特許第6961699号(P6961699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961699
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】分散剤櫛形ポリマーを含む潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20211025BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20211025BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20211025BHJP
   C10M 105/32 20060101ALI20211025BHJP
   C10M 107/02 20060101ALI20211025BHJP
   C10M 135/18 20060101ALI20211025BHJP
   C10M 149/04 20060101ALI20211025BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20211025BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20211025BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20211025BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20211025BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20211025BHJP
【FI】
   C08F220/18
   C10M169/04
   C10M101/02
   C10M105/32
   C10M107/02
   C10M135/18
   C10M149/04
   C10N10:12
   C10N30:00 Z
   C10N40:25
   C10N20:04
   C10N30:06
【請求項の数】20
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-533100(P2019-533100)
(86)(22)【出願日】2017年12月15日
(65)【公表番号】特表2020-502344(P2020-502344A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2017083038
(87)【国際公開番号】WO2018114673
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2020年9月2日
(31)【優先権主張番号】16205042.1
(32)【優先日】2016年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】由岐 剛
(72)【発明者】
【氏名】荒井 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 智博
(72)【発明者】
【氏名】岸田 伸宏
【審査官】 堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−183123(JP,A)
【文献】 特開2014−224246(JP,A)
【文献】 特表2016−515658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C10M 101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル10〜20重量%、
(b)メチルメタクリレート0〜1重量%、
(c)n−ブチルメタクリレート60〜75重量%、
(d)C10〜15アルキルメタクリレート10〜20重量%、
(e)スチレンモノマー0〜1重量%、および
(f)アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその混合物からなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜3重量%
からなる、ポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー。
【請求項2】
以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル14〜16重量%、
(b)メチルメタクリレート0〜1重量%、
(c)n−ブチルメタクリレート65〜70重量%、
(d)C10〜15アルキルメタクリレート14〜17重量%、
(e)スチレンモノマー0〜1重量%、および
(f)N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜3重量%
からなる、請求項1記載のポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー。
【請求項3】
200,000〜500,000g/モルの範囲の重量平均分子量Mを有することを特徴とする、請求項1または2記載のポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー
【請求項4】
300,000〜400,000g/モルの範囲の重量平均分子量Mを有することを特徴とする、請求項1または2記載のポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー。
【請求項5】
前記成分(d)がC12〜14アルキルメタクリレートを含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー。
【請求項6】
前記成分(a)のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、4,000〜6,000g/モルの範囲の数平均分子量Mを有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー
【請求項7】
前記成分(a)のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、4,000〜5,000g/モルの範囲の数平均分子量Mを有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー。
【請求項8】
前記窒素含有(メタ)アクリレートは、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドおよびその混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー
【請求項9】
以下:
(A)基油60〜80重量%と、
(B)以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル10〜20重量%、
(b)メチルメタクリレート0〜1重量%、
(c)n−ブチルメタクリレート60〜75重量%、
(d)C10〜15アルキルメタクリレート10〜20重量%、
(e)スチレンモノマー0〜1重量%、および
(f)アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその混合物からなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜3重量%
からなるポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー20〜40重量%と
を含む、添加剤組成物。
【請求項10】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーは、以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル14〜16重量%、
(b)メチルメタクリレート0〜1重量%、
(c)n−ブチルメタクリレート65〜70重量%、
(d)C10〜15アルキルメタクリレート14〜17重量%、
(e)スチレンモノマー0〜1重量%、および
(f)N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜3重量%
からなる、請求項記載の添加剤組成物。
【請求項11】
前記基油は、APIグループI、II、III、IV、Vの油およびその混合物からなる群から選択される、請求項または10記載の添加剤組成物。
【請求項12】
前記成分(d)がC12〜14アルキルメタクリレートを含む、請求項9から11までのいずれか1項に記載の添加剤組成物。
【請求項13】
成分(A)は、70〜75重量%の量で存在し、成分(B)は、25〜30重量%の量で存在する、請求項から12までのいずれか1項記載の添加剤組成物。
【請求項14】
以下:
(A)基油85〜99重量%と、
(B)以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル10〜20重量%、
(b)メチルメタクリレート0〜1重量%、
(c)n−ブチルメタクリレート60〜75重量%、
(d)C10〜15アルキルメタクリレート10〜20重量%、
(e)スチレンモノマー0〜1重量%、および
(f)アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその混合物からなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜3重量%
からなるポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー0.5〜10重量%と、
