(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961596
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】繊維強化ウェブを接合する方法および装置
(51)【国際特許分類】
B29C 65/08 20060101AFI20211025BHJP
B23K 20/10 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
B29C65/08
B23K20/10
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-531517(P2018-531517)
(86)(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公表番号】特表2019-500243(P2019-500243A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】EP2016080921
(87)【国際公開番号】WO2017102806
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年12月13日
(31)【優先権主張番号】15200659.9
(32)【優先日】2015年12月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マティアス、クナウプ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、グリム
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング、ベルガー
【審査官】
神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/084963(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0158012(US,A1)
【文献】
特開平04−119808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00−65/82
B29C 69/00−69/02
B29C 70/00−70/88
B23K 20/00−20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に整列した複数のエンドレス繊維で強化された2つのシート物品を超音波溶接により接合する方法であって、前記繊維は、ポリカーボネートのマトリックス中に埋め込まれ、前記シート物品は、実質的に長方形で実質的に平らな隣接端部を有し、前記方法は、
(1)ソノトロードとアンビルとの間の溶接装置内において、前記隣接端部の領域中で前記シート物品を互いに端部と端部を隣接して配置し、
(2)超音波を用いて前記シート物品を溶接し、前記ソノトロードと前記アンビルは、前記シート物品間の溶融領域において、溶接される前記シート物品に、前記シート物品の前記隣接端部に対して垂直に圧力を与え、
(3)互いに溶接された前記シート物品を前記溶接装置から取り出す、
とのステップを特徴とし、
互いに溶接された前記シート物品は、後続の加圧ロールによりその形状を局部的に固定され、
互いに溶接された前記シート物品の領域は、前記シート物品の残りの領域より低い繊維含有率を有し、互いに溶接された前記シート物品の前記領域は、前記シート物品の前記残りの領域の2分の1以下の繊維含有率を有し、互いに溶接された前記シート物品の前記領域は、前記隣接端部の領域内にあり、前記シート物品の内側に向かって、前記隣接端部に対して垂直に測定して0.1mm〜3mmの深さである方法。
【請求項2】
使用される前記繊維は、天然繊維または人造繊維または両方の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記人造繊維は、ガラス繊維または炭素繊維であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記シート物品中の前記繊維の体積含有率はそれぞれ、20〜80体積%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
互いに溶接された前記シート物品の領域は、前記シート物品の残りの領域より低い繊維含有率を有し、互いに溶接された前記シート物品の前記領域は、前記シート物品の前記残りの領域の5分の1以下の繊維含有率を有し、互いに溶接された前記シート物品の前記領域は、前記隣接端部の領域内にあり、前記シート物品の内側に向かって、前記隣接端部に対して垂直に測定して0.2mm〜2mmの深さであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
互いに溶接された前記シート物品の領域は、前記シート物品の残りの領域より低い繊維含有率を有し、互いに溶接された前記シート物品の前記領域は、前記シート物品の前記残りの領域の10分の1以下の繊維含有率を有し、互いに溶接された前記シート物品の前記領域は、前記隣接端部の領域内にあり、前記シート物品の内側に向かって、前記隣接端部に対して垂直に測定して0.5mm〜1mmの深さであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
一方向に整列した複数のエンドレス繊維で強化された2つのシート物品を含むシート物品であって、
前記繊維は、ポリカーボネートのマトリックス中に埋め込まれ、前記シート物品は、実質的に長方形で実質的に平らな隣接端部を有し、
前記隣接端部の領域中で前記シート物品が互いに端部と端部を隣接して配置された上で、互いに溶接されており、
互いに溶接された前記シート物品の領域は、前記シート物品の残りの領域より低い繊維含有率を有し、互いに溶接された前記シート物品の前記領域は、前記シート物品の前記残りの領域の2分の1以下の繊維含有率を有し、
互いに溶接された前記シート物品の前記領域は、前記隣接端部の領域内にあり、前記シート物品の内側に向かって、前記隣接端部に対して垂直に測定して0.1mm〜3mmの深さであり、かつ
溶接接合部における前記シート物品の厚さは、前記溶接接合部の外側の前記シート物品の厚さから20%以下外れていることを特徴とする、シート物品。
【請求項8】
溶接接合部における前記シート物品の厚さは、前記溶接接合部の外側の前記シート物品の厚さから15%以下外れていることを特徴とする、請求項7に記載のシート物品。
【請求項9】
溶接接合部における前記シート物品の厚さは、前記溶接接合部の外側の前記シート物品の厚さから10%以下外れていることを特徴とする、請求項8に記載のシート物品。
【請求項10】
