特許第6961681号(P6961681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961681
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】過トルク保護機構を有する薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   A61M5/315 550A
【請求項の数】14
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-511581(P2019-511581)
(86)(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公表番号】特表2019-526343(P2019-526343A)
(43)【公表日】2019年9月19日
(86)【国際出願番号】EP2017071774
(87)【国際公開番号】WO2018041899
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2020年7月10日
(31)【優先権主張番号】16186501.9
(32)【優先日】2016年8月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キレリッヒ, エベ
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0088515(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/091843(WO,A1)
【文献】 特表2016−521187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤充填カートリッジを備える、または薬剤充填カートリッジを受容するように適合された薬剤送達装置(200、300、400)であって、
ハウジング(201、301、401、501)と、
吐出アセンブリとを備え、前記吐出アセンブリは、
装填されたカートリッジにおいてピストンに係合し遠位方向に前記ピストンを軸方向に変位させ、そうすることで前記カートリッジから薬剤の用量を吐出するように適合されたピストンロッド(220、320、420)と、
前記薬剤送達装置(200、300、400)の長手方向の回転基準軸ならびに複数の軸方向基準面および回転基準面を画定する回転可能な駆動部材(260、360、460)であって、各軸方向基準面は、前記回転基準軸に平行であり、かつ前記回転基準軸を含み、各回転基準面は、前記回転基準軸に垂直である、回転可能な駆動部材と、
前記駆動部材に結合された駆動ばね(255、355、455)と、
ユーザが、吐出されるべき用量を設定すると同時に、設定位置までの前記駆動部材の回転によって対応して前記駆動ばねを歪めることを可能にする用量設定手段と、
設定された前記用量を吐出するために、前記歪められた駆動ばねを解放して前記駆動部材を回転させるように適合された解放手段と
を備え、
前記用量設定手段は、
用量を設定するために第1の方向に回転し、設定用量を減少させるために反対の第2の方向に回転するように適合された用量設定部材(280、380、480)と、
前記駆動部材が前記第1の方向に回転されるのを可能にする解放可能一方向ラチェット機構と
を備え、前記解放可能一方向ラチェット機構は、
第1の複数のラチェット歯(203、303、443、523)を備え、用量設定中に前記ハウジングに対して回転不能に配置されている、第1のラチェット部分(201、301、440、501)と、
前記第1の複数のラチェット歯に回転的に係合するように適合された第2の複数のラチェット歯(243、343、466、543)を備え、用量設定中に前記駆動部材に回転不能に結合されている、第2のラチェット部分(240、340、465、540)であって、前記第1のラチェット部分と前記第2のラチェット部分とが、用量設定中に互いに対して軸方向に可動である、第2のラチェット部分と、
前記第1のラチェット部分と前記第2のラチェット部分とを互いに係合するように軸方向に付勢するための付勢手段(295、395、495、595)と
を備え、
前記用量設定手段は、
前記用量設定部材に結合された制御手段であって、前記用量設定部材が前記第1の方向に回転されたとき、前記第2のラチェット部分を前記第1の方向に回転させ、そうすることで用量を設定し、前記用量設定部材が前記第2の方向に回転されたとき、前記第1のラチェット部分と前記第2のラチェット部分とを互いに係合が解かれるように軸方向に動かすように適合された制御手段をさらに備え、前記制御手段は、
軸方向基準面に対して傾斜した複数のラチェット駆動面(247、347、468D、547)、および回転基準面に対して傾斜した複数のラチェット解放面(246、346、468R、546)を有する駆動/解放ラチェットと、
前記駆動/解放ラチェットと係合し、軸方向基準面に対して傾斜した複数の制御駆動面(287、397、488D、597)、および前記回転基準面に対して傾斜した複数の制御解放面(286、296、488R、596)を備える制御ラチェット(283、390、487、590)と
を備え、
所与の伝達閾値力までで、前記制御駆動面(287、397、488D、597)は、前記用量設定部材が前記第1の方向に回転されたとき、前記ラチェット駆動面(247、347、468D)と協働して、前記第2のラチェット部分を前記第1の方向に回転させ、
前記所与の伝達閾値力を超えていると、前記制御駆動面(287、397、488D)は、前記ラチェット駆動面(247、347、468D)と摺動式に協働して、前記協働する駆動面を互いに係合が解かれるように軸方向に動かし、そうすることで前記協働する駆動面がカムオーバーすることを可能にし、
前記制御解放面(286、296、488R、596)は、前記用量設定部材が前記第2の方向に回転されたとき、前記ラチェット解放面(246、346、468R、547)と摺動式に協働して、前記第1のラチェット部分と前記第2のラチェット部分とを互いに係合が解かれるように軸方向に動かし、
そうすることにより、前記第1のラチェット部分と前記第2のラチェット部分が軸方向に係合解除されているとき、前記駆動ばねは、前記第2の方向に前記第2のラチェット部分を回転させ、そうすることで前記設定用量を減少させ、前記付勢手段は、前記第1のラチェット部分と前記第2のラチェット部分とを再び互いに係合するように軸方向に動かし、この結果、前記設定用量が、前記ラチェット機構の1つの歯に対応して減少される、薬剤送達装置。
【請求項2】
前記第1のラチェット部分は、前記ハウジング(201、501)と一体化され、
前記第2のラチェット部分(240、540)は、用量吐出中に前記駆動部材(260、510)から回転的に解放される、請求項1に記載の薬剤送達装置(200)。
【請求項3】
前記駆動/解放ラチェット(240)は、前記第2のラチェット部分と一体化され、
前記制御ラチェット(283)は、前記用量設定部材(280)と一体化される、請求項2に記載の薬剤送達装置(200)。
【請求項4】
前記ラチェット駆動面(247)、前記ラチェット解放面(246)、および前記第2のラチェット部分歯(243)は、同じ円周上に配置される、請求項3に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記第1のラチェット部分(523)は、前記ハウジング(301、309、501)と一体化され、
前記第2のラチェット部分(340、540)は、用量吐出中に前記駆動部材(360、510)から回転的に解放され、
前記駆動/解放ラチェット(340、540)は、前記第2のラチェット部分と一体化され、
前記制御ラチェット(390、590)は、前記用量設定部材(380、580)に対して回転不能であるが軸方向に可動に結合される、請求項1に記載の薬剤送達装置(300)。
【請求項6】
前記用量設定部材(380)は、近位の用量設定位置から遠位のばね解放位置へ可動である複合型用量設定および解放部材である、請求項5に記載の薬剤送達装置(300)。
【請求項7】
前記第1のラチェット部分(440)は、前記ハウジング(401)に対して軸方向に可動であり、
前記第2のラチェット部分(465)は、前記駆動部材(460)と一体化される。請求項1に記載の薬剤送達装置(400)。
【請求項8】
前記第1のラチェット部分(440)は、前記第1のラチェット部分が前記ハウジングに対して回転不能に結合される(442、402)近位の用量設定位置から、前記第1のラチェット部分が前記ハウジングに対して回転することが可能にされる遠位のばね解放位置へ可動である、請求項7に記載の薬剤送達装置(400)。
【請求項9】
前記第1のラチェット部分(440)は、前記ハウジング(401)に対して軸方向に可動であり、
前記第2のラチェット部分(465)は、前記駆動部材(460)と一体化され、
前記駆動/解放ラチェット(467)は、前記駆動部材(460)と一体化され、
前記制御ラチェット(487)は、前記用量設定部材(480)と一体化される、請求項1に記載の薬剤送達装置(400)。
【請求項10】
前記用量設定部材(480、490)は、近位の用量設定位置から遠位の駆動ばね解放位置へ可動である複合型用量設定および解放部材である、請求項9に記載の薬剤送達装置(400)。
【請求項11】
前記駆動ばねは、ねじりばね(255、355、455)である、請求項1から10のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記付勢手段は、圧縮ばね(295、395、495)である、請求項1から11のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
前記カートリッジは、概ね円筒形の構成を有し、前記回転基準軸に対して非同軸に配置される、請求項1から12のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
薬剤送達装置であって、
ハウジング(501)と、
