特許第6961626号(P6961626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961626
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ポリマー電解質膜およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20211025BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 27/20 20060101ALI20211025BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20211025BHJP
   C08J 7/12 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   H01M10/0565
   C08L27/16
   C08L33/12
   C08L27/20
   C08J5/18CEW
   C08J7/12 ACEY
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-563893(P2018-563893)
(86)(22)【出願日】2017年4月12日
(65)【公表番号】特表2019-521479(P2019-521479A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】CN2017080247
(87)【国際公開番号】WO2017211126
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2020年3月16日
(31)【優先権主張番号】201610398348.X
(32)【優先日】2016年6月7日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518426387
【氏名又は名称】シャンハイ・エネルギー・ニュー・マテリアルズ・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ENERGY NEW MATERIALS TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】チョン、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】デン、ホングイ
(72)【発明者】
【氏名】シオン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、リフア
(72)【発明者】
【氏名】ホー、ファンボー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ウェイチアン
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103682423(CN,A)
【文献】 特開2012−221565(JP,A)
【文献】 特開2015−028942(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104177738(CN,A)
【文献】 国際公開第2010/098497(WO,A1)
【文献】 特開2010−257689(JP,A)
【文献】 特開2001−229976(JP,A)
【文献】 J. Nunes-Pereira et al.,Microporous membranes of NaY zeolite/poly(vinylidene fluoride-trifluoroethylene) for Li-ion battery separators,Journal of Electroanalytical Chemistry,ELSEVIER,2012年11月24日,689,223-232
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0565
C08L 27/16
C08L 33/12
C08L 27/20
C08J 5/18
C08J 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー電解質膜の製造方法であって、前記方法は、以下の工程、
(1) モレキュラーシーブ材料、ポリマーおよび溶媒を混合してスラリーを得る工程であって、前記モレキュラーシーブ材料はナノ5Aモレキュラーシーブ、10Xモレキュラーシーブ、およびY型モレキュラーシーブからなる群より選択される1以上であり、前記ナノ5AモレキュラーシーブがCa34Na28[(AlO96(SiO96]・216HOの分子式を持ち、前記10XモレキュラーシーブがCa35Na16[(AlO86(SiO106]・264HOの分子式を持ち、前記Y型モレキュラーシーブがNa56[(AlO56(SiO136]・264HOの分子式を持ち、前記モレキュラーシーブ材料対前記ポリマーの重量比が1:20ないし1:200であり、前記ポリマーがポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、またはこれらの混合物から選択される工程;
(2) 前記スラリーをベースフィルム上にコーティングして湿潤膜を形成する工程であって、前記ベースフィルムはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレンテレフタレート不織布から選択され、前記ベースフィルムのイオン伝導性が1.1×10−4Scm−1以上である工程;
