【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車体側部構造は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、
本出願の一の発明に係る車体側部構造は、前輪(例えば、実施形態の前輪2)の後方位置で車両上下方向に略沿って延びるフロントピラー(例えば、実施形態のフロントピラー3)と、車両側部の下方位置で車両前後方向に略沿って延び、前端部が前記フロントピラーの下縁部に結合されるサイドシル(例えば、実施形態のサイドシル4)と、を備え、前記フロントピラーは、車幅方向内側に配置されるピラーインナパネル(例えば、実施形態のピラーインナパネル10)と、前記ピラーインナパネルの車幅方向外側に接合されて、前記ピラーインナパネルとともに車両上下方向に略沿う閉断面を形成するピラーアウタパネル(例えば、実施形態のピラーアウタパネル11)と、を有し、前記サイドシルは、車幅方向内側に配置されるシルインナパネル(例えば、実施形態のシルインナパネル12)と、前記シルインナパネルの車幅方向外側に接合されて、前記シルインナパネルとともに車両前後方向に略沿う閉断面を形成するシルアウタパネル(例えば、実施形態のシルアウタパネル13)と、を有し、前記ピラーアウタパネルの車幅方向外側の側壁(例えば、実施形態の側壁11a)と前壁(例えば、実施形態の前壁11b)とは、前記サイドシルと上下方向でラップする位置まで下方に延び、前記シルアウタパネルの車幅方向外側の側壁(例えば、実施形態の側壁13a)の前部には、前記ピラーアウタパネルの前記前壁との間に非連続部を形成する欠損部(例えば、実施形態の欠損部14)が設けられ、前記ピラーアウタパネルの内側面のうちの前記フロントピラーの前記閉断面の後部となる
領域は、車両上下方向に延びる補強板(例えば、実施形態の補強板15)が結合され
ることにより前記フロントピラーの前記閉断面の前部となる領域に対して相対的に剛性が高く設定され、前記補強板の下端は、前記欠損部の後方側で当該欠損部と上下方向でラップする位置まで延び、前記ピラーアウタパネルの前記側壁の下縁部は、前記シルアウタパネルの車幅方向外側の側壁に接合され、
前記補強板の前端部は、前記シルアウタパネルの前記欠損部に臨む縦壁(例えば、実施形態の縦壁14a)と上下方向でほぼ直線状に並ぶように配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成により、フロントピラーの前部に前輪側から衝撃荷重が入力されると、補強板によって補強されたフロントピラーの閉断面の後部領域を残すように、その閉断面の前部領域が先に潰れ変形する。このとき、サイドシルの前方部分では、補強板の延在領域の前方の相対的に剛性の低い部分が併せて潰れ変形する。サイドシルの前方部分は、シルアウタパネルの車幅方向外側の側壁の前部に欠損部が設けられ、その欠損部がピラーアウタパネルの下縁部の側壁によって覆われるとともに、欠損部の後部に補強板の下縁部が延在している。このため、フロントピラーの前方からの衝撃荷重の入力時には、剛性の高い補強板の延在部の前方側において、サイドシルの前方部分が潰れ残り無く容易に塑性変形する。この結果、入力された衝撃荷重のエネルギーは、フロントピラーとサイドシルの前部領域の塑性変形によって吸収される。
【0009】
前記シルアウタパネルは、前記欠損部の位置される車両前後方向位置において前記フロントピラーの下方を覆う底壁部(例えば、実施形態の底壁部13w)を有する構成としても良い。
【0010】
この場合、フロントピラーの下方がシルアウタパネルの底壁部によって覆われるため、別体の蓋部材を追加することなくフロントピラーの内部への水や埃の進入を防止でき、しかも、フロントピラーの前方から衝撃荷重が入力された際に車輪が車外側に弾き出され、車輪が車室内に進入するのを抑制することができる。