前記薬剤送達装置の長手方向の回転基準軸ならびに複数の軸方向基準面および回転基準面を画定する回転可能な駆動部材であって、各軸方向基準面は、前記回転基準軸に平行であり、かつ前記回転基準軸を含み、各回転基準面は、前記回転基準軸に垂直である、回転可能な駆動部材と、
前記駆動部材に結合された駆動ばねと、
ユーザが、吐出されるべき用量を設定すると同時に、前記駆動部材の回転によって対応して前記駆動ばねを歪めることを可能にする用量設定手段と、
設定された前記用量を吐出するために、前記歪められた駆動ばねを解放して前記駆動部材を回転させるように適合された解放手段と
を備え、
前記用量設定手段は、
用量を設定するために第1の方向に回転し、設定用量を減少させるために反対の第2の方向に回転するように適合された用量設定部材(580)と、
前記駆動部材が前記第1の方向に回転されるのを可能にする解放可能一方向ラチェット機構と
を備え、前記解放可能一方向ラチェット機構は、
第1の複数のラチェット歯(523)を備え、前記ハウジングに対して回転不能に配置されている、第1のラチェット部分と、
第2のラチェット部分(540)であって、
前記第1の複数のラチェット歯に回転的に係合するように適合された第2の複数のラチェット歯(543)であり、前記第2のラチェット部分は、用量設定中に前記駆動部材に回転不能に結合されていて、前記第1のラチェット部分と前記第2のラチェット部分とが用量設定中に互いに対して軸方向に可動である、第2の複数のラチェット歯、
軸方向基準面に対して傾斜した複数のラチェット駆動面(547)、および
回転基準面に対して傾斜した複数のラチェット解放面(546)
を備える第2のラチェット部分と、
前記第1のラチェット部分と前記第2のラチェット部分とを互いに係合するように軸方向に付勢するためのラチェットばね(595)と、
前記用量設定部材に回転不能に結合され、複数のラチェット駆動面(597)および複数のラチェット解放面(596)を備える制御部材(590)であって、それぞれ前記ラチェット駆動面(547、597)および前記ラチェット解放面(546、596)は、対応して傾斜され互いに協働するように適合される、制御部材と
を備え、
所与の伝達閾値力までで、前記制御部材は、前記用量設定部材が前記第1の方向に回転されたとき、前記協働する駆動面を介して、前記第2のラチェット部分を前記第1の方向に回転させ、そうすることで用量を設定し、
前記所与の伝達閾値力を超えていると、前記制御部材は、摺動係合した前記協働する駆動面を介して、前記制御部材と前記第2のラチェット部分とを互いに係合が解かれるように軸方向に動かし、そうすることで前記第2のラチェット部分がカムオーバーすることを可能にし、
前記制御部材は、前記用量設定部材が前記第2の方向に回転されたとき、互いに摺動係合した前記協働する解放面を介して、前記第1のラチェット部分と前記第2のラチェット部分とを互いに係合が解かれるように軸方向に動かし、
そうすることにより、前記第1のラチェット部分と前記第2のラチェット部分が軸方向に係合解除されているとき、前記駆動ばねは、前記第2の方向に前記第2のラチェット部分を回転させ、そうすることで前記設定用量を減少させ、前記ラチェットばねは、前記第1のラチェット部分と前記第2のラチェット部分とを再び互いに係合するように軸方向に動かし、この結果、前記設定用量が、前記ラチェット機構の1つの歯に対応して減少される、薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、カートリッジからユーザ設定可能な用量を吐出するように適合された薬剤送達装置に関する。特定の態様では、本発明は、巻き上げ式のばね駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主に糖尿病の治療に関して言及されるが、これは、本発明の例示的な使用に過ぎない。
【0003】
薬剤送達装置は、薬剤および生物学的製剤を自己投与しなければならない患者の生活を大きく改善している。薬剤送達装置は、注射手段を有するアンプルにすぎない単純な使い捨ての装置から比較的複雑な充填済みの使い捨ての装置までを含めて多くの形態を取ってよく、あるいは充填済みのカートリッジと共に使用されるように適合された耐久性のある装置であってもよい。形態およびタイプに関わりなく、薬剤注射装置は、患者による注射薬や生物学的製剤の自己投与を助けるのに大いに役立つことが示されている。また、薬剤注射装置は、自己注射を行えない人々に対して介護者が注射剤を投与する際にも大いに役立っている。
【0004】
薬剤のユーザ設定量の送達に適した薬剤送達装置の一般的なタイプは、用量設定中に歪められるばねを備えており、蓄積されたエネルギーは、装置内に配置されたカートリッジから薬剤の設定用量を吐出するために後で使用される。ユーザは、通常、回転可能な用量設定部材を回転させることによって、ばねを歪ませ、そうすることでユーザにより加えられた力は、後で解放するためにばねに蓄積される。
【0005】
ペン形状構成を有し、ねじりばねを適用する既知の「巻き上げ」装置の例が、米国特許第5,104,380号に開示されている。この巻き上げ装置もしくは「自動ペン」では、用量設定部材が近位端部に配置されており、用量設定部材は、ユーザが用量設定部材を回転するとねじりばねが歪められ、ハウジングの側に設けられたラッチを作動させることによってユーザが設定用量を解放するまで、この歪められた位置に維持されるように動作する。米国特許第5,104,380号に開示された巻き上げペンは、ユーザが設定した用量が多すぎた場合に設定用量を減らすことができないという欠点がある。そこで、ユーザは、新しい適正な用量が設定および送達できるようになる前に、ラッチ機構を解放し、そうすることで設定用量を吐出する必要がある。
【0006】
この問題を解決するために、投与の前にユーザが実際に設定用量を減らすことができる巻き上げペンが提案されている。たとえば、WO2006/045526およびWO2010/089418を参照されたい。
【0007】
これらの「自動」送達装置は、用量設定中に締められて後で設定用量を注射するために解放されるばねに基づく。ユーザが誤って必要とされるより多い用量を設定した場合、これらの注射装置は、用量設定部材を逆の回転方向に回転させることにより設定用量を低下させることが可能である。したがって、そのようなダイヤルダウン機構は、ユーザが誤った用量設定のために高価な薬剤を吐出させることを防ぐことができる。
【0008】
WO2006/045526では、ダイヤルアップ/ダイヤルダウン機構が、歯付きリングとの一方向の係合でロックされる可撓性ラチェットアームに基づいている。ユーザが用量を設定するとき、送達装置の近位端部に設けられた用量設定ボタンが回転される。この用量設定ボタンは、長手方向の伸長管状スリーブを介してラチェット要素に連結される。ラチェット要素には、歯付きリングと歯で係合したラチェットアームが設けられ、ラチェットアームは、用量設定ボタンが回転されると、ねじりばねの力に対抗して歯付きリングの次の歯にロックし、そうすることで、ねじりばねを段階的に歪めるようになされている。設定サイズを縮小するために、ラチェットアームを歯付きリングとの係合が解かれるように能動的に引いて、そうすることにより、ねじりばねに蓄積された力がラチェット要素を急速に逆に回転させ、したがって、ラチェットアームが歯付きリングの以前の歯に係合し、そうすることで、1つのきざみ幅だけ設定用量が低下する。デンマーク、バウスベアのNovo Nordiskにより提供されるFlex−Touch(登録商標)およびFlexPro(登録商標)薬剤送達装置は、WO2006/045526に開示されているタイプのラチェット機構を備える。WO2011/025448は、このタイプのラチェット機構を備えるさらなる薬剤送達装置を開示している。
【0009】
WO2006/045526により知られるダイヤルダウン配列は、設定用量サイズをダイヤルダウンするために、ラチェットアームが、その歯付き係合から解放されて半径方向に能動的に移動される必要があるので、「能動的」ダイヤルダウン配列と呼ばれ得る。米国特許出願公開第2013/0204193号は、ラチェット部材を手動で引き離すことによってリセットされ得るラチェット機構を備えるばね駆動薬剤送達装置を開示している。「受動的」ダイヤルダウン配列の一例は、たとえば、二方向ラチェットを有する用量設定機構を開示するWO2008/031235により知られている。WO2012/154110およびWO2016/091843は、ラチェットダイヤルダウン用量設定配列を備える薬剤送達装置のさらなる例を開示している。
【0010】
上記に鑑みて、本発明の目的は、正確、簡単かつ頑強で信頼性が高いリセット可能な用量設定機構を有する薬物送達装置を提供することである。さらなる目的は、リセット可能な用量設定機構であって、設計がコンパクトであり、費用効果の高い製造を可能にするように、用量設定機構が組み込まれる薬物送達装置の高い自由度の設計を可能にする、用量設定機構を提供することである。さらに他の目的は、過負荷の状況において、たとえばユーザが所与の薬剤送達装置の最大用量よりも大きい用量を設定しようとしたとき、保護を提供する、リセット可能な用量設定機構を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の開示において、上記の目的の1つもしくは複数を解決する、または以下の開示および例示的な実施形態の説明から明らかとなる目的を解決する実施形態および態様を説明する。
【0012】
