(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961731
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】置換空気流出口
(51)【国際特許分類】
F24F 13/06 20060101AFI20211025BHJP
F24F 13/068 20060101ALI20211025BHJP
F24F 13/08 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
F24F13/06 A
F24F13/068 B
F24F13/08 Z
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-571775(P2019-571775)
(86)(22)【出願日】2018年3月13日
(65)【公表番号】特表2020-510186(P2020-510186A)
(43)【公表日】2020年4月2日
(86)【国際出願番号】EP2018056197
(87)【国際公開番号】WO2018167037
(87)【国際公開日】20180920
【審査請求日】2019年12月10日
(31)【優先権主張番号】102017105238.0
(32)【優先日】2017年3月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519331604
【氏名又は名称】クランツ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Krantz GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ゲーベル
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー ロスブルフ
(72)【発明者】
【氏名】エッケハート フィードラー
【審査官】
竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102014107957(DE,A1)
【文献】
特開2005−282892(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第04037287(DE,A1)
【文献】
中国特許出願公開第103335388(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換空気流出口(1)であって、
長手方向軸線(13)を有する細長い管体(2)が設けられており、該管体(2)は、複数の孔を備えた周壁(5)を有しており、前記管体(2)の、前記周壁(5)により包囲された内室(4)は、第1の空気分散室(6)を形成しており、
前記管体(2)の第1の端部(7)に配置され、前記内室(4)に通じる、前記管体(2)の吸気口横断面(8)が設けられており、
前記周壁(5)の前記孔により形成された空気流出口横断面が設けられており、
前記管体(2)の前記内室(4)から続く溢流横断面(23)が設けられており、該溢流横断面(23)は、第2の空気分散室(11)との流れ結合部を形成しておりかつ前記管体(2)の前記第1の端部(7)とは反対の側に位置する第2の端部(9)に配置されており、
前記管体(2)の前記第2の端部(9)に続くノズル体(3)が設けられており、該ノズル体(3)の内室が、前記第2の空気分散室(11)を形成しており、前記ノズル体(3)は、ノズル(14)の形態の少なくとも1つの空気流出口横断面(15)を備えており、
閉鎖位置では前記溢流横断面(23)を閉鎖し、かつ開放位置では前記溢流横断面(23)を開放するように配置された閉鎖部材(21)が設けられている、
置換空気流出口(1)において、
前記第1の空気分散室(6)の横断面の面積に対する前記溢流横断面(23)の面積の比が、少なくとも0.6であり、
前記第1の空気分散室(6)の前記長手方向軸線(13)の方向に見て前記吸気口横断面(8)から前記溢流横断面(23)まで延在し、かつ半径方向に見て前記長手方向軸線(13)から前記周壁(5)の半径の少なくとも50%の半径まで延在する前記第1の空気分散室(6)の中心領域(Z)には、如何なる種類の組込み品も設けられていない、
ことを特徴とする、置換空気流出口(1)。
【請求項2】
前記周壁(5)の表面積における、前記周壁(5)に設けられた前記孔の面積分率は、18%未満である、請求項1記載の置換空気流出口(1)。
【請求項3】
