【実施例】
【0096】
方法および材料
合成
本明細書において記載される環状ペプチドを製造するために適用可能な方法は、概ね、出願人の特許文献1およびそれと共に同日に出願された「Fragment Synthesis of Cyclic Peptides」(代理人整理番号55813832−6PCT)と題する出願内に見出すことができ、2015年11月11日に出願された米国特許仮出願第62/254003号の共通の優先権を主張する。
【0097】
より具体的には、以下のプロトコルを使用して、表S1に示される化合物の各々を合成した。
【0098】
プロトコルA:一般的なナセルリン合成
1.樹脂の調製:Fmocアミノ酸(樹脂に対して1.1当量)をCH
2Cl
2(樹脂10mL/g)中に溶解させた。アミノ酸が完全に溶解しなかった場合、均一混合物が攪拌/超音波処理時に持続するようになるまでDMFを緩徐に滴下添加した。2−クロロトリチル樹脂を15分間、CH
2Cl
2(樹脂5mL/g)中で膨張させた。次いで、CH
2Cl
2を排出し、2−Cl Trt樹脂を含有する容器にFmocアミノ酸溶液を添加した。DIPEAを添加(アミノ酸に対して2当量)し、容器を5分間攪拌した。次いで、DIPEAの別の2当量を添加し、容器をさらに60分間攪拌し続けた。次いで、樹脂をメタノール(樹脂1mL/g)で処置して、いずれの残りの反応性2−Cl Trt基をエンドキャップした。溶液を15分間混合して排出し、次いで、CH
2Cl
2(3回)、DMF(3回)、CH
2Cl
2(2回)、およびMeOH(3回)ですすいだ。次いで、樹脂を真空下で乾燥させ、秤量してFmocアミノ酸の推定負荷を決定した。
2.手動または自動合成による線状ペプチド配列の調製:完全に保護された樹脂に結合したペプチドを、標準的なFmoc固相ペプチド化学によって、手動でまたは自動ペプチド合成機を使用して合成した。すべてのN−Fmocアミノ酸を用いた。
a. Fmoc脱保護:樹脂をNMP中20%ピペリジンで2回、それぞれ5分間および10分間処置し、各添加後に連続的にDMFおよびNMPで洗浄した。
b. Fmocアミノ酸カップリング:樹脂を、NMP中、Fmocアミノ酸3当量、HATU3当量、およびDIPEA6当量で60分間処置した。難しいカップリングについては、NMP中、Fmocアミノ酸3当量、HATU3当量、およびDIPEA6当量で40分間の二次処置を用いた。
3.保護基の保持による一般的な開裂:所望の線状配列が合成されたら、樹脂を、1)1:3、HFIP:CH
2Cl
2、または2)CH
2Cl
2中5%のTFAのいずれかで、2回、各々30分間処置して、固体支持体からの開裂を提供した。次いで、溶媒を除去し、続いて冷却したtert−ブチルメチルエーテル(またはジエチルエーテル/ヘキサン)で2回倍散して、所望の生成物を得た。次いで、純度を逆相LCMSにより分析した。
【0099】
プロトコルB:N−アルキル化Fmocアミノ酸構築ブロックの調製
1.樹脂調製:プロトコルAのステップ1参照。
2.Fmoc脱保護:プロトコルAのステップ2a参照。
3.ノシル保護:脱保護された樹脂を、CH
2Cl
2(樹脂5mL/mmol)およびDIPEA(6.5当量)中で撹拌した。急速な発熱反応を避けるために、ノシルクロリド(4.0当量)の溶液を30分かけて緩徐に滴下添加した。添加が完了した後、攪拌を室温で3時間続けた。得られたノシル保護された樹脂を濾過し、CH
2Cl
2、MeOH、CH
2Cl
2、およびTHFで洗浄した。
4.N−メチル化:THF(樹脂10mL/mmol)中の樹脂の懸濁液に、THF(2mL)およびMeOH(10当量)中のトリフェニルホスフィン(5当量)の溶液を添加した。攪拌懸濁液を氷浴内で冷却した。THF(1M)中のDIAD(5当量)の溶液を、滴下漏斗を介して滴下添加した。添加の完了後、浴を除去し、反応物を室温でさらに90分間撹拌した。樹脂を濾過し、THF(4回)、CH
2Cl
2(3回)、およびTHF(2回)で洗浄した。
5.ノシル脱保護:NMP(樹脂10mL/mmol)中の樹脂の懸濁液に、2−メルカプトエタノール(10.1当量)およびDBU(5.0当量)を添加した。溶液は暗緑色になった。5分後、樹脂を濾過し、洗浄物が無色になるまでDMFで洗浄した。この手順を2回繰り返し、次いで、樹脂を最後にCH
2Cl
2で洗浄した。
6.Fmoc保護:CH
2Cl
2(樹脂7mL/mmol)中の樹脂の懸濁液に、CH
2Cl
2(7mL)中のFmoc−Cl(4当量)およびDIPEA(6.1当量)の溶液を加えた。懸濁液を室温で4時間撹拌し、次いで、濾過し、CH
2Cl
2(2回)、MeOH(2回)、CH
2Cl
2(2回)、およびEt
2O(2回)で洗浄した。
7.樹脂からの開裂:プロトコルAのステップ3参照。
【0100】
プロトコルC:還元的アミノ化
1.Fmocワインレブアミド形成:CH
2Cl
2(6.5mL)中のFmocアミノ酸(1mmol)、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン−HCl(1.2当量)、およびHCTU(1.2当量)の混合物を0℃に冷却した。次いで、DIPEA(3当量)を攪拌混合物に緩徐に添加した。冷却浴を除去し、反応物を室温で16時間撹拌した。10%HCl溶液(4mL)を添加して沈殿物の形成をもたらし、これを濾過により除去した。濾液を10%HCl(4mLを3回)およびブライン(4mLを2回)で洗浄した。次いで、有機相をNa
2SO
4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去して粗Fmocワインレブアミドを得、これを精製することなく次の反応に使用した。
2.Fmocアミノアルデヒド形成:水素化リチウムアルミニウム粉末(3当量)を乾燥フラスコ内に置いた。THF(Sigma−Aldrich社、250ppmのBHT、ACS試薬>99.0%、6.5mL)を添加し、得られたスラリーを撹拌しながら−78℃に冷却した。スラリーに、THF(10mL)中、Fmocワインレブアミドの溶液を添加した。反応容器を氷/水浴に移動させ、0℃で1時間維持した。0℃での反応物に、アセトン(1.5mL)を、次いでH
2O(0.25mL)を滴下添加し、次いで、反応物を室温でさらに1時間撹拌し続けた。混合物をCeliteで濾過し、EtOAc(10mL)およびMeOH(10mL)で洗浄し、濾液を濃縮した。粗材料をCHCl
3(6.5mL)中に溶解させ、ブライン(3mLを2回)で洗浄し、次いで、有機相をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、濃縮してFmocアミノアルデヒドを得た。
