルムアルデヒドによる悪臭は、3人のパネラー全てが認めず、消失していた。なお、エアコンのドレイン臭についても、3人のパネラー全てが認めず、消失していた。
【0059】
【表4】
【0060】
実施例1−4について表1−4のそれぞれに示すように、亜塩素酸塩を含むA剤と、ガス発生剤を含むB剤と、二酸化塩素還元剤を含むC剤と、で構成され、A剤とB剤とを接触させることによりClO2ガスを発生させ、ClO2ガスに、C剤を接触させることによりClO2ガスを消滅させるClO2ガス発生消滅用キット、ならびに、亜塩素酸塩を含むA剤とガス発生剤を含むB剤とを接触させることによりClO2ガスを発生させるガス発生工程と、ClO2ガスに二酸化塩素還元剤を含むC剤を接触させることによりClO2ガスを消滅させるガス消滅工程と、を備えるClO2ガスの発生消滅方法によれば、発生させたClO2ガスを使用後に消滅させることにより、使用後のClO2ガスによる刺激臭を低減できる。このため、ClO2ガスの使用後は人の退避などの問題がなく、人が多く集まる室内および自動車内などであっても、花粉、塵、皮屑、真菌などのアレルギー誘発物質の処理、病原菌、ウイルス、有害化学物質(たとえば、タバコ煙、ホルムアルデヒド)などの有害物質の処理、環境浄化、脱臭、防カビおよび防腐などの処理にClO2ガスを広く使用することができる。
【0061】
上記実施例1−4に示すように、発生したClO2ガスにC剤を接触させることにより、ClO2ガスを消滅させて、ClO2ガスによる刺激臭を低減することができた。
【0062】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
S10 ガス発生工程、S20 ガス消滅工程。
図1