特許第6961593号(P6961593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961593
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】電気活性部品の誘電絶縁化方法
(51)【国際特許分類】
   H02B 13/055 20060101AFI20211025BHJP
   H01B 3/16 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H02B13/055 A
   H01B3/16
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-528242(P2018-528242)
(86)(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公表番号】特表2019-504593(P2019-504593A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】EP2016079621
(87)【国際公開番号】WO2017093501
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2019年11月1日
(31)【優先権主張番号】15197935.8
(32)【優先日】2015年12月4日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ファーブル, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ハルディングハウス, フェルディナント
(72)【発明者】
【氏名】パーニス, ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ハッセンスタブ−リーデル, ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ベッカーズ, ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】スタインハウアー, ジモン
(72)【発明者】
【氏名】ベント−シュミット, トーマス
【審査官】 北岡 信恭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−512639(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/135680(WO,A1)
【文献】 Robson,P. et al.,The Action of Elementary Fluorine upon Organic Compounds.XXIV.The Jet Fluorination of Hydrogen Cyanide, Cyanogen, Methylamine and Ethylenediamine. Pyrolysis and Fluorinolysis of Selected Products,Journal of the American Chemical Society,米国,1961年,83,pp.5010−15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 13/00−13/08
H01B 3/16− 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気活性部品の誘電絶縁化方法であって、前記電気活性部品が、一般式(I):
F−N(C(2n+1)−m)(Cn’m’(2n’+1)−m’) (I)
(式中、nは1、2、3、4、又は5であり、mは0〜2nの整数であり、n’は2、3、4、又は5であり、m’は0〜2n’の整数である)の化合物からなる、又はこれから本質的になる、又はこれを含有する絶縁媒体を含む気密ハウジングの中に配置される、方法。
【請求項2】
nが1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
n’が2である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
mが0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
m’が0である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物がペンタフルオロエチル−トリフルオロメチルフルオロアミンNF(CF)(C)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
般式(I):
F−N(C(2n+1)−m)(Cn’m’(2n’+1)−m’) (I)
(式中、nは1、2、3、4、又は5であり、mは0〜2nの整数であり、n’は2、3、4、又は5であり、m’は0〜2n’の整数である)の、少なくとも1種の化合物と、
不活性ガス、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているケトン、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているエーテル、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているエステル、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているシアノ化合物、及び炭化水素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の別の化合物と、
