特許第6961629号(P6961629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961629生体内分解率及び物性の調節が可能な生体適合性豚軟骨来由細胞外基質膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961629
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】生体内分解率及び物性の調節が可能な生体適合性豚軟骨来由細胞外基質膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/14 20060101AFI20211025BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20211025BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   A61L31/14 500
   A61L27/36 410
   A61L27/36 400
   A61L27/36 420
   A61L27/58
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-567556(P2018-567556)
(86)(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公表番号】特表2019-508213(P2019-508213A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】KR2017002563
(87)【国際公開番号】WO2017155328
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0029579
(32)【優先日】2016年3月11日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518324256
【氏名又は名称】エイテムス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ミン,ビョン−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ジク
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ボ ラム
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヒ ウン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ソン イン
(72)【発明者】
【氏名】リム,ユン−ムク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン−ソク
(72)【発明者】
【氏名】グォン,フイ−ジョン
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102188748(CN,A)
【文献】 特表2012−505013(JP,A)
【文献】 特表2014−505569(JP,A)
【文献】 特表2015−528340(JP,A)
【文献】 特表平01−502081(JP,A)
【文献】 特開2010−279574(JP,A)
【文献】 特開2000−210376(JP,A)
【文献】 特開2003−235955(JP,A)
【文献】 特表2017−511236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
A61L 31/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
豚軟骨を分離する段階;
前記分離された豚軟骨を凍結乾燥して粉砕する段階;
前記粉砕された豚軟骨粉末を脱細胞化する段階;
前記脱細胞化した豚軟骨粉末を酸性溶液及びペプシン(pepsin)と混合して処理した後、塩基性溶液で中和させて豚軟骨粉末水溶液を製造する段階;
前記豚軟骨粉末水溶液を架橋剤と混合して豚軟骨来由細胞外基質膜を製造する段階;及び
前記豚軟骨来由細胞外基質膜に放射線を照射する段階を含む、生体内分解率及び物性の調節が可能な生体適合性豚軟骨来由細胞外基質膜の製造方法。
【請求項2】
