(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961741
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ガスによって食材の風味を評価するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/78 20060101AFI20211025BHJP
G01N 31/22 20060101ALI20211025BHJP
G01N 33/02 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
G01N21/78 A
G01N31/22 121C
G01N33/02
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-49617(P2020-49617)
(22)【出願日】2020年3月19日
(65)【公開番号】特開2020-153986(P2020-153986A)
(43)【公開日】2020年9月24日
【審査請求日】2020年5月8日
(31)【優先権主張番号】108110105
(32)【優先日】2019年3月22日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514024712
【氏名又は名称】台湾ナノカーボンテクノロジー股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAIWAN CARBON NANO TECHNOLOGY CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】許 景棟
(72)【発明者】
【氏名】施 純偉
(72)【発明者】
【氏名】李 光哲
(72)【発明者】
【氏名】李 家宏
(72)【発明者】
【氏名】黄 健曜
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群賢
(72)【発明者】
【氏名】李 庭鵑
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群榮
【審査官】
伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2017/0160005(US,A1)
【文献】
特開昭58−187838(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第109115758(CN,A)
【文献】
国際公開第2006/058312(WO,A2)
【文献】
中国特許第105241821(CN,B)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0065097(US,A1)
【文献】
中国特許第104655620(CN,B)
【文献】
特開2011−007741(JP,A)
【文献】
特開2015−055494(JP,A)
【文献】
実開昭54−086491(JP,U)
【文献】
独国特許出願公開第102011075667(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/83
G01N 31/00−31/22
G01N 33/02−33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被評価食材の発する少なくとも1種の匂い分子と反応する少なくとも1つの呈色ガス検知チップを含み、前記呈色ガス検知チップは、互いに積み重ねて設けられた化学反応層と反応呈色層とを含み、前記化学反応層と前記匂い分子に化学反応が起こり、且つ、前記反応呈色層は前記化学反応によって呈色反応が生じて前記被評価食材に対応するカラー画像を表示し、前記化学反応層は前記匂い分子と反応して前記化学反応が起こる少なくとも1つの反応領域を含み、前記化学反応層の前記反応呈色層から離隔する側はガス取込み面であり、前記反応呈色層は対向して設けられた呈色面と反応面とを含み、前記反応面は前記化学反応層の前記反応領域に接触し、前記反応呈色層は、前記反応面における前記化学反応層の前記反応領域の前記化学反応に対応して呈色反応が起こるように、呈色指示薬をさらに含むマルチガス検知モジュールと、
前記呈色ガス検知チップから少なくとも1つのカラー画像を取得して匂い情報に変換する画像取得ユニットと、前記画像取得ユニットと通信可能に接続され且つ複数の識別情報を含むデータベースユニットと、これらの識別情報と前記匂い情報に対して計算を行って食材の風味評価結果を生成する計算ユニットとを含む匂い情報処理モジュールとを含むことを特徴とするガスによって食材の風味を評価するシステム。
