(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961620
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】改良された溶融燃料型反応炉の冷却構成およびポンプ構成
(51)【国際特許分類】
G21C 1/22 20060101AFI20211025BHJP
G21C 1/32 20060101ALI20211025BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20211025BHJP
G21C 15/02 20060101ALI20211025BHJP
G21C 15/26 20060101ALI20211025BHJP
G21C 15/243 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
G21C1/22
G21C1/32
G21D1/00 Q
G21C15/02 N
G21C15/26
G21C15/02 Q
G21C15/243 510Z
G21C15/243 510A
G21C15/243 510C
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-557865(P2018-557865)
(86)(22)【出願日】2017年5月1日
(65)【公表番号】特表2019-516975(P2019-516975A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】US2017030457
(87)【国際公開番号】WO2017192464
(87)【国際公開日】20171109
【審査請求日】2020年4月27日
(31)【優先権主張番号】62/330,726
(32)【優先日】2016年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アボット,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】シスネロス,アンセルモ,ティー.,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】コービン,ロバート,エー.
(72)【発明者】
【氏名】フラワーズ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】フリーマン,チャールズ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ハブスタッド,マーク,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,クリストファー,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ケッレヘール,ブライアン,シー.
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ラトコフスキー,ジェフリー,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】マックフィルター,ジョン,ディー.
【審査官】
関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−506998(JP,A)
【文献】
特開2015−040751(JP,A)
【文献】
特開昭54−126887(JP,A)
【文献】
米国特許第03996099(US,A)
【文献】
国際公開第1999/059160(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C1/00−1/32
5/00−5/22
15/00−15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融燃料型原子核反応炉であって、
炉心と、核分裂によって発生する熱を冷却材に伝達するようになっている1または複数の一次熱交換器とを、格納容器内に含む燃料ループと、
上記1または複数の一次熱交換器と、パワーリカバリシステムであって、上記冷却材を循環させて、上記1または複数の一次熱交換器から上記パワーリカバリシステムにエネルギを伝達するようになっているパワーリカバリシステムとを含む一次冷却材ループと、
上記冷却材から周囲の空気にエネルギを伝達し、該空気を大気中に排出するようになっている1または複数の補助熱交換器を含む補助冷却システムとを備えており、
上記補助冷却システムは、上記一次冷却材ループから上記1または複数の補助熱交換器に冷却材を循環させるようになっている、溶融燃料型原子核反応炉。
【請求項2】
上記炉心の熱が過剰になると、上記溶融燃料型原子核反応炉における上記冷却材の密度差により、上記補助熱交換器を通る上記冷却材の流れが生じる、請求項1に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【請求項3】
上記補助熱交換器を通る上記冷却材の流れが生じるのに十分過剰な熱が上記炉心に存在する場合、上記補助冷却システムは、上記一次冷却材ループから上記1または複数の補助熱交換器に冷却材を循環する、請求項1または2に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【請求項4】
上記燃料ループは、上記格納容器および容器上蓋内に格納されており、上記格納容器には貫通孔が存在しない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【請求項5】
上記冷却材は、上記容器上蓋における複数の貫通孔を介して上記一次熱交換器に流れ、上記一次熱交換器から上記貫通孔を介して流れる、請求項4に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願〕
本願は、PCT国際特許出願として2017年5月1日に出願されており、2016年5月2日に出願された米国仮出願第62/330,726号の優先権の利益を主張するものである。上記米国仮出願は、引用により本願に組み込まれる。
【0002】
〔序論〕
原子核反応炉にて溶融燃料を利用して出力を生成することは、固体型燃料の場合に比べて著しい利点を提供する。例えば、溶融燃料型反応炉は、一般に、固体型燃料の反応炉に比べて高い出力密度を提供すると同時に、固体型燃料製品(fabrication)のコストが比較的高い故に、燃料コストが低減される。
【0003】
溶融型フッ化燃料塩は、原子核反応炉での使用に適しており、四フッ化ウラン(UF
4)と、UF
6、UF
3などの他のフッ化塩との混合物を用いて開発されている(developed)。溶融型フッ化塩の反応炉は、平均温度が600℃と860℃との間で運転される。ウランその他の核分裂性元素の燃料塩であって、二元、三元、および四元の塩化物の燃料塩は、共通の譲渡人の米国特許出願第14/981,512号、発明の名称「溶融核燃料塩並びに関連のシステムおよび方法」に記載されており、該米国特許出願は、この引用により本願に記載加入される。PuCl