溶接接合部における前記シート物品の厚さは、前記溶接接合部の外側の前記シート物品の厚さから5%以下外れていることを特徴とする、請求項9に記載のシート物品。
【請求項11】
前記装置は、
(A)供給機器、
(B)ソノトロード、
(C)アンビル、
との構成要素を備え、
前記ソノトロードは、ローラーシームソノトロードであり、
前記アンビルは、アンビルホイールまたはアンビルロールであり、
前記装置は、後続の加圧ロールを備えることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法を実施するための装置。
【請求項12】
前記装置は、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれより多いソノトロードを備えることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ソノトロードは、その圧延方向に次々に配置されることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
一方向に整列した複数のエンドレス繊維で強化されたシート物品であって、前記シート物品は、ポリカーボネートのマトリックスを含み、溶融領域として前記シート物品の残りの領域より低い繊維含有率を有する少なくとも1つの領域を含み、前記溶融領域の繊維含有率は、前記シート物品の前記残りの領域の2分の1以下の繊維含有率であり、前記溶融領域は、隣接端部の領域内にあり、前記シート物品の内側に向かって、前記隣接端部に対して垂直に測定して0.1mm〜3mmの深さである、シート物品。
【請求項15】
前記溶融領域の繊維含有率は、前記シート物品の前記残りの領域の5分の1以下の繊維含有率であり、前記溶融領域は、隣接端部の領域内にあり、前記シート物品の内側に向かって、前記隣接端部に対して垂直に測定して0.2mm〜2mmの深さである、請求項14に記載のシート物品。
【請求項16】
前記溶融領域の繊維含有率は、前記シート物品の前記残りの領域の10分の1以下の繊維含有率であり、前記溶融領域は、隣接端部の領域内にあり、前記シート物品の内側に向かって、前記隣接端部に対して垂直に測定して0.5mm〜1mmの深さである、請求項15に記載のシート物品。
【請求項17】
超音波溶接を用いた繊維強化仕上げシートの製造用のシート片における、請求項14に記載のシート物品の使用。
【請求項18】
請求項7に記載の2つ以上のシート物品から組み立てた多層複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波溶接を用いて繊維強化ソート物品(fibre-reinforced sheeting article)を接合する方法および装置に関する。本発明は、超音波溶接を用いた他の同種シート物品の接合に適切な繊維強化シート物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化材の使用は、その極めて優れた特定の特性の理由でこの数十年で着実に増加してきた。繊維強化材は、加速にさらされる構造物中、詳細には、重量減少を可能とし、従って、材料の強度または剛性の損失を負うことなくエネルギー消費を最小限に抑えるために使用される。
【0003】
略して、繊維複合材または複合材としても公知の繊維強化材は、繊維が実質的に完全に埋め込まれ完全に包まれたマトリックスを含んでなる少なくとも二相の材料である。マトリックスは形状付与する機能を有し、外部環境から繊維を保護する目的であり、繊維間に力を移動、および外部負荷を導入するために必要である。繊維は、工業においては、ガラス、炭素、ポリマー、玄武岩または天然繊維が使用されることが多く、材料の機械的性能に決定的に貢献する。用途に応じて、使用されるマトリックスは概して熱硬化性または熱可塑性ポリマーであり、エラストマーであることもある。
【0004】
熱硬化性ポリマーは非常に多くの産業において既に長い歴史を持つ。しかしながら、決定的デメリットは非常に長い降下時間であり、構成要素を得る処理の間、それに応じて非常に長いサイクル時間をもたらす。これは、熱硬化性複合材を特に高体積工業利用にとって魅力をなくさせる。
【0005】
対照的に、熱可塑性複合材、但し、完全に統合された半製品、例えば、エンドレス繊維強化シートまたはプロファイルの形態であるが、これらはさらに処理に付す場合に単に加熱、成形、冷却されることが多く、今日では、充分1分未満のサイクル時間で行い得る。処理は、さらなる処理ステップ、例えば、熱可塑性樹脂を用いたインサート成形と組み合わせてもよく、これは非常に高度な機能の自動化および統合を行うことを可能とする。
【0006】
繊維は概していわゆるサイズ剤で被覆されている。マトリックスとして熱可塑性樹脂が使用される場合、サイジングに適切なサイズ剤システムは、熱可塑性樹脂、シラン、エポキシ樹脂またはポリウレタンを含んでなる。しかしながら、繊維、または繊維の一部がサイズ剤を含まないことも可能である。
【0007】
しばしば使用される強化材料は、織物、編物、多層レイドまたは不織布(例えば、打延べ綿シート、ランダムレイド(random-laid)繊維マット、他)などの半製品生地である。繊維の方向−従って、続く構成要素の力の経路−は半製品生地において既に決定されていることは、これらの形態の繊維強化の特徴である。これは、多方向に強化された複合材の直接的製造を可能とする。
【0008】
半製品生地系のこれらの既に確立されたシステムに加えて、シート形態の熱可塑性樹脂系繊維強化半製品は、次第に重要になりつつある。半製品生地製品の処理ステップを避けてもよいので、これらは経済的利点を提供する。これらの熱可塑性樹脂系繊維強化半製品シートは、多層構造の製造、特に他方向構造の製造に好適である。
【0009】
一方向に整列したエンドレス繊維で強化された熱可塑性樹脂系半製品シートを製造する方法および装置は、国際公開第2012/123302(A1)号(この開示は本明細書によって参照することにより本発明の明細書に完全に組み入れられるものとする)に記載されている。開示された方法/開示された装置は、エンドレス繊維が供給シートの走行方向に対して0°の方向に整列された繊維強化半製品シートを提供する。
【0010】
一方向に整列したエンドレス繊維で強化された熱可塑性樹脂系半製品シートを製造する方法および装置は、欧州特許出願公開第2631049(A1)号(この開示は同様に本明細書によって参照することにより本発明の明細書に完全に組み入れられるものとする)にも記載されている。
【0011】
欧州特許出願公開第2631049(A1)号の主題は、エンドレス繊維が供給シートの走行方向に対して0°の方向に整列された供給シートが使用されて、繊維が半製品シートの走行方向に対して0°以外の方向で一方向に整列された半製品シートを製造するという特徴を有する。