【請求項2】
さらに、前記ガス取込み面に少なくとも1つのフィルム層が設けられ、前記フィルム層は、遮水性を有する通気性フィルム、吸着層、匂い分子選別機能を有する拡散フィルム及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記マルチガス検知モジュールは、前記呈色ガス検知チップに担持されたタグと、前記被評価食材に対応するように前記タグに設けられたバーコード構造とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記カラー画像は、互いに相違する複数の単色を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記匂い情報及びこれらの識別情報を提供するように、アプリケーションプログラムユニット(APP)を含むハンドヘルド電子装置をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
さらに、前記データベースユニットがクラウドデータベースに接続されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
さらに、前記計算は、リアルタイム計算、準リアルタイム計算、オフライン計算、又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
ステップS1と、S2と、S3とを含み、
S1において、マルチガス検知モジュールを提供し、前記マルチガス検知モジュールは少なくとも1つの呈色ガス検知チップを含み、前記呈色ガス検知チップは、互いに積み重ねて設けられた化学反応層と、反応呈色層とを含み、
S2において、前記呈色ガス検知チップが被評価食材の発する少なくとも1種の匂い分子と反応し、且つ、前記化学反応層とこれらの匂い分子に化学反応が起こり、前記反応呈色層は前記化学反応によって呈色反応が生じて、前記被評価食材に対応する少なくとも1つのカラー画像を表示し、
S3において、画像取得ユニットと、複数の識別情報を含むデータベースユニットと、計算ユニットとを含む匂い情報処理モジュールを提供し、前記画像取得ユニットは前記呈色ガス検知チップから前記カラー画像を取得して匂い情報に変換し、且つ、前記計算ユニットはこれらの識別情報と前記匂い情報に対して計算を行って食材の風味評価結果を生成することを特徴とする、請求項1−7のいずれか一項に記載のガスによって食材の風味を評価するシステムを用いたガスによって食材の風味を評価する方法。
【請求項9】
さらに、前記計算は、リアルタイム計算、準リアルタイム計算、オフライン計算、又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生鮮食材電子商取引サービスシステムの分野に関し、特に、食材の評価に呈色ガス検知チップを利用する食材の風味評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット技術の進歩によって、夥しい情報を瞬間的に利用者に提供することが可能になる。現在、インターネットは多くの分野で幅広く利用されており、インターネット電子商取引サービスはこれらの分野の一つである。インターネット電子商取引の誕生により、これまでの市場の有り様が変貌しつつある。インターネット電子商取引はその利便性とリアルタイム性が現在の早いライフスタイルに合うため、人々に愛用されている。ファッション、電化製品、生活用品等関連分野の業者がビジネスチャンスを見定めて、次々とインターネット電子商取引に参入してきている。これによって、人々の日常生活のニーズが全てインターネット電子商取引で満たせるようになる。
【0003】
衣、食、住、交通などの生活必須分野のうち、人々の生活と最も密接に関係しているのがやはり「食」の分野であろう。当然ながら、食の分野でもインターネット電子商取引が利用されている。一方、他の諸分野と違って、食べ物の味、新鮮度、熟成度等の情報に関しては、インターネット電子商取引業者がウェブサイトに提供する画像や文字評価だけでなく、実際に食べ物と接触して初めて判断がつく。これに鑑みて、関連の業者が解決策を提供している。特許文献1には、インターネットに基づく食品宣伝及び販売システムが開示されている。