前記架橋剤はグルタルアルデヒド(Glutaraldehyde)であることを特徴とする、請求項1に記載の生体内分解率及び物性の調節が可能な生体適合性豚軟骨来由細胞外基質膜の製造方法。
【請求項3】
前記放射線を照射する段階は、5〜100KGyのガンマ線を照射することを特徴とする、請求項1に記載の生体内分解率及び物性の調節が可能な生体適合性豚軟骨来由細胞外基質膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体内分解率及び物性の調節が可能な生体適合性豚軟骨来由細胞外基質膜の製造方法及び前記豚軟骨来由細胞外基質を有効成分として含む癒着防止用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然素材は天然物質、動物、人体から由来した物質であり、非常に優れた生体適合性及び生理的機能を持っている。代表的な一例として細胞外基質(extracellular matrix;ECM)を挙げることができる。これは複雑な人体及び動物から抽出された生体材料であり、細胞の機能を制御又は調節するとか組職の再生を誘導することができるという特徴がある。したがって、天然素材から製造された支持体は、生体に移植された後に炎症反応が少ないのみならず、優れた生体機能性及び生分解性などを提供することができるので、理想的な細胞治療剤又は組織工学用支持体の材料と評価されている。最近では、同種(allogenic)又は異種(xenogenic)組職又は臓器を採取した後、細胞を除去(acellularized)してさまざまな形態の支持体又は膜として使用する技術が注目されている。
【0003】
一方、軟骨来由細胞外基質は無血管及び無神経の組職であり、他の組職の細胞外基質に比べて組職特異的に成分の差別性がある。代表的に、軟骨組織には血管の生成を抑制するコンドロモジュリン(chondromodulin)、トロンボスポンジン(thrombospondin)、エンドスタチン(endostatin)などが豊富であり、それだけでなく細胞の付着を防止するルブリシン(lubricin)、ビグリカン(biglycan)、デコリン(Decorin)、フィブロモジュリン(Fibromodulin)などが存在している。しかし、天然素材としての高い生体適合性及び機能性にもかかわらず、軟骨組織細胞外基質は分解期間の調節が難しく、物性が弱くて人体に適用に限界が存在するから、その物理的又は化学的処理によって分解性を調節するとともに物性を増進させる方法の開発が必要である。
【0004】
癒着とは分離されていなければならない臓器の組職面が外科的手術又は炎症によって纎維性組職で連結又は融合されるものであり、これによる合併症によって小腸閉塞、後天性女性不妊症、子宮外妊娠、晩成腹痛、再手術などが発生する。このような癒着は外科的手術後50〜90%で発生し、癒着によって再手術される患者が34.6%に至るほどに発生が頻繁である。癒着は組職の損傷後に現れる治癒過程と類似して治癒過程の邪魔なしに癒着のみを防止する方法が重要である。癒着は手術部位の治癒過程中に正常に沈着する纎維素が傷の治癒過程が完了したにもかかわらず持続的に発生して、隣接している他の組職と結合するようにし、究極に血管が侵透して完全な一つの組職又は器官として合わせられることになる。このような癒着を防止するために、纎維素の分解を促進する薬物を使ったりするが、組職間に物理的障壁(physical barrier)を形成して組職を離隔させる癒着防止素材を使う場合が多い。
【0005】
既存の癒着防止素材は物理的な障壁の役割として生分解性素材、つまりセルロース又はヒアルロン酸を用いた場合が多く、その他にコラーゲンなどの天然素材が多く用いられている。このような生分解性素材は水を吸収する性質があり、これによる加水分解を特徴としており、分解速度が速いから主に腹部の手術後に使われている。このような製品は普通ジェル状を持っているが、投与部位が広くて損傷部位に固定し難い欠点があるから、現在商用化した製品の場合、癒着防止の効果が高くない。例えば、最も多く使われる癒着防止剤であるインターシード(Interceed)の場合、その使用による癒着防止の効果が60%としかならない(www.ethicon.com)。
【0006】
一方、組職によっては、再生に長い期間がかかり、長期間運動を要する部位がある。筋骨格組織、脊椎管、歯牙などがそれである。これらはそれぞれ再生期間が違い、運動が発生する部位なので、各組職に対する癒着防止剤は組職に必要な特性を持たなければならない。例えば、筋骨格組織の損傷は数週又は数ヶ月の再生期間が必要であり、この期間の間に靭帯や腱の癒着を伴う場合が多く、関節に手術的侵襲を加える場合、数ヶ月にわたる再活運動が必要な場合が多い。したがって、この期間中に分解せずに残存して癒着を防止することができる生体素材が必要である。既存の癒着防止剤は早い分解性を持っているため、このような組職に対する適用が適切でないこともある。