【0012】
仕上げ半製品シート、すなわち、繊維が半製品シートの走行方向に対して0°以外の方向で一方向に整列されたシートを製造するための欧州特許出願公開第2631049(A1)号に開示された方法では、セグメントは走行方向に対して0°の角度である一方向に配向するように固定された繊維の主方向、プラスチックマトリックスおよび多重度を有する供給シートから分離され、これらのセグメントは走行方向と平行に伸びるその長軸方向端部が互いに平行であり、隣接し、長軸方向と所定の角度であるように隣同士に配置され、隣接するセグメントはその長軸方向端部の領域内で互いに接合される。
【0013】
欧州特許出願公開第2631049(A1)号に開示された装置は、主方向に対して0°の角度である一方向に配向するように固定された繊維の主方向、プラスチックマトリックスおよび多重度を有する供給シートのセグメントを分配するための分配手段、主方向と平行に伸びるその長軸方向端部が互いに平行であり、隣接し、長軸方向と所定の角度であるように隣同士にセグメントを配置するための配置手段、その長軸方向端部の領域内で隣接するセグメントを接合するための接合手段を備える。
【0014】
半製品シートの製造における律速段階は、セグメントとして欧州特許出願公開第2631049(A1)号に言及される供給シートから切断されたシート片を接合して仕上げ半製品シートを得ることである。
【0015】
以後、供給シート、シート片および仕上げ半製品シートをまとめてシート物品とも呼ぶ。
【0016】
とりわけ、欧州特許出願公開第2631049(A1)号は、接着結合または溶接によってこの接合を行うことを提案している。とりわけ、欧州特許出願公開第2631049(A1)号は、溶接方法として超音波溶接を提案している。
【0017】
超音波溶接自体は公知である。概して20〜35kHzの範囲の高周波機械的振動により溶接を行う摩擦溶接法があり、これは分子摩擦および接触摩擦による構成要素間の熱をもたらす。
【0018】
発電機を使用して、同軸ケーブルにより超音波振動子、圧電効果または磁気歪み効果を使用してそれから機械的超音波振動を発生するいわゆる変換機に電送される高周波交流を発電する。これらの振動は振幅変圧器によりソノトロード(sonotrode)に伝達される。異なる用途は、通常、鋼、アルミニウムまたはチタンから製造されたソノトロードの異なる設計を要し、その形状は使用された発電機により得られた周波数およびプロセシングタスクに依存する。
【0019】
ソノトロードは、高周波機械的振動、すなわち、超音波の導入による共鳴振動するツールである。これらは、超音波発生機から加工物への接続を提供し、超音波振動をプロセシングタスクに適合させる。様々な方法により接合ゾーンまたは接触ゾーン内で構成要素を永続的に接合するために、ソノトロードを超音波溶接に使用する。アンビル(anvil)は、ソノトロードのための受面として使用する。
【0020】
ソノトロードおよびアンビルは、溶接される部分と直接接触する超音波溶接機の唯一の構成要素である。従って、これらの加工物は、超音波振動が溶接される部分上の接合ゾーンおよびインプレションに最適に導入されるように形づけられなければならない。機械的振動は、溶接される部分の接合ゾーンに垂直に導入される。
【0021】
プラスチックを溶接する場合、振動は概して接合パートナーと垂直に導入される。プラスチックは加熱され軟化するが、これは減衰係数を増加させる。減衰係数の増加は、さらなる温度上昇を加速させるより高内部摩擦をもたらす。溶融物質は接合し、冷却および固化後に互いに溶接される。
【0022】
スポット溶接に加えて、ローラーシームソノトロードは、特に連続してシーム溶接することを可能にする。
【0023】
超音波溶接は、非常に短い溶接時間および高経済性を特徴とする。同じ材料および異なる材料を互いに接合してもよく、加工物を、溶接領域にのみわずかに加熱し、従って、周囲の材料は損傷しない。
【0024】
超音波溶接用の機械は、例えば、Nucleus GmbH(デュッセルドルフ)により開発され販売されている。このような機械の例は、ROTOSONIC V4Eである。
【0025】
しかしながら、欧州特許出願公開第2631049(A1)号中で言及されたセグメントなどの熱可塑性樹脂系繊維強化シート物品の超音波溶接は、実際のところ非常に難しい。このことは、とりわけ、論文「Advances in fusion bonding techniques for joining thermoplastic matrix composites: a review」(C. Ageorges, L. Ye, M. Hou, Composites: Part A 32 (2001) 839-857)から明白である。この文書は、繊維含有率のせいで、凝集接合部を得ることをより困難にするより溶融できない入手可能な材料がある問題を強調している。この同論文は、接合するシート物品を重ね合わせてから、加圧下超音波溶接する解決法を提案している。
【0026】
ドイツ特許出願公開第102008059142(A1)号も、熱可塑性樹脂系繊維強化シート物品の超音波溶接を開示している。ここでもまた、シート物品を重ね合わせて、溶接を行うことができるように圧力を印加する。
【0027】
しかしながら、この手順は、シート物品が溶接後、例えば、シート物品が重なった点において不均一であり、および/または厚くなった部分を示す不都合を有する。このようなシート物品は、もはや平らな面を必要とする用途に使用することができない。
【0028】
さらなる不都合は、重なり部分に必要な追加の材料の使用である。重なり部分を得ることは、さらなる不都合である追加の装置の複雑性も必然的に伴う。
【0029】
上に挙げた文書は、マトリックス材料として熱可塑性ポリカーボネートを用いてシート物品を製造することも開示していない。
【0030】
通常使用される熱可塑性プラスチックと比較して、ポリカーボネートは、クリープの傾向をほとんど有せず、従って一定の応力下の場合クラッキングする傾向を有する不都合を有する。このことは、特に、そのプラスチックマトリックス中にエンドレス繊維を含んでなる複合材が該エンドレス繊維のせいで一定応力下にあるので、エンドレス繊維を含んでなる複合材の用途にとって極めて問題である。従って、今まで、ポリカーボネートは、実際のところ、このようなエンドレス繊維を含んでなる複合材のためのプラスチックマトリックスとして従属的役割を果たすのみであった。しかしながら、ポリアミドまたはポリプロピレンなどの他の通例の熱可塑性プラスチックと比較して、ポリカーボネートが固化中の体積収縮を低減するので、ポリカーボネートの応用の場を広げて一方向繊維強化シート物品も含むことは、原則的に望ましい。ポリカーボネートは、他の熱可塑性樹脂と比較して、より高いガラス転移温度Tgおよびより優れた熱耐性をさらに示す。
