特許第6961671号(P6961671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6961671-二次電池の火災防止システム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961671
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】二次電池の火災防止システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20211025BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20211025BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20211025BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20211025BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20211025BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20211025BHJP
【FI】
   H01M10/633
   H01M10/613
   H01M10/651
   H01M10/6563
   H01M10/48 301
   H01M50/204 401H
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-233975(P2019-233975)
(22)【出願日】2019年12月25日
(62)【分割の表示】特願2015-210966(P2015-210966)の分割
【原出願日】2015年10月27日
(65)【公開番号】特開2020-47606(P2020-47606A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2019年12月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-219995(P2014-219995)
(32)【優先日】2014年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229405
【氏名又は名称】日本ドライケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大木 健二
(72)【発明者】
【氏名】砂原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】堀越 めぐみ
【審査官】 早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−219732(JP,A)
【文献】 特開2009−238654(JP,A)
【文献】 特開2011−150976(JP,A)
【文献】 特開2004−079316(JP,A)
【文献】 特開2003−068266(JP,A)
【文献】 特開2005−243580(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/073012(WO,A1)
【文献】 特開2002−063931(JP,A)
【文献】 特開2012−228051(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/015003(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/60−10/667
H01M10/42−10/48
H01M50/20−50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池が収容された蓄電室内に、消火剤であるCO2ガスを放出する消火剤放出ノズルが冷却のために二次電池に向けて複数配置され、
前記消火剤を液体のCO2ガスとして貯蔵する貯蔵容器を備え、
前記二次電池には、前記二次電池の発火に至る前の異常温度を検知する温度センサーが取り付けられ、
前記温度センサーからの異常温度検出信号を受信する制御装置を備え、
前記制御装置は前記異常温度検出信号を受信したときに、前記貯蔵容器から前記消火剤を前記消火剤放出ノズルへ送るように構成され、
前記消火剤は前記消火剤放出ノズルから前記二次電池に向けて放出され、
前記二次電池の損壊を防いで前記二次電池の電池性能が損なわれないような冷却をするために、前記消火剤は前記蓄電室の容積から前記二次電池の体積を減じた体積1m3当たりの消火剤の量に対して少なくとも2倍以上の量が貯蔵されることを特徴とする二次電池の火災防止システム。
【請求項2】