(3) 前記湿潤膜を乾燥して乾燥膜を得る工程;および
(4) 前記乾燥膜をリチウム塩電解質溶液に浸漬し、取り出してポリマー電解質膜を得る工程
を含む、製造方法。
【請求項2】
前記モレキュラーシーブ材料は、前記工程(1)で得られたスラリーの総重量に基づいて、0.1−3.3重量%の量で存在する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ポリマーは、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))とポリメチルメタクリレート(PMMA)との混合物であり、ポリビニリデンフルオリドおよびヘキサフルオロプロピレンのコポリマー:ポリメチルメタクリレートの重量比が1:0.1ないし1:5である、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒は、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、およびイソプロパノールからなる群より選択される1以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記リチウム塩電解質溶液中のリチウム塩溶質の濃度が0.5−1.5モル/Lである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
ポリマー電解質膜であって、ベースフィルム層とコーティング層とを含み、前記コーティング層はモレキュラーシーブ材料と、ポリマーと、リチウム塩電解質溶液とを含み、前記モレキュラーシーブ材料はナノ5Aモレキュラーシーブ、10Xモレキュラーシーブ、およびY型モレキュラーシーブからなる群より選択される1以上であり、前記ナノ5AモレキュラーシーブがCa34Na28[(AlO96(SiO96]・216HOの分子式を持ち、前記10XモレキュラーシーブがCa35Na16[(AlO86(SiO106]・264HOの分子式を持ち、前記Y型モレキュラーシーブがNa56[(AlO56(SiO136]・264HOの分子式を持ち、前記モレキュラーシーブ材料対前記ポリマーの重量比が1:20ないし1:200であり、前記ポリマーがポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、またはこれらの混合物から選択され、前記ベースフィルムはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレンテレフタレート不織布から選択され、且つ、前記ベースフィルムのイオン伝導性が1.1×10−4Scm−1以上である、ポリマー電解質膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン二次電池に関し、特にポリマー電解質膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質を用いるリチウムイオン二次電池は、それらの高い比エネルギーのため、モバイル通信、ポータブルコンピュータおよび種々のモバイル電子端末に広く用いられている。現在、二種類のリチウムイオン電池があり、一方は液体有機電解質を用い、他方は固体またはゲルポリマー電解質を用いている。後者のリチウムイオン電池は、製造プロセスの点で簡単であり、形状柔軟性(可変な形状)を有し、1mm未満の厚さをもつ電池にすることができて液漏れがなく、長い保管寿命を有するなどである。本発明において、リチウムイオン電池および金属リチウム電池を合わせてリチウム電池という。電気自動車および動力工具の発展とともに、人は、リチウムイオン電池の性能、すなわち高いエネルギー密度、高い出力、長いサイクル寿命、良好な安全性および小さいサイズに対するより高い要求を提唱している。明らかに、第一世代の液体リチウムイオン電池はもはや要求を満たすことができない。近年、新世代のポリマーリチウムイオン二次電池が、リチウム電池の分野において研究の焦点になっている。ポリマー電解質は、ポリマー材料の特性である、軽量、良好な弾性、容易な膜形成などの特性を有し、したがって軽量、安全性、高効率および環境保護を要求する、化学電源の開発トレンドにある程度合致する。したがって、ポリマー電解質は、近年における化学電源の研究および開発の焦点になってきている。
従来技術では、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、ならびにリチウム塩LiPF6、プロピレンカーボネート(PC)およびエチレンカーボネート(EC)の混合物を用いてゲルポリマー電解質を製造している。また、ポリアクリロニトリル、ポリビニルクロリド、およびポリエチレンオキシド(PEO)のコロイド状ポリマー電解質も、リチウム電池に用いられている。しかし、これらは、常温での導電性に劣り、製造プロセスにおいて比較的複雑であり、または大気の湿度を必要とし、大電流下での電池の充電/放電特性が最新の電気器具の要求を満たすことができない。
【0003】
フッ素含有ポリマーは一般的に、良好な機械的性質および電気化学的安定性を有する。現在、フッ素含有ゲルポリマー電解質に関する報告は主に、マトリックスとしてポーラスポリビニリデンフルオリドを用い、電解質溶液で含浸されたポーラス電解質は、高い充放電率を有し、ポーラスポリオレフィンセパレータよりも、良好な電気化学的安定性および良好な機械的性質を示す。これは電解質溶液に対して劣った親和性を有し、しかがって劣った電解質吸収率および劣ったイオン伝導性を有する。さらに、電解質溶液が、電池の使用中に漏れがちである。