当該システムは、ゲストログイン画面と、サーバーと、会員ログイン画面とを含み、ゲストログイン画面は会員登録モジュールと、食品評価システムと、送料支払システムと、試食システムとを含み、サーバーは映像情報記憶システムと、食品評価システムとを含み、ゲストログイン画面は情報検索モジュールによってサーバーに接続され、食品評価システム、送料支払システム及び試食申請システムの出力側はインターネット通信モジュールによってサーバーの入力側に接続され、会員ログイン画面は食品評価システムと、送料支払システムと、試食システムと、食品選択・購入システムとを含む。本発明はログイン画面からサーバー画面にアクセスして、コンテンツを閲覧しながら、情報検索モジュールによって関連の食品を迅速に見つけることができる。また、食品が自分の好みであるかどうかが分からない場合は、無料で試食品を求めることができ、しかも少額の送料を支払うだけでよく、不要なコストが避けられる。
【0004】
上記の従来技術は、インターネット電子商取引を利用して食品を購入する場合の不確実な要素を減らすことはできるが、当該技術では生鮮食材の風味、新鮮度、熟成度を確保しにくい。その一因として、生鮮食材の保管環境、産地、収穫時間等の要素はいずれも生鮮食材の風味、新鮮度、熟成度に影響を与え、購入前に試食はしたものの、届いたのが試食品と同じロットのものでない可能性があり、ましてや同等な品質の確保は一層難しい、ということが考えられる。これにより、生鮮食材のインターネット電子商取引サービスシステムにおいて改善する余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許公開第CN107358507A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術が食べ物の風味を速やか、かつ客観的に表現できないという課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するためになされるものであって、マルチガス検知モジュールと、匂い情報処理モジュールとを含む、ガスによって食材の風味を評価するシステムを提供する。
【0008】
当該マルチガス検知モジュールは、被評価食材の発する少なくとも1種の匂い分子と反応する少なくとも1つの呈色ガス検知チップを含む。
【0009】
当該匂い情報処理モジュールは、当該呈色ガス検知チップから少なくとも1つのカラー画像を取得して匂い情報に変換する画像取得ユニットと、当該画像取得ユニットと通信可能に接続され且つ複数の識別情報を含むデータベースユニットと、これらの識別情報と当該匂い情報に対して計算を行って食材の風味評価結果を生成する計算ユニットとを含む。
【0010】
一つの実施例において、当該呈色ガス検知チップは、互いに積み重ねて設けられた化学反応層と、反応呈色層とを含み、当該化学反応層とこれらの匂い分子に化学反応が起こり、且つ、当該反応呈色層は当該化学反応によって呈色反応が生じて当該被評価食材に対応する当該カラー画像を表示し、当該化学反応層はこれらの匂い分子と反応して当該化学反応が起こる少なくとも1つの反応領域を含み、当該化学反応層の当該反応呈色層から離隔する側はガス取込み面であり、当該反応呈色層は対応して設けられた呈色面と、反応面とを含み、当該反応面は当該化学反応層の当該反応領域に接触し、当該反応呈色層は、当該反応面の当該化学反応に対応してこれらの呈色反応が起こるように、呈色指示薬をさらに含む。
【0011】
一つの実施例において、さらに、当該ガス取込み面に少なくとも1つのフィルム層が設けられ、当該フィルム層は、遮水性を有する通気性フィルム、吸着層、匂い分子選別機能を有する拡散フィルム及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0012】
一つの実施例において、当該マルチガス検知モジュールは、当該呈色ガス検知チップに担持されたタグと、当該被評価食材に対応するように当該タグに設けられたバーコード構造とをさらに含む。
【0013】
一つの実施例において、当該カラー画像は、互いに相違する複数の単色を含む。
【0014】
一つの実施例において、ハンドヘルド電子装置をさらに含み、当該ハンドヘルド電子装置はこれらの匂い情報及びこれらの識別情報を提供するように、アプリケーションプログラムユニット(APP)を含む。
【0015】
一つの実施例において、さらに、当該データベースユニットがクラウドデータベースに接続される。
【0016】
一つの実施例において、さらに、当該計算は、リアルタイム計算、準リアルタイム計算、オフライン計算、又はこれらの組み合わせを含む。
【0017】
さらに、本発明は、ガスによって食材の風味を評価するシステムの操作方法を提供し、当該方法は、以下のステップS1と、S2と、S3とを含む。