前記周壁(5)の内側表面に、それぞれ前記周壁(5)の前記長手方向軸線(13)の方向で互いに間隔をあけて配置された少なくとも3つの邪魔リング(26)が配置されている、請求項1または2記載の置換空気流出口(1)。
【請求項4】
1つの邪魔リング(26)の内径(D1)の、同じ邪魔リングの外径(D2)に対する比は、0.65〜0.90である、請求項1から3までのいずれか1項記載の置換空気流出口(1)。
【請求項5】
前記ノズル(14)は、該ノズル(14)を通流する給気の主流れ方向に延在する長手方向軸線を有しており、該長手方向軸線は、前記管体(2)の前記長手方向軸線(13)と50°〜70°の角度を形成している、請求項1から4までのいずれか1項記載の置換空気流出口(1)。
【請求項6】
前記ノズル体(3)は載頭円錐形であり、かつ6角形または8角形の横断面を有しており、前記ノズル(14)は、前記載頭円錐の各側面に配置されており、かつ/または前記載頭円錐は、給気の流れ方向に見て先細になっている、請求項1から5までのいずれか1項記載の置換空気流出口(1)。
【請求項7】
前記閉鎖部材(21)は、ちょう形弁またはアイリス絞りまたはチョッパーディスク絞りまたは旋回フラップである、請求項1から6までのいずれか1項記載の置換空気流出口(1)。
【請求項8】
前記管体(2)の前記長手方向軸線(13)の方向に測定された前記ノズル体(3)の高さ(H)は、前記管体(2)の前記周壁(5)の直径(D3)の50%未満である、請求項1から7までのいずれか1項記載の置換空気流出口(1)。
【請求項9】
前記ノズル(14)の出口横断面は、前記管体(2)の前記周壁(5)の外径(D2)より少なくとも20%大きな直径(D4)を有する円(16)上に配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の置換空気流出口(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換空気流出口であって、
‐長手方向軸線を有する細長い管体が設けられており、管体は、複数の孔を備えた周壁を有しており、管体の、周壁により包囲された内室は、第1の空気分散室を形成しており、
‐管体の第1の端部に配置され、内室に通じる、管体の吸気口横断面が設けられており、
‐周壁の孔により形成された第1の空気流出口横断面が設けられており、
‐管体の内室から続く溢流横断面(Ueberstroemquerschnitt)が設けられており、溢流横断面は、第2の空気分散室との流れ結合部を形成しておりかつ管体の第1の端部とは反対の側に位置する第2の端部に配置されており、
‐管体の第2の端部に続くノズル体が設けられており、ノズル体の内室が、第2の空気分散室を形成しており、ノズル体は、それぞれがノズルの形態の複数の空気流出口横断面を備えており、かつ
‐閉鎖位置では、第1の空気分散室と第2の空気分散室との間の溢流横断面を実質的に閉鎖し、開放位置では溢流横断面を開放するように配置された閉鎖部材が設けられている、
置換空気流出口に関する。
【0002】
背景技術
置換空気流出口は、比較的高い空間高さという点において優れた工場建屋において使用されることが多い。暖房の場合には、暖められた給気が典型的にはほぼ鉛直方向下側に向かって、つまり建屋の床に向かって放出されるため、室内空気は部屋の床付近に至るまで暖められる。冷房の場合には、冷やされた給気がほぼ水平方向で室内に導入されるため、低い温度を有する給気は部屋の床に向かって「降下」し、これにより、人員滞在領域におけるすきま風現象が回避され得る。この場合、置換空気流出口に関する1つの重要な基準は、小さな脈動(Impuls)を伴う空気供給であり、これにより、高さにわたって見て、室内空気の最小限の混合が行われることになる。給気は、大抵はより高温の、典型的には有害物質により汚染された室内空気を、この室内空気と混合すること無く下方から上方に向かって押し退け、このようにして、人員滞在領域において可能な限り良質の空気を達成することができる。
【0003】
欧州特許出願公開第1318360号明細書から公知の、冒頭に記載の形式の空気流出口は、外部周壁と、これに対して同軸的に配置された内部周壁とから構成されている。円筒形の外部周壁と、円錐形の内部周壁とには両方共、切抜き部もしくは窓が設けられている。この公知の空気流出口は、換気すべき部屋の床に面した下面に噴出ノズルを装備しており、噴出ノズルは、暖房の場合には暖められた給気を、大きな進入深さでもって室内へ導入することになる。
【0004】
公知の置換空気流出口には、外気温が例えば25℃または30℃を越える高温の夏日の人員滞在領域における快適性が、エネルギを消費する、典型的には冷却機を用いた給気冷却によってしか達成され得ない、という問題がつきまとう。このような給気冷却無しで、人員滞在領域の過剰に高い温度を回避することはできない。
