特許第6961559号(P6961559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961559
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】液体塗布具
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   A45D34/04 515A
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-190563(P2018-190563)
(22)【出願日】2018年10月9日
(65)【公開番号】特開2020-58490(P2020-58490A)
(43)【公開日】2020年4月16日
【審査請求日】2020年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】片桐 彩花
(72)【発明者】
【氏名】矢野 いずみ
(72)【発明者】
【氏名】奈良 紀恵
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−116195(JP,A)
【文献】 特開2004−130143(JP,A)
【文献】 特開2013−169269(JP,A)
【文献】 特開平08−038248(JP,A)
【文献】 特表2015−527127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の粘性を有し、かつ複数の極小片が含まれた液体を塗布する液体塗布具であって、
内部に前記液体を収容する容器の開口部を閉塞する蓋体と一体又は別体に設けられ、前記容器の内部に収容される軸部と、
前記軸部の先端側において前記容器に収容される前記液体に浸漬可能な領域に設けられ、前記液体を保持可能な凹状の液体保持部と、
前記軸部の先端に前記液体保持部と滑らかに連続する曲面によって構成され、前記液体保持部に保持された前記液体の塗布に供する塗布部と、
を備え、
前記蓋体は、前記軸部を扱くしごき部を有しない前記容器の開口部を閉塞し、
前記液体保持部に保持された前記液体は、前記容器により搾取されることなく前記容器から取り出され、前記軸部の外面を伝って前記塗布部を介して被塗布体に滴下するように塗布されることを特徴とする液体塗布具。
【請求項2】
前記軸部は、円柱状を呈し、
前記液体保持部は、前記軸部に括れ状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液体塗布具。
【請求項3】
前記液体保持部は、縦断面凹円弧状に形成され、前記軸部の外径が徐々に変化するように構成されたことを特徴とする請求項に記載の液体塗布具。
【請求項4】
前記液体保持部は、前記括れを前記軸部の軸方向へ直列に複数設けることによって形成されたことを特徴とする請求項3に記載の液体塗布具。
【請求項5】
前記液体保持部から前記塗布部に向かって、前記軸部の軸方向に連続する溝部を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の液体塗布具。
【請求項6】
前記溝部は、前記軸部の周方向において、複数設けられていることを特徴とする請求項に記載の液体塗布具。
【請求項7】
前記液体保持部は、前記軸部の先端側を波形に形成することにより、前記軸部の軸方向において互い違いに形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液体塗布具。
【請求項8】
前記蓋体と前記軸部とは、別体に形成され、
前記軸部は、基端部に設けられた突起部が前記蓋体の内部に設けられた凹部に係止することによって、前記蓋体と一体化されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の液体塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマニキュアなどに適用され、容器に収容されたラメなどの極小片を含む液体の塗布に供する液体塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばマニキュアに使用する従来の液体塗布具としては、以下の特許文献に記載されたものが知られている。
【0003】
