【実施例】
【0040】
(実施例1)
硫酸ニッケル含有の酸化鉄黒色層の形成
少量の遷移金属塩(硝酸ニッケル)及び硫化物前駆体(硫化ナトリウム)を、表2に記載の硝酸ナトリウムのアルカリ溶液に添加した。この黒色化溶液の配合を表3に記載する。
【0041】
【表3】
【0042】
30本の0.56mm(22mil)タイプ4310 SH針(Ethicon,Inc.製)の量を、表1に記載の活性化溶液を含有する浴中に、80℃で2分間浸漬した。次いで、針を水ですすぎ、表3に記載の黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で1分間浸漬した。銀針の表面は、完全に黒色になった。
【0043】
(実施例2)
硫化銅含有の酸化鉄黒色層の形成
少量の遷移金属塩(硝酸銅)及び硫化物前駆体(硫化ナトリウム)を、表2に記載の硝酸ナトリウムのアルカリ溶液に添加した。この黒色化溶液の配合を表4に要約する。
【0044】
【表4】
【0045】
30本の0.56mm(22mil)タイプ4310 SH針(Ethicon,Inc.製)の量を、表1に記載の活性化溶液を含有する浴中に、80℃で2分間浸漬した。針を取り出して水ですすぎ、次いで、表4に記載の黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で1分間浸漬した。銀針の表面の色は、完全に黒色になった。
【0046】
(実施例3)
硫化コバルト含有の酸化鉄黒色層の形成
少量の遷移金属塩(硝酸コバルト)及び硫化物前駆体(硫化ナトリウム)を、表2に記載の硝酸ナトリウムのアルカリ溶液に添加した。この黒色化溶液の配合を表5に要約する。
【0047】
【表5】
【0048】
30本の0.56mm(22mil)タイプ4310 SH針(Ethicon,Inc.製)の量を、表1に記載の活性化溶液を含有する浴中に、80℃で2分間浸漬し、取り出して水ですすいだ。次いで、針を、表5に記載の黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で1分間浸漬した。針を浴から取り出すと、針の表面が黒色になったことが観察された。
【0049】
(実施例4)
酸化マンガン含有の酸化鉄黒色層の形成
少量の過マンガン酸カリウム及びチオシアン酸ナトリウムを、表2に記載の硝酸ナトリウムのアルカリ溶液に添加して、黒色溶液を形成した。この黒色化溶液の配合を表6に記載する。
【0050】
【表6】
【0051】
20本の0.56mm(22mil)タイプ4310 SH針(Ethicon,Inc.製)の量を、表1に記載の活性化溶液を含有する浴中に、80℃で2分間浸漬してから、水ですすいだ。次いで、針を、表6に記載の黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で1分間浸漬し、その後、浴から取り出した。銀針が黒色化された針になった。銀針の表面が完全に黒色化されたことが観察された。
【0052】
また、より大きいバッチ試行を、工程のそれぞれの処理時間をわずかに変更した同様の方法で、750本の0.61mm(24mil)タイプ4310 MH針(Ethicon,Inc.製)のバッチに対して、活性化及び黒色化溶液の規模の8倍のバッチ溶液体積(1kg)を使用して行った。針のこの大きいバッチを回転バスケットに入れ(
図1及び
図2を参照のこと)、活性化溶液を含有する浴中に、80℃で2分間浸し、取り出して水ですすぎ、次いで、黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で2分間浸漬した。針を浴から取り出すと、バッチ内の全ての銀針の表面が完全に黒色化されていることが観察された。
【0053】
(実施例5)
4310合金から作製される外科用縫合針の表面での酸化マンガン含有の酸化鉄黒色層の形成:黒色化溶液の繰り返し使用
実施例5は、実施例4に類似しており、黒色化溶液への0.1gの塩化ナトリウムの添加を伴う。これにより、黒色化溶液の繰り返し使用と共に、より早い黒色化反応が可能になった。この黒色化溶液の配合は、表7に含まれる。
【0054】
【表7】
【0055】
50本の0.56mm(22mil)タイプ4310 SH針(Ethicon,Inc.製)のバッチを、表1に記載の活性化溶液を含有する浴中に、80℃で30秒間浸漬してから、取り出して水ですすいだ。次いで、針を、表7に記載の黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で10秒間浸漬した。針を浴から取り出すと、バッチ内の全ての銀針の表面が完全に黒色化されていることが観察された。