【0004】
したがって、この分野において、ポリマー電解質材料を製造する技術、ならびに良好な電解質吸収率および良好なイオン伝導性を有するその膜を提供する、緊急の必要性がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、新規なポリマー電解質膜の製造方法を提供することをめざしている。
【0006】
第1の態様において、本発明は、ポリマー電解質膜の製造方法を提供し、前記方法は以下の工程を含む:
(1) モレキュラーシーブ材料、ポリマーおよび溶媒を混合してスラリーを得る、
(2) 前記スラリーをベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成する、
(3) 前記湿潤膜を乾燥して乾燥膜を得る、および
(4) 前記乾燥膜をリチウム塩電解質溶液に浸漬し、取り出してポリマー電解質膜を得る。
【0007】
一実施形態において、モレキュラーシーブ材料は、ナノ5Aモレキュラーシーブ、10Aモレキュラーシーブ、およびY型モレキュラーシーブからなる群より選択される1以上である。
【0008】
一実施形態において、前記モレキュラーシーブ材料の前記ポリマーに対する重量比は、好ましくは1:20ないし1:200、より好ましくは1:30ないし1:100、最も好ましくは1:40ないし1:60である。
【0009】
別の好ましい実施形態において、前記モレキュラーシーブ材料は、工程(1)において得られたスラリーの総重量に基づいて、0.1-3.3重量%の量で存在する。
【0010】
別の好ましい実施形態において、前記ポリマーは、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、またはこれらの混合物から選択される。
【0011】
別の好ましい実施形態において、前記ポリマーは、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))とポリメチルメタクリレート(PMMA)との混合物であり、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP)):ポリメチルメタクリレート(PMMA)の重量比は、1:0.1ないし1:5、より好ましくは1:0.2ないし1:4、最も好ましくは1:0.3ないし1:3である。
【0012】
別の好ましい実施形態において、前記溶媒は、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、およびイソプロパノールからなる群より選択される1以上である。
【0013】
別の好ましい実施形態において、リチウム塩電解質溶液中のリチウム塩溶質の濃度は、0.5-1.5モル/Lである。溶質は好ましくはリチウムヘキサフルオロホスフェートである。
【0014】
別の好ましい実施形態において、リチウム塩電解質溶液の溶媒は、エチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートであり、エチレンカーボネート対ジメチルカーボネートの体積比は1:1ないし1:2である。
【0015】
第2の態様において、本発明は、ベースフィルム層とコーティング層とを含み、前記コーティング層がモレキュラーシーブ材料と、ポリマーと、リチウム塩電解質溶液とを含む、ポリマー電解質膜を提供する。前記ポリマーは、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、またはこれらの混合物から選択され、モレキュラーシーブ材料対ポリマーの重量比は、1:20ないし1:200である。
【0016】
したがって、本発明は、ポリマー電解質材料を製造する技術、ならびに良好な電解質吸収率および良好なイオン伝導性を有するその膜を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明者らは、広範で集中的な研究を通して、マイクロポーラス構造を有する無機化合物(たとえばモレキュラーシーブ材料)とポリマーとを用いてポーラス膜を形成し、ポーラス膜のマイクロポーラスネットワーク中へ電解質溶液を浸透させることによって、良好な液体吸収率および優れたイオン伝導率を有するポリマー電解質膜が得られることを見出した。これに基づいて、本発明を完成させた。
【0018】
本発明において、「ベースフィルム」とは、PP、PE、またはPETベースフィルムまたはPET不織布ベースフィルムをいう。
【0019】
PET(ポリエチレンテレフタレート、化学式COC6H4COOCH2CH2O)は結晶性飽和ポリエステルであり、これは乳白色または黄色で、滑らかでつやのある表面をもつ高結晶性ポリマーである。不織布(Non Woven FabricまたはNonwoven Clothも不織布である)は、ポリマーチップ、短繊維またはフィラメントを用いて機械的に繊維のウェブを形成することによって直接作製されるか、または繊維を気流により通過させた後、水流交絡、二ードリングまたは熱ロールさせ、最終的にコンディショニングすることによって作製される。PET不織布は、原材料としてPET材料アグリゲートを用いて製造される。PET材料は、引張強度が35-52MPa、曲げ弾性率が200-10343MPa、融点が254-265℃、密度が1.27-1.67g/cm3、および相対分子質量が20000-30000である。