(C)モリブデン0.05〜0.5重量%を提供する、モリブデン含有摩擦調整剤0.5〜5重量%と、
(D)場合により1種以上のさらなる添加剤と
を含む、潤滑油組成物。
【請求項15】
前記潤滑油組成物の全重量を基準として、成分(A)は88〜98.5重量%の量で存在し、成分(B)は0.5〜10重量%の量で存在し、成分(C)は1〜2重量%の量で存在し、前記成分(C)はモリブデン0.1〜0.2重量%を提供することを特徴とする、請求項14記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
前記基油は、APIグループIIIの油およびその混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項14または15記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
前記成分(d)がC12〜14アルキルメタクリレートを含む、請求項14から16までのいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
摩擦係数は0.1以下であることを特徴とする、請求項14から17までのいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
潤滑油組成物におけるモリブデンの可溶化剤としての、請求項1からまでのいずれか1項記載のポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーの使用。
【請求項20】
0.05〜0.5重量%のモリブデンを溶解させ得ることを特徴とする、請求項19記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定量のマクロモノマーと窒素含有(メタ)アクリレートとを含む、選択された櫛形ポリマー、その製造、かかる櫛形ポリマーを含む潤滑剤組成物、および潤滑剤組成物における、特にエンジン油(EO)組成物における可溶化剤としてのその使用に関する。
【0002】
自動車産業では、燃費に強い関心が持たれている。燃費向上のためには、エンジン油において効果的な摩擦調整剤(FM)を採用する必要がある。モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)は、一般的に使用されているFMであり、特に境界潤滑領域において、他のFMよりも摩擦低減性能に優れている。
【0003】
潤滑剤の目的は、2つの表面間の摩擦量を減少させることにある。場合によっては、潤滑剤の基油が、この機能を十分に果たすのに十分な潤滑性を示さないことがある。このような状況において、油の潤滑性を高めるために摩擦調整剤が添加される。摩擦調整剤は、潤滑剤の摩擦係数を調整するために使用される。摩擦調整剤は、2つの表面を相対的に動かすために必要なエネルギー量を変更することができるように設計されている。
【0004】
今日使用されている摩擦調整剤の大多数は、より良好な燃費に向けて、摩擦を低減させるか、または潤滑性を高めることができるように設計されている。この目的を達成するための方法の1つとしては、使用時のエンジン油の粘度の低下が挙げられるであろう。摩耗および摩擦の低減に十分な潤滑膜を維持しながら粘度を低下させることが課題である。
【0005】
摩擦調整剤は、境界条件下または金属間の接触が生じる場所で、非常に効率的である。有機摩擦調整剤は、可溶性の長鎖と極性頭部とを有する。極性頭部が金属表面に結合する。可溶性鎖は、カーペットの繊維のように互いに並んで整列している。極性頭部は、リン酸またはホスホン酸、アミン、アミドまたはカルボン酸から構成されていてよい。可溶性鎖は、密な単層または反応による厚い粘性層を形成する。これらの層は容易に剪断され、比較的滑り易い表面を作り出す。
【0006】
メカニカルタイプの摩擦調整剤は、互いに整列した小板の層を形成することで摩擦を低減させる。これらのうち最も一般的なものは、モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)である。これらの添加剤は、カーボンマトリックスまたはパイライトマトリックスのいずれかに分散したナノサイズの単一シートを形成することによって摩擦を低減する。こうしたナノサイズのシートは、層状に配向されていて互いに滑り、そうすることで、生じた摩擦を低減させる。
【0007】
燃費基準が厳しくなるにつれて、エンジン油にはより多くのことが要求されるようになる。摩擦調整剤の技術は進化し続けてはいるものの、燃費またはエネルギー消費量を改善するために最も効果的な方法は、潤滑剤の粘度を低下させることである。しかしこれまでのところ、流体力学的膜を失い、混合膜潤滑または境界潤滑のいずれかで運転することしかできない。これら2つの潤滑方式においては、摩擦の低減には摩擦調整剤の使用が不可欠となる。
【0008】
燃費の良いエンジン油を設計するには、流体潤滑時ならびに混合潤滑および境界潤滑時の摩擦の低減が非常に重要である。MoDTCは、境界潤滑時の摩擦を低減する摩擦調整剤としてよく知られているが、APIグループIIIまたはグループIII+基油へのMoDTCの溶解性は、さほど良好ではない。一方、櫛形粘度指数向上剤によって、潤滑油の粘度指数(VI)を高めることができる。これは、櫛形粘度指数向上剤によって、高温時の粘度を保持しつつ、40℃で流体力学的摩擦を低減できることを意味する。しかし、MoDTCの配合量は、溶解性ゆえに制限されていた。櫛形分散剤の使用は、グループIII+基油へのMoDTCの溶解性を高め、かつ低い摩擦係数および低いKV40を提供する一助となる。
【0009】
モリブデンジチオカルバメートは、潤滑配合物用の周知の添加剤である。対称ジアルキルアミンおよび対称ジアルキルアミンの混合物から製造されたモリブデンジアルキルジチオカルバメートは、目下、減摩性を付与するために潤滑油(およびその混合物)において添加剤として使用されている(米国特許第7,763,744号明細書(US 7,763,744 B2)参照)。モリブデンジアルキルジチオカルバメートの欠点は、特に比較的低温では該モリブデンジアルキルジチオカルバメートが所望の溶解性を示さず、それにより潤滑剤組成物から化合物が分離し、結果として潤滑剤組成物中に濁り、曇りまたは沈殿物が形成されて、その効果が低下することにある。
【0010】
したがって、潤滑剤組成物へのモリブデンジアルキルジチオカルバメート摩擦調整剤の溶解性の向上を提供する潤滑剤組成物が望まれている。
【0011】
ここで驚くべきことに、新規のポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーによって、潤滑剤組成物へのモリブデンの溶解性を高め得ることが見出された。
【0012】
櫛形ポリマーに関する技術全般および粘度指数向上剤としてのその使用は、すでに知られている(米国特許出願公開第2008/0194443号明細書(US 2008/0194443)、米国特許出願公開第2010/0190671号明細書(US 2010/0190671)および国際公開第2014/170169号(WO 2014/170169))。しかし、潤滑配合物へのモリブデンの溶解性に対するこれらの化合物の効果については、何ら説明されていない。
【0013】
潤滑剤の特性は、通常、添加剤を潤滑油に添加することによって改善される。
【0014】
例えば米国特許5,565,130号明細書(US 5,565,130)および同5,597,871号明細書(US 5,597,871)には、ポリブタジエン由来のマクロモノマーを含む櫛形ポリマーの、粘度指数向上剤としての使用が開示されている。しかし、潤滑配合物へのモリブデンの溶解性に対するかかる櫛形ポリマーの効果については、該文献には開示されていない。
【0015】
国際公開第2007/003238号(WO 2007/003238 A1)には、ポリオレフィン系マクロモノマー、特にポリブタジエン系メタクリル酸エステルおよびC〜C10アルキルメタクリレートをベースとする油溶性櫛形ポリマーが記載されている。該櫛形ポリマーを、粘度指数および剪断安定性の改善を目的として、潤滑油用添加剤として使用することができる。しかし、潤滑配合物へのモリブデンの溶解性に対するかかる櫛形ポリマーの効果については、該文献には開示されていない。
【0016】
国際公開第2009/007147号(WO 2009/007147 A1)には、自動車の燃料消費量を改善するための、ポリオレフィン系マクロモノマー、特にポリブタジエン系メタクリル酸エステルおよびC〜C10アルキルメタクリレートをベースとする櫛形ポリマーの使用が開示されている。しかし、潤滑配合物へのモリブデンの溶解性に対するかかる櫛形ポリマーの効果については、該文献には開示されていない。
【0017】
国際公開第2010/102903号(WO 2010/102903 A1)には、トランスミッション油、モータ油および作動油用の抗疲労添加剤としての分散剤櫛形ポリマーの使用が開示されている。しかし、潤滑剤配合物へのモリブデンの溶解性に対するかかる分散剤櫛形ポリマーの効果については、該文献には開示されていない。
【0018】
独国特許出願公開第102009001447号明細書(DE 102009001447 A1)には、作動油の耐荷力を向上させるための、高粘度指数の櫛形ポリマーの使用が記載されている。しかし、潤滑剤配合物へのモリブデンの溶解性に対するかかる櫛形ポリマーの効果については、該文献には開示されていない。
【0019】
国際公開第2012/025901号(WO 2012/025901 A1)(Total)には、特定の摩擦調整剤と組み合わせた潤滑剤における櫛形ポリマーの使用が開示されている。しかし、潤滑配合物へのモリブデンの溶解性に対するかかる櫛形ポリマーの効果については、該文献には開示されていない。