【0056】
また、より大きいバッチの試行を、工程それぞれの処理時間をわずかに変更した同様の方法で、750本の0.61mm(24mil)タイプ4310 MH針(Ethicon,Inc.製)のバッチに対して、活性化及び黒色化溶液の規模の8倍のバッチ溶液体積(1kg)を使用して行った。針のこの大きいバッチを回転バスケットに入れ(
図1及び
図2)、活性化溶液を含有する浴中に、80℃で2分間浸し、取り出して水ですすぎ、次いで、黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で2分間浸漬した。針を浴から取り出すと、バッチ内の全ての銀針の表面が完全に黒色化されていることが観察された。
【0057】
追加の黒色化サイクルに使用される黒色化溶液の能力も調査し、試験した。必要に応じて追加量のチオシアン酸ナトリウム及び過マンガン酸カリウムを添加して、黒色化溶液を表7の配合に維持することにより、黒色化溶液を繰り返し再使用して、750本の0.61mm(24mil)MH針のバッチを同じ活性化及び黒色化パラメータを使用して効果的に黒色化できることが観察された。浴中の黒色化溶液を、黒色化溶液のそれぞれの使用後に、針の表面の黒色化した色を一定に保ちながら、少なくとも10回再使用できることが観察された。
【0058】
実施例5のMH針は、この針上の表面コーティングの組成物及び厚さを測定するため、オージェ電子分光法分析(計器モデル:PHI680走査型オージェマイクロプローブ)用に提出された。
図5に示すように、スパッタ深さ特性は、1,500Å以下の酸化物層厚さを明らかにした。マンガンは、外側の750Å以下の表面における一次酸化物であり、次いで、鉄濃度の漸増が観察された。
【0059】
(実施例6)
実施例5に記載の大きいバッチ製造から作製されるシリコーンコーティングされた針の形成
実施例5の黒色化された0.56mm(22mil)SH及び0.61mm(24mil)タイプ4310 MH針のバッチ全体を、50gのNusil MED 4162及び450gのヘプタンからなるシリコーン溶液に浸漬してから、それらを従来のクラフト紙の上に置き、ドラフト内で周囲条件にて30分間乾燥させた。次いで、シリコーンコーティングした黒色化針を、160℃で1時間、従来のオーブン内で硬化させた。通常の(銀針)0.56mm(22mil)タイプ4310 SH及び0.61mm(24mil)MH針のバッチも同様(manor)に準備し、試験用の対照試料として使用した。
【0060】
シリコーンコーティング組成物でコーティングされた医療用装置のコーティング性能は、様々な従来の摩擦又は接着試験を用いて試験することができる。外科用縫合針の場合、従来の針刺入試験装置を用いてコーティング性能、耐久性、及び一体性を評価する。コーティングされた外科用縫合針は、自動ロック式ピンセット、又は類似の保持具を使用して保持される。コーティングされた針は、次いで、一般的なヒト組織を再現するために選択された高分子媒体に通される。針の長さの約半分が媒体に通され、その後、次の通過前に引き抜かれる。試験媒体は、ある種の合成ゴム(例えば、Monmouth Rubber and Plastic Corporation(Monmouth,NJ)製のDuraflex(商標))であってもよい。典型的な試験は、それぞれ個々に20回媒体に通した複数の針を用いることを含む。各通過における最大力を記録し、コーティング性能の指標として使用する。通常、刺入力は、摩耗によりコーティングが針から剥がれるので、通過する毎に増加する。備品及び方法の更なる詳細はまた、米国特許第5,181,416号で見ることができ、この特許は、参照により本明細書で組み込まれる。ASTM F3014は、湾曲した針の刺入試験プロトコルの一例である。
【0061】
刺入試験を、これら2セットの湾曲した針に対して行った。得られた結果は、30本の個々の針の試料を用いて行った刺入試験のものであった。それぞれの通過における平均刺入力を表8及び表9に要約する。両セットの針に対する対照試料も比較のために試験し、その結果もこれら2つの表に含まれる。
【0062】
【表8】
【0063】
【表9】
【0064】
実施例6の両方のコードの4310黒色化針と制御試料との間の針刺入試験では、わずかな差が見られた。かかる差は、測定法の誤差(約10%)以内である。実施例6に示した黒色化プロセスは、結果として得られた黒色化し、湾曲した針の刺入性能に対する負の影響を生み出さなかった。
【0065】
コーティングされた0.56mm(22mil)タイプ4310黒色化SH針の曲げ剛性を、制御試料のコーティングされた0.56mm(22mil)の通常の光沢のある銀色4310 SH針に対し、10本の針1セットでASTM F1874に従って評価した。その結果を表10に要約する。