【0005】
従来技術にはさらに、請求項1の上位概念を形成し、やはり置換空気流出口が記載された独国特許出願公開第102014107957号明細書が含まれる。外部周壁内には中心領域にコア管が配置されており、コア管の長手方向軸線は、管本体の長手方向軸線と合致している。コア管は閉鎖されて形成されている、つまり、前掲の欧州特許出願公開第1318360号明細書に記載の流出口の内部周壁に設けられているような開口を一切有していない。独国特許出願公開第102014107957号明細書に記載のコア管内には旋回フラップが位置しており、旋回フラップはその閉鎖位置ではコア管を閉鎖しひいてはコア管を通る空気流を阻止することができる。これに対して旋回フラップの開放位置ではコア管の横断面が開放されるため、給気の部分流がコア管を通流することができる。さらに、内室が第1の空気分散室を形成している、穿孔された周壁を備えた流出口領域の下側には、流出口の下面に配置されたノズル体内に位置する第2の空気分散室に通じる溢流横断面が位置している。
【0006】
コア管内の旋回フラップが閉鎖された状態において、前掲の独国特許出願公開第102014107957号明細書から公知の流出口は、ほぼ鉛直方向下向きの流出という点において優れており、この流出は特にいわゆる暖房の場合に、滞在領域に暖かい給気を供給するために適している。この運転状態では、閉鎖部材はノズル体に通じる溢流横断面をふさいでいる。コア管内の旋回フラップは開かれるが、ただし閉鎖部材はその閉鎖位置を保つ場合には、閉鎖部材の領域で空気流が変向することにより、ほぼ水平な、半径方向に向けられた流出が生じる。この流れパターンは、特に低温を有する給気の供給、すなわち、いわゆる冷房の場合に適しており、冷房では、すきま風現象を回避するために、給気は水平な流れ方向から低速で下方に向かって滞在領域に降下することが望ましい。
【0007】
冷房の場合に、増大された脈動を伴って給気を室内に供給しようとするとき(混合わき出し換気)には、コア管内の旋回フラップが開いた状態で閉鎖部材も開かれ、ひいてはノズル体に通じる溢流横断面も開放されてよい。ただし、給気システム内に存在する圧力において達成可能な、ノズルからの流出速度は、著しく低い温度の給気を用いること無しに快適性を向上させるために望ましいと考えられるような、滞在領域における空気移動の増大を達成するためには極度に低い、ということが判った。
【0008】
従来技術にはさらに、Swegon社の“BOC”型の流出口、すなわち「ブースター付きのわき出し流出口」が含まれる。この公知の流出口は、工場建屋、スーパーマーケット、体育館等の、屋根高さが高い空間用に想定されており、8角形の横断面を備えた筒状の外部周壁を有している。内部周壁を形成している分散板には、室内空気用のフレキシブル分散システムが装備されている。流出口への流入横断面の直下にノズル室が位置しており、ノズル室もやはり8角形の外形を有しておりかつ複数の空力ノズルを備えている。ノズル室と、その下に位置する第2の空気分散室とは、手動でまたは駆動装置により変位可能なフラップにより、互いに隔離されている。暖房の場合には、暖かい給気が流出口の上部に設けられたノズルを介して流出すると共に、著しく鉛直方向下向きの流れ方向を有しており、これにより、相応の進入深さを達成することができるようになっている。冷房の場合には、給気は公知の流出口から、ノズルを介してではなく、ノズル室の下側に配置された流出口部分に形成された穿孔を介して流出し、この場合、溢流横断面内に設けられたフラップは開放されている。
【0009】
さらに、雑誌HLH Lueftung/Klima,Heizung/Sanitaer,Gebaeudetechnik,Bd.67(2016),Nr.10−Oktoberに発表された、Dr.Hans Werner Rothの記事“Energiesparen durch maschinelle Lueftung in Industriehallen”からは、LTG社のILQsf型のコンビ空気通路が公知である。上述したSwegon社の流出口と同様に、ILQsf型の流出口も、その上部にノズルケースを有しておりかつその下部には、周壁が穿孔された管体を有している。ILQsfの特徴は、流出口の下側部分で軸方向に移動可能なディスクにあり、このディスクは、内部圧力が一定の場合にカウンタウェイトを介して自動的に移動することができるか、または外部エネルギにより作動する駆動装置を用いた場合には電子制御可能である。このようにして、負荷の増大に伴って、流出口のわき出し空気形式の下側部分を介した体積流量の増大が、最大流出速度に至るまで可能である。この場合、空気流出口内の圧力損失および半径方向の流れの脈動は、一定に保たれることになる。