【0007】
癒着の最終段階は血管化であり、この段階になっては癒着した組職が全く単一組職を成して不可逆的に癒着が完成される。したがって、損傷した組職を渡る血管の形成を防ぐことは非常に重要である。しかし、既存の癒着防止剤は単純な障壁の役割をするだけで、生理的機能がないため、究極に起こり得る血管浸透を防止することができる薬理学的機序を持っていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、生体内分解率及び物性の調節が可能な生体適合性豚軟骨来由細胞外基質膜の製造方法及び前記豚軟骨来由細胞外基質を有効成分として含む癒着防止用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、豚軟骨を分離する段階;前記分離された豚軟骨を凍結乾燥して粉砕する段階;前記粉砕された豚軟骨粉末を脱細胞化する段階;前記脱細胞化した豚軟骨粉末を酸性溶液及びペプシン(pepsin)と混合して処理した後、塩基性溶液で中和させて豚軟骨粉末水溶液を製造する段階;前記豚軟骨粉末水溶液を架橋剤と混合して豚軟骨来由細胞外基質膜を製造する段階;及び前記豚軟骨来由細胞外基質膜に放射線を照射する段階を含む生体内分解率及び物性の調節が可能な生体適合性豚軟骨来由細胞外基質膜の製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は前記方法によって製造された豚軟骨来由細胞外基質を有効成分として含む癒着防止用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は生体内分解率及び物性の調節が可能な生体適合性豚軟骨来由細胞外基質膜の製造方法及び前記豚軟骨来由細胞外基質を有効成分として含む癒着防止用組成物に関するもので、天然素材としての高い生体適合性及び機能性にもかかわらず軟骨組織細胞外基質は分解期間の調節が難しく物性が弱くて適用に限界があるから、その物理的又は化学的処理及び放射線処理によって物性を増進させる方法を開発した。本発明は豚軟骨来由細胞外基質を物理化学的方法で処理して多様な剤形の生体素材に製作した。さらに、物理化学的処理を行ったにもかかわらず前記のような軟骨特異的機能を維持する特性を確認した。また、豚軟骨来由細胞外基質素材を用いて体内安全性及び癒着防止効能に優れた癒着防止剤としても活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の豚軟骨来由細胞外基質膜の製造工程を示す。
図2】軟骨細胞外基質膜の架橋前後の比較結果である。細胞外基質癒着防止膜、(左)架橋前、(中)架橋後、(右)放射線照射後。
図3】軟骨細胞外基質源泉材料の成分分析結果である。
図4a】軟骨細胞外基質膜の架橋前後による機械的物性分析結果である。軟骨細胞外基質膜の架橋前と後かつ厚さによる引張強度分析結果である。上の図で、(左)引張強度測定器、(中)引張強度測定のためのサンプル裁断形状、(右)引張強度測定のためのサンプル裁断機。下の図は化学架橋前後による引張強度測定結果である。
図4b】軟骨細胞外基質膜の架橋前後による機械的物性分析結果である。軟骨細胞外基質膜の架橋による縫合強度(suture strength)の測定結果である。
図5】軟骨細胞外基質膜の放射線照射による酵素分解率の実験結果である。
図6】軟骨細胞外基質膜の放射線照射による体内分解率の実験結果である。
図7】軟骨細胞外基質膜に対する血管内皮細胞付着の実験結果である。
図8a】マウス盲腸癒着モデルを用いた生体内効果確認の試験結果である。マウス盲腸癒着モデル実験過程及び細胞外基質膜移植過程を示す。
図8b】マウス盲腸癒着モデルを用いた生体内効果確認の試験結果である。細胞外基質膜移植1週後の対照群との比較写真である。
図8c】マウス盲腸癒着モデルを用いた生体内効果確認の試験結果である。細胞外基質膜移植1週後の対照群との組職学的分析比較写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、豚軟骨を分離する段階;前記分離された豚軟骨を凍結乾燥して粉砕する段階;前記粉砕された豚軟骨粉末を脱細胞化する段階;前記脱細胞化した豚軟骨粉末を酸性溶液及びペプシン(pepsin)と混合して処理した後、塩基性溶液で中和させて豚軟骨粉末水溶液を製造する段階;前記豚軟骨粉末水溶液を架橋剤と混合して豚軟骨来由細胞外基質膜を製造する段階;及び前記豚軟骨来由細胞外基質膜に放射線を照射する段階を含む生体内分解率及び物性の調節が可能な生体適合性豚軟骨来由細胞外基質膜の製造方法を提供する。