からなる、又はこれらから本質的になる、又はこれらを含有する、電気活性部品の誘電絶縁化のための組成物。
【請求項8】
NF(CF)(C)と;不活性ガス、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているケトン、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているエーテル、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているエステル、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているシアノ化合物、及び炭化水素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と;からなる、又はこれらから本質的になる、又はこれらを含有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
NF(CF)(C)と;空気、合成空気、空気成分、N、O、CO、NO、He、Ne、Ar、Xe、又はSFからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と;からなる、又はこれらから本質的になる、又はこれらを含有する、好ましくは、NF(CF)(C)とNとからなる、又はこれらから本質的になる、又はこれらを含有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
電気エネルギーの発生、分配、及び/又は使用のための装置であって、前記装置が気密ハウジングの中に配置されている電気活性部品を含み、前記気密ハウジングが、一般式(I):
F−N(C(2n+1)−m)(Cn’m’(2n’+1)−m’) (I)
(式中、nは1、2、3、4、又は5であり、mは0〜2nの整数であり、n’は2、3、4、又は5であり、m’は0〜2n’の整数である)の、少なくとも1種の化合物からなる、又はこれから本質的になる、又はこれを含有する、絶縁媒体を含む;又は、
請求項7〜9のいずれか1項に記載の組成物からなる、又はこれから本質的になる、又はこれを含有する、絶縁媒体を含む;
装置。
【請求項11】
前記絶縁媒体が、NF(CF)(C)からなる、又はこれから本質的になる、又はこれを含有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置が中圧又は高圧の開閉装置である、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
電気活性部品を絶縁するための誘電媒体としての、一般式(I):
F−N(C(2n+1)−m)(Cn’m’(2n’+1)−m’) (I)
(式中、nは1、2、3、4、又は5であり、mは0〜2nの整数であり、n’は2、3、4、又は5であり、m’は0〜2n’の整数である)
の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年12月4日に出願された欧州特許出願第15197935.8号に基づく優先権を主張し、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、特定のフルオロアミンを使用する電気活性部品の誘電絶縁化方法、並びにそのような化合物を含む組成物及び装置に関する。
【0003】
液体又は気体状態の誘電絶縁媒体は、例えば開閉装置又は変圧器などの多種多様な電気装置における電気活性部品の絶縁のために利用されている。
【0004】
誘電絶縁媒体としてはSFとNとの混合物が広く利用されている。これまでに、代替の誘電絶縁媒体を提供するために努力されてきた。
【0005】
国際公開第2014/096414号明細書は、例えばフッ素化エーテル及び過酸化物などの特定のフッ素化化合物を使用する、電気活性部品の誘電絶縁化方法に関する。
【0006】
特開平08−291299号明細書には、化学蒸着において膜を洗浄するためのエッチングガスとしてNF(CF)(C)を使用することが記載されているようである。その結果、NF(CF)(C)は、分解されて例えばフッ素ラジカルなどのラジカル源として使用される。
【0007】
本発明の目的は、電気活性部品の電気絶縁のための改善された方法及び/又は組成物を提供することである。
【0008】
有利なことには、本発明の方法及び組成物は、改善された絶縁、アーク消滅及び/又はスイッチング性能を示す。同様に有利なことには、本発明の方法及び組成物は、例えば改善された地球温暖化係数(GWP)及び/又は改善されたオゾン層破壊によって測定されるように、絶縁媒体が大気中へ放出された場合に有利な環境影響を示す。同様に有利なことには、本発明の方法及び組成物は、例えばより高いLC50及び/又はより高い職業暴露限度(Occupational Exposure Limit)によって測定される、改善された毒性学的挙動を示す。更に、この方法及び組成物は、有利なことには改善された露点、蒸気圧、沸点、絶縁耐力、及び/又は絶縁媒体の熱安定性を示す。加えて、本発明による組成物は、有利なことには、例えば電気活性部品のために使用される構成材料に対して改善された化学的不活性及び/又は改善された伝熱特性を示す。
【0009】