【0010】
さらに、独国特許出願公開第4037287号明細書に記載の、周壁が穿孔された、床置き用のわき出し空気通路は、空気流出面として働く。流出口の、床とは反対の側の端部には接続管片が位置しており、この接続管片を通り、空気が鉛直方向下側に流入する。この公知の流出口は、複数の区分に分けられており、これらの区分の境界は、それぞれ邪魔リング(Blendenring)により画定される。邪魔リングの空いた中心横断面は、上から下に向かって縮小している。各区分内では空気体積流量の分散が行われ、これにより所定の部分体積流量が半径方向で周壁を通り外部へ流出するのに対し、別の部分流は、後続の邪魔リングとの間の次の区分内へ流入し、そこで再び分解される。このようにして、流出する給気の、流出口の高さにわたり可能な限り均一な分散が達成されることになる。この公知の流出口は床置きされるということに基づき、下面における、下向きの流れ成分を有する流出は不可能である。この流出口を、床と流出口の下面との間に間隔をあけて使用することは、想定されてもいないし、わき出し空気原理に基づき有意でもない。
【0011】
最後に欧州特許出願公開第0541977号明細書に開示された、乱流の少ない置換流を発生させるための流出口は、穿孔された外部周壁と、やはり穿孔された内部周壁とを有している。衝突体が第1の位置において、上側に配置された流入横断面を通り空気が流入する内部周壁の下部閉鎖手段と、外部周壁の横断面全体にわたり延在する下側の第2の空気分散室の閉鎖手段の両方を形成している。衝突体の第2の降下位置では、内部周壁の下方が開放されていると同時に、上側の第1の空気分散室から下側の第2の空気分散室に通じる、半径方向において大幅に外側に位置する環状の溢流横断面が生ぜしめられる。このようにして、暖房の場合はより多くの鉛直方向の流れ成分を有する流出を生ぜしめることができ、ひいては室内に流出する空気の進入深さを大きくすることができる。衝突体により中心領域を遮断することにより、下側の第2の空気分散室の特に中心領域には、給気が弱くしか供給されない。
【0012】
課題
よって本発明の根底を成す課題は、外気温が高く、これに相応して人員滞在領域の温度も高い時期に、給気温度をより大幅に下げること無く滞在領域における快適性を高めることができる置換空気流出口を提供することにある。
【0013】
解決手段
根底を成す前記課題は、冒頭に記載の形式の流出口を起点として、空気分散室の横断面の面積に対する溢流横断面の面積の比が、少なくとも0.6、好適には少なくとも0.7、さらに好適には少なくとも0.75、よりさらに好適には少なくとも0.8であることにより解決される。
【0014】
本発明による置換空気流出口は、第1の空気分散室への吸気口横断面の領域に生じるような給気の脈動が、溢流横断面を通流しても最小限の損失に保たれると、この脈動がノズル室内に、かつノズルから流出するときにさえも供与される、という知見を利用したものである。つまり、ノズル室内の脈動が十分に大きな場合にのみ、すなわちノズル出口横断面からの給気の流出速度も十分に大きな場合にのみ、換気すべき室内への、半径方向で測定される給気の所要進入深さが達成され得る、ということが判った。これに対して、前掲の独国特許出願公開第102014107957号明細書に記載の流出口の場合も、前掲の欧州特許出願公開第1318360号明細書に記載の流出口の場合も、溢流横断面が、本発明により提案された最小値よりも大幅に小さくなっているため、ノズルから流出する給気の脈動は、満足のいく進入深さを達成するためには小さすぎる。したがって、本発明に基づき得られる吸気の大きな進入深さは、滞在領域の温度が高い場合、すなわち特に高温の夏日に特に重要である。なぜならば、このような環境温度では発汗および汗の蒸発により、人の放熱が増加されるように行われるからである。これに関連して−例えば冬の半年間の滞在領域のより低い温度とは異なり−高められた空気移動が快適であると感じられる。それというのも、この空気移動は蒸発ひいては冷却を促進するからである。この快適性向上手段は、例えばDIN EN ISO 7730:2005、補足事項Gに記載されている。エネルギ的な観点において、このような快適性向上法は特に魅力的である。それというのも、冷却機による積極的な冷却によってのみ可能であると考えられる、大幅に低い温度を有する給気の供給を省略することができるからである。このような省略は、換気設備の投資コストと連続運転コストの両方に、極めてポジティブな影響を及ぼす。
【0015】