3.樹脂上での還元的アミノ化:樹脂上の線状ペプチドを固相ペプチド合成反応容器内に置き、DMF(樹脂22mL/g)で希釈した。Fmocアルデヒド(4.0当量)を添加し、反応物を一晩振とうさせ続けた。次いで、溶液を排出し、樹脂をCH
2Cl
2(3回)およびDMF(3回)で洗浄した。次いで、樹脂をMeOH/CH
2Cl
2(樹脂22mL/g、1:3の割合)の混合物で希釈し、NaBH4(7当量)をその後添加した。混合物を4時間振とうさせ続け、次いで、溶液を排出し、樹脂をCH
2Cl
2(3回)およびDMF(3回)で洗浄した。
【0101】
プロトコルD:フラグメントを用いた大環状化
2ドラムバイアル中で、0.1mmolの線状ペプチドおよびDEPBT(1.5当量)を、新たに蒸留した5mLのTHF(0.02M)中に溶解させた。次いで、DIPEA(3当量)を添加し、反応混合物を室温で一晩(16時間)撹拌し続けた。次いで、炭酸テトラアルキルアンモニウム樹脂(6当量)を反応混合物に添加し、撹拌をさらに24時間続けた。次いで、反応物を固相抽出容器で濾過し、CH
2Cl
2(2mL)ですすいだ。濾液および洗浄物を組み合わせ、溶媒を減圧下で除去した。
【0102】
プロトコルE:アジリジンアルデヒドを用いた大環状化
線状ペプチドをTFE中に溶解させた(溶解性の問題が生じた場合は、TFE:CH
2Cl
2が50:50の混合物を環化に使用した)。次いで、TFE原液(0.2M)として、(文献プロトコル:J.Am.Chem.Soc.2006,128(46),14772−14773およびNat.Protoc.2010,5(11),1813−1822に従って調製した)0.6当量の(S)−アジリジン−2−カルボキアルデヒド二量体を添加し、0.1Mの最終反応混合物濃度を得、次いで、tert−ブチルイソシアニド(1.2当量)を添加し、反応混合物を4時間撹拌した。進捗をLC−MSによる方法に沿って分析した。
【0103】
プロトコルF:アシルアジリジンの求核的開環、大環状化後
a.)チオ酢酸/チオ安息香酸:チオ酸(4当量)を粗反応混合物に添加した。反応進捗をLC−MSによって監視し、概ね1〜2時間後に完了した。
または代替的に、b.)チオフェノール:チオフェノール(4当量)およびDIPEA(4当量)を粗環化混合物に添加した。反応進捗をLC−MSによって監視し、概ね1〜2時間後に完了した。溶媒を減圧下で除去し、真空下で乾燥させた。粗材料をEt
2O/ヘキサンまたはTBMEで倍散するか、または代替的にH
2Oで希釈し、凍結し、凍結乾燥させた。
【0104】
プロトコルG:一般的な鈴木カップリング、大環状化後
ヨード−Phe含有大環状分子(0.1mmol)、Na
2C0
3(2当量)、置換ボロン酸(1.1当量)、および4mLの水:アセトニトリル(1:1の割合)をマイクロ波バイアル中で混合した。混合物をN2流によって10分間脱気した。N2下の間、シリコン系Pd触媒(Siliacat−DPP Pd不均質触媒、0.05当量)を添加した。反応バイアルをシールし、150℃で10分間マイクロ波中に置いた。反応進捗をLCMSによって監視した。いったん完了すると、反応物をCeliteプラグで濾過し、溶媒を減圧下で除去した。
【0105】
プロトコルH:一般的なウルマンカップリング、大環状化後
不活性雰囲気下で、ペプチド大環状分子(0.018mmol)を、2mLの乾燥CH
2Cl
2を含有する2ドラムバイアル内に置いた。次いで、Cu(OAc)
2(1当量)、ベンゼンボロン酸(2当量)、および4A(オーブン乾燥)分子ふるいをバイアルに添加し、続いてDIPEA(4当量)を添加した。バイアルの内容物を室温で一晩撹拌した。反応進捗をLCMSによって評価した。反応が完了したとみなされたら、混合物をCeliteプラグで濾過し、溶媒を減圧下で除去した。
【0106】
プロトコルI:一般的な包括的脱保護および開裂
側鎖保護基の脱保護は、ペプチドをTFA:H
2O:TIS(95:2.5:2.5)からなる2mLの開裂カクテル中に2時間溶解することによって達成された。続いて、開裂混合物を減圧下で蒸発させ、ペプチドを冷却ジエチルエーテル/ヘキサン(またはtert−ブチルメチルエーテル)から2回沈殿させた。
【0107】
プロトコルJ:還元的に不安定な保護基の一般的な開裂
a.)Pd/Cおよびギ酸による脱ベンジル化:ベンジルで保護された大環状分子(0.35mmol)をMeOH(8mL)中に10%ギ酸、50重量%Pd/C(1mg)と共に溶解させ、55℃に加熱した。反応が完了したとみなされたら、混合物をCeliteプラグで濾過し、MeOHで洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。
または代替的に、b.)ラネーNiによる脱硫化/脱ベンジル化:ラネーNiスラリー(1〜2mL)を環化反応混合物に直接添加し、一晩力強く撹拌した。次いで、バイアルを遠心分離し、ピペットを使用して液体を風袋計量されたバイアルに移動させた。ラネーNiを含有するバイアルにMeOHを添加した。次いで、バイアルを超音波処理し、ボルテックスし、遠心分離した。再度、液体を風袋計量されたバイアルに移動させた。このプロセスをEtOAcで繰り返し、次いで、最後にMeOHで繰り返した。次いで、混合した洗浄物を減圧下で除去し、残渣を真空下で乾燥させた。
【0108】
プロトコルK:側鎖のアミド化、大環状化後
大環状分子(0.021mmol)を1mLのCH
3CN中に溶解させた。次いで、K
2CO
3(5当量)および酸クロリド(2当量)を添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌し続けた。朝、反応進捗をLC−MSによって確認した。完了時に、溶媒を減圧によって除去した。
【0109】
プロトコルL:蛍光色素の付着
大環状分子(4μmol)をDMSO(200μL)中に溶解させた。次いで、DIPEA(5当量)を添加した。別個のバイアル内で、NHSエステルとして5mgの蛍光色素を200μLのDMSO中に溶解させた。次いで、大環状分子溶液を蛍光標識の溶液に添加した。反応混合物を一晩撹拌した。朝、反応進捗をLC−MSによって確認し、次いで、溶媒を凍結乾燥によって除去した。
【0110】
プロトコルM:精製方法
すべての大環状分子を、30gのRediSep C18 Goldカラムを使用する逆相カラムクロマトグラフィーを使用して精製した。勾配は、35mL/分の流速で、溶離剤A(二重蒸留水中0.1%ギ酸)およびB(HPLC−グレードのアセトニトリル中0.1%ギ酸)からなっていた。
【0111】
インテグリンα4β7 − MAdCAM−1競合アッセイ
