特許第6961575号(P6961575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961575
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】神経刺激装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   A61N1/36
【請求項の数】17
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2018-511600(P2018-511600)
(86)(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公表番号】特表2018-526122(P2018-526122A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】US2016049824
(87)【国際公開番号】WO2017040739
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年8月27日
(31)【優先権主張番号】62/214,474
(32)【優先日】2015年9月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/322,985
(32)【優先日】2016年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510025832
【氏名又は名称】サイオン・ニューロスティム,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ブラック,ロバート・ディー
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ランティ・エル
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,レスコ・エル
【審査官】 高田 元樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0016431(US,A1)
【文献】 特表昭62−501192(JP,A)
【文献】 米国特許第07856275(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0195588(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0005840(US,A1)
【文献】 特表2014−507964(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0239227(US,A1)
【文献】 特開2006−296490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極及び第2の電極であって、前記第1の電極及び前記第2の電極は、経皮的電気刺激を通して被検者に変調電気信号を送達するように構成されている、第1の電極及び第2の電極と、
第1のイヤピース及び第2のイヤピースであって、該イヤピースの各々は前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれ1つを備える、第1のイヤピース及び第2のイヤピースと
備え、
前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれは、前記被検者のそれぞれの外耳道内に挿入可能であるように構成され、ガルバニック前庭刺激(GVS)を通して前記被検者に前記変調電気信号を送達するように構成され、
記第1の電極及び前記第2の電極を通して被検者に変調電気信号を送達するように構成された波形発生器を備えるコントローラであって、前記変調電気信号は、電気パルスの隣接するパケットの間の第1の時間的間隔によって互いに間隔が空けられた電気パルスの複数のパケットを含み、電気パルスの該複数のパケットのそれぞれは、各パケット内の隣接する電気パルスの間の第2の時間的間隔によって互いに間隔が空けられた複数の電気パルスを有し、各電気パルスは、時間的幅と、電圧の振幅とを有し、前記コントローラは、時間変化する変調波形及び約0.005Hz〜約200Hzの標的刺激周波数に基づいて、電気パルスの前記複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記第1の時間的間隔を変更することにより、前記送達された電気信号を変調するように構成される、コントローラをさらに備える、
経刺激装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記標的刺激周波数に基づいて、正弦波変調において前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記第1の時間的間隔を最小値と最大値との間で変更するように構成され、
前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記第1の時間的間隔の前記最小値は、標的ニューロンが、電気パルスの前記複数のパケットのうちの前記隣接するものの電気パルスに続くパケットによって活性化される前に回復することができるように構成される、請求項に記載の神経刺激装置。
【請求項3】
前記コントローラは、式S(t)=Smin+S*sin(ωt)に従って、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を変更するように構成されており、
式中、S(t)は前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔であり、Smin及びSは時定数であり、ωは前記標的刺激周波数に比例する、請求項に記載の神経刺激装置。
【請求項4】
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの量は、2〜200であり、
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの時間的幅は、10マイクロ秒〜500マイクロ秒であり、
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの電圧の振幅は、1ボルト〜10ボルトであり、
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスのうちの隣接するものの間の前記第2の時間的間隔は、10マイクロ秒〜500マイクロ秒である、請求項に記載の神経刺激装置。
【請求項5】
前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記第1の時間的間隔の最小値は、100マイクロ秒より大きく、
前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記第1の時間的間隔の最大値は、100ミリ秒未満である、請求項に記載の神経刺激装置。
【請求項6】
前記変調電気信号は、前記標的刺激周波数に基づいて前記被検者の脳の標的部分において脳律動を引き起こすか、又は内因性脳律動を同調させるように構成されている、請求項に記載の神経刺激装置。
【請求項7】
コントローラは、より低い標的周波数とより高い標的周波数との間で前記標的刺激周波数を変更するように構成されている、請求項に記載の神経刺激装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記より低い標的周波数と前記より高い標的周波数との間の一パターンで、前記標的刺激周波数を繰り返し増大及び/又は低減させるように構成されている、請求項に記載の神経刺激装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記より低い標的周波数から前記より高い標的周波数まで増大するパターンで前記標的刺激周波数を繰り返し循環させ、その後、該より低い標的周波数に戻るように低減させるように構成されている、請求項に記載の神経刺激装置。
【請求項10】
前記第1のイヤピース及び前記第2のイヤピースにそれぞれ熱的に結合された第1の熱電素子及び第2の熱電素子と、
前記第1のイヤピース及び前記第2のイヤピースのそれぞれに対向して、前記第1の熱電素子及び前記第2の熱電素子それぞれに熱的に結合された第1のヒートシンク及び第2のヒートシンク
更に備え、
前記コントローラは、前記第1の熱電素子から出力される第1の時間変化する熱波形を制御する第1の制御信号と、前記第2の熱電素子から出力される第2の時間変化する熱波形を制御する第2の制御信号とを発生させるように構成されている、請求項に記載の神経刺激装置。
【請求項11】
前記第1の熱電素子及び前記第2の熱電素子は、前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号に基づいてカロリック前庭刺激(CVS)を提供するように構成されている、請求項10に記載の神経刺激装置。
【請求項12】
前記CVSと同時に前記GVSを提供するように構成されている、請求項11に記載の神経刺激装置。
【請求項13】
記GVSの前記標的刺激周波数は、前記被検者の脳の標的部分に対する前記CVSの送達を促進するように選択される、請求項11に記載の神経刺激装置。
【請求項14】
前記コントローラは、
前記第1の電極と前記第2の電極との間のインピーダンスを測定し、
前記測定されたインピーダンスが閾値未満であると判断するように構成され、該閾値は、前記イヤピースが前記被検者の前記外耳道と、前記変調電気信号が該外耳道に送達されるのに十分接触していることを示す、請求項1に記載の神経刺激装置。
【請求項15】
第1のスピーカ及び第2のスピーカを更に備え、
前記コントローラは、前記変調電気信号の前記送達と同時に、前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカを介して前記被検者に音響波形を聴覚的に送達するように構成されている、請求項1に記載の神経刺激装置。
【請求項16】
前記音響波形は音楽を含む、請求項15に記載の神経刺激装置。
【請求項17】
前記音響波形は音声を含む、請求項15に記載の神経刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経刺激に関し、特に、神経刺激システム、装置及び方法に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2015年9月4日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第62/214,474号、及び2016年4月15日に出願された米国仮特許出願第62/322,985号の継続出願であり、かつそれらの出願に対する優先権を主張し、それらの出願の各々の内容全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
神経刺激は、神経系の1つ以上の部分の治療的及び/又は診断的活性化である。神経系は、植込み型電極等の侵襲性手段を通して、又は皮膚に取り付けられた電極等、より低侵襲性の手段を通して、電気的に刺激することができる。非電気形態の神経刺激は、神経系を刺激するために電磁波、光、音又は温度を使用する場合がある。神経刺激は、様々な疾患の医療的治療及び/又は診断の目的で使用されてきた。
【0004】
前庭刺激は、前庭蝸牛神経、すなわち第VIII脳神経の前庭枝を刺激する神経刺激の一形態である。本明細書で用いられる場合、「前庭神経」は、第VIII脳神経の前庭枝を指すものとする。前庭神経は、電気的に刺激される場合があり、これはガルバニック前庭刺激又は前庭電気刺激(「GVS」)と呼ばれ、又は温度を用いて刺激される場合があり、これはカロリック前庭刺激(Caloric Vestibular Stimulation)と呼ばれる。
【0005】
幾つかの従来の2極GVSシステムは、乳様突起に隣接する左乳様突起骨と右乳様突起骨との間に、内耳内の前庭器官を通過するように電流を与える。幾つかの従来の3極GVSシステムは、前頭部と左乳様突起及び右乳様突起との間に電流を与える。皮膚の電気インピーダンスに打ち勝つために、皮膚を研磨する場合があり、導電性ゲルを用いる場合があり、及び/又は所望の電流を与えるためにより高い電圧を用いる場合がある。例えば、非特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】R. C. Fitzpatrick, B. L. Day, Probing the human vestibular system with galvanic stimulation. J Appl Physiol 96, 2301-2316 (2004); published online EpubJun (10.1152/japplphysiol.00008.2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、個人の神経系及び/又は前庭系に、より低い電圧の刺激を送達するのに有用な装置及び関連方法が、種々の医療状態を診断及び/又は処置する際に有用である生理的応答を最大限に利用することがおそらく有益である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの実施形態では、神経刺激方法が提供される。方法は、患者に接続された複数の電極に電気信号を送達することを含むことができる。電気信号は、電気パルスの複数の間隔が空けられたパケットを含むことができる。複数のパケットのそれぞれは、複数の電気パルスと、電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の時間的間隔とを含むことができる。電気パルスのそれぞれは、時間的幅と、電圧及び/又は電流の振幅と、パケット内の電気パルスのうちの隣接するものの間の時間的間隔とを含むことができる。本方法は、電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの量と、電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの時間的幅と、電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの電圧の振幅と、電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスのうちの隣接するものの間の時間的間隔と、電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の時間的間隔とのうちの少なくとも1つを変調して、電気信号を変調することを含むことができる。
【0009】
幾つかの実施形態では、本方法は、標的刺激周波数に基づいて前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの量を変調することを含むことができる。
【0010】
幾つかの実施形態では、前記変調することは、標的刺激周波数に基づいて、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記時間的幅を変調することを含むことができる。
【0011】
幾つかの実施形態では、前記変調することは、標的刺激周波数に基づいて、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記電圧の振幅を変調することを含むことができる。
【0012】
幾つかの実施形態では、前記変調することは、標的刺激周波数に基づいて、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の前記電気パルスのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を変調することを含むことができる。
【0013】
幾つかの実施形態では、前記変調することは、標的刺激周波数に基づいて、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を変調することを含むことができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、前記変調することは、前記標的刺激周波数に基づいて、正弦波変調において前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を最小値と最大値との間で変更することを含むことができる。
【0015】
幾つかの実施形態では、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔の前記最小値は、標的ニューロンが、電気パルスの次のパケットによって活性化される前に回復することができるように十分大きくすることができる。
【0016】
幾つかの実施形態では、前記変更することは、式S(t)=Smin+S*sin(ωt)に従って、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を変更することを含むことができ、式中、S(t)は前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔であり、Smin及びSは時定数であり、ωは前記標的刺激周波数に比例する。
【0017】
幾つかの実施形態では、電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの量は、2〜約200とすることができる。電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの時間的幅は、約10マイクロ秒〜約500マイクロ秒とすることができる。電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの電圧の振幅は、約1ボルト〜約10ボルトとすることができる。電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスのうちの隣接するものの間の時間的間隔は、約10マイクロ秒〜約500マイクロ秒とすることができる。
【0018】
幾つかの実施形態では、前記変調することは、正弦波変調において前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を約100マイクロ秒〜約100ミリ秒で変更することを含むことができる。
【0019】
幾つかの実施形態では、前記標的刺激周波数は、約0.005Hz〜約200Hzとすることができる。
【0020】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記変調電気信号に基づいて前記脳の標的部分において脳律動を引き起こすように、該変調電気信号を選択することを含むことができる。
【0021】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記変調電気信号に基づいて前記脳の標的部分において内因性脳律動を同調させることを含むことができる。
【0022】
幾つかの実施形態では、変調することは、より低い標的周波数とより高い標的周波数との間で前記標的刺激周波数を変調することを含むことができる。