閉鎖部材は閉鎖位置において溢流横断面を「実質的に」閉鎖する、という特徴は、本願の意味では、空気流出口のあらゆる運転箇所において圧力損失を可能な限り一定に保ち、これにより換気設備の制御を簡単にするために、閉鎖部材は場合により、完全な閉鎖位置へ全く移動させられないことがある、ということを意味する。閉鎖機構の閉鎖状態における、溢流横断面の空いた残留横断面は、例えば閉鎖機構(例えばフラップ)に設けられた、常に空いた横断面(開口)自体により実現され得るか、または閉鎖機構が完全な閉鎖位置に到達する前に、その変位経路上でストッパ等に当接することにより実現され得る。
【0016】
「空気分散室の横断面」とは、本願の意味では、管体の長手方向軸線に対して垂直に測定した、空気分散室の横断面積を意味する。好適には、この横断面積は管体もしくは空気分散室の全長にわたり一定であることが望ましい。この場合は筒形の空気分散室が設けられており、その横断面は、簡単にするために円形を有していてよいが、多角形の形状、特に6角形または8角形の形状を有していてもよい。空気分散室の横断面積が、その高さにわたり、すなわち長手方向軸線の方向に見て一定ではない場合には、高さにわたって見て中間の横断面積を起点とすることができる。中間の横断面を決めると、非筒形の空気分散室と同じ体積を有する筒が求められ、この場合はその筒の横断面積が使用される。
【0017】
ノズルからの出口における給気の高い脈動は、噴出距離だけでなくさらに、ノズル流が、溢流横断面が(部分的に)開放されている場合でも第1の空気分散室から、すなわち周壁の孔から流出する給気の一部を誘導しかつノズル噴流の方向に従わせることができる、という点においても重要である。前掲の独国特許出願公開第102014107957号明細書および欧州特許出願公開第1318360号明細書に記載の公知の流出孔において典型的な問題となっているように、ノズル噴流の脈動が小さすぎると、ノズルの上側の周壁から流出する給気量の誘導が十分にはうまく行かない。
【0018】
本発明による流出口の機能性はさらに、周壁の表面積全体、すなわち孔(開口)の面積を含んだ表面積における、周壁に設けられた孔の面積分率(Flaechenanteil)が、18%未満、好適には15%未満、さらに好適には13%未満であることにより改良され得る。穿孔された周壁に対して並外れて低い、この孔もしくは開口の面積分率は、相応して周壁の大きな流れ抵抗を生ぜしめ、ひいては−給気流の全圧力が与えられた場合には−溢流横断面が開放されたときに穿孔された周壁を通って流出する給気量を制限する。特に、周壁における小さな空の面積分率は、既に周壁から流出した給気量が多過ぎて、溢流横断面を通りノズル室に全く流入しなくなる、ということを防止する。よって、孔の比較的小さな面積分率は、ノズル出口における給気の十分に大きな脈動を支援する。
【0019】
本発明はさらに発展的には、第1の空気分散室の長手方向軸線の方向に見て管体の給気口横断面から溢流横断面まで延在し、かつ半径方向に見て管体の長手方向軸線から周壁の半径の50%の半径まで延在する第1の空気分散室の中心領域には、如何なる種類の組込み品も設けられていない、ということを想定している。
【0020】
このようにして、第1の空気分散室の上述したような中心領域では、可能な限り損失の少ない流れが溢流横断面に至るまで保証されるため、ノズル室内にも十分に大きな給気脈動が存在することになる。特に前掲の独国特許出願公開第102014107957号明細書および欧州特許出願公開第1318360号明細書に記載の空気流出口は、フラップを備えたコア管もしくは内部円錐体でもって強い抵抗を生ぜしめる組込み品を有しており、これらの組込み品は、溢流横断面もしくはノズル室への到達前に、圧力損失および脈動損失をもたらす。
【0021】
本発明の改良は、周壁の内側表面に、それぞれ周壁の長手方向軸線の方向で互いに間隔をあけて配置された少なくとも3つの邪魔リングが設けられている、という点にある。これらの邪魔リングは、流れの狭窄により第1の空気分散室内に給気流をある程度滞留させ、次いで噴流拡張を生ぜしめ、噴流拡張により再び、周壁の、流れ方向に見て各邪魔リングの下流側の部分の穿孔部からの、給気の半径方向の流出が促進される。
【0022】
特に溢流横断面がノズル体に対して開放されているときに、邪魔リングにより極度に大きな圧力損失が生じることを防ぐために、各邪魔リングの外径に対する、少なくとも1つの邪魔リング、好適には全ての邪魔リングの内径の比は、0.65〜0.90、好適には0.70〜0.90である、ということが提案される。つまり、流れ狭窄手段として動圧をあまり生ぜしめず、次いで、周壁の穿孔部を通る給気の一部の半径方向での流出を促進するために流れの拡張を生ぜしめることになる、比較的極「狭幅の」邪魔リングである。