【0066】
予期したとおり、針の色を変える表面処理は、針の剛性及び外科的収量に有意な影響を及ぼすことはなかった。変形値にも有意差がなかったことから、黒色化プロセスは、合金の大部分の特性に影響がなく、表面を亀裂形成に対して敏感にすることもないことがわかった。最も重要なことに、黒色化した針は、使用者に対する異なる「感触」又は挙動を有しなかった。
【0067】
【表10】
【0068】
(実施例7)
タイプ420 SS合金から作製された外科用縫合針の表面での酸化マンガン含有の酸化鉄黒色層の形成
実施例5で使用した黒色化溶液(表8)を試料の準備に使用した。20本の0.61mm(24mil)420 SH針(Ethicon,Inc.製)の量を、表1に記載の活性化溶液を含有する浴中に、80℃で30秒間浸漬した。次いで、針を水ですすぎ、表7に記載の黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で30秒間浸漬した。針を浴から取り出すと、バッチ内の全ての銀針の表面が完全に黒色化されていることが観察された。
【0069】
(実施例8)
ETHALLOY合金から作製された外科用縫合針の表面での酸化マンガン含有の酸化鉄黒色層の形成
実施例5で使用した黒色化溶液(表7)をこの実施例8A及び8Bにおける試料の準備に使用した。
【0070】
8A−Nusil MED 4162シリコーンを用いたバッチコーティング試行用のETHALLOYばら針:
製造プロセスのストリップから切り離してばらにした、30本の0.61mm(24mil)ETHALLOY SH針(Ethicon,Inc.製)の量又はバッチを、表1の活性化溶液を含有する浴中に、80℃で30秒間浸漬してから、取り出して水ですすぎ、次いで表7に記載の黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で30秒間浸漬した。針を浴から取り外すと、浴中の全ての銀針の表面が黒色化されていることが観察された。
【0071】
8B−Gelest XG−2385シリコーンによるストリップコーティング試行用のETHALLOY針が取り付けられたストリップ:
10本の0.61mm(24mil)ETHALLOY SH針(Ethicon,Inc.製)の量が取り付けられたストリップを、表1の活性化溶液を含有する浴中に、80℃で30秒間浸漬してから、水ですすぎ、次いで表7に記載の黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で30秒間浸漬した。針を浴から取り出すと、バッチ内の全ての銀針の表面が完全に黒色化されていることが観察された。
【0072】
8C−バッチコーティング試行用のETHALLOYばら針の大きいバッチ、黒色化浴の複数の使用サイクル
正常なサイクルを介したETHALLOY針の色の均一性及び黒色化溶液の繰り返し使用に対応するために、付加的な構成成分である、モリブデン酸アンモニウム四水和物を表7の基本配合に追加した。また、他の添加剤、塩化ナトリウムの量も増やした。この黒色化溶液の配合は、表11に含まれる。
【0073】
【表11】
【0074】
860本の0.66mm(26mil)V−7針(Ethicon,Inc.製)のバッチを、表1に記載の活性化溶液を含有する浴中に、80℃で3分間浸漬してから、取り出して水ですすいだ。次いで、針を、表11に記載の黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で1時間浸漬した。針を浴から取り出すと、バッチ内の全ての銀針の表面が完全に黒色化されていることが観察された。
【0075】
追加の黒色化サイクルに使用される黒色化溶液の能力も調査し、試験した。必要に応じて追加量のチオシアン酸ナトリウム及び過マンガン酸カリウムを添加して、黒色化溶液を表7の配合に適合するように維持することにより、黒色化溶液を繰り返し再使用して、860本の0.66mm(26mil)V−7針のバッチを同じ活性化及び黒色化パラメータを用いて効果的に黒色化できることが観察された。浴中の黒色化溶液を、黒色化溶液のそれぞれの使用後に、針の表面の黒色化した色を一定に保ちながら、少なくとも3回再使用できたことが観察された。黒色化溶液は、必要に応じて活性化構成成分の添加を繰り返して配合を維持することにより、有意に多くの回数、再使用できると考えられる。
【0076】
(実施例9)
実施例8Aの針のバッチコーティング