3、UCl
4、UCl
3F、UCl
3、UCl
2F
2、およびUClF
3の1つ以上を含む塩化燃料塩に加えて、本願は、
37Clの量が変更された燃料塩、UBr
3、UBr
4等の臭化燃料塩、塩化トリウム(例、ThCl
4)の燃料塩、並びに、溶融燃料型反応炉にて上記燃料塩を用いるための方法およびシステムをさらに開示している。塩化物塩の反応炉における平均運転温度は、300℃と600℃との間が予想されるが、例えば1000℃よりもさらに高くてもよい。
【0004】
〔図面の簡単な説明〕
以下に示す図面は、本願の一部を形成し、記載される技術を例示するものであるが、任意の形態で求められるような本発明の範囲を限定することを意味するものではない。本発明の範囲は、本願に添付の特許請求の範囲に基づくであろう。
【0005】
図1は、溶融燃料型反応炉の基本構成の幾つかをブロック図の形態で示す図である。
【0006】
図2Aおよび
図2Bは、一次冷却ループおよび補助冷却システム(AuxiliaryCooling System、ACS)のレイアウトの実施形態を示す図である。
【0007】
図3A〜
図3Cは、溶融燃料型反応炉のデザインの実施形態であって、各一次熱交換器について、燃料塩の流れを駆動するためのポンプを有する実施形態を示す図である。
【0008】
図4は、溶融燃料型反応炉のデザインの別の実施形態であって、内部反射体が設けられている以外は
図3A〜
図3Cの実施形態と同様である実施形態を示す図である。
【0009】
図5、
図6、および
図7は、別のポンプ構成の実施形態であって、羽根車が底部に設置されている実施形態を示す図である。
【0010】
図8は、ポンプ構成のさらに別の実施形態であって、単一の羽根車812Aが炉心804内に配置された実施形態を示す図である。
【0011】
図9は、さらに別のポンプ構成であって、羽根車が一次熱交換器における2つのセクションの間の中間に配置されたポンプ構成を示す図である。
【0012】
〔詳細な説明〕
本開示では、溶融燃料型原子核反応炉の種々の構成および構成要素が説明される。本願のために、塩化物燃料を使用する溶融燃料型反応炉の実施形態が説明されるであろう。該塩化物燃料としては、例えばPuCl
3、UCl
3、および/または、UCl
4のような1または複数の燃料塩と、例えばNaClおよび/またはMgCl
2のような1または複数の非核分裂性塩との例えば混合物が挙げられる。しかしながら、現在知られており、或いは将来開発される任意の種類の燃料塩が使用されてもよく、また、本願に記載の技術は、使用される燃料の種類に関係なく同様に適用可能であってもよいことが理解されるであろう。例えば、燃料塩は1または複数の非核分裂性塩を含んでもよい。該非核分裂性塩の例としては、NaCl、MgCl
2、CaCl
2、BaCl
2、KCl、SrCl
2、VCl
3、CrCl
3、TiCl
4、ZrCl
4、ThCl
4、AcCl
3、NpCl
4、AmCl
3、LaCl
3、CeCl
3、PrCl
3、および/または、NdCl
3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、反応炉内の燃料の運転温度の最低値および最高値は、使用される上記燃料塩に依存して、上記反応炉の全体にわたって上記塩を液相に維持するように変化してもよい。最低温度は300℃〜350℃程度の低さでよく、最高温度は、1400℃程度またはそれ以上の高さでよい。同様に、熱交換器は、その他のものを明示的に記載する場合を除いて、チューブのセットを有し、かつ何れかの端部に管板を有する、単純な1パスのシェルアンドチューブ型熱交換器との観点で、本開示において一般的に提示されるであろう。しかしながら、一般的に、任意のデザインの熱交換器が使用されてもよいことが理解されるであろう。なお、幾つかのデザインはその他のデザインよりも好適であってもよい。例えば、シェルアンドチューブ型熱交換器に加えて、プレート型、プレートアンドシェル型、プリント回路型、および、プレートフィン型の熱交換器が好適であってもよい。
【0013】
図1は、溶融燃料型反応炉の基本構成の幾つかをブロック図の形態で示している。一般に、溶融燃料型反応炉100は、炉心104を含み、炉心104は、運転温度にて液体である核分裂性燃料塩106を含む。核分裂性燃料塩は、低エネルギーの熱中性子または高エネルギーの中性子に曝されると核分裂することができる任意の核種の塩を含む。さらに、本開示のために、核分裂性物質は、任意の核分裂性核種の物質、任意の親物質、またはこれらの物質の組合せを含む。燃料塩106は、炉心104を完全に満たしていてもよいし、満たしていなくてもよい。図示の実施形態では、炉心104において燃料塩106のレベルの上方に任意の上部空間102を有している。炉心104のサイズは、上記燃料を、継続的な臨界状態に達成しかつ維持するために使用される具体的な燃料塩106の特性および種類に基づいて選択されてもよい。上記継続的な臨界状態の間、上記燃料における中性子の継続的な生成により発生する熱により、上記炉心にある上記溶融燃料の温度が上昇する。臨界とは、上記炉心において中性子の損失率が中性子の生成率に比べて等しいまたは小さい状態をいう。反応炉100の性能は、炉心104の周囲に1または複数の反射体108A・108B・108Cを設けて、中性子を上記炉心内に反射することによって改善される。反射体は、例えばグラフファイト、ベリリウム、鋼、または炭化タングステンなど、現在知られており、或いは将来開発される任意の中性子反射物質によって生成されてもよい。上記溶融型燃料塩106は、炉心104と、炉心104の外側に配置された1または複数の一次熱交換器110との間にて循環される。上記循環は1または複数のポンプ112を用いて駆動されてもよい。
【0014】
上記一次熱交換器110は、溶融型燃料塩106から、一次冷却材ループ115を介して循環する一次冷却材114への熱伝達を行う。一実施形態において、上記一次冷却材は、別の塩(NaCl−MgCl
2など)または鉛であってもよい。例えば、一実施形態では、上記一次冷却材は、42MgCl
2+58NaClの塩である。また、利用可能な他の冷却材としては、Na、NaK、臨界超過のCO
2、および鉛ビスマス共晶混合物が挙げられる。一実施形態において、反射体108は、
図1に示すように、各一次熱交換器110および炉心104の間にある。例えば、一実施形態において、円筒形の炉心104は、直径が2メートル(m)であり、高さが3mであり、頂部および底部のそれぞれに上記円筒の平坦な端部が存在するように直立している。炉心104全体は、複数の反射体108で完全に覆われ、反射体108の間には、燃料塩106の炉心104内外への流路が設けられている。
【0015】
図1は、1個の熱交換器110を示しているが、上記実施形態に依存して、任意の個数の熱交換器110が使用されてもよく、該熱交換器110は、炉心104の外部の周囲に離間して配置されてもよい。例えば、2個、4個、6個、8個、10個、12個、および16個の一次熱交換器を有する実施形態が予想される。