【0020】
従来技術では総じて、流体潤滑の観点から燃料消費量を減少させるための非分散性の櫛形ポリマーに焦点が合わせられていた。本発明は、長期貯蔵安定性、特に低温での長期貯蔵安定性を維持しつつ、混合潤滑および境界潤滑に向けて摩擦を改善するものである。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明の第1の対象は、以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル10〜20重量%、および
(b)アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその混合物からなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%
を含むポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーに関する。
【0022】
好ましい第1の実施形態は、以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル10〜20重量%、
(b)メチルメタクリレート0〜1重量%、
(c)n−ブチルメタクリレート60〜75重量%、
(d)C10〜30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10〜15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12〜14アルキルメタクリレート10〜20重量%、
(e)スチレンモノマー0〜1重量%、および
(f)アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその混合物、好ましくはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜3重量%
を含むポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーに関する。
【0023】
もう1つの好ましい第1の実施形態は、以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル14〜16重量%、
(b)メチルメタクリレート0〜1重量%、
(c)n−ブチルメタクリレート65〜70重量%、
(d)C10〜15アルキルメタクリレート、好ましくはC12〜14アルキルメタクリレート14〜17重量%、
(e)スチレンモノマー0〜1重量%、および
(f)N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜3重量%
を含むポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーに関する。
【0024】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)の含有率は、ポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーの全組成を基準とする。
【0025】
特定の実施形態では、成分(a)〜(f)の割合は、合計で100重量%である。
【0026】
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形コポリマーの重量平均分子量Mは、好ましくは200,000〜500,000g/モルの範囲にあり、より好ましくは300,000〜400,000g/モルの範囲にある。
【0027】
好ましくは、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーは、1〜6の範囲、より好ましくは3〜5の範囲の多分散度(PDI)M/Mを有する。
【0028】
およびMは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)校正物質を用いて、40℃のテトラヒドロフラン中でRI検出器を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求められる。
【0029】
本発明の文脈における櫛形ポリマーは、骨格または主鎖とも呼ばれる第1のポリマーと、側鎖と呼ばれ、骨格に共有結合している多数のさらなるポリマーとを含む。この場合、櫛形ポリマーの骨格は、上記の(メタ)アクリレートの連結した不飽和基によって形成される。(メタ)アクリル酸エステルのエステル基、スチレンモノマーのフェニル基およびさらなるラジカル重合性コモノマーの置換基が、櫛形ポリマーの側鎖を形成する。
【0030】
「アクリレート」という用語は、アクリル酸のエステルを指す。「メタクリレート」という用語は、メタクリル酸のエステルを指す。「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリル酸のエステルとメタクリル酸のエステルとの双方を指す。
【0031】
本発明により使用するためのヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、4,000〜6,000g/モル、好ましくは4,000〜5,000g/モルの数平均分子量Mを有する。その分子量が高いことから、ヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、本発明の文脈においてマクロアルコールとも呼ばれ得る。
【0032】
数平均分子量Mは、市販のポリブタジエン標準物質を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって決定される。溶離液としてTHFを用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより、DIN 55672−1に従って測定を行った。
【0033】
好ましくは、ヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、少なくとも99%の水素化レベルを有する。本発明のコポリマーについて決定することができる水素化レベルの他の指標は、ヨウ素価である。ヨウ素価とは、コポリマー100gに添加することができるヨウ素のg数を指す。好ましくは、本発明のコポリマーは、コポリマー100gあたりヨウ素5g以下のヨウ素価を有する。ヨウ素価は、DIN53241−1:1995−05に従ってウィイス法により求められる。
【0034】
好ましいヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、英国特許第2270317号明細書(GB 2270317)に従って得ることができる。
【0035】
ヒドロキシル化水素化ポリブタジエンによっては、市販もされている。市販のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとしては、例えばKraton Polymers GmbH(独国エシュボルン)製のKraton Liquid(登録商標)L−1203が挙げられる。これは、約98重量%の程度でOH官能化された、M=4200g/モルの水素化ポリブタジエン(オレフィンコポリマーOCPとも呼ばれる)であり、1,2繰返し単位と1,4繰返し単位とをそれぞれ約50%有する。水素化ポリブタジエンをベースとする適切なアルコールのさらなる供給元は、Total(パリ)の子会社であるCray Valley(パリ)、またはSartomer Company(米国ペンシルバニア州エクストン)である。
【0036】
モノヒドロキシル化水素化ポリブタジエンが好ましい。より好ましくは、ヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、ヒドロキシエチル末端水素化ポリブタジエンまたはヒドロキシプロピル末端水素化ポリブタジエンである。ヒドロキシプロピル末端ポリブタジエンが特に好ましい。
【0037】
これらのモノヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、まずブタジエンモノマーをアニオン重合によってポリブタジエンに転化することにより製造することができる。次いで、ポリブタジエンモノマーをエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドと反応させることにより、ヒドロキシ官能化ポリブタジエンを製造することができる。このヒドロキシル化ポリブタジエンを、適切な遷移金属触媒の存在下で水素化させることができる。
【0038】
本発明により使用するための(メタ)アクリル酸と、記載されたヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステルは、その分子量が高いことから、本発明の文脈においてマクロモノマーとも呼ばれる。
【0039】
本発明により使用するためのマクロモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートのエステル交換によって製造することができる。アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとの反応によって、本発明のエステルが形成される。反応物として、メチル(メタ)アクリレートまたはエチル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0040】
このエステル交換は、広く知られている。例えば、この目的のために、水酸化リチウム/酸化カルシウム混合物(LiOH/CaO)、純粋な水酸化リチウム(LiOH)、リチウムメトキシド(LiOMe)またはナトリウムメトキシド(NaOMe)などの不均一触媒系を使用することも、イソプロピルチタネート(Ti(OiPr))またはジオクチルスズオキシド(Sn(OCt)O)のような均一触媒系を使用することもできる。この反応は、平衡反応である。したがって、放出される低分子量アルコールは、典型的には例えば蒸留により除去される。
