【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、請求項1の構成を有するサブジェクトマターによって達成される。
【0012】
したがって、前記キャリア要素は、少なくとも1つの第1の形状結合要素を有し、前記駆動部ハウジングは、少なくとも1つの第2の形状結合要素を有し、これらの形状結合要素は回転防止固定作用のために互いに係合し、前記少なくとも1つの第1の形状結合要素と前記少なくとも1つの第2の形状結合要素との間に、弾性制振要素が配置されており、前記弾性制振要素は、前記第1の形状結合要素および前記第2の形状結合要素が、第1の負荷状態において、当該弾性制振要素を介して少なくとも1つの空間的な方向に沿って制振された状態で互いに支持され、かつ、前記第1の負荷状態よりも負荷が増大した第2の負荷状態において、互いに接触するように作用する。
【0013】
前記駆動部ハウジングは、例えば、伝達要素を支持する軸受要素を介して締結を行う中央の締結要素によって、前記キャリア要素(例えば、ドアモジュールの装置キャリア)に保持されている。したがって、1つの(単一の)中央の締結要素(例えば、ねじ要素)によって前記駆動部ハウジングを前記キャリア要素に締結できるので、簡易な組み立てが可能である。
【0014】
このように1つの締結要素によって中央で締結する場合、回転防止固定作用を得るために、前記駆動部ハウジングと前記キャリア要素との間に作用するトルクを受けて放散するように構成された回転防止固定装置(Drehsicherungseinrichtung)が設けられる。したがって、この回転防止固定装置により、前記駆動部ハウジングを、前記回転軸心を中心として相対回転不能に固定された状態で前記キャリア要素に保持することができる。
【0015】
このとき、前記駆動部ハウジングを介した前記キャリア要素の振動の励起を少なくとも低減するために、前記回転防止固定装置は、前記駆動部ハウジングと前記キャリア要素との間に作用する弾性制振要素(elastisches Daempfungseleent)を有する。これにより、前記駆動部ハウジングと前記キャリア要素との間の移行部を弾性的に緩衝する弾性制振要素によって前記回転防止固定作用が得られ、前記回転防止固定装置によって、前記キャリア要素において振動が励起されないか、または振動の励起が少なくとも低減される。
【0016】
前記回転防止固定装置は、前記キャリア要素の前記少なくとも1つの第1の形状結合要素(Formschlusselement)と、前記駆動部ハウジングの前記少なくとも1つの第2の形状結合要素とによって構成される。前記形状結合要素は前記回転軸心から離間しているので、互いに係合することによって、トルクを受けて支持するのに適している。前記弾性制振要素は、対応する第1の形状結合要素と対応する第2の形状結合要素との間に作用し、これにより、少なくとも、正常な日常的負荷を受ける状態に相当する第1の負荷状態において、前記形状結合要素の間で制振するように作用する。
【0017】
しかしながら、この場合、前記形状結合要素の互いに対する係合は、負荷が増大した場合に、すなわち第1の負荷状態よりも負荷が高い第2の負荷状態において、前記形状結合要素が互いに接触するように構成されている。これにより、前記弾性制振要素が過度に圧縮されてしまうことを回避することができ、前記弾性制振要素への損傷を防止し、前記弾性制振要素の寿命を長くすることができる。
【0018】
前記形状結合要素の一方(すなわち、前記第1の形状結合要素または前記第2の形状結合要素)は、形状結合ピン(Formschlusszapfen)を備えることが好ましい。例えば、前記キャリア要素は、当該キャリア要素の表面部分から突出するようなタイプの形状結合ピンを有していてもよい。そして、前記形状結合要素の他方の形状結合要素は、前記形状結合ピンが係合する形状結合開口(Formschlussoeffnung)を有する。例えば、前記駆動部ハウジングの前記第2の形状結合要素は、前記キャリア要素の前記形状結合ピンが係合するような形式の係合結合開口を有していてもよい。
【0019】