96ウェルMicrolon200プレート(Greiner、655001)を、炭酸緩衝剤(50mM、pH9.6)中1μg/mlの組み換えインテグリンα4β7(R&D Systems、5397−A3−050)の溶液の1ウェル当たり100μlでコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートした。溶液を除去し、1ウェル当たり250μlのブロッキング緩衝剤(50mMのトリス、150mMのNaCl、1mMのMnCl2、1%のウシ血清アルブミン(BSA:bovine serum albumin)、0.05%のTween)を添加した。次いで、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝剤(50mMのトリス、100mMのNaCl、1mMのMnCl2、0.05%のTween)で3回洗浄した。各ウェルに、アッセイ緩衝剤中に希釈した50μlの化合物を化合物段階希釈プレートから移動させて添加した。50μlの組み換えMAdCAM−FC(R&D systems、6056−MC−050)をアッセイ緩衝剤(50mMのトリス、150mMのNaCl、1mMのMnCl2、0.1%のBSA、0.05%のTween)中に1mg/mlの濃度で各ウェルに添加した。プレートを振とうさせながら室温で2時間インキュベートして、結合平衡に到達させた。次いで、プレートを洗浄緩衝剤で3回洗浄し、アッセイ緩衝剤中1:2000で希釈した100μlの抗ヒトIgG Fc特異的ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)(Abcam、Ab97225)を各ウェルに添加した。プレートを攪拌下、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを3回洗浄し、次いで、100μlの1,3’,5,5’−テトラメチルベンキジエ(TMB:tetramethylbenxidie)を各ウェルに添加した。反応を、50μlの1MのH2SO2を添加することによって2分間のインキュベーション後に停止させ、光学吸光度を450nMで読み取った。
【0112】
インテグリンα4β1 − VCAM−1競合アッセイ
96ウェルMicrolon200プレート(Greiner、655001)を、炭酸緩衝剤(50mM、pH9.6)中0.5μg/mlの組み換えインテグリンα4β1(R&D Systems、5397−A3−050)の溶液の1ウェル当たり100μlでコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートした。溶液を除去し、1ウェル当たり250μlのブロッキング緩衝剤(50mMのトリス、150mMのNaCl、1mMのMnCl2、1%のBSA、0.05%のTween)を添加した。次いで、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝剤(50mMのトリス、100mMのNaCl、1mMのMnCl2、0,05%のTween)で3回洗浄した。各ウェルに、アッセイ緩衝剤中に希釈した50μlの化合物を化合物段階希釈プレートから移動させて添加した。50μlの組み換えVCAM−FC(R&D systems、862−VC−100)をアッセイ緩衝剤(50mMのトリス、150mMのNaCl、1mMのMnCl2、0.1%のBSA、0.05%のTween)中に1mg/mlの濃度で各ウェルに添加した。プレートを振とうさせながら室温で2時間インキュベートして、結合平衡に到達させた。次いで、プレートを洗浄緩衝剤で3回洗浄し、アッセイ緩衝剤中1:2000で希釈した100μlの抗ヒトIgG Fc特異的−HRP(Abcam、Ab97225)を各ウェルに添加した。プレートを攪拌下、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを3回洗浄し、次いで、100μlの1,3’,5,5’−TMBを各ウェルに添加した。反応を、50μlの1MのH2SO2を添加することによって2分間のインキュベーション後に停止させ、光学吸光度を450nMで読み取った。
【0113】
RPMI8866細胞接着競合アッセイ
RPMI8866ヒト細胞(Sigma#95041316)を、10%のウシ胎児血清(FBS:Fetal Bovine Serum)(Wisent、081−105)で補充されたRPMI1640媒体(Wisent、350−000−CL)中で培養し、1%のペニシリン−ストレプトマイシンA MaxiSorpプレート(Nunc、442404)を、コーティング緩衝剤(50mMの炭酸ナトリウム、pH9.6)中0.25mg/mlで100ml/ウェルの組み換えヒトMAdCAM−1 Fcキメラ(R&D Systems、6056−MC−050)溶液でコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートし、1ウェル当たり150μlの洗浄緩衝剤(リン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)中0.05%のTween20)で2回洗浄し、1ウェル当たり250μlのブロッキング緩衝剤(PBS中1%の脱脂粉乳)でブロックし、室温で1時間インキュベートした。RPMI8866細胞を5mMのカルセインを含有するPBS中1000万細胞/mlで再懸濁し、50mlのチューブ中に37℃で30分間インキュベートした。PBSを添加してチューブを充填し、細胞を下に回転させて、RPMI1640媒体中200万/mlまで再懸濁した。化合物を結合緩衝剤(1.5mMのCaCl2、0.5mMのMnCl2、50mMのトリス−HCl、pH7.5)中に段階希釈によって、2倍の濃度の1ウェル当たり50μlの最終体積まで希釈した。プレートを300μlのPBSで1回洗浄し、50μlの化合物および50μlの細胞(100,000細胞)を各ウェルに移動させ、細胞接着するようにプレートを暗所で37℃、5%のCO2で45分間インキュベートした。プレートを反転させ、ペーパータオル上でブロットすることによって空にし、手で2回、PBSで洗浄した。次いで、100μlのPBSを各ウェルに添加した。FITC96ボトムリードを使用してBiotek Neo製の機器上でプレートを読み取った。投薬応答を計算するために、細胞を含有しない対照ウェルの蛍光値を各試験ウェルから引いた。
【0114】
緩衝剤
コーティング緩衝剤(50mMの炭酸塩)
420mgの炭酸水素ナトリウムを100mlの水中に溶解させる(溶液1)。270mbの炭酸ナトリウムを50mlの水中に溶解させる(溶液2)。pH9.6まで溶液2を溶液1に添加する。
洗浄緩衝剤