【0014】
好ましくは、前記架橋剤はグルタルアルデヒド(Glutaraldehyde)であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0015】
好ましくは、前記放射線を照射する段階は5〜100KGyのガンマ線を照射することができるが、これに制限されるものではない。
【0016】
一方、前記豚軟骨来由細胞外基質膜に放射線を処理することによって生体内膜の分解率及び物性を調節することができ、滅菌効果を得ることもできる。
【0017】
本発明の方法の好適な一実施例において、前記脱細胞化する段階は、物理的脱細胞法、化学的脱細胞法又は物理的及び化学的方法を組み合わせた方法によって行うことを特徴とする。
【0018】
前記物理的脱細胞法は、凍結−解凍法、超音波処理、又は物理的撹拌を含む。前記化学的脱細胞法は前記豚軟骨来由粉末を低張液、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、DNase、RNase又はトリプシンで処理することを特徴とする。また、前記脱細胞化する段階は、約0〜50℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0019】
前記化学的脱細胞法において、前記低張液はトリスHCl(Tris HCl)(pH8.0)溶液であり、前記陰イオン性界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デオキシコール酸ナトリウム(sodium deoxycholate)、又はトリトンX−200(Triton X−200)であり、前記非イオン性界面活性剤はトリトンX−100(Triton X−100)であり、前記陽イオン性界面活性剤はCHAPS、スルホベタイン−10(Sulfobetaine−10、SB−10)、スルホベタイン−16(SB−16)、又はトリ−n−ブチルリン酸(Tri−n−butyl phosphate)であってもよい。
【0020】
また、本発明は前記方法によって製造された豚軟骨来由細胞外基質を有効成分として含む癒着防止用組成物を提供する。
【0021】
詳述すれば、前記豚軟骨来由細胞外基質は手術部位の纎維化及び炎症を抑制して癒着形成を防止することができる。
【0022】
好ましくは、前記組成物は、軟膏、粉末、ゲル、フィルム、スラブ、ラップ又はスポンジ形態として提供されて手術部位の癒着形成を防止することができる。
【0023】
以下では、本発明を限定しない実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。本発明の下記実施例は本発明を具体化するためのものであるだけ、本発明の権利範囲を制限するとか限定するものではないことは言うまでもない。したがって、本発明の詳細な説明及び実施例から本発明が属する技術分野の専門家が容易に類推することができるものは本発明の権利範囲に属するものと解釈される。
【実施例1】
【0024】
豚軟骨来由細胞外基質膜の製造
1.豚軟骨の分離
豚軟骨来由細胞外基質パウダーを製作するために、EN 12442の“Animal tissues and their derivatives utilized in the manufacture of medical devices, part 1; Analysis and management of risk, part 2; controls on sourcing, collection and handling”を参照し、基準に合う施設の豚膝軟骨を購入して使った。
【0025】
2.豚軟骨の分離及び粉砕
豚軟骨粉末の製造工程は次のようである。
【0026】
豚軟骨から軟骨を切り出して軟骨片(約20X30mm)を作り、これを生理食塩水で10分間3回洗浄し、−80℃に冷凍させた後、3日間凍結乾燥させた。乾燥した軟骨片を凍結粉砕機(JAI、JFC−300、JAPAN)を用いて約10μmのサイズに凍結粉砕し、−80℃で保管した。
【0027】
3.豚軟骨粉末の物理化学的脱細胞化
豚軟骨粉末に存在する細胞及び遺伝物質を除去し、純粋な細胞外基質成分のみを得るために次のように脱細胞化過程を遂行した。