【0020】
PE(ポリエチレン)は、エチレンを重合することによって得られる熱可塑性樹脂である。ポリエチレンは、主に薄いフィルムなどの製造に広く用いられている。PE材料は、引張強度が30-42MPa、曲げ弾性率が500-760MPa、融点が130-136℃、密度が0.93-0.96g/cm3、および相対分子質量が100万ないし400万である。
【0021】
PP(ポリプロピレン)は、プロピレンを重合することによって得られる熱可塑性樹脂である。PPベースフィルムは、ポリプロピレンフィルムである。PP材料は、引張強度が21-39MPa、曲げ弾性率が800MPa、融点が164-170℃、密度が0.89-0.91g/cm3、および相対分子質量が80000-150000である。
【0022】
本発明におけるモレキュラーシーブ材料は、ナノ5Aモレキュラーシーブ、10Xモレキュラーシーブ、およびY型モレキュラーシーブからなる群より選択される。
【0023】
5Aモレキュラーシーブは、Ca34Na28[(AlO2)96(SiO2)96]・216H2Oの分子式をもつ化学物質である。
【0024】
10Xモレキュラーシーブは、Ca35Na16[(AlO2)86(SiO2)106]・264H2Oの分子式をもつ化学物質である。
【0025】
Y型モレキュラーシーブは、Na56[(AlO2)56(SiO2)136]・264H2Oの分子式をもつ化学物質である。
【0026】
本発明によるポリマー電解質膜の製造方法は以下の工程を含む:
工程1:モレキュラーシーブ材料、ポリマーおよび溶媒を混合してスラリーを得る;
工程2:前記スラリーをベースフィルム上にコーティングして湿潤膜を形成する;
工程3:前記湿潤膜を乾燥して乾燥膜を得る;および
工程4:前記乾燥膜をリチウム塩電解質溶液に浸漬し、取り出して本発明によるポリマー電解質膜を得る。
【0027】
上記の工程1において、モレキュラーシーブ材料対ポリマーの重量比は、好ましくは1:20ないし1:200、より好ましくは1:30ないし1:100、最も好ましくは1:40ないし1:60である。モレキュラーシーブ材料は、スラリーの総重量に基づいて、0.1-3.3重量%の量で存在する。
【0028】
本発明の実施形態において、上記の工程1における混合は、モレキュラーシーブ材料およびポリマーを溶媒に溶解し、十分に撹拌して、得られるスラリーを一様にする。
【0029】
上記の工程1におけるモレキュラーシーブ材料は、ナノ5Aモレキュラーシーブ、10Xモレキュラーシーブ、およびY型モレキュラーシーブからなる群より選択される。
【0030】
上記の工程1におけるポリマーは、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、またはこれらの混合物から選択される。ポリマーは、好ましくは、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))とポリメチルメタクリレート(PMMA)との混合物であり、ポリビニリデンフルオリドおよびヘキサフルオロプロピレンのコポリマー:ポリメチルメタクリレートの重量比が1:0.1ないし1:5、好ましくは1:0.2ないし1:4、より好ましくは1:0.3ないし1:3である。
【0031】
上記の工程1における溶媒は、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、およびイソプロパノールからなる群より選択される。溶媒は、好ましくは、N,N-ジメチルアセトアミドである。
【0032】
上記の工程2におけるベースフィルムは、PP、PE、PETベースフィルムおよびPET不織布ベースフィルムを含み、PET不織布ベースフィルムが好ましい。
【0033】
本発明の実施形態においては、上記の工程3において、湿潤膜を85-95℃で10-20分間乾燥させる。
【0034】
本発明の実施形態においては、上記の工程4において、浸漬を乾燥雰囲気中で25-35秒間行う。
【0035】
本発明の好ましい実施形態においては、上記の工程4において、膜を取り出した後、膜の表面上の液体を取り除く。
【0036】
上記の工程4において、リチウム塩電解質溶液中のリチウム塩溶質の濃度は0.5-1.5モル/Lであり、リチウム塩溶質は好ましくはヘキサフルオロホスフェートであり、溶媒はエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との混合溶媒である。
【0037】
本発明の好ましい実施形態においては、リチウム塩電解質溶液をLiPF6/(EC+DMC)と略すことがあり、ここでEC+DMCはエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒を表し、エチレンカーボネート(EC)対ジメチルカーボネート(DMC)の体積比は1:1である。
【0038】
本発明の製造方法によって得られるポリマー電解質膜中のポリマーの質量分率は、30-70%である。ポリマー電解質膜は、25℃でのイオン伝導率が1.0x10-3S cm-1である。
【0039】
本発明は、ポリマー電解質膜を製造するための、モレキュラーシーブ材料とポリマーとの使用をも提供する。モレキュラーシーブ材料は、ナノ5Aモレキュラーシーブ、10Xモレキュラーシーブ、およびY型モレキュラーシーブからなる群より選択される1以上である。ポリマーは、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、またはこれらの混合物から選択される。ポリマーは、好ましくは、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))とポリメチルメタクリレート(PMMA)との混合物である。