S1において、マルチガス検知モジュールを提供し、当該マルチガス検知モジュールは少なくとも1つの呈色ガス検知チップを含み、当該呈色ガス検知チップは、互いに積み重ねて設けられた化学反応層と、反応呈色層とを含む。
【0018】
S2において、当該呈色ガス検知チップが被評価食材の発する少なくとも1種の匂い分子と反応し、且つ、当該化学反応層とこれらの匂い分子に化学反応が起こり、当該反応呈色層は当該化学反応によって呈色反応が生じて、当該被評価食材に対応する少なくとも1つのカラー画像を表示する。
【0019】
S3において、画像取得ユニットと、複数の識別情報を含むデータベースユニットと、計算ユニットとを含む匂い情報処理モジュールを提供し、当該画像取得ユニットは当該呈色ガス検知チップから当該カラー画像を取得して匂い情報に変換し、且つ、当該計算ユニットはこれらの識別情報と当該匂い情報に対して計算を行って食材の風味評価結果を生成する。
【発明の効果】
【0020】
これにより、本発明を利用すれば、風味、酸味・甘味度、熟成度、新鮮度等の食べ物の状態を速やかに知るための客観的な指標を利用者に提供できる。また、本発明で全ての情報がデータとして提供されているため、利用者同士はこれを活用して交流することができる。本発明によれば、利用者は食材の新鮮度等を判断するために、従来のように目視で観察し、あるいは匂いに頼って選択する等の主観的な手段を用いる必要がないため、食品安全に関する問題が減少できる。また、サプライヤーは本発明を利用して、製品の生産・販売状況を把握し、さらに、製品の市場分析を行って、市場トレンドに合致する販売計画を作ることで、全体的な販売粗利益率を上げることが可能である。これにより、本発明は利用者及びサプライヤーの両方のニーズに配慮し、本分野でより利便性が高く、実用的な生鮮食材評価システムとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一つの実施例に係るシステムの構成の概略図である。
【
図2】本発明の一つの実施例に係る呈色ガス検知チップの外観の概略図である。
【
図3】本発明の一つの実施例に係る呈色ガス検知チップの構成の概略図である。
【
図4】本発明の別の実施例に係る呈色ガス検知チップの構成の概略図である。
【
図5】本発明の一つの実施例に係るシステム操作方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の詳細な内容を、図面を参照して説明する。
図1及び
図2が参照されるとおり、本発明は、マルチガス検知モジュール10と、匂い情報処理モジュール20とを含むガスによって食材の風味を評価するシステムである。
【0023】
マルチガス検知モジュール10は、少なくとも1つの呈色ガス検知チップ11を含み、呈色ガス検知チップ11は被評価食材の発する少なくとも1種の匂い分子と反応して少なくとも1つの呈色反応が起こる。マルチガス検知モジュール10はこれらの呈色反応によって、これらの呈色反応のそれぞれに対応する少なくとも1つのカラー画像を生成し、当該カラー画像は互いに相違する複数の単色を含む。つまり、本発明でマルチガス検知モジュール10において、呈色ガス検知チップ11がこれらの匂い分子と反応してこれらの呈色反応が起こり、且つ、当該カラー画像を対応して生成する。本発明において、当該被評価食材は、生鮮食材、デリバリー飲食等、具体的には、例えば、青果類、肉類、弁当等の食べ物に由来してもよく、これらに限定されるものではない。匂いを発する食べ物であれば、本発明が適用する。
【0024】
さらに、
図3及び
図4が参照されるとおり、呈色ガス検知チップ11は、互いに積み重ねて設けられた化学反応層111と、反応呈色層112とを含む。また、呈色ガス検知チップ11は仕切り部113をさらに含む。本発明の趣旨に対する当業者の理解が深まるように、次により詳しく説明する。
【0025】
化学反応層111は複数の第1領域1111を含むように、仕切り部113によって分割され、第1領域1111は反応呈色層112側から離隔するガス取込み面1112と、反応領域1113とを含み、これらの匂い分子はガス取込み面1112より反応領域1113に入り、各反応領域1113はこれらの匂い分子と反応して化学反応が起こる。これらの反応領域1113には、異なる目的ガスと反応するように、それぞれが異なる種類の化学物質を含んでもよい。例えば、一部の反応領域1113がアルカンと反応し、一部の反応領域1113がアルコール類と反応し、また一部の反応領域1113が硫化物と反応する。仕切り部113は、隣り合う第1領域1111が互いに影響し合わないように、隣り合う第1領域1111を間隔する。さらに、当該化学反応は酸化還元反応、酸塩基反応、酵素触媒反応、金属触媒反応、縮合反応(condensation reaction)、加水分解反応(hydrolysis)、付加反応(addition reaction)、脱離反応(elimination reaction)、置換反応(substitution reaction)、又はこれらの組み合わせであってもよく、これらに限定されるものではない。一つの非限定的な例として、本発明に適用する酸化還元反応は、エタノールをアセトアルデヒド又は酢酸に酸化する反応が挙げられ、酵素触媒はグルコースオキシダーゼ(glucose oxidase)が挙げられ、金属触媒は白金触媒が挙げられる。また一例として、このうちの1つの反応領域1113にヒドラジン(H