【0016】
上述のように、任意のデザインの熱交換器が使用されてもよいが、上記熱交換器110としては、シェルアンドチューブ型熱交換器の観点から概括的に議論されるであろう。シェルアンドチューブ型熱交換器の実施形態では、上記燃料塩は、複数のチューブ内を流れ、該チューブは、一次冷却材で満たされたシェル内に含まれてもよい。上記燃料塩は、該記燃料塩と一次冷却材との混合を防止するために、上記シェルにおける1または複数の管板を介して上記チューブに流入する。これは、チューブ側燃料構成、またはシェル側冷却材構成と称される。或いは、上記燃料塩が上記シェル内を流れ、一次冷却材が上記チューブ内を流れてもよい。これは、チューブ側冷却材構成、またはシェル側燃料構成と称される。
【0017】
熱交換器部品の塩接触面は、腐食から保護するために被覆されてもよい。その他の保護オプションとしては、保護用コーティング(protective coatings)、非密着ライナ(loose fittingliners)、または、圧入ライナ(press-fit liners)が挙げられる。一実施形態では、上記チューブの内面における被覆はモリブデンであり、該モリブデンは、ベースの熱交換器材料と共に共有押出し成形される。他の燃料塩接触面(上記管板の外面および上記シェルの外面)について、上記被覆の材料はモリブデン合金である。ニッケルおよびニッケル合金は、他の利用可能な被覆の材料である。モリブデン−レニウム合金は、溶接が要求される場合に使用されてもよい。一次冷却の塩と接触する部品は、Alloy200で被覆されてもよいし、或いは、アメリカ機械学会の圧力容器の基準に合致する材料など、その他の同等な任意の材料で被覆されてもよい。上記チューブの主要な材料は、316ステンレス鋼であってもよく、或いは、その他の同等な任意の材料であってもよい。例えば、一実施形態では、Alloy617は、上記シェルおよび上記管板の材料である。
【0018】
チューブ側燃料の実施形態において、上記燃料塩は、熱交換器110における上記チューブを流れ、上記燃料塩の出口通路へ流出する。熱交換器110のシェル内の上記一次冷却材は、上記チューブ内を移動する上記燃料塩から熱を除去する。その後、加熱された冷却材は、パワー生成システム120に送られる。
【0019】
図1に示すように、一次熱交換器110からの加熱された一次冷却材114は、例えば、熱的パワー、電気的パワー、または機械的パワーのような、或る形態のパワーの生成のためにパワー生成システム120に送られる。炉心104、一次熱交換器110、ポンプ112、溶融燃料循環用配管(例えば、チェックバルブ、遮断バルブ、フランジ、ドレインタンクなど、図示していないその他の補助部品を含む)、および、上記溶融燃料が運転中に循環するその他の任意の部品は、燃料ループ116と称されることができる。同様に、一次冷却材ループ115は、一次冷却材が循環する部品を含み、一次熱交換器110と、一次冷却材循環用配管(例えば、冷却材用ポンプ113、チェックバルブ、遮断バルブ、フランジ、ドレインタンクなど、図示していないその他の補助部品を含む)とを含む。
【0020】
さらに、溶融燃料型反応炉100は、少なくとも1つの格納容器118を含み、該格納容器118は、燃料ループ116を含み、上記燃料ループの部品の1つからのリークがあった場合に溶融型燃料塩106の放出を阻止するためのものである。なお、一次冷却材ループ115の全てが格納容器118内にあるとは限らない。
【0021】
一実施形態では、燃料塩の流れは、該燃料塩が燃料ループ116内を循環するように、ポンプ112によって駆動される。図示の実施形態では、各一次熱交換器110に1個のポンプ112が存在する。より少ない或いはより多くのポンプが使用されてもよい。例えば、別の実施形態では、複数の小型ポンプが各熱交換器110のために使用されてもよい。一実施形態では、ポンプ112は、燃料ループ116内の或る位置に羽根車を含んでもよい。また、一実施形態では、上記羽根車を含む上記通路または上記燃料ループの部品は、上記羽根車の回転によって上記燃料ループ内の燃料塩の流れが駆動されるような上記ポンプのケーシングまたは本体として機能する。羽根車は、オープン型、セミオープン型、クローズト型など、任意のデザインからなってもよく、上記羽根車のブレードは、後向き、前向き、または径向きなど、任意の構成であってもよい。また、上記羽根車の回転によって駆動される上記流れを方向付ける場合に支援するために、1または複数のディフューザ羽根が羽根車の位置またはその近くに設けられてもよい。上記羽根車は、該羽根車をモータに接続する回転シャフトに取り付けられてもよく、上記モータは、上記燃料ループおよび上記格納容器の外部に配置されてもよい。本実施形態の例は、後述するように、
図6A〜
図6Cにて見出されることができる。また、その他のポンプ構成も利用可能である。
【0022】
広義に言えば、本開示は、
図1に関して説明される反応炉100の性能を改善する複数の変更および複数の部品構成を記載している。
【0023】
〔補助冷却システム(ACS)〕
一実施形態では、ACSは、一次冷却材を補助冷却するために設けられてもよい。上記ACSは、上記一次冷却材のループにおける幾つかの部品を共有してもよく、特定の事態の間、または特定の環境下にて冷却を引き継ぐ(take over)ようになっていてもよい。一実施形態では、上記ACSは、1または複数の独立のACSループ(すなわち、他のACSループから独立したACSループ)によって構成されてもよく、各ACSループは、一次冷却材ループと共にその流路の幾らかを共有してもよい。
【0024】
上記ACSを構成する主要な部品は、ニッケルクラッドを有する316ステンレス鋼のパイプ等のパイプと、格納容器隔離弁と、補助熱交換器と、エアダクトと、支持構造体と、計装および診断器具とである。
【0025】
図2Aおよび
図2Bは、溶融燃料型原子核反応炉での使用に適合する一次冷却ループおよび上記ACSのレイアウトの実施形態を示している。図示の実施形態では、溶融燃料型反応炉202が、4つの一次冷却材回路に接続されて示されている。上記補助冷却システムは、上記4つの独立かつ並列の一次冷却材回路に統合されている。各回路は、一次冷却脚体210と、ACS脚体212と、上記一次冷却材を管で反応炉202に送入したり、反応炉202から送出したりする共有の反応炉冷却材出入部204とを含む。上記共有のため、反応炉出入部204は、上記一次冷却材ループおよび上記ACSループの両方の一部であると考えられる。
【0026】