したがって、本発明の一般的態様では、薬剤充填カートリッジを備える、または薬剤充填カートリッジを受容するように適合された薬剤送達装置が提供される。薬剤送達装置は、ハウジングと用量設定手段を有する吐出アセンブリとを備える。吐出アセンブリは、装填されたカートリッジにおいてピストンに係合し遠位方向にピストンを軸方向に変位させ、そうすることでカートリッジから薬剤の用量を吐出するように適合されたピストンロッドと、回転可能な駆動部材と、駆動部材に結合された駆動ばねと、ユーザが、吐出されるべき用量の量を設定すると同時に、設定位置までの駆動部材の回転によって対応して駆動ばねを歪めることを可能にする用量設定手段と、設定用量を吐出するために、歪められた駆動ばねを解放して駆動部材を回転させるように適合された解放手段とを備える。回転可能な駆動部材は、回転基準軸ならびに複数の軸方向基準面および回転基準面を画定し、各軸方向基準面は、回転基準軸に平行であり、各回転基準面は、回転基準軸に垂直である。用量設定手段は、用量を設定するために第1の方向に回転し、設定用量を減少させるために反対の第2の方向に回転するように適合された用量設定部材と、駆動部材が第1の方向に回転されるのを可能にする解放可能一方向ラチェット機構とを備える。ラチェット機構は、第1の複数のラチェット歯を備え、用量設定中にハウジングに対して回転不能に配置されている、第1のラチェット部分と、第1の複数のラチェット歯に回転的に係合するように適合された第2の複数のラチェット歯を備え、用量設定中に駆動部材に回転不能に結合されている、第2のラチェット部分であって、第1のラチェット部分と第2のラチェット部分とが、用量設定中に互いに対して軸方向に可動である、第2のラチェット部分と、第1のラチェット部分と第2のラチェット部分とを互いに係合するように軸方向に付勢するための付勢手段とを備える。用量設定手段は、用量設定部材に結合された制御手段であって、(i)用量設定部材が第1の方向に回転されたとき、第2のラチェット部分を第1の方向に回転させ、そうすることで用量を設定し、(ii)用量設定部材が第2の方向に回転されたとき、第1のラチェット部分と第2のラチェット部分とを互いに係合が解かれるように軸方向に動かすように適合された制御手段をさらに備える。制御手段は、軸方向基準面に対して傾斜した複数のラチェット駆動面、および回転基準面に対して傾斜した複数のラチェット解放面を有する駆動/解放ラチェットと、駆動/解放ラチェットと係合し、軸方向基準面に対して傾斜した複数の制御駆動面、および回転基準面に対して傾斜した複数の制御解放面を備える制御ラチェットとを備える。
【0013】
そのような配列において、所与の伝達閾値力までで、制御駆動面は、用量設定部材が第1の方向に回転されたとき、ラチェット駆動面と協働して、第2のラチェット部分を第1の方向に回転させる。所与の伝達閾値力を超えていると、制御駆動面は、ラチェット駆動面と摺動式に協働して、協働する駆動面を互いに係合が解かれるように軸方向に動かし、そうすることで協働する駆動面がカムオーバー(cam over)することを可能にする。制御解放面は、用量設定部材が第2の方向に回転されたとき、ラチェット解放面と摺動式に協働して、第1のラチェット部分と第2のラチェット部分とを互いに係合が解かれるように軸方向に動かす。第1のラチェット部分と第2のラチェット部分が軸方向に係合解除されているとき、駆動ばねは、第2の方向に第2のラチェット部分を回転させ、そうすることで設定用量を減少させ、付勢手段は、第1のラチェット部分と第2のラチェット部分とを再び互いに係合するように軸方向に動かし、この結果、設定用量が、ラチェット機構の1つの歯に対応して減少される。
【0014】
したがって、(用量設定部材に適用されるトルクに対応する)伝達された力が所与の閾値を超えている場合、傾斜した駆動面は、互いに対して摺動し、制御部材と第2のラチェット部分とを互いに係合が解かれるように軸方向に動かす働きをし、そうすることで第2のラチェット部分がカムオーバーすることを可能にし、これにより、たとえば所与の薬剤送達装置に対して最大用量が設定されているときに、過トルク安全機構が提供される。
【0015】
上記の配列によって、簡単かつ頑強で信頼性が高く、多くの方法で実装され得る、上記ラチェット機構のための駆動/解放機構が提供される。
【0016】
本発明の第1の特定の態様では、第1のラチェット部分は、ハウジングと一体化され、第2のラチェット部分は、用量吐出中に駆動部材から回転的に解放される。駆動/解放ラチェットは、第2のラチェット部分と一体化されてよく、制御ラチェットは、用量設定部材と一体化されてよい。ラチェット駆動面、ラチェット解放面、および第2のラチェット部分歯は、同じ円周上に配置されてよい。2つの構造が一体であると定義される場合、2つの構造は、たとえば、一体的にまたは堅固に連結され得る。
【0017】
本発明の第2の特定の態様では、第1のラチェット部分は、ハウジングと一体化され、第2のラチェット部分は、用量吐出中に駆動部材から回転的に解放され、駆動/解放ラチェットは、第2のラチェット部分と一体化され、制御ラチェットは、用量設定部材に対して回転不能であるが軸方向に可動に結合される。
【0018】
例示的な実施形態では、用量設定部材は、近位の用量設定位置から遠位のばね解放位置へ可動である複合型用量設定および解放部材である。
【0019】
本発明の第3の特定の態様では、第1のラチェット部分は、ハウジングに対して可動であり、第2のラチェット部分は、駆動部材と一体化される。第1のラチェット部分は、第1のラチェット部分がハウジングに対して回転不能に結合される近位の用量設定位置から、第1のラチェット部分がハウジングに対して回転することが可能にされる遠位のばね解放位置へ可動であってよい。駆動/解放ラチェットは、駆動部材と一体化されてよく、制御ラチェットは、用量設定部材と一体化されてよい。
【0020】
例示的な実施形態では、用量設定部材は、近位の用量設定位置から遠位の駆動ばね解放位置へ可動である複合型用量設定および解放部材である。
【0021】
カートリッジは、たとえば従来のペン形状デバイスのように、駆動部材ひいては回転基準軸と同軸に配置された、または代替的に、たとえばWO2016/091843に開示されたタイプの薬剤送達装置のように、回転基準軸と非同軸に配置されたカートリッジ軸を画定する概ね円筒形の構成を有してよい。対応して、ピストンロッドは、従来のまっすぐな堅いロッドであってよく、または代替的に曲げ可能もしくは可撓性の構造であってもよい。
【0022】
他の特定の態様では、薬剤送達装置であって、ハウジングと、回転可能な駆動部材と、駆動部材に結合された駆動ばねと、ユーザが、吐出されるべき用量の量を設定すると同時に、駆動部材の回転によって対応して駆動ばねを歪めることを可能にする用量設定手段と、設定用量を吐出するために、歪められた駆動ばねを解放して駆動部材を回転させるように適合された解放手段とを備える薬剤送達装置が提供される。回転可能な駆動部材は、回転基準軸ならびに複数の軸方向基準面および回転基準面を画定し、各軸方向基準面は、回転基準軸に平行であり、各回転基準面は、回転基準軸に垂直である。用量設定手段は、用量を設定するために第1の方向に回転し、設定用量を減少させるために反対の第2の方向に回転するように適合された用量設定部材と、駆動部材が第1の方向に回転されるのを可能にする解放可能一方向ラチェット機構とを備える。ラチェット機構は、第1の複数のラチェット歯を備え、ハウジングに対して回転不能に配置されている、第1のラチェット部分と、第2のラチェット部分と、第1のラチェット部分と第2のラチェット部分とを互いに係合するように軸方向に付勢するためのラチェットばねと、制御部材とを備える。第2のラチェット部分は、第1の複数のラチェット歯に回転的に係合するように適合された第2の複数のラチェット歯であり、第2のラチェット部分は、用量設定中に駆動部材に回転不能に結合されていて、第1のラチェット部分と第2のラチェット部分とが用量設定中に互いに対して軸方向に可動である、第2の複数のラチェット歯と、軸方向基準面に対して傾斜した複数のラチェット駆動面と、回転基準面に対して傾斜した複数のラチェット解放面とを備える。制御部材は、用量設定部材に回転不能に結合され、複数のラチェット駆動面および複数のラチェット解放面を備え、それぞれラチェット駆動面およびラチェット解放面は、対応して傾斜され互いに協働するように適合される。制御部材は、所与の伝達閾値力までで、用量設定部材が第1の方向に回転されたとき、協働する駆動面を介して、第2のラチェット部分を第1の方向に回転させ、そうすることで用量を設定する。所与の伝達閾値力を超えていると、制御部材は、摺動係合した協働する駆動面を介して、制御部材と第2のラチェット部分とを互いに係合が解かれるように軸方向に動かし、そうすることで第2のラチェット部分がカムオーバーすることを可能にする。さらに制御部材は、用量設定部材が第2の方向に回転されたとき、互いに摺動係合した協働する解放面を介して、第1のラチェット部分と第2のラチェット部分とを互いに係合が解かれるように軸方向に動かし、そうすることにより、第1のラチェット部分と第2のラチェット部分が軸方向に係合解除されているとき、駆動ばねは、第2の方向に第2のラチェット部分を回転させ、そうすることで設定用量を減少させ、ラチェットばねは、第1のラチェット部分と第2のラチェット部分とを再び互いに係合するように軸方向に動かし、この結果、設定用量が、ラチェット機構の1つの歯に対応して減少される。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「インスリン」は、制御された様式でカニューレや中空針などの送達手段を通過させられる液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液などの薬剤を含有する流動性のある任意の薬であり、血糖管理効果を有するもの、たとえば、ヒトインスリンおよびその類似物、ならびにGLP−1のような非インスリンおよびその類似物を含むことが意図される。例示的な実施形態の説明においてインスリンの使用に関して言及される。
【0024】
以下では、図面を参照してさらに本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】薬剤送達装置の実施形態を示す図である。
図1B】薬剤送達装置の実施形態を示す図である。
図2】薬剤送達装置の第1の例示的な実施形態のラチェット部分を示す図である。
図3】第1の例示的な実施形態のさらなるラチェット部分を示す図である。
図4】第1の例示的な実施形態の用量設定部材を示す図である。
図5】第1の例示的な実施形態の駆動部材を示す図である。
図6】部分的に組み立てられた状態の第1の例示的な実施形態の断面図である。
図7】組み立てられた状態の第1の例示的な実施形態の断面図である。
図8】薬剤送達装置の第2の例示的な実施形態のラチェット部分を示す図である。