2N−NH
2)が塗布されている場合、二酸化炭素を含む匂い分子が、ヒドラジンが塗布された上記の反応領域1113と反応する時、H
2NNHCOOHを生成し、酸化還元指示薬クリスタルバイオレット(Crystal violet)を利用して呈色させる。本発明の一つの形態において、呈色ガス検知チップ11は、ガスが直接これらの反応領域1113に入るため干渉又はダメージが生じるのを避けるように、ガス取込み面1112に設けられた保護層をさらに含んでもよい。
【0026】
これらの反応領域1113で起こる反応が不可逆的な反応である場合、これによって生じる反応結果は経過情報として取り扱う。また、これらの反応領域1113で匂い分子の吸着後にまた脱着する現象が生じる場合、当該反応は可逆的な反応であり、リアルタイムな情報として取り扱う。そのため、設計の段階では、これらの反応領域1113での反応が可逆的ものであるように、拡散係数を適宜調整して匂い分子の吸着と脱着の速度を制御することで、経過情報とリアルタイムな情報の両方を同時に記録できる。
【0027】
反応呈色層112も、複数の第2領域1121を含むように、仕切り部113によって分割され、第2領域1121と第1領域1111は互いに対応するように積み重ねられ、且つ、第2領域1121は呈色面1122と、化学反応層111の反応領域1113に接触する反応面1123とを含む。反応呈色層112は呈色指示薬を含み、そのため、反応領域1113に当該化学反応が起こる時、反応領域1113に接触する反応呈色層112は当該化学反応に対応してこれらの呈色反応が起こる。
【0028】
ただし、呈色指示薬なる組成物は、水和物、沈殿物、金属錯体及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、水和物である場合は、乾燥の塩化コバルト(II)が湿気と接触してピンク色の水和物を生成するものであってもよい。沈殿物である場合は、酢酸鉛が硫化水素と接触して黒色の硫化鉛沈殿物を生成するものであってもよい。金属錯体である場合は、酸素とヘモグロビン中の鉄イオンが配位結合を形成して赤色を呈するものであってもよい。なお、本発明に適用する「呈色指示薬」は、特に限定されるものではない。例えば、当該呈色指示薬は、酸塩基指示薬、発色性溶媒和物、又はこれらの組み合わせであってもよい。一つの非限定的な例として、当該酸塩基指示薬は、ブロモチモールブルー(Bromothymol Blue)、フェノールフタレイン等の呈色試薬であってもよい。
【0029】
本実施例において、さらに、第1領域1111は第1領域1111aと、1111bとに分けられてもよく、ガス取込み面1112はガス取込み面1112aと、1112bとに分けられてもよく、反応領域1113は反応領域1113aと、1113bとに分けられてもよく、第2領域1121は第2領域1121aと、1121bとに分けけられてもよく、呈色面1122は呈色面1122aと、1122bとに分けられてもよく、反応面1123は反応面1123aと、1123bとに分けられてもよい。仕切り部113は、隣り合う第1領域1111aと1111b、及び、第2領域1121aと1121bを分割する隔壁であり、これによって、ガス取込み面1112aに入る匂い分子と反応領域1113aの反応が、隣り合う反応領域1113bに影響を与えることはなく、反応領域1113aで起こる反応が反応面1123a及び呈色面1122aだけに影響を与え、反応面1123b及び呈色面1122bに対する影響はない。
【0030】
さらに、
図4が参照されるとおり、一つの実施例において、最も外側に設けられた反射防止フィルム30をさらに含み、反射防止フィルム30を設けることで、利用者は外部から、装置を利用して又は目視観察で呈色面1122における色の変化を確認し、干渉を避けることができる。
【0031】
さらに、特定の匂い分子を選別する効果を得るために、匂い分子選別機能を有する拡散フィルム40が1層以上設けられてもよい。拡散フィルム40は化学反応層111の外側に設けられ、具体的には、ガス取込み面1112の近傍に設けられる。