上記一次冷却ループは、通常運転中に、反応炉202内の一次熱交換器206から上記パワー生成システム(図示せず)に熱エネルギを輸送する機能を有する。なお、反応炉202は、反応炉の格納容器内に存在してもよい。上記一次冷却ループは、反応炉出入部204および一次冷却脚体210から形成されている。図示の実施形態では、一次冷却脚体210は、熱交換器206と、反応炉202における通常の冷却動作を維持するために必要な冷却材管理装置とを含む。図示の実施形態では、各一次冷却脚体210は、特に、2つの熱交換器206と、冷却材用ポンプ220と、蒸気発生器214の形態であるパワーリカバリシステム(power recovery system)と、ドレインタンク216と、冷却材生成タンク218とを含む。また、蒸気再熱器226が設けられてもよい。上記パワーリカバリシステムは、加熱された一次冷却材からの熱エネルギを電気的、熱的、または機械的パワーに変換する。多数の種類のパワーリカバリシステムが知られているが、現在知られており、或いは将来開発される任意のシステムが使用されてもよい。
【0027】
図示の具体的な実施形態では、蒸気発生器214は、上記加熱された一次冷却材から水流にエネルギを伝達して蒸気を発生させ、該蒸気から電気的、熱的、または機械的パワーを発生させる。例えば、上記蒸気を用いて蒸気タービンサイクルを作動させて、電気を発生させる。ドレインタンク216は、上記回路の配管における低い場所に設けられ、これにより、上記回路における部品の整備、修理、または取替えの準備を行うために上記塩を上記回路から排出することができる。生成タンク218は、拡張チャンバ(chamber)として機能し、余分の冷却材を含む。この目的は、上記回路において、例え、動作温度範囲にわたって上記一次冷却材の体積が揺動したとしても、動作温度範囲の全体にわたって、上記冷却材を所望のレベルおよび圧力に維持することにある。
【0028】
上記ACSループは、幾つかの非通常運転のシナリオにおいて、一次熱交換器からの熱エネルギを、全体的にパッシブな(passive)物理プロセスを介して大気に輸送する機能を有する。図示の実施形態では、上記ACSループは、反応炉出入部204およびACS脚体212から形成されている。ACS脚体212は、補助熱交換器(AHX)222およびエアダクト224を含む。エアダクト224により、周囲の冷たい空気をAHX222に流すことができ、加熱された空気が上記大気中に排出(vent)されて、上記ACSループに流れる一次冷却材からの熱が除去される。AHX222は、上記ACSがアクティブ状態である場合、浮力で駆動される冷却材塩の自然循環を発生させるように配置される。上述のように、AHX222は、任意の好適な空冷式熱交換器デザインであってもよく、該デザインの例としては、フィン、フィンファン型熱交換器、プレートアンドシェル型熱交換器、またはシェルアンドチューブ型熱交換器が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
一実施形態では、ACS200は、反応炉の通常運転中にバイパスされてもよく、これにより、反応炉202によって発生した熱の可及的大半は、パワーを発生させるために利用できる。別の実施形態では、ACS200は、反応炉の運転条件に関係なく、継続使用の状態であってもよい。さらに別の実施形態では、ACS200によって、通常運転中には、一次冷却材の流れのみが低減され、さもなければ、上記空気への熱伝達の量が低減される一方、非通常運転中には、流れおよび/または熱伝達がより大きくなるような手法で、上記回路が設計されてもよい。例えば、パワーの損失の実施形態では、エアダクト224は、AHX222を通る空気の流れを増加させるために、自動的に開いてもよく、或いは、より完全に開いてもよい。
【0030】
上述のように、一実施形態では、ACS200は、運転時に完全にパッシブであるように設計されてもよい。すなわち、ACS200が与える冷却によって、外部に与えられるパワーあるいは制御の欠如が生じる。このような設計では、強制的な流れのイベントが消失している間、一次冷却材の流れは、反応炉220によって生成される熱によって駆動されてもよい。該熱の例としては、上記反応炉が臨界未満である場合に上記反応炉の上記燃料塩によって生成される崩壊熱などが挙げられる。さらに、一実施形態では、
冷却回路202は、パワー損失のイベントにおいて、上記一次ループから上記ACSループへの流れを方向付けるように設計されてもよい。例えば、反応炉出入部204と一次冷却脚体210との間のバルブは、上記ACSループを通る冷却材の流れを強制するパワーが消失する場合に自動的に閉じられてもよい。図示の実施形態では、上記ACSループからの流れが一次冷却脚体210に回ることを防止する逆止弁228が設けられてもよい。
【0031】
なお、例え、ACS200が緊急時に完全にパッシブに動作できるとしても、非緊急時では、ACS200は、所望時に、一次冷却材ループ206からの冷却効率を増大し、或いは、引き継ぐ(take over)ように制御可能であってもよい。そのようなことは、パワー生成が必要ない或いは所望されない時に発生するが、オペレータは、例えば運転開始中、運転停止中、低パワーが要求される期間中、または、検査中など、反応炉202を運転する必要性を未だ有している。従って、ACS200は、緊急熱除去システムとして機能と運転時における適応性との両方を提供することができる。
【0032】
一実施形態では、上記一次冷却材は、42MgCl
2+58NaCl等の溶融塩であり、全ての塩対向面(salt-facing surfaces)は、上記冷却材用塩としての使用に好適な材料で形成され、或いはコーティングされている。例えば、上記パイプは、該パイプの内面にニッケルクラッドを有する316ステンレス鋼であってもよく、運転開始中に凝固塩を溶融するために使用されるトレース加熱システムを有してもよい。一実施形態では、上記燃料の過冷却を回避するためにACS200がアクティブ状態となった場合に冷却材の流れを反応炉202の方に制御するために、逆止弁が設けられてもよい。非通常運転のシナリオにおいて格納容器バウンダリの一部として機能するために、隔離弁230が設けられてもよい。
【0033】
図2Aおよび
図2Bに示す実施形態は、独立した4つのACSループの使用を行っている。上記ACSループは、冗長性の観点から、それらの任意の1つが動作しなくなった場合に、全ての構造、システム、および部品をデザインの範囲内で維持するのに十分な冷却を依然として与えるようなサイズであってもよい。
【0034】
〔直接的反応炉補助冷却システム(DRACS)〕
上述のように、パワー故障の場合に、上記燃料塩を上記一次熱交換器を介して自然循環することにより、上記燃料塩に非常に多くの熱エネルギが蓄積されることを防止することができる。しかしながら、直接的反応炉補助冷却システム(DRACS)が設けられてもよい。一実施形態では、パワー故障の間、上記DRACSは、任意の上記部品に対する損傷を回避するのに十分な量の熱エネルギを上記反応炉から除去する責任を負ってもよい。DRACSは、上記燃料塩からの熱エネルギを上記一次冷却材に伝達し、続いて上記ACSを介して大気に伝達する1または複数の専用の二次熱交換器を含んでもよい。このようなDRACS熱交換器デザインの例は、米国仮出願第62/422,474号(出願日:2016年11月15日、タイトル「溶融燃料型原子核反応炉の熱管理」)にて見出すことができる。この米国仮出願は、引用により本願に組み込まれる。
【0035】
一実施形態では、上記DRACSシステムは、任意の一次熱交換器に加えて、