PBS中0.05%のTween20
ブロッキング緩衝剤
PBS中1%の脱脂粉乳
結合緩衝剤
1.5mMのCaCl
2
0.5mMのMnCl
2
50mMのトリス−HCl、pHをHClで7.5にする。
【0115】
血漿タンパク質結合の決定
CD−1マウスまたはSprague−Dawleyラットから採取した50%の血漿を用いる平衡透析(HTDialysis)法を使用し、K2EDTAと共にインキュベートした。試験物質を三複製中1マイクロMの濃度で評価した。5時間のインキュベーション時間ならびに血漿標準および緩衝剤標準をLC/MS/MSを使用して評価した。回収率(Percentage recovery)は、(C
bUffer+C
plasma)/[平均]C
initial、[平均]C
initialが透析前の試験試料から三連で測定されるように計算した。結合していない化合物の割合をC
buffer/C
plasmaとして計算した。
【0116】
水性溶解性アッセイ
水性溶解性は、pH7.4のリン酸緩衝食塩水中の試験化合物の1、0.5、または0.2mM(最大)を使用することによって決定した。溶液を室温で4時間インキュベートし、600rpmで攪拌し、三連で行った。遠心分離を6000rpmで15分間遂行し、溶液濃度をHPLC−UV(220nmの波長と300nmの波長の間で獲得するフォトダイオードアレイ検出器)を使用して測定した。
【0117】
シトクロムP450抑制アッセイ
ヒト肝ミクロソーム(0.25mg/ml、0.5mg/mlの濃度を用いたCYP1A2を除く)を使用して、シトクロムP450(「CYP」)の4つのアイソフォームCYP2D6、CYP3A4、CYP2C9、およびCYP1A2の活性に関する試験化合物について、IC50(二連で0.25nM〜15マイクロMの濃度範囲)を評価した。デキストロメトルファン(15マイクロM、CYP2D6)、テストステロン(50マイクロM、CYP3A4)、ジクロフェナク(10マイクロM、CYP2C9)、およびフェナセチン(100マイクロM、CYP1A2)の基質を用いた。対照抑制剤は、キニジン(0.03nM〜1.5マイクロM、CYP2D6)、ケトコナゾール(0.08nM〜5マイクロM、CYP3A4)、ミコナゾール(0.25nM〜15マイクロM、CYP2C9)、およびアルファ−ナホフラボン(0.03nM〜1.5マイクロM、CYP1A2)であった。インキュベーション時間は10〜20分であり、評価された代謝物はデキストロルファン(CYP2D6)、6−ベータ−OH−テストステロン(CYP3A4)、4’−OH−ジクロフェナク(CYP2C9)、およびアセトアミノフェン(CYP1A2)であった。内部標準は、ラベタロール(CYP2D6)、ロラチジン(CYP3A4)、カルバマゼピン(CYP2C9)、およびメトプロロール(CYP1A2)であった。標準LC/MS/MSプロトコルを使用して分析を遂行した。
【0118】
in vivoでのTリンパ球輸送分析
動物管理委員会。用いられた動物管理施設はカナダ動物管理協会(CCAC:Canadian Council on Animal Care)公認のものである。この研究は、認証動物管理委員会によって承認され、研究のための動物の使用を管理するCACC基準および規則に準拠した。
【0119】
動物。この研究のために、引き渡し時に重量16〜19gの雌のC57Bl/6マウス(ケベック州サン・コスタンのCharles River製)を使用した。動物施設に到着した後、すべての動物を全体的な健康評価に供した。研究の開始前に7〜14日の順化期間を許可した。
【0120】
住環境。動物を標準化された環境条件下で収容した。マウスを1ケージ当たり2〜3匹、自動換気ケージ内に収容した。各ケージには手動配水システムを装備した。標準的な認定商業齧歯類食餌を自由に提供した。水道水を常時自由に提供した。研究の目的を妨げるであろう公知の汚染物質は食餌および水に存在しないと考えられる。各ケージを対応する群について同定し、ケージ内に収容された動物の処置および同一性を示した。異なる処置群からのマウスは混合しなかった。
【0121】
動物室は、21.5±1℃の制御された温度および40±10%の相対湿度で維持した。制御された照明システムは、当該動物に対して1日当たり12時間の光、12時間の暗がりを保証した。適切な換気、1時間当たり8〜10回の空気換気を維持した。
【0122】
DSSの投与。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS:Dextran sulfate sodium)を2〜3%マウスの飲料水に添加することによりC57Bl/6マウスに投与した。マウスは、5日間にわたって自由にDSS処置水にアクセスした。投薬前に2つの均一な群にDSS処置動物を配分するために、体重および疾患活動性指標(「DAI:disease activity index」)を5日目に測定した。大腸炎に関連する特定の症状を各特定の症状の重篤度に基づいてスコア付けした。1.糞便中の血液(ヘモカルト法陰性、ヘモカルト法陽性、目に見える糞便中の血液の痕跡、直腸の出血);2.糞便の堅さ(正常、柔らかいがまだ形をなしている、非常に柔らかい、下痢);3.姿勢と毛(正常;毛の逆立ち;毛の逆立ちと共に軽微な猫背姿勢および軽微な脱水症状;毛の逆立ちと共に猫背姿勢、脱水症状、および歩行異常;瀕死状態(当該動物がこの時点に達する前の安楽死が必須である)。全体のDAIスコアは、3つのパラメータの合計であった(最大スコア9)。DAI評価は、5日目のみ(投薬前)に遂行した。
【0123】
試験物質およびビヒクルの経口投薬。6日目に、強制摂食による溶液の投与手順に従って、経口経路を介する単回の緩徐なボーラス(約5秒間)として、試験物質を朝、投与した(当該動物はしっかり拘止した)。22Gの先端に球の付いた胃の強制摂食用ニードルを口の側面を通過させて、食道に向かって前進させた。試験物質およびビヒクルを10mL/kg経口投薬した。投薬量は、各動物の体重に応じて個別に調整して目標投薬に到達させた。
【0124】
試験物質およびビヒクルの静脈内投薬。6日目に、静脈内投与による溶液の投与手順に従って、試験物質、DATK32抗体、およびビヒクルを、尾静脈を介する単回の緩徐なボーラス注射(約5秒間)として、朝投与した(当該動物を拘止し、その尾を投薬前に温めた)。30Gのニードルを使用して、5mUkgの投薬量で正中尾静脈を通じて試験物質またはビヒクルを注入した。投薬量は、各動物の体重に応じて個別に調整して、DATK32対照抗体の目標投薬に到達させた。
【0125】