【0032】
これらの拡散フィルム40が設けられた場合、拡散フィルム40のそれぞれが、異なる匂い分子を対象とするように設定してもよい。また、これらの拡散フィルム40に匂い分子が拡散する経路を調整して、分子の大小によって拡散速度が変更することで分子の大小に基づく選別の効果を得るように、一つの実施例において、拡散フィルム40のそれぞれに、サイズが異なるグラフェン50を添加してもよい。
【0033】
さらに、本発明でより効率的に匂い分子が吸着するという目的を達成するために、拡散フィルム40に吸着分子を含んでもよい。当該吸着分子は、任意の、吸着機能を有する液体、コロイド、細孔、又は繊維性フィルムであってもよい。一つの非限定的な例において、当該吸着分子としてグリセリンを利用できる。又は、別の非限定的な例において、当該吸着分子として細孔を用い、細孔の特性を利用してサイズの大きなガス分子をスクリーニングする。又は、直接2つの拡散フィルム40の間に、吸着分子を含む吸着層を設けてもよく、これによって優れた吸着効果を得られる。
【0034】
なお、前述した様々な実施例において、内部の化学反応に対する外部環境の干渉を緩和するために、化学反応層111のガス取込み面1112に近い適切な位置に、遮水性を有する通気性フィルムを設けてもよい。これによって、当該フィルム層は当該通気性フィルム、当該吸着層、拡散フィルム40及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0035】
さらに、本発明で複数の比色ブロックが設けられてもよい。色の弁別がしやすく、判断の誤差が減るように、これらの比色ブロックがこれらの反応領域1113に対応して並ぶように設ける。
【0036】
上記の様々な実施例において、これらの匂い分子が化学反応層111に入ってこれらの反応領域1113と反応することを前提として、化学反応層111、反応呈色層112、又はその他の機能層の設置順番は互いに入れ替えてもよく、限定されるものではない。
【0037】
上述した内容で、本発明に係るマルチガス検知モジュール10の呈色ガス検知チップ11を説明している。次に、匂い情報処理モジュール20について説明する。
【0038】
匂い情報処理モジュール20は、画像取得ユニット21と、画像取得ユニット21と通信可能に接続され且つ複数の識別情報を含むデータベースユニット22と、計算ユニット23とを含む。
【0039】
ただし、データベースユニット22に含まれているこれらの識別情報は検知モデリングプロセスによって生成されてもよい。検知モデリングプロセスとは、具体的には、以下のようなものを指してもよい。即ち、最初に、サンプルを提供し、当該サンプルは青果類、肉類等の食べ物から採取したものであり、匂いを発する食べ物であればいずれも適用する。次に、本発明に係るマルチガス検知モジュール10を利用して、当該サンプルに対してカラー画像を生成し、画像取得ユニット21が当該カラー画像を取得して匂い情報に変換し、当該匂い情報はデータとして提供されている情報である。最後に、当該匂い情報に対してクラウドデータ処理、人工知能モデリングを行って、本発明に係るこれらの識別情報を作成する。クラウドデータ処理、人工知能モデリングは当業者が熟知する技術であるため、詳細な説明は省略される。当業者が理解できるが、データベースユニット22は、これらの識別情報が速やかにアクセスできるように、クラウドデータベースに接続されてもよい。
【0040】
一つの実施例において、ハンドヘルド電子装置をさらに含んでもよく、当該ハンドヘルド電子装置はこれらの匂い情報及びこれらの識別情報を提供するように、アプリケーションプログラムユニット(APP)を含む。これによって、利用者は当該アプリケーションプログラムユニット(APP)がインストールされている当該ハンドヘルド電子装置を利用して、自分で任意の食べ物のこれらの呈色反応に関する情報を得ることができ、さらに、当該アプリケーションプログラムユニット(APP)によってこれらの呈色反応に関する情報を当該匂い情報又はこれらの識別情報に変換し、且つ、上記のクラウドデータベースにアップロードすることができる。ただし、当該アプリケーションプログラムユニット(APP)は撮影機能を有してもよく、即ち、これらの呈色反応に関する情報は写真の形態であってもよい。
【0041】
又は、一つの実施例において、マルチガス検知モジュール10は、呈色ガス検知チップ11に担持されたタグと、当該被評価食材に対応するように当該タグに設けられたバーコード構造とをさらに含む。当該タグにおけるバーコード構造は、一次元バーコード、二次元バーコード、パターン記号、近距離無線通信による自動認識(RFID)電子タグ、又はこれらの組み合わせであってもよく、これらに限定されるものではない。これによって、利用者はいつでも当該タグによって食材情報専門サイトにアクセスして、当該被評価食材に関するこれらの識別情報を確認、検索することができる。