専用のDRACS熱交換器を上記反応炉プールにて有する。また、上記DRACSは、上記一次冷却材ループとは完全に独立した専用のDRACS冷却材ループを含んでもよい。一実施形態では、上記DRACSは、上記一次冷却材ループが完全に非動作状態となった場合に、上記反応炉からの期待される崩壊熱を除去できるサイズであってもよい。本願に記載された反応炉の実施形態は、上記一次熱交換器に加えて、1または複数のDRACS熱交換器を提供してもよい。上記DRACS熱交換器は、上記炉心の上記熱的中心と上記一次熱交換器よりも高いレベルに配置されてもよく、この場合、強制的な流れイベントの消失の間においてより重要となる上記自然循環のより大きな利点が得られる。例えば、一実施形態では、DRACS熱交換器は、上記一次熱交換器の上方であって、燃料塩の流れに設けられる。個々のDRACS熱交換器は、通常運転中に冷却化を付与するために使用されてもよいし、使用されなくてもよい。
【0036】
別の実施形態では、上記上部反射体にDRACS熱交換器を組み込んでもよい。この実施形態では、上記DRACS熱交換器は、上記上部反射体の内部に含まれてもよい。また、これに使用される冷却材は、米国出願第15/282,814号(出願日:2016年9月30日、タイトル「動的スペクトルシフト用中性子反射体の組立品」)においてより詳細に記載されているように、反射体または中性子吸収体として機能してもよい。一実施形態では、上記冷却材は、運転温度では固体であるが、或る高温に到達する上記炉心の頂部上にて、上記冷却材が溶融し、その地点で上記DRACSが動作を開始してもよい。例えば、鉛と、鉛−ビスマス合金(例えば、鉛−ビスマス共晶混合物44.5Pb−55.5Bi)、鉛−銅合金(例えば、モリブドカルコス(molybdockalkos))等の鉛合金が使用されてもよい。
【0037】
〔溶融燃料のポンプ構成〕
図3A〜
図3Cは、溶融燃料型反応炉デザインの実施形態を示しており、該デザインは、各一次熱交換器が燃料塩の流れを駆動するためのポンプを有している。図示の実施形態では、8つの一次熱交換器310が、中央の炉心304の周囲に離間して配置されている。
図3Aは、反応炉300の頂部から下方を見た平面図である。
図3Bは、反応炉300の中央部と2つの対向する熱交換器310とを切断した断面図である。
図3Cは、溶融燃料型反応炉300における8つの熱交換器の構成を示す斜視図であり、上記ポンプにおける上記羽根車、シャフト、およびモータを含む個々の内部部品を示すために一部が切り欠かれている。
【0038】
炉心304は、容器上蓋319によって頂部が規定され、中性子反射体308Bによって底部が規定されている。上記容器頭部は、反射体であってもよいし、反射体を組み込んだものであってもでもよい。側方では、炉心304は、8つの熱交換器310のシェルによって規定される。運転時には、炉心304からの加熱された燃料塩は、ポンプにより上記熱交換器に通され、ここで上記燃料塩は冷却され、冷却された燃料塩は炉心304に戻される。
【0039】
図示の実施形態では、炉心304および熱交換器310は、格納容器318内に存在する。一次格納容器318は、ライナまたはライナのセットによって規定され、該ライナまたはライナのセットは頂部開口型容器を形成している。冷却された上記一次冷却材は、上記頂部から上記容器318に出入する。これにより、上記格納容器を一体成形かつ非貫通とすることが可能である。上記一次冷却材ループは、流入した一次冷却材が格納容器318の少なくとも一部を最初に冷却するように、反応炉300に統合される。図示の実施形態では、上記冷却材は、一次冷却材入口通路330において、格納容器318の内面の隣りを或る程度の距離移動した後、一次熱交換器310の底部に移動する。上記冷却材は、一次熱交換器310の頂部を出て、それから、格納容器318の外部に移動して、パワー生成システム(図示せず)に移動する。
【0040】
図示の実施形態では、燃料塩は、熱交換器310の上方であって上部通路に配置された8つの別々の羽根車312Aによって、上記燃料ループを介して駆動される。羽根車312Aの位置では、上記通路の両側は、羽根車312Aを補完して効率的な流れを得るように形成されたケーシングまたはポンプ本体として機能する。図示の実施形態では、羽根車312Aは、上記熱交換器の上部管板332と、炉心304の頂部から水平方向の上記通路の部分との間に存在する。
【0041】
各羽根車312Aは、反応炉300の上方に配置されたモータ312Cに、回転シャフト312Bによって接続される。これにより、上記ポンプの電子部品は、高中性子束および高温の領域から外される。羽根車312Aが取り外され、整備され、或いは取り替えられてもよいように、1または複数のアクセスポートが容器上蓋319に設けられてもよい。
【0042】
羽根車312Aおよびシャフト312Bは、上記燃料ループにおける一次熱交換器310の燃料入口に存在するであろう高い温度および中性子束の燃料塩の環境に関して好適な任意の材料から形成されてもよい。例えば、燃料対向部品は、1または複数のモリブデン合金、1または複数のジルコニウム合金(例えばZIRCALOY(登録商標))、1または複数のニオブ合金、1または複数のニッケル合金(例えばHASTELLOY(登録商標)N)、高温フェライト、マルテンサイト、またはステンレスの鋼、等から形成されてもよい。羽根車312Aおよびシャフト312Bは、腐食から保護するため、燃料塩対向表面上にクラッドが設けられてもよい。その他の保護オプションの例としては、保護用コーティングが挙げられる。一実施形態では、クラッドは、モリブデンであってもよく、該モリブデンは、ベースの羽根車またはシャフトの材料と共に共有押出し成形される。別のクラッド材料の例としては、モリブデン合金、ニッケル、ニッケル合金、およびモリブデン−レニウム合金が挙げられる。
【0043】
図4は、溶融燃料型反応炉のデザインの別の実施形態を示している。該デザインは、内部反射体408Cが設けられている以外は、
図3A〜
図3Cと同様である。図示の実施形態では、内部反射体408Cは、炉心404と熱交換器410とを離間するように設けられている。これにより、上記熱交換器の部品を通過し、同様に、羽根車412Aおよびシャフト412Bを通過する中性子束が減少する。その他の点では、反応炉400は、運転および構成において、
図3A〜
図3Cの上記反応炉と同様である。
【0044】
図5、
図6、および
図7は、別のポンプの構成の実施形態を示しており、該構成では、羽根車が底部に設置されている。底部に設置された羽根車の構成では、上記羽根車は、上記燃料ループにおいて、上記一次熱交換器の下方における冷却された燃料塩の出口通路に配置される。ここで、上記出口通路は、上記羽根車に関するケーシングまたは本体として作用する。この構成において、上記羽根車は、上述の
図3A〜
図3Cおよび
図4にて示されるような頂部に設置された構成よりも低い温度環境下にある。上記実施形態によると、
上記羽根車と、該羽根車のすぐ近くに隣り合う上記シャフトの一部との摩耗が低減され、これにより、全体のデザインにおける新たな複雑性が容認されてもよい。
【0045】