すなわち、従来の液体塗布具100は、図10に示すように、液体の化粧料Fが収容された容器101の開口部を閉塞する蓋体102と一体に設けられた軸部103と、この軸部103の先端に設けられたブラシ104と、を有し、容器101内に収容された化粧料をブラシ104に付着させて取り出し、これを被塗布体である爪に塗布するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−022951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、マニキュアなどに用いる液体の化粧料には、異物を含まない液体のみからなるものの他に、ラメなどの極小片を含むものがあり、この極小片を含む液体であっても良好に塗布可能な液体塗布具が望まれている。
【0006】
しかしながら、前記従来の液体塗布具100を前記ラメなどの極小片を含む液体化粧料に適用した場合、前記ブラシ104によって取り出した液体化粧料を爪に塗布する際、極小片がブラシ104の毛の間に挟まり、埋もれてしまう場合がある。これにより、極小片を含む液体化粧料の塗布にあたり、十分な量の極小片を塗布することが困難であった。
【0007】
本発明は、かかる技術的課題に着目して案出されたものであって、極小片を含む液体の塗布に際して十分な量の極小片を塗布可能な液体塗布具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定の粘性を有し、かつ複数の極小片が含まれた液体を塗布する液体塗布具であって、その一態様として、内部に前記液体を収容する容器の開口部を閉塞する蓋体と一体又は別体に設けられ、前記容器の内部に収容される軸部と、前記軸部の先端側において前記容器に収容される前記液体に浸漬可能な領域に設けられ、前記液体を保持可能な凹状の液体保持部と、前記軸部の先端に設けられ、前記液体保持部に保持された前記液体の塗布に供する塗布部と、を備え、前記液体保持部に保持された前記液体は、前記軸部の外面を伝って前記塗布部を介して被塗布体に滴下するように塗布される。
【0009】
このように、軸部の外面に設けた液体保持部に液体を保持させて(溜めて)、この液体を軸部の外面を伝って被塗布体へと滴下させるため、液体に含まれる極小片を減少させることなく、そのまま被塗布体に塗布することができる。
【0010】
また、液体保持部の形状や深さを調整することにより、液体の塗布量や滴下速度を調整することができ、液体の物性等に応じて液体の塗布作業の最適化を図ることが可能になる。
【0011】
また、前記液体塗布具の別の態様として、前記蓋体は、前記軸部を扱くしごき部を有しない前記容器の開口部を閉塞し、前記液体保持部に保持された前記液体は、前記容器によって搾取されないことが望ましい。
【0012】
このように、塗布具に付着した液体を適量に調整するためのしごき部を有しない容器に用いられて、液体保持部に保持された液体が容器によって搾取されないことで、液体保持部に保持された液体を、そのまま外部に取り出すことが可能となる。これにより、液体保持部に保持された液体に含まれる極小片が容器によって刮ぎ落とされることなく、十分な量の極小片を取り出して塗布することができる。
【0013】
また、前記液体塗布具のさらに別の態様として、前記軸部は、円柱状を呈し、前記液体保持部は、前記軸部に括れ状に形成されることが望ましい。
【0014】
このように、液体保持部が、括れ状に、軸部の全周に亘って設けられていることで、当該液体保持部に、十分な量の極小片が含まれた液体の保持が可能となる。これにより、十分な量の極小片を含む液体を被塗布体に塗布することができる。
【0015】
また、前記液体塗布具のさらに別の態様として、前記液体保持部は、縦断面凹円弧状に形成され、前記軸部の外径が徐々に変化するように構成されていることが望ましい。
【0016】
このように、液体保持部が、断面円弧状に形成されていることで、当該液体保持部に保持された液体を、被塗布体に滑らかに滴下させることができ、液体の塗布作業を容易に行うことができる。
【0017】
また、前記液体塗布具のさらに別の態様として、前記液体保持部は、前記括れを前記軸部の軸方向へ直列に複数設けることによって形成されていることが望ましい。
【0018】
このように、液体保持部を、複数の括れを直列に配置することによって構成したことで、当該液体保持部に、より多くの液体、すなわちより多くの極小片を含む液体を保持させることができる。これにより、比較的広い被塗布面にも、少ない回数で液体を塗布することが可能になり、利便性が向上する。