【0041】
さらに該マクロモノマーは、例えば(メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリル酸無水物から、好ましくはp−トルエンスルホン酸もしくはメタンスルホン酸による酸性触媒下で、または遊離メタクリル酸からDCC法(ジシクロヘキシルカルボジイミド)によって、直接エステル化を進行させることによって得ることができる。
【0042】
さらに、本ヒドロキシル化水素化ポリブタジエンを、(メタ)アクリロイルクロリドなどの酸塩化物との反応によってエステルへと転化させることができる。
【0043】
好ましくは、本発明のエステルの上記で詳述した製造において、重合禁止剤、例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシルラジカルおよび/またはヒドロキノンモノメチルエーテルが使用される。
【0044】
本発明により使用するためのマクロモノマーによっては、市販もされており、例えばKraton Polymers GmbH(独国エシュボルン)製のKraton Liquid(登録商標)L−1253が挙げられる。これは、Kraton Liquid(登録商標)L−1203から製造された、約96重量%の程度でメタクリレート官能化された水素化ポリブタジエンであり、1,2繰返し単位と1,4繰返し単位とをそれぞれ約50%有する。Kraton(登録商標)L−1253も同様に、英国特許第2270317号明細書(GB 2270317)に従って合成される。
【0045】
本発明により使用するためのC10〜30アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸と10〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルコールとのエステルである。「C10〜30アルキルメタクリレート」という用語には、特定の長さのアルコールと(メタ)アクリル酸との個々のエステルと、同様に異なる長さのアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルの混合物とが包含される。適切なC10〜30アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ブチルオクチル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2−ブチルデシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルデシル(メタ)アクリレート、2−オクチルデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、2−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、2−ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2−オクチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2−デシルオクタデシル(メタ)アクリレート、2−テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートおよび/またはエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、2−デシルオクタデシル(メタ)アクリレート、2−ドデシル−1−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、1,2−オクチル−1−ドデシル(メタ)アクリレート、2−テトラデシルオカデシル(メタ)アクリレート、1,2−テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレートおよび2−ヘキサデシルエイコシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0046】
本発明により使用するためのC10〜15アルキルメタクリレートは、(メタ)アクリル酸と10〜15個の炭素原子を有するアルコールとのエステルである。「C10〜15アルキルメタクリレート」という用語には、特定の長さのアルコールと(メタ)アクリル酸との個々のエステルと、同様に異なる長さのアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルの混合物とが包含される。
【0047】
適切なC10〜15アルキルメタクリレートとしては、例えばデシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、2−メチルウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2−メチルドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、2−メチルトリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレートおよび/またはペンタデシルメタクリレートが挙げられる。
【0048】
特に好ましいC10〜15アルキルメタクリレートは、直鎖C12〜14アルコール混合物とメタクリル酸とのエステル(C12〜14アルキルメタクリレート)である。
【0049】
アミノアルキル(メタ)アクリレートは、好ましくは、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレートおよびN,N−ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0050】
好ましいアミノアルキル(メタ)アクリルアミドは、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドである。
【0051】
本発明により使用するためのコポリマーは、そのモル分岐度(「f−branch」)に基づいて特徴付けることができる。モル分岐度とは、モノマー組成物中の全モノマーの総モル量に対する、使用されるマクロモノマー(成分(A))のモル%でのパーセンテージを指す。使用されるマクロモノマーのモル量は、マクロモノマーの数平均分子量Mに基づいて算出される。モル分岐度の算出については、国際公開第2007/003238号(WO 2007/003238 A1)の特に第13頁および第14頁に詳細に記載されており、該文献の内容が本明細書において参照される。
【0052】
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーは、好ましくは0.1〜5モル%、より好ましくは0.3〜2モル%、最も好ましくは0.3〜1.1モル%のモル分岐度fbranchを有する。
【0053】
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーは、ラジカル重合により、および制御されたラジカル重合の関連する方法、例えばATRP(=原子移動ラジカル重合)またはRAFT(=可逆的付加開裂連鎖移動)により製造可能である。
【0054】
標準的なラジカル重合は、特にUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Editionに詳述されている。一般的には、重合開始剤および場合により連鎖移動剤がこの目的に使用される。
【0055】
使用可能な開始剤としては、当技術分野で広く知られているアゾ開始剤、例えばAIBNおよび1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびペルオキシ化合物、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノアート、ケトンペルオキシド、tert−ブチルペロクトアート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾアート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボナート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボナート、上記の2種以上の化合物同士の混合物、ならびに上記の化合物と、同様にフリーラジカルを形成し得る不特定の化合物との混合物が挙げられる。適切な連鎖移動剤は特に、油可溶性メルカプタン、例えばn−ドデシルメルカプタンもしくは2−メルカプトエタノールまたはテルペンのクラスの連鎖移動剤、例えばテルピノレンである。
【0056】
ATRP法は、当技術分野において知られている。これは、「リビング」ラジカル重合であると考えられるが、この機序の説明は何ら制限を意図するものではない。このプロセスにおいて、遷移金属化合物が移動性原子基を有する化合物と反応する。この反応は、移動性原子基の遷移金属化合物への移動によるものである。その結果、金属が酸化される。この反応によってフリーラジカルが形成され、これがエチレン性基に付加する。一方で、該原子基の遷移金属化合物への移動は可逆的であるため、該原子基は、成長中のポリマー鎖に戻される。その結果、制御された重合系が形成される。したがって、該ポリマーの形成、分子量および分子量分布を制御することができる。
【0057】