図5は、炉心504を有する反応炉500を示しており、炉心504は、上部反射体508A、下部反射体508B、および内部反射体508Cによって規定される。図示の実施形態では、下部反射体508Bは、追加の保護のため、側方に伸びて、格納容器518の側部を上方に伸びている。一次熱交換器510は、シェル側の冷却材の流れ(図示の点線514)を有するようになっており、該冷却材は、冷却材入口通路530を介して流入し、加熱された冷却材は、冷却材出口通路536から流出する。図示の実施形態では、燃料は、炉心504から内部反射体508Cの上方の上部通路を通り、入口管板532を通って熱交換器510に入るように流れる(図示の破線506)。チューブセットを通過した後、今や冷却された燃料は、下部管板531を流出し、内部反射体508Cの下方の下部通路を介して炉心504に戻るように流れる。
【0046】
図5では、燃料流の羽根車512Aは、シェル側冷却材の流れを有するようになっている一次熱交換器510の上記燃料塩出口の下方に配置されている。羽根車512Aは、シャフト512Bに取り付けられ、シャフト512Bは、容器上蓋(図示せず)および上部反射体508Aの上方の頂部設置モータ512Cに接続される。本実施形態では、シャフト512Bは、熱交換器510を貫通している。これにより、熱交換器510の複雑性が増加してもよい。一実施形態では、羽根車512Aおよびシャフト512Bは、熱交換器510に統合されてもよく、この場合、熱交換器/羽根車およびシャフト組立品を1ユニットとして取り外すことによって、整備が実現される。別の実施形態(図示せず)では、シャフト512Bは、熱交換器を貫通しなくてもよく、熱交換器510の外側以外に隣り合うように配置されればよい。
【0047】
図6は、
図5と同様の反応炉600を示している。図示の実施形態では、反応炉600は炉心604を有し、炉心604は、上部反射体608A、下部反射体608B、および内部反射体608Cによって規定される。また、下部反射体608Bは、追加の保護のため、側方に伸びて、格納容器618の側部を上方に伸びている。一次熱交換器610は、シェル側の冷却材の流れ(図示の点線614)を有するようになっており、該冷却材は、冷却材入口通路630を介して流入し、加熱された冷却材は、冷却材出口通路636から流出する。図示の実施形態では、燃料は、炉心604から内部反射体608Cの上方の上部通路を通り、入口管板632を通って熱交換器610に入るように流れる(図示の破線606)。チューブセットを通過した後、今や冷却された燃料は、下部管板631を流出し、内部反射体608Cの下方の下部通路を介して炉心604に戻るように流れる。
【0048】
図6では、羽根車612Aは、上記燃料塩出口の下方に依然として配置され、シャフト612Bに取り付けられている。しかしながら、
図6では、シャフト612Bは、下方に伸びて、格納容器618の外側に配置された底部設置モータ612Cに電磁カプラ650によって接続される。本実施形態では、シャフト612Bは、格納容器618を貫通してはいない。これにより、格納容器618を一体の容器として維持する以外は、該格納容器の構成の複雑性を増加することができる。
【0049】
図7は、
図5と同様の反応炉700を示している。図示の実施形態では、反応炉700は炉心704を有し、炉心704は、上部反射体708A、下部反射体708B、および内部反射体708Cによって規定される。また、下部反射体708Bは、追加の保護のため、側方に伸びて、格納容器718の側部を上方に伸びている。一次熱交換器710は、シェル側の冷却材の流れ(図示の点線714)を有するようになっており、該冷却材は、冷却材入口通路730を介して流入し、加熱された冷却材は、冷却材出口通路736から流出する。図示の実施形態では、燃料は、炉心704から内部反射体708Cの上方の上部通路を通り、入口管板732を通って熱交換器710に入るように流れる(図示の破線706)。チューブセットを通過した後、今や冷却された燃料は、下部管板731を流出し、内部反射体708Cの下方の下部通路を介して炉心704に戻るように流れる。
【0050】
図7では、羽根車712Aは炉心704に配置されている。本実施形態では、冷却された燃料塩通路のそれぞれには、炉心704の底部の近くに配置された羽根車712Aが設けられている。
図6のように、羽根車712Aはシャフト712Bを有し、シャフト712Bは、下方に伸びて、格納容器718の外側に配置された底部設置モータ712Cに電磁カプラ750によって接続される。本実施形態では、シャフト712Bは、格納容器718を貫通してはいない。
【0051】
別の実施形態では、各一次熱交換器における個々の独立したポンプに代えて、幾つかまたはそれ以上のポンプが設けられてもよい。例えば、
図7に示す反応炉700の別の実施形態では、単一の羽根車718Aが炉心704の底部に設けられてもよく、この場合、2つまたはそれ以上の熱交換器710における冷却された燃料出口からの流れが引き出される。
【0052】
図8は、ポンプの構成のさらに別の実施形態を示しており、該構成では、単一の羽根車812Aが炉心804内に配置されている。図示の実施形態では、単一の羽根車840は、反応炉800の中心軸の周りを回転する。図示の実施形態では、羽根車840は、多数のブレード842、ハブ844、およびシャフト812Bを含んでおり、ハブ844からブレード842が側方に伸び、ハブ844にシャフト812Bが接続される。また、シャフト812Bが回転すると、上記ハブおよび上記ブレードが回転して、図示の矢806のように、反応炉800内の燃料塩の循環を駆動する。図示の実施形態では、ブレード842は、ハブ844から、上記炉心の側面と隣り合う地点まで伸びており、上記炉心の側面は、この場合、内部反射体808Cによって規定される。図示の実施形態では、上記炉心の側面には、ブレード842の端部について補完のケーシング表面が提供され、その結果、炉心804を通る溶融燃料の流れがより効率的に駆動される。
【0053】
1または複数のディフューザ848が上記上部通路のそれぞれに設けられて、塩を熱交換器810に送る場合に、より一様な塩の流れが作り出されてもよい。上記ディフューザは、上記燃料ループ内の或る場所において流れを方向付けるバッフルと同じ簡便なものであってもよいし、或いは、バッフル、オリフィスプレート、その他の静的要素を含む、より複雑なセットであってもよい。
【0054】
別の実施形態(図示せず)では、上記羽根車は、
図6および
図7を参照して説明したように底部に設置されており、シャフト846は、上記ハブから上方ではなく下方に伸びて、反応炉格納容器818の下方における電磁的な接続によって回転する。
【0055】
図9は、さらに別のポンプ構成を示しており、該ポンプ構成では、上記羽根車が、一次熱交換器における2つのセクションの間の中間に配置されている。図示の実施形態では、反応炉900が設けられ、該反応炉900は、炉心904を格納する上部反射体908A、下部反射体908B、および1または複数の熱交換器910を有し、これら全てが格納容器918内に含まれる。内部反射体(図示せず)は、実施形態に依存して、炉心904および熱交換器910の間と、熱交換器910および冷却材の入口通路930の間との一方または両方に設けられてもよいし、設けられなくてもよい。図示の実施形態では、燃料塩は、図示の破線906のように、熱交換器910のシェルを通って循環し、冷却材は、図示の点線914のように、チューブセットにおけるチューブを通過する。