試料の採取。6日目、試験物質またはビヒクル投薬の5時間後、CCACによって出版された「Guide to the Care and Use of Experimental Animals」に従って全身麻酔下で心臓穿刺により動物を安楽死させた。血液を、EDTAを含有するSarstedt製チューブ内に移動させた。腸間膜および末梢(鼠径、補助、および上腕)リンパ節を採取し、氷上で、冷却PBSを含有する対応するチューブ内に移動させた。組織調製まで、節を氷上に置いた。
【0126】
細胞集団標識付け。血液を心臓穿刺により中断させ、EDTA被覆チューブ上で採取した。腸間膜リンパ節(MLN:Mensenteric lymph node)および末梢リンパ節(PLN:peripheral lymph node)も採取した。組織からの単核細胞は密度勾配(Lympholyte)を使用して単離され、それらは蛍光抗体で染色された。細胞(5×104)を最初にBDマウスFcBlock(Fcy III/II受容体)と15分間、続いて特異的抗体と30分間インキュベートした。洗浄後、BD固定溶液を使用して細胞を固定した。
【0127】
【表2】
【0128】
次いで、FACS−Caliburサイトメーターを使用して、Tリンパ球の異なる亜集団の割合を分析した。
【0129】
齧歯類におけるin vivoでの薬物動態評価
試験化合物の経口生物学的利用度は、マウスにおける1回または2回の経口投薬後の血漿曝露を評価することによって行い、場合によっては、当該血漿曝露を同じ化合物の単回静脈内投薬後のものと比較することによって行った。
【0130】
実験設計に関する詳細は以下の通りである。
【0131】
【表3】
【0132】
すべての場合において、試験化合物の製剤化は、経口投薬についてはPBS(v/v)中30%のLabrasol、静脈内投薬についてはPBS(v/v)中25%のPEG−400であった。
【0133】
末梢血の採取は以下のように進めた。
【0134】
【表4】
【0135】
場合によっては、採取を最大24時間続行した。また、いくつかの研究では、肝臓および結腸を、末梢血および末端(ならびに逐次)ベースで同時にマウスから採取したことにも留意されたい。
【0136】
他の研究詳細としては以下が挙げられる。
動物:Charles River Labs製の雄のCD−1マウス(20〜25g)を、投薬前に最低5日間、気候順応化させた。投薬日に体重を記録した。
【0137】
食料制限:経口投薬された動物は、一晩食物が取り上げられ、投薬後約2時間、給餌された。
【0138】
臨床的観察:投薬時および各試料採取時に動物を観察した。いかなる異常も記録した。
【0139】
投薬:試験化合物を含有する製剤を、使い捨ての給餌ニードルで強制摂食によって経口投与した。
【0140】
試料採取:末端血液および組織試料を、心臓穿刺によるO2/CO2麻酔下で採取した。結腸試料(盲腸から遠位に2.5cmの0.5cmの部分)を切除し、氷冷したPBSですすぎ、ブロットし、計量する(該当する場合)。肝臓をブロットし、軽量する。血漿、肝臓、および結腸の試料は、生物分析まで摂氏−80度で凍結保存する。
【0141】
試料の加工/貯蔵:すべての血液試料を湿った氷上でK2EDTAチューブ内に移動させ、5分間(3200xgで5分間4℃で)遠心分離して血漿を得た。試料を生物分析まで−80℃で凍結保存した。
【0142】
試料保持:血漿試料を分析し、任意の残りの試料を研究が完了するまで−80℃で凍結保存した。残りの試料は廃棄した。
【0143】
生体分析の方法条件および試料分析:
マトリックス:マウス血漿
計測器具:バイナリポンプ、溶媒脱気装置、サーモスタット付きカラムコンパートメント、CTCオートサンプラー、およびカラムと質量分析計のインレットとの間に設置された切換弁を備えたAgilent製LCシステムを装備したAB Sciex API 4000 Q−TRAP MS/MSシステム。
【0144】
方法条件:
一重項における非ゼロ較正標準(STD:calibration standard)を使用した定量ダイナミックレンジの決定。STDは、ブランクマトリックス試料(ISなし)、ゼロ試料(ISあり)、および予測レンジを網羅し、より低い定量レベル(LLOQ:lower level of quantitation)を含む少なくとも6つの非ゼロSTDからなる。
【0145】
バッチをブラケッティングするシステム適合性試料(検体およびISを含有する未希釈の溶液)の注入3回。
【0146】
方法承認基準:
非ゼロSTDの少なくとも75%を、公称濃度から±20%の偏差内のすべての逆算濃度(より低い定量レベル(LLOQ:lower level of quantitation)の場合は±25%)を含む較正曲線内に含めなければならない。
【0147】
較正曲線の相関係数(r)は、0.99以上でなければならない。
【0148】
システム適合性試料の注入前後の面積比の変化は、±25%以内である。
【0149】
最も高い較正標準の>1倍である試料を、希釈し、対応する希釈品質対照基準と共に再アッセイする。
【0150】
試料分析バッチ:
バッチをブラケッティングするシステム適合性試料の注入3回
研究試料および投薬溶液をブラケッティングする昇順時のSTD
1.研究試料
2.投薬溶液を3つの独立した希釈物としてブランクマトリックス(マウス血漿)中に希釈
【0151】
ET02451−01(化合物番号340)およびET02452−01(化合物番号341)を用いた(治療上の)DSSモデルにおける8日間の有効性研究
【0152】
【表5】
【0153】
試験された化合物の説明
名称:ビヒクル Labrasol/PBS
量:8.0mL
溶液:Labrasol(30%)/PBS(70%)
貯蔵:4℃
【0154】
名称:ET02451(化合物番号340)
量:3.7mL
溶液:Labrasol(30%)/PBS(70%)中8mg/mL
貯蔵:4℃
【0155】
名称:ET02452(化合物番号341)
量:3.45mL
溶液:Labrasol(30%)/PBS(70%)中8mg/mL
貯蔵:4℃
【0156】
名称:ET02452(化合物番号341)
量:3.40mL
溶液:PEG400(40%)/PBS(60%)中13mg/mL
貯蔵:4℃
【0157】
名称:DATK32抗体(eBiosciences #14−5887−85、ロット#4282190)
量:5mL
溶液:濃縮ステップ後に0.5mg/mLを2.5mg/mLまで濃縮
貯蔵:4℃
【0158】
名称:ビヒクル PEG/PBS
量:8.0mL
溶液:PEG400(40%)/PBS(60%)
貯蔵:4℃
【0159】
動物管理委員会。用いられた動物管理施設はカナダ動物管理協会(CCAC:Canadian Council on Animal Care)公認のものである。この研究は、認証動物管理委員会によって承認され、研究のための動物の使用を管理するCACC基準および規則に準拠した。