【0019】
また、前記液体塗布具のさらに別の態様として、前記液体保持部から前記塗布部に向かって、前記軸部の軸方向に連続する溝部を有することが望ましい。
【0020】
このように、液体保持部から塗布部に向かって溝部が形成されていることで、液体保持部に加えて、この溝部によって、より多くの液体を保持させることが可能になる。これにより、十分な量の極小片を含む液体を被塗布体に塗布することができる。
【0021】
また、前記液体塗布具のさらに別の態様として、前記溝部は、前記軸部の周方向において、複数設けられていることが望ましい。
【0022】
このように、溝部を複数設けることで、これら溝部によってより多くの液体を保持させることができる。これにより、より十分な量の極小片を含む液体を被塗布体に塗布することができる。
【0023】
また、前記液体塗布具のさらに別の態様として、前記液体保持部は、前記軸部の先端側を波形に形成することにより、前記軸部の軸方向において互い違いに形成されることが望ましい。
【0024】
このように、軸部の先端側が波形に形成され、液体保持部が軸方向において互い違いに形成されることによっても、液体保持部の容量を増やすことができる。これにより、十分な量の極小片を含む液体を被塗布体に塗布することができる。
【0025】
また、前記液体塗布具のさらに別の態様として、前記蓋体と前記軸部とは、別体に形成され、前記軸部は、基端部に設けられた突起部が前記蓋体の内部に設けられた凹部に係止することによって、前記蓋体と一体化されていることが望ましい。
【0026】
このように、蓋体と軸部とを別体に、かつ係止構造によって着脱可能に構成したことで、軸部の形状違いの塗布具や、従来のブラシ状の塗布具との間で、それぞれ蓋体を共通化できる。これにより、容器や蓋体の仕様を変更することなく、異なる仕様の塗布具を利用することが可能となり、製造コストの低廉化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、軸部の外面に設けた液体保持部に液体を保持させて、この液体を軸部の外面を伝って被塗布体へと滴下させるため、液体に含まれる極小片をそのまま被塗布体に塗布することができる。これにより、十分な量の極小片を含む液体を被塗布体に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係る液体塗布具を用いた化粧料容器の分解図である。
図2図1に示す化粧料容器の組立状態を表した縦断面図である。
図3図1に示す液体塗布具の軸部の拡大図である。
図4図1に示す液体塗布具の使用状態を示す図であって、(a)は、容器から液体を取り出した状態を表した化粧料容器の正面図、(b)は、取り出した液体を被塗布体に塗布する状態を表した軸部の斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態の変形例を示す液体塗布具の軸部の拡大図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る液体塗布具の軸部の拡大図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る液体塗布具の軸部の拡大図である。
図8】本発明の第3実施形態の変形例を示す液体塗布具の軸部の拡大図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る液体塗布具の軸部の拡大図であって、(a)は側面図、(b)は同図(a)のA方向から見た矢視図である。
図10】従来の液体塗布具を用いた液状化粧料容器の分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る液体塗布具の実施形態を、図面に基づいて詳述する。なお、本実施形態では、本発明に係る液体塗布具を、従来と同様、マニキュアの化粧料容器に適用したものを例示して説明する。
【0030】
〔第1実施形態〕
図1図4は、本発明の第1実施形態に係る液体塗布具を示す。なお、各図の説明では、軸部5の中心を通る中心軸線Z(図2参照)に平行な方向を「軸方向」、中心軸線Zに直交する方向を「径方向」、中心軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。また、前記「軸方向」については、各図中の紙面上方を「上」、下方を「下」として説明する。
【0031】
(液体塗布具の構成)