【0031】
マトリックス材料としてポリカーボネートを含んでなる一方向繊維強化シート物品から製造したシートは、さらに、良好な機械特性に加えて見て美しい低うねり面を有する多層複合材の提供を可能とする。マトリックス材料としてポリカーボネートを含んでなるシートから組み立てたこのような多層複合材は、金属の様な触覚、光学特性および音響特性を示す。
【0032】
このような多層複合材は機械的負荷を担うことができるだけでなく非常に優れた外観を提供するので、これらの特性はこのような多層複合材を、電子デバイス、詳細には、ラップトップまたはスマートホンなどのポータブル電子デバイス用の筐体、ならびに自動車の外装品および内装品のための筐体材料として適切なものにする。
【0033】
米国特許出願公開第2014/286697(A1)号は、シート物品を重ねない熱可塑性樹脂系繊維強化シート物品の溶接方法を開示している。この熱可塑性樹脂はポリカーボネートだが、繊維は短い繊維であり、配向しないように分布する。しかしながら、米国特許出願公開第2014/286697(A1)号の
図3から、接合部領域に不均一であり、および/または厚くなった部分が存在することは明らかに明白である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0035】
従来技術の不都合を克服することが本発明の目的である。繊維をポリカーボネートのマトリックス中に埋め込んだ一方向に整列したエンドレス繊維で強化されたシート物品が、シート物品の互いの重なり合いのない超音波溶接によって、互いに凝集接合し得る方法および装置を提供することが、本発明の詳細な目的である。超音波溶接によって繊維をポリカーボネートのマトリックス中に埋め込んだ一方向に整列したエンドレス繊維で強化された別の同種シート物品と凝集接合することができる、繊維をポリカーボネートのマトリックス中に埋め込んだ一方向に整列したエンドレス繊維で強化されたシート物品を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
これに関連して、同種は、接合されるシート物品が材料と構造の両方に関して同種であることを意味すると理解されるものとする。
【0037】
シート物品は、溶接後、不均一でなく厚くなった部分もないことを示すことになる。
【0038】
独立クレームの主題により目的は達成される。好ましい実施形態は従属クレームに見出される。
【0039】
本発明に関連して、「凝集接合」は、超音波溶接により得た接合が、この接合部のいかなる点においても、いずれもの所望の他の点においてシート物品の引張強さおよび破断伸びの少なくとも50%、好ましくは70%、特に好ましくは90%を示す、引張強さおよび破断伸び(両方とも例えば引張試験により確認する)に関する値を示し、超音波溶接により得た接合部およびシート物品のいずれもの所望の他の点における引張強さおよび破断伸びの値は同様に確認されることを意味すると理解されるものとする。シート物品の大きな面積に対して、すなわち、シート物品の上部と下部は10mmの端部領域内にある領域は、超音波溶接により得た接合部の場合およびシート物品の他の点の場合の両方においていずれもの所望の点から除外される。
【0040】
詳細には、一方向に整列した複数のエンドレス繊維で強化された2つのシート物品を超音波溶接により接合する方法であって、該繊維はポリカーボネートのマトリックス中に埋め込まれる方法において、
(1)溶接装置内においてシート物品を互いに端部と端部を隣接して配置するステップ、
(2)超音波を用いてシート物品を溶接するステップ、
(3)互いに溶接されたシート物品を溶接装置から取り出すステップ
を特徴とする、前記方法により目的を達成する。
【0041】
本発明に関連して「端部と端部を(end-to-end)」という語は、シート物品が各々、それらの狭い側面の1つで互いに隣接して配置され、これらの側面が互いに平行に配置されて接触していることを意味すると理解されるものとする。シート物品の側面が実質的にその全面にわたって接触している場合が好ましい。これに関連して、「実質的にその全面にわたって」という語は、2つの側面の少なくとも1つに対して、前記面は他の側面により少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%、非常に特に好ましくは少なくとも99%の程度で被覆されることを意味すると理解されるものとする。同種シート物品を考慮する場合、概してこの場合であるので、これは両方の側面に対して均等に当てはまる。本発明に関連して、「端部と端部を」という語は、シート物品が互いに重なり合う場合を除外する。
【0042】
これらの側面は以後、隣接端部(abutting ends)とも呼ぶ。
【0043】
シート物品の重なりのない凝集接合部を得るため、シート物品は、実質的に長方形であり実質的に平らである隣接端部を有することが有利である。これは、シート物品が、溶接後、不均一でなく厚くなった部分もないことを示すことを保証する。
【0044】
本発明に関連して、「実質的に長方形」は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%の隣接端部面積が長方形内にあり、かつ、この長方形の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは98%であることを意味すると理解されるものとする。長方形から突き出す、すなわち凸状部の隣接端部面積の一部の最も大きな線寸法は、いずれの場合にも、長方形の高さの10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、この寸法は、いずれの場合にも、凸状部が最大限突出する長方形の辺に対して垂直に決定される。長方形に突き出す隣接端部面積の凹上部の最も大きな線寸法は、いずれの場合にも、長方形の高さの10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、この凹状部は、いずれの場合にも、それぞれの凹状部が最大限突き出す長方形の辺に対して垂直に決定される。長方形を、シートセクション/シートの最大面積に対して85°〜95°、好ましくは88°〜92°、特に好ましくは89°〜91°の角度で、非常に特に好ましくは垂直に整列する。長方形の高さに対する幅の比は、好ましくは50:1以上、特に好ましくは100:1〜100000:1、特に150:1〜30000:1である。
【0045】
この点においてシート物品の辺長までの上記変動限界内で長方形の幅は同じであり、この点においてシート物品の厚さまで上記変動限界内で長方形の高さは同じである。
【0046】