これらの及び他の目的は、特許請求の範囲に概要が述べられる本発明によって解決される。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様は、電気活性部品の誘電絶縁化方法であって、電気活性部品が、一般式(I):F−N(C(2n+1)−m)(Cn’m’(2n’+1)−m’)(式中、nは1、2、3、4、又は5であり、mは0〜2nの整数であり、n’は2、3、4、又は5であり、m’は0〜2n’の整数である)の化合物からなる、又はこれから本質的になる、又はこれを含有する絶縁媒体を含む気密ハウジングの中に配置される、方法に関する。
【0011】
そのため、上の一般式の化合物は、2つの任意選択的なフッ素置換アルキル基で置換されているフルオロアミン官能基(F−N)を含む。
【0012】
本明細書で用いられる用語「から本質的になる」は、明記されるような成分並びに微量での他の成分を含む組成物であって、他の成分の存在が明記される主題の本質的な特性を変えない組成物を意味することを意図する。
【0013】
好ましくは、本発明の化合物は全フッ素化されている。すなわちmとm’が0である。そのため、全ての水素原子がフッ素原子により置換されている。
【0014】
同様に好ましくは、nは1である。すなわち、1つのアルキル官能基が−CH(2n)−mであり、より好ましくは1つのアルキル官能基が−CFである。
【0015】
同様に好ましくは、n’は2である。すなわち、1つのアルキル官能基が−Cm’(2n’+1)−m’であり、より好ましくは1つのアルキル官能基が−Cである。
【0016】
好ましい実施形態においては、nとn’は同じである。代替の好ましい実施形態においては、nとn’は異なり、より好ましくはn’はn+1である。
【0017】
好ましい実施形態においては、mとm’は同じである。代替の好ましい実施形態においては、mとm’は異なる。
【0018】
最も好ましくは、一般式(I)の化合物は、NF(CF)(C)、ペンタフルオロエチル−トリフルオロメチルフルオロアミン又はN−フルオロペルフルオロ(エチル,メチル)アミンである。
【0019】
本発明の枠組みの中では、単数形は複数形を含むことが意図されており、逆もまた同様である。
【0020】
一般式(I)の化合物は、Bishop,B.C.et al.,Journal of the American Chemical Society,1963,85,pp.1606−08;Robson,P. et al,Journal of the American Chemical Society,1961,83,pp.5010−15、Moldavskii,D.D.,Journal of Organic Chemistry of the USSR,Vol.7,pp.44−46、及びSartori,P.,Journal of Fluorine Chemistry,1997,83,pp.1−8に記載の通りに合成することができる。
【0021】
好ましくは、本発明の方法で使用される絶縁媒体は、式(I)の化合物と、不活性ガス、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているケトン、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているエーテル、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているエステル、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているシアノ化合物、及び炭化水素化合物からなるリストから選択される少なくとも1種の別の化合物と、を含有する。より好ましくは、少なくとも1種の化合物は、空気、合成空気、空気成分、N、O、CO、NO、He、Ne、Ar、Xe、及びSFからなる群から選択される不活性ガスであり;好ましくは少なくとも1種の化合物はNである。
【0022】
用語「不活性ガス」は、本発明による化合物と反応しない気体を意味することを意図する。好ましくは、不活性ガスは、空気、合成空気、空気成分、N、O、CO、NO、He、Ne、Ar、Xe、又はSFからなるリストから選ばれ;より好ましくは、不活性ガスはNである。
【0023】
好ましくは、少なくとも1つの化合物は、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているケトンである。用語「ケトン」は、2個の炭素原子がカルボニル基の炭素に結合した状態で少なくとも1つのカルボニル基を組み込んでいる化合物を意味することを意図する。それは、飽和化合物並びに二重結合及び/又は三重結合を含む不飽和化合物を包含するものとする。ケトンの少なくとも部分フッ素化されているアルキル鎖は、直鎖又は分岐であってもよい。用語「ケトン」はまた、環状炭素骨格を持った化合物も包含するものとする。用語「ケトン」は、追加の鎖中ヘテロ原子、例えば、炭素骨格の一部である及び/又は炭素骨格に結合している少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよい。より好ましくは、少なくとも1つの化合物は、全フッ素化ケトンである。好適な全フッ素化ケトンの例としては、1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−ブタン−2−オン;1,1,1,3,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン−2−オン;1,1,1,2,2,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン−3−オン、1,1,1,4,4,5,5,5,−オクタフルオロ−3−ビス−(トリフルオロメチル)−ペンタン−2−オン;最も好ましくはヘプタフルオロイソプロピル−トリフルオロメチル−ケトンが挙げられる。
【0024】