【0023】
幾つかの実施形態では、前記標的刺激周波数を変調することは、前記より低い標的周波数と前記より高い標的周波数との間の時間変化するパターンで、前記標的刺激周波数を繰り返し増大及び/又は低減させることを含むことができる。
【0024】
幾つかの実施形態では、前記標的刺激周波数を変調することは、前記より低い標的周波数から前記より高い標的周波数まで増大するパターンで前記標的刺激周波数を繰り返し循環させ、その後、該より低い標的周波数に戻るように低減させることを含むことができる。
【0025】
幾つかの実施形態では、前記電気信号を送達することは、経皮的電気刺激を含むことができる。
【0026】
幾つかの実施形態では、前記変調電気信号を送達することは、ガルバニック前庭刺激(GVS)を含むことができる。
【0027】
幾つかの実施形態では、本方法は、GVSを通しての前記変調電気信号の前記送達と同時に、カロリック前庭刺激(CVS)を通して、前記患者に時間変化する熱波形を送達することを含むことができる。
【0028】
幾つかの実施形態では、前記GVSの標的刺激周波数は、約0.005Hz〜約200Hzとすることができる。前記GVSは、前記脳の標的部分に対する前記CVSの送達を促進することができる。
【0029】
幾つかの実施形態では、前記電気信号の前記変調は、変調波形に基づいて該電気信号を変調することを含むことができる。幾つかの実施形態では、前記変調波形は音響波形を含むことができる。幾つかの実施形態では、前記音響波形は音楽を含むことができる。幾つかの実施形態では、前記音響波形は音声を含むことができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、本方法は、前記変調電気信号の前記送達と同時に、前記患者に音響波形を聴覚的に送達することを含むことができる。幾つかの実施形態では、前記音響波形は音楽を含むことができる。幾つかの実施形態では、前記音響波形は音声を含むことができる。幾つかの実施形態では、前記電気信号の前記変調は、前記音響波形に基づくことができる。
【0031】
幾つかの実施形態では、電極は、患者のそれぞれの耳の中に挿入されるように構成されたイヤピースを含むことができる。イヤピースは、患者に音響波形を送達するスピーカを含むことができる。送達される音響波形の知覚される音量は、イヤピースが患者の外耳道と、変調電気信号が外耳道に送達されるのに十分接触していることを示すことができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、神経刺激装置が提供される。神経刺激装置は、第1の電極及び第2の電極とコントローラとを含むことができる。コントローラは、第1の電極及び第2の電極を通して被検者に変調電気信号を送達するように構成された波形発生器を含むことができる。変調電気信号は、電気パルスの複数の間隔が空けられたパケットを含むことができる。複数のパケットのそれぞれは、複数の電気パルスと、電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の時間的間隔とを含むことができる。電気パルスのそれぞれは、時間的幅と、電圧の振幅と、パケット内の電気パルスのうちの隣接するものの間の時間的間隔とを含むことができる。電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの量と、電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの時間的幅と、電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの電圧の振幅と、電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスのうちの隣接するものの間の時間的間隔と、電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の時間的間隔とのうちの少なくとも1つを変調して、電気信号を変調することができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、前記第1の電極及び前記第2の電極は、経皮的電気刺激を通して前記被検者に前記変調電気信号を送達するように構成することができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、前記神経刺激装置は、第1のイヤピース及び第2のイヤピースを備えることができる。該イヤピースの各々は前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれ1つを備えることができる。前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれは、前記被検者のそれぞれの外耳道内に挿入可能であるように構成することができ、ガルバニック前庭刺激(GVS)を通して前記被検者に前記変調電気信号を送達するように構成することができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、前記コントローラは、標的刺激周波数に基づいて、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するもの間の前記時間的間隔を変調するように構成することができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、前記コントローラは、前記標的刺激周波数に基づいて、正弦波変調において前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を最小値と最大値との間で変更するように構成することができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔の前記最小値は、標的ニューロンが、電気パルスの次のパケットによって活性化される前に回復することができるように十分大きくすることができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、前記コントローラは、式S(t)=Smin+S*sin(ωt)に従って、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を変調するように構成されており、式中、S(t)は前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔であり、Smin及びSは時定数であり、ωは前記標的刺激周波数に比例する。
【0039】
幾つかの実施形態では、電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの量は、2〜約200とすることができる。電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの時間的幅は、約10マイクロ秒〜約500マイクロ秒とすることができる。電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの電圧の振幅は、約1ボルト〜約10ボルトとすることができる。電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスのうちの隣接するものの間の時間的間隔は、約10マイクロ秒〜約500マイクロ秒とすることができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔の最小値は、約100マイクロ秒より大きくすることができる。前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔の最大値は、約100ミリ秒未満とすることができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、前記標的刺激周波数は、約0.005Hz〜約200Hzとすることができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、前記変調電気信号は、前記標的刺激周波数に基づいて前記被検者の脳の標的部分において脳律動を引き起こすように構成することができる。
【0043】
幾つかの実施形態では、前記変調電気信号は、前記標的刺激周波数に基づいて前記被検者の脳の標的部分において内因性脳律動を同調させるように構成することができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、コントローラは、より低い標的周波数とより高い標的周波数との間で前記標的刺激周波数を変調するように構成することができる。
【0045】
幾つかの実施形態では、前記コントローラは、前記より低い標的周波数と前記より高い標的周波数との間の一パターンで、前記標的刺激周波数を繰り返し増大及び/又は低減させるように構成することができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、前記コントローラは、前記より低い標的周波数から前記より高い標的周波数まで増大するパターンで前記標的刺激周波数を繰り返し循環させ、その後、該より低い標的周波数に戻るように低減させるように構成することができる。
【0047】
幾つかの実施形態では、前記神経刺激装置は、前記第1のイヤピース及び前記第2のイヤピースにそれぞれ熱的に結合された第1の熱電素子及び第2の熱電素子を備えることができる。前記神経刺激装置は、前記第1のイヤピース及び前記第2のイヤピースのそれぞれに対向して、前記第1の熱電素子及び前記第2の熱電素子それぞれに熱的に結合された第1のヒートシンク及び第2のヒートシンクを備えることができる。前記コントローラは、前記第1の熱電素子から出力される第1の時間変化する熱波形を制御する第1の制御信号と、前記第2の熱電素子から出力される第2の時間変化する熱波形を制御する第2の制御信号とを発生させるように構成することができる。
【0048】
幾つかの実施形態では、前記第1の熱電素子及び前記第2の熱電素子は、前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号に基づいてカロリック前庭刺激(CVS)を提供するように構成することができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、前記装置は、前記CVSと同時に前記GVSを提供するように構成することができる。
【0050】
幾つかの実施形態では、前記GVSの前記標的刺激周波数は、約0.005Hz〜約200Hzとすることができる。前記GVSは、前記被検者の脳の標的部分に対する前記CVSの送達を促進することができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、前記コントローラは、前記第1の電極と前記第2の電極との間のインピーダンスを測定するように構成することができる。前記コントローラは、前記測定されたインピーダンスが閾値未満であると判断するように構成することができる。該閾値は、前記イヤピースが前記被検者の前記外耳道と、前記変調電気信号が該外耳道に送達されるのに十分接触していることを示すことができる。
【0052】
幾つかの実施形態では、コントローラは、変調波形に基づいて電気信号を変調するように構成することができる。幾つかの実施形態では、変調波形は音響波形を含むことができる。幾つかの実施形態では、音響波形は音楽を含むことができる。幾つかの実施形態では、音響波形は音声を含むことができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、神経刺激装置は、第1のスピーカ及び第2のスピーカを含むことができる。コントローラは、変調電気信号の送達と同時に、第1のスピーカ及び第2のスピーカを介して患者に音響波形を聴覚的に送達するように構成することができる。幾つかの実施形態では、音響波形は音楽を含むことができる。幾つかの実施形態では、音響波形は音声を含むことができる。幾つかの実施形態では、電気信号の変調は、音響波形に基づくことができる。
【0054】
幾つかの実施形態では、電極は、患者のそれぞれの耳の中に挿入されるように構成されているイヤピースを含むことができる。送達される音響波形の知覚される音量は、イヤピースが患者の外耳道と、変調電気信号が外耳道に送達されるのに十分接触していることを示すことができる。
【0055】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明の幾つかの実施形態による刺激装置、方法及びシステムを示す概略ブロック図である。
図2】本発明の幾つかの実施形態による耳内電極を有する刺激装置を示す正面図である。
図3】本発明の幾つかの実施形態による刺激装置を装着している使用者を示す正面図及び側面図である。
図4】本発明の幾つかの実施形態による刺激装置を示す概略ブロック図である。
図5】本発明の幾つかの実施形態による刺激装置を示す概略ブロック図である。
図6A図5の刺激装置のイヤピースを示す正面斜視図である。
図6B図6Aのイヤピースを概略的に示す断面図である。
図7】本発明の幾つかの実施形態による刺激装置のイヤピースの様々な代替的な形状及びサイズを示す側面図である。
図8】本発明の幾つかの実施形態による外部印加刺激信号のための刺激信号の経路を示す概略図である。
図9】人体の耳及び周囲の部分を概略的に示す断面図である。
図10】ヒト頭部のコンピュータ断層撮影法に関する電極の相対的な配置を概略的に示す断面図である。
図11】本発明の幾つかの実施形態による、皮膚のインピーダンスと刺激波長の周波数との関係を示すグラフである。
図12】本発明の幾つかの実施形態による変調刺激波長を示すグラフである。
図13】本発明の幾つかの実施形態による、電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の変調された時間的間隔を示すグラフである。
図14】本発明の幾つかの実施形態による、電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の変調された時間的間隔と、対応する変調刺激波長とを示すグラフである。
図15A】本発明の幾つかの実施形態のうちの1つによる変調された標的刺激周波数を示すグラフである。
図15B図15Aの変調された標的刺激周波数による、電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の変調された時間的間隔を示すグラフである。
図15C】本発明の幾つかの実施形態のうちの1つによる変調された標的刺激周波数を示すグラフである。
図15D図15Cの変調された標的刺激周波数による、電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の変調された時間的間隔を示すグラフである。
図15E】本発明の幾つかの実施形態のうちの1つによる変調された標的刺激周波数を示すグラフである。
図15F図15Eの変調された標的刺激周波数による、電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の変調された時間的間隔を示すグラフである。
図16A】本発明の幾つかの実施形態による搬送波波形関数を示すグラフである。
図16B】本発明の幾つかの実施形態による変調波形を示すグラフである。
図16C】本発明の幾つかの実施形態による振幅変調電気信号を示すグラフである。
図16D】本発明の幾つかの実施形態による周波数変調電気信号を示すグラフである。
図17】本発明の幾つかの実施形態によるコントローラの幾つかの部分を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
これより、本発明について、本発明の実施形態が示される添付図面及び実施例を参照して以下において説明する。しかし、本発明は多くの異なる形態で具現することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。そうではなく、これらの実施形態は、本開示が完全かつ完璧なものになり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供される。
【0058】
同様の符号が、全体を通して同様の要素を指す。図面において、或る特定のライン、層、構成要素、要素又は特徴の厚みは、明確性のために誇張されている場合がある。
【0059】
定義
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明することだけを目的とし、本発明の限定を意図するものではない。本明細書において用いられる場合、文脈によりその他の場合が明らかに示される場合を除き、単数形(the singular forms "a", "an" and "the")は、複数形も包含することを意図される。本明細書において用いられる場合、用語「備える、含む(comprise)」及び/又は「備えている、含んでいる(comprising)」が、述べられている特徴、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を除外しないことが更に理解されよう。本明細書において用いられる場合、用語「及び/又は(and/or)」は、関連付けられて列挙された項目のうちの1つ以上の任意及び全ての組み合わせを含む。本明細書において用いられる場合、「X〜Y(between X and Y)」及び「約X〜Y(between about X and Y)」等の句は、X及びYを含むと解釈されるべきである。本明細書において用いられる場合、「約X〜Y(between about X and Y)」等の句は、「約X〜約Y(between about X and about Y)」を意味する。本明細書において用いられる場合、「約XからY(from about X to Y)」等の句は、「約Xから約Y(from about X to about Y)」を意味する。
【0060】
他に規定のない限り、本明細書において用いられる全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。一般に用いられる辞書において定義される用語等の用語が、本明細書の文脈及び関連する技術分野での意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において、理想化された、又は過度に形式張った意味で明確に定義される場合を除き、そのような意味で解釈されるべきではないことが更に理解されよう。既知の機能又は構造については、簡潔及び/又は明確にするように詳細に説明しない場合がある。
【0061】
要素が、別の要素「の上に(on)」、別の要素に「取付けられる(attached)」、別の要素に「接続される(connected)」、別の要素に「結合される(coupled)」、別の要素に「接触する(contacting)」等であるとして参照されるとき、その要素は、他の要素の真上にあり得る、他の要素に直接取付けられ得る、他の要素に直接接続され得る、他の要素に直接結合され得る、若しくは、他の要素に直接接触し得る、又は、介在要素もまた存在することができることが理解されるであろう。対照的に、或る要素が、例えば、別の要素「の真上に(directly on)」、別の要素に「直接取付けられる(directly attached)」、別の要素に「直接接続される(directly connected)」、別の要素に「直接結合される(directly coupled)」、又は、別の要素に「直接接触する(directly contacting)」として参照されるとき、介在要素は全く存在しない。別の特徴部に「隣接して(adjacent)」配設される構造又は特徴部に対する参照は、隣接する特徴部にオーバラップするか又はその下にある部分を有する場合があることも当業者によって認識されるであろう。