二次電池が収容された蓄電室内に、消火剤であるCO2ガスを放出する消火剤放出ノズルが冷却のために二次電池に向けて複数配置され、
前記消火剤を貯蔵する貯蔵容器を備え、
前記二次電池には、前記二次電池の発火に至る前の異常温度を検知する温度センサーが取り付けられ、
前記温度センサーからの異常温度検出信号を受信する制御装置を備え、
前記制御装置は前記異常温度検出信号を受信したときに、前記貯蔵容器から前記消火剤を前記消火剤放出ノズルへ送るように構成され、
前記消火剤は前記消火剤放出ノズルから前記二次電池に向けて放出され、
前記二次電池の損壊を防いで前記二次電池の電池性能が損なわれないような冷却をするために、前記消火剤は前記蓄電室の容積から前記二次電池の体積を減じた体積1m3当たりの消火剤の量に対して少なくとも2倍以上の量が貯蔵され、
前記蓄電室には、前記蓄電室内に冷風や空気を循環させるための送風装置又は開口部が設けられ、
前記制御装置は、前記温度センサーにより前記二次電池の異常温度を検知した場合、
前記送風装置を停止させ又は前記開口部を閉止させ、かつ、前記二次電池の蓄電回路を切り、電気の流れを停止させた後、
少なくとも前記二次電池の温度が予め設定された安全温度である60度に降下するまで前記消火剤放出ノズルから前記消火剤の放出を続けるように制御する、
ことを特徴とする二次電池の火災防止システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の二次電池の火災防止システムであって、
前記消火剤は前記蓄電室の容積から前記二次電池の体積を減じた体積に対して少なくとも7.7kg/m3が貯蔵されることを特徴とする二次電池の火災防止システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の二次電池の火災防止システムであって、
前記異常温度は、前記二次電池が熱暴走を起こすときの温度から前記二次電池が破裂発火に至る前迄の温度であることを特徴とする二次電池の火災防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、太陽光発電など自然発電設備で発電した電気を貯める二次電池の過充電や過放電による異常発熱によって起こる火災の発生を抑止する二次電池の火災防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電など自然発電設備が多く設置されるに至り、ここで発電した電気がリチウムイオン電池で代表される二次電池に蓄電するといったことが行われている。周知のように、リチウムイオン電池などの二次電池にあっては、過充電や過放電された場合、温度が異常に上昇する場合があり、温度上昇により二次電池が異常発熱すると熱暴走が起こり、電池セル内の電解液が膨張して爆発し発火へと進行する。
【0003】
従来、二次電池の異常発熱による発火に対応する手段として、電池本体に、加熱分解によってCOガスを発生する無機酢酸塩もしくは無機炭酸水素塩からなる潜熱蓄熱材を含む蓄熱部材を取付け、電池が異常な温度上昇による発熱によって熱暴走を起こし、電池が発火して火災となった場合、火災の燃焼熱により潜熱蓄熱材が分解してCOガスを発生し、燃焼に必要な酸素の供給を妨げ、消火もしくは延焼を防止できるようにした二次電池がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−178909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている二次電池では、電池が発火して火災が発生したときに消火もしくは延焼を防止するようになっており、二次電池の熱暴走を積極的に抑えるものとはなっておらず、熱暴走が起きたときは電池火災の発生は避けられず、火災の発生した電池の消火はできても、消火した電池の使用は全く不可能となるばかりか、場合によっては周囲の二次電池に引火し、大規模な蓄電池システムであれば、爆発的火災を引き起こす可能性があるといった問題がある。
【0006】
本発明者はかかる問題に鑑み、二次電池に熱暴走が起こった場合、発火する前に速やかに熱暴走を抑えるべく、種々の研究と実験を重ねた結果、熱暴走を起こす異常な温度上昇により発熱した二次電池を急冷することによって、熱暴走を抑止できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0007】
