特許第6961639号(P6961639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961639
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20211025BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20211025BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G01L9/00 305A
   H01L29/84 B
   B81B3/00
   G01L9/00 305T
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-51692(P2019-51692)
(22)【出願日】2019年3月19日
(65)【公開番号】特開2020-153779(P2020-153779A)
(43)【公開日】2020年9月24日
【審査請求日】2020年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増西 桂
(72)【発明者】
【氏名】中村 直文
(72)【発明者】
【氏名】山崎 宏明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友博
(72)【発明者】
【氏名】石橋 史隆
(72)【発明者】
【氏名】久留井 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】永田 友彦
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5985451(JP,B2)
【文献】 国際公開第99/47902(WO,A1)
【文献】 特開平11−304616(JP,A)
【文献】 特許第6654157(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0009546(US,A1)
【文献】 特許第6279464(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられた、第1の容量素子及び第2の容量素子と、を備え、
前記第1の容量素子は、第1の電極と、前記第1の電極との間で静電容量を構成する第2の電極と、前記基板との間で前記第1の電極及び前記第2の電極をカバーする第1のダイアフラムと、を備え、
前記第2の容量素子は、第3の電極と、前記第3の電極との間で静電容量を構成する第4の電極と、前記基板との間で前記第3の電極及び前記第4の電極をカバーする第2のダイアフラムと、を備え、
前記第2のダイアフラムの内径の大きさは前記第1のダイアフラムの内径の大きさよりも小さい圧力センサ。
【請求項2】
基板と、
前記基板に設けられた、第1の容量素子及び第2の容量素子と、を備え、
前記第1の容量素子は、第1の電極と、前記第1の電極との間で静電容量を構成する第2の電極と、前記基板との間で前記第1の電極及び前記第2の電極をカバーする第1のダイアフラムと、を備え、
前記第2の容量素子は、第3の電極と、前記第3の電極との間で静電容量を構成する第4の電極と、前記基板との間で前記第3の電極及び前記第4の電極をカバーする第2のダイアフラムと、を備え、
前記第2のダイアフラムの面積は、前記第1のダイアフラムの面積よりも小さい圧力センサ。
【請求項3】
基板と、
前記基板に設けられた、第1の容量素子及び第2の容量素子と、を備え、
前記第1の容量素子は、第1の電極と、前記第1の電極との間で静電容量を構成する第2の電極と、前記基板との間で前記第1の電極及び前記第2の電極をカバーする第1のダイアフラムと、を備え、
前記第2の容量素子は、第3の電極と、前記第3の電極との間で静電容量を構成する第4の電極と、前記基板との間で前記第3の電極及び前記第4の電極をカバーする第2のダイアフラムと、を備え、
前記第2のダイアフラムの内径の大きさは前記第1のダイアフラムの内径の大きさよりも小さく、前記第2のダイアフラムの外径の大きさは前記第1のダイアフラムの外径の大きさよりも小さい圧力センサ。
【請求項4】
基板と、
前記基板に設けられた、第1の容量素子及び第2の容量素子と、を備え、
前記第1の容量素子は、第1の電極と、前記第1の電極との間で静電容量を構成する第2の電極と、前記基板との間で前記第1の電極及び前記第2の電極をカバーする第1のダイアフラムと、を備え、