化粧料容器は、図1図2に示すように、液体(化粧料F)を収容する容器である容器本体1と、この容器本体1の開口部を閉塞する蓋体2と、この蓋体2に接続され、蓋体2と一体に設けられた(一体化された)液体塗布具3と、を有する。そして、容器本体1には、極小片、例えばラメLが含まれた液体である化粧料Fが収容されている。なお、本発明に係る極小片は、本実施形態で例示するラメLに限定されるものではなく、例えば金粉など、極小又は極薄の小片であれば、内容物である液体の仕様に応じて自由に変更することができる。
【0032】
容器本体1は、合成樹脂やガラスなどによって有底筒状に形成されたものであり、上端側に開口形成され、内部に化粧料Fを収容する液体収容部11と、この液体収容部11の上端部に縮径筒状に突設され、蓋体2の固定に供する蓋体固定部12と、を有する。液体収容部11は、底部11aが平坦状を呈し、自立可能に形成されている。また、液体収容部11の内部は、蓋体固定部12の内径に対して段差状に拡径形成され、かつ内径が底部11a側へと向かって漸次拡大するように形成されている。蓋体固定部12は、ほぼ円筒状を呈し、内周側に、液体塗布具3の後述する軸部5が挿通する軸挿通孔13が、軸方向に沿って貫通形成されている。また、蓋体固定部12の外周側には、蓋体2に設けられた雌ねじ部22と噛み合う雄ねじ部14が形成されていて、蓋体2をねじ込むことによって、蓋体2を容器本体1に固定可能となっている。
【0033】
なお、本実施形態では、図1に示すような、容器本体1が比較的大径状に形成され、蓋体固定部12が小径状に形成されたものを例示しているが、かかる構成に限定されるものではない。すなわち、容器本体1と蓋体固定部12との関係は、例えば図10に示す従来の化粧料容器のように、ほぼ寸胴に形成してもよいし、また、例えばハート形を模した形状など、意匠性を重視した異形に形成してもよく、商品の仕様(コンセプト)に応じて、自由に変更することができる。
【0034】
蓋体2は、合成樹脂によって有蓋円筒状に形成されたもので、上端側の内部に円形断面をもってほぼ寸胴に形成され、液体塗布具3の後述する接続基部4を収容保持する塗布具保持部21と、この塗布具保持部21よりも下端側に設けられ、容器本体1の雄ねじ部14と噛み合う雌ねじ部22と、を有する。また、塗布具保持部21の下端部であって、塗布具保持部21と雌ねじ部22との間には、液体塗布具3に設けられた後述する突起部41が係止可能な縦断面凹状の係止部23が、周方向に沿って環状に形成されている。すなわち、液体塗布具3の突起部41が、塗布具保持部21の下端側から進入して、係止部23の下端側壁を構成する係止突起24を乗り越えることによって、当該突起部41が、係止部23内に受容されると共に、係止突起24に係止する。これにより、蓋体2に対する液体塗布具3の脱落が規制されて、蓋体2と液体塗布具3とが一体化される。
【0035】
液体塗布具3は、合成樹脂によって一体に成形されたものであり、上端側に大径状に形成され、蓋体2との接続に供する接続基部4と、この接続基部4に対して段差縮径状に形成され、該接続基部4の下端部より軸方向に沿って延設された軸部5と、を有する。この液体塗布具3は、後述するように、接続基部4が蓋体2に接続されることによって当該蓋体2と一体化されると共に、軸部5が容器本体1の液体収容部11の内部において化粧料Fに浸漬した状態で収容されている。
【0036】
接続基部4は、ほぼ円柱状を呈し、下端側には、段差状に拡径して蓋体2の係止部23に係止可能な突起部41が、周方向に沿って環状に形成されている。また、この突起部41の上端側、すなわち蓋体2に進入する側に、蓋体2側に向かって突起部41の外径が漸次縮小するほぼ円錐テーパ状の面取り部42が、周方向に沿って全周に亘って形成されている。これにより、液体塗布具3を蓋体2に接続する際、突起部41が係止突起24を円滑に乗り越えることができ、液体塗布具3を蓋体2に容易に接続可能となっている。他方、突起部41の下端側、すなわち係止部23の係止突起24に係止する側は、軸方向に直交する水平状に形成されている。これにより、係止突起24に対して突起部41が強固に係止可能となって、液体塗布具3を蓋体2に接続した後の突起部41による係止突起24の乗り越えが効果的に規制され、液体塗布具3の蓋体2からの脱落が防止されている。
【0037】