【0011】
前記ピラーアウタパネルの少なくとも一部は、車幅方向内側に開口が向き、車幅方向外側に前角部(例えば、実施形態の前角部11cf)と後角部(例えば、実施形態の後角部11cr)を有する略ハット状の断面形状に形成され、前記補強板の少なくとも一部は、前記後角部の内面に沿って略L字状の断面形状に形成されるようにしても良い。
【0012】
この場合、ピラーアウタパネルの後角部が補強板の略L字状の断面によって効率良く補強されるため、フロントピラーの閉断面の後部領域の剛性をより高めることができる。この結果、フロントピラーの前部領域の剛性が相対的に低くなり、前方からの衝撃荷重の入力時に、フロントピラーの前部領域をよりスムーズに潰れ変形させることが可能になる。
【0013】
また、本出願の他の発明に係る車体側部構造は、前輪(例えば、実施形態の前輪2)の後方位置で車両上下方向に略沿って延びるフロントピラー(例えば、実施形態のフロントピラー3)と、車両側部の下方位置で車両前後方向に略沿って延び、前端部が前記フロントピラーの下縁部に結合されるサイドシル(例えば、実施形態のサイドシル4)と、を備え、前記フロントピラーは、車幅方向内側に配置されるピラーインナパネル(例えば、実施形態のピラーインナパネル10)と、前記ピラーインナパネルの車幅方向外側に接合されて、前記ピラーインナパネルとともに車両上下方向に略沿う閉断面を形成するピラーアウタパネル(例えば、実施形態のピラーアウタパネル11)と、を有し、前記サイドシルは、車幅方向内側に配置されるシルインナパネル(例えば、実施形態のシルインナパネル12)と、前記シルインナパネルの車幅方向外側に接合されて、前記シルインナパネルとともに車両前後方向に略沿う閉断面を形成するシルアウタパネル(例えば、実施形態のシルアウタパネル13)と、を有し、前記ピラーアウタパネルの車幅方向外側の側壁(例えば、実施形態の側壁11a)と前壁(例えば、実施形態の前壁11b)とは、前記サイドシルと上下方向でラップする位置まで下方に延び、前記シルアウタパネルの車幅方向外側の側壁(例えば、実施形態の側壁13a)の前部には、前記ピラーアウタパネルの前記前壁との間に非連続部を形成する欠損部(例えば、実施形態の欠損部14)が設けられ、前記ピラーアウタパネルの内側面のうちの前記フロントピラーの前記閉断面の後部となる領域には、車両上下方向に延びる補強板(例えば、実施形態の補強板15)が結合され、前記補強板の下端は、前記欠損部の後方側で当該欠損部と上下方向でラップする位置まで延び、前記ピラーアウタパネルの前記側壁の下縁部は、前記シルアウタパネルの車幅方向外側の側壁に接合されており、前記フロントピラーの車幅方向内側には、ダッシュロア(例えば、実施形態のダッシュロア22)とダッシュクロスメンバ(例えば、実施形態のダッシュクロスメンバ24A,24B)とによる車幅方向に延びる閉断面部(例えば、実施形態の閉断面部25)が配置され、前記フロントピラーの前記閉断面内には、当該閉断面を補強するバルクヘッド(例えば、実施形態のバルクヘッド20)が固定され、前記バルクヘッドは、屈曲稜線(例えば、実施形態の屈曲稜線21L)が車幅方向に略沿って延びる段差部(例えば、実施形態の段差部21)を有し、前記段差部の前記屈曲稜線は、前記ダッシュロアと前記ダッシュクロスメンバとによる前記閉断面部の屈曲稜線(例えば、実施形態の屈曲稜線23L)とほぼ直線状に整列
していることを特徴とする。
【0014】