【0040】
上述した本発明の特徴または実施例において言及した特徴は任意の組み合わせで用いてもよい。明細書中に記載したすべての特徴は任意の形態の組成物と組み合わせて用いることができ、明細書中に記載した種々の特徴は同一の、等価なまたは類似の目的を与える任意の代替的な特徴と置き替えることができる。したがって、特記しない限り、記載した特徴は等価なまたは類似の特徴の一般的な例にすぎない。
【0041】
本発明の主要な利点は以下のとおりである:
(1) 本発明によるポリマー電解質膜は、電解質溶液の強い吸収率および電解質溶液の保持能力を有する。
【0042】
(2) 本発明によるポリマー電解質膜は、モレキュラーシーブの気孔にすでに電解質溶液を含んでおり、この吸収効果が電解質溶液の減少によってリチウムイオンの輸送効率を低下させることがないであろう。このため少量のリチウム塩を電池に加えたときに、液体電解質のそれに匹敵する伝導率を達成することができ、このため工業化することが容易である。
【0043】
以下、本発明を具体的な実施例と組み合わせてさらに説明する。これらの実施例は発明を説明するためにのみ用いられ、発明の範囲を限定することを意図していないことが理解されるべきである。特定の条件を特定していない、以下の実施例における実験方法は一般に、通常の条件下または製造者によって推奨されている条件下で行われる。すべてのパーセンテージ、比、比率、または部は、特記しない限り、重量ベースである。本発明における体積あたりのパーセント重量の単位はこの分野の当業者によく知られており、たとえば100mlの溶質あたりの溶質の重量をいう。特記しない限り、ここにおいて使用されているすべての専門的で科学的な用語は、この分野において使用されるのと同じ意味をもつ。また、記載したのと類似のまたは等価な任意の方法および材料を、本発明の方法で使用してもよい。ここにおいて記載した好ましい実施形態および材料は、説明の目的のためであるすぎない。
【0044】
下記の実施例および比較例においては、種々の膜サンプルを、性質に関して試験して特性評価した。
【0045】
膜の厚さの測定: 種々の膜サンプルの厚さを、マイクロメーター(精度0.01mm)を用いて測定する。サンプル上の無作為の5点で厚さを測定して平均する。
【0046】
気孔率の測定: 膜サンプルをn-ブタノールに10時間浸漬した後、下記式に従って気孔率を計算した:
P = (Mb/ρb)/(Mb/ρb+Mp/ρp)×100%
式中、ρbおよびρpはn-ブタノールの密度およびセルロースの乾燥密度であり、MbおよびMpは、それぞれ、膜サンプルによって吸収されたn-ブタノールの質量および膜サンプル自体の質量である。
【0047】
吸収量の測定: 膜サンプルを電解質溶液に10時間浸漬し電解質溶液が膜サンプル中で飽和するようにし、電解質溶液の吸収の前後の膜サンプルの質量をそれぞれ試験し、吸収量を下記式に従って計算した:
EU = {(W-Wo)/Wo}×100%
式中、WoおよびWは、それぞれ、電解質溶液を吸収する前後の膜サンプルの質量である。
【0048】
平均気孔径の測定: 最初に開口した気孔に対応する圧力がバブルポイント圧力であり、この圧力に対応する気孔径が最大気孔径である。このプロセスのあいだに、圧力および流量をリアルタイムで記録して圧力-流量曲線を得る。圧力は気孔径に関する情報を反映し、流量は一定の気孔径の気孔の数に関する情報を反映する。次に乾燥膜の圧力-流量曲線を試験し、関連する式に従って膜サンプルの平均気孔径を計算することができる。気孔径と圧力との関係はWashburnの式によって表される:
D = 4γCosθ/p
式中、D = 気孔径; γ = 液体の表面張力; θ = 接触角、p = 圧力差である。
【0049】
イオン伝導率の測定: 膜サンプルを23±2℃の温度で電解質溶液に入れ、封止しつつ2時間浸漬した。抵抗試験のために、電解質溶液をモールドに注入し、モールドを化学ステーションに接続して試験パラメータを設定した。一層の膜を導入してそのインピーダンススペクトルを測定した。次に、もう一層の膜を導入してそのインピーダンススペクトルを測定し、4層までの膜を導入して4のインピーダンススペクトルを測定した。1, 2, 3および4層についての抵抗値R1, R2, R3およびR4を、それぞれインピーダンススペクトルから読み取った。層数を横軸として、膜サンプルの抵抗を縦軸として用いることによって曲線を引き、曲線の勾配と直線性を計算した。直線性が0.99より大きい場合に、膜サンプルのイオン伝導性を下記の式に従って計算した:
σ = d/1000kS
式中、σ-サンプルのイオン伝導性、ジーメンス/メートル(S/cm)
d-サンプルの厚さ、マイクロメータ(μm)
k-曲線の勾配
S-膜サンプルの試験面積、平方センチメートル(cm2)。
【0050】
実施例1
0.05gのナノ5Aモレキュラーシーブおよび2gのポリビニリデンフルオリドをアセトンに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPPベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0051】