幅は好ましくは60〜2100mm、好ましくは500〜1000mm、特に好ましくは600〜800mmであり、厚さは好ましくは100〜350μm、好ましくは120〜200μmである。しかしながら、本発明に従った方法を、他の幅および厚さを有するシート物品を加工するためにも使用することができ、詳細には、1000μm以下またはそれ以上、例えば、1200μm以下またはさらに1500μm以下またはさらに2000μm以下の厚さを有するシート物品を加工することができ;すなわち、本発明に従った方法は、これらの厚さを有するシート物品に対してさえ凝集接合部を得ることができる。
【0047】
従って、隣接端部は、その1つの空間次元が厚さであるシート物品の側面の1つであり、いかなる場合でも、その面積は該シート物品の長さおよび幅により決定されるシート物品の側面の1つである。
【0048】
本発明に関連して、「実質的に平ら」は、平面に/から垂直に長方形面から出た凹凸の最大線寸法が、長方形の高さのせいぜい20μm、好ましくはせいぜい15μm、特に好ましくはせいぜい10μm、非常に特に好ましくはせいぜい5μmを超えないことを意味すると理解されるものとする。
【0049】
本発明に関連して、「溶接後不均一でなく厚くなった部分もないことを示すシート物品」は、溶接接合部におけるシート物品の厚さが、溶接接合部の外側のシート物品の厚さから、20%以下、好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下、非常に特に好ましくは5%以下外れていることを意味すると理解されるものとする。
【0050】
例えば、欧州特許出願公開第2631049(A1)号に開示されたようにシート片を切断する供給シートは、100〜3000mの長さを有し、これは仕上げ半製品シートに適用する。シート片は60〜2100mm、好ましくは500〜1000mmの長さを有する。これは幅および長さに適用し、シート物品の幅は同じでも異なっていてもよい。
【0051】
シート物品の大面積は平行四辺形の形状である場合が好ましく、特に長方形の形状が好ましく、非常に特に正方形の形状が好ましい。
【0052】
供給シート、従ってシート片も、および仕上げ半製品シートは、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%、非常に特に好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも97重量%の程度までポリカーボネート系熱可塑性樹脂からなるマトリックスを有する。
【0053】
本明細書でポリカーボネートと言う場合、異なるポリカーボネートの混合物も含む。本明細書において、ポリカーボネートを包括的用語としてさらに使用し、従って、ポリカーボネート単独重合体およびポリカーボネート共重合体の両方を含む。ポリカーボネートは、さらに、公知の様に直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0054】
ポリカーボネートは、70重量%、好ましくは80重量%、特に好ましくは90重量%の程度までまたは実質的に特に100重量%の程度まで直鎖ポリカーボネートからなる場合が好ましい。
【0055】
ポリカーボネートを、ジフェノール類、炭酸誘導体ならびに必要に応じて連鎖停止剤および分岐剤から公知の方法で製造してもよい。ポリカーボネートの製造に関する詳細は、少なくとも約40年間、当業者に周知である。例えば、Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, Volume 9, Interscience Publishers, New York, London, Sydney 1964、D. Freitag, U. Grigo, P.R. Mueller, H. Nouvertne, BAYER AG, Polycarbonates in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Volume 11, Second Edition, 1988, pages 648-718, および最後は U. Grigo, K. Kirchner and P.R. Mueller Polycarbonate in BeckerBraun, Kunststoff-Handbuch, Volume 31, Polycarbonate, Polyacetale, Polyester, Celluloseester, Carl Hanser Verlag Munich, Vienna 1992, pages 117-299を参照。
【0056】
必要に応じて連鎖停止剤を使用して、必要に応じて三官能性または三官能性より多い分岐剤を使用して、界面過程による、例えば、ジフェノール類とカルボニルハロゲン化物、好ましくはホスゲンと、および/または芳香族ジカルボニルニハロゲン化物、好ましくはベンゼンジカルボニルニハロゲン化物との反応により、芳香族ポリカーボネートを製造する。ジフェノール類と例えば炭酸ジフェニルとの反応による溶融重合法による製造も同様に可能である。ポリカーボネートの製造に適切なジフェノール類は、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニル類、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン類、イサチン誘導体またはフェノールフタレイン誘導体から誘導されたフタルイミジン類、ならびに環状アルキル化、環状アリール化および環状ハロゲン化同族化合物である。
【0057】
好ましい使用されるジフェノール類は、フタルイミド類、例えば、2−アラルキル−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド類または2−フェニル−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミドなどの2−アリール−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド類、2−ブチル−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド類、2−プロピル−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド類、2−エチル−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド類または2−メチル−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド類などの2−アルキル−3,3’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミド類、また3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−1H−インドール−2−オンまたは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−1H−インドール−3−オンなどの窒素において置換されたイサチン系ジフェノール類である。