この実施例は、従来のクロムベースの黒色化針生産で使用されるプロセスと類似のバッチコーティングプロセスを使用して、実施例8Aで取り上げたバッチ生産から作製されるシリコーンコーティングされたEthalloy SH針の形成を目的とする。黒色化された0.61mm(24mil)SH針のバッチ全体を、50gのNusil MED 4162及び450gのヘプタンからなるコーティング溶液に浸漬してから、針をクラフト紙基材上に置き、ドラフト内で周囲条件にて30分間乾燥させた。次いで、シリコーンコーティングされた黒色化針を、160℃で1時間、従来の対流式オーブン内で硬化させた。
【0077】
次いで、コーティングされた針の代表試料に対して、上記のように刺入試験を行った。結果は、10本の個々の針の試料を用いて行った刺入試験のものである。コーティングされた針をそれぞれ20回刺入した。それぞれの通過における平均刺入力を表12に要約する。
【0078】
【表12】
【0079】
(実施例10)
実施例8Bのストリップコーティング針
この実施例は、全ての針を金属ストリップに取り付け、連続的な方法で浸漬タンク内のコーティング溶液に通過させる、ストリップコーティングプロセスを使用する、実施例8Bで取り上げたストリッププロセスから作製されるシリコーンコーティングされたEthalloy SH針の形成を目的とする。黒色化された0.61mm(24mil)SH針のストリップを、23.8gのGelest XG−2385A、23.8gのGelest XG−2385B、及び52.4gのIsopar Kからなるシリコーンコーティング溶液を含有する浴中に浸漬した。針付きのストリップを浴から取り出し、従来のオーブン内に195℃で30秒間置いた。シリコーンコーティングされた黒色化針を、更に195℃で2時間、従来の対流式オーブン内で硬化させた。
【0080】
硬化したシリコーンコーティングを有する針に対して、前述のように刺入試験を行った。結果は、ストリップから取り出された10本の個々の針の代表試料を使用して行った刺入試験のものであった。コーティングされた針をそれぞれ20回刺入した。それぞれの通過における平均刺入力を表13に記載する。試験は、上記のように実施された。
【0081】
【表13】
【0082】
バッチプロセスを使用して、Nusil MED6162でコーティングされた同一ロットの針と比べて、ストリップコーティングされたEthalloy黒色SH針(実施例10)の20回目の通過の刺入で57%の低下が観察された。短い反応時間は、針黒色化プロセスをストリップフローに変換し、白金硬化シリコーンGelest XG−2385(Gelest,Inc.(Morrisville,PA)製)を使用することを可能にする。この実施例で実証されたように、黒色化針では、刺入性能の有意な改善が達成され得る。
【0083】
(実施例11)
比較例−NaNO3を含まない実施例6の黒色化浴
この実施例は、実施例6で実証された黒色酸化物層の代わりに、タイプ4310 SS合金からなる外科用縫合針の表面における深緑マンガン含有の酸化鉄黒色層の形成を目的とする。この黒色化溶液の配合を表14に記載する。
【0084】
【表14】
【0085】
750本の0.66mm(26mil)MH針(Ethicon,Inc.製)の量又はバッチを、表1の活性化溶液を含有する浴中に、80℃で3分間浸漬してから、水ですすぎ、次いで、表14に記載の黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で2分間浸漬した。浴から取り出した後、銀針は、深緑色の外観を有することが観察された。浴溶液中の処理時間の長さを増やしても、針の色は変わらなかった。この表14の溶液における処理の結果として、真に億色の針を得ることはできなかった。
【0086】
(実施例12)
比較例−NaOHを含まない実施例6の黒色化浴
この実施例は、実施例5で実証され、得られた黒色酸化物層と比較して、タイプ4310 SS合金から作製される外科用縫合針の表面での黒色酸化物黒色層の形成につながらなかった。この実施例で使用された黒色化浴溶液の配合を表15に記載する。
【0087】
【表15】
【0088】
750本の0.66mm(26mil)MH針(Ethicon,Inc.製針コードMH002640P)の量又はバッチを、表1に記載の活性化溶液を含有する浴中に、80℃で3分間浸漬してから、水ですすぎ、次いで、表15に記載の溶液を含有する浴中に、100℃で2分間浸漬した。浴から取り出した後、針の表面は、光沢のある銀色のままであることが観察された。黒色化浴溶液中の処理時間の長さを増やしても、針の色は変わらなかった。この例の溶液中での処理の結果として、黒色化された針は得られなかった。
【0089】