図9】第2の例示的な実施形態のさらなるラチェット部分を示す図である。
図10】第2の例示的な実施形態の用量設定部材を示す図である。
図11】第2の例示的な実施形態のさらに別のラチェット部分を示す図である。
図12】部分的に組み立てられた状態の第2の例示的な実施形態の断面図である。
図13】組み立てられた状態の第2の例示的な実施形態の断面図である。
図14】薬剤送達装置の第3の例示的な実施形態のハウジング部材を示す図である。
図15】薬剤送達装置の第3の例示的な実施形態のラチェット部分を示す図である。
図16】第3の例示的な実施形態の駆動部材を示す図である。
図17】第3の例示的な実施形態のさらなるラチェット部分を示す図である。
図18】第3の例示的な実施形態の用量設定部材を示す図である。
図19】第3の例示的な実施形態の解放ボタン部材を示す図である。
図20】部分的に組み立てられた状態の第3の例示的な実施形態の断面図である。
図21】組み立てられた状態の第3の例示的な実施形態の断面図である。
図22】ラチェット機構のさらなる実施形態を示す図である。
図23A】一対のラチェット構成要素の代替的設計を示す図である。
図23B】一対のラチェット構成要素の代替的設計を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面において、同様の構造は主に同様の参照番号により識別される。
【0027】
以下において、「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」、または類似の相対的表現が使用される場合、これらは添付の図面に言及しているに過ぎず、実際の使用状況に言及するものではない。示される図は略図であり、そのため、異なる構造の構成およびこれらの相対的寸法は、単に例示の目的に役立つことが意図されている。部材または要素という用語が所与の構成要素について使用されるとき、一般に、説明される実施形態において構成要素が単体の構成要素であることを示すが、代替的に、同じ部材または要素が、いくつかの下位構成要素を含んでもよく、また、説明される構成要素のうちの2つ以上が、たとえば単一の射出成形部品として製造された単体の構成要素として提供されてもよい。用語「アセンブリ」は、説明される構成要素が、必ずしも所与の組立手順において単体のアセンブリまたは機能的アセンブリを提供するように組み立てられ得ることを示唆せず、より密接に機能的に関係するものとして一緒にグループ化された構成要素を説明するために使用されるに過ぎない。
【0028】
本発明の実施形態自体を参照する前に、本発明の例示的な実施形態の基礎を提供する「汎用的」再設定可能ダイヤルアップ/ダイヤルダウン自動薬剤送達装置の例を説明する。
【0029】
ペン装置100は、キャップ部分107および主要部分を備え、主要部分は、薬剤吐出機構が配置されまたは一体化されるハウジング101を有する近位本体部または駆動アセンブリ部と、遠位カートリッジホルダ部とを有し、遠位カートリッジホルダ部において、遠位の針貫通可能な隔膜を有する薬剤充填透明カートリッジ113が、近位部に取り付けられたカートリッジホルダによって所定の位置に配置され保持され、カートリッジホルダは、カートリッジの一部を検査するのを可能にする開口を有する。遠位結合手段115は、針アセンブリが、カートリッジ内部と流体連通するように解放可能に取り付けられることを可能にする。カートリッジは、吐出機構の一部分を形成するピストンロッドによって駆動されるピストンを備え、たとえば、インスリン、GLP−1、または成長ホルモン製剤を含有することができる。最近位の回転可能な投与量設定部材180は、表示窓102に示される薬剤の所望の用量を手動で設定するために機能し、次いで、ボタン190が作動されると、その用量が吐出され得る。薬剤送達装置で実施されるタイプの吐出機構のタイプに応じて、吐出機構は、示されている実施形態におけるような、用量設定中に歪められ、次いで解放ボタンが作動されるとピストンロッドを駆動するように解放される、ねじりばねを備えることができる。代替的に、たとえばEP2015/080904に開示されるように、圧縮ばねが使用されてもよい。より詳細には、用量設定中に、ばねが連結された駆動部材が、設定用量に対応する回転位置に回転され、そうすることで、駆動部材が付勢状態になる。現在の設定用量のサイズが、たとえばハウジングとのねじ連結を用いて、表示窓に示されるように、用量サイズの数字を有するスケールドラムが駆動部材に結合される。駆動部材が回転するのを防止するため、用量設定機構には、図示の実施形態ではラチェット機構の形態で保持機構が設けられる。ユーザが設定用量を吐出させようとする場合、ボタンが作動され、そうすることにより、駆動部材がピストンロッド駆動機構と係合するようにされ、続いて保持機構が解放される。
【0030】
図1Aおよび図1Bは、充填済みのタイプの薬剤送達装置、すなわち、予め取り付けられたカートリッジが与えられており、カートリッジが空になると廃棄されることになる薬剤送達装置を示すが、代替実施形態では薬剤送達装置は、装填されたカートリッジが交換できるように設計されてよく、たとえば、カートリッジホルダが装置主要部から取り外されるように適合された「後方装填式」薬剤送達装置の形態、あるいは、装置の主要部に取外し不能に取り付けられたカートリッジホルダの遠位開口を通してカートリッジが挿入される「前方装填式」装置の形態であってよい。
【0031】
図2から図6を参照して、本発明の第1の例示的な実施形態自体、すなわち薬剤送達装置のためのリセット可能な用量設定機構を説明する。この機構は、基本的に、ハウジング部201と、駆動チューブ260と、ハウジングと駆動チューブとの間に配置されたねじりばね255と、ラチェット部材240と、用量設定部材280と、解放ボタン290と、戻しばね295とを備える。
【0032】
この機構の動作原理の詳細な説明は後で行うが、まず、用量設定機構の中心的な構成要素のいくつかを詳細に説明する。
【0033】
図2を参照すると、長手方向の基準軸を画定する管状ハウジング部材201の近位部が示されている。ハウジング部材は、複数のラチェット歯構造203(ここでは24個)を有する円周近位縁部を備え、各歯は、傾斜したラチェット面204と、ハウジング部材の断面平面に垂直に配向された停止面205とを備える、三角形状の構成を有する。ハウジングは、用量設定部材に係合するように適合された円周溝208をさらに備え、溝と近位端部との間に、ばねハウジング(下記参照)に係合するように適合されたいくつかの傾斜したスロット209(ここでは3個)を配置している。このようにして、ハウジングに回転不能に結合され複数のラチェット歯を備える第1のラチェット部分が形成される。示されているように、この実施形態では、第1のラチェット部分は、管状ハウジング部材と一体的に形成される。
【0034】
図4は、外側円筒面および内側円筒面を備える概ね管状の構成を有する用量設定部材280を示し、外側円筒面は、把持面を提供する複数の長手方向に配置された隆起281を有し、内側円筒面は、ハウジング部材円周溝に回転的に配置されるように適合されたいくつかの円周フランジ部288を、用量設定部材に備える。内側面は、後述されるように、ラチェット部材に係合するように適合された「駆動/解放(drive−release)」または「駆動/持ち上げ(drive−lift)」制御ラチェットを形成するいくつかの三角形状の「駆動/解放」または「駆動/持ち上げ」制御ラチェット構造283(ここでは3個)をさらに備え、各駆動/解放または駆動/持ち上げ制御構造は、長手方向に配向された駆動面287と、傾斜した持ち上げ面286とを備える。以下の詳細な説明では、用語「駆動/持ち上げ」が使用される。
【0035】
図3は、ラチェット部材240を示し、ラチェット部材240は、駆動管の対応するスプライン溝に摺動係合するように適合された複数の長手方向に配置されたスプライン242を設けられた中央開口を備えるリング状本体部241を有する。ラチェット部材は、いくつかのラチェットセクション249(ここでは3個)をさらに備え、ラチェットセクション249の間に3つの駆動セクションが形成される。各ラチェットセクションは、一方向ラチェットを提供するためにハウジング部材ラチェット歯203に係合するように適合されたいくつかのラチェット歯243を備える。このようにして、第2のラチェット部分が形成される。所与のラチェットセクションでは、前方の傾斜したラチェット面244が持ち上げ面246を形成するように延長され、また、後方の停止面245も駆動面247を形成するように長手方向に延長される。このようにして、各駆動セクションは、延長されたラチェット面と延長された停止面との間に画定される。各ラチェットセクションに対応して、開口248が本体部に形成されて、解放ボタン脚部(下記参照)の通過を可能にする。
【0036】
図5は、最近位の円周フランジ261と、近位アレイの円周スプライン262と、遠位アレイの円周スプライン263とを有する駆動チューブ260を示す。フランジは、解放ボタンスナップ部材291に係合するように適合され、近位スプラインは、ラチェット部材スプライン242に係合するように適合され、遠位スプラインは、作動中にピストンドライバ230に軸方向に係合するように適合された結合スプラインである。駆動チューブは、駆動ばねの内端部を付着するためのスロット269、ならびにスケールドラムと整合するように適合されたいくつかのスプライン265をさらに備える。示されているように、スプラインの1つが異なり、対応するスケールドラムスプラインと回転的にかみ合うことが可能になる。
【0037】
図6を参照すると、ハウジング部材近位部、用量設定部材、ラチェット部材、および解放ボタンが、組み立てられた状態で示されている。図はさらに、駆動管との係合のための内側長手方向スプライン271と、ハウジング内側面とのねじ連結のための外側螺旋溝272とを設けられた、スケール270ドラムの近位部を示す。ラチェットのインターフェースを見えるようにするために、図6では駆動管およびねじりばねが省略されている。
【0038】