【0023】
本発明の1つの構成はさらに、ノズルは、ノズルを通流する給気の主流れ方向に延在する長手方向軸線を有しており、この長手方向軸線は、管体の長手方向軸線と70°〜50°、好適には65°〜55°の角度を形成している、という点にある。この場合、ノズルはノズル体内で旋回可能に支承されているか、またはノズル体内に不動に取り付けられているもしくは組み込まれていてよく、これにより、製造コストが下げられる。これに関連して、ノズル長手方向軸線と管体長手方向軸線との間の角度を60°に形成することが特に有利だということが判り、この場合−前記の全ての角度の場合と同様に−ノズルからの流れは、換気すべき部屋の床に向けられた流れ成分を有しており、部屋の天井方向には向けられていない。
【0024】
下方に向けられたノズル流を得るための、製造技術的に有利な構成を達成するために、ノズル体は載頭円錐形であってよく、かつ6角形または8角形の横断面を有していてよい。この場合、ノズルは、好適には載頭円錐の各側面の中心に配置されていてよい。好適には、載頭円錐の各側面に、不動または変位可能であってよいノズルが装備されている。好適には、載頭円錐は、給気の流れ方向に見て先細になっていることが望ましい、すなわち載頭円錐は、本発明による空気流出口を部屋の天井に懸吊した場合、「逆さ」になっている。
【0025】
本発明による流出口の1つの改良は、閉鎖部材が、ちょう形弁(Butterfly-Klappe)またはアイリス絞り(Irisblende)またはチョッパーディスク絞り(Zahnscheibenblende)または旋回フラップ(Drehklappe)である、という点にある。これに関して特に好適なのはちょう形弁である。それというのも、ちょう形弁は小さな製造手間を要し、両方の羽根半部が可能な限り平らに相接して位置する最大開放位置において小さな流れ抵抗を有し、さらに閉鎖位置と最大開放位置との間の中間位置ではちょう形弁の下流側に対称な流出を生ぜしめ、この場合、管体の長手方向軸線と、ちょう形弁の旋回軸線とを通り延在する長手方向中心平面に対して対称である。
【0026】
さらに本発明の1つの構成では、管体の長手方向軸線の方向に測定された、ノズル体の高さは、周壁の直径の50%未満、好適には40%未満である、ということが想定されている。
【0027】
最後に、ノズルの出口横断面は、周壁の直径よりも好適には少なくとも20%、好適には少なくとも30%だけ大きな直径を有する円上に配置されている、ということも想定されている。これによりノズル噴流の進入深さが増大される一方で、ノズル体内での給気の変向があまり「きつく」なくなり、すなわち損失をあまり生ぜしめなくなり、かつノズル噴流による、周壁穿孔部から流出する給気部分の改良された「誘導」が可能になる。
【0028】
実施例
以下に、図示のノズル体を備えた置換空気流出口の1つの実施例に基づき、本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】「斜め下から」見た、置換空気流出口の斜視外観図である。
【
図2】
図1に示した置換空気流出口を部分的に断面して示す側面図である。
【
図2a】
図1に示した置換空気流出口の閉鎖部材の領域を鉛直方向に断面した図である。
【
図3】
図1に示した置換空気流出口を水平方向に断面して、開放位置における閉鎖部材と共に示す図である。
【
図4】
図3と同様に、
図1に示した置換空気流出口を水平方向に断面した図であるが、閉鎖部材は閉鎖位置にある。
【
図5】閉鎖部材が開放されかつノズルが作動した場合の流れ方を概略的に示す図である。
【
図6】閉鎖部材が閉鎖されかつノズルが非作動の場合の流れ方を、
図5と同様に概略的に示す図である。
【0030】
図1〜
図4には、管体2とノズル体3とを備えた置換空気流出口1が示されている。管体2は第1の内室4(特に
図2参照)を有しており、第1の内室4は、置換空気流出口1の第1の空気分散室6を形成している。周壁5には、それぞれ円形を有する複数の孔が設けられており、これらの孔は、所定の分散パターンにしたがってグループを形成して、周壁5に配置されている。孔は全体として、置換空気流出口1の第1の空気流出口横断面を形成している(簡単にするため図示せず)。周壁5の(最上位の邪魔リング26と移行領域20の開始部、特に閉鎖部材21との間の区分の)総面積における孔の面積分率は12%であり、したがって通常の置換空気流出口の場合よりも大幅に低くなっている。
【0031】
管体2の第1の、