この反応の概要は、例えばJ.−S. Wang, et al., J. Am. Chem. Soc, vol. 117, p. 5614−5615 (1995)、Matyjaszewski, Macromolecules, vol. 28, p. 7901−7910 (1995)に記載されている。加えて、国際公開第96/30421号(WO 96/30421)、同第97/47661号(WO 97/47661)、同第97/18247号(WO 97/18247)、同第98/40415号(WO 98/40415)および同第99/10387号(WO 99/10387)といった特許出願には、上記で説明したATRPの変形例が開示されている。加えて、本発明のポリマーを例えばRAFT法によって得ることもできる。この方法は、例えば国際公開第98/01478号(WO 98/01478)および同第2004/083169号(WO 2004/083169)に詳細に記載されている。
【0058】
重合は、標準圧力下で行われてもよいし、減圧下で行われてもよく、また昇圧下で行われてもよい。重合の温度も重要ではない。ただし総じて、重合の温度は、−20〜200℃の範囲にあり、好ましくは50〜150℃の範囲にあり、より好ましくは80〜130℃の範囲にある。
【0059】
重合は、溶媒を使用して行われてもよいし、溶媒を使用せずに行われてもよい。用語「溶媒」は、本明細書では広義に理解されるべきである。溶媒は、使用されるモノマーの極性に従って選択され、100Nの油、比較的軽質の軽油および/または芳香族炭化水素、例えばトルエンまたはキシレンを使用することが好ましい場合がある。
【0060】
本発明によるポリマーは、潤滑油組成物への(有機)モリブデンの溶解性に対するその寄与を特徴とする。
【0061】
したがって本発明は、潤滑油組成物における(有機)モリブデンの可溶化剤としての上記ポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーの使用にも関する。
【0062】
該ポリマーは特に、潤滑油組成物へのモリブデンの溶解性(したがって、濃度)を高めるために使用される。
【0063】
本発明はさらに、潤滑剤組成物への、特にエンジン油組成物へのモリブデンの溶解性を高める方法であって、上記ポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーを添加することによる方法に関する。
【0064】
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーを使用することによって、潤滑油組成物へのモリブデンの溶解性を、潤滑油組成物の全重量に対して最高で0.2重量%高めることができる。
【0065】
したがって、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーを使用することによって、潤滑油組成物の全重量に対して、0.5〜5重量%、好ましくは0.5〜2重量%、特に好ましくは1〜2重量%のモリブデンジチオカルバメートを溶解させることができ、これによって、潤滑油組成物に対してモリブデンは0.05〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%、より好ましくは0.1〜0.2重量%となる。
【0066】
本発明の第2の対象は、以下:
(A)基油と、
(B)以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル10〜20重量%、および
(b)アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその混合物からなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜5重量%
を含むポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーと
を含む添加剤組成物に関する。
【0067】
好ましい第2の対象は、以下:
(A)基油と、
(B)以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル10〜20重量%、
(b)メチルメタクリレート0〜1重量%、
(c)n−ブチルメタクリレート60〜75重量%、
(d)C10〜30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10〜15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12〜14アルキルメタクリレート10〜20重量%、
(e)スチレンモノマー0〜1重量%、および
(f)アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその混合物、好ましくはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜3重量%
を含むポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーと
を含む添加剤組成物に関する。
【0068】
もう1つの好ましい第2の対象は、以下:
(A)基油と、
(B)以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル14〜16重量%、
(b)メチルメタクリレート0〜1重量%、
(c)n−ブチルメタクリレート65〜70重量%、
(d)C10〜15アルキルメタクリレート、好ましくはC12〜14アルキルメタクリレート14〜17重量%、
(e)スチレンモノマー0〜1重量%、および
(f)アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその混合物、好ましくはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜3重量%
を含むポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーと
を含む添加剤組成物に関する。
【0069】
各成分(A)および(B)の含有率は、添加剤組成物の全重量を基準とする。
【0070】
特定の実施形態では、成分(A)および(B)の割合は、合計で100重量%である。
【0071】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)の含有率は、ポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーの全組成を基準とする。
【0072】
特定の実施形態では、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)の割合は、合計で100重量%である。
【0073】
添加剤組成物および潤滑油組成物において使用可能な基油には、潤滑粘度の油が含まれる。かかる油としては、天然油および合成油、ハイドロクラッキング、水添およびハイドロフィニッシングにより得られた油、未精製油、精製油、再精製油またはその混合物が挙げられる。
【0074】
また、基油は、米国石油学会(API)により規定されたとおりに定められてもよい(2008年4月版“Appendix E−API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils”,第1.3部副題1.3.“Base Stock Categories”を参照のこと)。
【0075】
現在、APIにより、潤滑剤ベースストックの5つのグループが定められている(API 1509, Annex E − API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils, September 2011)。グループI、IIおよびIIIは、含まれる飽和分および硫黄分ならびにその粘度指数により分類される鉱油であり、グループIVは、ポリ−α−オレフィンであり、グループVは、他のすべてのものであり、例えばエステル油類が含まれる。以下の表に、これらのAPI分類を例示する。
【0076】
【表1】
【0077】
本発明による添加剤組成物または潤滑剤組成物を製造するための使用に適した無極性基油の100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445によれば、好ましくは1〜10mm/sの範囲にあり、より好ましくは2〜8mm/sの範囲にある。
【0078】
本発明により使用することができるさらなる基油は、グループII、IIIのフィッシャー・トロプシュ系基油である。
【0079】
フィッシャー・トロプシュ系基油は、当技術分野において知られている。「フィッシャー・トロプシュ系」という用語は、基油がフィッシャー・トロプシュ法の合成生成物であるか、または同合成生成物から誘導されることを意味する。フィッシャー・トロプシュ系基油は、GTL(Gas−To−Liquid、ガス液化)基油と呼ばれる場合もある。本発明の潤滑剤組成物において基油として有利に使用することのできる適切なフィッシャー・トロプシュ系基油は、例えば欧州特許第0776959号明細書(EP 0776959)、同第0668342号明細書(EP 0668342)、国際公開第97/21788号(WO 97/21788)、同第00/15736号(WO 00/15736)、同第00/14188号(WO 00/14188)、同第00/14187号(WO 00/14187)、同第00/14183号(WO 00/14183)、同第00/14179号(WO 00/14179)、同第00/08115号(WO 00/08115)、同第99/41332号(WO 99/41332)、欧州特許第1029029号明細書(EP 1029029)、国際公開第01/18156号(WO 01/18156)、同第01/57166号(WO 01/57166)および同第2013/189951号(WO 2013/189951)に開示された基油である。