より詳細には、用量設定部材280は、回転的に自由に取り付けられるが、円周ハウジング溝208に配置されたフランジによって、ハウジング部材に対して軸方向にロックされる。ラチェット部材240は、スプライン連結によって駆動管(図7参照)に回転不能に取り付けられて、ラチェット部材は、駆動管と用量設定部材との両方に対して軸方向に動くことが可能になる。さらに、解放ボタン280は、回転的に自由に取り付けられるが、近位フランジ261に係合するいくつかのスナップ部材291によって、駆動管の近位端部に対して軸方向にロックされる。解放ボタンは、ラチェット部材開口248を通って動くように適合されたいくつかの脚部298をさらに備える。図示されるように、戻しばね295の形態の付勢手段が、ラチェット部材と解放ボタンとの間に配列され、戻しばねは、ラチェット部材ラチェット歯243をハウジング部材ラチェット歯203と係合するように付勢する。やはり図6に見られるように、駆動/持ち上げラチェット制御構造283の1つが、ラチェット部材駆動セクションに対応して配置され、2つの駆動面と2つの持ち上げ面とが互いに係合する。示されているように、係合された位置において、ラチェットは、ラチェット部材ひいては駆動管が反時計周りに回転されるのを防止する。
【0039】
用量を設定するとき、用量設定部材が時計回りに回転される。駆動/持ち上げラチェット制御構造283の駆動面287が、ラチェット部材の対応する駆動面247と係合すると、後者は、用量設定部材と一緒に所望の回転位置まで回転させられ、この結果、ラチェット部材ラチェット歯がハウジングラチェット歯を通り過ぎ、その間に、傾斜したラチェット歯、戻しばね、および駆動チューブとのスプライン連結により、ラチェット部材が前後に動かされる。用量は、1つのラチェット歯に対応するにきざみ幅で設定されることが可能であり、たとえば、所与のインスリン送達装置では、典型的にはインスリン製剤の1単位(IU)に対応することになる。
【0040】
設定用量を減らすとき、用量設定部材が反時計回りに回転され、そうすることにより、駆動/持ち上げラチェット制御構造283またはラチェット部材上の駆動面間に隙間が作られる。しかしながら、駆動/持ち上げ制御構造の傾斜した持ち上げ面286が、ラチェット部材上の対応する持ち上げ面246と係合しているので、後者は、戻しばねに対抗して近位に動かされて、ラチェット部材ラチェット歯がちょうどハウジングラチェット歯と係合解除するまで動かされ、そのポイントで、歪められたばねからの力が反時計回りに駆動管を回転させ、そうすることでラチェット部材も回転させ、この結果、傾斜した持ち上げ面が互いに係合解除する。結果として、ラチェット部材は、戻しばねによって遠位に動くことが可能であり、そうすることにより、ラチェット歯が再係合し、このことは、以前に設定された用量が1つのきざみ幅だけ減らされたことに対応する。ユーザが用量設定部材を反時計回りに回転させ続ける場合、設定用量は、ラチェット部材の前後運動ごとに1つのきざみ幅だけ減少され続ける。同時に、スケールドラムも反時計回りに回転され、表示窓202に示される用量サイズが対応して減少される。スケールドラムが初期のゼロ位置にある状態で、用量サイズを減少できないが、ユーザがさらに反時計回りに用量設定部材を回転させようとすると、これはラチェット部材の前後運動をもたらすだけである。このように、駆動/持ち上げラチェット設計は、ゼロ未満へのダイヤル回しに対する固有の過トルク保護を提供する。
【0041】
図7を参照すると、図6の装置が、ハウジング201内に配置される用量設定および吐出機構のさらなる構成要素と共に図に示されている。より詳細には、図は、スケールドラム270とスプライン連結された駆動チューブ260と、カップ状ばねハウジング250に取り付けられ、ばねハウジングまたは駆動チューブに連結されたクロックタイプねじり駆動ばね255と、駆動チューブ内に配置され、固定ハウジングナット部207にねじ連結されたねじ付きピストンロッド220と、ピストンロッドに対して回転できないように配置されるが軸方向に可動であるピストンドライバ230と、駆動チューブがピストンドライバと係合および係合解除の状態で結合されることを可能にする駆動結合263とを示す。ばねハウジングは、傾斜したハウジングスロット209に摺動式に受容されるように適合されたいくつかの横方向突起259を備え、これにより、駆動チューブが作動中に前後に動かされると、ばねハウジングおよびばねが軸方向に前後に動かされることが可能になり、ばねトルクと共に傾斜スロットが、装置が作動されてない場合にばねハウジングが近位に移動されることを確実にする。装置は、ピストンロッドおよび駆動チューブに結合された内容物終了部材225をさらに備える。
【0042】
薬剤の設定用量を吐出するために、作動ボタン290は、戻しばねの力に対抗して遠位に動かされ、そうすることにより、まず、駆動チューブ260の遠位端部が駆動結合を介してピストンドライバ230に係合し、次に、駆動チューブスプラインがラチェット部材スプライン242から係合解除し、これにより、歪められたばね255が、駆動チューブならびにこのチューブに結合されたピストンドライバおよびピストンロッド220を反時計回りに回転させることが可能になり、この結果、ピストンロッドが、ねじ付きハウジングナット207を通して遠位に動かされる。ユーザが作動ボタンに対する圧力を解放すると、戻しばねが、ボタンを戻し近位方向に駆動チューブを駆動するように働き、そうすることで、まず、駆動チューブとラチェット部材との間のスプライン連結に再係合し、次に、ピストンドライバから駆動チューブを係合解除し、この動きが、部分的に吐出された用量を一時停止することも可能にする。
【0043】
図8から図13を参照して、本発明の第2の例示的な実施形態を説明する。この機構は、基本的に、ハウジング部材301と、駆動チューブ360と、ハウジングと駆動チューブとの間に配置された螺旋ねじりばね355と、ラチェット部材340と、駆動/持ち上げ制御部材390と、複合型用量設定および解放部材380と、戻しばね395とを備える。第1の実施形態と第2の実施形態との主な違いは、用量設定部材の機能が2つの部材に分割されていることであり、これにより、用量設定部材がハウジングに対して軸方向に動くことが可能になる。他の面では、2つの実施形態の一般的な動作原理は、以下に与えられる動作原理の詳細な説明から明らかになるように同じであるが、まず、用量設定機構の中心的な構成要素のいくつかを詳細に説明する。
【0044】
図8を参照すると、長手方向の基準軸を画定するハウジングベース部材301が示されている。ハウジングベース部材は、管状主ハウジング部材309(図12参照)の近位端部に取り付けられ、駆動ばね用の基部を形成する。ハウジング部材は、複数のラチェット歯構造303(ここでは24個)が中央開口の周りに配列された、近位側に向く円錐状面を備え、各歯は、傾斜したラチェット面304と、ハウジング部材の断面平面に垂直に配向された停止面305とを備える、三角形状の構成を有する。ハウジングベース部材は、用量設定部材に係合するように適合された長手方向スプライン308の外周アレイをさらに備える。このようにして、ハウジングに回転不能に結合され複数のラチェット歯を備える第1のラチェット部分が形成される。示されているように、この実施形態では、第1のラチェット部分は、ハウジングベース部材と一体的に形成される。
【0045】
図9は、ラチェット部材340を示し、ラチェット部材340は、駆動管の対応するスプライン溝に摺動係合するように適合された複数の長手方向に配置されたスプライン342を設けられた中央開口を備えるリング状本体部341を有する。ラチェット部材は、第1の複数のラチェット歯構造343(ここでは24個)が中央開口の周りに配置された、(取り付けられたときに)遠位側に向く凹んだ面を備え、各歯は、傾斜したラチェット面344と、ハウジング部材の断面平面に垂直に配向された停止面345とを備える、三角形状の構成を有し、ラチェット歯は、ハウジング部材上の対応するラチェット歯と整合するように構成され、そうすることで一方向ラチェットを提供する。このようにして、第2のラチェット部分が形成される。ラチェット部材は、第2の複数(ここでは24個)の(取り付けられたときに)遠位側を向くラチェット歯構造348を有する外周フランジ349をさらに備え、各歯は、傾斜した持ち上げ面346と、図示の実施形態ではハウジング部材の断面平面に垂直に配向された駆動面347とを備える構成を有する。図示された実施形態では、各歯が平坦な頂部を有する。示されているように、第1の実施形態と比較すると、駆動/持ち上げ面が主ラチェット構造から分離されている。
【0046】
図10は、外側円筒面および内側円筒面を備える概ね管状の構成を有する用量設定部材380を示し、外側円筒面は、把持面を提供する複数の長手方向に配置された隆起381を有し、内側円筒面は、ハウジング部材スプライン308と整合するように適合されたいくつかの長手方向に配置されたスプライン388を、遠位端部に備える。用量設定部材は、内側リング形状横断隔壁385をさらに備え、この隔壁は、駆動管近位端部と回転的に整合するように適合された中央開口386を有する。
【0047】
第1の実施形態の用量設定部材の統合された駆動/持ち上げ制御構造は、別個の駆動/持ち上げ制御部材に移されている。より詳細には図11に示されるように、駆動/持ち上げ部材390は、外周面を有するリング形状部材として構成され、用量設定部材スプライン388と整合するように適合された複数の長手方向に配置されたスプライン398、ならびに近位円周縁部に配置された複数の近位側に向く駆動/持ち上げ歯399を有し、各歯は、長手方向に配向された駆動面397と、ラチェット部材340上で対応する駆動/持ち上げ面347、346に係合するように適合された傾斜した持ち上げ面296とを備える、三角形状の構成を有する。
【0048】
図12および図13を参照すると、部分的および完全に組み立てられた装置の近位部が示されている。図12は、ハウジングベース部材301が取り付けられた管状主ハウジング309と、駆動/持ち上げ制御部材390と、駆動チューブ360および駆動チューブ360上に取り付けられた球軸受365と、駆動チューブの一部の周りに配置さればねベースハウジング部材301または駆動チューブに接続されている螺旋駆動ばね355と、駆動チューブ360内部に配置されたねじ付きピストンロッド320と、主ハウジングとねじ付き係合しているスケールドラム370とを示す。図13では、さらに、ラチェット部材340、用量設定部材380、および戻しばね395が取り付けられている。第1の実施形態に対応して、装置の遠位部は、ピストン駆動部材および駆動結合配列(図示せず)を備える。