本発明の目的は、二次電池の異常温度上昇による発熱で起きる熱暴走を抑止し、火災の発生を未然に防ぐとともに、二次電池の損壊を防ぎ電池性能を損なわないことが期待できる経済的な二次電池の火災防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、二次電池が収容された蓄電室内に、消火剤であるCOガスを放出する消火剤放出ノズルが冷却のために二次電池に向けて複数配置され、前記消火剤を貯蔵する貯蔵容器を備え、前記二次電池には、前記二次電池の発火に至る前の異常温度を検知する温度センサーが取り付けられ、前記温度センサーからの異常温度検出信号を受信する制御装置を備え、前記制御装置は前記異常温度検出信号を受信したときに、前記貯蔵容器から前記消火剤を前記消火剤放出ノズルへ送るように構成され、前記消火剤は前記消火剤放出ノズルから前記二次電池に向けて放出され、前記二次電池の損壊を防いで前記二次電池の電池性能が損なわれないような冷却をするために、前記消火剤は前記蓄電室の容積から前記二次電池の体積を減じた体積に対して少なくとも1.5kg/mが貯蔵される二次電池の火災防止システムである。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係る二次電池の火災防止システムであって、前記消火剤は、前記蓄電室の容積から前記二次電池の体積を減じた体積に対して少なくとも7.7kg/mが貯蔵される二次電池の火災防止システムである。
【0010】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明に係る二次電池の火災防止システムであって、前記異常温度は、前記二次電池が熱暴走を起こすときの温度から前記二次電池が破裂発火に至る前迄の温度である二次電池の火災防止システムである。
【0011】
第4の発明は、第1の発明〜第3の発明のうちのいずれか1の発明に係る二次電池の火災防止システムであって、前記消火剤放出ノズルは、少なくとも前記二次電池の温度が予め設定された安全温度に降下するまで前記消火剤の放出を続けるようにした二次電池の火災防止システムである。
【0012】
第5の発明は、第4の発明に係る二次電池の火災防止システムであって、前記二次電池はリチウムイオン電池であり、前記安全温度は45℃から75℃の間の温度である二次電池の火災防止システムである。
【0013】
第6の発明は、第1の発明〜第5の発明のうちのいずれか1の発明に係る二次電池の火災防止システムであって、前記温度センサーが前記二次電池の異常温度変化を検知したら、前記二次電池の蓄電回路を切り、電気の流れを停止させる機能を備える二次電池の火災防止システムである。
【0014】
第7の発明は、第1の発明〜第6の発明のうちのいずれか1の発明に係る二次電池の火災防止システムであって、前記蓄電室は、前記蓄電室内に冷風や空気を循環させるための送風装置又は開口部を設けており、前記温度センサーにより前記二次電池の異常温度を検知した場合、前記送風装置を停止させ又は前記開口部を閉止させる機能を備える二次電池の火災防止システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る二次電池の火災防止システムによれば、センサーが二次電池の異常温度変化を検知したら、冷却剤供給源から冷却剤を冷却剤放出ノズルへ送り、冷却剤放出ノズルから二次電池に向けて放出させるようにしたので、異常発熱した二次電池が冷却剤で冷却され、熱暴走を抑止することができ、熱暴走による火災の発生を未然に防ぐことができるとともに、熱暴走による二次電池の損壊を防ぎ電池性能を損なわないことが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る二次電池の火災防止システムの実施の形態の一例を示す概略構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る二次電池の火災防止システムを実施するための形態の一例を図1を参照して詳細に説明する。
【0018】
本例の二次電池の火災防止システムは、リチウムイオン電池で代表される二次電池1を収容した蓄電室2内に、冷却剤を放出する冷却剤放出ノズル3が二次電池1に向けて多数配置されている。
【0019】
蓄電室2の外部には、冷却剤供給源4が配置されており、冷却剤供給源4と冷却剤放出ノズル3は配管5で接続され、冷却剤は冷却剤供給源4から配管5を介して冷却剤放出ノズル3へ送られ、冷却剤放出ノズル3から放出されるようになっている。
【0020】
冷却剤にあっては、冷却作用のある不活性ガスや液体が使用される。冷却剤として、COガス、液体窒素、ヘリウム等がある。本例では冷却剤としてCOガスが使用されており、冷却剤供給源4としてCOガスを充填したボンベ6が用意されている。
【0021】
蓄電室2に収容されている二次電池1には、二次電池1の前記二次電池の異常温度変化を検知するセンサー7を取り付けておき、センサー7が二次電池1の異常温度変化を検知したら、冷却剤供給源4から冷却剤を冷却剤放出ノズル3へ送り、冷却剤放出ノズル3から二次電池1に向けて放出させるようにしている。
【0022】
本例では、センサー7は温度センサー8であり、二次電池1の異常温度変化として予め異常温度を設定しておき、温度センサー8が異常温度を検知したら、冷却剤供給源4から冷却剤を冷却剤放出ノズル3へ送り、冷却剤放出ノズル3から二次電池1に向けて放出させ、少なくとも二次電池1の温度が予め設定された安全温度に降下するまで冷却剤の放出を続けるようにしている。