前記第2の容量素子は、第3の電極と、前記第3の電極との間で静電容量を構成する第4の電極と、前記基板との間で前記第3の電極及び前記第4の電極をカバーする第2のダイアフラムと、を備え、
前記第2のダイアフラムの内径の大きさは前記第1のダイアフラムの内径の大きさよりも小さく、前記第2のダイアフラムの表面積の大きさは前記第1のダイアフラムの表面積の大きさよりも小さい圧力センサ。
【請求項5】
基板と、
前記基板に設けられた、第1の容量素子及び第2の容量素子と、を備え、
前記第1の容量素子は、第1の電極と、前記第1の電極との間で静電容量を構成する第2の電極と、前記基板との間で前記第1の電極及び前記第2の電極をカバーする第1のダイアフラムと、を備え、
前記第2の容量素子は、第3の電極と、前記第3の電極との間で静電容量を構成する第4の電極と、前記基板との間で前記第3の電極及び前記第4の電極をカバーする第2のダイアフラムと、を備え、
前記第2のダイアフラムの内径の大きさは前記第1のダイアフラムの内径の大きさよりも小さく、前記第2のダイアフラムと前記基板との間で構成する空洞の体積は前記第1のダイアフラムと前記基板との間で構成する空洞の体積よりも小さい圧力センサ。
【請求項6】
前記第2のダイアフラムと前記基板との間には第2の絶縁膜を含み、前記第1のダイアフラムと前記基板との間には第1の絶縁膜を含む、請求項1乃至5のいずれかに記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサは性能の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−052532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、性能の向上を図れる圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の圧力センサは、基板と、第1の容量素子とを含む。前記第1の容量素子は、前記基板上に設けられた下部電極と、前記下部電極の上方に配置された上部電極と、前記基板との間に前記下部電極及び前記上部電極を含む膜とを含む。前記第1の容量素子の周辺の温度の単位変化に対する、前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量の変化量の絶対値は略ゼロである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る圧力センサを示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る圧力センサの第1のMEMSキャパシタの平面図である。
図3図3は、図2の矢視3−3に沿った断面図である。
図4図4は、ダイアフラムアンカー径とdC/dTとの関係を模試的に示すグラフである。
図5図5は、第2の実施形態に係る圧力センサを示すブロック図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る圧力センサの第1のMEMSキャパシタの断面図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る圧力センサの第2のMEMSキャパシタの断面図である。
図8図8は、ダイアフラムアンカー径と圧力感度(dC/dP)との関係を模式的に示すグラフである。
図9図9は、ダイアフラムのドーム径とダイアフラムアンカー径と温度感度(dC/dT)との関係を模式的に示すグラフである。
図10図10は、第2の実施形態のダイアフラムアンカーの変形例を説明するための平面図である。
図11図11は、第2の実施形態のダイアフラムアンカーの他の変形例を説明するための平面図である。
図12図12は、第2の実施形態のダイアフラムアンカーの更に別の変形例を説明するための平面図である。
図13図13は、第2の実施形態のキャパシタ部の変形例を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、図面は、模式的又は概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は、必ずしも現実のものと同一であるとは限らない。図面において、同一符号は同一又は相当部分を付してあり、重複した説明は必要に応じて行う。また、簡略化のために、同一又は相当部分があっても符号を付さない場合もある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る圧力センサ1を示すブロック図である。
圧力センサ1は、キャパシタ部10と、温度センサ20と、AFE(アナログフロントエンド)回路部30と、圧力算出回路40とを含む。