リチウム塩電解質溶液の濃度は1モル/Lであった。リチウム塩電解質溶液において、溶質はリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)であり、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)であり、これはLiPF6/(EC+DMC)と略すこともあり、ここでEC+DMCはエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒を表し(以下の実施例において同じ)、EC対DMCの体積比は1:1であった。
【0052】
実施例2
0.02gのナノ5Aモレキュラーシーブおよび2gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPEベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0053】
実施例3
0.07gのナノ5Aモレキュラーシーブ、1gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))および1gのポリメチルメタクリレート(PMMA)をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPETベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0054】
実施例4
0.05gのナノ5Aモレキュラーシーブ、0.5gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))および1.5gのポリメチルメタクリレート(PMMA)をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPETベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0055】
実施例5
0.07gのナノ5Aモレキュラーシーブ、0.85gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))および1gのポリメチルメタクリレート(PMMA)をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPEベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0056】
実施例6
0.02gのナノ5Aモレキュラーシーブ、3gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))および1gのポリメチルメタクリレート(PMMA)をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPEベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0057】
比較例1
1gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPETベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0058】
比較例2
0.5gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))および1gのポリメチルメタクリレート(PMMA)をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPET不織布ベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0059】
実施例7
0.05gの10Xモレキュラーシーブ、0.5gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))および1.5gのポリメチルメタクリレート(PMMA)をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPET不織布ベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0060】
実施例8
0.05gのY型モレキュラーシーブ、0.5gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))および1.5gのポリメチルメタクリレート(PMMA)をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPET不織布ベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0061】
実施例9
0.05gのナノ5Aモレキュラーシーブ、0.5gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))および0.5gのポリメチルメタクリレート(PMMA)をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPET不織布ベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0062】
実施例10
0.05gのナノ5Aモレキュラーシーブ、2.0gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))および2.5gのポリメチルメタクリレート(PMMA)をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPET不織布ベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0063】