【0062】
「の下に(under)」、「の下に(below)」、「の下側の(lower)」、「の上に(over)」、「の上側の(upper)」等のような空間的に相対的な用語は、図に示す、1つの要素又は特徴部の、別の要素(複数の場合もある)又は特徴部(複数の場合もある)に対する関係を述べるため、説明の容易さのために本明細書において使用することができる。空間的に相対的な用語は、図に示す向きに加えて、使用中又は動作中の装置の異なる向きを包含することが意図されることが理解されるであろう。例えば、図における装置が反転される場合、他の要素又は特徴部「の下に(under)」又は「の下に(beneath)」として述べられる要素は、他の要素又は特徴部「の上に(over)」向けられることになる。そのため、例示的な用語「の下に(under)」は、「の上に(over)」の向きと「の下に(under)」の向きの両方を包含し得る。装置は、その他の方法で(90度回転して又は他の向きに)向けることができ、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語(descriptor)は、相応して解釈される。同様に、用語「上方に(upwardly)」、「下方に(downwardly)」、「垂直な(vertical)」、「水平な(horizontal)」等は、別途特に指示されない限り、説明だけのために本明細書で使用される。
【0063】
用語「第1の(first)」、「第2の(second)」等は、種々の要素を述べるのに本明細書で使用することができるが、これらの要素は、これらの用語によって制限されるべきでないことが理解されるであろう。これらの用語は、1つの要素と別の要素とを区別するのに使用されるだけである。そのため、以下で論じる「第1の(first)」要素は、本発明の教示から逸脱することなく、「第2の(second)」要素とも呼ばれ得る。動作(又はステップ)のシーケンスは、別途特に指示しない限り、特許請求の範囲又は図に提示される順序に限定されない。
【0064】
本発明は、本発明の実施形態による、方法、装置(システム)、及び/又はコンピュータプログラム製品のブロック図及び/又はフローチャート図を参照して以下で述べられる。ブロック図及び/又はフローチャート図の1つ以上のブロック、並びにブロック図及び/又はフローチャート図のブロックの組合せは、コンピュータプログラム命令によって実装することができることが理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、機械を作り出すように汎用コンピュータ、専用コンピュータ、及び/又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供することができ、それにより、コンピュータ及び/又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサによって実行される命令は、ブロック図及び/又は単数又は複数のフローチャートブロックで指定される機能/行為を実装させる手段を生成する。
【0065】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ可読メモリに記憶することができ、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置に特定の方法で機能するよう指示することができ、それにより、ブロック図及び/又は単数又は複数のフローチャートブロックで指定された機能/行為を実装する命令を含む、コンピュータ可読メモリに記憶された命令は、製造品を生成する。
【0066】
コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置上にロードされて、コンピュータ実装式プロセスを生成するように一連のオペレーションステップをコンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実施させることができ、それにより、コンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実行される命令は、ブロック図及び/又は1つ以上のフローチャートブロックで指定される機能/行為を実装するためのステップを提供する。
【0067】
したがって、本発明は、ハードウェア及び/又はソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)で具現化することができる。さらに、本発明の実施形態は、コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読の非一時的な記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。この非一時的な記憶媒体は、命令実行システムが使用するように又は命令実行システムと接続して使用するようにコンピュータ使用可能又はコンピュータ可読のプログラムコードが媒体内で具現化されている。
【0068】
コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読の媒体は、例えば、電子、光、電磁、赤外線、若しくは半導体のシステム、装置、又はデバイスとすることができるが、それらに限定されない。コンピュータ可読媒体のより具体的な例(非網羅的なリスト)は、1つ以上の配線を有する電気接続、可搬型コンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能読出し専用メモリ(EPROM、又はSDカード等のフラッシュメモリ)、光ファイバ、及び、可搬型コンパクトディスク読出し専用メモリ(CD−ROM)を含むことになる。
【0069】
本明細書において用いられる場合、用語「前庭系(vestibular system)」は、医療技術における前庭系に属する意味を有し、内耳の、前庭器官及び前庭蝸牛神経として知られている部分を含むが、それに限定されない。したがって、前庭系は、脳の、前庭蝸牛神経からの信号を処理する部分を更に含むが、それに限定されない。
【0070】
「処置(treatment)」、「処置する(treat)」、及び「処置すること(treating)」は、本明細書で述べる疾患若しくは障害、又は、本明細書で述べる疾患若しくは障害の少なくとも1つの症状の重篤度を逆転させること、軽減すること、低減すること、その発症を遅延させること、その進行を抑制すること、若しくはそれを防止すること(例えば、パーキンソン病に伴う震え、運動緩慢、硬直、又は姿勢不安定性の1つ以上を処置すること;心的外傷後ストレス障害に伴う侵入的症状(例えば、解離状態、フラッシュバック、侵入的感情、侵入的記憶、悪夢、及び夜驚症)、回避症状(例えば、感情の回避、関係の回避、他者についての責任の回避、外傷事象を思い出させる状況の回避)、過剰覚醒症状(例えば、大げさな驚愕反応、爆発的なアウトバースト、極度の覚醒状態、易怒性、パニック症状、睡眠障害)の1つ以上を処置すること)を指す。幾つかの実施形態では、処置は、1つ以上の症状が生じた後に適用することができる。他の実施形態では、処置は、症状がないときに適用することができる。例えば、処置は、(例えば、症状の履歴を考慮して、及び/又は、遺伝学的因子又は他の感受性因子を考慮して)症状が発症する前に感受性のある個人に適用することができる。処置はまた、例えばその再発を防止するため又は遅延させるために、症状が回復した後に継続することができる。処置は、神経保護を提供すること、認知を高めること、及び/又は、認知予備力を増加させることを含むことができる。処置は、本明細書で更に述べるように、補助的処置とすることができる。
【0071】
本明細書で述べる「補助的処置」は、患者の前庭系及び/又は神経系に対する1つ以上のガルバニック波形及び/又は熱波形の送達が、1つ以上の活性作用物質及び/又は治療の効果(複数の場合もある)を変える処置セッションを指す。例えば、患者の前庭系及び/又は神経系に対する1つ以上の熱波形の送達は、(例えば、患者が以前に慣れた薬物の治療効果を回復することによって)医薬品の有効性を高めることができる。同様に、患者の前庭系及び/又は神経系に対する1つ以上のガルバニック波形及び/又は熱波形の送達は、カウンセリング又は心理療法の有効性を高めることができる。幾つかの実施形態では、患者の前庭系及び/又は神経系に対する1つ以上のガルバニック波形及び/又は熱波形の送達は、1つ以上の活性作用物質及び/又は治療についての必要性を低減するか又はなくすことができる。補助的処置は、1つ以上の活性作用物質及び/又は治療の適用前に、適用と同時に、及び/又は適用後に患者の前庭系及び/又は神経系に対して1つ以上のガルバニック波形及び/又は熱波形を送達することによって遂行することができる。
【0072】
「長期継続的な処置(chronic treatment)」、「長期継続的に処置する(chronically treating)」等は、処置が実施される特定の状態又は障害について治療効果を達成及び/又は維持するのに必要とされるだけの長い間、長期間(通常、少なくとも1週〜2週、幾つかの実施形態では、少なくとも1カ月〜2カ月)にわたって、1週につき少なくとも2回〜3回(又は、幾つかの実施形態では、少なくとも毎日)実施される治療処置を指す。
【0073】
本明細書で用いられる場合、「波形(waveform)」又は「波形刺激(waveform stimulus)」は、本明細書で述べる方法を実施するために適した装置を通して被検者に送達されるガルバニック刺激及び/又はカロリック刺激を指す。「波形(waveform)」は、「周波数(frequency)」と混同されるべきでない。後者の用語は、特定の波形の送達レートに関する。用語「波形(waveform)」は、(同じ波形の又は異なる波形の)更なるサイクルが指示されなければ、その1つの完全なサイクルを指すために本明細書で使用される。以下で更に論じるように、時間変動性波形は、本発明を実施するときの一定温度の印加にわたって好まれる場合がある。
【0074】
本明細書で用いられる場合、「能動制御式波形(actively controlled waveform)」又は「能動制御式時間変動性波形(actively controlled time-varying waveform)」は、波形刺激であって、患者との接触によって普通なら生じることになる、送達することを意図される刺激のドリフトが最小になるように、適切に位置付けされたセンサからの能動フィードバックに応答して、通常、制御回路要素又はコントローラによって、処置セッション全体を通して、その刺激の強度が、繰返し調整される、又は、実質的に連続して調整若しくは駆動される、波形刺激を指す。
【0075】
本明細書で用いられる場合、「電気パルスのパケット」は、一続きの少なくとも2つの電気パルスを指し、これらのパルスは、第1の期間によって時間的に互いに間隔が空けられ、1つのパケットの最後のパルスが第2の期間によって次のパケットの第1のパルスから間隔が空けられ、第2の期間は第1の期間より長い。本明細書では電気パルスは矩形波として示されているが、発明の概念の幾つかの実施形態は、正弦波、のこぎり波又は他の好適な波形を含むことができる。
【0076】
本明細書で用いられる場合、「変調」、「変調信号」又は「変調波形」は、経時的に信号又は波形の1つ以上のパラメータを変化させることを指す。例えば、電気パルスの複数のパケットを含む変調波形では、1つ以上のパラメータはパケット毎に変化することができる。
【0077】
被検者を、何らかの理由で本発明によって処置することができる。幾つかの実施形態では、処置を実施することができる障害は、片頭痛(急性及び慢性)、うつ病、不安(例えば、心的外傷後ストレス障害(「PTSD」)又は他の不安障害で経験される)、空間無視、パーキンソン病、発作(例えば、癲癇発作)、糖尿病(例えば、II型糖尿病)等を含むが、それらに限定されない。
【0078】
本発明の方法及び装置によって処置することができる頭痛は、原発性頭痛(例えば、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経自律神経性頭痛、並びに咳払い性頭痛及び労作性頭痛等の他の原発性頭痛)及び二次性頭痛を含むが、それらに限定されない。例えば、国際頭痛学会分類ICHD−IIを参照されたい。
【0079】
本発明の方法及び装置によって処置することができる片頭痛は、急性/慢性及び一側性/両側性とすることができる。片頭痛は、限定はしないが、前兆のある片頭痛、前兆のない片頭痛、片側麻痺片頭痛、眼筋麻痺片頭痛、網膜片頭痛、脳底動脈片頭痛、腹部片頭痛、前庭性片頭痛、及び片頭痛の疑いを含む任意のタイプとすることができる。本明細書において用いられる場合、用語「前庭性片頭痛(vestibular migraine)」は、限定はしないが、頭部運動不耐性、不安定さ、非定型的めまい、及び定型的めまいを含む関連する前庭性症状を伴う片頭痛を指す。前庭性片頭痛は、片頭痛を伴う定型的めまい、片頭痛に伴う非定型的めまい、片頭痛に関連する前庭神経症、片頭痛性定型的めまい、及び片頭痛に関連する定型的めまいと呼ばれることがある状態を含むが、それらに限定されない。例えば、Teggi他、HEADACHE 49:435-444(2009)を参照されたい。
【0080】
本発明の方法及び装置によって処置することができる緊張型頭痛は、稀発反復性緊張型頭痛、頻発反復性緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛、及び緊張型頭痛の疑いを含むが、それらに限定されない。
【0081】
本発明の方法及び装置によって処置することができる三叉神経自律神経性頭痛は、群発頭痛、発作性片側頭痛、結膜充血及び流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作、並びに三叉神経自律神経性頭痛の疑いを含むが、それらに限定されない。「自殺頭痛(suicide headache)」と呼ばれることがある群発頭痛は、片頭痛と異なると考えられる。群発頭痛は、その最も顕著な特徴として、異常に大きな程度の痛みを伴う神経学的疾患である。「群発性(Cluster)」は、周期的に起こり、アクティブな期間が自然寛解によって中断される、これらの頭痛の傾向を指す。その疾患の原因は、現在のところ分かっていない。群発頭痛は、人口の約0.1%に起きるものであり、(一般に男性に比べて女性に起きる片頭痛と対照的に)一般に女性に比べて男性に起きる。
【0082】
本発明の方法及び装置によって処置することができる他の原発性頭痛は、原発性咳払い頭痛、原発性労作性頭痛、性行為に伴う原発性頭痛、睡眠時頭痛、原発性雷鳴頭痛、持続性片側頭痛、及び新規発症持続性連日性頭痛を含むが、それらに限定されない。
【0083】
本発明の方法及びシステムによって処置することができる更なる障害及び症状は、神経因性疼痛(例えば、片頭痛)、耳鳴り、脳損傷(急性脳損傷、興奮毒性脳損傷、外傷性脳損傷等)、脊髄損傷、ボディイメージ障害又は身体完全同一性障害(body integrity disorder)(例えば、空間無視)、視覚侵入性想起、精神神経障害(例えば、うつ病)、双極性障害、神経変性障害(例えば、パーキンソン病)、喘息、痴呆、不眠症、発作、細胞虚血、代謝障害(例えば、糖尿病)、心的外傷後ストレス障害(「PTSD」)、依存性障害、感覚障害、運動障害、及び認知障害を含むが、それらに限定されない。
【0084】
本発明の方法及び装置によって処置することができる感覚障害は、定型的めまい、非定型的めまい、船酔い、乗り物酔い、サイバー病、感覚処理障害、聴覚過敏、線維筋痛症、神経因性疼痛(限定はしないが、複合性局所頭痛症候群、幻想肢痛、視床痛症候群、頭蓋顔面痛、脳神経障害、自律神経障害、及び末梢神経障害(限定はしないが、絞扼性神経障害、遺伝性神経障害、急性炎症性神経障害、糖尿病性神経障害、アルコール性神経障害、工業毒性神経障害、らい病性神経障害、エプスタインバーウィルス性神経障害、肝臓病性神経障害、虚血性神経障害、及び薬物誘発性神経障害を含む)を含む)、感覚麻痺、片側感覚脱失、並びに、神経/神経根、及び神経そうの障害(限定はしないが、外傷性神経根障害、腫瘍性神経根障害、血管炎、及び放射線神経そう障害)を含むが、それらに限定されない。
【0085】
本発明の方法及び装置によって処置することができる運動障害は、痙攣性対麻痺等の上位運動ニューロン障害、脊髄性筋萎縮症及び延髄麻痺等の下位運動ニューロン障害、家族性筋萎縮性側索硬化症及び原発性側索硬化症等の上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害とが組み合わされたもの、及び、運動障害(限定はしないが、パーキンソン病、震え、ジストニア、トゥーレット症候群、ミオクローヌス、舞踏病、眼振、痙縮、失書症、書字障害、他人の四肢症候群、及び薬物誘発運動障害)を含むが、それらに限定されない。
【0086】
本発明の方法及び装置によって処置することができる認知障害は、統合失調症、依存症、不安障害、うつ病、双極性障害、痴呆、不眠症、睡眠発作、自閉症、アルツハイマー病、失名症、失語症、発語障害、錯嗅覚症、空間無視、注意欠陥多動性障害、強迫性障害、摂食障害、ボディイメージ障害、身体完全同一性障害、心的外傷後ストレス障害、侵入的想起障害、及び無言症を含むが、それらに限定されない。
【0087】
本発明によって処置することができる代謝障害は、糖尿病(特に、II型糖尿病)、高血圧、肥満等を含む。
【0088】
本発明によって処置することができる依存症、依存性障害、又は依存性行動は、アルコール依存症、タバコ依存症又はニコチン依存症(例えば、禁煙補助薬として本発明を使用する)、薬物依存症(例えば、アヘン剤、オキシコンチン、アンフェタミン等)、食物依存症(強迫摂食依存症)等を含むが、それらに限定されない。
【0089】
幾つかの実施形態では、被検者は、上記症状のうちの2つ以上を有するが、症状は共に、本発明の方法及びシステムによって同時に処置される。例えば、うつ病及び不安(例えば、PTSD)の両方を有する被検者は、本発明の方法及びシステムによって、両方について同時に処置され得る。
【0090】
本発明の実施形態による方法及びシステムは、ガルバニック刺激及び/又はカロリック刺激を利用して、医学的に診断するため及び/又は医学的に治療するために、被検者において生理的応答及び/又は心理的応答を誘発する。本発明の方法、装置、及びシステムによって処置及び/又は刺激される被検者は、人間被検者及び動物被検体の両方を含む。特に、本発明の実施形態は、医療研究のため又は獣医学のために、猫、犬、猿等のような哺乳類被検体を診断及び/又は処置するために使用することができる。
【0091】