(実施例13)
本発明のプロセスとクロム(VI)ベースのプロセスとの比較例
実施例5に記載したように、本発明のプロセスによって黒色化された針を、クロムVI(EP1051538)を使用する先行技術のプロセスによって処理された針と比較した。先行技術プロセスの黒色化浴の組成物を表16に記載する。
【0090】
【表16】
【0091】
実施例5のプロセスによって黒色化された針に類似する0.61mm(24mil)タイプ4310 MH針のバッチを同様の方法で前処理し、表16に含まれる組成物を有する黒色化浴溶液に浸漬した。針は、本発明のプロセスで処理した実施例6の針と同じ処理時間である2分間、表16のコーティング浴中に浸漬した。本発明のプロセスで処理された針は、その表面の全てが完全に黒色化されていることが観察された。先行技術のプロセスで処理された針の色は、未処理の0.61mm(24mil)タイプ4310 MH針と同様に、光沢のある銀色のままであったことが更に観察された。針の写真が、
図3A及び
図3Bに見られる。
【0092】
図4は、実施例5に記載された本発明のプロセスと、従来のクロム(VI)ベースのプロセスとの間の処理時間の差を示すグラフである。本発明の処理時間は、クロム(VI)ベースのプロセスよりも有意に小さく、時間効率がより高いことが見られ得る。
【0093】
(実施例14)
前処理浴のない黒色化浴で処理された針
この実施例は、実施例1で実証され、得られた黒色酸化物層と比較して、タイプ4310 SS合金から作製される外科用縫合針の表面での黒色酸化物黒色層の形成につながらなかった。この実施例で使用された、実施例1で使用した配合と同じ黒色化浴溶液の配合を表3に記載する。
【0094】
750本の0.66mm(26mil)MH針の量又はバッチを、表3に記載の黒色化溶液を含有する浴中に、100℃で2分間浸漬した。針は前処理工程を経ていなかった。浴から取り出した後、実質上、黒色化は発生しないことが観察され、針の表面は、実質的に光沢のある銀色のままであることが観察された。黒色化浴溶液中の処理時間の長さを10分に増やしても、針の色は変わらなかった。この実施例の黒色化溶液中での処理の結果として、黒色化された針は得られなかった。
【0095】
本発明の新たな黒色化方法及び黒色化浴組成物は、多くの利点を有する。利点としては、処理時間の有意な削減、毒性発癌物質の欠如、改善された安全条件、有害廃棄物の排除、及び環境への負の影響の排除が挙げられる。
【0096】
以上、本発明をその詳細な実施形態について図示及び説明してきたが、当業者であれば、特許請求される発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の形態及び詳細に様々な変更を行い得る点が理解されるであろう。
【0097】
〔実施の態様〕
(1) 外科用縫合針を黒色化する方法であって、
A.外表面を有する少なくとも1本の外科用縫合針を前処理浴に入れる工程であって、前記前処理浴は、
約10重量%〜約20重量%の水溶性塩化物塩と、
約5%〜約15重量%の無機酸と、
約65重量%〜約80重量%の水と、を含み、
前記前処理浴は、約0.5〜約1.2のpHを有する、工程と、
B.次いで、前記外科用縫合針を黒色化浴に入れる工程であって、前記浴は、
約3重量%〜約20重量%の高可溶性硝酸塩と、
約18重量%〜約38重量%の強塩基と、
約50重量%〜約75重量%の水と、
約0.2重量%〜約5重量%の強酸の遷移金属塩と、
約0.2重量%〜約5重量%のイオウ含有還元剤化合物と、を含む、工程と、
C.前記針の前記外表面に黒色化コーティングを提供するのに十分有効な時間、前記針を前記黒色化浴中に維持する工程と、を含む、方法。
(2) 前記遷移金属塩が、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硝酸鉄、過塩素酸銅、過塩素酸ニッケル、過塩素酸イオン(ion perchlorate)、及び過塩素酸コバルトからなる群から選択される、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記イオウ含有還元剤が、N’−ジエチルチオ尿素、チオシアン酸ナトリウム、硫化ナトリウム、及びジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムからなる群から選択される、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記高可溶性硝酸塩が、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、及び硝酸リチウムからなる群から選択される、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記前処理浴中の前記水溶性塩化物塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムからなる群から選択される、実施態様1に記載の方法。