【0056】
熱交換器910は、中間壁928によって2つのセクション910A・910Bに分割される。上記チューブセットは、上記冷却材の入口である下部管板931から、上記冷却材の出口である上部管板932まで、途切れることなく伸びている。図示の実施形態では、加熱された燃料塩の流れは、熱交換器910の上部セクション910Aにおける上記チューブセットを通り過ぎており、上部セクション910Aは、炉心904に対し開口している。また、上記シェルにおける対向する側面の少なくとも一部が開口しており、これにより、上記燃料塩が、羽根車912Aを含むポンプ通路912Dに流れ込む。
【0057】
羽根車912Aは、シャフト912を介して、上述のようなモータ(図示せず)に接続される。羽根車912Aの回転により、上記燃料塩は、熱交換器シェルの下部セクション910Bに入り、上記チューブセットを通り抜け、上記シェルの底部から別の開口部を介して炉心904に出るように駆動される。また、1または複数のバッフル929が、上記チューブセットを通り抜ける上記燃料塩の流れの経路を定めるために設けられてもよい。
【0058】
図9に示す領域934は、熱交換器910の上記シェル内の領域であって、炉心904における燃料塩のレベルより上方の領域である。この領域は、貫通するチューブ以外は、例えば反射体で満たされるように中身が詰まっていてもよく、或いは、不活性ガスで満たされた上部空間であってもよい。
【0059】
図9に示す実施形態では、羽根車912Aは、上記熱交換器内であり、すなわち、熱交換器910の上記シェル内である。羽根車912Aは、高い中性子束の領域から離間して配置され、また、反応炉900における最も高い温度に曝されることがない。羽根車912Aおよびシャフト912Bは、熱交換器910に統合されて、これら全てが、整備または置換えのために1組立品として取り外されてもよい。異なる熱交換器デザインを用いる別の実施形態では、上記熱交換器は、1または複数の羽根車を上記熱交換器内に含むように同様に適合されてもよい。例えば、プレートアンドフレーム型熱交換器では、羽根車は、中プレート伝達経路の隅部内に配置されてもよく、或いは、熱交換用プレートの積層体内の或るプレートに設けられることもできる。
【0060】
添付の請求の範囲に関係なく、本開示は下記の項目によっても規定される。
【0061】
<1>溶融燃料型原子核反応炉であって、
炉心と、核分裂によって発生する熱を冷却材に伝達するようになっている1または複数の一次熱交換器とを、格納容器内に含む燃料ループと、
上記1または複数の一次熱交換器と、パワーリカバリシステムであって、上記冷却材を循環させて、上記1または複数の熱交換器から上記パワーリカバリシステムにエネルギを伝達するようになっているパワーリカバリシステムとを含む一次冷却材ループと、
上記冷却材から周囲の空気にエネルギを伝達し、該空気を大気中に排出するようになっている1または複数の補助熱交換器を含む補助冷却システムとを備えており、
上記補助冷却システムは、上記一次冷却材ループから上記1または複数の補助熱交換器に冷却材を循環させるようになっている、溶融燃料型原子核反応炉。
【0062】
<2>上記炉心の熱が過剰になると、上記溶融燃料型原子核反応炉における上記冷却材の密度差により、上記補助熱交換器を通る上記冷却材の流れが生じる、上記項目に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0063】
<3>上記補助熱交換器を通る上記冷却材の流れが生じるのに十分過剰な熱が上記炉心に存在する場合、上記補助冷却システムは、上記一次冷却材ループから上記1または複数の補助熱交換器に冷却材を循環する、上記項目の何れかに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0064】
<4>上記燃料ループは、上記格納容器および容器上蓋内に格納されており、上記格納容器には貫通孔が存在しない、項目1、または項目1に従属する何れかの項目に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0065】
<5>上記冷却材は、上記容器上蓋における複数の貫通孔を介して上記一次熱交換器に流れ、上記一次熱交換器から上記貫通孔を介して流れる、項目4に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0066】
<6>溶融燃料型原子核反応炉であって、
格納容器および容器上蓋と、
上記格納容器および容器上蓋内に格納された炉心であって、上部領域および下部領域を有する炉心と、
上記格納容器および容器上蓋内に格納された熱交換器であって、上記炉心の上記上部領域に上部通路によって流体的に接続され、かつ、上記炉心の上記下部領域に下部通路によって流体的に接続された熱交換器と、
上記格納容器および容器上蓋内に格納された羽根車であって、上記格納容器および容器上蓋の外部に配置されたモータによって回転可能なシャフトに取り付けられた羽根車とを備えており、
上記炉心、上記熱交換器、上記上部通路、および上記下部通路によって燃料ループが形成されており、
上記羽根車は、上記燃料ループ内に配置され、上記モータが回転すると、上記燃料ループを介して流体を循環させる、溶融燃料型原子核反応炉。
【0067】
<7>上記シャフトは、上記容器上蓋を貫通し、該容器上蓋の上方に配置されたモータに上記羽根車を回転可能に接続する、項目6に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0068】
<8>上記シャフトは、上記格納容器および容器上蓋内に格納されるが、上記格納容器および容器上蓋を貫通せず、かつ、上記シャフトは、電磁カプラを介して上記モータに回転可能に接続される、項目6に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0069】
<9>上記羽根車は、上記上部通路に配置されている、項目6、7、または8の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0070】
<10>上記羽根車は、上記炉心の上部領域に配置されている、項目6、7、または8の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0071】
<11>上記羽根車は、上記下部通路に配置されている、項目6、7、または8の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0072】
<12>上記羽根車は、上記熱交換器内に配置されている、項目6、7、または8の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0073】