【0080】
特にエンジン油配合物に対しては、APIグループIIIの基油およびグループIIIの様々な油の混合物が使用される。
【0081】
本発明の添加剤組成物は、添加剤組成物の全重量を基準として、好ましくは60〜80重量%、より好ましくは70〜75重量%の基油(成分(A))を含む。
【0082】
添加剤組成物中のポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー(成分(B))の濃度は、添加剤組成物の全重量を基準として、好ましくは20〜40重量%の範囲にあり、より好ましくは25〜30重量%の範囲にある。
【0083】
特定の実施形態では、成分(A)および(B)の割合は、合計で100重量%である。
【0084】
本発明の第3の対象は、以下:
(A)基油85〜99重量%と、
(B)以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル10〜20重量%、および
(b)アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその混合物、好ましくはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜5重量%
を含むポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー0.5〜10重量%と、
(C)モリブデン0.05〜0.5重量%を提供する、モリブデン含有摩擦調整剤0.5〜5重量%と、
(D)場合により1種以上のさらなる添加剤と
を含む潤滑油組成物に関する。
【0085】
本発明の好ましい第3の対象は、以下:
(A)基油85〜99重量%と、
(B)以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル10〜20重量%、
(b)メチルメタクリレート0〜1重量%、
(c)n−ブチルメタクリレート60〜75重量%、
(d)C10〜30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC10〜15アルキルメタクリレート、より好ましくはC12〜14アルキルメタクリレート10〜20重量%、
(e)スチレンモノマー0〜1重量%、および
(f)アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその混合物、好ましくはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜3重量%
を含むポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー0.5〜10重量%と、
(C)モリブデン0.05〜0.5重量%を提供する、モリブデン含有摩擦調整剤0.5〜5重量%と、
(D)場合により1種以上のさらなる添加剤と
を含む潤滑油組成物に関する。
【0086】
本発明のもう1つの好ましい第3の対象は、以下:
(A)基油85〜99重量%と、
(B)以下のモノマー:
(a)(メタ)アクリル酸とヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル14〜16重量%、
(b)メチルメタクリレート0〜1重量%、
(c)n−ブチルメタクリレート65〜70重量%、
(d)C10〜15アルキルメタクリレート、好ましくはC12〜14アルキルメタクリレート14〜17重量%、
(e)スチレンモノマー0〜1重量%、および
(f)アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミドおよびその混合物、好ましくはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される窒素含有(メタ)アクリレート0.5〜3重量%
を含むポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー0.5〜10重量%と、
(C)モリブデン0.05〜0.5重量%を提供する、モリブデン含有摩擦調整剤0.5〜5重量%と、
(D)場合により1種以上のさらなる添加剤と
を含む潤滑油組成物に関する。
【0087】
各成分(A)、(B)、(C)および(D)の含有率は、潤滑油組成物の全重量を基準とする。
【0088】
特定の実施形態では、成分(A)〜(B)の割合は、合計で100重量%である。
【0089】
各成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)の含有率は、ポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーの全組成を基準とする。
【0090】
特定の実施形態では、成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)の割合は、合計で100重量%である。
【0091】
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全重量を基準として、好ましくは88〜94.5重量%の基油(成分(A))を含む。
【0092】
潤滑油組成物中のポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマー(成分(B))の濃度は、潤滑油組成物の全重量を基準として、好ましくは5〜10重量%の範囲にある。
【0093】
モリブデン含有摩擦調整剤の濃度は、好ましくは0.5〜2重量%であり、より好ましくは1〜2重量%である。したがって、提供されるモリブデンの量は、潤滑油組成物の全重量を基準として、好ましくは0.05〜0.2重量%の範囲にあり、より好ましくは0.1〜0.2重量%の範囲にある。
【0094】
本発明による潤滑油組成物中の成分(A)、(B)、(C)および(D)のさらに好ましい含有率は、以下の表に詳述されるとおりである:
【表2】
【0095】
特定の実施形態では、成分(A)、(B)、(C)および(D)の割合は、合計で100重量%である。
【0096】
モリブデンを提供し得る添加剤として、市販のモリブデン含有摩擦調整剤、好ましくはモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)を使用することができる。市販のモリブデンジチオカルバメートは、例えばR.T.Vanderbilt Company,Inc.(ニューヨーク州)製MOLIVAN(登録商標)シリーズである。特に好ましい例として、モリブデンを10%含有するMolivan(登録商標)3000を使用することができる。
【0097】
モリブデン含有摩擦調整剤は、潤滑油組成物の全重量を基準として0.5〜5重量%、好ましくは0.5〜2重量%、より好ましくは1〜2重量%の範囲で存在してよく、モリブデンを、0.05〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%、より好ましくは0.1〜0.2重量%提供する。
【0098】
本発明による潤滑油組成物は、その摩擦係数が低いことを特徴とする。本発明による潤滑油組成物は特に、(30分後に測定した場合に)摩擦係数が0.1以下、好ましくは0.05〜0.1であることを特徴とする。
【0099】
本発明による潤滑油組成物はさらに、そのKV40値が低いことを特徴とする。該KV40は、(所与のKV80=7mm/sとなるように調整した場合に)好ましくは25mm/s未満であり、より好ましくは18〜22mm/sであり、さらにより好ましくはおよそ20mm/sであり、すなわち20±1mm/sである。
【0100】
好ましい潤滑油組成物は、(30分後に測定した場合に)摩擦係数が0.05〜0.1であり、かつKV40が25mm/s未満、好ましくは18〜22mm/s、より好ましくは20±1mm/sであることを特徴とする。
【0101】
本発明による潤滑油組成物は、成分(D)として、従来のVI向上剤、分散剤、消泡剤、界面活性剤、酸化防止剤、流動点降下剤、摩耗防止添加剤、極圧添加剤、腐食防止添加剤、染料およびそれらの混合物からなる群から選択される、さらなる添加剤を含んでもよい。
【0102】
従来のVI向上剤としては、水添スチレン−ジエンコポリマー(HSD、米国特許第4116917号明細書(US 4116917)、同第3772196号明細書(US 3772196)および同第4788316号明細書(US 4788316))、特にブタジエンおよびイソプレンをベースとするもの、ならびにオレフィンコポリマー(OCP、 K. Marsden: “Literature Review of OCP Viscosity Modifiers”, Lubrication Science 1(1988), 265)、特にポリ(エチレン−co−プロピレン)型のもの(これはしばしば分散作用を示すN/O官能型で存在する場合もある)、またはPAMA(これは通常は、分散剤、摩耗保護添加剤および/または摩擦調整剤として、好ましい添加剤作用を示してN官能型で存在する(ブースター))(独国特許出願公開第1520696号明細書(DE 1520696)、Roehm and Haas、国際公開第2006/007934号(WO 2006/007934)、RohMax Additives)が挙げられる。
【0103】
潤滑油、特にモータ油向けのVI向上剤および流動点改善剤についての書籍は、例えば、T. Mang, W. Dresel(eds.):“Lubricants and Lubrication”, Wiley−VCH, Weinheim 2001: R. M. Mortier, S.T. Orszulik(eds.):“Chemistry and Technology of Lubricants”、Blackie Academic & Professional、London 1992;またはJ. Bartz:“Additive fuer Schmiserstoffe”, Expert−Verlag, Renningen−Malmsheim 1994に詳説されている。