なお、接続基部4の形状については、上記のような寸胴形状に限定されるものではなく、例えば上端側に向かって外径が漸次縮小する、軸方向全体に抜きテーパが形成された円錐状に構成するなど、製造上の都合や、蓋体2との接続関係によって自由に変更することができる。また、突起部41の面取り部42についても、上記チャンファー状に限定されるものではなく、例えば縦断面が円弧状となる、いわゆるR状のテーパによって構成されていてもよい。
【0038】
軸部5は、図1図3に示すように、上端側(基端側)に寸胴に形成され、軸方向に沿って一定の内径を有する一般部51と、下端側の所定領域に一般部51に対して縮径する括れ状に形成され、外側に付着した化粧料Fを保持する液体保持部52と、この液体保持部52の下端部に設けられ、液体保持部52に保持された化粧料Fの塗布に供する塗布部53と、を一体に有する。なお、一般部51の外径D1は、容器本体1の軸挿通孔13の内径R1よりも十分に小さい所定の外径に設定され、当該軸挿通孔13において、液体保持部52に付着した化粧料Fが刮ぎ落とされることがないような寸法関係となっている(図3参照)。具体的には、一般部51の外径D1は、4.7mmに設定されている。
【0039】
液体保持部52は、特に図3に示すように、全周に亘って一般部51よりも小さい外径D2に設定されていて、軸方向の両端側から中央側に向かって外径D2が漸次縮小し、中央部において最も縮径する、縦断面凹円弧状となるように形成されている。具体的には、液体保持部52は、曲率半径が12.5mmに設定された凹円弧状に形成され、中央部の外径D2が2.5mmに設定されている。また、液体保持部52は、蓋体2が容器本体1にねじ込まれた状態で、容器本体1の内部に収容された化粧料Fに浸漬可能な領域に設けられている。とりわけ、この液体保持部52は、化粧料Fが使用等により経時的にある程度減少しても容器本体1内に残る化粧料Fに浸漬可能な領域、すなわち軸部5の下端部近傍の所定領域に設けられている。
【0040】
塗布部53は、軸部5の先端に、液体保持部52と滑らかに連続するように当該液体保持部52に連接して設けられ、一般部51の外径D1を直径とするほぼ半球状となる、縦断面凸円弧状に形成されている。なお、本実施形態では、塗布部53の一例としてほぼ半球状の態様を例示するが、本発明に係る塗布部は、かかる態様に限定されるものではなく、いかなる態様であってもよい。
【0041】
(液体塗布具の使用状態)
本実施形態に係る液体塗布具3は、まず、図4(a)に示すように、蓋体2を回して容器本体1から蓋体2を離脱して、容器本体1に収容された液体塗布具3を取り出す。すると、容器本体1内において化粧料Fに浸漬していた液体塗布具3の液体保持部52には、図示のように、ラメLを含む化粧料Fが付着した状態となっている。このように、ラメLを含む化粧料Fを液体保持部52に付着させる、すなわち液体保持部52に保持させる(溜める)ことにより、化粧料Fを容器本体1から取り出す。
【0042】
続いて、図4(b)に示すように、液体塗布具3の塗布部53を被塗布体である爪Nの表面に載せて、液体保持部52に付着していた(溜められていた)化粧料Fを、爪Nの表面に移す。すなわち、塗布部53を爪Nの表面に載せることで、液体保持部52に溜まったラメLを含む化粧料Fを、重力により軸部5(塗布部53)の外面を伝って爪Nの表面に滴下させる。これを繰り返して、化粧料Fを爪Nの表面に行き渡らせることによって、塗布が完了する。
【0043】
このように、本実施形態に係る液体塗布具3は、従来のブラシを用いた塗布具のように化粧料Fを伸ばして塗布するのではなく、軸部5の液体保持部52に付着させる(溜める)ことによって取り出した化粧料Fを、液体保持部52に連接した塗布部53を介して爪Nの表面に置くように滴下することによって、当該化粧料Fの塗布を行う。このため、液体保持部52に付着した(溜まった)、多数のラメLを含む化粧料Fが、そのまま爪Nの表面に移動することになり、十分な量のラメLを含んだ化粧料Fの塗布が可能となる。
【0044】
(本実施形態の効果確認試験)
本実施形態に係る液体塗布具3の特徴的な作用効果について説明する前に、本実施形態に係る液体塗布具3の効果を、従来のものと定量的に比較するため、以下のような試験を行い、その結果をそれぞれ表1、表2にまとめた。表1は、図10に示すようなブラシ104を用いた従来の液体塗布具100に相当する液体塗布具による結果を示し、表2は、本実施形態に係る液体塗布具3による結果を示している。また、表1、表2の(a)は試料Aによる試験結果を示し、(b)は試料Bによる試験結果を示している。そして、試料Aは、1〜1.5mm程度の円形又は正方形のラメを含む化粧料であり、試料Bは、2〜3mm程度の六角形や菱形など異形のラメを含む化粧料である。