【0049】
より詳細には、用量設定部材380が、(図13に示されるような)近位位置と遠位位置との間でハウジング部材301に対して軸方向に可動に取り付けられ、近位位置において、スプライン388が駆動/持ち上げ制御部材390上のスプライン398に係合し、これにより用量設定部材が用量設定中に回転することが可能になり、遠位位置において、スプライン388がハウジング部材上のスプライン308に係合し、これにより用量設定部材がハウジング部材に回転的にロックされる。図示の実施形態では、用量設定部材は制御部材とスプライン連結されたままである。さらに、用量設定部材は、軸方向にロックされるが、球軸受365によって、駆動チューブ近位端部に対して回転的に自由に取り付けられ、これにより、後述されるように、用量設定部材が複合型用量設定および作動部材として機能することが可能になる。用量設定部材の開放端は、円板(図示せず)によって閉じられる。
【0050】
ラチェット部材340は、スプライン連結342、362によって、駆動チューブに回転不能に取り付けられ、ラチェット部材が駆動チューブと用量設定部材の両方に対して軸方向に動くことを可能にする。戻しばね395の形態の付勢手段が、ラチェット部材と用量設定部材隔壁385との間に配置され、戻しばねは、図示されるように、ラチェット部材ラチェット歯343をハウジング部材ラチェット歯303と係合するように付勢する。示されているように、係合された位置において、ラチェットは、ラチェット部材ひいては駆動チューブが反時計回りに回転されるのを防止する。図12に示されるように、駆動/持ち上げ制御部材390は、用量設定中に、スプライン連結によって用量設定部材に対して回転的にロックされ、戻しばねによって、駆動/持ち上げ部材の駆動/持ち上げ歯とラチェット部材とが係合するように付勢される。
【0051】
用量を設定するとき、その近位位置の用量設定部材が時計回りに回転される。駆動/持ち上げ制御部材390の駆動面397が、ラチェット部材340の対応する駆動面347と係合すると、後者は、所望の回転位置まで用量設定部材と一緒に回転させられ、この結果、ラチェット部材ラチェット歯343がハウジング部材ラチェット歯303を通り過ぎ、その間に、傾斜したラチェット歯、戻しばね395、および駆動チューブとのスプライン連結により、ラチェット部材が前後に動かされる。用量は、1つのラチェット歯に対応するにきざみ幅で設定されることが可能であり、たとえば、所与のインスリン送達装置では、典型的にはインスリン製剤の1単位(IU)に対応することになる。
【0052】
設定用量を減らすとき、用量設定部材が反時計回りに回転され、そうすることにより、駆動/持ち上げ制御構造390またはラチェット部材340上の駆動面間に隙間が作られる。しかしながら、駆動/持ち上げ制御構造の傾斜した持ち上げ面396が、ラチェット部材上の対応する持ち上げ面346と係合しているので、後者は、戻しばねに対抗して近位に動かされて、ラチェット部材ラチェット歯がちょうどハウジングラチェット歯と係合解除するまで動かされ、そのポイントで、歪められた駆動ばね355からの力が反時計回りに駆動管を回転させ、そうすることでラチェット部材も回転させ、この結果、傾斜した持ち上げ面が互いに係合解除する。結果として、ラチェット部材は、戻しばねによって遠位に動くことが可能であり、そうすることにより、ラチェット歯が再係合し、このことは、以前に設定された用量が1つのきざみ幅だけ減らされたことに対応する。ユーザが用量設定部材を反時計回りに回転させ続ける場合、設定用量は、ラチェット部材の前後運動ごとに1つのきざみ幅だけ減少され続ける。同時に、スケールドラムも反時計回りに回転され、表示窓に示される用量サイズが対応して減少される。
【0053】
薬剤の設定用量を吐出するために、複合型用量設定および作動部材380が、戻しばね395の力に対抗して遠位に動かされ、そうすることにより、第1に、用量設定部材が、ハウジングばねベース部材301のスプライン308に連結して、設定用量のさらなる調整を防止し、第2に、駆動チューブ360の遠位端部が駆動結合を介してピストンドライバに係合し、第3に、駆動チューブスプラインがラチェット部材スプライン342から係合解除し、これにより、歪められたばね355が、駆動チューブならびにこのチューブに結合されたピストンドライバおよびピストンロッド320を反時計回りに回転させることが可能になり、この結果、ピストンロッドが、ねじ付きハウジングナットを通して遠位に動かされる。ユーザが複合型用量設定および作動部材に対する圧力を解放すると、戻しばねが、近位方向に部材および駆動チューブを駆動するように働き、そうすることで、まず、駆動チューブとラチェット部材との間のスプライン連結に再係合し、次に、ピストンドライバから駆動チューブを係合解除し、この動きが、部分的に吐出された用量を一時停止することも可能にする。
【0054】
図14から図21を参照して、本発明の第3の例示的な実施形態を説明する。この機構は、基本的に、ハウジング部材401と、ラチェット部材440、駆動チューブ460と、ハウジングと駆動チューブとの間に配置されたねじりばね455と、ピストン駆動部材430と、複合型用量設定および解放部材480(以下では用量設定部材ともいう)と、戻しばね495の形状の付勢手段とを備える。第2の実施形態と同様に、ラチェット機構および駆動/持ち上げ機構の機能は、2つの別個の機構として設計されているが、第3の実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるように、第2の実施形態と比べて、異なるラチェット面が異なる部材に異なる位置で配置されている。他の面では、3つの実施形態の一般的な動作原理は、以下に与えられる動作原理の詳細な説明から明らかになるように同じであるが、まず、用量設定機構の中心的な構成要素のいくつかを詳細に説明する。
【0055】
図14を参照すると、長手方向の基準軸を画定する管状ハウジング部材401が示されている。ハウジング部材は、3つの支持体(2つが図示される)によってハウジング壁に連結された固定ねじ付きハウジングナット部407を、遠位端部に備え、また、ナット支持体間の開口に対応して円周状に配置された3つのスプラインセグメント402(2つが図示される)を備える。各スプラインセグメントは、遠位方向に開かれ、スプライン停止面によって近位方向に閉じられるいくつかのスプラインを備える。各スプラインセグメントに対応して、円周ラチェットセグメント405が、ラチェットセグメントの遠位でハウジング壁の内側面に形成される。後述されるように、ラチェットセグメントは、ピストン駆動部材に係合するように構成され、したがって用量設定ラチェット機構の一部でない。ハウジングは、用量設定部材に係合するように適合された円周溝408をさらに備え、溝と近位端部との間に、ばねハウジング(下記参照)に係合するように適合されたいくつかの傾斜したスロット409を配置している。
【0056】
図15を参照すると、管状ラチェット部材440が示されている。ラチェット部材は、複数のラチェット歯構造443(ここでは24個)を有する円周近位縁部を備え、各歯は、傾斜したラチェット面444と、ハウジング部材の断面平面に垂直に配向された停止面445とを備える、三角形状の構成を有する。ラチェット部材は、ハウジングスプラインセグメント402に係合するように適合されたスプライン442の円周アレイをさらに備える。このようにして、(スプラインが係合しているときに)ハウジングに回転不能に結合され複数のラチェット歯を備える第1のラチェット部分が形成される。示されているように、この実施形態では、第1のラチェット部分はハウジング部材と一体的に形成されない。
【0057】
図16は、最遠位円周フランジ461と、遠位円周フランジ465と、近位円周フランジ467とを有する駆動チューブ460を示す。遠位フランジは、第1の複数のラチェット歯構造466(ここでは24個)が配置された、遠位側に向く面を備え、各歯は、傾斜したラチェット面と、ハウジング部材の断面平面に垂直に配向された停止面とを備える、三角形状の構成を有し、ラチェット歯は、ハウジング部材440上の対応するラチェット歯443と整合するように構成され、そうすることで一方向用量設定ラチェットアセンブリを提供する。このようにして、第2のラチェット部分が駆動チューブと一体的に形成される。近位フランジ467もまた、第2の複数のラチェット歯構造468(ここでは24個)が配置された、遠位側に向く面を備え、各歯468は、傾斜したラチェット持ち上げ(解放)面468Rと、図示の実施形態ではハウジング部材の断面平面に垂直に配向されたラチェット駆動面468Dとを備える、三角形状の構成を有し、ラチェット歯は、用量設定部材480(下記参照)上の対応するラチェット歯488と整合するように構成され、そうすることで駆動/持ち上げラチェットアセンブリを提供する。駆動チューブは、駆動ばねの内端部を付着するためのスロット469をさらに備える。駆動チューブの近位端部は、中央円錐状ディンプル467’(図21参照)を有する端壁によって閉じられる。駆動チューブの最遠位部には、いくつかの可撓性フィンガ462を形成するいくつかの長手方向スロットが設けられ、これにより、その上に形成されたフランジセグメントが外方に撓むことが可能になる(下記参照)。駆動チューブは、スケールドラムと整合するように適合されたいくつかの外側駆動スプライン464と、内容物終了要素と整合するように適合された対の内側駆動スプライン463とを備える。
【0058】
図17は、内側駆動部436および2つの円周外側スプラインセグメント431を備えるピストン駆動部材430を示し、各円周外側スプラインセグメント431は、ハウジングラチェットセグメント405と整合するための撓性ラチェットアーム435を有する。内側駆動部は、ピストンロッドに回転不能に係合するように適合された一対の対抗した駆動構造437、および、フランジ指462(下記参照)に係合するように適合された円周円形隆起438を備える。各スプラインセグメントは、ラチェット部材スプライン442(下記参照)と軸方向に協働するように適合された複数の長手方向スプラインを備える。