【0042】
具体的には、実際に本発明を利用する際は、マルチガス検知モジュール10が当該被評価食材の当該カラー画像を取得し、画像取得ユニット21が当該カラー画像を当該匂い情報に変換したら、計算ユニット23はこれらの識別情報と当該匂い情報に対して計算を行って食材の風味評価結果を生成し、ただし、当該食材の風味評価結果はデータとして提示されてもよい。これによって、消費者は当該食材の風味評価結果から、当該被評価食材が食べられる状態であるかどうかが分かる。例えば、評価を受ける食材が肉類である場合は、本発明を利用すれば速やかに腐敗の程度、又はその風味等を推定できる。評価を受ける食材が青果類である場合は、本発明を利用すれば、青果類が食べられる程度に熟成しているかどうかを速やかに推定できる。
【0043】
本発明において、さらに、当該計算は、リアルタイム計算、準リアルタイム計算、オフライン計算、又はこれらの組み合わせを含む。リアルタイム計算とは、直ちに結果を比較して計算することを指す。利用者は直接色の見比べをすることで、当該リアルタイム計算によって計算された当該食材の風味評価結果が、食べられる範囲にあるかどうかを容易に判断できる。一方、準リアルタイム計算、オフライン計算は、後続の計算である。例えば、匂い分子の正確な種類と濃度情報、さらには食材の流通情報等を、総合情報としてサプライヤーに提供することで、食材の実際の生産・販売状況を把握できる。
【0044】
さらに、
図5が参照されるとおり、上述したように、本発明の操作方法は以下のように要約できる。
S1として、マルチガス検知モジュール10を提供し、マルチガス検知モジュール10は、少なくとも1つの呈色ガス検知チップ11を含み、呈色ガス検知チップ11は、互いに積み重ねて設けられた化学反応層111と、反応呈色層112とを含む。
【0045】
S2として、呈色ガス検知チップ11が当該被評価食材の発する少なくとも1種の匂い分子と反応し、且つ、化学反応層111とこれらの匂い分子に当該化学反応が起こり、反応呈色層112は当該化学反応によってこれらの呈色反応が生じて当該被評価食材に対応する少なくとも1つのカラー画像を表示する。
【0046】
S3として、画像取得ユニット21と、複数の識別情報を有するデータベースユニット22と、計算ユニット23とを含む匂い情報処理モジュール20を提供し、画像取得ユニット21は呈色ガス検知チップ11から当該カラー画像を取得して当該匂い情報に変換し、且つ、計算ユニット23はこれらの識別情報と当該匂い情報に対して当該計算を行って当該食材の風味評価結果を生成する。
【0047】
これによって、利用者は、当該食材の風味評価結果から、食べ物が食べられるかどうか等の客観的な情報を得ることができ、又はサプライヤーは現時点の生産・販売状況等の市場状況を知り、これを踏まえて市場判断を行うことができる。
【0048】
これにより、本発明を利用すれば、風味、酸味・甘味度、熟成度、新鮮度等の食べ物の状態を速やかに知るための客観的な指標を利用者に提供できる。また、本発明で全ての情報がデータとして提供されているため、利用者同士はこれを活用して交流することができる。本発明によれば、利用者は食材の新鮮度等を判断するために、従来のように目視で観察し、あるいは匂いに頼って選択する等の主観的な手段を用いる必要がないため、食品安全に関する問題が減少できる。また、サプライヤーは本発明を利用して、製品の生産・販売状況を把握し、さらに、製品の市場分析を行って、市場トレンドに合致する販売計画を作ることで、全体的な販売粗利益率を上げることが可能である。これにより、本発明は利用者及びサプライヤーの両方のニーズに配慮し、本分野でより利便性が高く、実用的な生鮮食材評価システムとして利用できる。
【符号の説明】
【0049】
10 マルチガス検知モジュール
11 呈色ガス検知チップ
111 化学反応層
1111、1111a、1111b 第1領域
1112、1112a、1112b ガス取込み面
1113、1113a、1113b 反応領域
112 反応呈色層
1121、1121a、1121b 第2領域
1122、1122a、1122b 呈色面
1123、1123a、1123b 反応面
113 仕切り部
20 匂い情報処理モジュール
21 画像取得ユニット
22 データベースユニット
23 計算ユニット
30 反射防止フィルム
40 拡散フィルム
50 グラフェン
S1〜S3 ステップ