【0045】
試験方法としては、1cm2に切り出した樹脂製のシートに化粧液を塗布し、この塗布した化粧料の重量と、当該化粧料に含まれるラメの数量を、計10回繰り返し測定することにより行った。なお、重量の測定は、化粧料の塗布直後、乾燥前に測定した。
【0046】
【表1】
【0047】
まず、ブラシを用いた従来の液体塗布具によれば、表1(a)に示すように、試料Aでは、平均して、塗布量が0.022g/cm2、ラメ数が7.8個/cm2であり、表1(b)に示すように、試料Bでは、平均して、塗布量が0.025g/cm2、ラメ数が7.3個/cm2であった。また、当該従来の液体塗布具では、ラメ数のばらつき、すなわち最大値と最小値との差分が、試料Aでは10個/cm2、試料Bでは14個/cm2となった。
【0048】
【表2】
【0049】
これに対して、本実施形態に係る液体塗布具3によれば、表2(a)に示すように、試料Aでは、平均して、塗布量が0.030g/cm2、ラメ数が15.7個/cm2であり、表2(b)に示すように、試料Bでは、平均して、塗布量が0.027g/cm2、ラメ数が12.1個/cm2であった。また、本実施形態に係る液体塗布具3では、ラメ数のばらつき、すなわち最大値と最小値との差分が、試料Aでは8個/cm2、試料Bでは10個/cm2となった。
【0050】
以上の試験結果から、本実施形態に係る液体塗布具3では、従来の液体塗布具に対して、およそ1.6〜2倍のラメを塗布可能であることが確認された。さらに、本実施形態に係る液体塗布具3では、従来の液体塗布具よりもラメ数のばらつきが少なくなることも確認された。また、液体保持部52に付着した化粧料Fを塗布部53より滴下させて塗布する本実施形態に係る液体塗布具3の場合、ブラシにより化粧料を伸ばして塗布する従来の液体塗布具と比べて、塗布量が若干多くなることが確認された。しかし、重量当たりのラメ数(表の最右列)で比較してみると、本実施形態に係る液体塗布具3では、従来の液体塗布具と比べて1.5倍以上のラメを塗布可能であることが確認された。
【0051】
(本実施形態の作用効果)
以下、本実施形態に係る液体塗布具の特徴的な作用効果について具体的に説明する。
【0052】
本実施形態に係る液体塗布具3によれば、軸部5の外面に設けた液体保持部52に化粧料Fを付着させる(溜める)ことにより容器本体1から取り出した化粧料Fを、軸部5の外面、すなわち液体保持部52に連接する塗布部53の外面を伝って、被塗布体である爪Nへと滴下させることによって塗布を行う。これにより、化粧料Fに含まれるラメLを直接そのまま爪Nに塗布することができ、十分な量のラメLを含む化粧料Fを爪Nに塗布することができる。
【0053】
また、液体保持部52については、形状や深さを調整することで、化粧料Fの付着量や滴下速度を調整することが可能となる。とりわけ、液体保持部52を深く(曲率半径R2を小さく)設定することによって、より多くのラメLを含む化粧料Fを溜めることができると共に、化粧料Fの滴下速度を抑えることが可能となる。このように、液体保持部52の深さ(曲率半径R2)を調整することによって、化粧料Fの塗布量及び塗布作業性、ひいては液体塗布具3の強度の最適化を図ることができる。
【0054】
また、従来の液体塗布具100には、図10に示すように、ブラシ104に付着した化粧料Fを適量に調整するためのしごき部105が設けられている。このため、ブラシ104に付着した化粧料Fに含まれたラメ(図示外)が当該しごき部105により刮ぎ落とされてしまい、容器101から十分な量のラメを取り出せない場合がある。
【0055】
これに対して、本実施形態に係る液体塗布具3は、前記しごき部105に相当する構成を有しない容器本体1に用いられるものであって、液体保持部52に保持された化粧料Fが容器本体1において搾取されるおそれがない。これにより、液体保持部52に保持された化粧料Fに含まれるラメLが容器本体1に刮ぎ落とされず、十分な量のラメLを取り出して塗布することができる。
【0056】