【0160】
動物。この研究のために、引き渡し時に重量16〜19gの雌のC57Bl/6マウス(ケベック州サン・コスタンのCharles River製)を使用した。動物施設に到着した後、すべての動物を全体的な健康評価に供した。研究の開始前に7〜14日の順化期間を許可した。
【0161】
住環境。動物を標準化された環境条件下で収容した。マウスを1ケージ当たり2〜3匹、自動換気ケージ内に収容した。各ケージには手動配水システムを装備した。標準的な認定商業齧歯類食餌を自由に提供した。水道水を常時自由に提供した。研究の目的を妨げるであろう公知の汚染物質が食餌および水に存在しないと考えられる。各ケージを対応する群について同定し、ケージ内に収容された動物の処置および同一性を示した。異なる処置群からのマウスは混合しなかった。
【0162】
動物室は、21.5±1℃の制御された温度および40±10%の相対湿度で維持した。制御された照明システムは、当該動物に対して1日当たり12時間の光、12時間の暗がりを保証した。適切な換気、1時間当たり8〜10回の空気換気を維持した。
【0163】
試験物質およびビヒクルの経口投薬。5日目〜8日目まで、強制摂食による溶液の投与手順に従って、経口経路を介する単回の緩徐なボーラス(約5秒間)として、ナセルリンおよびビヒクルを投与した(当該動物はしっかり拘止した)。22Gの先端に球の付いた胃の強制摂食用ニードルを口の側面を通過させて、食道に向かって前進させた。試験物質およびビヒクルを5mL/kg経口投薬した。投薬量は、各動物の体重に応じて個別に調整して、ET02451およびET02452の目標投薬(40mg/kg)に到達させた。
【0164】
試験物質およびビヒクルの腹腔内投薬。5日目に、DATK32抗体を5日目のみ、腹腔内経路を介する単回の緩徐なボーラス(約5秒間)として投与した。PEG400(40%)/PBS(60%)中で調製したET02452および腹腔内のビヒクル(PEG400(40%)/PBS(60%))を5日目〜8日目まで投与した。以下の手順に従って腹腔内投与を遂行し、マウスを手で拘止し、頭および体を下に傾けて保持した。ニードルの先端(27G)を、皮膚を通して、腹壁のすぐ上に挿入した。注射器がいかなる腹部臓器にも挿入されていなかったことを確認するために、溶液の投与前に注射器のプランジャーの短い引き戻しを行った(この場合、流体は注射器内に引き戻されることになる)。投薬量は、各動物の体重に応じて個別に調整して、DATK32抗体の目標投薬(15mg/kg)およびET02452の目標投薬(65mg/kg)に到達させた。
【0165】
炎症スコア。マウスを安楽死させた後、結腸を採取し、その長さを測定した。病変の長さも測定した。浮腫および潰瘍の重篤度に基づいて結腸炎症をスコア化した。
【0166】
疾患活動性指標(DAI:Disease Activity Index)の評価。投薬前に2つの均一な群にDSS処置動物を配分するために、体重およびDAIを5日目に測定した。UCに関連する特定の症状を各特定の症状の重篤度に基づいてスコア化した。1.糞便中の血液(ヘモカルト法陰性、ヘモカルト法陽性、目に見える糞便中の血液の痕跡、直腸の出血);2.糞便の堅さ(正常、柔らかいがまだ形をなしている、非常に柔らかい、下痢);3.姿勢と毛(正常;毛の逆立ち;毛の逆立ちと共に軽微な猫背姿勢および軽微な脱水症状;毛の逆立ちと共に猫背姿勢、脱水症状、および歩行異常;瀕死状態(当該動物がこの時点に達する前の安楽死が必須である)。全体のDAIスコアは、3つのパラメータの合計であった(最大スコア9)。体重測定およびDAI評価を、8日目にも遂行し、処置の効果を評価した。
【0167】
試料の採取。8日目、ET02451−01、ET02452−01、およびビヒクル投薬の5時間後、CCACによって出版された「Guide to the Care and Use of Experimental Animals」に従って全身麻酔下で心臓穿刺により動物を安楽死させた。血液を、EDTAを含有するSarstedt製チューブ内に移動させた。腸間膜および末梢(鼠径、補助、および上腕)リンパ節を採取し、氷上で、冷却PBSを含有する対応するチューブ内に移動させた。組織調製まで、節を氷上に置いた。
【0168】
細胞集団標識付け。血液を心臓穿刺により中断させ、EDTA被覆チューブ上で採取した。腸間膜リンパ節(MLN:Mensenteric lymph node)および末梢リンパ節(PLN:peripheral lymph node)も採取した。組織からの単核細胞は密度勾配(Lympholyte)を使用して単離され、それらは蛍光抗体で染色された。細胞(5×104)を最初にBDマウスFcBlock(Fcy III/II受容体)と15分間、続いて特異的抗体と30分間インキュベートした。洗浄後、BD固定溶液を使用して細胞を固定した。次いで、FACSCaliburサイトメーターを使用して、Tリンパ球の異なる亜集団の割合を分析した。用いた抗体は、上記の単回投薬PD研修について列挙したものと同じであった。
【0169】
結果および考察
化合物を上記の方法に従って合成した。化合物の選択はNMRを使用して特性付けた(すべてのデータが示されているわけではない)。選択された化合物のNMRデータのサブセットを以下に示す。
【0170】
【表6】
【0171】
【表7】
【0172】
【表8】
【0173】
【表9】
【0174】
【表10】
【0175】
【表11】
【0176】
【表12】
【0177】
【表13】
【0178】
【表14】
【0179】
【表15】
【0180】
【表16】
【0181】
【表17】
【0182】
【表18】
【0183】
【表19】
【0184】
【表20】
【0185】
【表21】
【0186】
【表22】
【0187】
【表23】
【0188】
【表24】
【0189】
【表25】
【0190】
【表26】
【0191】
【表27】
【0192】
【表28】
【0193】
【表29】
【0194】
【表30】
【0195】
【表31】
【0196】
【表32】
【0197】
【表33】
【0198】
【表34】
【0199】
【表35】
【0200】
【表36】
【0201】
【表37】
【0202】
【表38】
【0203】
【表39】
【0204】
血漿タンパク質結合の決定
血漿タンパク質によるナセルリンの隔離は比較的低かった。ラットの血漿では、遊離画分(非結合%)は9.5%〜76.9%(平均42.6%)に及んだが、マウスの血漿では、遊離画分は15.7%〜79.9%(平均47.8%)に及んだ。小分子陽性対照であるプロプラノロールに対する血漿タンパク質結合は、マウスの血漿では約21%(遊離画分)、ラットの血漿では約15%(遊離画分)の正常範囲内であった。評価された化合物としては以下が挙げられる。