【0098】
(6) 前記強塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記前処理浴中の前記無機酸が、リン酸、塩酸、硫酸、及び硝酸からなる群から選択される、実施態様1に記載の方法。
(8) 外科用縫合針を黒色化する方法であって、
A.外表面を有する少なくとも1本の外科用縫合針を前処理浴に入れる工程であって、前記前処理浴は、
約10重量%〜約20重量%の水溶性塩化物塩と、
約5%〜約15重量%の無機酸と、
約65重量%〜約80重量%の水と、を含み、
前記前処理浴は、約0.5〜約1.2のpHを有する、工程と、
B.次いで、前記外科用縫合針を黒色化浴に入れる工程であって、前記浴は、
約3重量%〜約20重量%の高可溶性硝酸塩と、
約18重量%〜約38重量%の強塩基と、
約50重量%〜約75重量%の水と、
約0.2重量%〜約5重量%の高可溶性過マンガン酸塩と、
約0.2重量%〜約5重量%のチオシアン酸塩と、を含む、工程と、
C.前記針の前記外表面に黒色化コーティングを提供するのに十分有効な時間、前記針を前記黒色化浴中に維持する工程と、を含む、方法。
(9) 前記過マンガン酸塩が、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、及び過マンガン酸リチウムからなる群から選択される、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記黒色化浴が、水溶性塩化物塩を追加的に含む、実施態様8に記載の方法。
【0099】
(11) 前記チオシアン酸塩が、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、及びチオシアン酸リチウムからなる群から選択される、実施態様8に記載の方法。
(12) 前記高可溶性硝酸塩が、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、及び硝酸リチウムからなる群から選択される、実施態様8に記載の方法。
(13) 前記強塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される、実施態様8に記載の方法。
(14) 前記黒色化浴が、約0.2重量%〜約5重量%のモリブデン酸塩を追加的に含む、実施態様8に記載の方法。
(15) 外科用縫合針用の黒色化浴組成物であって、
約3重量%〜約20重量%の高可溶性硝酸塩と、
約18重量%〜約38重量%の強塩基と、
約50重量%〜約75重量%の水と、
約0.2重量%〜約5重量%の強酸の遷移金属塩と、
約0.2重量%〜約5重量%のイオウ含有還元剤化合物と、を含む、組成物。
【0100】
(16) 前記遷移金属塩が、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硝酸鉄、過塩素酸銅、過塩素酸ニッケル、過塩素酸イオン、及び過塩素酸コバルトからなる群から選択される、実施態様15に記載の組成物。
(17) 前記イオウ含有還元剤が、N’−ジエチルチオ尿素、チオシアン酸ナトリウム、硫化ナトリウム、及びジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムからなる群から選択される、実施態様15に記載の組成物。
(18) 前記高可溶性硝酸塩が、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、及び硝酸リチウムからなる群から選択される、実施態様15に記載の組成物。
(19) 前記強塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される、実施態様15に記載の組成物。
(20) 外科用縫合針用の黒色化浴組成物であって、
約3重量%〜約20重量%の高可溶性硝酸塩と、
約18重量%〜約38重量%の強塩基と、
約50重量%〜約75重量%の水と、
約0.2重量%〜約5重量%の高可溶性過マンガン酸塩と、
約0.2重量%〜約5重量%のチオシアン酸塩と、を含む、組成物。
【0101】
(21) 前記黒色化浴が、水溶性塩化物塩を追加的に含む、実施態様20に記載の組成物。