この場合、バルクヘッドの段差部が、車幅方向に連続するダッシュロアとダッシュクロスメンバとによる閉断面部の屈曲稜線によって効率良く補強されることになる。このため、フロントピラーの前方から衝撃荷重が入力されたときにバルクヘッドの段差部の前方側領域が屈曲変形し易くなる。この結果、衝撃荷重の入力時におけるフロントピラーの前部領域の潰れ変形が容易になる。また、フロントピラーに車幅方向外側から衝撃荷重が入力された場合には、その荷重をバルクヘッドの段差部を通してダッシュロアとダッシュクロスメンバとによる閉断面部に効率良く伝達することができる。さらに、バルクヘッドの段差部の屈曲稜線と、ダッシュロアとダッシュクロスメンバによる閉断面部の屈曲稜線とが、車幅方向で連続するように、フロントピラーの車幅方向内側にダッシュロアとダッシュクロスメンバが配置されているため、フロントピラーの曲げや捩り剛性を効率良く高めることができる。
【0015】
前記バルクヘッドの前記段差部は、前記補強板よりも前方側に配置されることが望ましい。
【0016】
この場合、フロントピラーの前方から衝撃荷重が入力されたときに、バルクヘッドの段差部を起点としたフロントピラーの前部領域の変形を補強板が阻害しにくくなる。このため、段差部を起点としたフロントピラーの前部領域の変形により、衝撃荷重のエネルギーの吸収量を増大させることができる。
【0017】
前記ピラーアウタパネルの下縁部は、車幅方向外側に向く側壁(例えば、実施形態の側壁11a)と、車両前方に向く前壁(例えば、実施形態の前壁11b)とを有し、前記側壁は、前記シルアウタパネルの車幅方向外側の側壁(例えば、実施形態の側壁13a)に結合され、前記前壁は、前記サイドシルの前部とフロントサイドフレーム(例えば、実施形態のフロントサイドフレーム8)の後部を連結するアウトリガー(例えば、実施形態のアウトリガー9)に結合されるようにしても良い。
【0018】
この場合、側壁と前壁とから成る前角部を補強板の下方の延出部の前方側に形成することができる。また、ピラーアウタパネルの下縁部の前壁がアウトリガーに結合されるため、ピラーアウタパネルの下縁部の車幅方向内側の支持剛性を高めることができる。
【0019】
前記サイドシルの前端部領域には、ジャッキアッププレート(例えば、実施形態のジャッキアッププレート26)が配置され、前記ジャッキアッププレートは、前記フロントピラーの前記閉断面内で、車幅方向と略直交する方向に延在する本体プレート部(例えば、実施形態の本体プレート部26a)と、前記本体プレート部の上部から車幅方向外側に屈曲し、上面が前記バルクヘッドの前記段差部よりも後方側領域の下面に結合される上部フランジ(例えば、実施形態の上部フランジ26b)と、を備えるようにしても良い。
【0020】
この場合、ジャッキアッププレートの下方から入力された荷重を、バルクヘッドの段差部よりも後方側領域を通してフロントピラーの閉断面に支持させることができる。また、ジャッキアッププレートの上部フランジは、バルクヘッドの段差部よりも後方側領域に結合されているため、フロントピラーに前方側から衝撃荷重が入力されたときに、上部フランジがフロントピラーの前部領域の潰れ変形を阻害することがない。
【0021】
前記ジャッキアッププレートは、前記本体プレート部の前端部から車幅方向内側に屈曲する前屈曲部(例えば、実施形態の前屈曲部26c)をさらに有し、前記本体プレート部は、前記シルインナパネルと前記シルアウタパネルの接合部間に挟持固定され、前記前屈曲部は、前記サイドシルの前部とフロントサイドフレーム(例えば、実施形態のフロントサイドフレーム8)を連結するアウトリガー(例えば、実施形態のアウトリガー9)に結合されるようにしても良い。
【0022】
この場合、フロントピラーの下部領域の車幅方向内側部分が、ジャッキアッププレートの本体プレート部と前屈曲部によって補強される。このため、フロントピラーの前方側からピラーアウタパネルの前角部に衝撃荷重が入力されたときに、前角部を中心としてフロントピラーの前部領域を変形させ易くなる。