そして、前記回転防止固定装置は、一方の構成部品における前記形状結合ピンが他方の構成部品における前記係合結合開口に係合することにより作用する。こうした形式の形状結合ピンを、例えば前記キャリア要素に設けて、前記駆動部ハウジングの係合結合開口に係合させてもよい。逆に、形状結合ピンを前記駆動部ハウジングに設けて、前記キャリア要素の係合結合開口に係合させることも可能である。このようにして、形状結合係合により前記回転防止固定作用が実現されることにより、前記駆動部ハウジングが前記前記キャリア要素に対して形状結合により固定され、前記回転軸心を中心として作用するトルクを受けて放散する。
【0020】
前記形状結合ピンと前記係合結合開口との間の係合は、前記回転軸心から径方向に離間した位置において生じ、この係合によりトルクを効果的に受けて放散することができる。このとき、形状結合ピンと形状結合開口を一方側と他方側に複数組設け、前記回転軸心を中心とした複数箇所で形状結合ピンを対応する形状結合開口に係合させることにより、回転防止固定作用を得ることが好ましい。
【0021】
一実施形態において、各形状結合ピンは、例えば中央の、例えば円筒状(ピン形状)の部分を有し、この部分に前記弾性制振要素が配置される。このとき、前記中央部が、少なくとも部分的に前記弾性制振要素によって覆われて、前記弾性制振要素が、前記形状結合ピンの前記中央部と前記係合結合開口の壁との間の中間位置に配置されていることにより、前記係合結合開口への前記形状結合ピンの係合が音響的にディカップリングされる。
【0022】
前記弾性制振要素は、弾性材料(例えば、エラストマーまたはゴム材料)から形成されることが好ましい。特に、前記キャリア要素および駆動部ハウジングは、例えばプラスチックからも形成されるが、剛性構造を有しており、前記弾性制振要素は、それよりも(顕著に)高い弾性を有する(すなわち、より剛性が低い)。
【0023】
一実施形態において、前記形状結合ピンは、前記中央部から径方向に突出し、かつ前記中央部において前記回転軸心と平行に延びる(例えば、ピンの形態の)チーク部を有していてもよい。前記チーク部は、前記弾性制振要素の弾性ウェブに隣接しており、この弾性ウェブは、前記チーク部に対して径方向外側に張り出し、かつ、前記形状結合開口を周方向に囲む周面に当接していることが好ましい。これにより、前記形状結合ピンは、前記弾性ウェブによって前記係合結合開口内で径方向に支持される。このようにして前記形状結合ピンと前記係合結合開口を囲む周面との間の移行部が緩衝されるので、前記駆動部ハウジングから前記キャリア要素へと伝達される振動を抑えることができる。
【0024】
前記形状結合ピンは、好ましくは、前記中央部を中心として周方向に分散された複数のチーク部を有し、前記弾性制振要素は、前記チーク部の間に係合する複数のウェブを有する。各チーク部は、一対のウェブの間に収容され、各形状結合ピンは、前記中央部を中心として分散された弾性ウェブを介して、前記形状結合開口を囲む周面に対して径方向に支持されている。これにより、前記回転軸心に対して垂直な平面において制振が行われ、この制振により、並進的および回転的に作用する力およびモーメントの両方を受けて、放散し、制振することが可能である。
【0025】
前記駆動部ハウジングにおいて過度に強い振動が生じた場合、前記形状結合ピンが、前記形状結合開口を形成する締結装置の周面に前記チーク部によって接触することで、前記少なくとも1つのチーク部によって前記弾性制振要素の過度な圧縮を防止することができる。前記形状結合ピンの前記チーク部と前記形状結合開口の内周面との間に遊びが存在し、かつ前記形状結合ピンが前記弾性制振要素の前記ウェブを介して前記係合結合開口に弾性支持されることにより、前記キャリア要素における振動の励起が抑えられ、前記弾性制振要素の最大圧縮は、前記遊びによって予め定められる。(前記第2の負荷状態において)強い振動が生じて、前記形状結合ピンが前記係合結合開口において前記遊びを越えて相対移動してしまう場合、前記チーク部の少なくとも1つが前記周面と接触し、前記弾性制振要素がそれ以上圧縮されることを防止する。これにより、前記駆動装置の寿命よりも長い間、前記弾性制振要素の弾性特性が(過度に)損なわれないようにすることで、前記駆動装置の寿命よりも長く制振特性を維持することができる。
【0026】