【0028】
前記製造した豚軟骨粉末を10g当たり低張液(Hypotonic buffer)500mlで処理し、200rpm、4℃で4時間撹拌した。軟骨粉末を沈澱させて分離させるために、遠心分離機(US−21SMT、Vision、Korea)を用いて10、000rpmで30分間処理した。
【0029】
上澄み液を除去した後、軟骨粉末を0.1%SDS(Sodium dodecyl sulfate、Bio−rad、USA)溶液に添加し、200rpm、4℃で2時間撹拌した。SDS処理が終わった後、軟骨粉末を3次蒸溜水で5回繰り返し洗浄し、洗浄水の交換は前述したような遠心分離の条件で進めた。
【0030】
ついで、500U/mlのDNase(Sigma、USA)200mlを処理し、200rpm、37℃培養基で12時間撹拌した。Dnase処理後、前述したように、3次蒸溜水を用いて5回洗浄した。
【0031】
脱細胞化した軟骨粉末は−80℃の超低温冷凍装置で冷却した後、3日間凍結乾燥した。乾燥した軟骨粉末を前述したような方法で破砕して最終的に約10μmサイズの軟骨粉末を収得し、必要時まで−80℃で保管した。
【0032】
4.酵素を用いた水溶性軟骨粉末の製造
脱細胞化した軟骨粉末4g当たり100mlの塩酸水溶液にペプシン(Pepsin;sigma、USA)を処理し、200rpm、4℃で24時間撹拌した。
【0033】
ペプシン(pepsin)の処理後、NaOH溶液を用いてpH7.4に中和させた。水溶化した軟骨粉末を透析膜(MWCO 1000、Spectrolab、USA)に入れた後、3次蒸溜水によって200rpm、℃で24時間撹拌した。その後、水溶化した軟骨粉末を容器に入れ、−80℃の超低温冷凍装置で冷凍させた後、3日間凍結乾燥した。水溶化処理された軟骨粉末を前述したような方法で約10μmのサイズを有するパウダーに粉砕し、最終的に−80℃の冷凍装置で必要時まで保管した。
【0034】
5.豚軟骨細胞外基質膜の製造
前記製作した水溶性軟骨粉末1.3gを3次蒸溜水100mlで処理した後、200rpm、常温で1時間撹拌した。
【0035】
軟骨粉末水溶液を遠心分離機容器に入れた後、3000rpmで10分間処理した。ピペット(pipet)を用いて上澄み液を100X100mmの方形シリコンモールドに35mlずつ分株した後、無菌実験台(clean bench)で48時間乾燥させた。
【0036】
乾燥した膜6mg当たり0.1%グルタルアルデヒド溶液(Glutaraldehyde solution;Sigma、USA)1mlを処理し、100rpm、常温で1時間撹拌した。架橋された膜は6mg当たり1mlのPBS溶液で3回繰り返して100rpm、30分間洗浄した後、3次蒸溜水で3回洗浄した。洗浄した膜は6mg当たり1mlの4M NaCl溶液で処理し、100rpm、常温で30分間処理した。洗浄の完了した膜は無菌実験台(clean bench)でテフロン(登録商標)フィルム上に広げて乾燥させることで、最終的に約30μmの厚さを有する豚軟骨細胞外基質膜を製造した。
【0037】
豚軟骨細胞外基質膜の製造工程は図1の通りであり、軟骨細胞外基質膜の架橋前後の比較結果は図2の通りである。
【0038】
6.豚軟骨細胞外基質膜の放射線処理(膜の分解率調節及び滅菌)
前記製作した細胞外基質膜を銀箔で包装した後、線量5KGy〜100KGyのガンマ線を照射した。
【実施例2】
【0039】
軟骨細胞外基質源泉材料の成分分析
軟骨細胞外基質工程過程による源泉材料の成分分析結果、軟骨細胞外基質に最も大きな比重を占めているコラーゲンと糖蛋白成分の損失なしに維持されていることを確認した。コラーゲンは、酸性溶液とペプシン酵素に源泉材料を溶解し、sirius red assayで測定し、糖蛋白は、パパイン(papain)溶液に溶かし、DMMB assayで測定した(図3)。
【実施例3】
【0040】
軟骨細胞外基質膜の架橋前後による機械的物性分析
1.軟骨細胞外基質膜の架橋前と後かつ厚さによる引張強度分析
癒着防止剤として使われる膜は手術部位を充分に保護することができる物理的性質が重要であるから、食品医薬品安全処ガイドラインに従って製品特性に合う引張強度検査を実施した(図4a)。
【0041】
図4aのように、裁断された細胞外基質膜を引張強度測定器で測定し、引張強度の程度を最高力(ultimate force)の値で示して図表化した。結果から分かるように、細胞外基質膜の厚さが増加するほど引張強度が向上し、化学的架橋によっても有意に物理的強度が増加することを確認した。また、放射線照射処理された試料の引張強度測定においても放射線照射線量によって物理的強度の調節が可能であることを確認した(図4a)。