同様に好ましくは、少なくとも1つの化合物は、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているエーテルである。用語「エーテル」は、少なくとも1つの「−C−O−C−」部分を組み込んでいる化合物を意味することを意図する。とりわけ好適な例としては、ペンタフルオロ−エチル−メチルエーテル及び2,2,2−トリフルオロエチル−トリフルオロメチルエーテルが挙げられる。
【0025】
同様に好ましくは、少なくとも1つの化合物は、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているエステル、すなわち、少なくとも1つの「−C(O)O−」部分を組み込んでいる化合物である。好適な化合物は、当技術分野で公知であり、とりわけ好適な例としては、トリフルオロ酢酸のメチル、エチル、及びトリフルオロメチルエステルが挙げられる。
【0026】
同様に好ましくは、少なくとも1つの化合物は、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているシアノ化合物、すなわち、構造「−C≡N」の少なくとも1つの部分を組み込んでいる化合物である。好ましくは、シアノ化合物は全フッ素化されており、より好ましくは、シアノ化合物は、全フッ素化メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、イソブチル及びtertブチルニトリルからなるリストから選ばれる。
【0027】
同様に好ましくは、少なくとも1つの化合物は、全フッ素化若しくは部分フッ素化されている炭化水素化合物である。「炭化水素化合物」は、フッ素置換に加えて、他のハロゲン原子、例えばCl、Br、及び/又はIでまた置換されていてもよい、飽和又は不飽和炭化水素を意味することを意図する。好適な例としては、CHF、C、CFCFCFCFI、及びCFClが挙げられる。
【0028】
用語「電気活性部品」は、非常に幅広く理解されなければならない。好ましくは、これは、それが気密ハウジングを含むという条件で、電気エネルギーの発生、分配、又は使用のために使用されるいかなる部品も網羅し、ここで、誘電絶縁媒体は、電圧及び電流に耐える部品に誘電絶縁を付与する。好ましくは、電気活性部品は、中電圧又は高電圧部品である。用語「中電圧」は、1kV〜72kVの範囲の電圧に関し;用語「高電圧」は、72kV超の電圧を意味する。これらが本発明の枠組みにおいて好ましい電気活性部品であるが、部品はまた、1kVよりも下の電圧が関係している低電圧部品であってもよい。
【0029】
本発明の電気活性部品は「独立型」部品であってもよく、又はそれらは、部品のアセンブリの、例えば装置の部品であってもよいことに留意しなければならない。これは、以降で詳しく説明する。
【0030】
電気活性部品は、開閉器、例えば、高速作動接地開閉器、断路器、負荷開閉器又はパッファ式回路遮断器、特に中電圧回路遮断器(GIS−MV)、発電機回路遮断器(GIS−HV)、高電圧回路遮断器、バスバー、ブッシング、ガス絶縁ケーブル、ガス絶縁伝送線、ケーブル・ジョイント、変流器、変圧器又はサージ避雷器であってもよい。
【0031】
電気活性部品はまた、電気回転機械、発電機、モーター、駆動部、半導体デバイス、コンピューター、電力工学デバイス又は高周波部品、例えば、アンテナ又は点火コイルであってもよい。
【0032】
本発明の方法は、中電圧開閉装置及び高電圧開閉装置にとりわけ好適である。
【0033】
本発明の方法で使用される絶縁媒体は、好ましくは本発明の方法で使用される際には気体状態である。しかし、例えば温度及び圧力などの、方法が行われる条件次第で、絶縁媒体は少なくとも部分的に液体状態であってもよい。
【0034】
電気活性部品において、絶縁媒体は、好ましくは0.1バール(絶対圧)以上の圧力にある。絶縁媒体は、好ましくは30バール(絶対圧)以下の圧力にある。好ましい圧力範囲は、1〜20バール(絶対圧)である。
【0035】
気相の一般構造(I)の化合物の分圧は、特に絶縁媒体中でのその濃度に依存する。誘電絶縁媒体が一般構造(I)の化合物からなる場合、その分圧は全圧と等しく、上で示した範囲に対応する。媒体が不活性ガスを含む場合、一般構造(I)の化合物の分圧は、それに応じて低い。10バール(絶対圧)以下である一般構造(I)の化合物の分圧が好ましい。
【0036】
化合物又は混合物は、それぞれ、気候条件又は電気装置の雰囲気での温度下で、電気部品での圧力下で、本質的に誘電絶縁媒体中で成分の凝縮が起こらないようなものであることも好ましい。用語「本質的に凝縮がない」は、最大で5重量%、好ましくは最大で2重量%の、誘電絶縁媒体しか凝縮しないことを意味する。例えば、式(I)の化合物の量 不活性ガスの種類及び量は、式(I)の化合物の分圧が、式(I)の化合物の凝縮が−20℃で観察される圧力よりも低いように選択される。
【0037】
第2の態様においては、本発明は、少なくとも1種の一般式(I):F−N(C(2n+1)−m)(Cn’m’(2n’+1)−m’)(式中、nは1、2、3、4、又は5であり、mは0〜2nの整数であり、n’は2、3、4、又は5であり、m’は0〜2n’の整数である)の化合物と、不活性ガス、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているケトン、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているエーテル、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているエステル、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているシアノ化合物、及び炭化水素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の別の化合物と、からなる、又はこれらから本質的になる、又はこれらを含有する、組成物に関する。