キャパシタ部10は、第1のMEMSキャパシタ(第1の容量素子)11を含む。この第1のMEMSキャパシタ11はその周辺の圧力の変化に応じて静電容量が変化する。キャパシタ部10は上記静電容量に対応するアナログ信号S1を出力する。以下、第1のMEMSキャパシタ11について更に説明する
図2は第1のMEMSキャパシタ11の平面図であり、図3図2の矢視3−3に沿った断面図である。
【0009】
第1のMEMSキャパシタ11は基板100上に設けられている。基板100の厚さは、例えば、250μmである。第1のMEMSキャパシタ11は、下部電極101、配線102,103、絶縁膜104、上部電極111、アンカー121,123、ばね122、124及びダイアフラム(膜)140を含む。
【0010】
基板100は、例えば、シリコン基板(半導体基板)を含む。基板100上には下部電極101が設けられている。下部電極101は基板100上に固定されている。本実施形態では、下部電極101は平板形状を有する。下部電極101の材料は、例えば、AlCu合金である。下部電極101の厚さは、例えば、数百〜数μmである。
【0011】
また、基板100上には配線102、配線103及び絶縁膜104も設けられている。配線102は下部電極101の一端の外側に離間して配置されている。配線103は下部電極101の他端の外側に離間して配置されている。
配線102及び配線103は図示しない配線を介して第1のAFE回路30に接続される。絶縁膜104は下部電極101、配線102及び配線103の上に設けられている。配線102の上面の一部及び配線103の上面の一部が露出するように、絶縁膜103には貫通孔が設けられている。
【0012】
下部電極101の上方には絶縁膜104を介して上部電極111が配置されている。上部電極111は、アンカー121、ばね122、アンカー123及びばね124によって基板100の上方に設けられている。
本願明細書において、ある部材(例えば配線102)の下面とは基準となる部材(例えば基板100)と対向する側の面であり、部材の上面とは上記面と反対側の面である。また、ある部材(例えば下部電極101)の上方とは、基準となる部材(例えば基板100)から離れる方向の成分を持つ方向である。また、ある部材の下方とは、基準となる部材に近づく方向の成分を持つ方向である。また、ある部材上(ある部材の上)とは、上記ある部材の上面に対して直接又は間接的に接触する位置である。また、ある部材下(ある部材の下)とは、上記ある部材の下面に対して直接又は間接的に接触する位置である。
【0013】
アンカー121は配線102上に設けられている。ばね122はアンカー121と上部電極111との間に設けられている。アンカー121は、ばね122を介して、上部電極111の一辺に接続されている。
アンカー123は配線103上に設けられている。ばね124はアンカー123と上部電極111との間に設けられている。アンカー123は、ばね124を介して、上部電極111の上記一辺と対向する側の一辺に接続されている。
【0014】
本実施形態では、上部電極111は平板形状を有し、そして、下部電極101と対向するように配置されている。上部電極111の材料は、例えば、AlCu合金である。
基板100上には積層構造のダイアフラム(膜)140が設けられている。ダイアフラム140の周縁部は絶縁膜104を介して基板100に接触し、ダイアフラム140の中央部は基板100から離れている。ダイアフラム140は、絶縁膜141及びその上に設けられた絶縁膜142を含む。絶縁膜141は複数の貫通孔が設けられ、これらの貫通孔は絶縁膜142で覆われている。本実施形態の第1のMEMSキャパシタ11は犠牲膜プロセスを用いて形成するのでダイアフラム140は絶縁層141及び絶縁層142(複数の絶縁膜)を含む。絶縁膜141及び絶縁膜142の厚さは、例えば、数100nm乃至数μmである。
【0015】
下部電極101、上部電極111、アンカー121、ばね122、アンカー123及びばね124はダイアフラム140の中央部と基板100との間に収容される。ダイアフラム140は、基板100側に突出する、上部電極111に接続する突出部(以下、ダイアフラムアンカーという)140aを含んでいる。ダイアフラム140と基板100の間には空洞151がある。すなわち、ダイアフラム140の中央部と基板100の間において、下部電極101、上部電極111、アンカー121、ばね122、アンカー123及びばね124以外の空間は、空洞151である。
【0016】