【0023】
前記サイドシルの前記閉断面内には、当該閉断面を補強する第2バルクヘッド(例えば、実施形態の第2バルクヘッド27)が固定され、前記第2バルクヘッドは、前記サイドシルのうちの、前記フロントピラーの下部領域で下方かつ後方に延びる湾曲形状部(例えば、実施形態の湾曲形状部11r)よりも車両後方側位置に配置されるようにしても良い。
【0024】
この場合、第2バルクヘッドが、サイドシルの閉断面内の、フロントピラーの湾曲形状部よりも車両後方側位置に配置されているため、フロントピラーに前方側から衝撃荷重が入力されたときに、湾曲形状部の下端に伝達された荷重によってサイドシルの断面が潰れ変形するのを第2バルクヘッドによって効率良く抑制することができる。このため、サイドシルの断面の潰れに伴うフロントピラーの後方側への倒れ込みを抑制することができる。
【0025】
前記シルアウタパネルは、車幅方向外側に向く側壁(例えば、実施形態の側壁13a)と、前記側壁の上端部から車幅方向内側に屈曲して延びる上壁(例えば、実施形態の上壁13b)と、を有し、前記ピラーアウタパネルの後部下方領域は、車両後方側に向かって湾曲して延び、かつ、前記後角部が前記シルアウタパネルの前記側壁と前記上壁とに結合され、前記補強板は、車幅方向外側に向く補強板本体部(例えば、実施形態の補強板本体部17)と、前記補強板本体部の後部から車幅方向内側に屈曲して延びる車幅延出部(例えば、実施形態の車幅延出部18)と、を有し、前記補強板の前記車幅延出部の下端と前記シルアウタパネルの前記上壁との間には隙間(例えば、実施形態の隙間d)が設定されるようにしても良い。
【0026】
この場合、ピラーアウタパネルの後部下方領域の後角部がシルアウタパネルの側壁と上壁とに結合されているため、フロントピラーに作用する後方側への倒れ込み荷重をシルアウタパネルの上壁によって効率良く受け止めることができる。このため、フロントピラーの後方側への倒れ込みを抑制することができる。また、補強板の車幅延出部の下端とシルアウタパネルの上壁との間に隙間が設定されているため、補強板の製造誤差等があっても、ピラーアウタパネルとシルアウタパネルの組付時に、補強板の車幅延出部の下端がシルアウタパネルの上壁と干渉することがない。したがって、本構成を採用した場合には、ピラーアウタパネルとシルアウタパネルの組み付け作業に支障を来すことがない。
【0027】
前記補強板の前記車幅延出部には、車幅方向に沿って延びる補強ビード(例えば、実施形態の補強ビード30)が設けられるようにしても良い。
【0028】
この場合、フロントピラーの閉断面の車幅方向の剛性を、補強板の車幅延出部に設けられた補強ビードによって効率良く高めることができる。また、補強板を高強度鋼板によって形成した場合にも、不要な成形皺の発生を補強ビードの形状によって抑制し、ピラーアウタパネルの後角部と補強板の車幅延出部とを精度良く重ね合わせて、補強板本体部の延出部の前端部を、シルアウタパネルの欠損部に臨む縦壁と上下方向でほぼ直線状に並ぶように配置することができる。
【0029】
前記補強板の上部領域は、上端から前輪に向けて前下方に傾斜するようにしても良い。
【0030】
この場合、前輪からフロントピラーに衝撃荷重が入力されたときに、補強板の上部領域の傾斜部分を通して、入力荷重をフロントピラーからルーフサイドレール側に効率良く伝達することができる。
【0031】
前記補強板には、ドアヒンジを固定するヒンジ固定部(例えば、実施形態のヒンジ固定孔19)が設けられるようにしても良い。
【0032】
この場合、衝撃荷重の入力時に変形の生じにくい補強板にヒンジ固定部が設けられているため、ヒンジ固定部が変形することによるフロントドアの開き不良を抑制することができる。