<13>上記羽根車は、上記炉心の下部領域に配置されている、項目6、7、または8の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0074】
<14>上記熱交換器は、上記格納容器および容器上蓋内に格納された、独立した複数の熱交換器の1つである、項目6〜13の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0075】
<15>独立した複数の熱交換器のそれぞれには羽根車が設けられている、項目10に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0076】
<16>上記格納容器および容器上蓋内に格納された羽根車が1つのみ存在する、項目10に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0077】
<17>上記熱交換器は、シェルアンドチューブ型熱交換器、プレート型熱交換器、プレートアンドシェル型熱交換器、プリント回路型熱交換器、および、プレートフィン型熱交換器の中から選択される、項目6〜13の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0078】
<18>上記羽根車および熱交換器は、1組立品であり、上記反応炉から上記容器上蓋を介して1ユニットとして取り外し可能である、項目12に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0079】
<19>上記燃料ループに少なくとも1つのディフューザをさらに備える、項目6〜18の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0080】
<20>溶融燃料型原子核反応炉であって、
格納容器および容器上蓋と、
該格納容器および容器上蓋内に格納された炉心であって、上部領域および下部領域を有する炉心と、
上記格納容器および容器上蓋内に格納された複数の熱交換器であって、それぞれが、上記炉心の上記上部領域に流体的に接続された燃料入口と、上記炉心の上記下部領域に流体的に接続された燃料出口とを有する複数の熱交換器と、
上記炉心内の羽根車であって、上記格納容器および容器上蓋の外部に配置されたモータによって回転可能なシャフトに取り付けられた羽根車とを備えており、
上記羽根車は、上記モータが回転すると、上記炉心から上記複数の熱交換器を介して燃料を循環させる、溶融燃料型原子核反応炉。
【0081】
<21>上記複数の熱交換器は、上記炉心の周囲に分散配置されている、項目20に記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0082】
<22>上記複数の熱交換器における燃料入口のそれぞれは、関連の上部通路によって上記炉心の上部領域に流体的に接続され、上記複数の熱交換器における燃料出口のそれぞれは、関連の下部通路によって上記炉心の下部領域に流体的に接続されている、項目20または21の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0083】
<23>上記羽根車は、上記炉心の上部領域に配置されている、項目20〜22の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0084】
<24>上記羽根車は、上記炉心の下部領域に配置されている、項目20〜22の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0085】
<25>上記炉心は、水平方向の断面が円形であり、中心軸が上記羽根車の位置にあり、該羽根車は、ハブが上記炉心の中心軸に配置されている、項目20〜24の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0086】
<26>上記羽根車は、1または複数のブレードを含んでおり、該ブレードは、ハブから、上記炉心の一側面に隣り合う地点まで伸びている、項目20〜25の何れか1つに記載の溶融燃料型原子核反応炉。
【0087】
本願に記載のシステムおよび方法は、上述の目的および利点と共に、それらに本来備わっている目的および利点を達成するために良好に適合されることは、明らかであろう。本明細書内の上記方法および上記システムは、多くの様式にて実施されてもよく、上述の例示された実施形態および実施例によって限定されるべきではないことが、当業者であれば、理解されるであろう。この点に関して、本願に記載の種々の実施形態における任意の数の特徴点を組み合わせて単一の実施形態としてもよいし、本願に記載の特徴点の全てに比べて、より少ない或いはより多い特徴点を有する別の実施形態が可能である。
【0088】
種々の実施形態を本開示の目的のために説明してきたが、本開示によって予期される範囲内で好適な種々の変更および修正がなされてもよい。例えば、電磁カプラは、上記容器上蓋における貫通数を低減するために、頂部設置型モータで使用されることもできる。この場合、上記シャフトは、例えば
図3A〜
図3Cに示すように、上記容器上蓋を貫通する必要はない。当業者であれば彼らによって容易に示唆され、かつ、本開示の精神に包含されるその他の莫大な変更がなされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】溶融燃料型反応炉の基本構成の幾つかをブロック図の形態で示す図である。
【
図2A】一次冷却ループおよび補助冷却システムのレイアウトの実施形態を示す図である。
【
図2B】一次冷却ループおよび補助冷却システムのレイアウトの実施形態を示す図である。
【
図3A】溶融燃料型反応炉のデザインの実施形態であって、各一次熱交換器について、燃料塩の流れを駆動するためのポンプを有する実施形態を示す図である。
【
図3B】溶融燃料型反応炉のデザインの実施形態であって、各一次熱交換器について、燃料塩の流れを駆動するためのポンプを有する実施形態を示す図である。
【
図3C】溶融燃料型反応炉のデザインの実施形態であって、各一次熱交換器について、燃料塩の流れを駆動するためのポンプを有する実施形態を示す図である。
【
図4】溶融燃料型反応炉のデザインの別の実施形態であって、内部反射体が設けられている以外は
図3A〜
図3Cの実施形態と同様である実施形態を示す図である。
【
図5】別のポンプ構成の実施形態であって、羽根車が底部に設置されている実施形態を示す図である。
【
図6】別のポンプ構成の実施形態であって、羽根車が底部に設置されている実施形態を示す図である。
【
図7】別のポンプ構成の実施形態であって、羽根車が底部に設置されている実施形態を示す図である。
【
図8】ポンプ構成のさらに別の実施形態であって、単一の羽根車が炉心内に配置された実施形態を示す図である。
【
図9】さらに別のポンプ構成であって、羽根車が一次熱交換器における2つのセクションの間の中間に配置されたポンプ構成を示す図である。