また、本実施形態では、液体保持部52が、いわゆる括れ状に、軸部5の全周に亘って設けられているため、十分な量のラメLを含んだ化粧料Fの保持が可能となる。これにより、十分な量のラメLを含む化粧料Fを爪Nに塗布することができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、液体保持部52が、縦断面凹円弧状に形成されていることで、当該液体保持部52に保持された化粧料Fを滑らかに流動させて爪Nに滴下させることが可能となり、化粧料Fの塗布作業を容易に行うことができる。
【0058】
また、従来の液体塗布具100は、ブラシ104が軟質であるため、爪Nにおいて、所望とする位置に、いわゆるピンポイントでラメLを塗布することが困難であった。
【0059】
これに対して、本実施形態に係る液体塗布具3は、塗布部53が合成樹脂によって形成されているため、化粧料F(ラメL)を塗布する際に塗布部53が大きく変形することはない。これにより、爪Nにおいて、所望とする位置に、ピンポイントでラメLを塗布することができる。
【0060】
また、本実施形態では、蓋体2と軸部5を別体に、かつ前記係止構造により着脱可能に構成したことで、後述するような軸部5の形状を変更した塗布具や、従来のブラシ状の塗布具との間で、それぞれ蓋体2を共通化することができる。これにより、容器本体1及び蓋体2の仕様を変更することなく、異なる仕様の液体塗布具を利用することが可能となり、製造コストの低廉化に寄与することができる。
【0061】
(第1実施形態の変形例)
前記第1実施形態では、液体塗布具3の塗布部53を半球状に形成したものを例示したが、前述したように塗布部53の形態はこれに限定されるものではない。換言すれば、例えば図5に示すように、塗布部53の形態を、先細り状に、先端の曲率半径R3が比較的小さくなるように形成してもよい。
【0062】
本変形例のように、塗布部53の先端の曲率半径R3を小さく形成することで、化粧料Fを狭い領域に塗布する場合など、細かな塗布作業に有利なものとなる。このように、例えば被塗布体に応じて塗布部53の先端の曲率半径R3を調整することにより、それぞれの被塗布体に最適な塗布作業性を得ることができる。
【0063】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明に係る液体塗布具の第2実施形態を示し、前記第1実施形態における液体保持部52の具体的構成を変更したものである。なお、当該変更点以外の基本的な構成については、前記第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことによって、その説明を省略する。
【0064】
本実施形態に係る液体塗布具3は、図6に示すように、前記第1実施形態に係る液体塗布具3の液体保持部52から塗布部53にかけて、軸部5の軸方向に連続する直線状の溝部54が形成されている。そして、この溝部54は、周方向に複数設けられており、本実施形態では、90°間隔で周方向に4つの溝部54が設けられている。なお、この溝部54の深さは、一定としてもよく、また、液体保持部52や塗布部53の各箇所において変化させてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態では、液体保持部52から塗布部53にかけて、一連の溝部54が形成されていることで、液体保持部52に加えて、この溝部54によって、より多くの化粧料Fを保持させる(溜める)ことが可能となる。これにより、より多くのラメLを含む化粧料Fを爪Nに塗布することができる。
【0066】
また、本実施形態では、溝部54が複数設けられているため、これら各溝部54により、より多くの液体を保持させる(溜める)ことが可能となる。これにより、さらに多くのラメLを含む化粧料Fを爪Nに塗布することができる。また、溝部54も含めて、より多くの化粧料Fを保持させることができるため、容器本体1から化粧料Fを取り出す回数を低減することが可能となり、利便性が向上するメリットもある。
【0067】
〔第3実施形態〕
図7は、本発明に係る液体塗布具の第3実施形態を示し、前記第1実施形態における液体保持部52の具体的構成を変更したものである。なお、当該変更点以外の基本的な構成については、前記第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことによって、その説明を省略する。
【0068】
本実施形態に係る液体塗布具3は、図7に示すように、前記第1実施形態に係る液体塗布具3において、軸部5の先端側に、前記括れ状の液体保持部52が、軸方向へ直列に連接するように設けられている。
【0069】