圧力(環境圧力)の変化に応じてダイアフラム140は変形する。ばね122及びばね124は弾性部材である。そのため、圧力によってダイアフラム140が撓むと、その撓みかたに応じて上部電極111は下部電極101を基準にして上方又は下方に可動する。その結果、下部電極と上部電極との間の距離は変化する。圧力が高いほど上部電極111と下部電極101との間隔は短くなり、そして、上部電極111と下部電極101との間の静電容量は大きくなる。
【0017】
温度センサ20は、第1のMEMSキャパシタ11の周辺の温度を測定する。MEMSキャパシタ11の周辺の温度とは、MEMSキャパシタ11から一定の距離内にある領域の温度であって、MEMSキャパシタ11の温度との差が一定の温度内に収まる領域である。一定の距離及び一定の温度範囲は圧力センサ1に要求される仕様(例えば容量感度)に依存し、一般には、圧力センサ1に要求される仕様が高いほど、一定の距離及び一定の温度は小さくなる。温度センサ20は例えば第1のMEMSキャパシタ11と同じ基板100上に形成され、第1のMEMSキャパシタ11に近接又は隣接する。同様に、MEMSキャパシタ11の周辺の圧力とは、MEMSキャパシタ11から一定の距離内にある領域の圧力であって、MEMSキャパシタ11にかかる圧力との差が一定の圧力内に収まる領域である。一定の距離及び一定の圧力は圧力センサ1に要求される仕様に依存し、一般には、圧力センサ1に要求される仕様が高いほど、一定の距離及び一定の圧力は小さくなる。
温度センサ20は、例えば、測温抵抗体を用いている。温度センサ20は測定した温度に対応するアナログ信号S2を出力する(図1)。上部電極111と下部電極101との間の静電容量は温度依存性を有する。アナログ信号S2は、上記温度依存性に起因する圧力誤差を補正するために用いる。
【0018】
AFE回路部30は第1のAFE回路31を含む(図1)。第1のAFE回路31はA/D変換に先行するアナログ回路部分であり、アンプやフィルタなどの部品を含む。第1のAFE回路31にはアナログ信号S1及びアナログ信号S2が入力される。
アナログ信号S1,S2は微弱であり、雑音成分が含まれることも多いので、アナログ信号S1,S2をデジタル信号に変換することは難しい。そのため、第1のAFE回路31は、アナログ信号S1,S2のレベルを増幅したり、アナログ信号S1,S2の波形を整えたりするなどの処理を行う。すなわち、第1のAFE回路31は、アナログ信号S1,S2を容易にA/D変換できるように、アナログ信号S1,S2を処理する。第1のAFE回路31はアナログ信号S3を出力する。
【0019】
圧力算出回路40にはアナログ信号S3が入力される。圧力算出回路40はアナログ信号S3に基づいて圧力を算出し、そして、上記圧力に対応するデジタル信号S4を出力する。デジタル信号S4は、例えば、圧力センサ1内の他の回路(不図示)、圧力センサ1外の他の回路、又は、圧力センサ1とは別のデバイス(装置)に入力される。
【0020】
上述したように上部電極111と下部電極101との間の静電容量は温度依存性を有する。ここで、上記静電容量をCとし、第1のMEMSキャパシタ11の周辺の温度をTとし、第1のMEMSキャパシタ11の周辺の圧力をPとすると、下記の式(1)が成り立つ。
【0021】
dP/dT=dP/dC × dC/dT (1)
dP/dTは圧力の温度微分であり、dP/dCは圧力の静電容量微分であり、dC/dTは静電容量の温度微分である。
例えば、dP/dCが1/73.0[Pa/aF]、dC/dTが26.7[fF/K]の場合、dP/dTは366[Pa/K]となる。すなわち、温度が1[℃]変わると、圧力は366[Pa]も変化する。
【0022】
上記の例において、圧力センサ1の圧力分解能を6.67[Pa]にするには、温度の測定は0.01℃のオーダーで行う必要がある。これを実現するには、第1のAFE回路31は、0.01℃のオーダーでアナログ信号S2を処理する必要がある。このような処理を行うためには多数の素子を用いたアンプやフィルタなどの部品が必要となり、第1のAFE回路31(AFE回路部30)は大型化する。
【0023】
そこで、本実施形態では、以下の考察に基づいてダイアフラムアンカー140aを改良することにより、AFE回路31の大型化を抑制する。
図4は、ダイアフラムアンカー140aの径(以下、アンカー径という)とdC/dTとの関係を模試的に示すグラフである。
【0024】
アンカー径は、ダイアフラムアンカー140と上部電極111との接触面の面積の大きさを規定する寸法である。上記接触面の形状が円の場合、その円の直径がアンカー径となる。