上記で述べたように、本発明による幾つかの実施形態は、ガルバニック刺激及び/又はカロリック刺激を利用して、被検者の外耳道内に刺激を適用する。外耳道は、個人の前庭系及び前庭蝸牛神経に対する有用な導管として役立つ。いかなる特定の理論にも縛られることは望まないが、前庭系のガルバニック刺激及び/又はカロリック刺激は、中枢神経系(「CNS」)内で電気刺激に変換され、限定はしないが脳幹を含む脳全体にわたって伝播され、種々の疾患状態(血流の増加、神経伝達物質の生成等)を処置する際に有用である場合がある一定の生理的変化をもたらすと思われる。例えば、Zhang他、Chinese Medical J. 121:12:1120(2008)(冷水CVSに応答してアスコルビン酸濃度の増加を立証する)を参照されたい。
【0092】
本発明による幾つかの実施形態は、ガルバニック刺激及び/又はカロリック刺激を利用して、脳波を標的周波数で及び/又は脳の標的部分内で同調させる。脳波同調は、意図された脳状態に対応する周波数を有するか、又は周波数間カップリング(cross frequency coupling)によって同調を引き起こす異なる周波数を有する周期的刺激により、脳波周波数の波長を合わせることを意図する任意の手法である。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まずに、脳に律動刺激が提示されるとき、律動は脳内で電気インパルスの形態で再生されると考えられる。律動が、脳の自然な内部律動、すなわち脳波に類似する場合、脳は、それ自体の電気周期を同じ律動に同期させることによって応答することができる。同調記述子の例としては、位相振幅カップリング(phase amplitude coupling)、周波数間カップリング及び振幅−振幅カップリング(amplitude-amplitude coupling)が挙げられる。同調した脳波は、刺激が取り除かれた後、しばらくの間、同調周波数で継続することができる。
【0093】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望まずに、目下、刺激により様々な脳波を同調させることができると考えられる。例えば、異なる皮質下構造を脳波変調の異なる周波数に関連付けることができる。例えば、K Omata, T Hanakawa, M Morimoto, M Honda, Spontaneous Slow Fluctuation of EEG Alpha Rhythm Reflects Activity in Deep-Brain Structures: A Simultaneous EEG-fMRI Study. PLoS ONE, vol 8, issue 6, e66869 (June 2013)を参照されたい。したがって、本発明の幾つかの実施形態によれば、活性化が望まれる脳の領域に対応して、刺激周波数及び/又は変調周波数を選択することができる。例えば、選択される周波数は、脳の領域に本来関連する周波数に対応することができる。脳波は、脳波図(EEG)を用いて測定することができる。頭皮の上で時間変化する信号を取り出すことができるという認識が、記録されているもののいかなる詳細な理解にも先行した。EEG信号は、同期して発火するニューロンの領域の集合的な作用からもたらされる。頭皮において電圧を検出することができるということは、皮質において電圧差が発生する長さが有限であることの結果である(EEGは皮質からしか信号を取り出すことができない)。外科手術中、電極アレイが皮質の表面に直接配置される、ECoG(皮質脳波検査)と呼ばれる方法がある。これは、より細かいスケールの測定を可能にするが、脳手術を受けている患者に限定される可能性がある。ECoGは、一般に、より広い面積の同期発火に関してEEGの所見を確認する。歴史的に、EEG信号は、研究者が脳の活動に対して共通の基準点を有するように、重ならない周波数帯に分割された。この手法は、重要な脳律動の概略的なマップを提供した。例えば、アルファ帯(8Hz〜13Hz)は、眼を閉じて、知覚に対して内部思考に集中するときに、大幅に変化する(出力を増大させる)可能性がある。ガンマ帯(30Hz〜100+Hz)は、包括的な「結び付け」に関連する可能性があり、統合思考プロセスの標識である可能性がある。幾つかの帯域における脳波は、例えば、音楽を聴くことによって同調させることができる。例えば、Doelling, K.B., & Poeppel, D., Cortical entrainment to music and its modulation by expertise. Proceedings of the National Academy of Sciences, vol 112, no. 45, E6233-E6242 (November 10, 2015)を参照されたい。
【0094】
治療効果のために脳波の変調を使用する場合がある。例えば、非侵襲的脳刺激(NIBS)は、脳卒中を起こしたか、又は、パーキンソン病(PD)若しくは統合失調症(SCZ)等、神経精神医学的疾患を患っている患者において行動遂行を改善することができる。例えば、最初にhttp://biorxiv.org/content/early/2015/01/29/014548 (January 29, 2015)においてオンラインで公開され、Front. Syst. Neurosci. (March 17, 2015)においても公開された、Krawinkel LK, Engel AK, & Hummel FC, Modulating pathological oscillations by rhythmic non-invasive brain stimulation - a therapeutic concept?を参照されたい。PD等の疾患によっては、脳領域間の結合性の著しい変化に関連する場合がある。例えば、Tropinic G, Chiangb J, Wangb ZJ, Tya E, & McKeown MJ, Altered directional connectivity in Parkinson's disease during performance of a visually guided task, NeuroImage, vol. 56, issue 4, 2144-2156 (June 15, 2011)を参照されたい。PD患者は、健康な対照被験者より様々な周波数において著しく低い大脳半球間EEGコヒーレンスを有し、それが、PD患者の認知及び情緒機能の能力を損なう可能性があることがわかった。例えば、Yuvaraj R, Murugappan M, Ibrahim NM, Sundaraj K, Omar MI, Mohamad K, Palaniappan R, & Satiyan M, Inter-hemispheric EEG coherence analysis in Parkinson’s disease: Assessing brain activity during emotion processing, J Neural Transm, 122:237-252 (2015)を参照されたい。PDの影響のうちの幾つかは、神経刺激の治療的使用によって改善することができる。例えば、Kim DJ, Yogendrakumar V, Chiang J, Ty E, Wang ZJ, & McKeown MJ, Noisy Galvanic Vestibular Stimulation Modulates the Amplitude of EEG Synchrony Patterns, PLoS ONE, vol. 8, issue 7, e69055 (July 2013)を参照されたい。治療のための神経刺激は、周波数間活動を分離して、PD等の神経精神医学的疾患の患者に見られる異常を低減させるか又は逆転させることができる。例えば、de Hemptinne C, Swann NC, Ostrem JL, Ryapolova-Webb ES, San Luciano M, Galifianakis NB, & Starr PA, Therapeutic deep brain stimulation reduces cortical phase-amplitude coupling in Parkinson’s disease, Nature Neuroscience, vol. 8, 779-786 (2015)を参照されたい。
【0095】
PD等の幾つかの神経精神医学的疾患の患者において、異常なEEG活動が実証されている。EEGを改変するために、非侵襲的ニューロモデュレーションが用いられる場合がある。これは、正常に機能していない律動を中断させるか、又は異常な律動を同調させ、これにより「適切な」状態に誘導しようと試みる形態をとることができる。ニューロモデュレーションの達成の成功は、例えば、EEG活動を再測定して、異常な出力レベル及び/又は異常な周波数間カップリングが対処されたか否かを判断することによって、評価することができる。したがって、幾つかの実施形態によれば、治療方法は、EEG異常を特定することと、関連する治療的な律動を処方することとを含むことができる。この方法は、異常な振動につながる可能性がある、GVS等による神経刺激のための単数又は複数の周波数範囲を選択することを含む場合がある。選択される単数又は複数の周波数範囲は、周波数間カップリングが発生する可能性があるため、EEG異常の周波数と厳密に同じではない可能性がある。この方法は、「修正」GVS刺激を経時的に繰返し適用することを含むことができる。例えば、適用は、所望の変化を測定することができるまで続けることができる。所望の変化は、例えば、EEGを用いて測定することができ、又は他の方法を用いて測定することができる。幾つかの実施形態では、その効果は、心拍変動(HRV)を測定することによって測定することができる。
【0096】
本発明による幾つかの実施形態は、ガルバニック刺激及びカロリック刺激の組合せを利用する。こうした実施形態では、ガルバニック前庭刺激は、カロリック前庭刺激の送達を促進することができる。
【0097】
上述したように、本発明による幾つかの実施形態は、ガルバニック刺激を利用して、被検者の外耳道内で刺激を適用する。外耳道の内側を覆う皮膚を通して変調電気信号を送信して、被検者の前庭系を刺激することができる。皮膚は、電極と前庭系との間の電気経路に電気抵抗を提供する可能性がある。皮膚の電気抵抗は、電気信号の周波数に概して反比例する可能性がある。したがって、前庭系をより低い周波数で刺激するためには、より高い周波数における波形より大きい振幅の波形が必要である可能性がある。大きい電圧に基づき被検者が不快感、苦痛及び/又は身体的損傷を受ける可能性があるため、より大きい振幅は望ましくない可能性がある。しかしながら、より高い周波数は、ガルバニック前庭刺激の所望の診断及び/又は治療効果を引き起こさない可能性がある。例えば、ガルバニック前庭刺激の幾つかの診断的及び/又は治療的使用では、より低い周波数での刺激が望ましい。例えば、G. C. Albert, C. M. Cook, F. S. Prato, A. W. Thomas, Deep brain stimulation, vagal nerve stimulation and transcranial stimulation: An overview of stimulation parameters and neurotransmitter release. Neurosci Biobehav Rev 33, 1042-1060 (2009) ; published online EpubJul (10.1016/j.neubiorev.2009.04.006)(神経学的疾患を診査又は治療する刺激技法のパラメータを検討している)を参照されたい。本発明の幾つかの実施形態では、より低いインピーダンスをもたらすためにより高い周波数で電気信号を発生させ、より低い周波数で前庭系を刺激する、変調方式が提供される。
【0098】
例えば、変調方式は、電子パルスの繰返しの一続きの間隔が空けられたパケットを提供することができる。パケット内の電子パルスは、より高い周波数を提供するように、したがって、皮膚を通る伝送を可能にする、より低いインピーダンスをもたらすように、時間的に短い間隔にすることができる。より低い周波数に従って1つ以上のパラメータを変調することができる。例えば、パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数のパルスの量、パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの時間の幅、パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数のパルスの振幅、パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数のパルスのうちの隣接するものにおける時間的間隔、及びパルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の時間的間隔のうちの1つ以上を変調することができる。前庭系は、より低い周波数に基づいて刺激することができる。例えば、より低い周波数の変調は、変調の低周波数に基づいて脳波を同調させることができる。したがって、変調方式は、パケット内のパルスのより高い周波数に基づいて、より低いインピーダンスをもたらし、変調のより低い周波数に基づいて前庭系を刺激することができる。
【0099】
他の実施形態では、変調方式は電気信号を提供することができる。電気信号は、振幅及び搬送周波数を含む搬送波関数を含むことができる。例えば、搬送波関数は正弦波である場合がある。しかしながら、他の実施形態では、関数は、矩形波、のこぎり波又は別の関数等、別の関数である場合もある。搬送波関数の周波数は、皮膚を通る伝送を可能にする、より低いインピーダンスをもたらすのに十分高くすることができる。搬送波関数の1つ以上のパラメータは、変調波形に従って変調することができる。例えば、搬送波関数の振幅及び周波数のうちの1つ以上を変調して、変調電気信号を生成することができる。変調波形の周波数は、搬送波関数の周波数より低くすることができる。前庭系は、より低い周波数に基づいて刺激することができる。例えば、より低い周波数の変調は、変調の低周波数に基づいて脳波を同調させることができる。したがって、変調方式は、パケット内のパルスのより高い周波数に基づいて、より低いインピーダンスをもたらし、変調のより低い周波数に基づいて前庭系を刺激することができる。
【0100】
本発明による幾つかの実施形態は、音ベースの刺激及び/又は音に基づく電子刺激を利用する。音は、脳活動に影響を与える可能性がある。例えば、ヒトの可聴範囲(およそ20kHz)より高い著しい量の非定常高周波数成分(HFC)を含む音は、中脳及び間脳を活性化させ、様々な生理学的反応、心理的反応及び行動反応を引き起こす可能性がある。例えば、Fukushima A, Yagi R, Kawai N, Honda M, Nishina E, & Oohashi T, Frequencies of Inaudible High-Frequency Sounds Differentially Affect Brain Activity: Positive and Negative Hypersonic Effects, PLoS ONE, vol. 9, issue 4, e95464 (April 2014)を参照されたい。音は、少なくとも2000Hzまで前庭反応を活性化させることが示された。例えば、Welgampola MS, Rosengren SM, Halmagyi GM, & Colebatch JG, Vestibular activation by bone conducted sound, J Neurol Neurosurg Psychiatry, 74:771-778 (2003)を参照されたい。いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まずに、音に対する前庭反応は、動物が水中で生活していたときに前庭系が音検出の器官であったときの初期進化からの残っている特性である可能性があると考えられる。蝸牛は、動物が陸で生活し、空気環境でよりよく聞こえることが可能になった後に発達した。基本的な有毛細胞構成は蝸牛と前庭器官とでは同様であるため、広周波数範囲に反応する基本的な能力は、同一でなくても非常に類似している可能性がある。ヒトにおいてはおよそ20kHzまで聞くことができるため、前庭系もまた同様に反応する可能性がある。およそ1kHzを超えると、蝸牛反応のAC成分よりDC応答が有意になる可能性がある。例えば、A.R. Palmer and I.J. Russell, Phase-locking in the cochlear nerve of the guinea-pig and its relation to the receptor potential of inner hair-cells, Hearing research, vol. 24, 1-15 at FIG. 9 (1986)を参照されたい。したがって、前庭反応を提供することが示された2000Hzにおいてさえも、神経は、刺激音波に従うことができない可能性があり、代わりに、直流(DC)オフセットが発生する可能性がある。
【0101】
システム
図1は、本発明の幾つかの実施形態による刺激装置を示す概略ブロック図である。図1を参照すると、刺激装置100は、電極115A、115Bに結合されたコントローラ110を含むことができる。幾つかの実施形態では、コントローラ110は、任意選択的に、カロリック刺激装置116A、116Bにも結合することができる。幾つかの実施形態では、コントローラ110は、任意選択的に、スピーカ117A、117Bにも結合することができる。コントローラ110は、プロセッサ120、I/O回路140及び/又はメモリ130を含むことができる。メモリは、オペレーティングシステム170、I/Oデバイスドライバ175、アプリケーションプログラム180及び/又はデータ190を含むことができる。アプリケーションプログラム180は、波形発生器181及び/又は測定システム182を含むことができる。データ190は、波形データ191及び/又は測定データ192を含むことができる。ソフトウェアとして示されているが、アプリケーションプログラム180の1つ以上の機能は、ハードウェアで、又はハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の組合せで実装することができる。さらに、刺激装置100の機能のうちの1つ以上の機能は、1つ以上の別個の装置によって提供することができることが理解されるべきである。例えば、データ190の1つ以上の部分を、刺激装置100から遠隔に格納することができる。
【0102】
本発明の幾つかの実施形態によれば、刺激装置100は、第1の電極115A及び第2の電極115Bに第1の波形及び第2の波形を提供することによって神経系を刺激することができる。幾つかの実施形態では、第1の波形及び第2の波形は、変調電気信号とすることができる。幾つかの実施形態では、第1の波形及び第2の波形は、電極115A、115B間の変調電圧レベルとすることができる。幾つかの実施形態では、第1波形及び第2波形は、電極115A、115B間の変調電流とすることができる。例えば、第1の波形及び第2の波形は、電極115A、115B間に変調電圧レベル及び/又は変調電流を提供するように互いに対して非対称とすることができる。他の実施形態は、被検者に対する1つ以上の神経接続部を含むことができる。例えば、幾つかの実施形態では、第1の波形は、第1の電極115Aと神経接続部のうちの少なくとも1つとの間の変調電圧レベルとすることができ、第2の波形は、第2の電極115Bと神経接続部のうちの少なくとも1つとの間の変調電圧レベルとすることができる。幾つかの実施形態では、第1の波形は、第1の電極115Aと神経接続部のうちの少なくとも1つとの間の変調電流とすることができ、第2の波形は、第2の電極115Bと神経接続部のうちの少なくとも1つとの間の変調電流とすることができる。したがって、電極115A、115Bを合わせて用いて1つの刺激を提供することができ、又は独立して用いて2つ以上の刺激を提供することができる。