【0059】
図18は、外側円筒面および内側円筒面を備える概ね管状の構成を有する用量設定部材480を示し、外側円筒面は、把持面を提供する複数の長手方向に配置された隆起481を有し、内側円筒面は、遠位端部に、軸方向の動きを制御するためにハウジング円周溝408と協働するように適合されたいくつかのフランジセグメント482を備え、近位端部に、複数のラチェット歯構造488(ここでは24個)が配列された近位側に向く面を備える円周フランジ487を備え、各歯は、傾斜したラチェット持ち上げ(解放)面488Rと、図示の実施形態ではハウジング部材の断面平面に垂直に配向されたラチェット駆動面488Dとを備える、三角形状の構成を有し、ラチェット歯は、駆動チューブ近位フランジ467上の対応するラチェット歯468と整合するように構成され、そうすることで駆動/持ち上げラチェットアセンブリを提供する。
【0060】
図19は、用量設定部材の近位開口に軸方向に固定されるように適合された解放ボタン部材490を示し、その遠位面は、作動中に駆動チューブの近位端部上の対応する受容キャビティに係合するように適合された先端構造491を備える。
【0061】
図20および図21を参照すると、部分的および完全に組み立てられた装置の主要部が初期状態で示されている。図20は、管状ハウジング401と、ラチェット部材440と、戻しばね495と、ピストン駆動部材430と、内容物終了部材425と、カップ状ばねハウジング450に取り付けられ、ばねハウジングまたは(取り付けられたとき)駆動チューブに連結されたクロックタイプねじり駆動ばね455と、解放ボタン部材が取り付けられた用量設定部材480と、主ハウジングとねじ付き係合しているスケールドラム470とを示す。用量設定部材は、円周溝408に配置されたフランジセグメント482を介してハウジングに結合される。第1の実施形態に関して上述されたように、ばねハウジング450は、傾斜したスロット409を介して主ハウジングに結合され、そうすることにより、ばねハウジングは、ばねトルクによって近位に動かされて用量設定部材フランジ487と係合し、そうすることで、用量設定部材に対する近位側に向けられた付勢力を与え、用量設定部材がハウジング溝408におけるその最近位位置へ動かされるようにする。ピストン駆動部材430は、ハウジングナット部407と当接して取り付けられる。ラチェット部材スプライン442は、ハウジングスプライン402においてスプライン停止面と当接して、また、ピストン駆動部材スプライン432と係合して配置され、そうすることで、これら3つの構成要素が、図示された状態で互いに回転的にロックされる。図20において、近位側に向くラチェット部材歯構造443、および近位側に向く用量設定部材歯構造488を見ることができる。
【0062】
図21では、駆動チューブ460、および駆動チューブ内に配置されたねじ付きピストンロッド420が取り付けられ、そうすることで、駆動チューブの遠位側に向くラチェット面466、468が、ラチェット部材または用量設定部材上の対応するラチェット面に係合する。遠位端部において、ピストンロッド脚421がピストンロッドに取り付けられる。戻しばね495は、ラチェット部材と駆動チューブ遠位部との間の円周状スペースに配置され、ラチェット部材に対する近位側に向けられた力、または遠位フランジ461を介する駆動チューブに対する遠位側に向けられた力を作用させる。個別部材の上記の説明に対応して、ピストンロッドは、駆動ナット407および内容物終了部材425にねじ付き係合し、また、ピストン駆動部材430の内側駆動部436に回転不能に係合される。駆動チューブは、スケールドラム470および内容物終了部材425と非回転的に係合し、また、駆動ばね455の内端部に連結している。
【0063】
用量を設定するとき、用量設定部材480は、その近位位置で時計回りに回転される。駆動/持ち上げラチェット歯488の駆動面が駆動チューブ駆動/持ち上げラチェット歯468上の対応する駆動面と係合すると、駆動チューブは、所望の回転位置まで用量設定部材と一緒に回転させられ、この結果、駆動チューブラチェット歯466がラチェット部材歯443を通り過ぎ、その間に、傾斜したラチェット歯、戻しばね495、およびハウジングとのスプライン連結442、402により、ラチェット部材が前後に動かされる。用量は、1つのラチェット歯に対応するにきざみ幅で設定されることが可能であり、たとえば、所与のインスリン送達装置では、典型的にはインスリン製剤の1単位(IU)に対応することになる。同時に、スケールドラムが螺旋状に回転されて設定用量を表示する。
【0064】
設定用量を減らすとき、用量設定部材480は反時計回りに回転され、その結果、上記実施形態と類似するように、ラチェットフランジ467が、戻しばね495の力に対抗して近位に持ち上げられるが、第3の実施形態の特有の設計のため、持ち上げの動きは、用量設定ラチェットアセンブリ466、443のラチェット面間で行われてもよく、そうすることにより、ラチェット部材が持ち上げられ、すなわち、戻しばねの力に対抗して遠位に動かされる。これら2つの動きの組み合わせが行われてもよい。しかしながら、説明されている実施形態では、相互作用する構造および面が、駆動チューブのみが戻しばねの力に対抗して近位に持ち上げられるように設計されている。上記の実施形態に対応して、歪められた駆動ばね455の力からラチェット歯が係合解除すると、駆動チューブが反時計回りに回転し、この結果、傾斜した持ち上げ面が互いに係合解除する。結果として、駆動チューブは、戻しばねによって遠位に動くことが可能であり、そうすることにより、ラチェット歯が再係合し、このことは、以前に設定された用量が1つのきざみ幅だけ減らされたことに対応する。ユーザが用量設定部材を反時計回りに回転させ続ける場合、設定用量は、駆動チューブの前後運動ごとに1つのきざみ幅だけ減少され続ける。同時に、スケールドラムも反時計回りに回転され、表示窓に示される用量サイズが対応して減少される。
【0065】
薬剤の設定用量を吐出するために、複合型用量設定および作動部材480、490が、ばねハウジング450からの近位側に向けられた戻し力に対抗して遠位に動かされ、これは傾斜したハウジングスロット409において回転されており、そうすることにより、まず、駆動/持ち上げラチェット歯が係合解除し、次に、先端構造491が、駆動チューブの近位端部の受容キャビティに係合し、そうすることにより、さらに、複合型用量設定および作動部材の遠位方向の動きの結果として、駆動チューブが、ばねハウジングからの近位側に向けられた力に対抗して遠位に動かされる。駆動チューブが遠位に動かされると、遠位可撓性指462が、ピストン駆動部材の円周円形隆起438に係合し、そうすることで、横方向に拡張してラチェット部材のための遠位停止部を提供する(下記参照)。駆動チューブと一緒に、ラチェット部材440も遠位に動かされ、当初は、ハウジングスプライン402およびピストン駆動部材スプライン432とスプライン係合する。続いて、ラチェット部材スプライン442がハウジングスプライン402から係合解除し、これにより、歪められたばね455が、駆動チューブならびにこのチューブに結合されたピストン駆動部材430およびピストンロッド420を反時計回りに回転させることが可能になり、この結果、ピストンロッドが、ねじ付きハウジングナット407を通して遠位に動かされる。
【0066】
ユーザが複合型用量設定および作動部材に対する圧力を解放すると、ばねハウジング450からの戻し力が、近位方向に駆動チューブを戻すように働く。駆動チューブ上の拡張された可撓性フィンガにより、ラチェット部材430も近位に動かされるようにされ、そうすることで、ラチェット部材とハウジングとの間のスプライン連結に再係合し、この動きが、部分的に吐出された用量を一時停止することも可能にする。最後に、複合型用量設定および作動部材は駆動チューブから係合解除し、駆動/持ち上げラチェットが再係合する。
【0067】
図22を参照して、ラチェット機構のさらなる実施形態を説明する。この図は、ラチェット構成要素自体を含むラチェットアセンブリを示す。ラチェットアセンブリは、上述されたのと同様の一般的構成の駆動部材および用量設定ボタンを備えるペン設計で使用されるように適合されている。図22のラチェットアセンブリを組み込んだ薬剤送達装置の特定の実施形態が、EP出願16201777.6に開示されている。
【0068】
より詳細には、ラチェットアセンブリは、ユーザにより把持されるように適合された近位管状用量設定および解放ボタン部材(図示せず)から形成されたハウジングと、近位端部の近くに内部円周フランジ(図示せず)を有する遠位管状スカート部材580とを備え、スカート部材は、ラチェットサブアセンブリを収容するように適合された円周フランジの遠位側にラチェット区画を形成する。スカート部材は、軸方向に配向され遠位側に向くスプライン588の内側アレイ、および一対の対向する軸方向に配向されたガイドスロット582を備える。組み立てられたとき、2つのハウジング部材は、円周フランジ121の近位側のロギング区画、および円周フランジの遠位側のラチェット区画を形成する。ラチェット機構はさらに、ペンハウジング部材501の一部として形成されたラチェット部を備える。
【0069】
ラチェットサブアセンブリは、管状ラチェット部材540、リング形状駆動/持ち上げ制御部材590、管状解放部材510、キャリア部材520、および螺旋ラチェットばね595を備える。
【0070】