【0023】
このとき冷却剤は、蓄電室2の容積から二次電池1の体積を減じた体積に対して1.5kg/m以上を貯蔵することによって、二次電池1の温度が予め設定された安全温度に効果するまで冷却剤の放出を続けることができる。
【0024】
異常温度および安全温度は、次のようにして設定される。
【0025】
先ず、異常温度について説明する。二次電池1は、その特性により多少異なるが、100℃程度の温度で熱暴走を起こし、外的要因がなくても温度が上昇し、最終的には破裂発火する。ここで言う異常温度とは、熱暴走を起こした温度から破裂発火に至る前迄の温度をいい、この範囲内で、特定な温度を異常温度として設定する。具体的には、特性の異なる二次電池について、試験によりそれぞれの熱暴走を起こす温度と破裂発火に至る温度を求め、熱暴走を起こす温度と破裂発火に至る前の温度迄の範囲内で特定な温度を異常温度として設定する。
【0026】
次に、安全温度について説明すると、安全温度は、熱暴走を起こすおそれのない温度として設定されており、試験により平均温度で60℃程度に冷却すると熱暴走を確実に止められるこが確認された。
【0027】
二次電池の火災防止システムにおいては、各種ある二次電池の特性や二次電池の蓄電室2の形状などの差を考慮して設定温度は、異常温度の場合は80℃から120℃の間で適宜適正に設定する。同様に安全温度の設定についても45℃から75℃の間で適宜適正に設定する。
【0028】
温度センサー8による二次電池1の異常温度の検知による冷却剤放出ノズル3からの冷却剤の放出は、制御装置9により制御されて行われる。制御装置9は温度センサー8から発信された異常温度検知信号の受信により、冷却剤供給源4から配管5を介して冷却剤を冷却剤放出ノズル3へ送り、少なくとも二次電池1の温度が予め設定された安全温度に降下するまで冷却剤を送り続ける機能を備えている。
【0029】
また、本例では、制御装置9は異常温度検知信号を受信したとき、二次電池1の蓄電回路を切り、電気の流れを停止させる機能を備えている。このようにすることで、冷却後に二次電池1が再び異常な状態になることを防ぐことができる。
【0030】
また、二次電池の火災防止システムにおいて、通常の運転時においても二次電池1の冷却を必要とするため、一般に蓄電室2には、蓄電室2内に冷風や空気を循環させるための送風装置や開口部(図示せず。)を備えている。本例では、制御装置9は温度センサー8により二次電池1の異常温度を検知した場合、送風装置を停止させ又は開口部を閉止させる機能を備えている。このようにすることで、二次電池1が異常温度となったときの冷却剤による冷却効果を高めることができる。
【0031】
このように構成された本例の二次電池の火災防止システムでは、温度センサー8が二次電池1から異常温度を検知したとき、制御装置9へ異常温度検知信号を発信し、この信号を受けて制御装置9は冷却剤供給源4となるボンベ6のバルブを開き、冷却剤であるCOガスを冷却剤放出ノズル3へ送り、冷却剤放出ノズル3からCOガスを二次電池1に向けて放出させ、少なくとも二次電池1の温度が予め設定された安全温度に降下するまでCOガスの放出を続けるので、異常発熱した二次電池1は、熱暴走を起こすおそれのない安全温度まで冷却される。
【0032】
これにより、二次電池1の熱暴走を止めることができ、熱暴走による火災の発生を未然に防ぐことができるとともに、熱暴走による二次電池1の損壊を防ぎ電池性能を損なわないことが期待できる。
【0033】
また、本例では、冷却剤としてCOガスを使用しているので、冷却効果が高く、異常発熱した二次電池1をより効果的に冷却することができ、二次電池1の異常発熱によって起こる熱暴走をより効果的に抑止することができる。また、COガスは二次電池1の性能を損なわせないので、冷却により熱暴走を抑止した後、二次電池1の損壊を防ぎ電池性能を損なわないことが期待できる。また、仮に二次電池1が発火しても二次電池1が収容された室内は消火剤でもあるCOガスが充満しているので、火災の発生を防止し、或いは火災が発生しても速やかに消火することができる。
【0034】
なお、本例では、センサー7として温度センサー8が使用されているが、これに限られるものではなく、二次電池1の歪量を検知する歪センサー(図示せず。)であってもよい。
【0035】
センサー7が歪センサーである場合は、二次電池1の異常温度変化と判断される熱による二次電池1の膨張による異常歪量を予め設定しておき、歪センサーが異常歪量を検知したら、冷却剤供給源4から冷却剤を冷却剤放出ノズル3へ送り、冷却剤放出ノズル3から二次電池1に向けて放出させるようにする。
【0036】
二次電池の火災防止システムの冷却剤を大量に貯蔵することは費用がかかるため、経済的にも冷却に効果的な量を算出して貯蔵する。
【0037】