【0104】
適切な分散剤には、ポリ(イソブチレン)誘導体、例えばポリ(イソブチレン)スクシンイミド(PIBSI、ホウ素化PIBSIを含む);およびN/O官能性を有するエチレン・プロピレンオリゴマーが含まれる。
【0105】
分散剤(ホウ素化分散剤を含む)は、好ましくは潤滑油組成物の全量を基準として0〜5重量%の量で使用される。
【0106】
適切な消泡剤は、シリコーン油、フルオロシリコーン油、フルオロアルキルエーテル等である。
【0107】
消泡剤は、好ましくは潤滑油組成物の全量を基準として0.005〜0.1重量%の量で使用される。
【0108】
好ましい界面活性剤としては、金属含有化合物、例えばフェノキシド;サリチレート;チオホスホナート、特にチオピロホスホナート、チオホスホナートおよびホスホナート;スルホナートおよびカーボナートが挙げられる。金属として、これらの化合物は特に、カルシウム、マグネシウムおよびバリウムを含有してもよい。これらの化合物は、好ましくは中性または過塩基化形態で使用することができる。
【0109】
界面活性剤は、潤滑油組成物の全量を基準として好ましくは0.2〜1重量%の量で使用される。
【0110】
適切な酸化防止剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤が挙げられる。
【0111】
フェノール系酸化防止剤としては、例えばオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート;4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール);2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール);2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−エチル−フェノール;2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール;2,6−ジ−t−アミル−p−クレゾール;2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール);4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール);4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール);ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド;n−オクチル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオナート;n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオナート;2,2’−チオ[ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。中でも、ビス−フェノール系酸化防止剤およびエステル基含有フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0112】
アミン系酸化防止剤としては、例えばモノアルキルジフェニルアミン、例えばモノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン等;ジアルキルジフェニルアミン、例えば4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミン等;ポリアルキルジフェニルアミン、例えばテトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン等;ナフチルアミン、具体的には、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミンおよびさらにアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン、例えばブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミン等が挙げられる。中でも、ジフェニルアミンとしては、その酸化防止作用の観点からナフチルアミンが好ましい。
【0113】
適切な酸化防止剤は、硫黄およびリンを含有する化合物、例えばジチオリン酸金属塩、例えばジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、「OOSトリエステル」=ジチオリン酸とオレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、α−ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステルからの活性化された二重結合との反応生成物(燃焼時に無灰);有機硫黄化合物、例えばジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、変性チオール、チオフェン誘導体、ザンテート、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄含有カルボン酸;複素環式硫黄/窒素化合物、特にジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール;ビス(ジアルキルジチオカルバミン酸)亜鉛およびメチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート);有機リン化合物、例えばトリアリールホスファイトおよびトリアルキルホスファイト;有機銅化合物、ならびに過塩基性カルシウム系およびマグネシウム系のフェノキシドおよびサリチレートからなる群からさらに選択されてもよい。
【0114】
酸化防止剤は、潤滑油組成物の全量を基準として0〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の量で使用される。
【0115】
流動点降下剤には、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィン・ナフタレン縮合物、塩素化パラフィン・フェノール縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が含まれる。重量平均分子量が5,000〜200,000g/モルであるポリメタクリレートが好ましい。流動点降下剤の量は、潤滑油組成物の全量を基準として好ましくは0.1〜5重量%である。
【0116】
好ましい摩耗防止添加剤および極圧添加剤としては、硫黄含有化合物、例えばジチオリン酸亜鉛、ジ−C3〜12−アルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、ジスルフィド、硫化オレフィン、硫化油および脂肪、硫化エステル、チオカーボナート、チオカルバメート、ポリスルフィド等;リン含有化合物、例えばホスファイト、ホスファート、例えばトリアルキルホスファート、トリアリールホスファート、例えばトリクレシルホスファート、アミンで中和したモノアルキルホスファート、アミンで中和したジアルキルホスファート、エトキシル化モノアルキルホスファート、エトキシル化ジアルキルホスファート、ホスホナート、ホスフィン、それらの化合物のアミン塩または金属塩等;硫黄およびリン含有耐摩耗性剤、例えばチオホスファイト、チオホスファート、チオホスホナート、それらの化合物のアミン塩または金属塩等が挙げられる。
【0117】
耐摩耗性剤は、潤滑油組成物の全量を基準として0〜3重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%、より好ましくは0.5〜0.9重量%の量で存在することができる。
【0118】
上記に列記した一部の化合物は、複数の機能を果たし得る。例えば、ZnDTPは主に摩耗防止添加剤および極圧添加剤であるが、酸化防止剤および腐食防止剤(ここでは、金属不動態化剤/不活性化剤)の特性も示す。
【0119】
上記に詳述された添加剤は、特にT. Mang, W. Dresel (eds.): “Lubricants and Lubrication”, Wiley−VCH, Weinheim 2001; R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.): “Chemistry and Technology of Lubricants”に詳細に記載されている。
【0120】
好ましくは、1種以上の添加剤(D)の総濃度は、潤滑油組成物の全重量を基準として、0〜15重量%、より好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは3〜10重量%である。
【0121】
以下の非限定的な例によって本発明を説明する。
【0122】
実験の部
略語
AMA C12〜14アルキルメタクリレート
BMA n−ブチルメタクリレート
DMAEMA N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
DMAPMAm N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド
Hydroseal
G232H Total製基油、KV100=1cSt
LMA ラウリルメタクリレート、C12 73%、C14 27%、すべて直鎖状
KV40 ASTM D7042に準拠して測定した40℃における動粘度