【0103】
コントローラ110は、第1の波形及び第2の波形を発生させることができる。コントローラ110は、メモリ130、プロセッサ120及びI/O回路140を含むことができ、電極115A、115Bに動作可能にかつ通信可能に結合することができる。プロセッサ120は、アドレス/データバス150を介してメモリ130と、かつアドレス/データバス160を介してI/O回路140と通信することができる。当業者には理解されるように、プロセッサ120は、任意の市販の又はカスタムマイクロプロセッサとすることができる。メモリ130は、刺激装置100の機能を実装するために使用されるソフトウェア及びデータを含むメモリデバイスの全階層を表すことができる。メモリ130は、限定されないが、以下のタイプのデバイスを含むことができる。すなわち、キャッシュ、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、SRAM及びDRAMである。メモリ130は、不揮発性メモリを含むことができる。
【0104】
図1に示すように、メモリ130は、幾つかの種類のソフトウェア及びデータを含むことができる。例えば、メモリは、オペレーティングシステム170、アプリケーション180、データ190及び入出力(I/O)デバイスドライバ175のうちの1つ以上を含むことができる。
【0105】
アプリケーション180は、本発明の実施形態による様々な動作及び特徴のうちの1つ以上を実装するように構成された1つ以上のプログラムを含むことができる。例えば、アプリケーション180は、電極115A、115Bのうちの一方又は両方に波形制御信号を通信するように構成された波形発生器181を含むことができる。アプリケーション180はまた、電極115A、115Bの間のインピーダンス又は他の電気的特性(例えば、静電容量)を測定する測定システム182も含むことができる。幾つかの実施形態では、メモリ130は、ネットワークに接続するためのネットワーキングモジュール等、追加のアプリケーションを含むことができる。幾つかの実施形態では、波形発生器181は、少なくとも1つの電極を活性化する(すなわち、少なくとも1つの電極によって送達される刺激の大きさ、持続時間、波形及び他の属性を制御する)ように構成することができる。幾つかのこうした実施形態では、波形発生器181は、被検者の前庭系に1つ以上の時間変化する波形を送達するための命令の1つ以上のセットを含むことができる、処方データベースからの処方に基づいて、少なくとも1つの電極を活性化するように構成することができる。
【0106】
データ190は、オペレーティングシステム170、アプリケーション180、I/Oデバイスドライバ175及び/又は他のソフトウェアコンポーネントによって使用される静的データ及び/又は動的データを含むことができる。データ190は、1つ以上の治療プロトコル又は処方を含む波形データ191を含むことができる。幾つかの実施形態では、データ190は、電極115A、115Bの間のインピーダンス測定値、及び/又は電気インピーダンス測定値に基づく電気的接続の推定値を含む、測定データ192を更に含むことができる。電気インピーダンス測定値は、電極115A、115Bと外耳道との間のインタフェースの抵抗成分及び容量成分を含むことができる。幾つかの実施形態では、測定データ192は、前庭系によって生成される電気信号の測定値を含むことができる。例えば、測定データ192は、前庭電図法信号すなわちEVestG信号を含むことができる。
【0107】
I/Oデバイスドライバ175は、I/O回路140、メモリ130コンポーネント及び/又は電極115A、115B等のデバイスと通信するために、アプリケーション180によってオペレーティングシステム170を通してアクセスされるソフトウェアルーチンを含むことができる。
【0108】
幾つかの実施形態では、波形発生器181は、被検者の神経系及び/又は前庭系を刺激するために、電極115A、115Bのうちの少なくとも1つに電流を通すように構成することができる。特定の実施形態では、波形発生器181は、被検者の前庭系に1つ以上の時間変化する波形を送達する命令のセットを含む処方に基づいて、少なくとも1つの電極115A、115Bに電流を通すように構成することができる。幾つかの実施形態では、電流は、2つの電極115A、115Bの間に提供される電圧差に応じて生成することができる。しかしながら、幾つかの実施形態では、波形発生器181は、2つの電極115A、115Bそれぞれに2つの独立した電流を通すように構成することができる。2つの独立した電流は、2つの電極115A、115Bの各々と被検者の身体との1つ以上の追加の電気的接触点との間に提供される電圧差に応じて生成することができる。
【0109】
幾つかの実施形態では、刺激装置100は、導電線を介して少なくとも1つの電極115A、115Bに通信可能に接続することができる。幾つかの実施形態では、刺激装置100は、複数の電極に動作可能に接続することができ、刺激装置100は、別個の導電線を介して各電極に動作可能に接続することができる。
【0110】
幾つかの実施形態では、コントローラ110は、Bluetooth(登録商標)接続等の無線接続を介して、電極115A、115Bのうちの少なくとも1つに動作可能に接続することができる。幾つかの実施形態では、刺激装置100は、患者の前庭系及び/又は神経系に1つ以上の能動的に制御された時間変化する波形を送達するように、電極115A、115Bのうちの少なくとも1つを活性化するように構成することができる。例えば、電極115A、115Bのうちの1つ以上は、コントローラ110から独立して、無線受信器及び電源に電気的に接続することができる。無線受信器は、変調波形に対応する波形信号を受け取ることができ、電極115A、115Bのうちの1つ以上を活性化することができる。
【0111】
幾つかの実施形態では、刺激装置100は、1つ以上のカロリック刺激装置116A、116Bを含むことができる。刺激装置100は、カロリック刺激装置116A、116Bに第3の波形及び第4の波形を提供することにより神経系を刺激することができる。カロリック刺激装置からのカロリック刺激は、電極115A、115Bからのガルバニック刺激と結合することができる。
【0112】
幾つかの実施形態では、刺激装置100は、1つ以上のスピーカ117A、117Bを含むことができる。シミュレーション装置100は、スピーカ117A、117Bに1つ以上の音響波形を提供することができる。幾つかの実施形態では、刺激装置100は、スピーカ117A、117Bに提供することができる1つ以上の外部音響波形を受け取る入力コネクタを含むことができる。
【0113】
図2は、本発明の幾つかの実施形態による刺激装置を示す正面図である。図2を参照すると、刺激装置200は、耳内刺激装置とすることができる。刺激装置200は、言及するような相違を除き、図1に示す刺激装置100と同様とすることができる。刺激装置200は、支持部又はヘッドバンド230、イヤホン220、コントローラ210及び/又はケーブル240を含むことができる。幾つかの実施形態では、刺激装置はケーブル240を含まない場合があり、コントローラ210は、イヤホン220に無線で接続することができる。イヤホン220は、患者又は被検者の耳の中に配置されるように構成されるそれぞれの電極215A、215Bを含むことができる。電極215A、215Bは、患者又は被検者の耳の内面と電気的に接触するように構成することができ、それにより、電極215A、215Bは、活性化されると、患者又は被検者の前庭系を刺激することができる。
【0114】
電極215A、215Bは、それぞれのイヤピース250A、250Bとして構成することができ、又は、それぞれのイヤピース250A、250Bの一部として構成することができる。例えば、幾つかの実施形態では、イヤピースは、主に導電性金属から形成することができ、イヤピース250A、250B全体を電極215A、215Bとすることができる。他の実施形態では、イヤピース250A、250Bの外面の一部又は全てを導電性金属でコーティングして、電極215A、215Bを形成することができる。幾つかの実施形態では、イヤピース250A、250Bの外面の一部又は全てを、電極215A、215Bを覆いかつDCで患者又は被検者の耳から電極215A、215Bを絶縁する、絶縁材料の薄層でコーティングすることができる。しかしながら、絶縁材料の薄層は、より高い周波数の波形が電極215A、215Bから絶縁材料の薄層を通って患者又は被検者の耳に進むのを可能にすることができる。例えば、幾つかの実施形態では、絶縁材料の薄層は、導電性金属上の陽極酸化仕上げとすることができる。しかしながら、他の実施形態では、絶縁材料は、ゴム、プラスチック又は別の絶縁材料の薄層とすることができる。
【0115】
幾つかの実施形態では、電極215A、215Bは、外耳道と直接物理的に接触することなく外耳道と電気的に接触することができる。外耳道と電極215A、215Bとの間に電気導管を配置し、それらの間に電気的接触を提供するか又はそれらの間の電気的接触を改善するように構成することができる。電気導管は、外耳道に沿うように構成することができ、電極215A、215Bと外耳道との間の接触及び/又は導電性を増大させるように構成された、可撓性があるか又は形状適合した導電性材料等とすることができる。導電性材料は、液体材料若しくは固体材料、又は液体材料及び固体材料の組合せとすることができる。さらに、導電性材料は、電極215A、215Bに取り付けることができる。例えば、幾つかの実施形態では、電極215A、215Bは、導電性液体が浸透した多孔質材料によって覆うことができる。幾つかの実施形態では、電極215A、215Bは、外耳道との直接的な物理的接触を回避するように木綿の層で覆うことができる。木綿の層は、導電性液体、例えば生理食塩水に浸漬して、電極215A、215Bと外耳道との間に電気的接続を提供することができる。幾つかの実施形態では、導電性液体は、外耳道の中に配置することができる。外耳道の内側に導電性液体を収容するために、例えば、耳栓又は他の封止材料を用いて外耳道を封止することができる。幾つかの実施形態では、電極215A、215B及び/又はそれへの電気的付属部品は、耳栓又は他の封止材料を通して又はその周囲に進むことができる。
【0116】
図2では、電極215A、215Bはイヤピース250A、250Bと一体化されているように示されているが、幾つかの実施形態では、電極215A、216Bは、耳腔内に適合するように構成されていない場合もある。例えば、電極215A、216Bは、耳に隣接しかつ側頭骨の乳様突起部の上の皮膚の部分と接触するように構成することができる。
【0117】
例えば、オーディオイヤホンで用いられる場合があるような、あごの下に又は耳の上に配置される支持バンドを含む、ヘッドホン及び/又はイヤピース250A、250Bを支持する他の構成を用いることができることが理解されるべきである。例えば、図3は、本発明の幾つかの実施形態による刺激装置を装着している使用者を示す正面図及び側面図である。図3を参照すると、刺激装置200’は、言及するような相違を除き、図1及び図2に示す刺激装置100、200と同様とすることができる。刺激装置200’は、ストラップ260及び/又はヘッドバンド270を含むことができる。幾つかの実施形態では、ヘッドバンド270は、イヤホン220の安定性を向上させて、イヤピース250A、250B(図示せず)の接触を改善することができる可能性がある。幾つかの実施形態では、ストラップ260及び/又はヘッドバンド270のうちの1つ以上は、使用者に追加の電気的接触点、例えば、使用者に中性点接続を提供することができる。
【0118】
本発明による実施形態は、2つの耳刺激装置に関して示され、そこでは、電流が電極から被検者の組織(例えば、頭部)を通して別の電極に渡されるが、幾つかの実施形態では、刺激装置200’は、1つの電極215のみを含む場合があることが理解されるべきである。こうした実施形態では、刺激装置200’は、電極215Aと追加の電気的接触点との間の電圧として電気刺激を提供することができる。例えば、追加の電気的接触点は、ストラップ260及び/又はヘッドバンド270に位置することができる。幾つかの実施形態では、1つ以上の追加の電気的接触点とともに耳の中又は乳様突起の上の2つの電極215A、215Bを用いて、電極215A、215Bの各々から1つ以上の追加の電気的接触点に別個の電流を渡すことができる。
【0119】
図4は、本発明の幾つかの実施形態による刺激装置を示す概略ブロック図である。図4を参照すると、刺激装置は、言及するような相違を除き、図1及び図2に示す刺激装置100、200と同様とすることができる。コントローラ210は、言及するような相違を除き、図1の波形発生器181及び測定システム182と同様とすることができる波形発生器281及び測定システム282を含むことができる。波形発生器281は、第1の波形及び第2の波形を電極215A、215Bに通信するように構成することができる。第1の波形及び第2の波形は同じとすることができ、又は幾つかの実施形態では、電極215A、215Bから送達される出力が、独立して制御することができ、かつ互いに異なり得るように、第1の波形及び第2の波形は異なり得ることが理解されるべきである。
【0120】
図4に示すように、幾つかの実施形態では、測定システム282は、電極215A、215Bのうちの1つ以上に電流を送達することができる。この構成では、電極215A、215B間のインピーダンス及び/又は静電容量の値を用いて、電極215A、215B間の電気的接触をモニタリングすることができる。幾つかの実施形態では、広範囲のインピーダンス及び/又は静電容量の値を求めるために、広範囲の被検者に対してインピーダンス及び/又は静電容量の値を検出することができ、そこでは、電極215A、215Bは、被検者の外耳道と十分に電気的に接触していると想定することができる。ヘッドセットが新たな患者に取り付けられているとき、電極215A、215B間のインピーダンス及び/又は静電容量を検出することができ、インピーダンス値が許容可能な範囲内にある場合、電極215A、215Bと被検者の外耳道との間に十分な電気接点があると想定することができる。
【0121】
幾つかの実施形態では、ヘッドセットが新たな患者に取り付けられているとき、電極215A、215B間のインピーダンス及び/又は静電容量の値を検出し、患者特定の基準線として使用して、患者が後にヘッドセット及び適切な構成を使用しているか否かを判断することができる。例えば、患者は、医療専門家が監督する場合もあればしない場合もある状況において、本発明の実施形態によるヘッドセットを使用することができる。いずれの環境においても、測定システム282は、治療波形が電極215A、215Bに送達される時点に時間的に近いか又は重なっている時点で、インピーダンス及び/又は静電容量の値を記録することができる。医療専門家又は測定システム282は、インピーダンス値を分析して、電極215A、215Bが治療中に適切に取り付けられていたか否かを判断することができる。幾つかの実施形態では、測定システム282は、検出されたインピーダンス値が、電極215A、215Bを外耳道と十分に電気的に接触して適切に取り付けていることと一貫していない場合に、使用者にフィードバックを提供するように構成することができる。この構成では、測定システム282は、電極215A、215Bと外耳道との間の電気的接触の程度を、リアルタイムに、又は記録され後に分析されるデータで、提供することができる。したがって、治療中に又は治療に近い時点で、検出されるインピーダンスに基づいて、治療プロトコルの患者のコンプライアンスをモニタリングすることができる。
【0122】
幾つかの実施形態では、インピーダンスは、電極215A、215Bの各々に対して別個に基づいて計算することができる。例えば、幾つかの実施形態では、電極215A、215Bのそれぞれとストラップ240及び/又は図3に示すようなヘッドセット270に位置する追加の接続点との間で、インピーダンスを測定することができる。
【0123】
特定の実施形態では、測定システム282はまた、例えば、波形発生器281が、インピーダンス及び/又は静電容量の値に基づいて測定システム282によって求められた電気的接触の程度に応答して波形制御信号の振幅を増減させることができるように、波長発生器281にフィードバックを提供することもできる。例えば、測定システム282が、インピーダンス値に基づいて、外耳道と十分な適合及び十分な電気的接触がないと判断した場合、波形発生器281は、不十分な電気的接触を補償するように、電極215A、215Bに対する出力の振幅を増大させることができる。幾つかの実施形態では、測定システム282は、患者コンプライアンス、例えば、患者が波形の適用中に実際に装置を使用していたか否かを判断することができる。
【0124】
本発明の実施形態は、2つの電極215A、215Bに関して示されているが、幾つかの実施形態では、単一の電極215Aを使用することができ、電気接点は、第2のイヤピース250Bの代わりに使用者の頭部の別の位置に取り付け、それにより、インピーダンス値を求めて本明細書に記載するように熱的接触を推定する電気回路を提供することができる。
【0125】
幾つかの実施形態では、測定システム282は、第1の波形及び第2の波形の電流レベル及び電圧レベルに基づいて、1つ以上のインピーダンス値を測定することができる。幾つかの実施形態では、測定システム282は、第1の波形及び第2の波形の電流レベル及び/又は電圧レベルを測定するハードウェアを含むことができる。例えば、測定システム282は、電圧レベルを電流レベルで割ることによりインピーダンスを計算することができる。こうした実施形態では、波形発生器281が第1の波形及び第2の波形を発生している間に、測定システム282は、インピーダンス値を計算することができる。
【0126】
幾つかの実施形態では、測定システム282は、前庭系によって生成される1つ以上の電気信号を測定することができる。例えば、測定システム282は、前庭電図法信号、すなわちEVestG信号を測定することができる。EVestG信号は、治療の効力を判断するために有用である場合がある。例えば、EVestG信号は、1つ以上の疾患の存在及び/又は程度を判断する際に有用である可能性がある。したがって、治療中に又は治療に近い時点で、測定されたEVestG信号によって提供されるフィードバックに基づいて、治療の効力をモニタリングすることができる。幾つかの実施形態では、測定されたEVestG信号に基づいて、治療を修正し及び/又は中断することができる。
【0127】