平成23年12月21日の官報に記載の総務省告示第五百五十七号では、危険物の規制に関する規則(昭和三十四年総理府令第五十五号)第三十八条の三の規定に基づき、製造所等の不活性ガス消火設備の技術上の基準の細目を定める告示がなされている。告示ではCOガスなどの不活性ガスによる消火に必要とされる消火剤の量について基準を定めている。仮に告示に定める量の不活性ガスを放出しても告示は消火を目的としており、冷却を目的としていないため、告示の基準の量の不活性ガスでは冷却することはできない。
【0038】
二次電池1を冷却するためには、防護区画の体積1m当たりの消火剤の量に対して少なくとも2倍以上の量を必要とし、効果的に冷却するためには5倍以上の量が好ましく、より効果的に冷却するためには10倍以上の量が好ましく、さらにより効果的に冷却するためには15倍以上の量が好ましく、十分安全に冷却するためには20倍以上の量が好ましい。ここで防護区画とは消火を対象とする空間を指すが、冷却の場合は二次電池1を冷却するための蓄電室2の容積に置き換えて考えればよい。また、消火剤は不活性ガスなどの冷却剤に置き換えて考えればよい。
【0039】
総務省告示第五百五十七号によれば、不活性ガス消火剤の貯蔵容器に貯蔵する消火剤の量は以下の表1のごとくなる。
【0040】
【表1】
【0041】
必要な貯蔵量は防護区画の体積1m当たり上表1中に掲げる量の割合で計算した量となる。ただし、その量が同表の消火剤の総量の最低限度未満の量となる場合においては、表1の消火剤の総量の最低限度の量となる。
【0042】
ここで、防護区画は蓄電室2の容積、消火剤は冷却剤と読み替える。なお、防護区画の体積の計算では、二次電池1の体積を減じて計算する。つまり、以下の計算式となる。
防護区画の体積=(蓄電室2の容積)−(二次電池1の体積)
【0043】
模擬的な試験として、0.56mの模擬蓄電室2の容積に全体で0.3mのリチウムイオン模擬電池(二次電池1)を収納し、冷却剤としてCOガス7.7kg/mを放出した場合において模擬電池表面は平均して53℃低下し、冷却剤としてCOガス19.6kg/mを放出した場合において模擬電池表面は平均して65℃低下し十分安全な冷却を得ることができた。この試験条件における告示の基準による防護区画の体積(蓄電室2の容積)1m当たりの消火剤の量は1.2kg/mである。これによりCOガス7.7kg/mの放出は6.4倍に相当し、COガス19.6kg/mの放出は16.3倍に相当する。
【0044】
本発明によれば、前記センサーが前記二次電池の異常温度変化を検知したら、冷却剤供給源から消火剤でもある冷却剤を前記冷却剤放出ノズルへ送り、前記冷却剤放出ノズルから前記二次電池に向けて放出させるようにしたので、異常発熱した二次電池が冷却剤で冷却される。
【0045】
本発明によれば、前記センサーが温度センサーであり、前記二次電池の異常温度変化として予め異常温度を設定したので、前記温度センサーが前記二次電池の異常温度変化を直ちに且つ確実に検知することができ、前記温度センサーが異常温度を検知したら、冷却剤供給源から冷却剤を前記冷却剤放出ノズルへ送り、前記冷却剤放出ノズルから前記二次電池に向けて放出させ、少なくとも前記二次電池の温度が予め設定された安全温度に降下するまで冷却剤の放出を続けるようにしたので、異常発熱した二次電池が直ちに冷却剤で安全温度に降下するまで冷却される。
【0046】
本発明によれば、前記冷却剤が、COガスであるので、冷却効果が高く、異常発熱した二次電池はより効果的に冷却される。また、COガスは二次電池の性能を損なわせないので、冷却により熱暴走を抑止した後、二次電池の損壊を防ぎ電池性能を損なわないことが期待できる。また、仮に二次電池が発火しても二次電池が収容された室内は消火剤でもあるCOガスが充満しているので、火災の発生を防止し,或いは火災が発生しても速やかに消火する。
【0047】
本発明によれば、前記冷却剤が、前記蓄電室の容積から前記二次電池の体積を減じた体積に対して1.5kg/m以上を貯蔵するので、異常発熱した前記二次電池を十分に冷却し、且つ前記冷却剤がCOガスである場合、火災の発生を防止し,或いは火災が発生しても速やかに消火する量を確実に確保することができる。
【0048】
本発明によれば、前記温度センサーが前記二次電池の異常温度変化を検知したら、前記二次電池の蓄電回路を切り、電気の流れを停止させる機能を備えるので、冷却後に前記二次電池が再び異常な状態になることを防ぐことができる。
【0049】
本発明によれば、前記蓄電室が、前記蓄電室内に冷風や空気を循環させるための送風装置又は開口部を設けており、前記温度センサーにより前記二次電池の異常温度を検知した場合、前記送風装置を停止させ又は前記開口部を閉止させる機能を備えるので、前記温度センサーにより前記二次電池の異常温度を検知した場合、前記送風装置を停止させ又は前記開口部を閉止することにより前記冷却剤による冷却効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 二次電池
2 蓄電室
3 冷却剤放出ノズル
4 冷却剤供給源
5 配管
6 ボンベ
7 センサー
8 温度センサー
9 制御装置
図1