図4に示すように、dC/dTがゼロとなるアンカー径(ε)が存在する。すなわち、一定の範囲内にあるアンカー径を用いれば、温度Tの単位変化に対する静電容量Cの変化量の絶対値|ΔC|を略ゼロ(例えば、100[℃]以下)とすることができる。
【0025】
また、絶対値|ΔC|が略ゼロであれば、式(1)からdP/dTは略ゼロとなる。これにより、圧力センサ1の圧力の分解能を6.67[Pa]とする場合でも、温度の測定は例えば1[℃]のオーダーで行えばよく、第1のAFE回路31の大型化を抑制することができる。
【0026】
本実施形態によれば、一定の範囲内にあるアンカー径を用いれば、温度Tの単位変化に対する静電容量Cの変化量の絶対値|ΔC|(温度感度(dC/dP))を十分に小さくすることができる。絶対値|ΔC|(温度感度dC/dP)が、例えば、1[fF/K]以下であれば、圧力感度(dP/dT)温度は例えば13.7という小さい値にすることができ、その結果として、第1のAFE回路31の大型化を抑制することができる。したがって、本実施形態に係る圧力センサ1は、性能の向上を図ることができる。
【0027】
なお、本実施形態では、一つの第1のMEMSキャパシタ11を用いたが、複数の第1のMEMSキャパシタ11を用いても構わない。一般に、第1のMEMSキャパシタ11の数が多いほど、小さな圧力の変化でも静電容量の変化を検出できるため、圧力感度(dC/dP)は高くなる。
【0028】
(第2の実施形態)
第1の実施形態で説明したように、一定の範囲内にあるアンカー径を用いれば、温度Tの単位変化に対する静電容量Cの変化量の絶対値|ΔC|(温度感度(dC/dP))を十分に小さくすることができる。本実施形態では、製造プロセスのばらつきにより、アンカー径にばらつきが生じ、アンカー径が設計値がずれた場合でも、温度感度(dC/dT)に起因する容量誤差を小さくすることができる圧力センサについて説明する。
【0029】
図5は、第2の実施形態に係る圧力センサ1を示すブロック図である。
圧力センサ1は、キャパシタ部10と、温度センサ20と、AFE回路部30と、圧力算出回路40とを含む。
キャパシタ部10は、第1のMEMSキャパシタ11及び第2のMEMSキャパシタ(第2の容量素子)12を含む。
【0030】
本実施形態の第1のMEMSキャパシタ11は、第1のMEMSキャパシタ11の第1のMEMSキャパシタ11と同じであり、圧力を検出するために用いられる圧力検出用の容量素子であり、一定以上の圧力感度(dC/dP)を有する。第1のMEMSキャパシタ11は、第1の実施形態と同様に、アナログ信号S1を出力する。しかし、アンカー径が最適値がずれている場合、温度感度(dC/dT)に起因する容量誤差をアナログ信号S1は含むことになる。
【0031】
第2のMEMSキャパシタ12は、温度感度(dC/dT)に起因する容量誤差を補正するために用いられる参照用の容量素子である。そのためには、第2のMEMSキャパシタ12は、第1のMEMキャパシタ11よりも小さい圧力感度(dC/dP)を有する。第1のMEMSキャパシタ11と同じ又は略同じ、或いは比が常に一定となる温度感度(dC/dT)を有する。第2のMEMSキャパシタ12はその静電容量に対応するアナログ信号S1’を出力する。
【0032】
温度感度(dC/dT)に起因する容量誤差がない場合、アナログ信号S1はアナログ信号S1’と同じ又は略同じになる。そのため、アナログ信号S1とアナログ信号S1’の差分は、容量誤差を補正するための補正情報として用いることができる。
AFE回路部30は、第1のAFE回路31及び第2のAFE回路32を含む。第1の実施形態と同様に、第1のAFE回路31にはアナログ信号S1,S2が入力され、そして、第1のAFE回路31からはアナログ信号S3が出力される。一方、第2のAFE回路32にはアナログ信号S1’が入力され、そして、第2のAFE回路32からはアナログ信号S3’が出力される。
【0033】
圧力算出回路40にはアナログ信号S3,S3’が入力される。圧力算出回路40はアナログ信号S3に基づいて圧力を算出する。また、圧力算出回路40は、アナログ信号S3とアナログ信号S3’との差分、つまり、アナログ信号S1とアナログ信号S1’の差分に対応する補正情報に基づいて、上記算出した圧力を補正する。そして、圧力算出回路40は、上記補正した圧力に対応するデジタル信号S4を出力する。
【0034】
図6は第1のMEMSキャパシタ11の断面図であり、図7は第2のMEMSキャパシタ12の断面図である。