図5Aは、本発明の幾つかの実施形態による刺激装置を示す概略ブロック図である。図5Aを参照すると、刺激装置500は、言及するような相違を除き、図1図4に示す刺激装置100と同様とすることができる。例えば、刺激装置は、言及するような相違を除き、図1図4のコントローラ210及び電極215A、215Bと同様とすることができるコントローラ510A及び電極515A、515Bを含むことができる。刺激装置は、電極515A、515Bを含むイヤピース550A、550Bを含むイヤホンを含むことができる。イヤホンは、イヤピース550A、550Bに取り付けられた熱電素子(thermal electric device)、「TED」を更に含むことができる。コントローラ510Aは、図1図4の波形発生器281と同様とすることができるガルバニック波形発生器581Aを含むことができる。コントローラ510Aはまた、カロリック波形発生器581Bも含むことができる。カロリック波形発生器518Bは、イヤピース550A、550Bに取り付けられたTEDを活性化させるように構成することができる。この構成では、カロリック前庭刺激は、被検者の外耳道を介して被検者に適用することができる。イヤピースを用いるカロリック前庭刺激の適用については、2010年12月16日に出願された米国特許出願第12/970,312号、2010年12月16日に出願された同第12/970,347号、2012年6月18日に出願された同第13/525,817号及び2014年5月15日に出願された同第13/994,266号において考察されており、それらの開示は、全体として引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0128】
幾つかの実施形態では、ガルバニック波形発生器581Aは、電極515A、515Bに第1の波形及び第2の波形を送達することができ、カロリック波形発生器は、電極515A、515Bにそれぞれ取り付けられたTEDに第3の波形及び第4の波形を送達することができる。幾つかの実施形態では、同時に、ガルバニック波形発生器581Aは第1の波形及び第2の波形を送達することができ、カロリック波形発生器は第3の波形及び第4の波形を送達することができる。こうした実施形態では、刺激装置は、ガルバニック前庭刺激及びカロリック前庭刺激を送達することができる。幾つかの実施形態では、ガルバニック前庭刺激は、カロリック前庭刺激の送達を促進することができる。
【0129】
図5Bは、本発明の幾つかの実施形態による刺激装置を示す概略ブロック図である。図5Bを参照すると、刺激装置は、言及するような相違を除き、図1図4に示す刺激装置100と同様とすることができる。例えば、刺激装置は、言及するような相違を除き、図1図4のコントローラ210及び電極215A、215Bと同様とすることができるコントローラ510B及び電極515A、515Bを含むことができる。刺激装置500は、電極515A、515Bを含むイヤピース550A、550Bを含むイヤホンを含むことができる。イヤホンは、イヤピース550A、550Bに取り付けられたスピーカを更に含むことができる。幾つかの実施形態では、スピーカは、イヤピース550A、515Bに含めることができる。他の実施形態では、イヤピース550A、550Bは、外部に取り付けられたスピーカから内耳に音を伝導するチューブ又は他の空気流路を含むことができる。更に他の実施形態では、刺激装置500は、骨伝導スピーカを含むことができ、イヤピース550A、550Bは、骨伝導スピーカから外耳道に隣接する骨まで振動を伝導することができる。
【0130】
幾つかの実施形態では、ガルバニック波形発生器581Aは、電極515A、515Bに第1の波形及び第2の波形を送達することができ、音響波形発生器は、それぞれ電極515A、515Bに取り付けられたスピーカに音響波形を送達することができる。幾つかの実施形態では、同時に、ガルバニック波形発生器581Aは第1の波形及び第2の波形を送達することができ、音響波形発生器は音響波形を送達することができる。こうした実施形態では、刺激装置500は、ガルバニック前庭刺激及び音刺激を送達することができる。本明細書で用いられる場合、音響波形は、被検者の可聴範囲内の周波数成分を含む波形である。例えば、音響波形は、約20Hz〜20000Hzの範囲内の周波数成分を含むことができる。幾つかの実施形態では、音響波形は、時間変化する可能性があり、及び/又は1つ以上のパターンを含むことができる。例えば、音響波形は、音楽及び/又は音声を含むことができる。幾つかの実施形態では、ガルバニック前庭刺激の波形は、音響波形に基づいて変調することができる。
【0131】
例えば、幾つかの実施形態では、ガルバニック前庭刺激の第1の波形及び/又は第2の波形は、皮膚を通る伝送を可能にする、より低いインピーダンスをもたらすのに十分高くすることができる周波数を有する搬送波関数を含むことができる。音響波形は、搬送波関数の周波数より低い1つ以上の周波数を含むことができる。搬送波関数の1つ以上のパラメータは、音響波形のこれらの1つ以上のより低い周波数に従って変調することができる。例えば、搬送波関数の振幅及び周波数のうちの1つ以上は、ガルバニック前庭刺激の第1の波形及び/又は第2の波形を生成するように変調することができる。他の実施形態では、ガルバニック前庭刺激の第1の波形及び/又は第2の波形は、音響波形に正比例することができる。
【0132】
図6Aは、図5Aの刺激装置のイヤピースを示す正面斜視図である。図6Bは、図6Aのイヤピースを概略的に示す断面図である。図6A及び図6B並びに図5Aを参照すると、イヤピース550は電極515を含むことができる。上述したように、電極515は、イヤピース550の表面の全て、その一部、又は表面の上のコーティングを形成することができる。イヤピース550とヒートシンク540との間に、熱電素子530を結合することができる。
【0133】
電極515は、コントローラ510Aのガルバニック波形発生器581Aから第1の電気波形又は第2の電気波形を受け取ることができる。電極515は、導電性とすることができる。例えば、電極515は、導電性金属から形成することができる。電極515は、外耳道内に適合し、外耳道に電気インタフェースを提供するように構成することができる。したがって、ガルバニック波形発生器581Aは、電極515と外耳道との間の電気的接続を通して送達される第1の波形又は第2の波形に基づいて、被検者の神経系及び/又は前庭系を刺激するようにガルバニック刺激を提供することができる。
【0134】
幾つかの実施形態では、電極515は、外耳道と直接物理的に接触することなく外耳道と電気的に接触することができる。外耳道と電極515との間に電気導管を配置し、それらの間の電気的接触を提供するか又は改善するように構成することができる。電気導管は、電極515と外耳道との間の接触及び/又は導電性を増大させるように構成される、可撓性があるか又は形状適合した、導電性材料等、外耳道に沿うように構成することができる。導電性材料は、液体材料若しくは固体材料又は液体材料及び固体材料の組合せとすることができる。さらに、導電性材料は、電極515に取り付けることができる。例えば、幾つかの実施形態では、電極515は、導電性液体が浸透した多孔質材料によって覆うことができる。幾つかの実施形態では、電極515は、外耳道との直接的な物理的接触を回避するように木綿の層で覆うことができる。木綿の層は、導電性液体、例えば生理食塩水に浸漬して、電極515と外耳道との間に電気的接続を提供することができる。幾つかの実施形態では、導電性液体は、外耳道の中に配置することができる。外耳道の内側に導電性液体を収容するために、例えば、耳栓又は他の封止材料を用いて外耳道を封止することができる。幾つかの実施形態では、電極515及び/又はそれへの電気的付属部品は、耳栓又は他の封止材料を通して又はその周囲に進むことができる。
【0135】
熱電素子530は、カロリック波形発生器581Bから第3の熱波形又は第4の熱波形を受け取ることができる。熱電素子530は、第3の波形又は第4の波形に基づいて、イヤピース550とヒートシンク540との間に温度差を提供することができる。イヤピース550及び/又はイヤピース550の電極515は、熱電素子530と外耳道との間に熱インタフェースを提供することができる。したがって、カロリック波形発生器581Bは、電極515と外耳道との間の熱インタフェースを通して送達される第3の波形又は第4の波形に基づいて、被検者の神経系及び/又は前庭系を刺激するために、カロリック刺激を提供することができる。
【0136】
図7は、本発明の幾つかの実施形態による刺激装置のイヤピースの様々な代替的な形状及びサイズを示す側面図である。図7を参照すると、イヤピース750は、言及するような相違を除き図2図6に示すイヤピースと同様とすることができる。イヤピース750の形状及び/又はサイズは、電気的接続及び/又は熱的接続を最適化するように選択することができる。イヤピース750の形状及び/又はサイズは、被検者の最適な快適さに対して選択することができる。幾つかの実施形態では、イヤピース750は、使用者が交換可能とすることができるが、本発明の実施形態はそれに限定されない。例えば、幾つかの実施形態では、イヤピース750は、TED及び/又はイヤホンに永久的に取り付けることができる。幾つかの実施形態では、被検者の外耳道のサイズに従ってイヤピース750のサイズを選択することができる。例えば、イヤピース750は、小、中、大又は特大とすることができる。幾つかの実施形態では、被検者の外耳道の形状に基づいてイヤピース750の形状を選択することができる。例えば、イヤピース750は、イヤピース750の基部に対して傾斜し及び/又は曲がりくねる(ねじれるか又は湾曲する)ことができる。しかしながら、本発明は、図示する形状及びサイズに限定されない。
【0137】
図8は、本発明の幾つかの実施形態による刺激信号の経路を示す概略図である。図8を参照すると、本発明の幾つかの実施形態による刺激信号の経路は、コントローラ210、電極215、皮膚及び前庭系を含むことができる。コントローラ210は、図2図4を参照して上述したようなコントローラ210とすることができる。電極215は、図2図4を参照して上述したような、電極215A、215Bのうちの1つ以上とすることができる。電極215は、被検者の皮膚と物理的にかつ電気的に接触することができる。例えば、電極215は、被検者の外耳道内に挿入することができ、被検者の外耳道の内側を覆う皮膚の一部と物理的にかつ電気的に接触することができる。
【0138】
図9は、人体の耳及び周囲の部分を概略的に示す断面図である。図9を参照すると、前庭系の前庭神経910は、外耳道920に近接している可能性がある。図10は、ヒトの頭部のコンピュータ断層撮影法に関して電極の相対的な配置を概略的に示す断面図である。図10を参照すると、外耳道の内側を覆う皮膚の一部と接触する電極1010の方が、耳に隣接しかつ側頭骨の乳様突起部の上の皮膚と接触する電極1020より、前庭神経1030(およその位置を図示する)に近接することができる。図8図10を参照すると、被検者の外耳道内に挿入された電極215は、前庭神経に近接することができる。
【0139】
図8及び図2図4を再び参照すると、コントローラ210の波形発生器281は、波形に基づいて前庭系を電気的に刺激することができる。波形は電気信号とすることができる。電気信号は変調することができる。波形発生器281は、電極215に変調電気信号を提供することができる。幾つかの実施形態では、波形発生器281は、電極215に電気的に接続することができるが、本発明の実施形態はそれに限定されない。例えば、幾つかの実施形態では、波形発生器281は、電気信号を発生して電極215に提供することができるイヤピース250A、250Bと無線で通信することができる。
【0140】
電極215は、前庭系に電気信号を提供することができる。例えば、電極215は、皮膚を通る電気的接続を介して前庭系に電気信号を提供することができる。皮膚は、電極と前庭系との間の電気経路に電気抵抗を提供する可能性がある。したがって、波形発生器281は、電気信号の振幅が皮膚を横切りかつ前庭系を刺激するのに十分であるように、波形の振幅を制御することができる。幾つかの実施形態では、周波数に基づいて波形を変調することができる。
【0141】
図11は、本発明の幾つかの実施形態による皮膚のインピーダンスと刺激波形の周波数との関係を示すグラフである。図8及び図11を参照すると、皮膚のインピーダンスは、波形の周波数が増大するに従って低減する可能性がある。例えば、J. Rosell, J. Colominas, P. Riu, R. Pallas-Areny, J. G. Webster, Skin impedance from 1 Hz to 1 MHz, IEEE Trans Biomed Eng 35, 649-651 (1988); published online EpubAug (10.1109/10.4599)を参照されたい。
【0142】
例えば、0Hzの周波数、言い換えれば固定振幅の直流では、皮膚は、電極と前庭系との間の電気経路に大きいインピーダンスを提供する可能性がある。したがって、0Hzの周波数で前庭系を刺激するために、波形発生器281は、大きい振幅の波形を提供する可能性があり、したがって、電極は、大きい電圧の電気信号を提供する可能性がある。これは、被検者が大きい電圧に基づいて不快感、苦痛及び/又は物理的損傷を受ける可能性があるため、望ましくない可能性がある。
【0143】
高周波数であるほど、皮膚は、電極と前庭系との間の電気経路に、より低いインピーダンスを提供する可能性がある。したがって、より高い周波数で前庭系を刺激するために、波形発生器281は、より小さい振幅の波形を提供することができ、したがって、電極は、より小さい電圧での電気信号を提供することができる。より低い電圧では、被検者は、不快感、苦痛及び/又は身体的損傷を受けない可能性がある。しかしながら、より高い周波数は、ガルバニック前庭刺激の所望の診断及び/又は治療効果を引き起こさない可能性がある。例えば、ガルバニック前庭刺激の幾つかの診断的及び/又は治療的使用では、より低い周波数での刺激を必要とする。本発明の幾つかの実施形態では、より高い周波数で電気信号を発生させて、より低いインピーダンスをもたらし、より低い周波数で前庭系を刺激する、変調方式が提供される。
【0144】
図17は、本発明の幾つかの実施形態によるコントローラの幾つかの部分を示す概略ブロック図である。図17を参照すると、コントローラ1710は、言及するような相違を除き、図4図5Bのコントローラ210、510A、510Bのうちの1つ以上と同様とすることができる。コントローラ1710は、変調波形に基づいて変調電気信号を発生させることができる波形発生器1720を含むことができる。波形発生器は、第1の関数発生器1730から変調波形を受け取ることができる。第1の関数発生器1730は、変調波形を定義し、波形発生器1720に変調電圧として変調波形を提供することができる。波形発生器1720は、第2の関数発生器1740を含むことができる。第2の関数発生器1740は、搬送波関数及び変調波形を受け取ることができる。第2の関数発生器1740は、変調波形に基づいて搬送波関数を変調することができる。例えば、第2の関数発生器1740は、電圧ベースの変調電気信号を発生させるように周波数変調又は振幅変調を行うことができる。幾つかの実施形態では、電圧ベースの変調電気信号は、電流供給部1750によって受け取ることができ、電流供給部1750は、変調電気信号として第1の電極及び第2の電極に提供することができる固定電流出力を生成する。
【0145】
パケットベースの変調
図12は、本発明の幾つかの実施形態による変調刺激波形を示すグラフである。図12を参照すると、波形は、パルスの複数の間隔が空けられたパケットを含むことができる。パルスは、波形に基づいて生成される電気パルスに対応することができる。
【0146】
複数のパケットのそれぞれは、パルスの量Nとパルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間に時間的間隔Sとを含むことができる。例えば、図12に示すように、パケットは、各々、3という量Nのパルスを含むことができるが、本発明はそれに限定されない。例えば、パルスの量Nは、3つより多い場合もあれば少ない場合もあるが、幾つかの実施形態では、少なくとも2つとすることができる。複数のパケットのうちの隣接するものの間の時間的間隔Sは、1つのパケットの最後のパルスの終了と次の隣接するパケットの第1のパルスの開始との間の時間の量として定義することができる。
【0147】
パルスのそれぞれは、時間的幅Wと、振幅Aと、パケット内のパルスのうちの隣接するものの間の時間的間隔Xとを含むことができる。パルスの時間的幅Wは、単一パルスの立上りエッジと立下りエッジとの間の時間の量として定義することができるが、本発明はそれに限定されない。波形の振幅Aは、図8の電極215によって提供される電気信号の電圧の振幅に対応することができる。パケット内のパルスのうちの隣接するものの間の時間的間隔Xは、パケット内の1つのパルスの終了と同じパケット内の次のパルスの開始との間の時間の量として定義することができる。
【0148】
刺激波形に対応する電気信号に応答して図8の皮膚によって提供されるインピーダンスは、パルスの時間的幅Wと、パケット内のパルスのうちの隣接するものの間の時間的間隔Xとに基づくことができる。例えば、幅W及び間隔Xは、パルスの期間を定義することができる。パルスの周波数は、期間の逆数とすることができる。図11に示すように、インピーダンスは、パルスの周波数に反比例することができる。したがって、より高い周波数、したがってより低いインピーダンスを提供するために、幅W及び間隔Xは、より小さくなるように選択することができる。
【0149】
パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数のパルスの量Nと、パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数の電気パルスの時間的幅Wと、パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数のパルスの振幅Aと、パルスの複数のパケットのそれぞれにおける複数のパルスのうちの隣接するものの間の時間的間隔Xと、パルスの複数のパケットの隣接するものの間の時間的間隔Sとのうちの少なくとも1つを変調して、刺激波形を変調することができる。少なくとも1つの変調パラメータは、標的刺激周波数に基づいて変調することができる。図8及び図10を参照すると、標的刺激周波数に基づいて前庭系を刺激することができる。したがって、ガルバニック前庭刺激の所望の診断的及び/又は治療的使用に基づいて、標的刺激周波数を低いように選択することができる。
【0150】
幾つかの実施形態では、パルスの複数のパケットのうちの隣接するもの間の時間的間隔Sを変調して、刺激波形を変調することができる。言い換えれば、時間的間隔Sは、一定ではない可能性があり、標的刺激周波数に基づいて変更することができる。例えば、図12に示す第1のパケットと第2のパケットとの間の時間的間隔Sは、図12に示す第2のパケットと第3のパケットとの間の時間的間隔Sとは異なる可能性がある。
【0151】
図13は、本発明の幾つかの実施形態による電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の変調された時間的間隔を示すグラフである。図12及び図13を参照すると、パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の時間的間隔Sは、正弦波変調で変更することができる。時間的間隔Sは、最小間隔値と最大間隔値との間で変更することができる。正弦波変調の周期が、刺激周波数を定義することができる。例えば、最小値の間又は最大値の間の持続時間が、周期を定義することができる。刺激周波数は、周期の逆数として定義することができる。したがって、時間的間隔Sは、標的刺激周波数に基づいて前庭系を刺激するように正弦波変調で変更することができる。