【0058】
好ましいジフェノール類は、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ジメチルビスフェノールA、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
【0059】
特に好ましいジフェノール類は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびジメチルビスフェノールAである。
【0060】
これらおよび他の適切なジフェノール類は、例えば、米国特許第3,028,635号、米国特許第2,999,825号、米国特許第3,148,172号、米国特許第2,991,273号、米国特許第3,271,367号、米国特許第4,982,014号および米国特許第2,999,846号に、ドイツ特許出願公開第1570703号、ドイツ特許出願公開第2063050号、ドイツ特許出願公開第2036052号、ドイツ特許出願公開第2211956号およびドイツ特許出願公開第3832396号に、フランス特許第1561518号に、単行書H. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Interscience Publishers, New York 1964に、また、JP−A6203091986、JP−A6204001986およびJP−A1055501986に記載されている。
【0061】
ポリカーボネート単独重合体の場合、1つのジフェノールのみ使用し、ポリカーボネート共重合体の場合、2つ以上のジフェノールを使用する。
【0062】
適切な炭酸誘導体の例としては、ホスゲンまたは炭酸ジフェニルが挙げられる。ポリカーボネート製造で使用され得る適切な連鎖停止剤はモノフェノール類である。適切なモノフェノール類は、例えば、フェノールそれ自体、クレゾール類、p−tert−ブチルフェノール、クミルフェノールおよびその混合物などのアルキルフェノール類である。
【0063】
好ましい連鎖停止剤は、直鎖もしくは分岐鎖、好ましくは非置換C1〜C30アルキルラジカルまたはtert−ブチルで一置換もしくは多置換されたフェノール類である。特に好ましい連鎖停止剤は、フェノール、クミルフェノールおよび/またはp−tert−ブチルフェノールである。使用される連鎖停止剤の量は、好ましくは、それぞれ、使用されるジフェノール類のモル数に対して0.1〜5モル%である。炭酸誘導体との反応前、反応中または反応後に、連鎖停止剤の添加を行ってもよい。
【0064】
適切な分岐剤は、ポリカーボネート化学によくある三官能性または三官能性より多い官能性の化合物であり、特に、3個以上のフェノール性OH基を有するものである。
【0065】
適切な分岐剤は、例えば、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラ(4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ)メタンおよび1,4−ビス((4’,4−ジヒドロキシトリフェニル)メチル)ベンゼンおよび3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0066】
必要に応じて使用する分岐剤の量は、いずれの場合にも使用したジフェノール類のモル数に対して、好ましくは0.05モル%〜3.00モル%である。分岐剤を、アルカリ水溶液中のジフェノール類および連鎖停止剤と一緒に最初に投入、あるいはホスゲン化前に有機溶媒中に溶解して添加することができる。エステル交換法の場合、分岐剤をジフェノール類と一緒に使用する。
【0067】
特に好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールA系ポリカーボネート単独重合体、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン系ポリカーボネート単独重合体ならびに2つのモノマービスフェノールAおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンをベースとしたポリカーボネート共重合体である。
【0068】
さらに、ポリカーボネート共重合体も使用してよい。これらのポリカーボネート共重合体を製造するため、使用されるジフェノール類の総量に対して、1〜25重量%、好ましくは2.5重量%〜25重量%、特に好ましくは2.5重量%〜10重量%のヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを使用してもよい。これらは公知であり(米国特許第3,419,634号、米国特許(US−PS)第3,189,662号、欧州特許第0122535号、米国特許第5,227,449号)、文献中に公知の方法により製造してもよい。同様に、ポリジオルガノシロキサン含有ポリカーボネート共重合体が好適であり;ポリジオルガノシロキサン含有ポリカーボネート共重合体の製造は、例えば、ドイツ特許出願公開第3334782号に記載されている。
【0069】
ポリカーボネートは、単独で存在してもよく、ポリカーボネート混合物として存在してもよい。ポリカーボネートまたはブレンドパートナーとしてポリカーボネートと異なる1つ以上のプラスチックとのポリカーボネート混合物を使用することも可能である。
【0070】
使用し得るブレンドパートナーとしては、ポリアミド類、ポリエステル類、詳細には、テレフタル酸ポリブチレンおよびテレフタル酸ポリエチレン、ポリラクチド、ポリエーテル、熱可塑性ポリウレタン、ポリアセタール、フルオロポリマー、詳細には、フッ化ポリビニリデン、ポリエーテルスルホン類、ポリオレフィン、詳細には、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリイミド、ポリアクリレート、詳細には、ポリ(メチル)メタクリレート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、スチレンポリマー類、詳細には、ポリスチレン、スチレン共重合体、詳細には、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体および塩化ポリビニルが挙げられる。
【0071】
熱可塑性樹脂の重量に対して、50.0重量%以下、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは0.2〜30.0重量%の他の通例の添加剤が必要に応じて存在してもよい。