実施例11
0.125gのナノ5Aモレキュラーシーブ、0.5gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))および1.5gのポリメチルメタクリレート(PMMA)をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPET不織布ベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0064】
実施例12
0.008gのナノ5Aモレキュラーシーブ、0.5gのポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))および1.5gのポリメチルメタクリレート(PMMA)をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。混合溶液を十分に撹拌して一様なスラリーを形成した。スラリーをPET不織布ベースフィルム上にコートして湿潤膜を形成した。湿潤膜を90℃で15分間乾燥した後、膜を1M LiPF6 + EC:DMC (1:1)のリチウム塩電解質溶液に乾燥雰囲気中で30秒間浸漬した後、取り出し、膜の表面上の液体をろ紙を用いて取り除いた。
【0065】
実施例、比較例の基本的性質および液体吸収性、ならびにベースフィルムを表1に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
物理的性質および化学的性質の上記の結果からわかるように、実施例1-12で製造したポリマー電解質膜はすべて、高い液体吸収を有する。また、実施例1-12で製造した、モレキュラーシーブを含むポリマー電解質膜は、比較例1-2と比較して、かなり改善されたイオン伝導性を示し、モレキュラーシーブの添加がポリマー電解質膜のイオン伝導性をかなり改善しうることを示している。
【0068】
上記は本発明の好ましい例にすぎず、本発明の本質的な技術的内容の範囲を限定することを意図していない。本発明の本質的な技術的内容は、本出願の特許請求の範囲に広く定義している。他人によって完成された任意の技術的な実体または方法は、それが本出願の特許請求の範囲に定義したのと正確に同じであるか、または等価な変化であるならば、特許請求の範囲内にあるとみなされる。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] ポリマー電解質膜の製造方法であって、前記方法は、以下の工程、
(1) モレキュラーシーブ材料、ポリマーおよび溶媒を混合してスラリーを得る工程;
(2) 前記スラリーをベースフィルム上にコーティングして湿潤膜を形成する工程;
(3) 前記湿潤膜を乾燥して乾燥膜を得る工程;および
(4) 前記乾燥膜をリチウム塩電解質溶液に浸漬し、取り出してポリマー電解質膜を得る工程
を含む、製造方法。
[2] 前記モレキュラーシーブ材料は、ナノ5Aモレキュラーシーブ、10Xモレキュラーシーブ、およびY型モレキュラーシーブからなる群より選択される1以上である、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記モレキュラーシーブ材料対前記ポリマーの重量比が1:20ないし1:200である、[1]に記載の製造方法。
[4] 前記モレキュラーシーブ材料は、前記工程(1)で得られたスラリーの総重量に基づいて、0.1-3.3重量%の量で存在する、[1]に記載の製造方法。
[5] 前記ポリマーは、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、またはこれらの混合物から選択される、[1]に記載の製造方法。
[6] 前記ポリマーは、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))とポリメチルメタクリレート(PMMA)との混合物であり、ポリビニリデンフルオリドおよびヘキサフルオロプロピレンのコポリマー:ポリメチルメタクリレートの重量比が1:0.1ないし1:5である、[5]に記載の製造方法。
[7] 前記溶媒は、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エタノール、およびイソプロパノールからなる群より選択される1以上である、[1]に記載の製造方法。
[8] 前記リチウム塩電解質溶液中のリチウム塩溶質の濃度が0.5-1.5モル/Lである、[1]に記載の製造方法。
[9] ポリマー電解質膜であって、ベースフィルム層とコーティング層とを含み、前記コーティング層はモレキュラーシーブ材料と、ポリマーと、リチウム塩電解質溶液とを含む、ポリマー電解質膜。
[10] 前記モレキュラーシーブ材料は、ナノ5Aモレキュラーシーブ、10Xモレキュラーシーブ、およびY型モレキュラーシーブからなる群より選択される1以上である、[9]に記載のポリマー電解質膜。
[11] 前記ポリマーは、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(P(VDF-HFP))、およびポリメチルメタクリレート(PMMA)、またはこれらの混合物からなる群より選択される、[9]に記載のポリマー電解質膜。
[12] 前記モレキュラーシーブ材料対前記ポリマーの重量比が1:20ないし1:200である、[9]に記載のポリマー電解質膜。