図2では上側の端部には給気口横断面8が位置しており、温度調整された給気は、従来技術から周知の給気導管から給気口横断面8を介して第1の空気分散室6内へ導入され得る。給気は、とりわけ温度、湿度および/または体積流量に関して調整されて、置換空気流出口1内へ導入され得る。
【0032】
第1の端部7とは反対の側に位置しかつ床(図示せず)の方に向けられた、管体2の第2の、
図1では下側の端部9には、流れ方向に見てノズル体3が管体2に続いており、この場合、ノズル体3の内室10は、第2の空気分散室11を形成している。ノズル体3と管体2との間には、後で説明する移行領域20が位置している。
【0033】
ノズル体3は、8つの壁区分12を備えた8角形の横断面を有しており、この場合、壁区分12はそれぞれ、管体の長手方向軸線13(
図2)に対して傾斜して延在している。つまりノズル体3は、ノズル体3の第1の端部34からノズル体3の第2の端部35に向かう方向、すなわち給気すべき室の床に向かう方向で先細になっている、8角形の載頭円錐の形を有している。ノズル体3の高さHは、管体2の内径D3の約1/3である。8つの壁区分12のそれぞれに、各1つのノズル14が配置されており、ノズル14はそれぞれ、第2の空気分散室11からの空気流出口横断面15を画定している。ノズル14の空気流出口横断面15は、管体2の内径D3よりも70%だけ直径が大きな円16上に位置している。
【0034】
ノズル体3は、管体2とは反対の側17に閉鎖された底板18を有しており、底板18は、第2の空気分散室11を周辺環境に対して閉鎖している。壁区分12は、底板18と60°の角度αを形成している。
【0035】
管体2に面した側19の、管体2とノズル体3との間の移行領域20には、ちょう形弁(開閉位置はそれぞれ
図3および
図4に平面図で図示)の形態の閉鎖部材21が配置されている。ちょう形弁は、それぞれほぼ半円形に形成されかつ共通の軸線AKを中心として旋回可能な2つの羽根半部22から成る。旋回運動は、羽根半部22を互いに反対の方向に回動させる伝動装置を介して羽根半部22が結合されるように行われる。
図3には、羽根半部22同士が極めて鋭角の角度で位置する閉鎖部材21の開放位置が示されており、この場合、直線的な各前縁は極めて密に隣り合って配置されており、いわば流れ方向とは反対の方向に向けられた、側面が両羽根半部22により形成されたくさびの共通の前縁を形成している。最大開放位置において羽根半部間に残される角度は、伝動装置の構成形式に基づき技術的に制限されている。最適なのは、形成される角度が0°であり、このようにして閉鎖部材21が、第1の空気分散室6と第2の空気分散室11との間の溢流横断面23の面積の最小部分を占めることになると考えられる場合である。(最大)溢流横断面23は、第1の空気分散室の横断面の約80%である。いずれにしろ、ちょう形弁はその軸線AKでもって、溢流横断面23を2つの部分横断面に分割している。閉鎖部材21の変位は、軸の形態の操作部材24を介して行われ、この軸には置換空気流出口1の外側においてさらに、例えばレバー、ボーデンケーブルまたは例えば電気的な駆動装置(図示せず)が配置され得る。
【0036】
図2aからは、羽根半部22がノズル体3内の第2の空気分散室11内に延在しており、ちょう形弁の軸線AKが、溢流横断面23の平面内に配置されていることが看取され得る。
【0037】
特に
図4から判るように、溢流横断面23は、閉鎖部材21の図示の閉鎖位置では完全に閉鎖されている。ただし所望の場合には、あらゆる運転状態においてノズル体3を通流する所定の流出量を得るために、継続的に開いた(小さな)残留横断面を実現することもできる。
【0038】
図2から判るように、管体2の内面25には4つの邪魔リング26が配置されている。最上位の邪魔リング26は、管体2の上側の端部7に対して250mmの間隔A1をあけて位置しており、その下の邪魔リング26は、上側に配置された邪魔リング26に対して140mmの間隔A2をあけて位置しており、3番目の邪魔リング26は第2の邪魔リング26に対して180mmの間隔A3をあけて位置しており、第4の邪魔リング26は、第3の邪魔リング26に対して180mmの間隔A4をあけて位置している。管体の全長Lは1040mmであり、この場合、移行領域20の120mmの長さLUEおよび接続管片Aの80mmの長さLAが含まれている。接続管片Aに続いて最上位の邪魔リング26までは、周壁が穿孔部を一切有さずに160mmの長さLGにわたり延在している閉鎖領域Bが位置している。よって、非穿孔領域Bにおいて給気が半径方向外側に向かって周壁5を通流することはなく、むしろこの領域は、流入側の端部7の下流側で流れを安定させるために役立つ。
【0039】
次に
図5および
図6に基づき、置換空気流出口1の機能性をより詳しく説明する。