図6中の参照符号D1は第1のMEMSキャパシタ11のダイアフラム140の径(以下、ドーム径という)を示している。ドーム径D1は、ダイアフラム140とその下地(本実施形態では絶縁膜104)との接触で規定される閉曲線の径であり、例えば、閉曲線が円の場合、円の直径がドーム径D1である。また、閉曲線が正八角形の場合、正八角形の対向する二辺の間の距離がドーム径D1である。同様に、図7中の参照符号D2は第2のMEMSキャパシタ12のドーム径を示している。
【0035】
本実施形態では、D1>D2である。図8を用いてその理由を説明する。
図8は、ドーム径(φ1>φ2>φ3>φ4)とダイアフラムアンカー径(以下、アンカー径という)と圧力感度(dC/dP)との関係を模式的に示すグラフである。
図8に示すように、ドーム径が小さいほど、圧力感度(dC/dP)は小さい。そのため、ドーム径D1よりもドーム径D2を小さくすれば、第1のMEMSキャパシタ11よりも圧力感度(dC/dP)の低い第2のMEMSキャパシタ12を実現することが可能となる。さらに、ドーム径D2を一定値以下にすれば、圧力感度(dC/dP)が一定値以下の第2のMEMSキャパシタ12を実現することが可能となる。また、ドーム径が小さいほど、圧力感度(dC/dP)へのアンカー径の依存性は小さい。
【0036】
そこで、本実施形態では、図6及び図7に示したようにドーム径D1よりもドーム径D2を小さくしている。この場合、基板100の上方から見て、ドーム径D2を有する第2のMEMSキャパシタ12のダイアフラム140の面積は、ドーム径D1を有する第1のMEMSキャパシタ11のダイアフラム140の面積よりも小さい。
【0037】
また、図6中の参照符号A1は、第1のMEMSキャパシタ11のアンカー径を示している。図7中の参照符号A2は、第2のMEMSキャパシタ12のアンカー径を示している。
図9は、ドーム径(φ1>φ2>φ3>φ4)とアンカー径と温度感度(dC/dT)との関係を模式的に示すグラフである。
【0038】
図9に示すように、ドーム径にかかわらず、温度感度(dC/dT)がゼロ付近のアンカー径が存在し、その結果として、第1のMEMSキャパシタ11と同じ又は略同じ、或いは比が常に一定となる温度感度(dC/dT)を有する第2のMEMSキャパシタ12を実現することが可能となる。
【0039】
なお、第1のMEMSキャパシタ11及び第2のMEMSキャパシタ12は、同一ウエハ内において近接して形成されるので、第1のMEMSキャパシタ11及び第2のMEMSキャパシタ12のプロセス上のばらつきは小さい。
図10乃至図12は、本実施形態のダイアフラムアンカー140aの変形例を説明するための平面図であり、上部電極111からダイアフラムアンカー140aを見た場合の平面パターンを示している。
【0040】
本実施形態の場合、第1のMEMSキャパシタ11及び第2のMEMSキャパシタ12の両方において、ダイアフラムアンカー140aの数(ダイアフラムアンカー数)は1であるが、第1のMEMSキャパシタ11及び第2のMEMSキャパシタ12の少なくとも一方において、ダイアフラムアンカー数は、図10乃至図12に示すように、2以上でも構わない。言い換えれば、ダイアフラムアンカーは分割しても構わない。
【0041】
図10(a)は、ダイアフラムアンカー数が4であり、円環数が2である平面パターンを示している。は最外周の円環の一部にダイアフラムアンカーを配置していることを示している。図10(a)の場合、最外周の円環には三つのダイアフラムアンカーを配置している。図10(b)は、ダイアフラムアンカー数が5であり、円環数が2である平面パターンを示している。図10(c)は、ダイアフラムアンカー数が7であり、円環数が2である平面パターンを示している。図10の複数のダイアフラムアンカーは線対称を有する。
【0042】
図11(a)は、ダイアフラムアンカー数が13であり、円環数が3である平面パターンを示している。図11(b)は、ダイアフラムアンカー数が19であり、円環数が3である平面パターンを示している。図11(c)は、ダイアフラムアンカー数が25であり、円環数が4である平面パターンを示している。
【0043】
図12(a)は、ダイアフラムアンカー数が31であり、円環数が4である平面パターンを示している。図12(b)は、ダイアフラムアンカー数が37であり、円環数が4である平面パターンを示している。
図13は、本実施形態のキャパシタ部10の別の形態例を説明するための平面図である。
【0044】
本実施形態では、キャパシタ部10の第1のMEMSキャパシタ11の個数は1であるが、上記個数は2以上でも構わない。複数の第1のMEMSキャパシタ11は電気的に並列に接続される。
また、本実施形態のキャパシタ部10の第1のMEMSキャパシタ11の個数は2以上であり、各第1のMEMSキャパシタ11毎に複数の第2のMEMSキャパシタ12が設けられていても構わない。