前記弾性制振要素は、好ましくは、前記回転軸心に対して横方向に延びるフェース面において、前記中央部と少なくとも部分的に重なり合うヘッド部を備える。前記形状結合ピンが、例えば前記キャリア要素の表面部分に設けられ、かつ、前記中央部がそのヘッド部によって前記表面部分から突出している場合、前記弾性制振要素は、前記表面部分とは反対側の前記フェース面において前記中央部と重なり合っている。これにより、軸方向において、前記弾性制振要素は、前記形状結合ピンと前記形状結合開口の底部との間の中間位置にあり、付加的に、例えばスタッドなどの形態のスペーサ要素が、前記ヘッド部に設けられていてもよい。このスペーサ要素により、前記形状結合ピンと前記係合結合開口の前記底部との間の公差補償(Toleranzausgleich)が可能である。
特に、前記形状結合ピンの前記チーク部と前記形状結合開口の前記底部との間の公差補償および軸方向の弾性的な遊びは、前記スペーサ要素によって予め定めることができる。
【0027】
一実施形態において、前記少なくとも1つの弾性制振要素は、封止(シール)要素の封止リングと一体に形成してもよい。前記封止リングは、前記駆動部ハウジングと前記キャリア要素との間の移行部を、耐水性をもたせて封止するために用いられ、前記弾性制振要素は、例えばタブを介して前記封止リングに連結されて、単一の封止要素を形成する。前記封止要素は、好ましくは、弾性を有する圧縮可能な材料(例えば、エラストマーまたはゴム材料)から全体が構成されている。
しかしながら、前記制振要素は、別体としてワッシャ(Dichtung)から形成してもよい。
【0028】
特定の一実施形態において、前記駆動装置は、ケーブルドラムと、前記キャリア要素において、前記駆動部ハウジングとは反対の側に設けられたケーブル出口ハウジングとを有する。前記ケーブル出口ハウジングは、前記回転軸心を中心として前記ケーブルドラムを回転可能に支持する軸受要素を形成しており、これにより、前記ケーブルドラムは、前記ケーブル出口ハウジングによって前記キャリア要素に回転可能に保持される。
【0029】
前記締結要素は、例えば、前記締結要素が一方の軸受要素から他方の軸受要素に螺合され、これにより前記ケーブル出口ハウジングが前記駆動部ハウジングに対して拘束されることによって、前記ケーブル出口ハウジングの前記軸受要素と前記駆動部ハウジングの前記軸受要素との間に作用するように構成してもよい。これにより、前記駆動部ハウジングは、前記ケーブル出口ハウジングによって前記キャリア要素に固定され、制振作用を伴って作用する前記回転防止固定装置が、前記駆動部ハウジングにおいてトルクを受ける。
【0030】
前記ケーブルドラムが回転可能に固定される前記ケーブル出口ハウジングの前記軸受要素と、前記伝達要素が回転可能に固定される前記駆動部ハウジングの前記軸受要素とは互いに同軸に配置され、これらの軸受要素が、前記ケーブルドラムと前記伝達要素の共通の回転軸心を定めてもよい。
【0031】
前記キャリア要素において一方の第1の側にある前記ケーブル出口ハウジングと、前記キャリア要素において他方の第2の側にある前記駆動部ハウジングとが、これらの軸受要素に作用する1つの(単一の)締結要素によって互いに締結されて、前記キャリア要素に固定されていることにより、組み立てが極めて簡易である。特に、組み立てる際に、前記ケーブル出口ハウジングを前記キャリア要素の一方側に取り付け、前記駆動部ハウジングを他方側に取り付けて、その後、前記ケーブル出口ハウジングおよび前記駆動部ハウジングを互いに連結し、好ましくは、締結要素(例えば、ねじ要素)によって互いに軸方向に拘束することが可能である。
【0032】
このとき、前記締結要素は、前記軸受要素の一方から前記軸受要素の他方に係合して、前記軸受要素を互いに連結してもよい。これにより、一方側の前記ケーブル出口ハウジングと、他方側の前記駆動部ハウジングとは、前記軸受要素によって互いに固定される。
【0033】
車両における動作配置において、前記ケーブルドラムは、例えば、車両のサイドドアにおいて、例えば湿潤空間に配置され、前記駆動装置の前記モータユニットは乾燥空間に配置される。このとき、前記湿潤空間と前記乾燥空間との間は、ドアモジュールの、プラスチック製の前記キャリア要素(例えば、装置キャリア)によって分離することができる。このような湿潤空間/乾燥空間の分離は、前記ケーブル出口ハウジングを前記キャリア要素の一方側に、前記駆動部ハウジングを前記キャリア要素の他方側に取り付け、かつ(単一の)中央の締結要素によって連結することにより、簡易な方法で実現することが可能である。ここで、この湿潤空間/乾燥空間の分離は、一方側から他方側に係合する締結要素によって損なわれることはない。