以上のように、本実施形態では、複数の液体保持部52が、軸方向に直列に配置されているため、これら各液体保持部52に、より多くの化粧料F、すなわちより多くのラメLを含む化粧料Fを保持させることができる。これにより、比較的広い被塗布面にも、少ない回数で化粧料Fを塗布することが可能となり、利便性が向上する。
【0070】
(変形例)
前記第3実施形態では、前記第1実施形態に係る液体塗布具3の液体保持部52を単に直列に複数配置したものを例示したが、本発明に係る液体保持部を軸方向へ直列に配置する形態は、これに限定されるものではない。換言すれば、例えば図8に示すように、軸部5の先端側に、複数(本実施形態では4つ)の球状部55を団子状に直列配置することによって、当該各球状部55間に括れ状の液体保持部52を形成してもよい。
【0071】
本変形例のように、複数の球状部55を直列に配置して複数の液体保持部52を形成することによって、軸部5の先端側に、より多くの液体保持部52を設けることができる。かかる多数の液体保持部52を設けることで、化粧料Fの滴下速度をさらに低下させることが可能となり、化粧料Fの塗布作業性の向上に寄与することができる。
【0072】
〔第4実施形態〕
図9は、本発明に係る液体塗布具の第4実施形態を示し、前記第1実施形態における液体保持部52の具体的構成を変更したものである。なお、当該変更点以外の基本的な構成については、前記第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことによって、その説明を省略する。
【0073】
本実施形態に係る液体塗布具3は、図9に示すように、軸部5の先端側が、扁平状に形成され、かつこの扁平部56が波形に屈曲形成されていて、この各屈曲部57の軸方向間に、複数の液体保持部52が、軸方向に沿って互い違いに形成されている。
【0074】
以上、本実施形態ように、軸部5の先端側(扁平部56)を波形に形成することで、複数の液体保持部52を軸方向に形成することも可能であり、かかる態様によっても、液体保持部52の容量(化粧料Fの付着量)を増やすことができる。これにより、十分な量のラメLを含む化粧料Fを爪Nに塗布することができる。
【0075】
本発明は、前記実施形態において例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適用対象の仕様等に応じて自由に変更することができる。
【0076】
特に、前記実施形態にて開示した蓋体2と液体塗布具3との取付態様は一例であって、前記実施形態の取付態様に限定されるものではなく、蓋体2と液体塗布具3とが一定の固定状態を維持し、かつ蓋体2に対し液体塗布具3が着脱可能に構成される態様であれば、いずれの態様も採用し得る。なお、蓋体2と液体塗布具3の仕様によっては、両者を一体に成形してもよく、必ずしも両者別体の構成に限定されるものでもない。
【0077】
また、前記実施形態では、液体塗布具3を合成樹脂によって一体に成形したものを例示して説明したが、当該液体塗布具3についても、例えば接続基部4と軸部5とを別体に形成してもよい。すなわち、例えば接続基部4に対し軸部5を別体に形成することで、使用する化粧料Fに応じて使用者が最適な軸部を選択し、付け替えることが可能になり、さらに利便性が向上する。なお、この場合、例えばラメLを含まない化粧料Fを使用する際には、前記従来のような先端にブラシを有する軸部に付け替えることも可能になる。
【0078】
また、前記実施形態では、塗布部53を縦断面凸円弧状に形成したものを例示して説明したが、例えば尖形となる縦断面逆三角形状に形成したり、先端がほぼ平面状となる縦断面矩形状に形成したりすることも可能である。このように、塗布部53の具体的な形状については、液体塗布部3の仕様に応じて任意に変更可能である。
【0079】
また、前記実施形態では、ラメLが含まれたマニキュアの化粧料Fを本発明に係る液体の一例として説明したが、本発明に係る液体塗布具は、かかるラメ入りのマニキュアの化粧料以外にも、例えば金粉入りの美容液や、ラメ入りのリップグロスなど、様々な液体に適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…容器本体(容器)
2…蓋体
3…液体塗布具
5…軸部
52…液体保持部
53…塗布部
54…溝部
F…化粧料(液体)
L…ラメ(極小片)
N…爪(被塗布体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10