ラチェット部材540は、解放部材510における対応するスプラインに摺動係合するように適合された複数の長手方向に配置されたスプライン541を設けられた内面を有する管状本体部を有する。ラチェット部材は、ラチェット歯構造543(ここでは24個)の内周アレイが中央開口の周りに配置された、遠位側に向く面を備え、各歯は、傾斜したラチェット面と、ハウジング部材の断面平面に垂直に配向された停止面とを備える、三角形状の構成を有し、ラチェット歯は、ペンハウジング部材(下記参照)上の対応するラチェット歯と整合するように構成され、そうすることで一方向ラチェットを提供する。ラチェット部材540は、遠位側に向くラチェット歯構造548(ここでは24個)の第2のアレイを有する外周フランジ549をさらに備え、各歯は、傾斜した持ち上げ面546と駆動面547とを備える構成を有する。以下では、駆動/持ち上げ歯構造のための2つの異なる代替的構成をより詳細に説明する。
【0071】
駆動/持ち上げ制御部材590は、外周面を有するリング形状部材として構成され、用量設定部材スプライン588と整合するように適合された複数の長手方向に配置されたスプライン598、ならびに近位円周縁部に配置された複数の近位側に向く駆動/持ち上げ歯599を有し、各歯は、ラチェット部材540上で対応する駆動/持ち上げ面に係合するように適合された駆動面597および傾斜した持ち上げ面596を備える三角形状を有する。制御部材は、スカートガイドスロット582に受容されるように適合された一対の対向するガイド突起592をさらに備える。ラチェット部材540に関して、駆動/持ち上げ歯構造のための2つの異なる代替的構成が以下に説明される。
【0072】
管状解放部材510は、ラチェット部材540における対応するスプライン541に摺動係合するように適合された外側スプライン511のアレイを備える。解放部材は、キャリア部材520(下記参照)の遠位コネクタチューブ部522に解放部材を固定的に取り付ける(すなわち、軸方向および回転的にロックする)ことを可能にする(スナップ)ロック手段をさらに備える。ラチェットばね595は、ラチェット部材のスカートフランジと外周フランジ549との間に配置され、それらを係合し、そうすることで軸方向に可動なラチェット部材を制御部材と係合するよう付勢するように適合されている。設定用量を解放するために用量ボタンを遠位側に動かされたとき、ラチェットばねは用量ボタン戻しばねとして働くこともできる。
【0073】
円盤形状キャリア部材520は、スカート部材580の円周フランジ(図示せず)上に位置付けられるように適合された円周状の遠位側に向く縁部521と、解放部材510および上述の駆動部材の近位端部に係合し非可動にロックするように適合された遠位コネクタチューブ部523とを備える。組み立てられた状態では、キャリア部材520および解放部材510は、軸方向にかつ回転的に駆動部材にロックされ、したがって駆動部材の一部を機能的に形成する。
【0074】
組み立てられてペンハウジング部材(下記参照)と組み合わされたとき、ラチェット配列は、解放可能一方向ラチェットとみなせるものを提供し、駆動配列は、用量ボタンを第1の方向に回転させることによってラチェット歯に対応するきざみ幅で用量を設定することを可能にし、持ち上げ配列は、用量ボタンが反対の第2の方向に回転されると設定用量が減少(または「ダイヤルダウン」)されることを可能にする。これは上記に詳細に説明されている。
【0075】
組み立て中、ラチェットサブアセンブリ部材がスカート部材に取り付けられ、これらの部材は、スカートガイドスロット582と係合する制御部材590を介して所定の位置に保持される。次に、キャリア部材520が解放部材510とスナップ係合することによって取り付けられ、これにより、両方部材がスカートフランジの各側に固着される。最後のステップとして、近位の用量設定および解放ボタン部材が、たとえば溶接によって、スカート部材580に取り付けられ付着される。このようにして、自己完結型ラチェットサブアセンブリが提供される。
【0076】
上述したように、ラチェットサブアセンブリは、ペンハウジング部材501の近位端部における構造と協働するように適合されている。より詳細には、ハウジング部材501は、近位端部において、ラチェット歯構造523(ここでは24個)の円周アレイが中央開口の周りに配置された近位側に向く面を有する縮径延長部を備え、各歯は、傾斜したラチェット面と、ハウジング部材の断面平面に概ね垂直に配向された停止面とを備える、三角形状の構成を有し、ラチェット歯は、ラチェット部材540(上記参照)上の対応するラチェット歯と整合するように構成され、そうすることで一方向ラチェットを提供する。縮径延長部は、用量設定部材スプライン588と整合するように適合された複数の長手方向に配置されたスプライン508を備える外周面を有する。
【0077】
上述のように、ラチェット部材540または制御部材590における駆動/持ち上げ歯構造は、2つの代替形態、すなわち、図2図21を参照して説明された実施形態に対応する「傾斜していない」駆動面を伴う、あるいは図23Aおよび図23Bを参照してより詳細に説明する(図22に示すような)「傾斜した」駆動面を伴う代替形態に対応して構成され得る。
【0078】
図23Aは、傾斜していない、すなわちハウジング部材の断面平面に垂直に配向された駆動面を有する、一対の対応するラチェットおよび制御部材640、690を示す。ラチェット部材640は、ラチェット歯構造643の内周アレイが中央開口の周りに配置された、遠位側に向く面を備え、各歯は、傾斜したラチェット面と、ハウジング部材の断面平面に垂直に配向された停止面とを備える、三角形状の構成を有し、ラチェット歯は、ペンハウジング部材上の対応するラチェット歯と整合するように構成され、そうすることで一方向ラチェットを提供する。ラチェット部材640は、遠位側に向くラチェット歯構造648の第2のアレイを有する外周フランジ649をさらに備え、各歯は、傾斜した持ち上げ面646と傾斜していない駆動面647とを備える構成を有する。駆動/持ち上げ制御部材690は、外周面を有するリング形状部材として構成され、複数の長手方向に配置されたスプライン698、ならびに近位円周縁部に配置された複数の近位側に向く駆動/持ち上げ歯699を有し、各歯は、ラチェット部材640上で対応する駆動/持ち上げ面に係合するように適合された傾斜していない駆動面697および傾斜した持ち上げ面696を備える三角形状を有する。
【0079】
ユーザにより最大用量が設定されている場合の使用の状況において、用量設定機構の最大用量停止面が、たとえばスケールドラムまたはハウジング部材上に配置され、互いに係合し、ばね装荷駆動部材のさらなる回転を防止する。対応して、制御部材またはラチェット部材の駆動面が、傾斜していない配向のために互いに「逃げる」ことができない用量設定ボタン用の停止面として機能する。したがって、ユーザが用量設定ボタンにトルクを加え続けた場合、停止構造の一方または両方が損傷するおそれがある。これが生じるのを防止するため、たとえばNovo NordiskのFlexTouch(登録商標)により知られるような追加の過トルク保護機構をペン設計に組み込むことができる。
【0080】
図23Bは、図22に示したラチェットおよび制御部材に概ね対応し、傾斜した、すなわちハウジング部材の断面平面に垂直に配向された駆動面を有する、一対のラチェットおよび制御部材540、590を示す。ラチェット部材540は、ラチェット歯構造543の内周アレイが中央開口の周りに配置された、遠位側に向く面を備え、各歯は、傾斜したラチェット面と、ハウジング部材の断面平面に概ね垂直に配向された停止面とを備える、三角形状の構成を有し、ラチェット歯は、ペンハウジング部材上の対応するラチェット歯と整合するように構成され、そうすることで一方向ラチェットを提供する。ラチェット部材540は、遠位側に向くラチェット歯構造548の第2のアレイを有する外周フランジ549をさらに備え、各歯は、「横方向に傾斜した」持ち上げ面546と「軸方向に傾斜した」駆動面647とを備える構成を有する。駆動/持ち上げ制御部材590は、外周面を有するリング形状部材として構成され、複数の長手方向に配置されたスプライン598、ならびに近位円周縁部に配置された複数の近位側に向く駆動/持ち上げ歯599を有し、各歯は、ラチェット部材640上で対応する駆動/持ち上げ面に係合するように適合された「軸方向に傾斜した」駆動面597および「横方向に傾斜した」持ち上げ面596を備える三角形状を有する。
【0081】
ユーザにより最大用量が設定されている場合の使用の状況において、用量設定機構の最大用量停止面が、たとえばスケールドラムまたはハウジング部材上に配置され、互いに係合し、ばね装荷駆動部材のさらなる回転を防止する。対応して、制御部材またはラチェット部材の駆動面が、上述されたように、用量設定ボタン用の停止面として機能する。しかしながら、駆動面の傾斜した配向により、ラチェット部材は、「逃げて」ラチェットばねの付勢力に抗して近位側に動くことができる。実際、駆動面の特定の傾斜は、ばね付勢だけでなく摩擦を克服するのに十分でなければならないであろう。したがって、ユーザが用量設定ボタンにトルクを加え続けた場合、駆動面の一方または両方が「カムオーバー」して損傷を防止する。明らかなように、このようにダイヤルアップ中の過トルク保護機構をペン設計に組み込むことができ、これは空間および費用の両面で効果的である。上述のように、駆動/持ち上げラチェット設計は、ゼロ未満へのダイヤル回しに対する固有の過トルク保護を提供する。
【0082】
ラチェット駆動面に対する基準面は、軸方向基準面、すなわち、ラチェット構成要素の軸方向参照軸を通して配置された平面であってよい。傾斜は、異なる実施形態では、45度未満、30度未満、または15度未満として選択されてもよく、所与の実施形態での的確な傾斜は、たとえば、ばね力、および係合面の間の摩擦に依存する。
【0083】
図22および図23の実施形態に対応して、図2図21を参照して説明した実施形態の「傾斜していない」駆動面は、代替的におよび同じ効果を有して、「軸方向に傾斜した」駆動面を用いて提供され得る。
【0084】
例示的な実施形態の上記の説明では、様々な構成要素の上記の機能を提供する様々な構造および手段が、本発明の概念が当業者である読者に明らかになる程度に説明されている。様々な構成要素の詳細な構成および明細は、本明細書に記載された方針に沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象であると考えられる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B