【0072】
この群は、ポリカーボネートに通例の量で、難燃剤、防滴剤、熱安定剤、離型剤、酸化防止剤、UV吸収剤、IR吸収剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、光散乱剤、無機顔料、カーボンブラックおよび/または染料を含む色素などの着色剤、ならびに無機フィラーを含んでなる。これらの添加剤を単独で添加してもよく、あるいは混合物で添加してもよい。
【0073】
ポリカーボネートの場合通常添加されるので、このような添加剤は、例えば、欧州特許出願公開第0839623号、国際公開第96/15102号、欧州特許出願公開第0500496号または"Plastics Additives Handbook", Hans Zweifel, 5th Edition 2000, Hanser Verlag, Munichに記載されている。
【0074】
マトリックス用に使用されるポリカーボネートに、熱安定剤および流動性向上剤を添加するのは概して有用であり得るが、但し、これらは、ポリカーボネートの分子量を低下させず、および/またはビカー軟化温度を低くする。
【0075】
本発明に従って使用される繊維は、詳細には、天然繊維もしくは人造繊維または両方の混合物である。天然繊維は好ましくは繊維状鉱物または植物繊維であり、人造繊維は好ましくは無機合成繊維または有機合成繊維である。ガラス繊維、炭素繊維またはポリマー繊維が本発明に従えば好ましく、次にガラス繊維または炭素繊維が好ましい。
【0076】
240GPaより大きい、好ましくは245GPaより大きい、特に好ましくは250GPa以上のEモジュラスを有するガラス繊維または炭素繊維を使用するのが非常に特に好ましい。これらの特性を有する炭素繊維は、特に好ましい。このような炭素繊維は、三菱レイヨン株式会社から商品名パイロフィル(Pyrofil)として市販されている。
【0077】
それぞれのシート物品の体積すべてにわたり平均して、シート物品中繊維の体積含有率は、20〜80体積%、好ましくは30〜70体積%、特に好ましくは40〜60体積%、非常に特に好ましくは45〜55体積%である。
【0078】
互いに溶接された、すなわち、互いの溶接接合部に入るシート物品の領域が、シート物品の残りの領域より低い繊維含有率を有する場合が、本発明に従えば有利である。互いに溶接されたシート物品の領域が、シート物品の残りの領域の繊維含有率の2分の1以下、特に好ましくは5分の1以下、非常に特に好ましくは10分の1以下、特に100分の1以下を有する場合が好ましい。互いに溶接されたシート物品のこれらの領域を溶融領域とも呼ぶ。つまり、凝集接合部を得るためのこれらの領域で得られる充分な溶融可能材料がある。
【0079】
この溶融領域は、必然的に、シート物品表面にある。溶融領域は、好ましくは隣接端部の領域内にあり、次に好ましくは隣接端部全体にわたって広がっている。
【0080】
溶融領域は、シート物品の内側に向かって隣接端部に対して垂直に測定して、0.1mm〜3mm、好ましくは0.2mm〜2mm、特に好ましくは0.5mm〜1mmの深さである場合が、本発明に従えば好ましい。
【0081】
つまり、溶接されるシート物品を重ねる必要がない超音波溶接の場合も、凝集接合部を安全に確保することができる。対照的に、溶接されるシート物品の重ね合わせを回避する。
【0082】
2つの対向する隣接端部が互いに直接接触、好ましくは互いに加圧するように、シート物品が、溶接中隣接端部と互いに対して案内、好ましくは加圧される場合も、本発明に従えば好ましい。互いに対するこの案内、好ましくは互いに対する加圧を、装置を用いて、例えば、供給機器および/もしくはホールドダウン、または簡単な場合手動で機械的に行ってもよい。
【0083】
本発明に従った方法の1つの実施形態では、端部と端部を互いに隣接して配置したシート物品を、ソノトロードおよびアンビルの間に配置し、ホールドダウンで固定する。ソノトロードおよびアンビルを、互いに平行に配置した2つの直線軸間に案内する。ソノトロードおよびアンビルを、互いに接触している隣接端部に沿って可能な限り正確に案内し、ソノトロードの幅は、少なくとも両方のシート物品の溶融領域をカバーする。ソノトロードが、両方のシート物品の溶融領域の幅の合計より、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも100%広い場合が好ましい。
【0084】
この方法は、1〜30m/分、好ましくは5〜15m/分の進行速度を達成することができる。
【0085】
本発明は、超音波溶接により2つの繊維強化シート物品の接合のための、本発明に従った方法を行うための装置も提供し、該装置は次の構成要素を備える:
(A)供給機器、
(B)ソノトロード、
(C)アンビル。
【0086】
ソノトロードがローラーシームソノトロード、好ましくはスムースで異形でないソノトロードである場合が、本発明に従えば有利である。付随するアンビルがアンビルホイールまたはアンビルロールである場合、この利点は強化され得る。これは、高進行速度で、溶接される長い隣接端部を有するシート物品でさえ可能とする。
【0087】
あるいは、ソノトロードは、局面、すなわち、半製品シートと接触する面においてローレット加工を示してもよい。このローレット加工は、好ましくは、ソノトロードの曲面全体にわたって広がる。このローレット加工は、好ましくは0.01〜5mm、特に好ましくは0.1〜2mmの深さを有する。加えて、ローレット加工は、半製品シートの走行方向に対して、30°〜150°、好ましくは60°〜120°、特に好ましくは75°〜105°の角度で整列する場合が好ましい。このローレット加工は、例えば、左右ローレット加工の形態であってもよい。
【0088】
対が、溶接されるシート物品上に、すなわち、溶接されるシート物品間の溶融領域内で、かつ、シート物品の隣接端部に対して垂直に加圧するように、前記対としてソノトロードおよびアンビルを配置する。これは、シート物品を互いに重なり合ったシート物品なしで凝集接合することができることを保証する。
【0089】
本発明に従った1つの実施形態では、装置は、好ましくは、供給機器およびソノトロード間に、互いに溶接されるシート物品を案内する2つの直線軸も備える。装置が、代わりに、または2つの直線軸に加えてソノトロードの前にホールドダウンを備える場合も、本発明に従えば好ましい。
【0090】
前述の1〜30m/分、好ましくは5〜15m/分などの高進行速度において、本発明に従った装置は、溶接後の溶融領域が高進行速度において充分に速く冷却しないことが多く、従って、耐久性のある凝集接合部に必要な強度を直ちに得られないので、次の加圧ロールを備える場合が有利である。互いに溶接されたシート物品を、加圧ロールによりその形状で局部的に固定し、従って、冷却および必要強度の確立に充分な時間を与える。これは、シート物品を互いに重なり合ったシート物品なしで凝集接合することができることをさらに保証する。