【0034】
前記ケーブルドラムを支持するための前記軸受要素は、例えば、前記ケーブル出口ハウジングのベースから突出する円筒状の軸受ドームとして形成してもよい。また、前記駆動部ハウジングの前記軸受要素は、前記キャリア要素において前記ケーブルドラムとは反対方向に面する側で前記伝達要素を支持するためのものであり、前記駆動部ハウジングにおける円筒状の軸受ドームとして形成してもよい。これらの軸受ドームは、前記締結要素によって互いに軸方向に拘束されており、この拘束によって一方側の前記ケーブル出口ハウジングと他方側の前記駆動部ハウジングとが前記キャリア要素に固定される。
【0035】
前記ケーブル出口ハウジングおよび前記駆動部ハウジングは、前記ケーブル出口ハウジングの前記軸受要素と前記駆動部ハウジングの前記軸受要素との間に作用する前記締結要素により、前記キャリア要素を介在させた状態で互いに軸方向に固定され、かつ、互いに拘束されることによって、前記キャリア要素に固定される。前記ケーブル出口ハウジングに配置された前記ケーブルドラムにより、前記ケーブル出口ハウジングにトルクを作用させることができ、また、前記駆動部ハウジングの前記軸受要素に設けられた前記伝達要素により、前記駆動部ハウジングにトルクを作用させることができる。したがって、前記駆動装置が作動する間、前記ケーブル出口ハウジングは、また、前記駆動部ハウジングも同様に、前記キャリア要素に対して、また互いに対して回転移動しないようにする必要がある。したがって、回転防止固定作用は、一方側においては前記ケーブル出口ハウジングと前記キャリア要素との間に、そして、他方側においては前記駆動部ハウジングと前記キャリア要素との間に(も)与える必要がある。
【0036】
このため、例えば、前記ケーブル出口ハウジングの前記ベースを前記キャリア要素に連結する前記少なくとも1つのハウジング部を、前記キャリア要素に相対回転不能に固定された状態で設置することが可能である。よって、前記少なくとも1つのハウジング部の脚部または前記キャリア要素に、前記ケーブル出口ハウジングが取り付けられたとき、それぞれ他方の構成部品(すなわち、前記キャリア要素または前記少なくとも1つのハウジング部の前記脚部)における係合結合開口と係合する形状結合要素を設けてもよい。前記形状結合要素を前記形状結合開口に係合させることにより、前記ケーブル出口ハウジングと前記キャリア要素との間に回転防止固定作用が得られる。前記少なくとも1つのハウジング部が前記ケーブル出口ハウジングの前記軸受要素から径方向に離間し、かつ、これにより前記ケーブルドラムが回転可能である前記回転軸心の径方向外側に作用することにより、トルクを好適に受けることが可能である。
【0037】
また、この場合、前記ケーブル出口ハウジングは、前記少なくとも1つのハウジング部によって前記キャリア要素において軸方向に支持されており、前記ケーブル出口ハウジングを前記駆動部ハウジングと軸方向に拘束することによって、前記キャリア要素に対しても拘束されている。前記締結要素を拘束する力は、前記少なくとも1つのハウジング部によって前記キャリア要素において支持されている。
【0038】
したがって、前記ケーブル出口ハウジングおよび前記駆動部ハウジングはいずれも、形状結合により相対回転不能に固定された状態で、前記キャリア要素に取り付けることができる。この形状結合は、前記ケーブル出口ハウジングを前記キャリア要素の一方側に取り付け、前記駆動部ハウジングを前記キャリア要素の他方側に取り付けたときに自動的に生じるので、別の取付工程は不要であり、また、付加的な締結要素(例えば、ねじ要素の形態のもの)を取り付ける必要がない。前記ケーブル出口ハウジングおよび前記駆動部ハウジングは、前記ケーブル出口ハウジングの前記軸受要素と前記駆動部ハウジングの前記軸受要素との間において中央に作用する前記締結要素のみによって互いに(軸方向に)固定されることが好ましい。
【0039】
以下において、本発明の根底にある構想を、添付の図面に示された例示的な実施形態に基づいて、より詳細に説明する。