ET01792(化合物番号5)
ET00762(フェニルアラニン残基がトリプトファン残基で置換されている化合物番号5の類似体)
ET01813(化合物番号12)
ET01827(化合物番号15)
【0205】
【表40】
【0206】
【表41】
【0207】
水性溶解性アッセイ
以下の表に示されるように、インテグリンアルファ−4−ベータ−7−抑制ナセルリンの水性溶解性は比較的高く、715マイクロMの平均溶解性であった。15個の別個の化合物について三連測定した溶解性の範囲は、183マイクロM〜1000マイクロM超であった。評価された最大濃度は、推定された水性溶解性に基づいて、異なる試験物質ごとに異なったことに留意されたい。評価された化合物としては以下が挙げられる。
UM0131995−05(化合物番号4)
UM0132366−01(化合物番号87)
UM0132368−01(化合物番号88)
UM0132369−01(化合物番号89)
UM0132370−01(化合物番号52)
UM0132371−01(化合物番号90)
UM0132374−01(化合物番号65)
UM0132375−02(化合物番号42)
UM0132376−01(化合物番号92)
UM0132377−01(リシン残基がオルニチン残基で置換されている化合物番号92の類似体)
UM0134839−01(フェニルアラニン残基およびベータHomoLys残基がチロシン残基で置換されている化合物番号455の類似体)
UM0134690−01(化合物番号358)
UM0134830−01(チロシン残基およびアラニン残基が配列内の位置に関して交換されている化合物番号159の類似体)
UM0134677−01(化合物番号158)
UM0134700−01(化合物番号62)
【0208】
【表42】
【0209】
シトクロムP450抑制アッセイ
シトクロムP450の4つのアイソフォームに対する種々のナセルリンの抑制活性を、ヒト肝ミクロソームを使用して評価した。評価された4つのアイソフォームは、CYP2D5、CYP3A4、CYP2C9、およびCYP1A2であった。以下に示されるように、この実験で評価された7つのナセルリンについて、アッセイの結果の85%は、(検出の限界を超える)IC
50>15マイクロMを示した。しかしながら、いくつかの化合物については、10マイクロM未満の、およびある場合には、1マイクロM未満のIC
50が記録された。この軽度のCYP450抑制活性に寄与する官能基を理解するように、これらの化合物を構造解析に供した。評価された化合物としては以下が挙げられる。
ET01792(化合物番号5)
ET00762−02(フェニルアラニン残基がトリプトファン残基で置換されている化合物番号5の類似体)
ET01813(化合物番号12)
ET00328−01(チロシン残基、ロイシン残基、アスパラギン酸残基、およびトレオニン残基が、トレオニン残基、メチルロイシン残基、バリン残基、およびフェニルアラニン残基で置換されている化合物番号4の類似体)
ET01827(化合物番号15)
ET01842−01(化合物番号413)
【0210】
【表43】
【0211】
in vivoでのTリンパ球輸送分析
いくつかのインテグリンアルファ−4−ベータ−7−抑制ナセルリンがインテグリンアルファ−4−ベータ−7−発現Tリンパ球の輸送を減衰させる能力が、DSS処置マウスにおけるin vivoでの薬力学研究で実証された。
図6に示されるように、この研究は、飲料水中のデキストラン硫酸に5日間暴露されたマウスで行った。6日目に、試験物質の単回投薬を投与し、5〜6時間後に末梢血、腸間膜リンパ節、および他の組織を採取し、評価した。
【0212】
示されるように、ネズミ抗−アルファ−4−ベータ−7モノクローナル抗体(DATK32;25mg/kg)は、インテグリンa4b7+Tリンパ球の腸間膜リンパ節(「MLN:mesenteric lymph node」)へのホーミングを実質的に低減するが、末梢血中のCD11a+Tリンパ球の数には影響しなかった。ナセルリンについては、100mg/kgでは、低い経口生物学的利用度のナセルリンET2154(化合物番号105)ではなく、高い経口生物学的利用度のナセルリンET1792(化合物番号5)が、経口投薬後のMLNへのホーミングの著しい低減を誘発した。ET2154の投薬を200mg/kgに増加した場合、MLNへのホーミングの重大かつ強い減衰を誘発した。これらの結果は、腸管関連リンパ組織における高内皮細静脈からの溢血事象を促進したインテグリンアルファ−4−ベータ−7−MAdCAMを介したTリンパ球の輸送を減衰させる経口生物学的利用度(および付随する全身曝露)の重要性を実証する。いかなる状況であっても、試験ナセルリンは末梢血中のCD11a+T細胞の含有量に著しい変化を生じなかった(同様に、いずれのナセルリンについても末梢血中のCD34およびCD45Tリンパ球含有量の変化は記録されず、データは示されていない)。
【0213】
齧歯類におけるin vivoでの薬物動態評価
ナイーブマウスの経口投薬後、および場合によっては静脈内投薬後のいくつかのインテグリンアルファ−4−ベータ−7−抑制ナセルリンの薬物動態プロファイルを我々は評価した。
【0214】
以下の
図7に示されるように、ナイーブマウスに対する48mg/kgでのET1792(化合物番号5)の1回および2回の経口投薬は、著しい吸収および全身曝露をもたらした。最初の投薬後の曝露(AUC−O−tlast)は1,475h
*ng/mlであったが、2回目の投薬後の曝露は2,188h
*ng/mlであった。最初の投薬後に記録された最大血漿中濃度は、ほぼ1,600ng/mlであった。
【0215】
図8を参照すると、589h
*ng/mlの暴露(AUCO−tlast)で、(40mg/kgで)経口投与されたET1792の二次研究において、類似のプロファイルが記録された。二相性の吸収および遅延Tmaxは、腸細胞の初回の経細胞灌流、その後のより持続する経細胞灌流後を示す可能性が高い。
【0216】
ET1813(化合物番号12)のその後の研究では、経口強制摂食(40mg/kg)および静脈内注射(5mg/kg)を介して単回投薬を投与した。この化合物の吸収はET1792の吸収よりも小さく、ほぼ2時間の著しい終末相半減期にもかかわらず、約1%の計算された経口生物学的利用度を有した。
【0217】
【表44】
【0218】
【表45】
【0219】