【0152】
前庭系の標的ニューロンは、刺激の後に回復するために最小量の時間を必要とする可能性がある。標的ニューロンは、各パルスによって刺激することができる。パケット内のパルスの間の時間的間隔Xは、低減したインピーダンスを提供するために小さいように選択される可能性があるため、パケット内のパルスの間で標的ニューロンは回復しない可能性がある。したがって、パルスのパケットの持続時間の間で、標的ニューロンは常に刺激される可能性がある。しかしながら、パケットの間の時間的間隔Sの最小値は、標的ニューロンがパルスの次のパケットによって活性化される前に回復することができるために十分大きいように選択することができる。したがって、時間的間隔Sを変調することにより標的刺激周波数に基づいて、標的ニューロンの刺激を変調することができる。例えば、M. W. Bagnall, L. E. McElvain, M. Faulstich, S. du Lac, Frequency-independent synaptic transmission supports a linear vestibular behavior. Neuron 60, 343-352 (2008); published online EpubOct 23 (S0896-6273(08)00845-3 [pii]10.1016/j.neuron.2008.10.002)(刺激列の後の前庭求心性シナプスの回復について考察している)を参照されたい。
【0153】
ガルバニック前庭刺激は、標的刺激周波数に基づいて被検者の脳の他の部分において下流効果を与える可能性がある。幾つかの実施形態では、変調信号の周波数は、脳の標的部分において脳律動を引き起こすように選択することができる。幾つかの実施形態では、ガルバニック前庭刺激は、変調信号に基づいて脳の標的部分において内因性脳律動を同調させることができる。
【0154】
幾つかの実施形態では、時間的間隔Sは、式S(t)=Smin+S*sin(ωt)に従って変更することができ、式中、S(t)は電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の時間的間隔Sであり、Smin及びSは時定数であり、ωは標的刺激周波数に比例する。しかしながら、本発明の実施形態はそれに限定されない。例えば、幾つかの実施形態では、S(t)=Smin+S*cos(ωt)等の他の式に従って、時間的間隔Sを変更することができる。いかなる特定の理論によっても限定されることを望まずに、時間的間隔Sの振幅は、引き起こされる刺激の振幅に反比例する可能性があると考えられる。例えば、時間的間隔Sの低減により、前庭系は、所与の時間内に電気パルスのより多くのパケットを受け取ることになる。逆に、時間的間隔Sの増大により、前庭系は、所与の時間内に電気パルスのより少ないパケットを受け取ることになる。したがって、時間的間隔Sを変調することにより、引き起こされる刺激の振幅を変調することができる。このように、標的周波数に従って時間的間隔Sを変調することにより、したがって、標的周波数に従って、引き起こされる刺激を変調することができる。したがって、刺激周波数に従って脳波を同調させることができる。
【0155】
図14は、本発明の幾つかの実施形態による、電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の変調された時間的間隔と、対応する変調された刺激波形とを示すグラフである。図14を参照すると、パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の時間の間隔Sは、正弦波変調で変更されるように示されている。Sの変調に対応する波形の振幅が示されている。例えば、より長い時間的間隔は、Sがより高い場合に隣接するパケットの間に示され、より短い時間的間隔は、Sがより低い場合に示されている。図示する例では、パケットの各々は、振幅、幅及び間隔の等しい3つのパルスを含むが、実施形態はそれに限定されない。
【0156】
図15A図15C及び図15Eは、本発明の幾つかの実施形態による変調された標的刺激周波数を示すグラフである。図15B図15D及び図15Fは、それぞれ図15A図15C及び図15Eの変調された標的刺激周波数による電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の変調された時間的間隔を示すグラフである。図12及び図13並びに図15A図15Fを参照すると、幾つかの実施形態では、式は、2つ以上の標的刺激周波数を含むことができる。例えば、幾つかの実施形態では、式は広範囲の周波数を含むことができる。幾つかの実施形態では、変調することは、より低い標的周波数とより高い標的周波数との間で標的刺激周波数を変調することを含むことができる。
【0157】
図15A及び図15Bを参照すると、幾つかの実施形態では、変調することは、より高い標的周波数とより低い標的周波数との間において一パターンで標的刺激周波数を繰り返し低減させることを含むことができる。時間的間隔Sの正弦波変調の周期は、標的周波数が低減するに従って経時的に増大することができる。図15A及び図15Bに示すパターンは、ガルバニック前庭刺激の持続時間にわたって連続的に繰り返すことができる。
【0158】
図15C及び図15Dを参照すると、幾つかの実施形態では、変調することは、より低い標的周波数とより高い標的周波数との間において一パターンで標的刺激周波数を繰り返し増大させることを含むことができる。時間的間隔Sの正弦波変調の周期は、標的周波数が増大するに従って経時的に低減することができる。図15C及び図15Dに示すパターンは、ガルバニック前庭刺激の持続時間わたって連続的に繰り返すことができる。
【0159】
図15E及び図15Fを参照すると、幾つかの実施形態では、変調することは、より低い標的周波数からより高い標的周波数まで増大した後、より低い標的周波数まで再び低減するというパターンで標的刺激周波数を繰り返し循環させることを含むことができる。時間的間隔Sの正弦波変調の周期は、標的周波数が増大するに従って経時的に低減することができ、標的周波数が低減するに従って増大することができる。図15E及び図15Fに示すパターンは、ガルバニック前庭刺激の持続時間にわたって連続的に繰り返すことができる。
【0160】
搬送波ベースの変調
図16A図16Dは、本発明の幾つかの実施形態による電気信号を変調する方法を示すグラフである。例えば、図16Aは、本発明の幾つかの実施形態による搬送波波形関数を示すグラフであり、図16Bは、本発明の幾つかの実施形態による変調波形を示すグラフであり、図16Cは、本発明の幾つかの実施形態による振幅変調電気信号を示すグラフであり、図16Dは、本発明の幾つかの実施形態による周波数変調電気信号を示すグラフである。図16Aを参照すると、搬送波波形関数は、連続周期関数とすることができる。例えば、幾つかの実施形態では、搬送波波形関数は正弦波とすることができる。幾つかの実施形態では、搬送波波形関数は、矩形波、のこぎり波又は別の波形関数とすることができる。搬送波波形関数は、振幅及び搬送波周波数を含むことができる。搬送波波形関数は、関数に基づいて生成される電気パルスに対応することができる一続きのパルスを含むことができる。
【0161】
パルスのそれぞれは、時間的幅Wと振幅Aとを含むことができる。パルスの時間的幅Wは、隣接するパルスの対応する位相の間の時間の量として定義することができる。波形の振幅Aは、図8の電極215によって提供される電気信号の電圧及び/又は電流の振幅に対応することができる。
【0162】
搬送波波形関数に対応する電気信号に応答して図8に示すように皮膚によって提供されるインピーダンスは、パルスの時間的幅Wに基づくことができる。例えば、幅Wは、パルスの期間を定義することができる。搬送波波形関数の搬送波周波数は、期間の逆数とすることができる。図11に示すように、インピーダンスは、パルスの周波数に反比例する可能性がある。したがって、より高い周波数、したがってより低いインピーダンスを提供するために、幅Wは小さいように選択することができる。例えば、幾つかの実施形態では、搬送波周波数は、約3kHzより大きい場合がある。幾つかの実施形態では、搬送波周波数は約10kHzである場合がある。
【0163】
図16A図16Dを参照すると、振幅A及び搬送波周波数のうちの少なくとも一方を変調して、刺激波形を変調することができる。変調波形に基づいて少なくとも1つの変調パラメータを変調することができる。例えば、図16A図16Cを参照すると、変調波形に基づいて搬送波波形関数の振幅を変調して、振幅変調電気信号を生成することができる。図16A及び図16B並びに図16Dを参照すると、変調波形に基づいて搬送波波形関数の周波数を変調して、周波数変調電気信号を生成することができる。幾つかの実施形態では、変調波形は正弦波関数とすることができる。こうした実施形態では、搬送波波形関数の振幅及び/又は周波数は、正弦波変調において変更することができる。しかしながら、他の実施形態では、変調波形は正弦波ではない場合があり、別の波形である場合がある。図8及び図10を参照すると、変調周波数に基づいて前庭系を刺激することができる。したがって、ガルバニック前庭刺激の所望の診断的及び/又は治療的使用に基づいて、変調周波数を低いように選択することができる。幾つかの実施形態では、変調周波数は、約1kHz未満とすることができる。例えば、幾つかの実施形態では、変調周波数は、約0.005Hz〜約200Hzとすることができる。しかしながら、幾つかの実施形態では、ガルバニック前庭刺激の別の所望の診断的及び/又は治療的使用に基づいて、1kHzを超える変調周波数を選択することができる。
【0164】
ガルバニック前庭刺激は、変調周波数に基づいて被検者の脳の他の部分において下流効果を与える場合がある。幾つかの実施形態では、脳の標的部分に脳律動を引き起こすように、変調信号の周波数を選択することができる。幾つかの実施形態では、ガルバニック前庭刺激は、変調信号に基づいて脳の標的部分において内因性脳律動を同調させることができる。
【0165】
幾つかの実施形態では、変調波形は、2つ以上の変調周波数を含むことができる。例えば、幾つかの実施形態では、変調波形は、広範囲の周波数を含むことができる。幾つかの実施形態では、変調することは、より低い標的周波数とより高い標的周波数との間で変調波形を変調することを含むことができる。幾つかの実施形態では、変調することは、より高い標的周波数とより低い標的周波数との間において一パターンで変調周波数を繰り返し低減させることを含むことができる。幾つかの実施形態では、変調することは、より低い標的周波数とより高い標的周波数との間において一パターンで変調周波数を繰り返し増大させることを含むことができる。幾つかの実施形態では、変調することは、より低い標的周波数からより高い標的周波数まで増大するパターンで変調周波数を繰り返し循環させた後、より低い標的周波数に戻るように低減させることを含むことができる。
【0166】
応用
ここで、本発明による実施形態について、以下の非限定的な例を参照して説明する。
【0167】
周波数間カップリングの改変
複数の周波数帯域における振動活動は、マイクロスケールからメソスケール及びマクロスケールまでの異なるレベルの組織において観察することができる。研究により、幾つかの脳機能は、異なる周波数帯域における同時の振動で達成されることが示された。異なる帯域における振動間の関係及び相互作用は、脳機能の理解において有益である可能性がある。幾つかの振動間のこの相互作用は、周波数間カップリング(CFC)としても知られる。
【0168】
脳律動における認識されたCFCの2つの形態は、位相振幅カップリング(PAC)及び位相−位相カップリング(PPC:phase-phase coupling)である。位相振幅カップリングでは、低い方の周波数振動の位相が、結合された高い方の周波数振動の出力を駆動する可能性があり、それにより、より高速な律動の振幅包絡がより低速な律動の位相と同期する結果となる可能性がある。位相−位相カップリングは、高周波数振動と低周波数振動との間の振幅とは無関係の位相固定である。
【0169】
位相振幅カップリングは、脳のネットワークにおけるニューロン活動のタイミングを調整することによる脳の別個の領域内及び別個の領域間の通信のための機構である可能性があると考えられる。その脳律動は、膜電位における変動を通してニューロン集団の興奮性を変調し、より低速な律動の特定の位相においてニューロンスパイクの確率を偏らせる。PACは、作業性能に対して本質的な機能的に関連する皮質部位を動的に連結すると考えられる。
【0170】
パーキンソン病(PD)は、ベータ振動の位相と主運動皮質における広帯域活動の振幅との間の過度のカップリングに関連し、皮質ニューロン活動を柔軟性のないパターンに制約し、その結果、動作緩慢及び硬直が生じる可能性があるということが示された。例えば、C. de Hemptinne, N. C. Swann, J. L. Ostrem, E. S. Ryapolova-Webb, M. San Luciano, N. B. Galifianakis, P. A. Starr, Therapeutic deep brain stimulation reduces cortical phase-amplitude coupling in Parkinson's disease, Nat Neurosci 18, 779-786 (2015); published online EpubApr 13 (10.1038/nn.3997)を参照されたい。パーキンソン病は、異なる脳領域において生じるか又は集中する広範囲の症候に関連する可能性がある。患者に振戦が起こる場合、2つの異なるEEG帯の間の異常な周波数間カップリングが存在する可能性があると考えられる。機能を再度正常にし、適切な平衡能を再度確立するように、周波数間カップリングを改変するために、CVS及び/又はGVSを用いることができると考えられる。
【0171】
PPNと呼ばれる脳幹の領域の刺激は、例えば、PD患者の歩行の正常化を改善することが示された。例えば、H. Morita, C. J. Hass, E. Moro, A. Sudhyadhom, R. Kumar, M. S. Okun, Pedunculopontine Nucleus Stimulation: Where are We Now and What Needs to be Done to Move the Field Forward? Front Neurol 5, 243 (2014); published online (10.3389/fneur.2014.00243)を参照されたい。本発明に関して、理論によって拘束されることを望まずに、前庭刺激は、PPNの活動を変調することができると考えられる。例えば、CVSを用いてPPNを刺激することができる。幾つかの実施形態では、GVSを用いて、PPNを刺激するためのCVSの使用と同時に、振戦に関連する異常な周波数間カップリングを分離することができる。したがって、2つの変調は、治療の効力を向上させるように異なる脳領域を変調することができる。
【0172】
より一般的には、GVSを用いて、特定の励起周波数(例えば、EEG帯域内)に反応する神経経路のサブセットを敏感にするか又はそれを優先して、それらがCVS神経変調に対してより敏感に反応するようにすることができる。そして、これらの選択された経路は、他の非選択経路の後方で異なる変調を受ける。例示する例は、記憶エンコーディングに関連する経路を敏感にする、海馬活動に関連する、シータ帯周波数範囲におけるGVSの使用である。閾値未満の強度でのGVSを用いる場合があり、又は、強度は、求心性前庭神経の活性化閾値を超える場合がある。CVS波形は、標的GVS変調の神経変調効果と部分的に一致しかつそれを促進するように選択される。
【0173】
IGF−1増加の制御
インスリン様成長因子−1(IGF−1)は、幼少期の成長において重要な役割を果たし、大人に同化作用効果を与えると考えられる、インスリンと分子構造が類似するホルモンである。ヒトにおいて、このタンパク質は、IGF1遺伝子によってエンコードされる。IGF−1はまた、ミトコンドリア保護も提供することができると考えられる。
【0174】
インスリン様成長因子番号1(IGF−1)は、インスリンと分子構造が類似するホルモン(分子量:7649ダルトン)である。IGF−1は、幼少期の成長において重要な役割を果たし、大人には同化作用効果を与え続ける。その生成は、IGF1遺伝子によってエンコードされ、主に肝臓において内分泌ホルモンとして生成されるが、中枢神経系における生成もまた観察された。循環において、IGF−1は6つのタンパク質のうちの1つに結合され、最も一般的なのはIGFBP−3である。これらのシャペロンタンパク質は、循環においてIGF−1の半減期を約15分間(非結合)から15時間(結合)まで延長する。IGF−1の生成は、成長ホルモン(GH)に関連し、GHに対する血液検査は、代用物としてIGF−1を使用し、それは、後者の濃度は、1日のサイクルにわたってGHほど変化しない傾向があるためである。IGF−1は、AKTシグナル伝達経路の最も有力な天然活性剤のうちの1つ、細胞成長及び増殖の刺激物、並びにプログラム細胞死の有力な阻害剤である。IGF−1は、細胞が分裂のプロセスにあるとき及び分裂の直後の最も脆弱な瞬間のうちの1つにおいて細胞を保護し強化する。IGF−1は、ミトコンドリアストレスからのミトコンドリア保護を提供することができると考えられる。
【0175】
十分な時間、かつ正確な周波数での室頂核(FN)の電気刺激が、虚血部位におけるミトコンドリアのアポトーシスの低減を介して神経保護に至ることが示された。例えば、P. Zhou, L. Qian, T. Zhou, C. Iadecola, Mitochondria are involved in the neurogenic neuroprotection conferred by stimulation of cerebellar fastigial nucleus, J Neurochem 95, 221-229 (2005)を参照されたい。IGF−1はこうした神経保護における因子であり得ると考えられる。電気刺激は、血液脳関門を通る体循環から、刺激神経点による又はその周囲における非常に局所化した使用に対して、IGF−1の増加をもたらすことが示された。有効には、神経活動は、IGF−1に対して信号を送りそれを増加させた。例えば、T. Nishijima, J. Piriz, S. Duflot, A. M. Fernandez, G. Gaitan, U. Gomez-Pinedo, J. M. Verdugo, F. Leroy, H. Soya, A. Nunez, I. Torres-Aleman, Neuronal activity drives localized blood-brain-barrier transport of serum insulin-like growth factor-I into the CNS, Neuron 67, 834-846 (2010)を参照されたい。前庭刺激は、前庭刺激中に活性化する神経に直接影響を与えるか、又は場合によっては近くの神経が傍聴者効果でIGF−1を受け取るようにすることにより、IGF−1の増加及び/又はその効力の促進を同様に達成することができると考えられる。特に頭痛を軽減するために、rCBFの増大は、BBBを通して増大したIGF−1の取込みを可能にする、重要な因子であり得る。血流を改変する機序が、偏頭痛の病因に関わる既存の観察/確信と適切に一致する。そのIGF−1はまた、シナプス可塑性を促進し、それは、慢性片頭痛に関連する中枢痛を軽減する役割を有することを意味することができる。