【0042】
2.軟骨細胞外基質膜の架橋による縫合強度測定(suture strength)
癒着防止用膜は手術部位に固定されるときに効果的に癒着防止効果を発揮することができるから、手術時に縫合しても壊れずに耐えることができる強度が必要である。縫合強度は別に食品医薬品安全処に規定されていないから、自ら縫合強度を測定することができるプロトコルを確立して測定した。縫合強度の測定は、下記のようにフィルムを裁断し、フィルムを手術糸で縫合した後、引張強度測定器にそれぞれ手術糸と細胞外基質膜を付着して引張強度を測定する方法で進めた。測定結果、架橋後の細胞外基質膜の縫合強度が架橋前より有意に増加することを確認した(図4b)。
【実施例4】
【0043】
軟骨細胞外基質膜の放射線照射による酵素分解率実験
癒着防止用膜は手術部位によって分解期間が違うので、臓器特異的に癒着防止効果を出すためには、各臓器別に分解期間が調節された癒着防止剤を使わなければならない。軟骨細胞外基質膜の放射線照射線量によって分解率調節が可能であるかを確認するために、体外でコラーゲン分解酵素を処理した後、時間による分解挙動を試験した。実験は、互いに異なる放射線照射線量で処理した軟骨細胞外基質膜を1X1cmに切った後、コラーゲン分解酵素で処理したPBSで処理して2週間経過を観察した(図5の左)。また、2週間コラーゲン分解酵素で処理した試料を遠心分離し、上澄み液のヒドロキシプロリン(Hydroxy proline)の量を分析して細胞外基質膜の主要成分であるコラーゲンの分解率を測定した(図5の右)。測定結果、放射線照射線量によってコラーゲン分解酵素処理時の細胞外基質膜の分解率が調節されることを確認した。
【実施例5】
【0044】
軟骨細胞外基質膜の放射線照射による体内分解率実験
細胞外基質膜の放射線照射による体内生分解率の差を確認するために次のように実験を進めた。
【0045】
図1で製作した軟骨細胞外基質膜と軟骨細胞外基質に放射線照射された膜のEOガス滅菌を実施した。そして、それぞれの膜を、ネズミ(Rat)の皮下を切開した後、移植させてから縫合し、4週間生分解率を観察した。その結果、放射線照射によって体内皮下での生分解率が調節されることを確認した(図6)。
【実施例6】
【0046】
軟骨細胞外基質膜に対する血管内皮細胞付着実験
図1で製作した軟骨細胞外基質膜を用い、癒着機序で作用する血管内皮細胞の付着差を次のように確認した。
【0047】
図1で製作した軟骨細胞外基質膜とカバーガラス(cover glass)を直径5mmの別個の24ウェルディッシュに付着させた後、乾燥させて固定し、EOガス滅菌を実施した。そして、それぞれ膜がコートされたディッシュとカバーガラス(cover glass)そしてコートされていない24ウェルプレートに2X10の血管内皮細胞を移植し、24時間付着させた。その後、各表面に付着された細胞をcalein染色した後、蛍光燎微鏡で観察した。その結果、細胞外基質膜をコートしたディッシュにおいてカバーガラス(cover glass)とウェルプレート(well plate)に比べて細胞付着が抑制されることを確認した(図7)。
【実施例7】
【0048】
マウス盲腸癒着モデルを用いた生体内効果確認試験
(1)8週齢のC57BL6マウスを用いて癒着モデルを製作した。マウスの腹部の皮膚層と筋肉層をそれぞれ切開した後、筋肉層と皮膚層を縫合することにより、損傷した組職間で癒着が発生するモデルを作って癒着効果を確認した。癒着組職は1週後に発生し、筋肉と皮膚を強く付着させる癒着モデルが形成された(図8a)。
【0049】
(2)前記製作された皮下癒着モデルにおいて筋肉層と皮膚層の間に癒着組職が形成される部位に軟骨細胞外基質膜を移植した後、1週後に結果を確認した。癒着のみ誘導したグループでは1週間で癒着組職が傷を取り囲んで厚く生成された。軟骨細胞外基質膜を移植した場合、筋肉層と皮膚層が分離され、癒着組職も形成されなかったことが分かった(図8b)。
【0050】
(3)前記獲得した組職のヘマトキシリンとエオシン染色によって細胞と細胞質染色を実施した。その結果、軟骨細胞外基質膜そのものに細胞が集中して筋肉層と皮膚層を物理的に防御しながら両組職間に癒着組職が形成することができないようにする役割をした(図8c)。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c