【0038】
好ましくは、組成物は、NF(CF)(C)と、不活性ガス、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているケトン、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているエーテル、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているエステル、全フッ素化若しくは部分フッ素化されているシアノ化合物、及び炭化水素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、からなる、又はこれから本質的になる、又はこれらを含有する。
【0039】
より好ましくは、組成物は、NF(CF)(C)と、空気、合成空気、空気成分、N、O、CO、NO、He、Ne、Ar、Xe、又はSFからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と;からなる、又はこれらから本質的になる、又はこれらを含有する、又は、NF(CF)(C)とNとからなる、又はこれらから本質的になる、又はこれらを含有する。
【0040】
第3の目的では、本発明は、電気エネルギーの発生、分配、及び/又は使用のための装置であって、装置が気密ハウジングの中に配置されている電気活性部品を含み、前記気密ハウジングが、一般式(I):F−N(C(2n+1)−m)(Cn’m’(2n’+1)−m’)(式中、nは1、2、3、4、又は5であり、mは0〜2nの整数であり、n’は2、3、4、又は5であり、m’は0〜2n’の整数である)の化合物を含有するか、これから本質的になるか、これからなる絶縁媒体を含む;又は、上で定義した本発明の組成物からなる、又はこれから本質的になる、又はこれを含有する、絶縁媒体を含む;装置に関する。好ましくは、絶縁媒体は、NF(CF)(C)からなる、又はこれから本質的になる、又はこれを含む。同様に好ましくは、装置は、中電圧又は高電圧の開閉装置である。
【0041】
本発明の別の目的は、本明細書に記載の本発明の化合物又は混合物の、誘電絶縁媒体としての、又は誘電絶縁媒体の成分としての使用、並びに、例えばチャンバー洗浄剤などのドライエッチング剤としての、特にはNFの代替としてのプラズマ強化チャンバー洗浄のための、使用に関する。
【0042】
本発明の別の目的は、独立気泡ポリウレタン、フェノール系及び熱可塑性樹脂フォームの製造における発泡剤としてのフルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンの代替品として、エアゾールにおける噴射剤として、伝熱媒体として、消火剤として、ヒートポンプ用などの電力サイクル作動流体として、重合反応用の不活性媒体として、金属表面から微粒子を除去するための流体として、例えば、滑剤の微細フィルムを金属部上に置くために使用され得るキャリア流体として、金属などの研磨面からバフ研磨剤を除去するためのバフ研磨剤として、宝石類又は金属部品からなど、水を除去するための置換乾燥剤として、塩素型現像剤を含む従来型回路製造技術におけるレジスト現像剤として、又は、例えば、1,1,1−トリクロロエタン若しくはトリクロロエチレンなどのクロロハイドロカーボンと一緒に使用される場合のフォトレジスト用の剥離液としての一般式(I)の化合物の使用である。
【0043】
本発明の別の目的は、一般式(I):F−N(C(2n+1)−m)(Cn’m’(2n’+1)−m’)(式中、nは1、2、3、4、又は5であり、mは0〜2nの整数であり、n’は2、3、4、又は5であり、m’は0〜2n’の整数である)の化合物の、電気活性部品を絶縁するための誘電媒体としての使用に関する。好ましい電気活性部品は、開閉器、例えば、高速作動接地開閉器、断路器、負荷開閉器、又はパッファ式回路遮断器、特に中電圧回路遮断器(GIS−MV)、発電機回路遮断器(GIS−HV)、高電圧回路遮断器、バスバー、ブッシング、ガス絶縁ケーブル、ガス絶縁伝送線、ケーブル・ジョイント、変流器、変圧器又はサージ避雷器であってもよい。
【0044】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、及び刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0045】
以下の実施例は、本発明を限定する意図なしに本発明を更に説明する。
【実施例】
【0046】
実施例1a:NF(CF)(C)の製造
NF(CF)(C)は、Sartori,P.,Journal of Fluorine Chemistry,1997,83,pp.1−8に従って合成される。
【0047】
実施例1b:組成物の製造
国際特許出願公開第98/23363号明細書に記載の通り、1:4の体積比のNF(CF)(C)とNとからなる均質な混合物は、スタティックミキサーとコンプレッサーとを含む装置の中で製造する。
【0048】
実施例2:実施例1の誘電絶縁媒体を含有するアースケーブルの提供
ケーブルの中の全圧が10バール(絶対圧)に達するまで、実施例1bの組成物を高電圧用アースケーブルに直接供給する。
【0049】
実施例3:1:4の体積比でNF(CF)(C)とNとを含有する開閉装置
気密金属ケースで取り囲まれた開閉器を含む開閉装置が使用される。実施例b1の組成物を、18バール(絶対圧)の圧力に達するまでバルブを通して気密金属ケースに注入する。