【0176】
本発明に関して、理論によって拘束されることを望まずに、前庭刺激、又は特にCVS及び/又はGVSを用いて、血液脳関門を横切るIGF−1の輸送を増大させ、したがって、中枢神経系の周波数依存標的領域において、ミトコンドリア保護を増大させることができる。幾つかの実施形態では、CVS及びGVSを組み合わせることができる。例えば、CVSを用いて、脳の周波数依存領域の刺激を提供することができ、GVSを用いて、刺激領域及び/又は周囲の領域に神経保護を提供することができる。
【0177】
実施形態について、外耳道を介するガルバニック前庭刺激に関して記載したが、本発明の概念はそれに限定されない。例えば、幾つかの実施形態では、前庭系は、側頭骨の乳様突起部に近接する耳の後方の皮膚の部分と接触する少なくとも1つの電極によって刺激することができる。幾つかの実施形態では、電気信号の送達は、被検者の神経系の他の部分の経皮的電気刺激を含むことができる。幾つかの実施形態では、記載した変調方式は、植込み型電極、又は皮膚を通して刺激しない他のデバイスで使用することができる。
【0178】
上記は、本発明の例示であり、限定として解釈されるべきではない。本発明の幾つかの例示的な実施形態について説明したが、本発明の新規の教示及び利点から実質的に逸脱せずに、多くの変更が例示的な実施形態において可能なことを当業者であれば容易に理解するであろう。したがって、全てのそのような変更は、特許請求の範囲において定義される本発明の範囲内に含まれることが意図される。したがって、上記が本発明の例示であり、開示された特定の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、開示された実施形態への変更並びに他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。本発明は、均等物が含まれる以下の特許請求の範囲により定義される。
なお、出願当初の特許請求の範囲の記載は以下の通りである。
請求項1:
患者に接続された複数の電極に電気信号を送達することであって、該電気信号は、電気パルスの複数の間隔が空けられたパケットを含み、該複数のパケットのそれぞれは、複数の電気パルスと、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の時間的間隔とを有し、前記電気パルスのそれぞれは、時間的幅と、電圧の振幅と、パケット内の前記電気パルスのうちの隣接するものの間の時間的間隔とを有することと、
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの量と、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記時間的幅と、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記電圧の振幅と、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔と、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔とのうちの少なくとも1つを変調して、前記電気信号を変調することと、
を含む、神経刺激の方法。
請求項2:
前記変調することは、
標的刺激周波数に基づいて前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記量を変調することを含む、請求項1に記載の方法。
請求項3:
前記変調することは、
標的刺激周波数に基づいて、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記時間的幅を変調することを含む、請求項1に記載の方法。
請求項4:
前記変調することは、
標的刺激周波数に基づいて、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記電圧の振幅を変調することを含む、請求項1に記載の方法。
請求項5:
前記変調することは、
標的刺激周波数に基づいて、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の前記電気パルスのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を変調することを含む、請求項1に記載の方法。
請求項6:
前記変調することは、
標的刺激周波数に基づいて、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を変調することを含む、請求項1に記載の方法。
請求項7:
前記変調することは、
前記標的刺激周波数に基づいて、正弦波変調において前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を最小値と最大値との間で変更することを含む、請求項6に記載の方法。
請求項8:
前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔の前記最小値は、標的ニューロンが、電気パルスの次のパケットによって活性化される前に回復することができるように十分大きい、請求項7に記載の方法。
請求項9:
前記変更することは、
式S(t)=Smin+Sc*sin(ωt)に従って、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を変更することを含み、
式中、S(t)は前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔であり、Smin及びScは時定数であり、ωは前記標的刺激周波数に比例する
、請求項7に記載の方法。
請求項10:
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記量は、2〜約200であり、
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記時間的幅は、約10マイクロ秒〜約500マイクロ秒であり、
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記電圧の振幅は、約1ボルト〜約10ボルトであり、
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔は、約10マイクロ秒〜約500マイクロ秒である、請求項6に記載の方法。
請求項11:
前記変調することは、
正弦波変調において前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を約100マイクロ秒〜約100ミリ秒で変更すること
を含む、請求項6に記載の方法。
請求項12:
前記標的刺激周波数は、約0.005Hz〜約200Hzである、請求項6に記載の方法。
請求項13:
前記変調電気信号に基づいて前記脳の標的部分において脳律動を引き起こすように、該変調電気信号を選択することを更に含む、請求項6に記載の方法。
請求項14:
前記変調電気信号に基づいて前記脳の標的部分において内因性脳律動を同調させることを更に含む、請求項6に記載の方法。
請求項15:
変調することは、
より低い標的周波数とより高い標的周波数との間で前記標的刺激周波数を変調することを含む、請求項6に記載の方法。
請求項16:
前記標的刺激周波数を変調することは、
前記より低い標的周波数と前記より高い標的周波数との間の時間変化するパターンで、前記標的刺激周波数を繰り返し増大及び/又は低減させることを含む、請求項15に記載の方法。
請求項17:
前記標的刺激周波数を変調することは、
前記より低い標的周波数から前記より高い標的周波数まで増大するパターンで前記標的刺激周波数を繰り返し循環させ、その後、該より低い標的周波数に戻るように低減させることを含む、請求項15に記載の方法。
請求項18:
前記電気信号を送達することは、経皮的電気刺激を含む、請求項1に記載の方法。
請求項19:
前記変調電気信号を送達することは、ガルバニック前庭刺激(GVS)を含む、請求項1に記載の方法。
請求項20:
GVSを通しての前記変調電気信号の前記送達と同時に、カロリック前庭刺激(CVS)を通して、前記患者に時間変化する熱波形を送達することを更に含む、請求項19に記載の方法。
請求項21:
前記GVSの標的刺激周波数は、約0.005Hz〜約200Hzであり、前記GVSは、前記脳の標的部分に対する前記CVSの送達を促進する、請求項20に記載の方法。
請求項22:
前記電気信号の前記変調は、変調波形に基づいて該電気信号を変調することを含む、請求項1に記載の方法。
請求項23:
前記変調波形は音響波形を含む、請求項22に記載の方法。
請求項24:
前記音響波形は音楽を含む、請求項23に記載の方法。
請求項25:
前記音響波形は音声を含む、請求項23に記載の方法。
請求項26:
前記変調電気信号の前記送達と同時に、前記患者に音響波形を聴覚的に送達することを更に含む、請求項1に記載の方法。
請求項27:
前記音響波形は音楽を含む、請求項26に記載の方法。
請求項28:
前記音響波形は音声を含む、請求項26に記載の方法。
請求項29:
前記電気信号の前記変調は、前記音響波形に基づく、請求項26に記載の方法。
請求項30:
前記電極は、前記患者のそれぞれの耳の中に挿入されるように構成されたイヤピースを備え、
前記イヤピースは、前記患者に前記音響波形を送達するスピーカを更に備え、
前記送達される音響波形の知覚される音量は、前記イヤピースが、前記患者の外耳道と、前記変調電気信号が該外耳道に送達されるのに十分接触していることを示す、請求項26に記載の方法。
請求項31:
第1の電極及び第2の電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極を通して被検者に変調電気信号を送達するように構成された波形発生器を備えるコントローラであって、前記変調電気信号は、電気パルスの複数の間隔が空けられたパケットを含み、該複数のパケットのそれぞれは、複数の電気パルスと、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の時間的間隔とを有し、前記電気パルスのそれぞれは、時間的幅と、電圧の振幅と、パケット内の前記電気パルスのうちの隣接するものの間の時間的間隔とを有し、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの量と、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記時間的幅と、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記電圧の振幅と、前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔と、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔とのうちの少なくとも1つが変調されて、前記電気信号を変調する、コントローラと、
を備える、神経刺激装置。
請求項32:
前記第1の電極及び前記第2の電極は、経皮的電気刺激を通して前記被検者に前記変調電気信号を送達するように構成されている、請求項31に記載の神経刺激装置。
請求項33:
第1のイヤピース及び第2のイヤピースであって、該イヤピースの各々は前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれ1つを備える、第1のイヤピース及び第2のイヤピースを更に備え、
前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれは、前記被検者のそれぞれの外耳道内に挿入可能であるように構成され、ガルバニック前庭刺激(GVS)を通して前記被検者に前記変調電気信号を送達するように構成されている、請求項31に記載の神経刺激装置。
請求項34:
前記コントローラは、標的刺激周波数に基づいて、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するもの間の前記時間的間隔を変調するように構成されている、請求項33に記載の神経刺激装置。
請求項35:
前記コントローラは、前記標的刺激周波数に基づいて、正弦波変調において前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を最小値と最大値との間で変更するように構成されている、請求項34に記載の神経刺激装置。
請求項36:
前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔の前記最小値は、標的ニューロンが、電気パルスの次のパケットによって活性化される前に回復することができるように十分大きい、請求項35に記載の神経刺激装置。
請求項37:
前記コントローラは、式S(t)=Smin+Sc*sin(ωt)に従って、前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔を変調するように構成されており、
式中、S(t)は前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔であり、Smin及びScは時定数であり、ωは前記標的刺激周波数に比例する、請求項34に記載の神経刺激装置。
請求項38:
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記量は、2〜約200であり、
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記時間的幅は、約10マイクロ秒〜約500マイクロ秒であり、
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスの前記電圧の振幅は、約1ボルト〜約10ボルトであり、
前記電気パルスの複数のパケットのそれぞれにおける前記複数の電気パルスのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔は、約10マイクロ秒〜約500マイクロ秒である、請求項34に記載の神経刺激装置。
請求項39:
前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔の最小値は、約100マイクロ秒より大きく、
前記電気パルスの複数のパケットのうちの隣接するものの間の前記時間的間隔の最大値は、約100ミリ秒未満である、請求項34に記載の神経刺激装置。
請求項40:
前記標的刺激周波数は、約0.005Hz〜約200Hzである、請求項34に記載の神経刺激装置。
請求項41:
前記変調電気信号は、前記標的刺激周波数に基づいて前記被検者の脳の標的部分において脳律動を引き起こすように構成されている、請求項34に記載の神経刺激装置。
請求項42:
前記変調電気信号は、前記標的刺激周波数に基づいて前記被検者の脳の標的部分において内因性脳律動を同調させるように構成されている、請求項34に記載の神経刺激装置。
請求項43:
コントローラは、より低い標的周波数とより高い標的周波数との間で前記標的刺激周波数を変調するように構成されている、請求項34に記載の神経刺激装置。
請求項44:
前記コントローラは、前記より低い標的周波数と前記より高い標的周波数との間の一パターンで、前記標的刺激周波数を繰り返し増大及び/又は低減させるように構成されている、請求項43に記載の神経刺激装置。
請求項45:
前記コントローラは、前記より低い標的周波数から前記より高い標的周波数まで増大するパターンで前記標的刺激周波数を繰り返し循環させ、その後、該より低い標的周波数に戻るように低減させるように構成されている、請求項43に記載の神経刺激装置。
請求項46:
前記第1のイヤピース及び前記第2のイヤピースにそれぞれ熱的に結合された第1の熱電素子及び第2の熱電素子と、
前記第1のイヤピース及び前記第2のイヤピースのそれぞれに対向して、前記第1の熱電素子及び前記第2の熱電素子それぞれに熱的に結合された第1のヒートシンク及び第2のヒートシンクと、
を更に備え、
前記コントローラは、前記第1の熱電素子から出力される第1の時間変化する熱波形を制御する第1の制御信号と、前記第2の熱電素子から出力される第2の時間変化する熱波形を制御する第2の制御信号とを発生させるように構成されている、請求項34に記載の神経刺激装置。
請求項47:
前記第1の熱電素子及び前記第2の熱電素子は、前記第1の制御信号及び前記第2の制御信号に基づいてカロリック前庭刺激(CVS)を提供するように構成されている、請求項46に記載の神経刺激装置。
請求項48:
前記CVSと同時に前記GVSを提供するように構成されている、請求項47に記載の神経刺激装置。
請求項49:
前記GVSの前記標的刺激周波数は、約0.005Hz〜約200Hzであり、
前記GVSは、前記被検者の脳の標的部分に対する前記CVSの送達を促進する、請求項48に記載の神経刺激装置。
請求項50:
前記コントローラは、
前記第1の電極と前記第2の電極との間のインピーダンスを測定し、
前記測定されたインピーダンスが閾値未満であると判断するように構成され、該閾値は、前記イヤピースが前記被検者の前記外耳道と、前記変調電気信号が該外耳道に送達されるのに十分接触していることを示す、請求項33に記載の神経刺激装置。
請求項51:
前記コントローラは、変調波形に基づいて前記電気信号を変調するように構成されている、請求項31に記載の神経刺激装置。
請求項52:
前記変調波形は音響波形を含む、請求項51に記載の神経刺激装置。
請求項53:
前記音響波形は音楽を含む、請求項52に記載の神経刺激装置。
請求項54:
前記音響波形は音声を含む、請求項52に記載の神経刺激装置。
請求項55:
第1のスピーカ及び第2のスピーカを更に備え、
前記コントローラは、前記変調電気信号の前記送達と同時に、前記第1のスピーカ及び前記第2のスピーカを介して前記被検者に音響波形を聴覚的に送達するように構成されている、請求項31に記載の神経刺激装置。
請求項56:
前記音響波形は音楽を含む、請求項55に記載の神経刺激装置。
請求項57:
前記音響波形は音声を含む、請求項55に記載の神経刺激装置。
請求項58:
前記電気信号の前記変調は、前記音響波形に基づく、請求項55に記載の神経刺激装置。
請求項59:
前記電極は、前記被検者のそれぞれの耳の中に挿入されるように構成されたイヤピースを備え、
前記送達される音響波形の知覚される音量は、前記イヤピースが前記被検者の外耳道と、前記変調電気信号が該外耳道に送達されるのに十分接触していることを示す、請求項55に記載の神経刺激装置。
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図6B
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