(22) 前記チオシアン酸塩が、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、及びチオシアン酸リチウムからなる群から選択される、実施態様20に記載の組成物。
(23) 前記高可溶性硝酸塩が、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、及び硝酸リチウムからなる群から選択される、実施態様20に記載の組成物。
(24) 前記強塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される、実施態様20に記載の組成物。
(25) 前記黒色化浴が、約0.2重量%〜約5重量%のモリブデン酸塩を追加的に含む、実施態様20に記載の組成物。
【0102】
(26) ステンレス鋼合金の外科用縫合針を黒色化するためのシステムであって、
A.前処理浴であって、前記前処理浴は、
約8重量%〜約20重量%の水溶性塩化物塩と、
約5重量%〜約15重量%の無機酸と、
約60重量%〜約90重量%の水と、を含み、前記前処理浴は、約0.5〜約1.2のpHを有する、前処理浴と、
B.黒色化浴であって、前記黒色化浴は、
約3重量%〜約15重量%の高可溶性硝酸塩と、
約18重量%〜約38重量%の強塩基と、
約50重量%〜約75重量%の水と、
約0.2重量%〜約5重量%の強酸の遷移金属塩と、
約0.2重量%〜約5重量%のイオウ含有還元剤化合物と、を含む、黒色化浴と、を含む、システム。
(27) 前記遷移金属塩が、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硝酸鉄、過塩素酸銅、過塩素酸ニッケル、過塩素酸イオン、及び過塩素酸コバルトからなる群から選択される、実施態様26に記載のシステム。
(28) 前記イオウ含有還元剤が、N’−ジエチルチオ尿素、チオシアン酸ナトリウム、硫化ナトリウム、及びジメチルジチオカルバミン酸ナトリウムからなる群から選択される、実施態様26に記載のシステム。
(29) 前記高可溶性硝酸塩が、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、及び硝酸リチウムからなる群から選択される、実施態様26に記載のシステム。
(30) 前記水溶性塩化物塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムからなる群から選択される、実施態様26に記載のシステム。
【0103】
(31) 前記強塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される、実施態様26に記載のシステム。
(32) 前記無機酸が、リン酸、硫酸、塩酸、及び硝酸からなる群から選択される、実施態様26に記載のシステム。
(33) ステンレス鋼合金の外科用縫合針を黒色化するためのシステムであって、
A.前処理浴であって、前記前処理浴は、
約8重量%〜約20重量%の水溶性塩化物塩と、
約5重量%〜約15重量%の無機酸と、
約60重量%〜約90重量%の水と、を含み、前記前処理浴は、約0.5〜約1.2のpHを有する、前処理浴と、
B.黒色化浴であって、前記黒色化浴は、
約3重量%〜約20重量%の高可溶性硝酸塩と、
約18重量%〜約38重量%の強塩基と、
約50重量%〜約75重量%の水と、
約0.2重量%〜約5重量%の高可溶性過マンガン酸塩と、
約0.2重量%〜約5重量%のチオシアン酸塩と、を含む、黒色化浴と、を含む、システム。
(34) 前記過マンガン酸塩が、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、及び過マンガン酸リチウムからなる群から選択される、実施態様33に記載のシステム。
(35) 前記黒色化浴が、水溶性塩化物塩を追加的に含む、実施態様33に記載のシステム。
【0104】
(36) 前記チオシアン酸塩が、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、及びチオシアン酸リチウムからなる群から選択される、実施態様33に記載のシステム。
(37) 前記高可溶性硝酸塩が、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、及び硝酸リチウムからなる群から選択される、実施態様33に記載のシステム。
(38) 前記強塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムからなる群から選択される、実施態様33に記載のシステム。
(39) 前記黒色化浴が、約0.2重量%〜約5重量%のモリブデン酸塩を追加的に含む、実施態様33に記載のシステム。