KV80 ASTM D7042に準拠して測定した80℃における動粘度
KV100 ASTM D7042に準拠して測定した100℃における動粘度
数平均分子量
重量平均分子量
MMA メチルメタクリレート
Molyvan(登録商標)3000 モリブデン含有率は、10.1重量%である。
【0123】
NB3020 Nexbase(登録商標)3020、Neste製のKV100=2.2cStのグループIIIの基油
NB3043 Nexbase(登録商標)3043、Neste製のKV100=4.3cStのグループIIIの基油
PDI 多分散度
Shell Risella
X420 Shell製のグループIIIの基油、KV100=4.1cSt、KV40=18.2cSt、VI=131、密度=0.808g/cm
tBPO tert−ブチルペルオクトエート
VI ASTM D2270に準拠して測定した粘度指数。
【0124】
試験方法
本発明および比較例による櫛形ポリマーを、その分子量およびPDIに関して特性決定した。
【0125】
ポリメチルメタクリレート校正物質を用いて、40℃のテトラヒドロフラン中でRI検出器を用いたGPCによって、重量平均分子量および数平均分子量を求めた。PSS−SDV Linear XL 10μ2カラムとPSS−SDV 100Aカラムとの組合せを使用した。流量は、1mL/分である。注入体積は、100μLである。
【0126】
本発明および比較例による櫛形ポリマーを含む潤滑油組成物を、40℃での動粘度(KV40)、80℃での動粘度(KV80)および100℃での動粘度(KV100)に関してASTM D445に準拠して特性決定し、粘度指数(VI)をASTM D2270に準拠して特性決定し、低温貯蔵試験を−20℃で1週間にわたって行い、外観を目視で観察した。ASTM D6425に準拠して(荷重:400N、振動=3mm×50Hz、温度80℃、ディスク上のシリンダー、鋼製シリンダー=φ15×22mm、鋼製ディスク=φ24×7.9mm、試料容量=100μL)摩擦係数を測定し、30分後および60分後に値を報告する。
【0127】
ヒドロキシル化水素化ポリブタジエンの合成
製造したマクロアルコールは、平均分子量M=4750g/モルのヒドロキシプロピル末端水素化ポリブタジエンであった。
【0128】
このマクロアルコールを、20〜45℃での1,3−ブタジエンとブチルリチウムとのアニオン重合によって合成した。所望の重合度が達成されたら、プロピレンオキシドの添加によって反応を停止させ、メタノールでの沈殿によってリチウムを除去した。次いで、貴金属触媒の存在下に、水素雰囲気下で140℃までの温度および200バールの圧力でポリマーを水素化した。水素化が終了した後、貴金属触媒を除去し、有機溶媒を減圧下で除去した。最後に、基油NB3020を希釈に使用して、ポリマー含有率を70重量%とした。
【0129】
マクロアルコールのビニル含有率は61%であり、水素化度は99%超であり、OH官能性は98%超であった。これらの値は、H−NMR(核磁気共鳴分光法)により測定したものである。
【0130】
マクロモノマー(MM)の合成
馬蹄形撹拌機、吸気管、コントローラ付き熱電対、加熱マントル、3mmのワイヤ巻線の不規則充填物を備えたカラム、蒸気分配器、頂部温度計、還流冷却器および基部冷却器を備えた2Lの撹拌装置において、上記マクロアルコール1000gを60℃で撹拌することによりメチルメタクリレート(MMA)450gに溶解する。この溶液に、20ppmの2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカルおよび200ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを加える。安定化のために通気しながらMMAを加熱還流(底部温度約110℃)した後、MMA約20gを留去して共沸乾燥させる。95℃に冷却した後にLiOCHを0.30g加え、この混合物を再び加熱還流した。約1時間の反応時間後に、メタノールの形成により頂部温度は約64℃に低下した。形成されたこのメタノール/MMA共沸混合物を、約100℃の一定の頂部温度が再び確立されるまで絶えず留去する。この温度で、この混合物をさらに1時間反応させる。さらなる後処理のために、大部分のMMAを減圧下で除去する。不溶性触媒残渣を加圧ろ過(Seitz T1000デプスフィルタ)により除去する。後述のコポリマー合成に「随伴する」NB3020の含有率を、それに応じて考慮した。
【0131】
ポリマーA〜Cの製造
ビーカー内で、表1に従って反応混合物を製造した。馬蹄形撹拌機、窒素ブランケット部、温度計、ヒーターおよび還流冷却器を備えた4ツ口の2リットル丸底フラスコに、最初にこの反応混合物199.7gを装入し、撹拌しながら95℃に加熱した。加熱段階の間、この反応フラスコに窒素を通して不活性化させた。95℃に達したら、この反応フラスコにtBPOを0.20g導入し、それと同時にフィードを開始した。このフィードは、反応混合物の残分と0.20gのtBPOからなる。フィード時間は3時間であり、反応温度を95℃で一定に保った。フィード終了後、これを45分間保持した。その後、101.1gのNB3043を、180分かけて供給した。0.4gのtBPOを、75分かけてNB3043の希釈フィード油に導入した。フィード終了時に、このバッチを95℃で2時間保持し、次いで0.40gのtBPOおよび165.3gのNB3043を反応フラスコに装入した。翌日、133.1gのNB3043を反応フラスコに装入し、このバッチを1時間保持した。800gの高粘性溶液が得られた。
【0132】
ポリマーDおよびEの製造
ポリマーDおよびEを、国際公開第2010/102903号(WO 2010/102903)のそれぞれ例1および2に従って製造した(第61頁および第62頁参照、該記載内容を、本明細書の一部を構成するものとして援用する)。
【0133】
【表3】
【0134】
得られた櫛形ポリマーの正味の組成、ならびにその特徴的な重量平均分子量Mおよびその多分散度(PDI)を、以下の表2に示す。特に断りのない限り、[%]は重量%を意味する。
【0135】
【表4】
【0136】
例1および2は本発明によるものであり、規定の範囲内のN−分散剤モノマーを含む。例3は、N−分散剤モノマーを含まないため比較例である。例4および5は、N−分散剤モノマー(DMAPMAmおよびDMAEMA)を含むが、含まれるマクロモノマーは本発明において規定される量よりも多く、また含まれるブチルメタクリレートは本発明において規定される量よりも少ない。
【0137】
潤滑油組成物へのモリブデンの溶解性に対する本発明によるポリアルキル(メタクリレート)系櫛形ポリマーの効果を実証するために、様々な配合例Aを製造し、対応する粘度データ(KV40、KV80、KV100、VI)、安定性(貯蔵試験)および摩擦係数を求めた。結果を表3にまとめる。
【0138】
【表5-1】
【0139】
【表5-2】
【0140】
【表5-3】
【0141】
配合物A1〜A5は、マクロモノマーおよび窒素含有(メタ)アクリレートを含むポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーを含むため、本発明によるものである。配合物A6は、何らポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーを含まない。配合物A7〜A9は、ポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーを含むものの、窒素含有モノマーを含まない。配合物A10〜A13は、ポリアルキル(メタ)アクリレート系櫛形ポリマーを含むものの、含まれるマクロモノマーおよびブチルメタクリレートの量が、特許請求の範囲に記載の範囲とは異なる。
【0142】
SRVの試験温度は80℃であるため、対応する摩擦係数に対する粘度の影響を最小限にするために、いずれの配合物のKV80も約7mm/sに調整した。
【0143】
表3は、本発明による櫛形ポリマーを含む配合物(配合物A1〜A5)に、2%までのモリブデンジチオカルバメート(Molyvan(登録商標)3000)を溶解することができる(0.2重量%までのモリブデンが提供される)ことを明確に示しており、貯蔵試験では、何ら濁りも沈殿も示されなかった。Molyvan(登録商標)3000は、モリブデンを10重量%含有する。
【0144】
櫛形ポリマーを含まない配合物A6は、1%のモリブデンジチオカルバメート(Molyvan(登録商標)3000)さえも溶解することができず、沈殿が観察された。
【0145】
N−分散剤モノマーを含まない櫛形ポリマーを使用した場合には、対応する配合物に0.5%までのモリブデンジチオカルバメート(Molyvan(登録商標)3000)を溶解することができた。1%のモリブデンジチオカルバメート(Molyvan(登録商標)3000)を添加した場合には、沈殿が認められた(配合物A7〜A9)。
【0146】
N−分散剤モノマーを含むが、特許請求の範囲に記載の範囲とは異なる量のマクロモノマーおよびブチルメタクリレートを含む櫛形ポリマーを使用した場合には、対応する配合物に1%のモリブデンジチオカルバメート(Molyvan(登録商標)3000)を溶解することができるが、すでに濁りが生じる(配合物A10およびA12)。2%のモリブデンジチオカルバメート(Molyvan(登録商標)3000)を添加することによって、沈殿が認められた(配合物A11およびA13)。
【0147】
さらに、本発明による櫛形ポリマーを含む組成物のみが、顕著な長期の摩擦低減を示し(60分後のSRV試験)、特にモリブデンを0.15%および0.2%添加した場合には、摩擦係数を0.139(0.05%のモリブデンを含む配合物A2)から0.066(0.15%のモリブデンを含む配合物A4)および0.060(0.2%のモリブデンを含む配合物A5)に低下させることができる。