ナイーブマウスにおけるET2451(化合物番号340)について、別の組の薬物動態研究を行った。この研究では、単回経口投薬(40mg/kg)および単回静脈内投薬(5mg/kg)の両方に続いて、血漿、結腸、および肝臓における化合物暴露を測定した。
図9および以下の表に説明されるように、ET2451は、血漿中で約11%の経口生物学的利用度を有し、結腸では100%に近いことが見出された。また、注目すべきは、消失半減期の差である。血漿中の半減期は、経口投薬後約30分であることが見出されたが、結腸内の半減期は21時間超であった。我々はまた、肝臓における生物学的利用度を評価し(以下の図)、これは、血漿中で測定されたもの(約8%)と同様であったが、半減期は経口投薬後約8時間と著しく長かった。ET2451および他のナセルリンの主要な消失経路が肝胆道クリアランスによるものであることは、本研究および他のものから明らかである。
【0220】
【表46】
【0221】
(治療上の)DSSモデルにおける8日間の有効性研究
潰瘍性大腸炎のDSS実験モデル(ET2451(化合物番号340)およびET2452(化合物番号341))における2つの別個のナセルリンの有効性を我々は評価した。上記に示されるように、ET2451は経口投薬後の腸管および全身暴露からの著しい吸収を実証するが、ET2452は経口生物学的利用度の低い実体である。両方の試験化合物を1日2回、マウスの飲料水中のDSS(2〜3%)に最初に5日間暴露した後、3日間にわたってマウスに投与した。ナセルリンの有効性および薬力学的効果を、マウス抗−インテグリンアルファ−4−ベータ−7mAb(DATK32)と比較した。ET2452を経口投与、および別の群には腹腔内注射を介した投与の両方で投与した。経口投与した場合には有効ではないかもしれないが、腹腔内投薬では実質的な有効性をもたらしたことを実証することがこの実験設計の目的であった。
【0222】
疾患活動性指標(「DAI:Disease activity index」)スコアは、5日目および8日目に、糞便中の血液、糞便の堅さ、および全体的な健康評価(姿勢、毛、および脱水)の3つの特異的症状の重篤度に基づいて個別に評価した。
図10に示されるように、DAIスコアはDSS+ビヒクル対照群で5日目から8日目まで著しく増加した。ET02451−01の経口投与およびDATK32の腹腔内投与は、それぞれ15%および19%の低減をもたらしたが、ET02451−01誘発効果のみが統計学的に有意であることが証明された。ET02452−01の経口投与は、DAIについていずれの有益な効果も有さなかった。対照的に、腹腔内のET02452−01処置は、DSS+ビヒクル対照群(p<0.05)と比較して、8日目のDAIスコアで46%と著しい低減をもたらした。実際、ET02452−01の腹腔内処置は、5日目から8日目までの対照ビヒクル処置群で観察されたUC症状の重篤度の増加を防止した。
【0223】
潰瘍性大腸炎は、マウスの結腸の長さの低減を伴う腸管の炎症の変化と関連付けられる(附属書IVの生データ)。DSS+ビヒクル対照群は、病変/結腸長の40%に相当する4.3±0.3cmの平均結腸長および1.7±0.3cmの病変長を示した(
図11)。処置は結腸長にいずれの影響も与えなかった(
図11)。しかしながら、ET02451−01は、この群の病変長を著しく低減し(p<0.05)、病変/結腸長の12%の値(p<0.05)に達することにより病変/結腸長比の著しい改善をもたらした。ET02452−01の経口投与および腹腔内投与は、対照ビヒクル処置群と比較して、病変長のそれぞれ53%および20%の低減をもたらしたが、これらの低減は統計学的に有意ではなかった(
図11B)。5日目に腹腔内経路によって投与されたDATK32に加え、対照ビヒクル処置群と比較して、統計学的に有意ではない45%の低減をもたらした。
【0224】
処置を別個の実験で比較したか否かにかかわらず、各試験物質処置群と対照ビヒクル処置群との統計的比較のためにスチューデントt検定を使用したはずである。その場合、別個のスチューデントt検定によって、経口ET02452−01および腹腔内DATK32による統計学的に有意な効果が、病変長および病変/結腸長で得られたはずである。
【0225】
結腸炎症の最終スコアは、各マウスの巨視的スコアに病変/結腸長比を掛けることによって計算した。
図12を参照すると、このパラメータの測定は、対照ビヒクル処置群と比較して、ET02451−01(77%)およびET02452−01(76%)の経口投与による病変炎症の著しい低減を示す。ET02452−01およびDATK32の腹腔内投与は、それぞれ39%および53%の低減をもたらしたが、この効果は統計学的に有意ではなかった。
【0226】
細胞集団
ビヒクルマウスにおけるCD3+CD4+CD11a+T細胞集団の割合と、試験した3つの組織における化合物処置されたものとの間には統計学的な差異はない(
図13参照)。すべての組織において、CD34+細胞の集団は、ビヒクルマウスおよびナセルリン処置マウスにおいて同じである。しかしながら、抗α4β7抗体(DATK32)を受容するマウスでは、CD34+細胞の著しい増加(p<0.01)が観察されている。CD3+CD4+α4β7+細胞集団については、末梢リンパ節でも血液中の差は観測されなかった。しかしながら、ET02452(化合物番号341)の腹腔内投与またはET02451(化合物番号340)の経口投与を受けるマウスの腸間膜リンパ節において、この集団の著しい減少が観察された。DATK32の腹腔内投与はまた、CD3+CD4+α4β7+Tリンパ球の割合を著しく減少させた。
【0227】
表1A、1B、および1Cに概略されたものより低い活性を示した600以上の大環状分子が製造されたことに留意したい。より少ないまたは少ない活性を有する大環状分子の選択を表2A、2B、および2Cに概略する。
【0228】
本発明の好ましい実施形態を本明細書において記載してきたが、本発明の趣旨または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、それらに対する変形がなされ得ることを当業者は理解するであろう。以下の参照リスト内のものを含み、本明細書において開示されるすべての文献が参照により組み込まれる。
【0229】
【表47】
【0230】
【表48】
【0231】
【表49】
【0232】
【表50】
【0233】
【表51】
【0234】
【表52】
【0235】
【表53】
【0236】
【表54】
【0237】
【表55】
【0238】
【表56】
【0239】
【表57】
【0240】
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