【0091】
比較的長い隣接端部に沿って速く、かつ、効率的に溶接することができるように、装置は、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上のソノトロードを備えることがさらに有利になり得るが、該ソノトロードを、その圧延方向に接合ゾーンに沿って次々に配置してもよい。その結果、装置は、ソノトロード数と同じ複数のアンビルホイール、および好ましくは同数の次の加圧ロールも備える。あるいは、アンビルホイールを、1つ以上のアンビルロールにより全部または部分的に置換してもよい。
【0092】
装置が1つより多いソノトロードを備える場合、全てのソノトロードはスムースな面を有してもよく、全てのソノトロードはギザギザ面を有してもよく、またはソノトロードの一部はスムース面を有してソノトロードの別の一部はギザギザ面を有する。
【0093】
本発明は、1つ以上の熱可塑性樹脂を含んでなるマトリックスを有し、かつ、少なくとも1つの溶融領域、すなわち、シート物品の残りの領域より低い繊維含有率、好ましくは、シート物品の残りの領域の繊維含有率の2分の1以下、特に好ましくは5分の1以下、非常に特に好ましくは10分の1以下、特に100分の1以下を有する領域を有する繊維強化シート物品をさらに提供する。
【0094】
繊維は、織物、編物、多層レイドまたは不織布(例えば、打延べ綿シート、ランダムレイド(random-laid)繊維マット、他)、一方向もしくは多方向に整列したエンドレス繊維またはランダムに分布した短繊維の形態でマトリックス中に存在してもよい。繊維は、好ましくは、一方向に整列したエンドレス繊維の形態で存在する。
【0095】
「エンドレス繊維」は、繊維の長さが繊維の方向に強化されるシート物品の寸法と実質的に同じであることを意味すると理解されるものとする。「繊維」に関連して「一方向に」は、シート物品中の繊維が一方向のみに整列されていることを意味すると理解されるものとする。
【0096】
シート物品は、供給シート、シート片または仕上げ半製品シートであり、このシート物品は本明細書中、上記に列挙した特徴を有する。
【0097】
シート物品は、好ましくは、少なくとも2つの溶融領域を備える。シート物品が少なくとも2つの溶融領域を有する場合、これらは、好ましくは、その少なくとも2つが互いに平行になるように整列する。このように、シート片を互いに、またはシート片を仕上げ半製品シートの端部との同時溶接または連続溶接は、前記半製品シートを製造および延長することを可能とする。
【0098】
しかしながら、シート物品は、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上の溶融ゾーンを備えてもよい。これは、例えば、シート物品の形状に依存する。従って、平行四辺形の形状にシート物品は、好ましくは、2つまたは4つの溶融領域を有し、次に好ましくは2つの溶融領域を有する。六角形の形状にシート物品は、6つの溶融領域を有してもよく;正六角形の場合、これらを使用して超音波溶接によって比較的大きな面積のギャップレスカバレージを提供する複数のシート物品を製造してもよい。
【0099】
例えば、欧州特許出願公開第2631049(A1)号のような供給シートについては、溶融領域は、好ましくは、2つの平行な外側の辺であろう。それから、欧州特許出願公開第2631049(A1)号のセグメントと呼ばれるシート片はこの供給シートから切断され;その次に、これらのシート片は結果的に2つの溶融領域も有する。それから、シート片は、シート片自体がその元の整列を変化することなく、元の進行方向と異なる方向にさらに搬送されるので、ここで、シート片の溶融領域は、2つのシート片またはシート片と仕上げ半製品シートの端部の溶融領域が平行に、かつ、同一平面上に互いに対向して配置されるように位置付けられる。それから、仕上げ半製品シートの端部は、同一平面上にシート片の溶融領域と対向して配置された1つだけの溶融領域を有する。
【0100】
本発明は、超音波溶接によって繊維強化仕上げシートの製造用シート片の構成における本発明に従ったシート物品の使用も提供する。
【0101】
このようなシートは、良好な機械特性を有し、見て美しい低うねり面を示す多層複合材の製造を可能とする。マトリックス材料としてポリカーボネートを含んでなるシート物品から組み立てたこのような多層複合材は金属の様な触覚、光学特性および音響特性を示し、従って、電子デバイス、詳細には、ラップトップまたはスマートホンなどのポータブル電子デバイス用の筐体、ならびに自動車の外装品および内装品のための筐体材料としても適切である。この多層複合材を2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上のシート物品から製造してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
本発明の好ましい実施形態を次の図により示すが、これにより本発明をこれらの実施形態に限定するものではない。
【
図1】1つのみのソノトロードを備える、超音波溶接による2つの繊維強化シート物品の接合のための本発明に従った方法を行うための装置の平面図を示し、参照数字は次の意味を有する: 1 シート部分 2 ローラーシームソノトロード 3 加圧ロール 4 仕上げ半製品シート 5 溶接接合部 6 シート物品および仕上げ半製品シートの進行方向 7 超音波溶接手順中のローラーシームソノトロードおよび加圧ロールの動作方向。
【
図2】2つのソノトロードを備える、超音波溶接による2つの繊維強化シート物品の接合のための本発明に従った方法を行うための装置の平面図を示し、参照数字は次の意味を有する: 1 シート部分 2 ローラーシームソノトロード 3 加圧ロール 4 仕上げ半製品シート 5 溶接接合部 6 シート物品および仕上げ半製品シートの進行方向 7 超音波溶接手順中のローラーシームソノトロードおよび加圧ロールの動作方向。
【
図3】超音波溶接による2つの繊維強化シート物品の接合のための本発明に従った方法を行うための装置の側面図を示し、参照数字は次の意味を有する: 1 シート部分 2 ローラーシームソノトロード 3 アンビルロール 4 仕上げ半製品シート 5 シート部分の溶融領域 6 仕上げ半製品シートの溶融領域。
【
図4】溶接接合部の領域における繊維強化半製品シートを通した部分の明視野反射光顕微鏡写真を示し、厚さは186μmと測定された。
【
図5】
図5と同じ繊維強化半製品シートだが、溶接接合部の領域の外側を通した部分明視野反射光顕微鏡写真を示し、半製品シートの厚さは204μmと測定された。