【0045】
上述した実施形態の上位概念、中位概念及び下位概念の一部又は全て、及び、上述していないその他の実施形態は、例えば、以下の付記1−12、及び、付記1−12の任意の組合せ(明らかに矛盾する組合せは除く)で表現できる。
[付記1]
基板と、
第1の容量素子とを具備し、
前記第1の容量素子は、
前記基板上に設けられた下部電極と、
前記下部電極の上方に配置された上部電極と、
前記基板との間に前記下部電極及び前記上部電極を含む膜とを含み、
前記第1の容量素子の周辺の温度の単位変化に対する、前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量の変化量の絶対値は略ゼロである圧力センサ。
[付記2]
前記基板及び前記膜は、前記下部電極及び前記上部電極を含む付記1に記載の圧力センサ。
[付記3]
前記第1の容量素子に接続された第1のAFE(Analog Front End)回路と、
前記第1のAFE回路に接続された圧力算出回路と
をさらに具備する付記1又は2に記載の圧力センサ。
[付記4]
前記第1の容量素子において、前記膜は前記上部電極に接続する突出部を含む付記3に記載の圧力センサ。
[付記5]
基板と、
第1の容量素子とを具備し、
前記第1の容量素子は、
前記基板上に設けられた下部電極と、
前記下部電極の上方に配置された上部電極と、
前記基板との間に前記下部電極及び前記上部電極を含み、前記上部電極にコンタクトする突出部を備える膜とを含み、
前記突出部は、前記第1の容量素子の周辺の温度の単位変化に対する、前記下部電極と前記上部電極との間の静電容量の変化量の絶対値は略ゼロとなる径を有する圧力センサ。
[付記6]
前記下部電極は前記基板上に固定され、
前記膜は圧力の変化に応じて変形し、
前記上部電極は前記膜の変形に応じて前記下部電極を基準にして上方又は下方に可動する付記5に記載の圧力センサ。
[付記7]
基板と、
第1の容量素子と、
第2の容量素子とを具備し、
前記第1の容量素子及び前記第2の容量素子の各々は、
前記基板上に設けられた下部電極と、
前記下部電極の上方に配置された上部電極と、
前記下部電極及び前記上部電極を含む膜とを含み、
前記第1の容量素子の周辺の圧力の単位変化に対する、前記第1の容量素子の前記下部電極と前記上部電極との間の第1の静電容量の変化量の絶対値は、前記第2の容量素子の周辺の圧力の単位変化に対する、前記第2の容量素子の前記下部電極と前記上部電極との間の第2の静電容量の変化量の絶対値よりも大きく、
前記第1の容量素子の周辺の温度の単位変化に対する前記第1の静電容量の変化量の絶対値は、前記第2の容量素子の周辺の温度の単位変化に対する前記第2の静電容量の変化量の絶対値と略等しい、或いは比が一定である圧力センサ。
[付記8]
前記基板及び前記膜は、前記下部電極及び前記上部電極を含む付記7に記載の圧力センサ。
[付記9]
前記基板の上方から見て、前記第2の容量素子の前記膜の面積は、前記第1の容量素子の前記膜の面積よりも小さい付記7又は8に記載の圧力センサ。
[付記10]
前記第1の容量素子及び前記第2の容量素子の各々において、前記膜は前記基板側に突出し、前記上部電極にコンタクトする突出部を含む
付記8又は9に記載の圧力センサ。
[付記11]
前記第1の容量素子に接続された第1のAFE回路と、
前記第2の容量素子に接続された第2のAFE回路と、
前記第1のAFE回路及び前記第2のAFE回路に接続された圧力算出回路と
をさらに具備する付記7乃至10のいずれかに記載の圧力センサ。
[付記12]
前記第1の容量素子及び前記第2の容量素子の各々において、
前記下部電極は前記基板上に固定され、
前記膜は圧力の変化に応じて変形し、
前記上部電極は前記膜の変形に応じて上方向又は下方向に可動する付記7乃至11のいずれかに記載の圧力センサ。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…圧力センサ、10…キャパシタ部、11…第1のMEMSキャパシタ(第1の容量素子)、12…第2のMEMSキャパシタ(第2の容量素子)、20…温度センサ、30…AFE回路部、31…第1のAFE回路、32…第2のAFE回路、40…圧力算出部、100…基板、101…下部電極、102,103…配線、104…絶縁膜、111…上部電極、121…アンカー、122…ばね、123…アンカー、124…ばね、140…ダイアフラム(膜)、140a…ダイアフラムアンカー、141,142…絶縁膜、151…空洞。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13