【0040】
図5には、閉鎖部材21が
図3に示した開放位置に位置している場合、つまり第1の空気分散室6と第2の空気分散室11との間の溢流横断面23が開放されている場合の流れの生じ方が具体的に示されている。
図2に破線LZで示した、管体の中心領域Zを通り、給気(矢印28)はほぼ損失無しで管体2を通流し、溢流横断面23を介してノズル体3の内部の第2の空気分散室11に流入する。これに相応して、ノズル14の流出口に大きな脈動が生じ、この脈動は、噴出ノズルから流出する空気流(矢印27)の大きな進入深さをもたらす。これらの空気流は、(室内で置換空気流出口1が鉛直方向に配置されている場合に)水平線に対して30°の角度で傾斜しておりひいては部屋の床に向かって移動する。この場合、ノズル14から流出する流れは、管体2の周壁5に形成された孔を介して流出する給気の一部を誘導する。周壁5から流出する前記給気部分(矢印29〜31)は半径方向成分を有しているが、ノズル噴流の誘導作用に基づき、水平線に対して約45°の角度で下方に向けられている。この運転モードでは混合わき出し換気になっており、この場合、特に有利には、ノズル噴流により実質的に給気のみが、すなわち一次空気のみが誘導され、有害物質を含む室内空気は誘導されない、もしくは極僅かにしか誘導されない、また可能な限り誘導されないようにもなっている。これにより、床付近の滞在領域における空気の質が著しく改良され得る。
【0041】
図5に示した運転状態は、冬に例えば週末をまたいで冷えた後に、目下の室温を上回る温度を有する給気を用いて床付近をも急速に暖房するために用いられても、夏に床付近の滞在領域における室温が25℃を上回る場合に、この室温を下回る給気温度を用いて、滞在領域における空気の移動を増やし、このようにして快適性を向上させるために用いられてもよい。後者の冷房の場合、給気は自由冷却により冷却されるか、または断熱冷却されてもよく、これによりエネルギ効率良く、比較的廉価に供給され得る。
【0042】
図6に示す、閉鎖部材21がその閉鎖位置に位置している状態では、置換空気流出口1は純粋なわき出し空気流出口として作用する。ノズル14は、この運転状態では機能せず、給気は管体2の周壁5に形成された孔を介してのみ放出される。衝突部材として働く、閉じられたちょう形弁(閉鎖部材21)において給気流が変向されることにより、給気は周壁5からほぼ水平な方向もしくはやや上向きの方向に流出する。つまり、空気の90°以上の変向が行われる。このようにして、室内空気速度が極めて低い、特に快適に感じられる置換換気が行われることになる。この場合、給気は完全に室内空気を著しく下回る温度を有することができる。それというのも、より冷たい空気は、より高い高さから床付近の滞在領域に向かって低速でのみ、大面積に分散されて降下するからである。つまり置換空気流出口1の配置は、室内で自由に行われるか、または一般に建屋の床上約3メートルの高さの壁もしくは柱に沿って行われる。
【0043】
典型的な暖房もしくは増強される夏期冷房にノズル機能を用いる(
図5)他に、ノズル機能を切り替えて、一時的に滞在領域を洗浄するために利用することもできる。このことは特に、製造建屋内で例えば工業炉が開放されると生じることがあるような有害物質の値が一時的に高まった場合に指示されている。この場合、ノズル機能の切替(
図5)は短時間、例えば数分間行われるのに対し、その後は再び、洗浄機能およびノズル14への供給無し(
図6)の、典型的な置換換気用に戻される。
【0044】
閉鎖部材21が完全に開放されているかまたは完全に閉鎖されている、
図5および
図6の両方に示した状態の他に、閉鎖部材21の、考えられるあらゆる中間位置も可能である。これにより、滞在領域における空気速度の高さがいわば無段階で、かつその場にいる人の個々の要求に完全に応じて調整され得る。このようにして、純粋な置換換気と混合わき出し換気との間で、無段階の移行が行われる。
【符号の説明】
【0045】
A 接続管片
AK 軸線
A1〜A4 間隔
B 領域
D1 内径
D2 外径
D3 内径
D4 直径
H 構成高さ
L 長さ
LA 長さ
LG 長さ
LUE 長さ
LZ 長さ
Z 中心領域
1 置換空気流出口
2 管体
3 ノズル体
4 内室
5 周壁
6 第1の空気分散室
7 第1の端部
8 給気口横断面
9 第2の端部
10 内室
11 第2の空気分散室
12 壁区分
13 長手方向軸線
14 ノズル
15 空気流出口横断面
16 円
17 側
18 底板
19 側
20 移行領域
21 閉鎖部材
22 羽根半部
23 溢流横断面
24 操作部材
25 内面
26 邪魔リング
27〜31 矢印
34 第1の端部
35 第2の端部